説明

無線端末及び無線通信方法

【課題】アドホック通信網を形成する前に、当該アドホック通信網に接続される接続先広域通信網の利用の可否を認識できる無線端末及び当該無線端末において用いられる無線通信方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る無線端末は、特定事業者によって提供される特定広域通信網と直接通信可能な基地局通信部110と、複数の他の無線端末MS1〜3と第1アドホック通信網AH1を形成可能なアドホック通信部120と、他の無線端末MS1〜3を介して接続される第1接続先広域通信網WAN1を提供する第1接続先事業者が特定事業者と同一であるか否かの判定を行う事業者判定部133とを備える。事業者判定部133は、制御信号に含まれる事業者識別情報に基づいて判定を行い、アドホック通信部120は、第1接続先事業者が特定事業者と同一であると判定された場合、他の無線端末MS1〜3と第1アドホック通信網AH1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アドホック通信網を形成する無線端末及び当該無線端末において用いられる無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LAN(Local Area Network)の一形態として、複数の無線端末によって自律的に形成される無線通信網、いわゆるアドホック通信網が知られている(例えば、特許文献1参照)。アドホック通信網を形成する複数の無線端末は、アドホック通信網内において相互に通信可能である。
【0003】
また、アドホック通信網と、当該アドホック通信網が接続された接続先広域通信網(例えば、携帯電話通信網など)とを含む通信システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。このような接続先広域通信網は、無線基地局、無線ネットワーク制御装置、コアネットワークなどから形成される。アドホック通信網を形成する一の無線端末は、他の無線端末を介して接続先広域通信網と接続することができる。
【特許文献1】特開2005-79827号公報(段落[0023]、第1図)
【特許文献2】特開2003-124876号公報(段落[0049]、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、広域通信網は特定の電気通信事業者によって提供されるため、特定の電気通信事業者との間で予め利用契約を結んだ無線端末だけが広域通信網と接続することができる。
【0005】
従って、上述の通信システムでは、アドホック通信網を形成する複数の無線端末のうち、接続先広域通信網を提供する電気通信事業者である接続先事業者との間で予め利用契約が結ばれた無線端末だけが接続先広域通信網と接続することができる。具体的に、無線端末は、アドホック通信網を形成した後に接続先広域通信網と接続する際、接続先広域通信網に設けられた認証サーバによる認証を受ける必要がある。すなわち、無線端末は、アドホック通信網を形成した後でなければ、当該アドホック通信網が接続された接続先広域通信網との接続の可否を認識することができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、アドホック通信網を形成する前に、当該アドホック通信網に接続される接続先広域通信網との接続の可否を認識できる無線端末及び当該無線端末において用いられる無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、特定の電気通信事業者である特定事業者(特定事業者A,B)によって提供される特定広域通信網と直接通信可能な第1通信部(基地局通信部110)と、一または複数の他の無線端末(他の無線端末MS1〜3)とアドホック通信網(第1アドホック通信網AH)を形成可能な第2通信部(アドホック通信部120)と、他の無線端末を介して接続される接続先広域通信網(第1接続先広域通信網WAN1)を提供する電気通信事業者である接続先事業者(第1接続先事業者)が特定事業者と同一であるか否かの判定を行う判定部(事業者判定部133)とを備え、第2通信部は、他の無線端末から、アドホック通信網の形成に用いられる制御情報を含む制御信号を受信し、判定部は、制御信号に含まれており、接続先事業者を示す事業者識別情報に基づいて判定を行い、第2通信部は、判定部によって接続先事業者が特定事業者と同一であると判定された場合、他の無線端末とアドホック通信網を形成することを要旨とする。
【0008】
このように、無線端末は、他の無線端末とアドホック通信網を形成する前に、接続先事業者が特定事業者と同一であるか否かの判定を行うことができる。従って、無線端末が接続先事業者と利用契約を結んでいない場合には、無線端末が他の無線端末を介して接続される接続先広域通信網を利用できないことを、他の無線端末とアドホック通信網を形成することなく認識することができる。
【0009】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、制御信号は、他の無線端末がアドホック通信網を形成可能な距離に位置することを示すビーコン信号であることを要旨とする。
【0010】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、第2通信部は、事業者識別情報がビーコン信号に含まれていない場合、他の無線端末に対して、制御情報の送信を要求するプローブ要求信号を送信することを要旨とする。
【0011】
本発明の第4の特徴は、本発明の第3の特徴に係り、第2通信部は、他の無線端末がプローブ要求信号に応じて送信するプローブ応答信号を受信し、判定部は、プローブ応答信号に含まれる事業者識別情報に基づいて判定を行うことを要旨とする。
【0012】
本発明の第5の特徴は、本発明の第4の特徴に係り、第2通信部は、事業者識別情報がプローブ応答信号に含まれていない場合、他の無線端末に対して、事業者識別情報の送信を要求する事業者識別情報要求信号を送信することを要旨とする。
【0013】
本発明の第6の特徴は、本発明の第5の特徴に係り、第2通信部は、他の無線端末が事業者識別情報要求信号に応じて送信する事業者識別情報応答信号を受信し、判定部は、事業者識別情報応答信号に含まれる事業者識別情報に基づいて判定を行うことを要旨とする。
【0014】
本発明の第7の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記制御信号は、前記第2通信部より送信される前記制御情報の送信を要求するプローブ要求信号を受信した他の無線端末がプローブ要求信号に応じて送信するプローブ応答信号であることを要旨とする。
【0015】
本発明の第8の特徴は、本発明の第7の特徴に係り、第2通信部は、事業者識別情報がプローブ応答信号に含まれていない場合、他の無線端末に対して、事業者識別情報の送信を要求する事業者識別情報要求信号を送信することを要旨とする。
【0016】
本発明の第9の特徴は、本発明の第8の特徴に係り、第2通信部は、他の無線端末が事業者識別情報要求信号に応じて送信する事業者識別情報応答信号を受信し、判定部は、事業者識別情報応答信号に含まれる事業者識別情報に基づいて判定を行うことを要旨とする。
【0017】
本発明の第10の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、第2通信部が、他の無線端末(他の無線端末MS1〜3)とアドホック通信網(第1アドホック通信網AH1)を形成している場合において、他の無線端末によって送信される制御信号の受信感度と、第2通信部により形成されているアドホック通信網に含まれない新たな無線端末(新たな無線端末MS4〜6)によって送信され、第2通信部により形成されているアドホック通信網とは別の新たなアドホック通信網(第2アドホック通信網AH2)の形成に用いられる新たな制御情報を含む新たな制御信号の受信感度とを比較する比較部(受信感度比較部137)をさらに備え、判定部は、新たな制御信号に含まれており、新たな無線端末を介して接続できる新接続先広域通信網(第2接続先広域通信網WAN2)を提供する電気通信事業者である新接続先事業者(第2接続先事業者)を示す新事業者識別情報に基づいて、新接続先事業者が特定事業者と同一であるか否かの判定を行い、第2通信部は、判定部によって新接続先事業者が特定事業者と同一であると判定されるとともに、比較部によって新たな制御信号の受信感度が制御信号の受信感度より大きいと判断された場合、新たな無線端末と新たなアドホック通信網を形成することを要旨とする。
【0018】
本発明の第11の特徴は、本発明の第10の特徴に係り、新たな制御信号は、第2通信部より送信される新たな制御情報の送信を要求するプローブ要求信号を受信した新たな無線端末がプローブ要求信号に応じて送信するプローブ応答信号であることを要旨とする。
【0019】
本発明の第12の特徴は、本発明の第10の特徴に係り、新たな制御信号は、新たな無線端末が新たなアドホック通信網を形成可能な距離に位置することを示すビーコン信号であることを要旨とする。
【0020】
本発明の第13の特徴は、特定の電気通信事業者である特定事業者によって提供される特定広域通信網と直接通信可能な第1通信部と、一または複数の他の無線端末とアドホック通信網を形成可能な第2通信部とを備える無線端末に用いられる無線通信方法であって、第2通信部が、他の無線端末から、アドホック通信網の形成に用いられる制御情報を含む制御信号を受信するステップと、判定部が、他の無線端末を介して接続できる接続先広域通信網を提供する電気通信事業者である接続先事業者が特定事業者と同一であるか否かの判定を、制御信号に含まれており、接続先事業者を示す事業者識別情報に基づいて行うステップと、第2通信部が、判定部によって接続先事業者が特定事業者と同一であると判定された場合、他の無線端末とアドホック通信網を形成するステップとを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、アドホック通信網を形成する前に、当該アドホック通信網に接続される接続先広域通信網の利用の可否を認識できる無線端末及び当該無線端末において用いられる無線通信方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。具体的には、(1)通信システムの全体概略構成、(2)無線端末の構成、(3)無線端末の動作、(4)作用・効果、(5)その他の実施形態について説明する。
【0023】
なお、以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0024】
(1) 通信システムの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る通信システムの全体概略構成図である。図1に示すように、通信システムは、無線基地局BS1,BS2と、無線端末MS1〜MS10とを含む。
【0025】
無線基地局BS1は、無線端末と直接通信可能なエリアであるサービスエリア(電波到達エリア)SA1を形成する。図1の例において、サービスエリアSA1内に位置する無線端末MS1は、第1接続先広域通信網WAN1に接続される。具体的に、無線端末MS1は、第1接続先広域通信網WAN1に含まれる無線基地局BS1と直接通信する。第1接続先広域通信網WAN1は、無線基地局BS1のほか、無線ネットワーク制御装置RNC(Radio Network Controller)、コア・ネットワークCN(Core Network)などを含む携帯電話通信網である。第1接続先広域通信網WAN1は、第1接続先電気通信事業者(以下、「第1接続先事業者」という。)によって提供される。従って、第1接続先事業者と予め利用契約を結んだ無線端末は、第1接続先広域通信網WAN1と接続、すなわち、無線基地局BS1と直接通信することができる。
【0026】
無線基地局BS2は、無線端末と直接通信可能なエリアであるサービスエリア(電波到達エリア)SA2を形成する。図1の例において、サービスエリアSA2内に位置する無線端末MS4は、第2接続先広域通信網WAN2に接続される。具体的に、無線端末MS4は、第2接続先広域通信網WAN2に含まれる無線基地局BS2と直接通信する。第2接続先広域通信網WAN2は、無線基地局BS2のほか、RNC、CNなどを含む携帯電話通信網である。第2接続先広域通信網WAN2は、第1接続先事業者と異なる第2接続先電気通信事業者(以下、「第2接続先事業者」という。)によって提供される。従って、第2接続先事業者と予め利用契約を結んだ無線端末は、第2接続先広域通信網WAN2と接続、すなわち、無線基地局BS2と通信することができる。
【0027】
本実施形態において、第2接続先広域通信網WAN2は、ゲートウェイGWを介して第1接続先広域通信網WAN1に接続されており、第1接続先事業者と予め利用契約を結んだ無線端末は、第2接続先広域通信網WAN2と接続(ローミング)できることとする。
【0028】
無線端末MS1〜MS3は、第1接続先事業者によって提供される第1接続先広域通信網WAN1と直接通信する機能と、少なくとも一つの他の無線端末との間で第1アドホック通信網AH1を形成する機能とを備える。無線端末MS1〜MS3は、第1接続先事業者との間で予め利用契約が結ばれている。
【0029】
無線端末MS4〜MS6は、第2接続先事業者によって提供される第2接続先広域通信網WAN2と直接通信する機能と、少なくとも一つの他の無線端末との間で第2アドホック通信網AH2を形成する機能とを備える。無線端末MS4〜MS6は、第2接続先事業者との間で予め利用契約が結ばれている。
【0030】
無線端末MS1〜MS3によって自律的に形成される第1アドホック通信網AH1は、無線基地局BS1と直接通信する無線端末MS1を最上位とした木構造を有する。第1アドホック通信網AH1は、第1接続先事業者によって提供される第1接続先広域通信網WAN1に接続される。従って、無線端末MS2,MS3は、無線端末MS1を介して第1接続先広域通信網WAN1と接続することができる。
【0031】
また、無線端末MS4〜MS6によって自律的に形成される第2アドホック通信網AH2は、無線基地局BS2と直接通信する無線端末MS4を最上位とした木構造を有する。第2アドホック通信網AH2は、第2接続先事業者によって提供される第2接続先広域通信網WAN2に接続される。従って、無線端末MS5,MS6は、無線端末MS4を介して第2接続先広域通信網WAN2と接続することができる。
【0032】
無線端末MS10は、予め利用契約が結ばれた特定電気通信事業者(以下、「特定事業者」という。図9参照。)によって提供される特定広域通信網と直接通信する機能と、無線端末MS1〜MS6のうち少なくとも一の無線端末と自律的にアドホック通信網を形成する機能とを備える。本実施形態において、無線端末MS10は、図1に示すように、位置Xから位置Yを経て位置Zへと移動する。このように、無線端末MS10は、サービスエリアSA1,SA2外に位置するため、第1接続先広域通信網WAN1及び第2接続先広域通信網WAN2と直接通信することはできない。そのため、無線端末MS10は、無線端末MS1〜6のいずれかを介して、第1接続先広域通信網WAN1又は第2接続先広域通信網WAN2との接続を希望するものとする。
【0033】
なお、無線端末MS1〜MS10は、同様の構成であるため、以下の説明では、無線端末MS1〜MS10を無線端末MSと適宜総称する。また、以下の説明では、第1接続先広域通信網WAN1と第2接続先広域通信網WAN2を接続先広域通信網WANと併称し、第1アドホック通信網AH1と第2アドホック通信網AH2をアドホック通信網AHと併称する。
【0034】
(2) 無線端末の構成
次に、図2乃至図4を参照しながら、無線端末MSの構成について説明する。具体的には、(2.1)無線端末のハードウェア構成、(2.2)無線端末の機能ブロック構成について説明する。
【0035】
(2.1) 無線端末のハードウェア構成
図2は、無線端末MSのハードウェア構成図である。図2に示すように、無線端末MSは、基地局通信部110、アドホック通信部120、制御部130、マイク141、スピーカ142、表示部143、入力部144を含む。
【0036】
基地局通信部110は、無線端末MSが予め利用契約が結ばれた特定事業者によって提供される特定広域通信網と直接通信できる。具体的に、基地局通信部110は、例えばCDMA方式に従った無線信号(RF信号)を無線基地局BSと送受信する。また、基地局通信部110は、無線信号とベースバンド信号との変換を実行し、ベースバンド信号を制御部130と送受信する。
【0037】
アドホック通信部120は、一または複数の他の無線端末MSとの間でアドホック通信網AHを形成することができる。具体的に、アドホック通信部120は、例えば無線LAN(IEEE802.11など)又はBluetooth(登録商標)に従った無線信号(RF信号)を一または複数の他の無線端末MSと送受信する。アドホック通信部120は、無線信号(制御信号と情報信号とを含む)とベースバンド信号との変換を実行し、ベースバンド信号を制御部130と送受信する。
【0038】
マイク141は、音声を電気信号に変換し、当該電気信号を制御部130に入力する。スピーカ142は、制御部130からの電気信号を音声に変換し、当該音声を出力する。
【0039】
表示部143は、制御部130を介して受信した画像や、操作内容(入力電話番号やアドレスなど)を表示する。入力部144は、テンキーやファンクションキーなどによって構成され、ユーザの操作を受付ける。
【0040】
制御部130は、CPUやメモリによって構成され、無線端末MSが具備する各種機能を制御する。メモリは、無線端末MSにおける制御などに用いられる各種情報を記憶する。制御部130とアドホック通信部120とが協働することにより、アドホック通信網AHを介して、アドホック通信網AHに接続された接続先広域通信網WANと通信することができる。
【0041】
基地局通信部110は、アンテナ111、基地局通信用RF処理部112、符号化部113及び復号部114を含む。基地局通信用RF処理部112は、アンテナ111を介して入力される無線信号の増幅及びダウンコンバートを実行し、ベースバンド信号を生成する。符号化部113は、制御部130からのベースバンド信号を符号化する。基地局通信用RF処理部112は、符号化されたベースバンド信号のアップコンバート及び増幅を実行する。これにより、無線信号が生成される。生成された無線信号は、アンテナ111を介して外部に送出される。復号部114は、生成されたベースバンド信号を復号し、復号したベースバンド信号を制御部130に入力する。
【0042】
アドホック通信部120は、アンテナ121、アドホック通信用RF処理部122、符号化部123及び復号部124を含む。アンテナ121、アドホック通信用RF処理部122、符号化部123、及び復号部124は、それぞれ、アンテナ111、基地局通信用RF処理部112、符号化部113、及び復号部114と同様の機能を有するため、説明を省略する。アドホック通信部120は、アドホック通信網AHの形成に用いられる制御情報を含む制御信号の送受信を行う。
【0043】
(2.2) 無線端末の機能ブロック構成
図3は、制御部130によって実行される各機能を示すブロック図である。なお、以下においては、本発明に関連する点について主に説明する。
【0044】
図3に示すように、制御部130は、制御信号処理部131、事業者判定部133、事業者記憶部134、SSID記憶部135、通信制御部136、受信感度比較部137、及びハンドオフ制御部138を含む。
【0045】
制御信号処理部131は、アドホック通信部120が他の無線端末MSとの間で送受信する制御信号を取得又は生成する。
【0046】
ここで、制御信号は、ビーコン信号、プローブ要求信号、プローブ応答信号、事業者識別情報要求信号、事業者識別情報応答信号を含む。以下、IEEE802.11b規格に準拠した制御信号を例として説明する。
【0047】
〈1〉ビーコン信号
ビーコン信号は、一の無線端末MSがアドホック通信網AHを形成可能な距離に位置していることを示す。無線端末MSは、自律的にランダムにビーコン信号を報知する。ビーコン信号は、アドホック通信網AHとの通信に用いられる制御情報を含む。
【0048】
図4は、ビーコン信号に含まれる情報要素を示す。同図に示すように、ビーコン信号は、SSID(Service Set ID)フィールド、Capability informationフィールド、WAN informationフィールドなどを含む。SSIDフィールドには、アドホック通信網AHを識別するための識別子が格納される。すなわち、無線端末MSは、SSIDフィールドに基づき、ビーコン信号を報知する無線端末MSが形成しているアドホック通信網AHを識別することができる。
【0049】
図5は、Capability informationフィールドに含まれる情報要素を示す。Capability informationフィールドは、ビーコン信号にWAN informationフィールドが含まれているか否かを示すWAN information includeフィールドを含む。ビーコン信号にWAN informationフィールドが含まれる場合におけるWAN information includeフィールドのレコード値は1である。一方、ビーコン信号にWAN informationフィールドが含まれない場合におけるWAN information includeフィールドのレコード値は0である。
【0050】
図6は、WAN informationフィールドに含まれる情報要素を示す。WAN informationフィールドは、Area CodeフィールドとCarrier Codeフィールドとを含む。Area CodeフィールドとCarrier Codeフィールドのフィールド長は、それぞれ8ビットである。
【0051】
Area Codeフィールドには、アドホック通信網AHに接続された接続先広域通信網WANが提供される地域(例えば、国名や国内の地域名)を示す情報が格納される。
【0052】
Carrier Codeフィールドには、アドホック通信網AHが接続された接続先広域通信網WANを提供する電気通信事業者である接続先事業者(第1接続先事業者又は第2接続先事業者)を示す事業者識別情報が格納される。無線端末MSは、Carrier Codeフィールド、すなわち事業者識別情報に基づき、アドホック通信網AHが接続された接続先広域通信網WANを提供する接続先事業者を認識できる。なお、WAN informationフィールドにおいて、Carrier Codeフィールドは必須要素であるのに対して、Area Codeフィールドは任意要素である。
【0053】
ここで、ビーコン信号において、WAN informationフィールドは任意要素である。すなわち、無線端末MSは、WAN informationフィールドを含まないビーコン信号を生成できる。
【0054】
また、Carrier Codeフィールドは、アドホック通信網AHの最上位に位置する無線端末MS(図1では、無線端末MS1,MS4)によって生成される。アドホック通信網AHの下位に位置する無線端末MSは、最上位に位置する無線端末MSから受信したCarrier CodeフィールドをWAN informationフィールドに格納できる。
【0055】
〈2〉プローブ要求信号
プローブ要求信号は、アドホック通信網AHとの通信に用いる制御情報の送信を要求するための制御信号である。無線端末MSは、アドホック通信網AHを形成可能な距離に位置する他の無線端末MSに対してプローブ要求信号を送信する。従って、プローブ要求信号は、アドホック通信網AHを形成可能な無線端末MSが周辺に存在するか否かを確認するためにも用いることができる。
【0056】
図7(a)は、プローブ要求信号に含まれる情報要素を示す。プローブ要求信号は、上述のSSIDフィールドを含む。
【0057】
無線端末MSは、現在、アドホック通信網AHを形成しているか否かに関わらず、プローブ要求信号を任意の時期(周期的な時期を含む)に送信することができる。
【0058】
〈3〉プローブ応答信号
プローブ応答信号は、無線端末MSがプローブ要求信号を受信した場合に、プローブ要求信号に応答する制御信号である。図7(b)は、プローブ応答信号に含まれる情報要素を示す。同図に示すように、プローブ応答信号に含まれる情報要素は、ビーコン信号に含まれる制御情報と同様である。すなわち、プローブ応答信号は、SSIDフィールド、Capability informationフィールド、及びWAN informationフィールドを含む。
【0059】
ここで、プローブ応答信号において、WAN informationフィールドは任意要素である。無線端末MSは、WAN informationフィールドを含まないプローブ応答信号を生成してもよい。
【0060】
〈4〉事業者識別情報要求信号
事業者識別情報要求信号は、無線端末MSが、アドホック通信網AHを形成可能な距離に位置する他の無線端末MSに対して送信する制御信号である。プローブ応答信号を受信した無線端末MSは、プローブ応答信号にWAN informationフィールドが含まれていない場合に事業者識別情報要求信号を送信する。すなわち、事業者識別情報要求信号は、WAN informationフィールドに含まれるCarrier Codeフィールドの送信を要求する制御信号である。
【0061】
図8(a)は、事業者識別情報要求信号に含まれる情報要素を示す。なお、Carrier Codeフィールドは、上述の通り、アドホック通信網AHに接続された接続先広域通信網WANを提供する接続先事業者を識別する事業者識別情報である。
【0062】
〈5〉事業者識別情報応答信号
事業者識別情報応答信号は、事業者識別情報要求信号を受信した無線端末MSが、事業者識別情報要求信号に応じて送信する制御信号である。図8(b)は、事業者識別情報応答信号に含まれる情報要素を示す。同図に示すように、事業者識別情報応答信号は、WAN informationフィールドを含む。WAN informationフィールドは、事業者識別情報であるCarrier Codeフィールドを必須要素として含む。
【0063】
以上のような各制御信号を、制御信号処理部131は取得又は生成する。制御信号処理部131は、制御信号からSSIDフィールドに格納されたSSID情報と、Carrier Codeフィールドに格納された事業者識別情報とを抽出し、事業者判定部133へ出力する。
【0064】
事業者判定部133は、制御信号処理部131から入力された事業者識別情報によって示される接続先事業者が、特定事業者と同一であるか否かを判定する。具体的には、事業者識別情報によって示される接続先事業者が、後述する事業者記憶部134の格納テーブルに記憶されているか否かを判定する。事業者判定部133は、接続先事業者が特定事業者と同一である場合、その旨を通信制御部136に通知する。また、この場合、事業者判定部133は、制御信号処理部131から入力されたSSID情報をSSID記憶部135に格納する。
【0065】
事業者記憶部134には、無線端末MSが予め利用契約を結んだ特定事業者に関する情報が格納されている。ここで、特定事業者には、利用契約が直接結ばれた電気通信事業者のほか、当該利用契約に基づいてローミング可能な電気通信事業者をも含む。図9に示すように、本実施形態に係る事業者記憶部134の格納テーブルには、利用契約が直接結ばれた特定事業者Aと、特定事業者Aとの利用契約に基づきローミング可能な特定事業者Bとが格納されている。従って、事業者判定部133は、事業者識別情報によって示される接続先事業者が、特定事業者Aまたは特定事業者Bと同一であるか否かを判定する。なお、格納テーブルには、図9に示すように、特定事業者Bが提供する特定広域通信網WANとの接続に課金が別途必要とされる旨が記憶されている。
【0066】
通信制御部136は、無線端末MSがアドホック通信網AHを形成していない場合において、接続先事業者が特定事業者と同一である旨の通知を事業者判定部133から受けたとき、制御信号処理部131に対して、アドホック通信網AHの形成を要求するアドホック要求信号の生成を指示する。
【0067】
また、通信制御部136は、無線端末MSがアドホック通信網AHを形成している場合において、後述するハンドオフ制御部138からハンドオフの指示を受けたとき、制御信号処理部131に対して、新たなアドホック通信網AHの形成を要求するアドホック要求信号の生成を指示する。
【0068】
受信感度比較部137は、無線端末MS10が他の無線端末MS1〜3と第1アドホック通信網AH1を形成している場合において、新たな無線端末MS4〜6から新たな制御信号を受信したとき、他の無線端末MS1〜3から送信される制御信号の受信感度と新たな無線端末MS4〜6から送信される新たな制御信号の受信感度とを比較する。受信感度比較部137は、新たな無線端末MS4〜6から送信される新たな制御信号の受信感度が他の無線端末MS1〜3から送信される制御信号の受信感度より大きい場合、その旨をハンドオフ制御部138に通知する。
【0069】
ハンドオフ制御部138は、受信感度比較部137からの通知に基づき、新たな無線端末MS4〜6と新たに第2アドホック通信網AH2を形成すべき旨を通信制御部136に通知する。
【0070】
通信中継部139は、無線端末MSがアドホック通信網AHを形成している場合、他の無線端末MS間で送受信されるデータ(パケット)を中継する。
【0071】
(3) 無線端末の動作
次に、図10〜図11を用いて、無線端末MS10の動作について説明する。具体的には、図1における位置Xから位置Zへの無線端末MS10の移動に伴って実行される、(3.1)アドホック通信網の形成動作、及び(3.2)ハンドオフ動作について説明する。
【0072】
(3.1) アドホック通信網の形成動作
図10は、無線端末MS10が位置Xから位置Yへ移動した場合、無線端末MS10によって実行される第1アドホック通信網AH1の形成動作を示すフローチャートである。無線端末MS10は、他の無線端末MS1〜3によって形成される第1アドホック通信網AH1へ新たに加入する。
【0073】
ステップS101において、無線端末MS10は、他の無線端末MS1〜3からビーコン信号を受信したか否かを判定する。他の無線端末MS1〜3からビーコン信号を受信した場合、ステップS102において、無線端末MS10は、ビーコン信号にWAN informationフィールドが含まれているか否かを判定する。一方、他の無線端末MS1〜3からビーコン信号を受信しない場合、ステップS103において、無線端末MS10は、プローブ要求信号を他の無線端末MS1〜3に対して送信(報知)する。
【0074】
ステップS102において、ビーコン信号にWAN informationフィールドが含まれる場合、処理は後述するステップS108に移行する。一方、ビーコン信号にWAN informationフィールドが含まれない場合、処理はステップS103に移行する。
【0075】
ステップS104において、無線端末MS10は、他の無線端末MS1〜3がプローブ要求信号に応じて送信するプローブ応答信号を受信したか否かを判定する。プローブ応答信号を受信した場合、処理はステップS105に移行する。プローブ応答信号を受信しない場合、処理はステップS101に戻る。
【0076】
ステップS105において、無線端末MS10は、プローブ応答信号にWAN informationフィールドが含まれるか否かを判定する。プローブ応答信号にWAN informationフィールドが含まれる場合、処理はステップS108に移行する。一方、プローブ応答信号にWAN informationフィールドが含まれない場合、無線端末MS10は、ステップS106において、事業者識別情報要求信号を他の無線端末MS1〜3に送信し、ステップS107において、事業者識別情報応答信号を他の無線端末MS1〜3のいずれかから受信する。
【0077】
ステップS108において、無線端末MS10は、WAN informationフィールドに含まれるCarrier Codeフィールドによって示される接続先事業者が、予め利用契約を結んだ特定事業者と同一であるか否かを判定する。接続先事業者が特定事業者と同一である場合、ステップS109において、無線端末MS10は、第1アドホック通信網AH1への加入を要求するアドホック要求信号を他の無線端末MS1〜3に対して送信する。接続先事業者が特定事業者と同一でない場合、処理はステップS101に戻る。
【0078】
なお、本実施形態では、図9に示す特定事業者Aが第1接続先事業者と同一であるため、無線端末MS10は、他の無線端末MS1〜3に対してアドホック要求信号を送信する。
【0079】
(3.2) ハンドオフ動作
図11は、無線端末MS10が位置Yから位置Zへ移動した場合において、無線端末MS10によって実行される第1アドホック通信網AH1から第2アドホック通信網AH2へのハンドオフ動作を示すフローチャートである。
【0080】
ステップS201において、無線端末MS10は、アドホック通信網AHを形成可能な距離に位置する無線端末MSに対して、周期的にプローブ要求信号を送信する。
【0081】
ステップS202において、無線端末MS10は、プローブ要求信号を受信した無線端末MSがプローブ要求信号に応じて送信するプローブ応答信号を受信したか否かを判定する。プローブ応答信号を受信した場合、処理はステップS203に移行する。一方、プローブ応答信号を受信しない場合、アドホック通信網AHを形成可能な距離に位置する無線端末MSが存在しないものとして処理は終了する。
【0082】
ステップS203において、プローブ応答信号にWAN informationフィールドが含まれるか否かを判定する。プローブ応答信号にWAN informationフィールドが含まれる場合、処理はステップS206に移行する。一方、プローブ応答信号にWAN informationフィールドが含まれない場合、処理はステップS204に移行する。
【0083】
ステップS204において、無線端末MS10は、無線端末MSからビーコン信号を受信したか否かを判定する。ビーコン信号を受信した場合、ステップS205において、無線端末MS10は、ビーコン信号にWAN informationフィールドが含まれるか否かを判定する。一方、ビーコン信号を受信しない場合、処理はステップS201に戻る。
【0084】
ステップS205において、ビーコン信号にWAN informationフィールドが含まれる場合、処理はステップS206に移行する。一方、ビーコン信号にWAN informationフィールドが含まれない場合、処理はステップS201に戻る。
【0085】
ステップS206において、無線端末MS10は、プローブ応答信号又はビーコン信号に格納されたSSIDフィールドを確認することにより、無線端末MS10が加入している第1アドホック通信網AH1を形成する他の無線端末MS1〜3から送信されていないかを判定する。プローブ応答信号又はビーコン信号が他の無線端末MS1〜3から送信された場合、処理はステップS201に戻る。プローブ応答信号又はビーコン信号が新たな第2アドホック通信網AH2を形成する新たな無線端末MS4〜6から送信された場合、処理はステップS207へ移行する。
【0086】
ステップS207において、無線端末MS10は、WAN informationフィールドに含まれるCarrier Codeフィールドによって示される接続先事業者が、予め利用契約を結んだ特定事業者と同一であるか否かを判定する。接続先事業者が特定事業者と同一である場合、処理はステップS208に移行する。一方、接続先事業者が特定事業者と同一でない場合、処理はステップS201に戻る。本実施形態では、図9に示す特定事業者Bが第2接続先事業者と同一であるため、処理はステップS208に移行する。
【0087】
ステップS208において、第1アドホック通信網AH1を形成する他の無線端末MS1〜3から送信される制御信号の受信感度と、第2アドホック通信網AH2を形成する新たな無線端末MS4〜6から送信される制御信号との受信感度を比較する。新たな無線端末MS4〜6から送信される制御信号の受信感度が、他の無線端末MS1〜3から送信される制御信号の受信感度よりも大きい場合、ステップS209において、無線端末MS10は、新たな無線端末MS4〜6に対してアドホック要求信号を送信する。一方、新たな無線端末MS4〜6から送信される制御信号の受信感度が、他の無線端末MS1〜3から送信される制御信号の受信感度よりも小さい場合、処理はステップS201に戻る。
【0088】
(4) 作用・効果
本実施形態によれば、無線端末MS10は、特定事業者A又はBによって提供される特定広域通信網と直接通信する機能と、一または複数の他の無線端末MS1〜3と第1アドホック通信網AH1を形成する機能とを有する。無線端末MS10は、他の無線端末MS1〜3から受信するビーコン信号に含まれる事業者識別情報に基づいて、他の無線端末MS1〜3を介して接続される第1接続先広域通信網WAN1を提供する第1接続先事業者が特定事業者A又はBと同一であるか否かの判定を行う。無線端末MS10は、第1接続先事業者が特定事業者A又はBと同一であると判定された場合、他の無線端末1〜3と第1アドホック通信網AH1を形成する。
【0089】
このように、無線端末MS10は、他の無線端末1〜3と第1アドホック通信網AH1を形成する前に、第1接続先事業者が特定事業者と同一であるか否かの判定を行うことができる。従って、無線端末MS10が第1接続先事業者と利用契約を結んでいない場合には、無線端末MS10が他の無線端末MS1〜3を介して接続される第1接続先広域通信網WAN1を利用できないことを、他の無線端末1〜3と第1アドホック通信網AH1を形成することなく認識できる。その結果、無線端末MS10が、第1接続先広域通信網WAN1への接続が拒否されるにもかかわらず、アドホック通信網AH1を形成することを回避できる。
【0090】
また、本実施形態によれば、無線端末MS10は、事業者識別情報がビーコン信号に含まれていない場合、他の無線端末MS1〜3に対して、制御情報の送信を要求するプローブ要求信号を送信する。従って、無線端末MS10は、他の無線端末MS1〜3がプローブ要求信号に応じて送信するプローブ応答信号に含まれる事業者識別情報に基づいて判定を行うことができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、無線端末MS10は、事業者識別情報がプローブ応答信号に含まれていない場合、他の無線端末MS1〜3に対して、事業者識別情報の送信を要求する事業者識別情報要求信号を送信する。従って、無線端末MS10は、他の無線端末MS1〜3が事業者識別情報要求信号に応じて送信する事業者識別情報応答信号によって、事業者識別情報を確実に取得することができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、無線端末MS10が他の無線端末MS1〜3と第1アドホック通信網AH1を形成している場合において、新たな無線端末MS4〜6から新たな制御信号を受信したとき、無線端末MS10は、新たな無線端末MS4〜6を介して接続できる第2接続先広域通信網WAN2を提供する第2接続先事業者が特定事業者と同一であると判定されるとともに、新たな無線端末MS4〜6から受信する新たな制御信号の受信感度が他の無線端末MS1〜3から受信する新たな制御信号の受信感度より大きいと判断された場合、新たな無線端末MS4〜6と新たに第2アドホック通信網AH2を形成する。
【0093】
従って、無線端末MS10は、通信環境のより良い第2アドホック通信網AH2へハンドオフする際においても、新たな無線端末MS4〜6を介して接続される第2接続先広域通信網WAN2の利用の可否を、新たな無線端末4〜6と第2アドホック通信網AH2を形成することなく認識することができる。その結果、無線端末MS10が、接続先広域通信網への接続が拒否されるにもかかわらず、ハンドオフすることを回避することができる。
【0094】
(5) その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0095】
上述した実施形態において、無線端末MS10は、他の無線端末MS1〜3によって送信されるビーコン信号の受信したか否かを判定することとしたが、無線端末MS10は、ビーコン信号の受信を待たずに、アドホック通信網AHを形成可能な距離に位置する無線端末MSに対して、定期的にプローブ要求信号を報知してもよい。
【0096】
上述した実施形態において、無線端末MS10は、複数の他の無線端末MS1〜3と第1アドホック通信網AH1を形成することとしたが、無線端末MS10は、一の他の無線端末MS1のみと第1アドホック通信網AH1を形成することができる。同様に、無線端末MS10は、一の新たな無線端末MS4のみと第2アドホック通信網AH2を形成することができる。
【0097】
上述した実施形態において、無線端末MS10は、アドホック通信網AHを示す識別してSSIDフィールドを用いたが、SSIDフィールドの代わりにBSSID(Basic Service Set Identifier)フィールドを用いてもよい。
【0098】
図1の例においては無線端末MSとして携帯電話端末を例示したが、無線通信機能を有するノートPC又はパーソナル・デジタル・アシスタンス(PDA)等であっても構わない。また、可搬型の無線端末に限らず、固定型の無線端末を含むアドホック通信網AHが構成されてもよい。
【0099】
なお、上記のアドホック通信網構築動作においては、DSR(Dynamic Source Routing)又はAODV(Ad-hoc On-Demand Vector Routing)などの既存のルーティングプロトコルを使用可能である。
【0100】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線端末MSのハードウェア構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る無線端末MSの機能ブロック構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係るビーコン信号に含まれる情報要素を示す。
【図5】本発明の実施形態に係るビーコン信号のCapability informationフィールドに含まれる情報要素を示す。
【図6】本発明の実施形態に係るビーコン信号のWAN informationフィールドに含まれる情報要素を示す。
【図7】本発明の実施形態に係るプローブ要求信号及びプローブ応答信号に含まれる情報要素を示す。
【図8】本発明の実施形態に係る事業者識別情報要求信号及び事業者識別情報応答信号に含まれる情報要素を示す。
【図9】本発明の実施形態に係る事業者記憶部134の格納テーブルを示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る無線端末MS10によって実行される第1アドホック通信網AH1の形成動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る無線端末MS10によって実行される第1アドホック通信網AH1から第2アドホック通信網AH2へのハンドオフ動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
A,B…特定事業者
AH…アドホック通信網
BS…無線基地局
GW…ゲートウェイ
MS…無線端末
WAN…接続先広域通信網
110…基地局通信部
111…アンテナ
112…処理部
113…符号化部
114…復号部
120…アドホック通信部
121…アンテナ
122…処理部
123…符号化部
124…復号部
130…制御部
131…制御信号処理部
133…事業者判定部
134…事業者記憶部
135…SSID記憶部
136…通信制御部
137…受信感度比較部
138…ハンドオフ制御部
139…通信中継部
141…マイク
142…スピーカ
143…表示部
144…入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の電気通信事業者である特定事業者によって提供される特定広域通信網と直接通信可能な第1通信部と、
一または複数の他の無線端末とアドホック通信網を形成可能な第2通信部と、
前記他の無線端末を介して接続される接続先広域通信網を提供する電気通信事業者である接続先事業者が前記特定事業者と同一であるか否かの判定を行う判定部と
を備え、
前記第2通信部は、前記他の無線端末から、前記アドホック通信網の形成に用いられる制御情報を含む制御信号を受信し、
前記判定部は、前記制御信号に含まれており、前記接続先事業者を示す事業者識別情報に基づいて前記判定を行い、
前記第2通信部は、前記判定部によって前記接続先事業者が前記特定事業者と同一であると判定された場合、前記他の無線端末と前記アドホック通信網を形成する
ことを特徴とする無線端末。
【請求項2】
前記制御信号は、前記他の無線端末が前記アドホック通信網を形成可能な距離に位置することを示すビーコン信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末。
【請求項3】
前記第2通信部は、前記事業者識別情報が前記ビーコン信号に含まれていない場合、前記他の無線端末に対して、前記制御情報の送信を要求するプローブ要求信号を送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線端末。
【請求項4】
前記第2通信部は、前記他の無線端末が前記プローブ要求信号に応じて送信するプローブ応答信号を受信し、
前記判定部は、前記プローブ応答信号に含まれる前記事業者識別情報に基づいて前記判定を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の無線端末。
【請求項5】
前記第2通信部は、前記事業者識別情報が前記プローブ応答信号に含まれていない場合、前記他の無線端末に対して、前記事業者識別情報の送信を要求する事業者識別情報要求信号を送信する
ことを特徴とする請求項4に記載の無線端末。
【請求項6】
前記第2通信部は、前記他の無線端末が前記事業者識別情報要求信号に応じて送信する事業者識別情報応答信号を受信し、
前記判定部は、前記事業者識別情報応答信号に含まれる前記事業者識別情報に基づいて前記判定を行う
ことを特徴とする請求項5に記載の無線端末。
【請求項7】
前記制御信号は、前記第2通信部より送信される前記制御情報の送信を要求するプローブ要求信号を受信した前記他の無線端末が前記プローブ要求信号に応じて送信するプローブ応答信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末。
【請求項8】
前記第2通信部は、前記事業者識別情報が前記プローブ応答信号に含まれていない場合、前記他の無線端末に対して、前記事業者識別情報の送信を要求する事業者識別情報要求信号を送信する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線端末。
【請求項9】
前記第2通信部は、前記他の無線端末が前記事業者識別情報要求信号に応じて送信する事業者識別情報応答信号を受信し、
前記判定部は、前記事業者識別情報応答信号に含まれる前記事業者識別情報に基づいて前記判定を行う
ことを特徴とする請求項8に記載の無線端末。
【請求項10】
前記第2通信部が、前記他の無線端末と前記アドホック通信網を形成している場合において、
前記他の無線端末によって送信される前記制御信号の受信感度と、前記第2通信部により形成されている前記アドホック通信網に含まれない新たな無線端末によって送信され、前記第2通信部により形成されている前記アドホック通信網とは別の新たなアドホック通信網の形成に用いられる新たな制御情報を含む新たな制御信号の受信感度とを比較する比較部をさらに備え、
前記判定部は、前記新たな制御信号に含まれており、前記新たな無線端末を介して接続される新接続先広域通信網を提供する電気通信事業者である新接続先事業者を示す新事業者識別情報に基づいて、前記新接続先事業者が前記特定事業者と同一であるか否かの判定を行い、
前記第2通信部は、前記判定部によって前記新接続先事業者が前記特定事業者と同一であると判定されるとともに、前記比較部によって前記新たな制御信号の受信感度が前記制御信号の受信感度より大きいと判断された場合、前記新たな無線端末と前記新たなアドホック通信網を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末。
【請求項11】
前記新たな制御信号は、前記第2通信部より送信される前記新たな制御情報の送信を要求するプローブ要求信号を受信した前記新たな無線端末が前記プローブ要求信号に応じて送信するプローブ応答信号である
ことを特徴とする請求項10に記載の無線端末。
【請求項12】
前記新たな制御信号は、前記新たな無線端末が前記新たなアドホック通信網を形成可能な距離に位置することを示すビーコン信号である
ことを特徴とする請求項10に記載の無線端末。
【請求項13】
特定の電気通信事業者である特定事業者によって提供される特定広域通信網と直接通信可能な第1通信部と、一または複数の他の無線端末とアドホック通信網を形成可能な第2通信部とを備える無線端末に用いられる無線通信方法であって、
前記第2通信部が、前記他の無線端末から、前記アドホック通信網の形成に用いられる制御情報を含む制御信号を受信するステップと、
判定部が、前記他の無線端末を介して接続できる接続先広域通信網を提供する電気通信事業者である接続先事業者が前記特定事業者と同一であるか否かの判定を、前記制御信号に含まれており、前記接続先事業者を示す事業者識別情報に基づいて行うステップと、
前記第2通信部が、前記判定部によって前記接続先事業者が前記特定事業者と同一であると判定された場合、前記他の無線端末と前記アドホック通信網を形成するステップと
を備えることを特徴とする無線端末に用いられる無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−159523(P2009−159523A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338113(P2007−338113)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】