説明

無線端末および無線通信方法

【課題】無線端末または無線基地局の干渉除去性能を最大限に発揮し得るチャネル割り当てを可能とし、周波数利用効率およびセルスループットをさらに向上させる。
【解決手段】本発明に係る無線端末は、干渉源から干渉の影響を受ける第1通信チャネル、または干渉源から受ける干渉の影響が第1通信チャネルよりも少ない第2通信チャネルのいずれか一方が基地局によって割り当てられ、割り当てられた通信チャネルを介して基地局と無線通信を実行する無線端末であって、無線端末または無線基地局の少なくとも一方において干渉の影響を除去する性能である干渉除去性能に基づき、無線基地局が割り当てた第1通信チャネルまたは第2通信チャネルを介して無線基地局との無線通信を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおいて無線基地局に通信チャネルを割り当てられる無線端末および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいて無線基地局は、自局の通信可能エリアであるセルを形成し、当該セル内に位置する無線端末に通信チャネルを割り当て、割り当てた通信チャネルを介して当該無線端末と無線通信を実行する。一般的に無線基地局は、隣接するセル間で周波数が異なる通信チャネルを無線端末に割り当て、干渉の発生を防止している。
【0003】
一方で、周波数利用効率およびセルスループットを向上させるために、無線基地局が使用する周波数の一部を隣接するセル間で同一とし、他の無線基地局または無線端末など(以下、「干渉源」)から干渉の影響を受ける通信チャネルを意図的に使用する部分的周波数再使用(FFR)と呼ばれる手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなFFRにおいて、無線基地局は、受信SINRなどの受信品質が良好な無線端末、具体的には、セルの中心付近に位置する無線端末に対し、干渉源から受ける干渉の影響が大きい第1通信チャネルを割り当てる。第1通信チャネルでは、隣接するセル間で同一の周波数が用いられる通信チャネルである。
【0005】
また、無線基地局は、受信品質が劣悪な無線端末、具体的には、セルエッジ付近に位置する無線端末に対し、干渉源から受ける干渉の影響が小さい第2通信チャネルを割り当てる。第2通信チャネルは、隣接するセル間で異なる周波数が用いられる通信チャネルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−507215号公報([要約]など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年では、信号処理技術の発展に伴い、無線端末および無線基地局において干渉の影響を除去することが可能になってきている。しかしながら、干渉を除去する性能(以下、干渉除去性能)が高いものと、干渉除去性能が低いものとが混在しているのが実情である。
【0008】
このため、受信品質のみに応じて第1通信チャネルまたは第2通信チャネルを割り当てる従来の手法では、適切なチャネル割り当てができないことがある。例えば多数の無線端末がセルエッジ付近に集中しているような場合、従来のチャネル割り当て手法では、割り当て可能な第2通信チャネルが不足する一方、割り当て可能な第1通信チャネルが余るといったケースがある。
【0009】
したがって、従来のチャネル割り当て手法では、必ずしも周波数利用効率およびセルスループットを向上させることができない問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、無線端末または無線基地局の干渉除去性能を最大限に発揮し得るチャネル割り当てを可能とし、周波数利用効率およびセルスループットをさらに向上させることができる無線端末および無線通信方法を提供することを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、干渉源から干渉の影響を受ける第1通信チャネル、または前記干渉源から受ける干渉の影響が前記第1通信チャネルよりも少ない第2通信チャネルのいずれか一方が基地局によって割り当てられ、割り当てられた通信チャネルを介して前記基地局と無線通信を実行する無線端末であって、前記無線端末または前記無線基地局の少なくとも一方において干渉の影響を除去する性能である干渉除去性能に基づき、前記無線基地局が割り当てた前記第1通信チャネルまたは前記第2通信チャネルを介して前記無線基地局との無線通信を実行することを要旨とする。
【0012】
本発明の第2の特徴は、干渉源から干渉の影響を受ける第1通信チャネル、または前記干渉源から受ける干渉の影響が前記第1通信チャネルよりも少ない第2通信チャネルのいずれか一方が基地局によって割り当てられ、割り当てられた通信チャネルを介して前記基地局と無線通信を実行する無線端末の無線通信方法であって、前記無線端末または前記無線基地局の少なくとも一方において干渉の影響を除去する性能である干渉除去性能に基づき、前記無線基地局が割り当てた前記第1通信チャネルまたは前記第2通信チャネルを介して前記無線基地局との無線通信を実行するステップ、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無線端末または無線基地局の干渉除去性能を最大限に発揮し得るチャネル割り当てを可能とし、周波数利用効率およびセルスループットをさらに向上させることができる無線端末および無線通信方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線基地局が下りリンクのデータ通信に使用するリソースの分割例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る無線基地局の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る無線基地局の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る閾値情報記憶部が記憶する閾値情報の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る無線通信システムの概略動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の実施形態に係る無線基地局の詳細動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態に係る無線通信システムについて、(1)全体概略構成、(2)無線基地局の構成、(3)閾値情報の一例、(4)無線通信システムの動作、(5)作用・効果、(6)その他の実施形態の順で説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0016】
(1)全体概略構成
まず、本実施形態に係る無線通信システムの概略について、(1.1)無線通信システムの概略構成、(1.2)FFRの一例の順に説明する。
【0017】
(1.1)無線通信システムの概略構成
図1は、本実施形態に係る無線通信システム10の概略構成図である。本実施形態では、説明の便宜上、3つの無線基地局(無線基地局BS1、無線基地局BS2、無線基地局BS3)を有する無線通信システム10について説明するが、無線基地局の数はさらに多くてもよい。
【0018】
無線通信システム10には、複数のキャリアを使用するマルチキャリア通信方式の1つである直交周波数分割多重接続(OFDMA)方式が採用されている。OFDMA方式では、複数のキャリアを用いる通信チャネルが無線端末に動的に割り当てられる。また、通信チャネルは、周波数および時間の組み合わせによって規定される。
【0019】
無線通信システム10においては、送信側および受信側の両方が複数のアンテナを有し、当該複数のアンテナを用いて無線信号を送受信することができる。すなわち、無線通信システム10には、MIMO(Multi-Input Multi-Output)技術が導入されている。
【0020】
MIMO技術では、送信側において複数のアンテナを介して同一の周波数帯を用いる信号系列を複数同時に送信するとともに、受信側において複数のアンテナを介して当該信号系列を受信し、各信号系列に分離する。信号系列の分離に用いられる信号処理技術としては様々な種類のものがあり、より高度な信号分離方式を使用するほど、受信側における干渉除去性能が高くなる。
【0021】
また、送信側が、アダプティブアレー送信をサポートすることがある。アダプティブアレー送信では、送信側は、複数のアンテナによって構成されるアンテナ部(アレーアンテナ)の送信指向性を受信側の方向に向ける。具体的には、複数のアンテナからの電波が空間合成されて、受信側の方向に指向性(電解分布の強い領域)が向けられる。送信側がアダプティブアレー送信をサポートする場合、端末側での受信SINR特性が向上し、より干渉に対する耐性が向上する。
【0022】
無線基地局BS1はセルC1を形成し、無線基地局BS1はセルC2を形成し、無線基地局BS1はセルC3を形成している。セルC1には、無線端末MSが位置している。図1では1つの無線端末MSのみを図示しているが、実際にはセルC1、セルC2およびセルC3のそれぞれにおいて、多数の無線端末が位置している。
【0023】
本実施形態において無線基地局BS1〜BS3は、上述したFFRをベースとしたチャネル割り当てを実行する。FFRでは、各無線基地局は、無線通信に使用可能なリソース(周波数および時間)を多干渉ゾーンと少干渉ゾーンとに分け、これらのゾーンを用いて通信チャネルを構成する。例えば、無線基地局は、ある無線端末には多干渉ゾーンを用いて構成した通信チャネルを割り当て、他の無線端末には少干渉ゾーンを用いて構成した通信チャネルを割り当てる。
【0024】
多干渉ゾーンは、無線基地局BS1〜BS3において周波数および時間が同一のゾーンである。多干渉ゾーンにおける周波数繰り返し使用率RF(Reuse Factor)は1であり、以下においては、当該ゾーンをReuse1ゾーンと称する。少干渉ゾーンは、無線基地局BS1〜BS3において周波数および時間が異なるゾーンである。本実施形態では、少干渉ゾーンにおける周波数繰り返し使用率RFは3であり、以下においては、当該ゾーンをReuse3ゾーンと称する。また、Reuse1ゾーンを用いて構成される通信チャネルを多干渉チャネル(第1通信チャネル)と称し、Reuse3ゾーンを用いて構成される通信チャネルを少干渉チャネル(第2通信チャネル)と称する。
【0025】
以下においては、下りリンク(DL)通信において、無線基地局BS1が無線端末MSに通信チャネルを割り当てる場合について主に説明する。無線基地局BS1は、無線端末MSから通知される受信品質(SINR)などに応じて、無線基地局BS2および無線基地局BS3から干渉の影響を受ける多干渉チャネル、無線基地局BS2および無線基地局BS3から受ける干渉の影響が多干渉チャネルよりも少ない少干渉チャネルのいずれか一方を無線端末MSに割り当てる。
【0026】
(1.2)FFRの一例
次に、図1および図2を用いて、無線通信システム10に適用されるFFRの一例について説明する。図2は、無線基地局BS1がDLのデータ通信に使用するリソース(周波数および時間)の分割例を示している。
【0027】
図2に示すように、無線基地局BS1は、無線基地局BS1〜BS3が時間T1において共通に使用する周波数F0のゾーンをReuse1ゾーンとして設定する。無線基地局BS1は、時間T2における周波数F1のゾーンをReuse3ゾーンとして設定する。時間T2における周波数F2のゾーンは、多の無線基地局、すなわち無線基地局BS2および無線基地局BS3がReuse3ゾーンとして使用するため、無線基地局BS1は使用することができない。
【0028】
図2の例では、無線基地局BS1が使用するReuse3ゾーンは、Reuse1ゾーンよりも小さい。すなわち、Reuse1ゾーンのリソース量は、Reuse3ゾーンのリソース量よりも多い。このため、無線基地局BS1は、Reuse3ゾーンよりもReuse1ゾーンを用いる方が、より多くのリソース(周波数および時間)を無線端末に割り当て可能である。
【0029】
通常のFFRでは、無線基地局BS1は、セルC1の中心付近C1aに位置する受信品質の良好な無線端末に通信チャネルを割り当てる場合、Reuse1ゾーンの未割り当て部分を特定し、特定した未割り当て部分の少なくとも一部からなる多干渉チャネルを割り当てる。また、無線基地局BS1は、セルC1のセルエッジ付近C1bに位置する受信品質の劣悪な無線端末に通信チャネルを割り当てる場合、Reuse3ゾーンの未割り当て部分を特定し、特定した未割り当て部分の少なくとも一部からなる少干渉チャネルを割り当てる。
【0030】
このようなチャネル割り当てに加え、無線基地局BS1は、無線基地局BS1および無線端末MSの干渉除去性能を考慮したチャネル割り当てを行う。例えば、無線基地局BS1は、セルエッジ付近C1bに位置する無線端末MSに通信チャネルを割り当てる場合であっても、無線基地局BS1または無線端末MSの干渉除去性能が高いと判断したときには、多干渉チャネルを無線端末MSに割り当てる。
【0031】
(2)無線基地局の構成
次に、無線基地局BS1の構成について、(2.1)無線基地局の概略構成、(2.2)無線基地局の詳細構成の順に説明する。なお、無線基地局BS2および無線基地局BS3は、無線基地局BS1と同様の構成であるため、無線基地局BS2および無線基地局BS3についての説明は省略する。
【0032】
(2.1)無線基地局の概略構成
図3は、無線基地局BS1の概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、無線基地局BS1は、アンテナ部101、無線通信部110、制御部120、記憶部130およびI/F部140を有する。
【0033】
アンテナ部101は、複数のアンテナを含む。アンテナ部101は、例えばアレーアンテナとして構成される。
【0034】
無線通信部110は、OFDMA方式を用いて、無線端末MSと無線通信を実行する。具体的には、無線通信部110は、低雑音増幅器、パワーアンプ、アップコンバータ、ダウンコンバータおよびベースバンドプロセッサなどを含み、OFDMA方式に従った無線信号の送受信を行う。さらに、無線通信部110は、上述したMIMO技術を用いた信号処理を実行する。
【0035】
制御部120は、例えばCPUによって構成され、無線基地局BS1が具備する各種機能を制御する。記憶部130は、例えばメモリによって構成され、無線基地局BS1における制御などに用いられる各種情報を記憶する。I/F部140は、図示を省略するバックボーンネットワークに有線接続される。
【0036】
(2.2)無線基地局の詳細構成
図4は、無線基地局BS1の詳細構成、具体的には制御部120および記憶部130の機能ブロックを示すブロック図である。図4では、本発明に関連する機能ブロックのみを図示している。
【0037】
図4に示すように、制御部120は、性能判定部121、トラフィック量取得部122、品質取得部123およびチャネル割り当て部125を有する。記憶部130は、閾値情報記憶部131および割り当て情報記憶部132を有する。
【0038】
性能判定部121は、無線端末MSおよび無線基地局BS1のそれぞれにおいて干渉の影響を除去する性能である干渉除去性能を判定する。性能判定部121は、無線端末MSからの通知を元に、無線端末MSの干渉除去性能を判定する。あるいは、性能判定部121は、バックボーンネットワークに接続された管理サーバ(不図示)などからの通知を元に、無線端末MSの干渉除去性能を判定してもよい。無線基地局BS1の干渉除去性能については、予め記憶部130に記憶しておくことで、性能判定部121は、無線基地局BS1の干渉除去性能を判定することができる。
【0039】
トラフィック量取得部122は、無線基地局BS1が無線通信において送受信するトラフィック量(総トラフィック量)を取得する。トラフィック量は、現時点のトラフィック量に限らず、直近1時間のトラフィック量などであってもよい。例えばDL通信において、トラフィック量取得部122は、記憶部130に設けられた送信バッファに蓄積されている未送信データ量を測定することで、トラフィック量を取得することができる。あるいは、トラフィック量取得部122は、無線基地局BS1と無線通信を実行中の無線端末の数をトラフィック量として取得してもよい。
【0040】
品質取得部123は、無線端末MSが無線基地局BS1から受信した無線信号の受信品質を取得する。無線基地局BS1は、無線端末MSにおいて既知の信号(パイロット信号など)を定期的にセルC1内に送信しており、無線端末MSは、当該信号を受信した際の受信品質を測定し、測定した受信品質を無線基地局BS1に通知している。品質取得部123は、当該通知から、無線端末MSにおける受信品質を取得することができる。なお、受信品質としては、上記の信号対干渉雑音電力比(SINR)だけでなく、受信信号電界強度(RSSI)などを用いてもよい。
【0041】
チャネル割り当て部125は、性能判定部121によって判定された干渉除去性能と、トラフィック量取得部122によって取得されたトラフィック量と、品質取得部123によって取得された受信品質とに基づき、多干渉チャネルまたは少干渉チャネルのいずれか一方を無線端末MSに割り当てる。
【0042】
具体的には、チャネル割り当て部125は、性能判定部121によって判定された干渉除去性能が高いほど、少干渉チャネルよりも多干渉チャネルを優先して無線端末MSに割り当てる。また、チャネル割り当て部125は、性能判定部121によって判定された干渉除去性能が低いほど、多干渉チャネルよりも少干渉チャネルを優先して無線端末MSに割り当てる。
【0043】
さらに、チャネル割り当て部125は、閾値制御部126、比較部127および割り当て実行部128を有する。
【0044】
比較部127は、品質取得部123によって取得された受信品質を閾値Thと比較する。閾値制御部126は、性能判定部121によって判定された干渉除去性能と、トラフィック量取得部122によって取得されたトラフィック量とに応じて、閾値Thを制御する。
【0045】
割り当て実行部128は、比較部127による比較結果に応じて、多干渉チャネルまたは少干渉チャネルのいずれか一方を無線端末MSに割り当てる。具体的には、割り当て実行部128は、受信品質が閾値Thを上回る場合に多干渉チャネルを無線端末MSに割り当て、受信品質が閾値Thを下回る場合に少干渉チャネルを無線端末MSに割り当てる。
【0046】
割り当て実行部128は、割り当て情報記憶部132が記憶する割り当て情報を参照して、チャネル割り当てを行う。割り当て情報とは、割り当て済みリソース、または未割り当てリソースに関する情報である。割り当て実行部128は、チャネル割り当てを実行すると、割り当てた通信チャネルのリソースを”割り当て済み”として、割り当て情報を更新する。
【0047】
閾値制御部126は、閾値情報記憶部131が記憶する閾値情報を参照して閾値Thを制御する。閾値制御部126は、干渉除去性能が高いほど閾値を低くし、干渉除去性能が低いほど閾値を高くする。その結果、干渉除去性能が高いほど多干渉チャネルが無線端末MSに割り当てられ易くなり、干渉除去性能が低いほど少干渉チャネルが無線端末MSに割り当てられ易くなる。
【0048】
(3)閾値情報の一例
図5は、閾値情報記憶部131が記憶する閾値情報の一例を示す図である。
【0049】
図5において、「優先度」の項目が高い(値が小さい)ほど、多干渉チャネルが優先される、つまり閾値が低くなることを意味している。
【0050】
最も優先度が高い優先度1は、受信側(無線端末MS)が信号分離方式の1つであるMLD(Maximum Likelihood Detection)をサポートする場合であり、干渉除去性能が最も高い。ただし、送信側(無線基地局BS1)がアダプティブアレー送信をサポートする場合には、さらに干渉除去特性が高くなる。なお、MLDは、すべての信号候補から最尤信号を推定するため、演算量が増大するめ、処理能力の低い無線端末MSでは、MLDを搭載できない。
【0051】
優先度2および3は、送信側(無線基地局BS1)がアダプティブアレー送信をサポートし、受信側(無線端末MS)が信号分離方式の1つであるMMSE(Minimum Mean Square Error)をサポートする場合である。図5において複数アンテナSoundingとは、アダプティブアレー送信の精度を高める技術である。
【0052】
優先度4は、送信側(無線基地局BS1)がアダプティブアレー送信をサポートせず、受信側(無線端末MS)がMMSE(Minimum Mean Square Error)をサポートする場合である。アダプティブアレー送信をサポートしない場合、OFDM変調信号の各系統間のタイミングを変えることで周波数ダイバーシチ効果を得るCDD(Cyclic Delay Diversity)が用いられる。
【0053】
優先度5および6におけるZF(Zero forcing)は、信号分離方式の1つであり、MLDやMMSEよりも干渉除去性能が低いアルゴリズムである。優先度7および8におけるMRC(Maximum Ratio Combining)は、各アンテナが受信した信号を最大比合成するのみのアルゴリズムであり、干渉除去性能が低い。
【0054】
(4)無線通信システムの動作
次に、無線通信システム10の動作について、(4.1)無線通信システムの概略動作、(4.2)無線基地局の詳細動作例の順に説明する。
【0055】
(4.1)無線通信システムの概略動作
図6は、無線通信システム10の概略動作を示すシーケンス図である。
【0056】
ステップS101において、無線端末MSは、無線基地局BS1から受信した無線信号の受信品質を測定する。ここでは無線端末MSは、受信品質として受信SINRを測定するものとする。
【0057】
ステップS102において、無線端末MSは、ステップS101において測定した受信品質(受信SINR)を無線基地局BS1に通知する。その際、無線端末MSは、無線端末MSがサポートする干渉除去アルゴリズム(例えば、MLDまたはMMSEなど)を識別する情報を無線基地局BS1に通知する。ただし、無線端末MSは、このような識別情報に限らず、干渉除去性能の高さを表す値を無線基地局BS1に通知してもよい。
【0058】
ステップS103において、無線基地局BS1は、無線基地局BS1が送受信するトラフィック量を取得する。
【0059】
ステップS104において、無線基地局BS1は、チャネル割り当て処理を実行する。チャネル割り当て処理の詳細については後述する。
【0060】
ステップS105において、無線基地局BS1は、ステップS104で割り当てた通信チャネルを無線端末MSに通知する。ステップS105以降では、無線端末MSに割り当てられた通信チャネルを介して、無線基地局BS1および無線端末MSが無線通信を実行する。
【0061】
(4.2)無線基地局の詳細動作例
図7は、無線基地局BS1の詳細動作、具体的には、図6のステップS104の詳細を示すフローチャートである。
【0062】
ステップS201において、閾値制御部126は、性能判定部121によって判定された干渉除去性能に基づき、無線端末MSおよび無線基地局BS1の両方が干渉除去性能を有していないか否かを判定する。無線端末MSおよび無線基地局BS1の両方が干渉除去性能を有していない場合、閾値制御部126は、予め定められた標準の閾値Thを比較部127に設定する。
【0063】
無線端末MSまたは無線基地局BS1の少なくとも一方が干渉除去性能を有している場合、処理がステップS202に進む。ステップS202において、閾値制御部126は、トラフィック量取得部122によって取得されたトラフィック量が所定量を下回るか否かを判定する。当該トラフィック量が所定量を下回る場合、閾値制御部126は、予め定められた標準の閾値Thを比較部127に設定する。
【0064】
トラフィック量が所定量を超える場合、処理がステップS204に進む。ステップS204において、閾値制御部126は、閾値情報記憶部131が記憶する閾値情報を参照し、性能判定部121によって判定された干渉除去性能に対応する閾値Thを決定する。
【0065】
ステップS205において、閾値制御部126は、トラフィック量取得部122によって取得されたトラフィック量に応じて、ステップS204において決定された閾値Thを調整する。
【0066】
ここで、閾値制御部126は、トラフィック量が多いほど閾値Thを低くし、トラフィック量が少ないほど閾値Thを高くする。その結果、トラフィック量が多いほど多干渉チャネルが割り当てられ易くなり、トラフィック量が少ないほど少干渉チャネルが割り当てられ易くなる。
【0067】
ステップS206において、比較部127は、品質取得部123によって取得された受信品質(受信SINR)を閾値Thと比較する。
【0068】
受信品質(受信SINR)が閾値Thよりも高い場合、ステップS207に処理が進む。ステップS207において、割り当て実行部128は、多干渉チャネルを無線端末MSに割り当てる。
【0069】
受信品質(受信SINR)が閾値Th以下である場合、ステップS208に処理が進む。ステップS208において、割り当て実行部128は、少干渉チャネルを無線端末MSに割り当てる。
【0070】
(5)作用・効果
以上説明したように、チャネル割り当て部125は、無線端末MSまたは無線基地局BS1の少なくとも一方における干渉除去性能が高いほど少干渉チャネルよりも多干渉チャネルを優先して無線端末MSに割り当てる。したがって、無線端末MSまたは無線基地局BS1の干渉除去性能を最大限に発揮し得るチャネル割り当てが可能となり、周波数利用効率およびセルスループットをさらに向上させることができる。
【0071】
本実施形態では、チャネル割り当て部125は、無線端末MSまたは無線基地局BS1の少なくとも一方における干渉除去性能が低いほど多干渉チャネルよりも少干渉チャネルを優先して無線端末MSに割り当てる。このため、無線端末MSまたは無線基地局BS1の干渉除去性能が低い場合には、少干渉チャネルを無線端末MSに割り当てることによって、無線端末MSが安定して無線通信を実行できる。
【0072】
本実施形態では、チャネル割り当て部125は、性能判定部121によって判定された干渉除去性能と、品質取得部123によって取得された受信品質とに基づき、多干渉チャネルまたは少干渉チャネルのいずれか一方を無線端末MSに割り当てる。具体的には、チャネル割り当て部125の閾値制御部126は、干渉除去性能が高いほど、受信品質と比較される閾値を低くし、干渉除去性能が低いほど、当該閾値を高くする。したがって、受信品質および干渉除去性能の両方を考慮したチャネル割り当てが可能となり、周波数利用効率およびセルスループットの向上を実現しつつ、セルエッジ周辺の無線端末における通信品質をより安定化させることができる。
【0073】
本実施形態では、チャネル割り当て部125は、干渉除去性能および受信品質だけでなく、トラフィック量取得部122によって取得されたトラフィック量に基づいてチャネル割り当てを実行する。具体的には、チャネル割り当て部125は、トラフィック量が所定量を下回ると判定した場合、干渉除去性能に基づくチャネル割り当てを省略して、受信品質に基づくチャネル割り当てを実行する。トラフィック量が少ない場合には、従来と同様のチャネル割り当てとすることにより、無線基地局BS1の処理不可を低減することができる。
【0074】
また、チャネル割り当て部125の閾値制御部126は、トラフィック量が多いほど閾値Thを低くし、トラフィック量が少ないほど閾値Thを高くする。すなわち、トラフィック量が多いほど多干渉チャネルが割り当てられ易くなり、トラフィック量が少ないほど少干渉チャネルが割り当てられ易くなる。上記のようにReuse1ゾーンのリソース量がReuse3ゾーンのリソース量よりも多く、かつトラフィック量が多い場合には、Reuse1ゾーンのリソース量が余る一方、Reuse3ゾーンのリソース量が不足する不具合が生じる。したがって、トラフィック量が多い場合には多干渉チャネルを積極的に割り当てることによって、このような不具合を回避できる。
【0075】
(6)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0076】
例えば、上述した実施形態では、チャネル割り当て部125は、性能判定部121によって判定された干渉除去性能と、トラフィック量取得部122によって取得されたトラフィック量と、品質取得部123によって取得された受信品質とに基づき、多干渉チャネルまたは少干渉チャネルのいずれか一方を無線端末MSに割り当てていた。
【0077】
しかしながら、チャネル割り当て部125は、性能判定部121によって判定された干渉除去性能のみに基づいて多干渉チャネルまたは少干渉チャネルのいずれか一方を無線端末MSに割り当てもよい。この場合、チャネル割り当て部125は、干渉除去性能が所定レベルよりも高い場合には多干渉チャネルを割り当て、干渉除去性能が所定レベルよりも低い場合には少干渉チャネルを割り当てればよい。
【0078】
あるいは、チャネル割り当て部125は、トラフィック量を考慮せず、干渉除去性能および受信品質に基づき、多干渉チャネルまたは少干渉チャネルのいずれか一方を無線端末MSに割り当ててもよい。この場合、図7のステップS202およびS205は不要である。
【0079】
上述した実施形態では、無線基地局BS1は、無線基地局BS1および無線端末MSの両方の干渉除去性能を考慮したチャネル割り当てを行っていたが、無線基地局BS1または無線端末MSのいずれか一方のみの干渉除去性能を考慮したチャネル割り当てを行ってもよい。この場合、閾値情報記憶部131が記憶する閾値情報の一例(図5)において、送信側(無線基地局BS1)および受信側(無線端末MS)の両方の項目が設けなくてもよい。
【0080】
上述した実施形態では、主にDLのチャネル割り当てについて説明したが、上りリンク(UL)のチャネル割り当てについても本発明を適用可能である。
【0081】
上述した実施形態では、無線通信システム10の無線通信規格について特に述べていなかったが、例えば、次世代PHS(Personal Handyphone System)、モバイルWiMAX(IEEE802.16e)、3GPPにおいて規格策定中のLTE(Long Term Evolution)、または3GPP2において規格策定中のUMB(Ultra Mobile Broadband)に準拠して無線通信システム10を構成してもよい。
【0082】
なお、上述した各処理手順をコンピュータプログラムとして実装し、当該コンピュータプログラムを無線基地局に実行させることが可能である。
【0083】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0084】
MS…無線端末、BS1〜BS3…無線基地局、10…無線通信システム、101…アンテナ部、110…無線通信部、120…制御部、121…性能判定部、122…トラフィック量取得部、123…品質取得部、125…I/F部、126…閾値制御部、127…比較部、128…実行部、130…記憶部、131…閾値情報記憶部、132…情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉源から干渉の影響を受ける第1通信チャネル、または前記干渉源から受ける干渉の影響が前記第1通信チャネルよりも少ない第2通信チャネルのいずれか一方が基地局によって割り当てられ、割り当てられた通信チャネルを介して前記基地局と無線通信を実行する無線端末であって、
前記無線端末または前記無線基地局の少なくとも一方において干渉の影響を除去する性能である干渉除去性能に基づき、前記無線基地局が割り当てた前記第1通信チャネルまたは前記第2通信チャネルを介して前記無線基地局との無線通信を実行する、無線端末。
【請求項2】
干渉源から干渉の影響を受ける第1通信チャネル、または前記干渉源から受ける干渉の影響が前記第1通信チャネルよりも少ない第2通信チャネルのいずれか一方が基地局によって割り当てられ、割り当てられた通信チャネルを介して前記基地局と無線通信を実行する無線端末の無線通信方法であって、
前記無線端末または前記無線基地局の少なくとも一方において干渉の影響を除去する性能である干渉除去性能に基づき、前記無線基地局が割り当てた前記第1通信チャネルまたは前記第2通信チャネルを介して前記無線基地局との無線通信を実行するステップ、
を備える無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−85277(P2013−85277A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−270901(P2012−270901)
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2008−195535(P2008−195535)の分割
【原出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】