説明

無線特性評価システム、及び無線特性評価方法

【課題】電波の干渉の発生を抑えつつ、遠隔で無線端末の無線特性を評価する。
【解決手段】事業者等が所定の場所において、端末機器1の無線特性の評価を要求する場合、無線方式管理装置14は、その当該場所において利用できる無線の周波数を無線規格データベース12に問い合わせ、無線基地局2は、問い合わせに結果得られた周波数により、試験電波の設定パラメータを端末機器1に送信する。端末機器1は、設定パラメータで通知した空き周波数によって試験電波を送信し、無線基地局2は、受信した試験電波を有線信号の電波データとして信号処理装置3に転送する。信号処理装置3は、取得した電波データを再び無線信号に変換して測定器に入力し、評価を行う。無線方式管理装置14は、評価結果が適合基準を満たしているかを無線規格データベース12に問い合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線特性評価システム、及び無線特性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や無線LAN(Local Area Network)などの普及が進むとともに、無線伝送路の広帯域化が顕著になってきている。そのため、周波数の逼迫が課題となっており、より一層の周波数有効利用が望まれている。
【0003】
TV放送に利用されている周波数帯は、地域毎で利用チャネルが異なるとともに、放送停止時間などにより、ある地域や時間帯に限定して利用されていない周波数帯が生じる。これはTVホワイトスペースと呼ばれ、この周波数帯を複数の無線システム間で共用することで、周波数利用効率の改善が期待できる。FCC(Federal communication commission)やOfcom(Office of communication)などでは、このような周波数帯域の共用方法として、各地域で利用可能な周波数情報をデータベース化し、各々無線端末の位置情報の報告に基づいて利用可能な周波数を通知する方法を提案している(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ところで、通常電波の利用には、無線設備などを備えた無線局を開設する必要があり、無線局を開設するには総務大臣の免許を受けることが必要となる。この免許の有効期間はその用途によって異なっている。例えば携帯電話システムの場合には、電気通信事業者が無線基地局を開設し、利用者が端末機器を用いて無線基地局に接続して通信を行う。ただし、免許手続きの簡素合理化および免許申請者の負担軽減のため、小規模や無線局に使用するための無線設備であって総務省令で定めるもの(特定無線設備:携帯電話等)については、登録証明機関が電波法に定める技術基準に適合していることを証明する制度(技術基準適合証明制度)を特例として設けている(例えば、非特許文献2参照)。この技術基準適合証明が与えられた無線局を用いることで、無線局の免許申請をする際の手続きが大幅に簡略化されるとともに、空中線電力が約0.01W以下の無線局となる家庭用無線LAN、コードレス電話などで無線局の免許が不要となり、無線設備を利用する者の負担軽減に役立っている。
【0005】
また、端末機器を電気通信事業者の電気通信回線設備に接続するには、当該事業者の接続検査を受けることが必要となっているが、その端末機器を利用する者の利便の向上に資する等の観点から、総務省令で定める端末機器について、登録認定機関が総務省令で定める技術基準に適合していることを認定する制度(技術基準適合認定制度)を特例として設けている。この認定を受けた端末機器は、それを接続する場合に当該事業者による接続検査が不要となる措置がとられており、その端末機器を使用する者の利便の向上等に役立っている。
【0006】
技術基準適合証明や技術基準適合認定を受けるには、登録証明機関に工事設計書を提出して書類審査を受けた後に実際に端末機器を持ち込んで発射される電波の質を試験し、「ユニークな呼出符号が自動的に送出されるか?」、「他の通信に妨害を与えない機能を備えているか?」、「容易に開けることが出来ない構造か?」などの様々な項目の検査を経て最終的に「技術適合証明」もしくは「技術適合認定」が交付されてユーザが利用可能になる。
【0007】
図6は従来の技術基準適合認定における無線特性についての試験系を示している。登録証明機関9に技術基準適合認定を要求する端末機器100が持ちこまれると、端末機器100は、スペクトラムアナライザ5、パワーメータ6、オシロスコープ7などと接続されて周波数特性、送信電力および時間応答などの送信特性が測定される。これらの測定結果は、無線規格データベース12などに登録されている基準値と比較され、測定結果が基準を満たしており、かつ、無線特性以外の他の適合基準(容易に開けることが出来ない構造であるかなどのハードウェアについての適合基準等)を満たしている場合には、その端末機器100が認可される。また、登録証明機関9には、技術基準適合証明を取得済みの参照端末8−1〜8−nが用意されており、これらのうち端末機器100と同じ無線方式を使用する参照端末8−i(iは1〜nのいずれか)との間で接続試験を行うことにより、相互運用性なども判定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】佐々木、「ホワイトスペース型コグニティブ無線の標準化」,信学技報,2010年3月,SR2009−91,p.1−7
【非特許文献2】総務省:電波利用ホームページ,「無線局機器に関する基準認証制度について」、[平成23年9月9日検索],インターネット<URL:http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/equ/index.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した技術基準適合証明や技術基準適合認定では、申請手続きや認定試験など登録に数か月程度を要するのが一般的であり、端末機器の普及を妨げる要因の一つになる。例えば遠隔での無線特性の評価等の導入が望まれているが、遠隔で無線特性を評価するためには、測定器等を持ち出す必要があるため、その導入は困難である。また、評価対象となる端末機器について、誤った位置情報に基づいて周波数が認可された場合には、電波の干渉問題が生じるため、位置情報の真偽の判定が必要になる。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、電波の干渉の発生を抑えつつ、遠隔で端末機器の無線特性を評価することができる無線特性評価システム、及び無線特性評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、基地局装置と、信号処理装置と、無線方式管理装置と、測定装置と、データベースとを有し、無線局装置の無線特性を評価する無線特性評価システムであって、前記データベースは、位置の情報と利用可能な周波数とを対応づけて記憶するとともに、試験電波の送信に用いる周波数を少なくとも含む設定パラメータを記憶し、前記無線方式管理装置は、前記データベースに前記基地局装置の位置情報に対応して記憶されている利用可能な周波数と前記設定パラメータとに基づいて得られた、試験電波の送信に用いる周波数のうち利用可能な周波数が設定された前記設定パラメータを前記無線局装置及び前記基地局装置に通知する通知部と、前記無線局装置が送信した試験電波の電波状態を示す電波データに基づいて前記測定装置が測定した無線特性の測定結果を得る測定結果取得部とを備え、前記基地局装置は、前記設定パラメータを用いて送信された試験電波を前記端末局装置から受信し、受信した前記試験電波の電波データを前記信号処理装置に出力する無線受信部を備え、前記信号処理装置は、前記基地局装置から入力された電波データを無線信号に変換して前記測定装置に入力する変換部を備える、ことを特徴とする無線特性評価システムである。
【0012】
また、本発明は、上述する無線特性評価システムであって、前記通知部は、前記基地局装置の位置の情報に基づいて前記データベースから利用可能な周波数を取得して前記基地局装置に出力し、前記基地局装置は、前記無線方式管理装置から受信した前記利用可能な周波数によって、設定パラメータの問い合わせ信号に使用する無線方式を前記無線局装置に報知する無線送信部をさらに備え、前記無線受信部は、報知した前記無線方式により前記無線局装置から受信した設定パラメータの問い合わせ信号を前記無線方式管理装置へ出力する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述する無線特性評価システムであって、さらに、前記基地局装置の周辺に設置されたモニタ装置を備え、前記モニタ装置は、前記無線局装置から受信した前記試験電波の不要発射および信号品質を解析して、前記無線方式管理装置に転送する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、基地局装置と、信号処理装置と、無線方式管理装置と、測定装置と、データベースとを備える無線特性評価システムの無線特性評価方法であって、前記データベースは、位置の情報と利用可能な周波数とを対応づけて記憶するとともに、試験電波の送信に用いる周波数を少なくとも含む設定パラメータを記憶し、前記無線方式管理装置が、前記データベースに前記基地局装置の位置情報に対応して記憶されている利用可能な周波数と前記設定パラメータとに基づいて得られた、試験電波の送信に用いる周波数のうち利用可能な周波数が設定された前記設定パラメータを前記無線局装置及び前記基地局装置に通知する通知ステップと、前記基地局装置が、前記設定パラメータを用いて送信された試験電波を前記端末局装置から受信し、受信した前記試験電波の電波状態を示す電波データを前記信号処理装置に出力する転送ステップと、前記信号処理装置が、前記基地局装置から入力された電波データを無線信号に変換して前記測定装置に入力する変換ステップと、前記無線方式管理装置が、前記電波データに基づいて前記測定装置が測定した無線特性の測定結果を得る測定結果取得ステップと、を有することを特徴とする無線特性評価方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電波の干渉の発生を抑えつつ、遠隔で端末機器(無線局装置)の無線特性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態による無線特性評価システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態による無線特性評価システムのシーケンス図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による無線特性評価システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態による無線特性評価システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第4の実施形態による無線特性評価システムの構成を示すブロック図である。
【図6】従来の技術基準適合認定の試験系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施形態による無線特性評価システムの構成を示すブロック図である。本実施形態の無線特性評価システムは、端末機器1の無線特性が技術基準適合証明(あるいは技術基準適合認定)の基準に適合するかを評価する。同図に示すように、本実施形態の無線特性評価システムは、モニタ端末10−1〜10−n(以下、総称して「モニタ端末10」とも記載する。)、無線基地局2、信号処理装置3、無線方式管理装置14、スペクトラムアナライザ5、パワーメータ6、オシロスコープ7、参照端末8−1〜8−n、周波数管理データベース11、及び無線規格データベース12を備えて構成される。
【0019】
端末機器1は、技術基準適合認定を要求する無線局装置であり、送信可能な無線帯域において、スプリアス発射、帯域外発射や送信機雑音などの不要発射全体の規定を満たしているものとする。また、端末機器1は、容易に開けることが出来ない構造であるか、などの無線特性以外の基準も満たしているものとする。
【0020】
モニタ端末10は、他の機器から受信した無線信号の周波数をリアルタイムに無線方式管理装置14に通知している。また、モニタ端末10は、端末機器1から送信される試験電波(無線の試験信号)を受信し、スプリアス発射や帯域外発射などの不要発射ならびに信号品質などを解析して、解析結果を無線方式管理装置14に送信する。
【0021】
無線基地局2は、端末機器1及びモニタ端末10と無線により通信し、信号処理装置3と光ファイバ13を介して通信する基地局装置である。無線基地局2は、無線受信部21及び無線送信部22を備える。無線受信部21は、端末機器1、モニタ端末10から受信した無線信号を有線信号に変換して信号処理装置3へ中継する。また、無線送信部22は、信号処理装置3から受信した有線信号を無線信号に変換して端末機器1、モニタ端末10へ中継する。
【0022】
信号処理装置3は、中継部31及び変換部32を備える。中継部31は、無線基地局2から受信した信号を無線方式管理装置14に中継し、無線方式管理装置14から受信した信号を無線基地局2に中継する。変換部32は、端末機器1の無線信号を変換した有線信号を無線基地局2から受信し、受信した有線信号を無線信号に再変換してスペクトラムアナライザ5、パワーメータ6、オシロスコープ7などの測定器に入力し、端末機器1の送信特性を評価する。
【0023】
スペクトラムアナライザ5は、周波数毎の電力や電圧を測定する。パワーメータ6は、周波数毎の電力量を測定する。オシロスコープ7は、周波数毎の信号の電圧の経時変化を測定する。以下、スペクトラムアナライザ5、パワーメータ6、オシロスコープ7を総称して単に「測定器」とも記載する。
【0024】
公的機関であり、技術基準適合認定を与える登録証明機関9は、周波数管理データベース11及び無線規格データベース12の2つのデータベースを保有する。
周波数管理データベース11は、無線基地局2の位置情報、及びモニタ端末10の位置情報を記憶するとともに、地域に対応した利用可能周波数を記憶する。
無線規格データベース12は、国内外の様々な無線規格の仕様データが登録されている。仕様データには、試験電波用の送信電力や周波数などを示す設定パラメータや、技術基準適合認定の認定条件を示すデータが含まれる。
【0025】
無線方式管理装置14は、インターネットなどのコアネットワーク4を介して登録証明機関9の周波数管理データベース11及び無線規格データベース12に接続される。無線方式管理装置14は、更新部141、通知部142、測定結果取得部143、及び認証結果取得部144を備える。更新部141は、モニタ端末10から受信した位置情報や電波データに基づいて周波数管理データベース11に記憶されている地域毎の利用可能周波数を更新する。通知部142は、周波数管理データベース11に無線基地局2の緯度・経度などの位置情報を定期的に入力して利用可能な周波数を受信すると、受信した周波数を端末機器1に通知する。また、通知部142は、無線規格データベース12から端末機器1の無線規格に対応する設定パラメータを読み出して、端末機器1に通知する。測定結果取得部143は、スペクトラムアナライザ5、パワーメータ6、オシロスコープ7などの測定器による試験電波の測定結果や、モニタ端末10による試験電波の解析結果を受信する。認証結果取得部144は、測定結果取得部143が受信した測定結果に基づく技術基準適合認定の認定結果を無線規格データベース12から取得する。
【0026】
なお、無線基地局2ならびにモニタ端末10は、第三者が不正に使用できないようなセキュリティ機能などを備えることにより、これらの装置から送信される緯度・経度などの位置情報や測定結果の報告に虚偽は無く、正確な情報が担保されるものとする。
【0027】
次に、本実施形態の無線特性評価システムの動作について説明する。
周波数管理データベース11には、様々な無線システムの無線基地局情報が予め記憶されている。無線基地局情報は、例えば、無線基地局2の位置情報、アンテナ高、アンテナ利得、送信電力などを示す。また、無線基地局2やモニタ端末10−1〜10−nは、自身の位置情報を無線方式管理装置14に通知しておく。無線方式管理装置14の更新部141は、無線基地局2やモニタ端末10−1〜10−nから受信した位置情報を周波数管理データベース11や、自装置が備える記憶部(図示せず)に書き込む。これにより、周波数管理データベース11が記憶している無線基地局情報内の無線基地局2の位置情報が更新される。
【0028】
一方、モニタ端末10−1〜10−nは、他の機器から受信した無線信号の周波数の情報を含む電波データをリアルタイムに、無線基地局2及び信号処理装置3を介して無線方式管理装置14に通知する。無線方式管理装置14の更新部141は、モニタ端末10−1〜10−nから通知される電波データ、周波数管理データベース11に記憶されているモニタ端末10−1〜10−nの位置情報、及び無線基地局情報が示す無線基地局2の位置情報を照合し、無線基地局2が属する各々の地域・場所で使用されていない、利用可能な周波数をデータ化して周波数管理データベース11に書き込む。このようにして、その地域で使用されている電波の更新とともに、適宜周波数管理データベース11の情報の修正がリアルタイムに行われる。
【0029】
図2は、図1に示す無線特性評価システムのシーケンス図である。
同図において、まず、無線方式管理装置14の通知部142は、周波数管理データベース11に、技術基準適合認定を要求する端末機器1が属するエリアの無線基地局2の位置情報を送信する(ステップS105)。周波数管理データベース11は、受信した位置情報により特定される、現在利用可能な周波数を取得し、無線方式管理装置14に通知する(ステップS110)。続いて、無線方式管理装置14の通知部142は、端末機器1が接続要求の送信に必要となる周波数やタイムスロットなどを示す割り当て情報と、周波数管理データベース11から取得した利用可能な周波数を、信号処理装置3の中継部31を介して無線基地局2に送信する。無線基地局2の無線送信部22は、受信した周波数により、受信した割り当て情報を報知(ブロードキャスト)する(ステップS115)。
【0030】
端末機器1は、無線基地局2からの報知信号を受信すると、当該端末機器1が使用する無線規格に対応した設定パラメータを無線方式管理装置14に問い合わせるため、報知信号に含まれる割り当て情報により指定された周波数やタイムスロットを用いて接続要求を送信する(ステップS120)。接続要求には、端末機器1が使用する無線規格が設定される。
【0031】
なお、無線基地局2の無線受信部21が、端末機器1から接続要求を受信すると、無線送信部22は、応答信号を返送する。複数の端末機器1の接続要求が同時に送信されために無線基地局2の無線受信部21でそれらの接続要求が正しく受信されない場合には、応答信号が返信されない。よって、端末機器1は、接続要求を送信してからある設定された時間以上で無線基地局2からの応答が無い場合には、無線基地局2からの報知信号を再度受信し、接続要求を再送する。
【0032】
無線基地局2の無線受信部21は、報知信号に含まれる割り当て情報で指定した周波数及びタイムスロットにより端末機器1からの接続要求を受信すると、信号処理装置3の中継部31を介して接続要求を無線方式管理装置14に送信する。無線方式管理装置14の通知部142は、接続要求に設定されている無線規格を無線規格データベース12に送信し、設定パラメータを問い合わせる(ステップS125)。無線規格データベース12は、受信した無線規格に対応した試験電波用の設定パラメータを取得し、無線方式管理装置14に返送する(ステップS130)。なお、設定パラメータが示す試験電波用の周波数は、ブロードキャストに用いた周波数と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0033】
無線方式管理装置14の通知部142は、無線規格データベース12から取得した設定パラメータとともに、予め決められた試験電波の発射区間などを信号処理装置3を介して無線基地局2に送信する。このとき通知部142は、ステップS130において受信した設定パラメータに試験電波用として設定されている周波数のうち、ステップS110において受信した利用可能な周波数のみを残し、利用できない周波数は削除して送信する。発射区間は、試験電波を送信する時間や、タイムスロットなどを示す。
【0034】
なお、ステップS130において無線規格データベース12は、利用可能な周波数のみを設定した設定パラメータを無線方式管理装置14に通知してもよい。この場合、データベース12は、ステップS110において周波数管理データベース12が通知した利用可能な周波数を取得し、設定パラメータに試験電波用として設定されている周波数のうち、利用可能な周波数のみを残し、利用できない周波数は削除して無線方式管理装置14に通知する。
【0035】
無線基地局2の無線送信部22は、ステップS115においてブロードキャストした利用可能な周波数により、設定パラメータや試験電波の発射区間などを端末機器1ならびに端末機器1の周囲に位置するモニタ端末10−1〜10−nに通知する(ステップS135)。
【0036】
端末機器1は、通知された設定パラメータならびに指定された発射区間に基づいて試験電波を発射する(ステップS140)。このように、試験電波を発射する時間ならびに周波数の技術基準適合認定を要求する端末機器1だけに限定して割り当てることで、干渉波の影響が少ない環境での試験が可能となる。
【0037】
無線基地局2の無線受信部21は、通知された設定パラメータならびに指定された発射区間に基づいて端末機器1から送信された試験電波を受信する。無線受信部21は、試験電波の周波数変換、アナログデジタル(A/D)変換、パケット生成および電気/光変換などを行って有線信号の電波データに変換し、光ファイバ13を介して信号処理装置3に伝送する(ステップS145)。電波データのパケットには、無線基地局2が受信した試験電波の受信状態が設定される。
【0038】
信号処理装置3の変換部32は、無線基地局2から有線信号の電波データを受信すると、有線信号の光/電気変換、パケット復調、デジタルアナログ(D/A)変換および周波数変換を行って電波データを無線信号に再変換し、スペクトラムアナライザ5、パワーメータ6、オシロスコープ7などの測定器に入力する(ステップS150)。各測定器は、信号処理装置3の変換部32が再変換した無線信号により、端末機器1の送信特性を評価する。例えば、スペクトラムアナライザ5やパワーメータ6の測定結果により、電波の受信状態や、使用帯域を判断する。また、オシロスコープ7により、異常な周波数で信号が送信されていないかを判断する。なお、信号処理装置3は、パケット復調せずに、有線信号を無線方式管理装置14およびコアネットワーク4を介して測定器に入力する場合もある。
各測定器は、信号処理装置3から入力された信号の送信特性を解析し、その送信特性の解析結果を無線方式管理装置14に直接もしくはコアネットワーク4を介して送信する(ステップS155)。
【0039】
一方、端末機器1の周囲に配置されたモニタ端末10−1〜10−nは、通知された設定パラメータならびに指定された発射区間に基づいて、ステップS140において端末機器1から送信された試験電波を受信する。モニタ端末10−1〜10−nは、試験電波のスプリアス発射や帯域外発射などの不要発射ならびに信号品質などの送信特性を解析し、その送信特性の解析結果を、無線基地局2を介して無線方式管理装置14に送信する(ステップS160)。なお、無線基地局2ならびにモニタ端末10−1〜10−nの設置場所は予め無線方式管理装置14において特定されているため、GPS(Global positioning system)などを用いなくても、それらの設置場所から凡その端末機器1の設置場所が推測可能となる。
【0040】
さらに、端末機器1は、接続試験信号を送信し、無線基地局2の無線受信部21は、接続試験信号を信号処理装置3に伝送する。信号処理装置3の変換部32は、無線基地局2において変換された有線信号を無線信号に再変換し、接続要求に設定されていた無線規格の技術基準適合認定を取得済みの参照端末8−i(iは1〜nのいずれか)に、再変換した接続試験信号を送信して接続試験を行う(ステップS165)。信号処理装置3の変換部32は、接続試験の試験結果を無線方式管理装置14に通知する(ステップS170)。
【0041】
無線方式管理装置14の測定結果取得部143は、モニタ端末10−1〜10−nおよび測定器から受信した送信特性および参照端末8−1〜8−nとの接続試験の結果を無線規格データベース12に通知して、技術基準適合の合否を問い合わせる(ステップS175)。無線規格データベース12は、無線方式管理装置14から受信した送信特性および接続試験の結果と、記憶している技術基準適合認定の認定条件とを照合して技術基準適合の合否を判別し、判定結果を無線方式管理装置14に通知する(ステップS180)。無線方式管理装置14の認証結果取得部144は、無線規格データベース12からの合否判定の結果を受信し、結果が合格の場合には、端末機器1に対して技術基準適合認定を登録証明機関9の代理で与え、そのまま信号送信を許可する(ステップS185)。一方、結果が不合格の場合には、無線方式管理装置14の認証結果取得部144は、送信停止を指示する。
信号送信を許可された端末機器1は、無線基地局2を介した通信を行う(ステップS190)。
【0042】
なお、端末機器1の識別番号や、無線基地局2の識別番号およびタイムスタンプなどを用いて複数の異なる端末機器1の接続要求、試験電波、接続試験信号の入力を区別することにより、複数の端末機器1の試験を行うことができる。
【0043】
また、端末機器1の技術基準適合認定が認定された後の通信において、モニタ端末10や無線方式管理装置14が端末機器1の電波をモニタすることで、電波利用の時間率が算出できるとともに、規格遵守に対する監視も可能となる。
また、登録証明機関の無線規格データベース12は世界各国の無線規格が登録されるか、もしくは、各国の登録証明機関と連携を図ることで、要求に応じて様々な国で利用可能な技術基準の適合の合否を与えることが可能となる。
【0044】
従来は、事業者等が端末機器を登録証明機関に持ち込んで無線特性を評価してもらうことによって、技術適合認定を取得していたが、これは、申請手続きや認定試験などに手間がかかり、登録に数か月を要していた。遠隔で技適適合認定に係る無線特性を評価することも考えられるが、評価に必要な技術を持ち出すことは困難であり、また、事業者等が申請した場所で実際は試験が行われていない可能性があるため信頼性が低いという問題があった。
【0045】
そこで、本実施形態では、フレキシブルワイヤレスシステムを利用し、かつ、モニタ装置を配置することによって、遠隔での無線特性の評価を可能にしつつ、その試験の信頼性を改善している。つまり、事業者等が所定の場所において、ある端末機器1の無線特性の評価を要求する場合に、評価を行う主体である無線方式管理装置14は、その場所において利用できる周波数を無線規格データベース12に問い合わせ、問い合わせに結果得られた周波数を、当該端末機器1をサービスエリアに含む無線基地局2に通知する。これにより、無線基地局2は、無線方式管理装置14が無線規格データベース12から読み出した試験電波の設定パラメータを、空き周波数を用いて端末機器1に送信する。端末機器1は、設定パラメータで通知された空き周波数によって試験電波を送信し、無線基地局2は、設定パラメータで通知した空き周波数によって試験電波を受信する。無線基地局2は、試験信号を有線信号の電波データとして信号処理装置3に転送し、信号処理装置3は、取得した電波データを再び無線信号に変換して測定器に入力し、無線特性の評価を行う。無線方式管理装置14は、評価結果が適合基準を満たしているかを無線規格データベース12に問い合わせる。かかる構成により、測定器を持ち出すことなく、遠隔で端末機器1の無線特性を評価することが可能になる。
【0046】
しかし、上記の構成では、信号処理装置3に別ルートで試験電波の電波データを入力することも可能であるため、データの信頼性が低い問題が残ってしまう。そこで、本実施形態では、無線基地局2の周辺に設置されたモニタ端末10−1〜10−nが、端末機器1から試験電波を受信し、無線方式管理装置14に試験が行われている旨を通知することにより、試験の実施場所を保証している。
【0047】
図3は、本発明の第2の実施形態による無線特性評価システムの構成を示すブロック図であり、同図において、図1に示す第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図に示す無線特性評価システムが、図1に示す第1の実施形態の無線特性評価システムと異なる点は、端末機器1に代えて、評価対象がコアネットワーク4に接続されている端末機器1aである点、無線方式管理装置14に代えて無線方式管理装置14aを備える点である。無線方式管理装置14aが第1の実施形態の無線方式管理装置14と異なる点は、通知部142に代えて通知部142aを備える点、認証結果取得部144に代えて認証結果取得部144aを備える点である。
以下、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
【0048】
第1の実施形態では、端末機器1は、無線方式管理装置14から指定された周波数により接続要求信号を送信している。一方、本実施形態では、端末機器1aは、接続要求信号を、コアネットワーク4を介して有線で無線方式管理装置14aに通知する。よって、無線方式管理装置14aの通知部142aは、利用可能な周波数を無線基地局2を介して端末機器1aに報知する必要はない。また、無線方式管理装置14aの認証結果取得部144aは、技術基準適合の合否判定結果を、有線で端末機器1aに通知する。それ以外は、端末機器1a、無線方式管理装置14aはそれぞれ、第1の実施形態の端末機器1、無線方式管理装置14と同様に動作する。
【0049】
図4は、本発明の第3の実施形態による無線特性評価システムの構成を示すブロック図であり、同図において、図1に示す第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図に示す無線特性評価システムが、図1に示す第1の実施形態の無線特性評価システムと異なる点は、無線基地局2、信号処理装置3、及び無線方式管理装置14に代えて、無線基地局2bを備える点である。無線基地局2bは、無線受信部21b、無線送信部22b、信号処理装置3b及び無線方式管理装置14bを有する。
以下、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
【0050】
本実施形態では、無線基地局2bの無線受信部21bが受信した無線信号は、光/電気変換ならびに電気/光変換が施されずに信号処理装置3bに入力される。また、無線送信部22bは、信号処理装置3bから入力された信号を端末機器1やモニタ端末10−1〜10−nへ無線信号により中継する。
【0051】
信号処理装置3bは、中継部31b及び変換部32bを備える。中継部31bは、無線受信部21bから受信した信号を無線方式管理装置14bに出力し、無線方式管理装置14bから受信した信号を無線送信部22bに出力する。変換部32bは、試験電波を受信した場合、直接もしくはコアネットワーク4を介して、スペクトラムアナライザ5、パワーメータ6やオシロスコープ7などの測定器に出力する。
測定器による解析結果は、無線方式管理装置14bに直接もしくはコアネットワーク4を介して無線方式管理装置14bに入力される。
【0052】
無線方式管理装置14bは、無線基地局2bが備える信号処理装置3bと接続されている以外は、第1の実施形態の無線方式管理装置14と同様の構成である。
【0053】
上記以外の本実施形態の無線特性評価システムの動作は、第1の実施形態の無線特性評価システムの動作と同様である。つまり、上記以外は、無線基地局2bの無線受信部21b、無線送信部22b、信号処理装置3b、及び無線方式管理装置14bは、第1の実施形態における無線受信部21、無線送信部22、信号処理装置3、及び無線方式管理装置14と同様に動作する。
【0054】
図5は、本発明の第4の実施形態による無線特性評価システムの構成を示すブロック図であり、同図において、図4に示す第3の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図に示す本実施形態の無線特性評価システムが、図4に示す第3の実施形態の無線特性評価システムと異なる点は、端末機器1に代えて、評価対象がコアネットワーク4に接続されている端末機器1cである点である。
以下、第3の実施形態との差分を中心に説明する。
【0055】
端末機器1cは、アンテナから送信される直前の試験電波の電気信号をそのまま同軸ケーブルなどの有線により、コアネットワーク4を介して測定器に出力する。これより、各測定器は、受信した電気信号から電波特性を測定する。
本実施形態の無線特性評価システムの他の動作は、第1の実施形態や第3の実施形態の無線特性評価システムと同様である。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、技術基準適合認定を要求する端末機器が存在する場所において利用可能な周波数を用い、端末機器の無線特性を遠隔で評価する。これにより、地域や時間によって利用可能な周波数帯が異なる場合においても、送信要求毎に端末機器に対して技術基準適合認定を行うことができる。よって、利用認可の申請から認定までの時間を短縮できるとともに、時間率を考慮した電波利用料の設定が可能となる。また、モニタ端末の電波監視に対して登録申請料を還付することで、登録申請が容易になり、無線端末の利用が促進され、周波数の有効利用が図られる。
【0057】
上述した無線方式管理装置14、14a、14bは、内部にコンピュータシステムを有している。そして、更新部141、通知部142、142a、測定結果取得部143、認証結果取得部144、144aの動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいうコンピュータシステムとは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
【0058】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0059】
1、1a、1c 端末機器(端末局装置)
2、2b 無線基地局(基地局装置)
3、3b 信号処理装置
4 コアネットワーク
5 スペクトラムアナライザ(測定装置)
6 パワーメータ(測定装置)
7 オシロスコープ(測定装置)
8−1〜8−n 参照端末
9 登録証明機関
10−1〜10−n モニタ端末
11 周波数管理データベース(データベース)
12 無線規格データベース(データベース)
13 光ファイバ
14、14a、14b 無線方式管理装置
21、21b 無線受信部
22、22b 無線送信部
31、31b 中継部
32、32b 変換部
100 端末機器(端末局装置)
141 更新部
142、142a 通知部
143 測定結果取得部
144、144a 認証結果取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と、信号処理装置と、無線方式管理装置と、測定装置と、データベースとを有し、無線局装置の無線特性を評価する無線特性評価システムであって、
前記データベースは、位置の情報と利用可能な周波数とを対応づけて記憶するとともに、試験電波の送信に用いる周波数を少なくとも含む設定パラメータを記憶し、
前記無線方式管理装置は、
前記データベースに前記基地局装置の位置情報に対応して記憶されている利用可能な周波数と前記設定パラメータとに基づいて得られた、試験電波の送信に用いる周波数のうち利用可能な周波数が設定された前記設定パラメータを前記無線局装置及び前記基地局装置に通知する通知部と、
前記無線局装置が送信した試験電波の電波状態を示す電波データに基づいて前記測定装置が測定した無線特性の測定結果を得る測定結果取得部とを備え、
前記基地局装置は、前記設定パラメータを用いて送信された試験電波を前記端末局装置から受信し、受信した前記試験電波の電波データを前記信号処理装置に出力する無線受信部を備え、
前記信号処理装置は、
前記基地局装置から入力された電波データを無線信号に変換して前記測定装置に入力する変換部を備える、
ことを特徴とする無線特性評価システム。
【請求項2】
前記通知部は、前記基地局装置の位置の情報に基づいて前記データベースから利用可能な周波数を取得して前記基地局装置に出力し、
前記基地局装置は、前記無線方式管理装置から受信した前記利用可能な周波数によって、設定パラメータの問い合わせ信号に使用する無線方式を前記無線局装置に報知する無線送信部をさらに備え、
前記無線受信部は、報知した前記無線方式により前記無線局装置から受信した設定パラメータの問い合わせ信号を前記無線方式管理装置へ出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線特性評価システム。
【請求項3】
さらに、前記基地局装置の周辺に設置されたモニタ装置を備え、
前記モニタ装置は、前記無線局装置から受信した前記試験電波の不要発射および信号品質を解析して、前記無線方式管理装置に転送する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線特性評価システム。
【請求項4】
基地局装置と、信号処理装置と、無線方式管理装置と、測定装置と、データベースとを備える無線特性評価システムの無線特性評価方法であって、
前記データベースは、位置の情報と利用可能な周波数とを対応づけて記憶するとともに、試験電波の送信に用いる周波数を少なくとも含む設定パラメータを記憶し、
前記無線方式管理装置が、前記データベースに前記基地局装置の位置情報に対応して記憶されている利用可能な周波数と前記設定パラメータとに基づいて得られた、試験電波の送信に用いる周波数のうち利用可能な周波数が設定された前記設定パラメータを前記無線局装置及び前記基地局装置に通知する通知ステップと、
前記基地局装置が、前記設定パラメータを用いて送信された試験電波を前記端末局装置から受信し、受信した前記試験電波の電波状態を示す電波データを前記信号処理装置に出力する転送ステップと、
前記信号処理装置が、前記基地局装置から入力された電波データを無線信号に変換して前記測定装置に入力する変換ステップと、
前記無線方式管理装置が、前記電波データに基づいて前記測定装置が測定した無線特性の測定結果を得る測定結果取得ステップと、
を有することを特徴とする無線特性評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−98857(P2013−98857A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241364(P2011−241364)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】