説明

無線端末装置及び通信制御方法

【課題】通信システムの切り替えに関する不都合を回避し、通信をより効率的に行える無線端末装置及び通信制御方法を提供すること。
【解決手段】携帯電話機1は、LTE通信システムと、LTE通信システムではサポートされない機能がサポートされるCDMA通信システムとを選択的に切り替えて通信する通信切替部31と、LTE通信システムにて位置登録される状況で所定の発信が要求された際、当該発信が所定の通信種別に関するものであるか否かを判定する判定部32と、を備え、通信切替部31は、発信が所定の通信種別に関するものでないと判定された場合、CDMA通信システムにて発信に基づく通信を完了した後、位置登録先をLTE通信システムへ優先的に変更し、発信が所定の通信種別に関するものであると判定された場合、CDMA通信システムにて発信に基づく通信を完了した後も、引き続きCDMA通信システムへの位置登録を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムを選択的に切り替える無線端末装置及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の無線端末装置が利用する通信システムとして、回線交換(CS:Circuit Switched)方式の通信システム(例えば、CDMA)に加えて、LTE(Long Term Evolution)方式の通信システムが登場している。
【0003】
ところが、現状、LTE通信システムは、データ通信のみをサポートするシステムであり、音声着信を受ける場合には、既存のCDMA通信システムで受ける必要がある。また、LTE通信システムとCDMA通信システムとでアンテナを各々搭載して、同時に待ち受けすることは可能ではあるが、端末コストの低減、及び連続待ち受け時間の長時間化の観点から望ましくない。そこで、3GPP TS 23.272において、CS Fallback機能が規定され、この機能により、LTE通信システムでCDMA通信システムからの着信要求を通知することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
さらに、CS Fallback機能を用いて音声発信をする場合、無線端末装置からの発信要求に対して、LTE通信システムからCDMA通信システムへのハンドオーバ指示が無線端末装置へ送信される。ハンドオーバ指示を受けた無線端末装置は、無線をCDMA通信システムへ切り替えた後、通常の発信処理を行う。
【0005】
また、CDMA通信システムへハンドオーバした後、音声通話が終了すると、再度、CDMA通信システムよりも優先されるLTE通信システムへハンドオーバする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−147576号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP TS 23.272 V10.3.1, “Circuit Switched (CS) fallback in Evolved Packet System (EPS); Stage 2,” 2011−04
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、無線端末装置からの発信は、通常の音声通話の他、緊急呼の場合もある。緊急呼の場合、無線端末装置は、通話終了後に発信先である緊急機関から位置測位要求を受信することが多い。このとき、既にCDMA通信システムからLTE通信システムへハンドオーバしていると、LTE通信システムではGPS測位を実施できないため、再びCDMA通信システムへのハンドオーバが必要となっていた。その結果、緊急機関に対する位置測位情報の送信の遅延、あるいは処理負荷の増大といった不都合が生じていた。
【0009】
本発明は、通信システムの切り替えに関する不都合を回避し、通信をより効率的に行える無線端末装置及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る無線端末装置は、第1の通信システムと、前記第1の通信システムではサポートされない機能がサポートされる第2の通信システムとを選択的に切り替えて通信する通信切替部と、前記第1の通信システムにて位置登録される状況で所定の発信が要求された際、当該発信が、当該発信の後に前記第2の通信システムでの位置測位が要求される所定の通信種別に関するものであるか否かを判定する判定部と、を備え、前記通信切替部は、前記判定部により、前記発信が前記所定の通信種別に関するものでないと判定された場合、前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了した後、位置登録先を前記第1の通信システムへ優先的に変更し、前記発信が前記所定の通信種別に関するものであると判定された場合、前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了した後も、引き続き当該第2の通信システムへの位置登録を継続する。
【0011】
また、前記通信切替部は、前記判定部により前記所定の通信種別であると判定され、かつ前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了してから所定時間が経過するまでの間に前記位置測位の要求を受信した場合、位置情報を送信し、当該位置情報の送信の完了の後に前記第1の通信システムへ優先的に位置登録先を変更することが好ましい。
【0012】
また、前記通信切替部は、前記判定部により前記所定の通信種別であると判定され、かつ前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了してから前記位置測位の要求を受信せずに所定時間が経過した場合、前記第1の通信システムへ優先的に位置登録先を変更することが好ましい。
【0013】
また、前記通信切替部は、前記第1の通信システムと前記第2の通信システムとの間で位置登録先を変更する際、前記第1の通信システムにおける第1の通信エリア区分と、前記第2の通信システムにおける第2の通信エリア区分との位置関係を把握している前記第1の通信システムの制御装置から、接続先変更のための補助情報を受信することが好ましい。
【0014】
また、前記所定の通信種別は、緊急呼であることが好ましい。
【0015】
また、前記所定の通信種別は、SMS(ショートメッセージサービス)であることが好ましい。
【0016】
また、前記第1の通信システムは、LTE方式又はWiMAX方式であり、前記第2の通信システムは、CDMA方式であることが好ましい。
【0017】
また、前記第1の通信システムはLTE方式であり、前記第2の通信システムはCDMA方式であって、前記補助情報の受信は、3GPP TS 23.272において規定されるCS−Fallback機能に準拠していることが好ましい。
【0018】
本発明に係る通信制御方法は、無線端末装置の通信制御方法であって、第1の通信システムと、前記第1の通信システムではサポートされない機能がサポートされる第2の通信システムとを選択的に切り替えて通信する通信切替ステップと、前記第1の通信システムにて位置登録される状況で所定の発信が要求された際、当該発信が、当該発信の後に前記第2の通信システムでの位置測位が要求される所定の通信種別に関するものであるか否かを判定する判定ステップと、を含み、前記通信切替ステップにおいて、前記判定ステップで、前記発信が前記所定の通信種別に関するものでないと判定された場合、前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了した後、位置登録先を前記第1の通信システムへ優先的に変更し、前記発信が前記所定の通信種別に関するものであると判定された場合、前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了した後も、引き続き当該第2の通信システムへの位置登録を継続する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線端末装置は、通信システムの切り替えに関する不都合を回避し、通信をより効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯電話機の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る携帯電話機がCDMA通信システムで通信の待ち受け中に、測位要求に基づいて位置測位を行う処理を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の実施形態に係る携帯電話機において、音声発信の要求に応じて音声通信を開始する処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る携帯電話機において、音声通信を終了するまでの処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る携帯電話機において、音声通信を終了してからの処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る判定部により緊急呼の判定を行わなかった場合の、緊急呼発信に基づく処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、無線端末装置の一例として携帯電話機1を説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る携帯電話機1の外観斜視図である。
なお、図1は、いわゆる折り畳み型の携帯電話機の形態を示しているが、本発明に係る携帯電話機の形態はこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)、あるいは操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0023】
携帯電話機1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備えて構成される。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時あるいは音声認識アプリケーションを利用時に発した音声が入力されるマイク12と、を備えて構成される。操作部11は、各種設定機能、電話帳機能、SMS(ショートメッセージサービス)機能、あるいはメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字又はメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定及びスクロール等を行う決定操作ボタン15と、を含んで構成されている。
【0024】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するための表示部21と、通話の相手側の音声を出力するレシーバ22と、を備えて構成されている。
【0025】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(閉状態)にしたりできる。
【0026】
図2は、本実施形態に係る携帯電話機1の機能を示すブロック図である。
携帯電話機1は、操作部11と、表示部21と、制御部30と、通信部40と、記憶部50と、音声制御部60とを備える。
【0027】
制御部30は、携帯電話機1の全体を制御しており、例えば、表示部21、通信部40等の各部に対して所定の制御を行う。また、制御部30は、操作部11あるいは通信部40等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部30は、処理実行の際には、記憶部50を制御し、各種プログラム及びデータの読み出し、及びデータの書き込みを行う。なお、本実施形態に係る制御部30の詳細機能は後述する。
【0028】
通信部40は、所定の使用周波数帯(例えば、2GHz帯あるいは800MHz帯等)で外部装置(LTE通信システムの基地局100又はCDMA通信システムの基地局200)と通信を行う。そして、通信部40は、アンテナより受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給し、また、制御部30から供給された信号を変調処理し、アンテナから外部装置に送信する。
【0029】
ここで、通信部40は、本実施形態においては、音声及びデータ通信用の通信プロトコルであるW−CDMAあるいはCDMA2000_1x(以下、CDMAという)と、主に高速データ通信に用いられる通信プロトコルであるLTEとの双方に対応しており、いずれのプロトコルの通信システムでも通信可能である。通信部40は、制御部30からの指令に基づいて、互いに重畳して通信エリアが敷設される複数の通信システムを選択的に切り替えて、いずれかのプロトコルにより基地局と通信を行う。なお、携帯電話機1は、データ通信時にはLTE方式によるLTE通信システム(第1の通信システム)での通信を優先し、音声通話あるいはSMSの送受信時には、CDMA方式によるCDMA通信システム(第2の通信システム)での通信へ切り替えるものとする。
【0030】
なお、SMSは、通信相手との間で、短いメッセージ(数十文字程度)の送受信を行う機能である。このSMSは、音声通信と部分的に共通する発信・着信シーケンスを利用しており、CDMA通信システムにおいて電話番号により送信相手が特定される。
【0031】
記憶部50は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部30による演算処理に利用される。また、記憶部50は、本実施形態に係る各種プログラムの他、後述の測位情報未送信フラグ等を記憶する。
【0032】
音声制御部60は、制御部30の制御に従って、通信部40から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をレシーバ22に出力する。レシーバ22は、音声制御部60から供給された信号を外部に出力する。なお、この信号は、レシーバ22に代えて、又はレシーバ22と共に、スピーカ(図示せず)から出力されるとしてもよい。また、音声制御部60は、制御部30の制御に従って、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号を通信部40に出力する。通信部40は、音声制御部60から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をアンテナより出力する。
【0033】
次に制御部30及び各通信システムの制御装置の機能を詳述する。
制御部30は、通信切替部31と、判定部32とを備える。
【0034】
通信切替部31は、音声発信又はSMSがサポートされないLTE通信システムと、音声発信又はSMSがサポートされるCDMA通信システムとを選択的に切り替え、通信部40を制御して通信する。
【0035】
また、通信切替部31は、LTE通信システムとCDMA通信システムとの間で位置登録先を変更する際、LTE通信システムにおける第1の通信エリア区分(呼出ゾーン)と、CDMA通信システムにおける第2の通信エリア区分との位置関係を把握しているLTE通信システムの制御装置から、接続先変更のための補助情報を受信する。
【0036】
判定部32は、LTE通信システムにて位置登録される状況で音声発信が要求された際、この音声発信が、要求の後にCDMA通信システムで位置測位が要求される所定の通信種別であるか否かを判定する。ここで、所定の通信種別は、警察あるいは消防等に対する緊急呼である。あるいは、所在の把握を希望する所定の相手先へのSMSの送信(発信)などである。
【0037】
ここで、通信切替部31は、判定部32により所定の通信種別でないと判定された場合、CDMA通信システムにて音声発信に基づく通話を完了した際に、LTE通信システムへ優先的に位置登録先を変更する。一方、所定の通信種別であると判定された場合、通信切替部31は、CDMA通信システムにて音声発信に基づく通話を完了した後も、引き続きCDMA通信システムへの位置登録を継続する。
【0038】
また、通信切替部31は、判定部32により所定の通信種別であると判定された場合、CDMA通信システムにて音声又はSMSの発信に基づく通信(通話、送信)を開始して以降、この通信を完了してから所定時間(例えば、20秒)が経過するまでの間に位置測位の要求を受信したことに応じて位置情報を送信すると、通信及び位置情報送信の完了後、LTE通信システムへ優先的に位置登録先を変更する。さらに、通信切替部31は、位置測位の要求を受信することなく、通信を完了してから所定時間が経過すると、LTE通信システムへ優先的に位置登録先を変更する。
【0039】
図3は、本実施形態に係る携帯電話機1がCDMA通信システムで通信の待ち受け中に、測位要求に基づいて位置測位を行う処理を示すシーケンス図である。
【0040】
ステップS1において、CDMA通信システムの制御装置は、緊急呼の発信先又はSMSの送信先である緊急機関から測位要求の信号を受信する。
【0041】
ステップS2において、携帯電話機1は、ステップS1の測位要求に応じてCDMA通信システムの制御装置から通知される一斉呼び出しの信号を受信する。
【0042】
ステップS3において、携帯電話機1は、ステップS2の一斉呼び出しに対して、一斉呼び出し応答の信号を、CDMA通信システムへ送信する。
【0043】
ステップS4において、携帯電話機1は、CDMA通信システムに対して接続処理を行い、GPS測位に関するデータ通信のためのセッションを開始する。
【0044】
ステップS5において、CDMA通信システムの制御装置は、携帯電話機1へ、端末情報及び電界強度情報を要求する信号(Request MS Information, Request Pilot Phase Measurement)を送信する。
【0045】
ステップS6において、携帯電話機1は、近隣基地局の電界強度を測定する(PPM: Pilot Phase Measurement)。
【0046】
ステップS7において、携帯電話機1は、CDMA通信システムの制御装置へ、端末情報及び電界強度情報を提供する信号(Provide MS Information, Provide Pilot Phase Measurement)を送信する。
【0047】
ステップS8において、CDMA通信システムの制御装置は、携帯電話機1へ、GPS衛星のサーチ結果情報及び電界強度情報を要求する信号(Request Pseudorange Measurement, Request Pilot Phase Measurement)と共に、GPS衛星サーチのための補助情報を提供する信号(Provide GPS Acquisition Assistance)を送信する。
【0048】
ステップS9において、携帯電話機1は、GPS衛星のサーチ(GPS SRCH)を実行し、捕捉したGPS衛星からの信号を受信する。
【0049】
ステップS10において、携帯電話機1は、CDMA通信システムの制御装置へ、GPS衛星のサーチ結果情報を提供する信号(Provide Pseudorange Measurement)、電界強度情報を提供する信号(Provide Pilot Phase Measurement)、時刻のオフセット情報を提供する信号(Provide TimeOffset Measurement)、及び測位結果の応答を要求する信号(Request Location Response)を送信する。
【0050】
ステップS11において、CDMA通信システムの制御装置は、測位演算を実行し、緊急機関へ、GPS測位の結果を応答する。
【0051】
ステップS12において、CDMA通信システムの制御装置は、携帯電話機1へ、GPS測位の結果を提供する信号(Provide Location Response)を送信する。このとき、セッションの終了を示すフラグが設定される(Session end = 1)。
【0052】
図4は、本実施形態に係る携帯電話機1において、音声発信の要求に応じて音声通信を開始する処理を示すフローチャートである。なお、SMS発信の場合も同様である。
【0053】
ステップS21において、制御部30(通信切替部31)は、音声又はSMS通信の要求がない場合、CDMA通信システムよりも優先されているLTE通信システムで通信の待ち受け状態とする。
【0054】
ステップS22において、制御部30(通信切替部31)は、音声又はSMSの発信に応じて、CS Fallback機能に基づくハンドオーバ指示があったか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS23に移り、判定がNOの場合、ステップS22が継続され、制御部30は、ハンドオーバ指示を待機する。
【0055】
ステップS23において、制御部30(通信切替部31)は、CS Fallback機能により、CDMA通信システムへのハンドオーバを実行する。
【0056】
ステップS24において、制御部30は、CDMA通信システムで音声通信又はSMS送信のための接続を確立し、音声通信又はSMS送信を開始する。
【0057】
ステップS25において、制御部30(判定部32)は、開始された通信が緊急呼発信(あるいはSMS送信)に基づくものであるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS26に移り、判定がNOの場合、処理はステップS27(図5)に移る。
【0058】
ステップS26において、制御部30(通信切替部31)は、測位情報未送信フラグを設定し、緊急呼に応じて要求されるGPS測位の結果を応答していないことを記憶部50に記憶する。
【0059】
図5は、本実施形態に係る携帯電話機1において、音声通信又はSMS送信を終了するまでの処理を示すフローチャートである。なお、本処理は、図4に示す処理に続いて実行される。
【0060】
音声通信の場合には、ステップS27において、制御部30(通信切替部31)は、GPS測位の結果を応答したか否かを、GPS測位に関するセッションの終了を示すフラグ(Session end = 1)を通信中に受信したか否かにより判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS28に移り、判定がNOの場合、処理はステップS29に移る。
【0061】
ステップS28において、制御部30(通信切替部31)は、ステップS27でGPS測位の結果を応答したと判定されたので、測位情報未送信フラグを解除する。
【0062】
ステップS29において、制御部30は、音声通信を切断するか否か、あるいはSMS送信が完了したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理は、ステップS30に移り、判定がNOの場合、処理はステップS27に戻る。
【0063】
ステップS30において、制御部30は、CDMA通信システムでの音声通信又はSMS送信を終了する。
【0064】
図6は、本実施形態に係る携帯電話機1において、音声通信又はSMS送信を終了してからの処理を示すフローチャートである。なお、本処理は、図5に示す処理に続いて実行される。
【0065】
ステップS31において、制御部30(通信切替部31)は、測位情報未送信フラグが設定されているか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS32に移り、判定がNOの場合、処理はステップS37に移る。
【0066】
ステップS32において、制御部30(通信切替部31)は、GPS測位の結果を応答したか否かを、GPS測位に関するセッションの終了を示すフラグ(Session end = 1)を受信したか否かにより判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS33に移り、判定がNOの場合、処理はステップS34に移る。
【0067】
ステップS33において、制御部30(通信切替部31)は、ステップS32でGPS測位の結果を応答したと判定されたので、測位情報未送信フラグを解除する。
【0068】
ステップS34において、制御部30(通信切替部31)は、音声通信の終了後、所定時間(20秒)が経過したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS35に移り、判定がNOの場合、処理はステップS31に戻る。
【0069】
ステップS35において、制御部30(通信切替部31)は、GPS測位のための通信に使うパラメータ(SO:35、36)の使用状態を参照し、GPS測位中か否かを判定する。この判定がYESの場合、所定時間が経過していても、処理はステップS31に戻り、制御部30は、進行中であるGPS測位の終了を待機する。一方、判定がNOの場合、処理はステップS36に移る。
【0070】
ステップS36において、制御部30(通信切替部31)は、緊急呼(あるいはSMS送信)に基づくGPS測位の要求がないと判断し、測位情報未送信フラグを解除する。
【0071】
ステップS37において、制御部30(通信切替部31)は、CDMA通信システムよりも優先されるLTE通信システムへのハンドオーバを実行し、通信の待ち受け状態に復帰する。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、携帯電話機1は、所定の通信種別(例えば、緊急呼、SMS送信)の発信に際して、通話の完了後もCDMA通信システムへの位置登録を継続するので、位置測位の要求を受けた場合に、即座にGPS測位を実行して緊急機関(あるいは位置情報を所望する使用者の関係者)へ結果を応答することができる。
【0073】
ここで、比較のため、携帯電話機1が本実施形態の判定部32により緊急呼の判定を行わなかった場合の、緊急呼発信に基づく処理を図7に示す。なお、SMS送信に関しても同様である。
【0074】
LTE通信システムで通信の待ち受け中に(ステップS41)、緊急呼の発信要求があると(ステップS42)、LTE通信システムから携帯電話機1へハンドオーバが指示される(ステップS43)。続いて、携帯電話機1は、CDMA通信システムへのハンドオーバを実施し、CDMA通信システムで通信の待ち受け状態となった後(ステップS44)、CDMA通信システムで緊急呼発信を行い(ステップS45)、所定の発信処理を実行して(ステップS46)、緊急機関と通話状態になる(ステップS47)。
【0075】
その後、携帯電話機1は、切断要求に応じて(ステップS48)、音声通信を切断すると(ステップS49)、CDMA通信システムよりも優先されるLTE通信システムへハンドオーバして待ち受け状態に復帰する(ステップS50)。
【0076】
次に、CDMA通信システムの制御装置が緊急呼の発信先である緊急機関から測位要求の信号を受信すると(ステップS51)、CS Fallback機能によりLTE通信システムへ着信が通知され(ステップS52)、LTE通信システムから携帯電話機1へ一斉呼び出しが行われる(ステップS53)。これに応じて、携帯電話機1は、LTE通信システムへ着信応答を行うと(ステップS54)、CDMA通信システムへのハンドオーバが指示されるため(ステップS55)、ハンドオーバを実施し、CDMA通信システムで通信の待ち受け状態となる(ステップS56)。
【0077】
そして、携帯電話機1は、一斉呼び出し応答の信号をCDMA通信システムへ送信し(ステップS57、図3のステップS3に相当)、接続処理を行ってGPS測位に関するデータ通信のためのセッションを開始する(ステップS58、図3のステップS4に相当)。その後、携帯電話機1は、図3の処理と同様に、所定の手順でGPS測位を実行する。
【0078】
このように、携帯電話機1は、通話終了に応じて即座にLTE通信システムへハンドオーバを実施すると、測位要求(ステップS51)があった場合に、ステップS52〜S56において再度CDMA通信システムへハンドオーバを実施しなければならない。これにより、緊急機関に対する位置測位情報の送信の遅延、あるいは処理負荷の増大が生じることとなる。しかし、本実施形態によれば、図7に示した例と比較して、この通信システムの切り替えに関する不都合を回避し、通信をより効率的に行える。なお、本実施形態においては、緊急呼だけではなくSMSの送信に関しても同様に、位置測位情報の送信の遅延回避、あるいは処理負荷の増大回避といった効果も得られる。
【0079】
また、本実施形態によれば、携帯電話機1は、音声通話(あるいはSMS送信)の完了後、GPS測位の結果を応答していない場合に、所定時間が経過するまでLTE通信システムへのハンドオーバを待機する。したがって、携帯電話機1は、緊急呼(あるいはSMS送信)に応じて測位要求が送信される期限(所定時間)までの間で、適切なタイミングにLTE通信システムへ復帰できる。その結果、通信をより効率的に行える。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0081】
第1の通信システムは、LTE方式には限られず、音声発着信のルーチン、あるいはSMS送受信のルーチンを持たない通信方式であれば、例えば、WiMAX方式等でもよく、発信処理に関して、CS Fallbackに相当する機能が実装可能であれば本発明は適用可能である。
【0082】
また、本発明に係る無線端末装置は、携帯電話機1には限られない。本発明は、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機、ナビゲーション装置、パーソナルコンピュータ、通信機能に特化した通信専用モジュール等、様々な装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 携帯電話機(無線端末装置)
11 操作部
21 表示部
30 制御部
31 通信切替部
32 判定部
40 通信部
50 記憶部
60 音声制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信システムと、前記第1の通信システムではサポートされない機能がサポートされる第2の通信システムとを選択的に切り替えて通信する通信切替部と、
前記第1の通信システムにて位置登録される状況で所定の発信が要求された際、当該発信が、当該発信の後に前記第2の通信システムでの位置測位が要求される所定の通信種別に関するものであるか否かを判定する判定部と、を備え、
前記通信切替部は、
前記判定部により、前記発信が前記所定の通信種別に関するものでないと判定された場合、前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了した後、位置登録先を前記第1の通信システムへ優先的に変更し、
前記発信が前記所定の通信種別に関するものであると判定された場合、前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了した後も、引き続き当該第2の通信システムへの位置登録を継続する無線端末装置。
【請求項2】
前記通信切替部は、前記判定部により前記所定の通信種別であると判定され、かつ前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了してから所定時間が経過するまでの間に前記位置測位の要求を受信した場合、位置情報を送信し、当該位置情報の送信の完了の後に前記第1の通信システムへ優先的に位置登録先を変更する請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記通信切替部は、前記判定部により前記所定の通信種別であると判定され、かつ前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了してから前記位置測位の要求を受信せずに所定時間が経過した場合、前記第1の通信システムへ優先的に位置登録先を変更する請求項1又は請求項2に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記通信切替部は、前記第1の通信システムと前記第2の通信システムとの間で位置登録先を変更する際、前記第1の通信システムにおける第1の通信エリア区分と、前記第2の通信システムにおける第2の通信エリア区分との位置関係を把握している前記第1の通信システムの制御装置から、接続先変更のための補助情報を受信する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項5】
前記所定の通信種別は、緊急呼である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項6】
前記所定の通信種別は、SMS(ショートメッセージサービス)である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項7】
前記第1の通信システムは、LTE方式又はWiMAX方式であり、前記第2の通信システムは、CDMA方式である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項8】
前記第1の通信システムはLTE方式であり、前記第2の通信システムはCDMA方式であって、
前記補助情報の受信は、3GPP TS 23.272において規定されるCS−Fallback機能に準拠している請求項4に記載の無線端末装置。
【請求項9】
無線端末装置の通信制御方法であって、
第1の通信システムと、前記第1の通信システムではサポートされない機能がサポートされる第2の通信システムとを選択的に切り替えて通信する通信切替ステップと、
前記第1の通信システムにて位置登録される状況で所定の発信が要求された際、当該発信が、当該発信の後に前記第2の通信システムでの位置測位が要求される所定の通信種別に関するものであるか否かを判定する判定ステップと、を含み、
前記通信切替ステップにおいて、
前記判定ステップで、前記発信が前記所定の通信種別に関するものでないと判定された場合、前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了した後、位置登録先を前記第1の通信システムへ優先的に変更し、
前記発信が前記所定の通信種別に関するものであると判定された場合、前記第2の通信システムにて前記発信に基づく通信を完了した後も、引き続き当該第2の通信システムへの位置登録を継続する通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9169(P2013−9169A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140660(P2011−140660)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】