説明

無線端末装置及び通信制御方法

【課題】利便性の低下を抑制しつつ、消費電力を低減できる無線端末装置及び通信制御方法を提供すること。
【解決手段】スマートフォン1は、WiMAXにより無線通信を行う通信処理部61Bと、タッチスクリーンディスプレイ2と、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオフの状態において、WiMAXにおけるデータ通信のセッションが切断された場合、通信処理部61Bを、スリープモードへ遷移させるコントローラ10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力状態へ遷移可能な無線端末装置及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォン又はタブレット端末等、タッチスクリーンディスプレイを備える無線端末装置が知られている。これらの無線端末装置は、高機能化に伴ってアプリケーションの実行、表示及び通信等に多くの電力を必要とする傾向にあるため、特に携帯型の無線端末装置では、ユーザの利便性を低下させることなく消費電力を低減させることが求められている。
【0003】
このような状況において、無線端末装置において消費電力を低減させる技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、無線端末装置では、設定によっては、スクリーンがオフになると装置本体が省電力のスリープ状態へ遷移する機能が設けられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−49875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無線端末装置は、例えば、WiMAXに接続中(アクティブ状態若しくはアイドル状態)又はサーチ中は、スクリーンがオフになった場合にも、利便性を優先し、接続中又はサーチ中の状態を継続する。
【0006】
しかしながら、スクリーンがオフになった場合、再びスクリーンがオンになるまでは、ユーザ操作が行われないため、データ通信が新たに発生する可能性は低い。したがって、無用に電力が消費されるおそれがあった。
【0007】
本発明は、利便性の低下を抑制しつつ、消費電力を低減できる無線端末装置及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線端末装置は、IEEE802.16eに準拠している第1の無線通信システムにより無線通信を行う第1の通信部と、表示部と、前記表示部の電源がオフの状態において、前記第1の無線通信システムにおけるデータ通信のセッションが切断された場合、前記第1の通信部を、IEEE802.16eに規定されているスリープモードへ遷移させる制御部と、を備える。
【0009】
また、本発明に係る無線端末装置は、第2の無線通信システムにより無線通信を行う第2の通信部を備え、前記制御部は、前記第1の無線通信システムにおいてデータ通信を行なっている際に当該データ通信のセッションが切断された場合、第2の通信部においてデータ通信のセッションを確立させ、前記第2の無線通信システムにデータ通信を移行させることが好ましい。
【0010】
また、前記第2の無線通信システムは、セルラー方式の通信規格に準拠していることが好ましい。
【0011】
また、前記制御部は、前記第1の通信部が前記スリープモードへ遷移した後、前記表示部の電源がオンとなった場合、前記第1の通信部に前記第1の無線通信システムのサーチを開始させることが好ましい。
【0012】
本発明に係る通信制御方法は、IEEE802.16eに準拠している第1の無線通信システムにより無線通信を行う第1の通信部と、表示部とを備える無線端末装置の通信制御方法であって、前記表示部の電源がオフの状態において、前記第1の無線通信システムにおけるデータ通信のセッションが切断された場合、前記第1の通信部を、IEEE802.16eに規定されているスリープモードへ遷移させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無線端末装置は、利便性の低下を抑制しつつ、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るスマートフォンの外観を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係るスマートフォンの外観を示す正面図である。
【図3】実施形態に係るスマートフォンの外観を示す背面図である。
【図4】実施形態に係るスマートフォンの構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態に係る通信ユニット及びコントローラの詳細な機能を示すブロック図である。
【図6】実施形態に係る状態遷移の第1のパターンを時系列に示す図である。
【図7】実施形態に係る状態遷移の第2のパターンを時系列に示す図である。
【図8】実施形態に係る処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、無線端末装置の一例として、スマートフォンについて説明する。
【0016】
図1から図3を参照しながら、実施形態に係るスマートフォン1の外観について説明する。図1から図3に示すように、スマートフォン1は、ハウジング20を有する。ハウジング20は、フロントフェイス1Aと、バックフェイス1Bと、サイドフェイス1C1〜1C4とを有する。フロントフェイス1Aは、ハウジング20の正面である。バックフェイス1Bは、ハウジング20の背面である。サイドフェイス1C1〜1C4は、フロントフェイス1Aとバックフェイス1Bとを接続する側面である。以下では、サイドフェイス1C1〜1C4を、どの面であるかを特定することなく、サイドフェイス1Cと総称することがある。
【0017】
スマートフォン1は、タッチスクリーンディスプレイ2と、ボタン3A〜3Cと、照度センサ4と、近接センサ5と、レシーバ7と、マイク8と、カメラ12とをフロントフェイス1Aに有する。スマートフォン1は、カメラ13をバックフェイス1Bに有する。スマートフォン1は、ボタン3D〜3Fと、外部インターフェイス14とをサイドフェイス1Cに有する。以下では、ボタン3A〜3Fを、どのボタンであるかを特定することなく、ボタン3と総称することがある。
【0018】
タッチスクリーンディスプレイ2は、ディスプレイ2Aと、タッチスクリーン2Bとを有する。ディスプレイ2Aは、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)、有機ELパネル(Organic Electro−Luminescence panel)、又は無機ELパネル(Inorganic Electro−Luminescence panel)等の表示デバイスを備える。ディスプレイ2Aは、文字、画像、記号又は図形等を表示する。
【0019】
タッチスクリーン2Bは、タッチスクリーンディスプレイ2に対する指、又はスタイラスペン等の接触を検出する。タッチスクリーン2Bは、複数の指、又はスタイラスペン等がタッチスクリーンディスプレイ2に接触した位置を検出することができる。
【0020】
タッチスクリーン2Bの検出方式は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(又は超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式、及び荷重検出方式等の任意の方式でよい。以下では、説明を簡単にするため、タッチスクリーン2Bがタッチスクリーンディスプレイ2に対する接触を検出する指、又はスタイラスペン等を単に「指」ということがある。
【0021】
スマートフォン1は、タッチスクリーン2Bにより検出された接触、接触位置、接触時間又は接触回数に基づいてジェスチャの種別を判別する。ジェスチャは、タッチスクリーンディスプレイ2に対して行われる操作である。スマートフォン1によって判別されるジェスチャには、タッチ、ロングタッチ、リリース、スワイプ、タップ、ダブルタップ、ロングタップ、ドラッグ、フリック、ピンチイン、ピンチアウト等が含まれる。
【0022】
タッチは、タッチスクリーンディスプレイ2(例えば、表面)に指が接触するジェスチャである。スマートフォン1は、タッチスクリーンディスプレイ2に指が接触するジェスチャをタッチとして判別する。ロングタッチとは、タッチスクリーンディスプレイ2に指が一定時間以上接触するジェスチャである。スマートフォン1は、タッチスクリーンディスプレイ2に指が一定時間以上接触するジェスチャをロングタッチとして判別する。
【0023】
リリースは、指がタッチスクリーンディスプレイ2から離れるジェスチャである。スマートフォン1は、指がタッチスクリーンディスプレイ2から離れるジェスチャをリリースとして判別する。スワイプは、指がタッチスクリーンディスプレイ2上に接触したままで移動するジェスチャである。スマートフォン1は、指がタッチスクリーンディスプレイ2上に接触したままで移動するジェスチャをスワイプとして判別する。
【0024】
タップは、タッチに続いてリリースをするジェスチャである。スマートフォン1は、タッチに続いてリリースをするジェスチャをタップとして判別する。ダブルタップは、タッチに続いてリリースをするジェスチャが2回連続するジェスチャである。スマートフォン1は、タッチに続いてリリースをするジェスチャが2回連続するジェスチャをダブルタップとして判別する。
【0025】
ロングタップは、ロングタッチに続いてリリースをするジェスチャである。スマートフォン1は、ロングタッチに続いてリリースをするジェスチャをロングタップとして判別する。ドラッグは、移動可能なオブジェクトが表示されている領域を始点としてスワイプをするジェスチャである。スマートフォン1は、移動可能なオブジェクトが表示されている領域を始点としてスワイプをするジェスチャをドラッグとして判別する。
【0026】
フリックは、タッチに続いて指が一方方向へ高速で移動しながらリリースするジェスチャである。スマートフォン1は、タッチに続いて指が一方方向へ高速で移動しながらリリースするジェスチャをフリックとして判別する。フリックは、指が画面の上方向へ移動する上フリック、指が画面の下方向へ移動する下フリック、指が画面の右方向へ移動する右フリック、指が画面の左方向へ移動する左フリック等を含む。
【0027】
ピンチインは、複数の指が互いに近付く方向にスワイプするジェスチャである。スマートフォン1は、複数の指が互いに近付く方向にスワイプするジェスチャをピンチインとして判別する。ピンチアウトは、複数の指が互いに遠ざかる方向にスワイプするジェスチャである。スマートフォン1は、複数の指が互いに遠ざかる方向にスワイプするジェスチャをピンチアウトとして判別する。
【0028】
スマートフォン1は、タッチスクリーン2Bを介して判別するこれらのジェスチャに従って動作を行う。したがって、利用者にとって直感的で使いやすい操作性が実現される。判別されるジェスチャに従ってスマートフォン1が行う動作は、タッチスクリーンディスプレイ2に表示されている画面に応じて異なる。
【0029】
図4は、スマートフォン1の構成を示すブロック図である。スマートフォン1は、タッチスクリーンディスプレイ2と、ボタン3と、照度センサ4と、近接センサ5と、通信ユニット6と、レシーバ7と、マイク8と、ストレージ9と、コントローラ10と、カメラ12及び13と、外部インターフェイス14と、加速度センサ15と、方位センサ16と、回転検出センサ17とを有する。
【0030】
タッチスクリーンディスプレイ2は、上述したように、ディスプレイ2Aと、タッチスクリーン2Bとを有する。ディスプレイ2Aは、文字、画像、記号、又は図形等を表示する。タッチスクリーン2Bは、ジェスチャを検出する。
【0031】
ボタン3は、利用者によって操作される。ボタン3は、ボタン3A〜ボタン3Fを有する。コントローラ10はボタン3と協働することによってボタンに対する操作を検出する。ボタンに対する操作は、例えば、クリック、ダブルクリック、プッシュ、及びマルチプッシュである。
【0032】
例えば、ボタン3A〜3Cは、ホームボタン、バックボタン又はメニューボタンである。例えば、ボタン3Dは、スマートフォン1のパワーオン/オフボタンである。ボタン3Dは、スリープ/スリープ解除ボタンを兼ねてもよい。例えば、ボタン3E及び3Fは、音量ボタンである。
【0033】
照度センサ4は、照度を検出する。例えば、照度とは、光の強さ、明るさ、輝度等である。照度センサ4は、例えば、ディスプレイ2Aの輝度の調整に用いられる。
【0034】
近接センサ5は、近隣の物体の存在を非接触で検出する。近接センサ5は、例えば、タッチスクリーンディスプレイ2が顔に近付けられたことを検出する。
【0035】
通信ユニット6は、無線により通信する。通信ユニット6によって行われる通信方式は、無線通信規格である。例えば、無線通信規格として、2G、3G、4G等のセルラーフォンの通信規格がある。例えば、セルラーフォンの通信規格としては、LTE(Long Term Evolution)、W−CDMA、CDMA2000、PDC、GSM、PHS(Personal Handy−phone System)等がある。例えば、無線通信規格として、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、IEEE802.11、Bluetooth(登録商標)、IrDA、NFC(Near Field Communication)等がある。通信ユニット6は、上述した通信規格の1つ又は複数をサポートしていてもよい。
【0036】
レシーバ7は、コントローラ10から送信される音声信号を音声として出力する。マイク8は、利用者等の音声を音声信号へ変換してコントローラ10へ送信する。なお、スマートフォン1は、レシーバ7に加えて、スピーカをさらに有してもよい。スマートフォン1は、レシーバ7に代えて、スピーカをさらに有してもよい。
【0037】
ストレージ9は、プログラム及びデータを記憶する。また、ストレージ9は、コントローラ10の処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用される。ストレージ9は、半導体記憶デバイス、及び磁気記憶デバイス等の任意の記憶デバイスを含んでよい。また、ストレージ9は、複数の種類の記憶デバイスを含んでよい。また、ストレージ9は、メモリカード等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。
【0038】
ストレージ9に記憶されるプログラムには、フォアグランド又はバックグランドで実行されるアプリケーションと、アプリケーションの動作を支援する制御プログラムとが含まれる。アプリケーションは、例えば、ディスプレイ2Aに所定の画面を表示させ、タッチスクリーン2Bによって検出されるジェスチャに応じた処理をコントローラ10に実行させる。制御プログラムは、例えば、OSである。アプリケーション及び制御プログラムは、通信ユニット6による無線通信又は記憶媒体を介してストレージ9にインストールされてもよい。
【0039】
ストレージ9は、例えば、制御プログラム9A、メールアプリケーション9B、ブラウザアプリケーション9C、設定データ9Zを記憶する。メールアプリケーション9Bは、電子メールの作成、送信、受信、及び表示等のための電子メール機能を提供する。ブラウザアプリケーション9Cは、WEBページを表示するためのWEBブラウジング機能を提供する。テーブル9Dは、キーアサインテーブル等の各種テーブルが格納されている。配置パターンデータベース9Eは、ディスプレイ2Aに表示されるアイコン等の配置パターンが格納されている。設定データ9Zは、スマートフォン1の動作に関する各種の設定機能を提供する。
【0040】
制御プログラム9Aは、スマートフォン1を稼働させるための各種制御に関する機能を提供する。制御プログラム9Aは、例えば、通信ユニット6、レシーバ7、及びマイク8等を制御することによって、通話を実現させる。制御プログラム9Aが提供する機能には、タッチスクリーン2Bを介して検出されたジェスチャに応じて、ディスプレイ2Aに表示されている情報を変更する等の各種制御を行う機能が含まれる。なお、制御プログラム9Aが提供する機能は、メールアプリケーション9B等の他のプログラムが提供する機能と組み合わせて利用されることがある。
【0041】
コントローラ10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。コントローラ10は、通信ユニット6等の他の構成要素が統合されたSoC(System−on−a−chip)等の集積回路であってもよい。コントローラ10は、スマートフォン1の動作を統括的に制御して各種の機能を実現する。
【0042】
具体的には、コントローラ10は、ストレージ9に記憶されているデータを必要に応じて参照しつつ、ストレージ9に記憶されているプログラムに含まれる命令を実行して、ディスプレイ2A及び通信ユニット6等を制御することによって各種機能を実現する。コントローラ10は、タッチスクリーン2B、ボタン3、加速度センサ15等の各種検出部の検出結果に応じて、制御を変更することもある。
【0043】
コントローラ10は、例えば、制御プログラム9Aを実行することにより、タッチスクリーン2Bを介して検出されたジェスチャに応じて、ディスプレイ2Aに表示されている情報を変更する等の各種制御を実行する。
【0044】
カメラ12は、フロントフェイス1Aに面している物体を撮影するインカメラである。カメラ13は、バックフェイス1Bに面している物体を撮影するアウトカメラである。
【0045】
外部インターフェイス14は、他の装置が接続される端子である。外部インターフェイス14は、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High−Definition Multimedia Interface)、ライトピーク(サンダーボルト)、イヤホンマイクコネクタのような汎用的な端子であってもよい。外部インターフェイス14は、Dockコネクタのような専用に設計された端子でもよい。外部インターフェイス14に接続される装置には、例えば、外部ストレージ、スピーカ、通信装置が含まれる。
【0046】
加速度センサ15は、スマートフォン1に働く加速度の方向及び大きさを検出する。方位センサ16は、地磁気の向きを検出する。回転検出センサ17は、スマートフォン1の回転を検出する。加速度センサ15、方位センサ16及び回転検出センサ17の検出結果は、スマートフォン1の位置及び姿勢の変化を検出するために、組み合わせて利用される。
【0047】
このように構成されるスマートフォン1は、消費電力を低減することができる。以下に、具体的な構成について説明する。
【0048】
図5は、スマートフォン1における通信ユニット6及びコントローラ10(制御部)の詳細な機能を示すブロック図である。
なお、スマートフォン1は、データ通信を行う無線通信システムとして、IEEE802.11で規定されるWiFi、IEEE802.16eで規定されているWiMAX、及び3G方式の無線通信システム(例えば、CDMA2000_1xEVDO、W−CDMA等である。以下、3Gシステムという。)に対応しているものとする。
【0049】
通信ユニット6は、WiFiに対応する通信処理部61A、無線部62A及びアンテナ63Aと、WiMAXに対応する通信処理部61B(第1の通信部)、無線部62B及びアンテナ63Bと、3Gシステムに対応する通信処理部61C(第2の通信部)、無線部62C及びアンテナ63Cとを備える。
【0050】
通信処理部61(A、B及びC)は、それぞれ対応する無線部62(A、B及びC)を制御し、無線通信システムへの接続、切断等の状態遷移を司る。
無線部62(A、B及びC)は、それぞれ対応するアンテナ63(A、B及びC)より受信した信号を復調処理し、処理後の信号を通信処理部61へ供給し、また、通信処理部61から供給された信号を変調処理し、アンテナ63から外部装置へ送信する。
【0051】
コントローラ10は、通信処理部61(A、B及びC)に対して所定の制御を行い、省電力のための状態遷移を指示する。
具体的には、コントローラ10は、タッチスクリーンディスプレイ2(表示部)の電源がオフとなった後、WiMAXにおけるデータ通信のセッションが切断された(ロストした)場合、通信処理部61Bを、IEEE802.16eに規定されているスリープモードへ遷移させる。ここで遷移させるIEEE802.16eに規定されているスリープモードは、リスニング(基地局からのメッセージを受信)しないものが好適である。リスニングしないものとは、例えば、リスニングインターバルやリスニングウィンドウ等がないものを意味する。
【0052】
このとき、コントローラ10は、WiMAXをロストした後、所定時間(例えば、5秒間)は、WiMAXのサーチを行い、他のシステムによりデータ通信の継続を試みる。そして、コントローラ10は、所定時間経過してもWiMAXが捕捉できない場合に、通信処理部61Bをスリープモードへ遷移させる。
これにより、例えば、電波状況が一時的に悪化したためにWiMAXをロストしたが、短時間で電波状況が改善したために継続してデータ通信が可能な場合に、通信処理部61Bをスリープモードへ遷移させないので、利便性の低下が抑制される。
【0053】
また、コントローラ10は、WiMAXにおいてデータ通信を行なっている際に、このデータ通信のセッションが切断された場合、通信処理部61Cにおいてデータ通信のセッション(PPPセッション)を確立させ、3Gシステムにデータ通信を移行させる。
【0054】
ここで、通信処理部61Cが対応している3Gシステムは、セルラー方式の通信規格に準拠した無線通信システムであり、間欠受信のために常時起動しているため、他の通信システムに接続する場合に比べて、データ通信のセッションを確立することによる電力消費が低減される。
【0055】
また、コントローラ10は、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオフの状態において、通信処理部61Bがスリープモードへ遷移した後、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオンとなった場合、3Gシステムよりも優先されるWiFi又はWiMAXでデータ通信の発生に備えるために、通信処理部61AにWiFiのサーチを、通信処理部61BにWiMAXのサーチを開始させる。
【0056】
図6は、通信処理部61(A、B及びC)の状態遷移の第1のパターンを時系列に示す図である。
時刻t1より前では、通信処理部61Aは、WiFiのサーチ中である。また、通信処理部61Bは、WiMAXにおけるデータ通信のセッションを保持しており、IEEE802.16eで規定されているアクティブモード又はアイドルモードとなっている。さらに、通信処理部61Cは、3Gシステムに接続し、着信の間欠受信状態である。
【0057】
時刻t1において、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオフになると、通信処理部61Aは、WiFiのサーチを停止し、IEEE802.11に規定されているパワーセーブモードに遷移する。
このとき、通信処理部61Bは、アクティブモード又はアイドルモードを継続し、通信処理部61Cは、間欠受信状態を継続する。
【0058】
時刻t2において、通信処理部61Bは、WiMAXをロストし、データ通信のセッションが切断されると、データ通信接続を再度確立させるために、WiMAXのサーチを開始する。
この後、所定時間(例えば、5秒)が経過するまでにWiMAXが再度捕捉されれば、通信処理部61Bは、アクティブモード又はアイドルモードに復帰する。
【0059】
時刻t3において、時刻t2からWiMAXが捕捉されることなく所定時間が経過したので、通信処理部61Bは、サーチを終了してスリープモードへ遷移する。
また、データ通信接続を再度確立して中断されたデータ通信を再開させるため、又は新たなデータ通信の発生に備えるため、通信処理部61Cは、3Gシステムでのデータ通信を開始する。なお、送受信データが存在しない場合、通信処理部61Cは、ドーマント状態へと移行し、送受信データの発生に備える。
【0060】
時刻t4において、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオンになると、3Gシステムよりも優先されるWiFi及びWiMAXのサーチが開始され、システムの捕捉に成功すると、下位ベアラである3Gシステムから上位ベアラであるWiFi又は中位ベアラであるWiMAXへデータ通信の担当が引き継がれる。
【0061】
図7は、通信処理部61(A、B及びC)の状態遷移の第2のパターンを時系列に示す図である。
時刻t5より前では、通信処理部61Aは、WiFiのサーチ中である。また、通信処理部61Bは、WiMAXのサーチ中である。このとき、通信処理部61Cは、3Gシステムに接続し、データ通信中である。
【0062】
時刻t5において、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオフになると、通信処理部61Aは、WiFiのサーチを停止し、パワーセーブモードに遷移する。また、通信処理部61Bは、WiMAXのサーチを停止し、スリープモードに遷移する。
このとき、通信処理部61Cは、データ通信のセッションを維持する。
【0063】
時刻t6において、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオンになると、3Gシステムよりも優先されるWiFi及びWiMAXのサーチが再び開始され、システムの捕捉に成功すると、下位ベアラである3Gシステムから上位ベアラであるWiFi又は中位ベアラであるWiMAXへデータ通信の担当が引き継がれる。
【0064】
図8は、スマートフォン1における通信処理部61の状態遷移に係る処理を示すフローチャートである。
本処理は、WiFiがサーチ中であり、WiMAX又は3Gシステムにおいてデータ通信接続が確立しているとき、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオフになった場合に実行される。
【0065】
ステップS1において、コントローラ10は、WiFiでデータ通信が行われておらず、かつ、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオフなので、新たにデータ通信が発生する可能性が低いと判断し、WiFiに対応する通信処理部61Aをパワーセーブモードへ遷移させる。
【0066】
ステップS2において、コントローラ10は、WiMAXのデータ通信セッションがある(アクティブモード又はアイドルモード)か否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS4に移り、判定がNOの場合、処理はステップS3に移る。
【0067】
ステップS3において、コントローラ10は、WiMAXに接続されておらず、さらに、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオフなので、WiMAXに対応する通信処理部61Bをスリープモードへ遷移させる。続いて、処理はステップS13に移る。
【0068】
ステップS4において、コントローラ10は、タッチスクリーンディスプレイ2の電源が再びオンになったか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS10に移り、判定がNOの場合、処理はステップS5に移る。
【0069】
ステップS5において、コントローラ10は、WiMAXをロストしたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS6に移り、判定がNOの場合、コントローラ10は、通信処理部61Bの状態(アクティブモード又はアイドルモード)を継続し、処理はステップS4に戻る。
【0070】
ステップS6において、コントローラ10は、WiMAXに再び接続するために、通信処理部61BにWiMAXのサーチを開始させて捕捉を試みる。このとき、コントローラ10は、サーチを継続する最大時間(例えば、5秒間)を計時するためのタイマを起動させる。
【0071】
ステップS7において、コントローラ10は、WiMAXを捕捉したか否かを判定する。この判定がYESの場合、通信処理部61Bはアクティブモード又はアイドルモードに復帰し、処理はステップS4に戻る。一方、判定がNOの場合、処理はステップS8に移る。
【0072】
ステップS8において、コントローラ10は、ステップS6で起動されたタイマが満了したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS11に移り、判定がNOの場合、処理はステップS9に移る。
【0073】
ステップS9において、コントローラ10は、タッチスクリーンディスプレイ2の電源が再びオンになったか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS10に移り、判定がNOの場合、処理はステップS7に戻る。
【0074】
ステップS10において、コントローラ10は、WiMAXよりも優先度が高いWiFiに対応する通信処理部61Aに対して、WiFiのサーチを開始させる。これにより、各通信処理部61は、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオフになる前の状態に戻り、処理は終了する。
【0075】
ステップS11において、コントローラ10は、WiMAXに対応する通信処理部61Bをスリープモードへ遷移させる。
【0076】
ステップS12において、コントローラ10は、既に着信待ち受けのために起動している3Gシステムに対応する通信処理部61Cでデータ通信用のセッションを確立させる。通信処理部61Bがアクティブモードでデータ通信が中断された場合、通信処理部61Cは、3Gシステムでデータ通信を再開する。通信処理部61Bがアイドルモードであった場合、通信処理部61Cは、3Gシステムのセッションが確立した後、ドーマント状態へ移行する。
【0077】
ステップS13において、コントローラ10は、タッチスクリーンディスプレイ2の電源が再びオンになったか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS14に移り、判定がNOの場合、処理はステップS13を繰り返す。
【0078】
ステップS14において、コントローラ10は、3Gシステムよりも優先度が高いWiFi及びWiMAXに対応する通信処理部61A及び通信処理部61Bに対して、各無線通信システムのサーチを開始させる。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、スマートフォン1は、タッチスクリーンディスプレイ2の電源がオフとなった場合に、WiMAXをロストすれば通信処理部61Bがスリープモードに遷移するので、サーチが必要以上に継続されることにより無用に消費される電力を低減することができる。
また、スマートフォン1は、WiMAXをロストした後、所定時間はサーチを行うため、一時的な切断によりWiMAXを使用できなくなるという利便性の低下を抑制できる。
【0080】
さらに、スマートフォン1は、WiMAXの通信処理部61Bがスリープモードへ遷移したとしても、3Gシステムでデータ通信を継続できるので、利便性の低下を抑制しつつ、消費電力を低減できる。
【0081】
このとき、セルラー方式である3Gシステムは、既に着信待ち受けのために起動中のため、データ通信の接続を行うにあたって消費電力の増加を抑制できる。また、WiMAXをロストした時点でデータ通信が行われていなかった場合にも、再びタッチスクリーンディスプレイ2の電源がオンになった際に即座にデータ通信が可能な状態となる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、前述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0083】
図4及び図5に示したスマートフォン1の構成は一例であり、本発明の要旨を損なわない範囲において適宜変更してよい。
例えば、表示部は、タッチスクリーン2Bによる検出機能を有するタッチスクリーンディスプレイ2としたが、検出機能を有さない表示装置であってもよい。
また、通信処理部61は、WiFi、WiMAX及び3Gシステムに対応するものとして説明したが、これには限られず、他の無線通信システムであってもよいし、4以上の無線通信システムに対応していてもよい。
【0084】
なお、図4においてストレージ9が記憶することとしたプログラムの一部又は全部は、通信ユニット6による無線通信で他の装置からダウンロードされてもよい。また、図4においてストレージ9が記憶することとしたプログラムの一部又は全部は、ストレージ9に含まれる読み取り装置が読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。また、図4においてストレージ9が記憶することとしたプログラムの一部又は全部は、外部インターフェイス14に接続される読み取り装置が読み取り可能なCD、DVD、又はBlu−ray等の記憶媒体に記憶されていてもよい。
また、図4に示した各プログラムは、複数のモジュールに分割されていてもよいし、他のプログラムと結合されていてもよい。
【0085】
また、前述の実施形態では、無線端末装置の一例として、スマートフォンについて説明したが、無線端末装置は、スマートフォンに限定されない。例えば、無線端末装置は、モバイルフォン、携帯型パソコン、デジタルカメラ、メディアプレイヤ、電子書籍リーダ、ナビゲータ又はゲーム機等の携帯電子機器、あるいは通信機能に特化した通信専用モジュールであってもよい。また、無線端末装置は、デスクトップパソコン、テレビ受像器等の据え置き型の電子機器であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 スマートフォン(無線端末装置)
2 タッチスクリーンディスプレイ(表示部)
6 通信ユニット
10 コントローラ(制御部)
61B 通信処理部(第1の通信部)
61C 通信処理部(第2の通信部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEEE802.16eに準拠している第1の無線通信システムにより無線通信を行う第1の通信部と、
表示部と、
前記表示部の電源がオフの状態において、前記第1の無線通信システムにおけるデータ通信のセッションが切断された場合、前記第1の通信部を、IEEE802.16eに規定されているスリープモードへ遷移させる制御部と、を備える無線端末装置。
【請求項2】
第2の無線通信システムにより無線通信を行う第2の通信部を備え、
前記制御部は、前記第1の無線通信システムにおいてデータ通信を行なっている際に当該データ通信のセッションが切断された場合、第2の通信部においてデータ通信のセッションを確立させ、前記第2の無線通信システムにデータ通信を移行させる請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記第2の無線通信システムは、セルラー方式の通信規格に準拠している請求項2に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の通信部が前記スリープモードへ遷移した後、前記表示部の電源がオンとなった場合、前記第1の通信部に前記第1の無線通信システムのサーチを開始させる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項5】
IEEE802.16eに準拠している第1の無線通信システムにより無線通信を行う第1の通信部と、表示部とを備える無線端末装置の通信制御方法であって、
前記表示部の電源がオフの状態において、前記第1の無線通信システムにおけるデータ通信のセッションが切断された場合、前記第1の通信部を、IEEE802.16eに規定されているスリープモードへ遷移させる通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−110497(P2013−110497A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252424(P2011−252424)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】