説明

無線端末

【課題】2つの音声出力装置の一方の音声出力レベルを弱音もしくはミュートさせることによって、使用者に品質の良い聞き取り易い通話を行う手段を提供する。
【解決手段】データフレーム300中の情報シンボル303内に個別情報格納エリア304を設ける。個別情報格納エリア304中に移動局用個別ID305と基地局用個別ID306を並存させる。基地局が折り返し波を出力する際には、発信元移動局の移動局用個別ID305の内容をそのまま生かした状態で、基地局用個別ID306に基地局自身の情報を追加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一の基地局の配下に2以上の移動局が属する無線通信システム、特に直接通信波と基地局折り返し通信波のデータの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上移動通信用デジタル無線端末において、現在実用化されているデジタル無線システムとして、社団法人電波産業会が策定したARIB STD―T61(Association of Radio Industries and Businesses Standard‐T61:非特許文献1)にて定められている狭帯域デジタル通信システム、あるいはARIB STD‐T79(Association of Radio Industries and Businesses Standard‐T79:非特許文献2)で定められている移動通信システム等がある。
【0003】
これらのデジタル通信システムは、複数の基地局と多数の移動局から構成されており、移動局端末間の通信を行う移動局間直接通信モードと当該基地局無線装置を介して指令卓と移動無線局間の通信を行う基地局通信モードがある。
【0004】
図1は、従来の無線通信システムの一例を示す概略図である。
【0005】
図1の無線通信システムは、基地局101、移動局102―1、102―2、・・・102―Nを含んで構成される。以下、不特定の上記移動局を表すときは「移動局102―1など」と表記する。
【0006】
基地局101は、移動局102―1などと通信を行う、インフラ側の設備である。
【0007】
移動局102―1などは、例えば車両等に搭載される車載無線装置やハンディタイプの携帯無線装置等の移動局である。
【0008】
基地局通信モードにおいては、移動局102から基地局101への上り方向周波数FL103と下り方向周波数FH104とが一組のペア波になっており、基地局101と移動局102間により通信を行う。
【0009】
移動局間直接通信モードにおいては、基地局101を介さずに周波数FL103を用い移動局102−1と102−2間通信を行うもの(直接通信波)と、移動局102から基地局101を経由して通信を行うもの(基地局折り返し通信波)とがある。
【0010】
このような通信モードの場合、例えば、移動局102―1が二波受信可能な機能を有している場合、移動局102―2からの基地局折り返し通信波(上り波FL103を用い基地局101を経由して下り波FH104にて通信を行う)と直接通信波FL103の両方が受信可能となる。このとき、各々の通信波を別々の音声出力装置(スピーカ等)から出力させる場面も想定される。
【0011】
また、特開2001−036961号公報(特許文献1)などが先行技術として上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−036961号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ARIB STD―T61
【非特許文献2】ARIB STD―T79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記のように基地局折り返し通信波と直接通信波FL103の両方を受信可能な機能構成を有している場合、移動局102―2からの上り波FL103を用い基地局101を経て下り波FH104にて受信する基地局折り返し通信波と移動局102―2からの直接通信波FL103の両方を受信可能となる。
【0015】
その際、各々の通信波を別々の音声出力装置(スピーカ等)から出力することが可能な移動局102−1がある場合、基地局折り返し通信波と移動局間の直接通信波との音声伝達経路差(人為的なマルチパスフェージング)などにより、音声遅延が生じるような場合などは、2つの音声がエコーのように聞こえる可能性がある。業務用無線の利用分野には、消防、ガス、電力、空港などの公共機関も含まれており、このような不快なエコーは業務遂行の妨げともなりかねない。
【0016】
例えば、災害時の緊急警報などの重要な音声情報を提供するため、音声情報が聞き取りづらいなどの支障をきたすことがある。また民生用においてもエコーやハウリングのように聞こえ、快適な操作環境とは言いがたい(この問題点の発生については図6でもあらためて述べる)。
【0017】
本発明の目的は、2つの音声出力装置の一方の音声出力レベルを弱音もしくはミュートさせることによって、使用者に品質の良い聞き取り易い通話を行う手段を提供することにある。
【0018】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0020】
本発明の代表的な実施の形態に関わる無線端末は、無線端末間で直接通信に用いる直接通信波と前記無線端末間を基地局を介して中継通信を行う基地局折り返し通信波の2つの信号を受信して異なるスピーカから若しくは受信信号を合成して一つのスピーカから音声出力することが可能な無線通信システムにおけるものであって、受信信号を復調して、当該復調信号が同一送信端末からの送信信号である場合には、一方の音声出力をミュート若しくは弱音とすることを特徴とする。
【0021】
この無線端末は、前記直接通信波及び前記基地局折り返し通信波の信号中に含まれる送信側の無線端末のIDを比較し、比較の結果前記直接通信波及び前記基地局折り返し通信波の信号中に含まれる送信側の無線端末のIDが一致する場合には、一方の音声出力をミュート若しくは弱音とすることを特徴としても良い。
【0022】
また、この無線端末は、前記直接通信波及び前記基地局折り返し通信波の信号それぞれの受信信号強度を算出して比較し、値が低い方の波に対応する音声出力をミュート若しくは弱音とすることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明に関する移動局及び基地局を用いた無線通信システムを用いる事で、同一の音声データを伝播遅延分異なるタイミングで再生することによるエコーの発生を防止でき、快適な操作環境を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の無線通信システムの一例を示す概略図である。
【図2】本発明に関わる音声出力部を二系統有している場合の無線機音声部の一例を示したブロック図である。
【図3】本発明におけるデータ送受信に関わるデータフレームの音声データフォーマットを表す概念図である。
【図4】本発明における基地局経由を行わずに音声データ通信を行う場合の処理の流れを表す概念図である。
【図5】本発明における基地局経由により音声データ通信を行う場合の処理の流れを表す概念図である。
【図6】本発明に関わる処理を行わない場合の二系統入力時の処理の流れを表す概念図である。
【図7】本発明に関わる処理を行う場合の二系統入力時の処理の流れを表す概念図である。
【図8】本発明に関わる処理を行う場合の異なる移動局に由来する二系統入力時の処理の流れを表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。しかし、特に明示した場合を除き、それは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものでなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0026】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合を除き、必ずしも必須のものでないことは言うまでもない。
【0027】
以下、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
<第1の実施の形態>
図2は本発明に関わる音声出力部を二系統有している場合の無線機音声部200の一例を示したブロック図である。
【0029】
この無線機音声部200は制御部201、アンテナ202、203、無線部204、205、AIU209、210、アンプ211、212、スピーカ213、214、マイク215を含んで構成される。
【0030】
制御部201は、信号処理部206、MPU207、PLD208を内部に含む信号制御回路である。
【0031】
アンテナ202、203は外部から入力される電波を受信し、アナログ信号を抽出するための共振回路である。
【0032】
無線部204、205は、アンテナ202、203によって得られたアナログ信号の増幅、復調などを行い、制御部201によって取り扱えるデータ形式に変更する無線回路である。図1の例で言えば、FL103及びFH104の双方に対応する無線部を用意する。
【0033】
なお、ここでは異なるアンテナ202、203からそれぞれ無線部204、205に受信した信号を供給しているが、アンテナを一つとして、アンテナの出力を分岐して無線部204、205にそれぞれ受信した信号を供給するような構成であっても良い。
【0034】
本発明においては上り方向(移動局から基地局)への電波と下り方向(基地局から移動局)への電波の周波数は異なることを想定している。また他の移動局から出力される上り方向(移動局から基地局)への電波を受信する必要もある。従って、FL103(上り方向)及びFH104(下り方向)双方に対応するために、無線部204、205は異なる周波数に対応した無線部であることを想定する。しかし、符号分割多重方式などの多重化方式を用いた場合には、双方同一の周波数であることも考えられる。また符号分割多重方式などの多重化方式を用いた場合には、信号処理部206の処理能力が高い場合には無線部は一つで済む場合も考えられる。本発明は、これらの場合を排除するものでない。ここでは2つの無線部が存在するとして説明する。また、便宜上ここでは、FL103に対応する無線部を無線部204、FH104に対応する無線部を無線部205とする。
【0035】
信号処理部206は入出力信号のレベル調整、変復調、デジタルアナログ変換/アナログデジタル変換などの入出力信号処理を行う回路である。
【0036】
MPU207は、信号処理部206を制御する処理装置である。
【0037】
PLD208は、ユーザ側で機能追加などを行うためのプログラマブルロジックデバイスである。
【0038】
AIU209、210は、オーディオ出力系のコーデック回路である。信号処理部206が出力するデジタル形式の音声データをアナログ形式に変換する機能を持つ。本図において、AIU210はマイク215からの入力も処理する必要がある。したがって、AIU210はアナログ信号からデジタル信号への変換処理なども必要となる。
【0039】
アンプ211、212は、AIU209、210が出力するアナログ形式の音声データを増幅する増幅器である。
【0040】
スピーカ213、214は、アンプ211、212が増幅した音声データを出力するスピーカである。
【0041】
マイク215は、無線機音声部200が含まれる無線機の操作者の音声などを入力するためのマイクである。
【0042】
次に、本無線機音声部200の動作について説明する。
【0043】
マイク215から入力されたアナログ音声信号は、AIU210でデジタル信号に変換される。制御部201を経て、デジタル信号に変換された音声信号は無線部204に入力される。無線部204にて伝送路符号化された後に、アンテナ202から音声信号は出力される。
【0044】
また受信時には、アンテナ202、無線部204を経て、制御部201にて信号処理された音声デジタル信号は、AIU209、210にてアナログ信号へ変換され、アンプ211、212にて増幅し、スピーカ213、214より出力される。
【0045】
ここで無線機音声部200が基地局折り返し通信波と直接通信波双方を受信する場合を考える。アンテナ202、203、無線部204、205を経て、信号処理部206にて処理される。この際、基地局折り返し通信波と直接通信波の二種の送信形態を持つ本願では、基地局への送信にも当たるため上り方向に属するFL103と、基地局からの下り方向の信号であるFH104は異なる周波数を持ち別々の信号(音声データ)として取り扱われる。
【0046】
このように同じ音声データを伝播経路の相違により別々の信号として受信して音声として出力することで、伝播経路の相違による遅延分出力がずれることとなる。このことで、エコーやハウリングのような不快な現象を防止することが本発明の目的である。
【0047】
次に、本発明におけるデータ送受信に関わるデータフレームのフォーマットについて説明する。
【0048】
図3は、本発明におけるデータ送受信に関わるデータフレーム300の音声データフォーマットを表す概念図である。このデータフォーマットは、ARIB STD―T61の「4.1.7 機能チャネルの定義」に記載の同期バースト(SB0)に対応している。
【0049】
このデータフレーム300は、同期ワード302と情報シンボル303を含んで構成される。なお、ガードタイムは本図では省略している。
【0050】
同期ワード302とは、フレーム同期に利用するビット列のことを言う。上記のARIB STD―T61「4.1.7 機能チャネルの定義」中では、LP+R、Pb、RI、SWを指す。
【0051】
情報シンボル303とは、上記ARIB STD―T61ではパラメータ情報チャネルPICH(PI)であらわされている箇所である。パラメータ情報チャネルPICHとは、ポイント―ポイント又はポイント―マルチポイントの双方向チャネルであり、同期バーストに付随してユーザ固有の情報などを転送する機能チャネルである。本発明においてはFH104がポイント(基地局)―ポイント(ある移動局)、FL103がポイント(ある移動局)―マルチポイント(基地局と他の1の移動局)となる。
【0052】
この情報シンボル303中には個別情報格納エリア304が確保されている。
【0053】
個別情報格納エリア304はFL103の送信元移動局に関連する情報及びFH104の送信元基地局に関する情報を格納する記憶領域である。FL103の送信元移動局に関連する情報は、個別情報格納エリア304の移動局用個別ID305に格納される。また、FH104の送信元基地局に関する情報は、基地局用個別ID306に格納される。
【0054】
移動局用個別ID305は送信元の移動局を示す識別子を格納するデータ領域である。
【0055】
基地局用個別ID306は送信元の基地局を示す識別子を格納するデータ領域である。
【0056】
なお、FL103の送信元移動局に関連する情報及びFH104の送信元基地局に関する情報として何を用いるかは設計事項であり、ここでは限定しない。
【0057】
次に、このデータフォーマットを用いて、どのように通信が行われるかを説明する。
【0058】
図4は、本発明における基地局経由を行わずに音声データ通信を行う場合の処理の流れを表す概念図である。この場合、基地局101に生じた障害若しくは中継機能の停止などにより、移動局102−1と移動局102−2との直接通信しかできない場合を想定する。
【0059】
移動局102−1はFL103上に音声データを出力する。この際、FL103中の情報シンボル303の個別情報格納エリア304のデータ領域である移動局用個別ID305には、移動局102−1を示すIDが格納される。一方、個別情報格納エリア304の基地局用個別ID306には何も格納されない。
【0060】
このような状態では、マルチパスの問題は生じないため、特に追加の処理は生じない。
【0061】
図5は、本発明における基地局経由により音声データ通信を行う場合の処理の流れを表す概念図である。この場合、移動局102−1と移動局102−2の距離が離れておりFL103により直接通信ができない場合を想定する。
【0062】
移動局102−1はFL103−2に音声データを付加して出力する。この際、FL103−2中の情報シンボル303の個別情報格納エリア304のデータ領域である移動局用個別ID305には、移動局102−1を示すIDが格納される。一方、個別情報格納エリア304の基地局用個別ID306には何も格納されないのは図4と同じである。
【0063】
これを基地局101が受信する。基地局101は、受信したFL103−2の情報シンボル303の個別情報格納エリア304のデータ領域である基地局用個別ID306に自身の基地局に関する情報を代入する。
【0064】
上記代入後の情報シンボル303を代入して、基地局101はFH104−2を移動局102−2に送信する。移動局102−2はこれを受信し、スピーカ213または214から音声出力を行う。
【0065】
この場合もマルチパスの問題は生じない。
【0066】
次に本発明に関わる処理を行わない場合について説明する。
【0067】
図6は、本発明に関わる処理を行わない場合の二系統入力時の処理の流れを表す概念図である。
【0068】
この場合、移動局102−1はFL103−3に音声データを付加して出力する。この際、FL103−3中の情報シンボル303の個別情報格納エリア304のデータ領域である移動局用個別ID305には、移動局102−1を示すIDが格納される。また個別情報格納エリア304の基地局用個別ID306には何も格納されない。
【0069】
このFL103−3を基地局101及び移動局102−2が受信したものとする。本形態では、基地局101が個別情報格納エリア304の基地局用個別ID306に自身の基地局IDを入力する。しかし、基地局からの送信であるので、FL103−3中の情報シンボル303の個別情報格納エリア304のデータ領域である移動局用個別ID305に記録されていた移動局102−1を示すIDはFH104−3中の情報シンボル303の個別情報格納エリア304のデータ領域である移動局用個別ID305には記録されない。こうして、受信したFL103−3の音声データをFH104−3として移動局102−2に送信する。
【0070】
このFL103−3の音声データとFH104−3の音声データは同じものである。しかし、この両者が同じものであることを同定する手段が無い。したがって、これらを受信した移動局102−2は両方とも出力する。これにより、通信波を別々の音声出力装置(スピーカ等)から出力するとエコーやハウリングのように聞こえることとなる。
【0071】
この図6の問題点に対応するものが図7の実施の形態である。図7は、本発明に関わる処理を行う場合の二系統入力時の処理の流れを表す概念図である。
【0072】
本発明の場合も、移動局102−1はFL103−4に音声データを載せて出力する。この際、FL103−4の情報シンボル303の個別情報格納エリア304のデータ領域である移動局用個別ID305には、移動局102−1を示すIDが格納される。また、個別情報格納エリア304の基地局用個別ID306についてもこれまでの物と同様である。
【0073】
FL103−4上に載せられる移動局102−1より出力されるこの音声データは移動局102−2及び基地局101に受信される。
【0074】
基地局101は、このFL103−4上の音声データを受信し、これに基づき内部処理を行う。
【0075】
基地局101は、FL103−4上の個別情報格納エリア304の内容を、FH104−4上の個別情報格納エリア304に複製する。そして、複製により生成したFH104−4上の個別情報格納エリア304の基地局用個別ID306に基地局101自身のIDを書き込む。その後、受信したFL103−4上のデータと同一のデータをFH104−4上を経由して移動局102−2に出力する。
【0076】
このようにすることで、移動局102−2は、移動局102−1から出力されたFL103−4上の音声データと基地局101から送信されたFH104−4上の音声データの双方を受信する。
【0077】
移動局102−2はFL103−4上の音声データの個別情報格納エリア304内の移動局用個別ID305とFH104−4上の音声データの個別情報格納エリア304内の移動局用個別ID305とを対比する。これら2つが相違するものであれば、移動局102−2はFL103−4上の音声データとFH104−4上の音声データの双方を出力する。
【0078】
一方、FL103−4上の音声データの個別情報格納エリア304内の移動局用個別ID305とFH104−4上の音声データの個別情報格納エリア304内の移動局用個別ID305とが、一致していた場合はいずれかの一方を無音状態にする。
【0079】
このようにすることで、FL103−4又はFH104−4のいずれかの音声データを再生し、エコーの発生を防止する。
【0080】
また一方を無音にする以外に、移動局102−2は一方を弱音にすることで実質エコーを回避することも可能である。
【0081】
なお、いずれを再生するかは、設計事項であり限定するものではない。例えば、基地局101経由の方が、電波状態が良好である場合が多い。したがって、移動局102−2はFL103−4受信後一定時間中にFH104−4には、FH104−4に添付された音声データのみを再生するようにしても良い。また、先着順に再生する、伝播経路上FL103−4の方が必ず早く到着するとみなして、必ずFL103−4のみを再生するなどの処理も考えられる。
【0082】
さらに、直接通信波と基地局折り返し通信波とが異なる移動局からの送信である場合の動作を考える。
【0083】
図8は、本発明に関わる処理を行う場合の異なる移動局に由来する二系統入力時の処理の流れを表す概念図である。
【0084】
この図では、移動局102−1から直接通信波で移動局102−2に対して出力が行われている。また、移動局102−3から基地局折り返し通信波で移動局102−2に対して出力が行われている。
【0085】
移動局102−1はFL103−5に音声データを載せて出力する。この際、FL103−5の情報シンボル303の個別情報格納エリア304のデータ領域である移動局用個別ID305には、移動局102−1を示すIDが格納される。また、個別情報格納エリア304の基地局用個別ID306についてもこれまでの物と同様不定である。
【0086】
一方、移動局102−3はFL103−6に音声データを載せて出力する。この際、FL103−6の情報シンボル303の個別情報格納エリア304のデータ領域である移動局用個別ID305には、移動局102−3を示すIDが格納される。また、個別情報格納エリア304の基地局用個別ID306については不定である。
【0087】
FL103−6上に載せられる移動局102−3より出力されるこの音声データは基地局101に受信される。
【0088】
基地局101は、FL103−6上の個別情報格納エリア304の内容を、FH104−6上の個別情報格納エリア304に複製する。そして、複製により生成したFH104−6上の個別情報格納エリア304の基地局用個別ID306に基地局101自身のIDを書き込む。その後、受信したFL103−6上のデータと同一のデータをFH104−6を経由して移動局102−2に出力する。
【0089】
FH104−6及びFL103−5の双方を受信した移動局102−2は、FH104−6及びFL103−5それぞれの個別情報格納エリア304内の移動局用個別ID305を対比するのは図7同様である。
【0090】
ただし、FH104−6の個別情報格納エリア304内の移動局用個別ID305は移動局102−3を示す値が格納されている。またFL103−5の個別情報格納エリア304内の移動局用個別ID305は移動局102−1を示す値が格納されている。この場合、双方のデータが相違するために、移動局102−2はスピーカ213、214から双方の音声を出力することで、円滑な業務を行うことが可能である。
【0091】
以上説明した第1の実施の形態によれば、無線端末間で直接通信波と基地局折り返し通信波の2つの信号を受信してスピーカから音声出力することが可能な無線通信システムにおいて、直接通信波と基地局折り返し通信波の信号が同一送信端末からの送信信号である場合、具体的には、直接通信波と基地局折り返し通信波の信号中に含まれる個別情報格納エリア304内の移動局用個別ID305を比較し、一致する場合には、一方の音声出力をミュート若しくは弱音とすることで、エコーやハウリングのような不快な現象を防止することができるので、快適な操作環境を提供することが可能となる。
【0092】
<第2の実施の形態>
前述した第1の実施の形態においては、直接通信波と基地局折り返し通信波の信号中に含まれる個別情報格納エリア304内の移動局用個別ID305を比較し、一致する場合には、一方の音声出力をミュート若しくは弱音とする例を説明したが、第2の実施の形態は、直接通信波と基地局折り返し通信波の信号それぞれの受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を算出して比較し、値(レベル)の低い方の波に対応する音声出力をミュートもしくは弱音とする例である。
【0093】
第2の実施の形態においては、無線機音声部200の構成や動作、音声データ通信を行う場合の処理の流れ、二系統入力時の処理の流れなどの基本的な部分は、前記第1の実施の形態1と同様であるので、ここでは、前記第1の実施の形態1と異なる部分を主に説明する。
【0094】
第2の実施の形態においても、無線機音声部200の構成は、前述した図2と同様である。すなわち、本実施の形態の無線機音声部200は、制御部201、アンテナ202、203、無線部204、205、AIU209、210、アンプ211、212、スピーカ213、214、マイク215を含んで構成される。
【0095】
さらに、この無線機音声部200内の制御部201は、信号処理部206、MPU207、PLD208を内部に含んで構成される。特に、本実施の形態において、制御部201内の信号処理部206は、直接通信波と基地局折り返し通信波の信号それぞれの受信信号強度(RSSI)を算出して、入力レベルを比較する機能を備えている。
【0096】
また、無線通信システムの構成も、前述した図1と同様の構成を想定している。すなわち、無線通信システムは、基地局101、移動局102―1、102―2、・・・102―Nを含んで構成される。
【0097】
以上のような、無線通信システムの構成、無線機音声部200の構成において、特に、本実施の形態においては、基地局101による運用エリア内に、当該基地局101を介して基地局折り返し通信波で通信を行う通信モードと、当該基地局101を介さずに直接通信波で通信を行う通信モードとで運用している複数の移動局102―1〜102―Nがある場合などには、例えば、2つの信号の受信信号強度(RSSI)を信号処理部206にて比較して、レベルの小さい方の出力レベルを低減、もしくはミュートさせる。この出力レベルの低減もしくはミュートさせる機能は任意に選択可能とする。
【0098】
例えば、アンテナ202から入力した受信音声信号を、無線部204、制御部201、AIU209、アンプ211を経て、スピーカ213へ出力し、かつ、アンテナ203から入力した受信音声信号を、無線部205、制御部201、AIU210、アンプ212を経て、スピーカ214へ出力するような構成を有している場合、アンテナ202とアンテナ203とから入力した受信音声信号について、制御部201内の信号処理部206において、それぞれのRSSIを算出して、それぞれの算出値から入力レベルの比較を行う。
【0099】
この比較の結果、例えば、アンテナ203側の入力レベルが小さい場合には、このアンテナ203から入力した音声信号を出力するスピーカ214からの出力レベルを低減するか、もしくはミュートさせる。この場合には、他方のアンテナ202側の入力レベルは大きいので、このアンテナ202から入力した音声信号を出力するスピーカ213からの出力レベルはそのままか、もしくはアンプ211で増幅してスピーカ213から出力させる。このようにして、入力レベルが小さい方の出力レベルを低減もしくはミュートさせる。
【0100】
以上説明した第2の実施の形態によれば、無線端末間で直接通信波と基地局折り返し通信波の2つの信号を受信してスピーカから音声出力することが可能な無線通信システムにおいて、直接通信波と基地局折り返し通信波の信号それぞれの受信信号強度(RSSI)を算出して比較し、値(レベル)の低い方の波に対応する音声出力をミュートもしくは弱音とすることで、エコーやハウリングのような不快な現象を防止することができるので、音声品質の良い通信の確保が可能となる。
【0101】
<第1および第2の実施の形態の変形例>
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【0102】
たとえば、上記では基地局経由と直接通話の2つの経路が存在することを想定して説明した。しかし、音声出力装置がN個ある場合、N−1個の音声出力制御ができることは本発明の射程に含まれる。
【0103】
また、上記図8については2つのスピーカそれぞれから別の音声データに基づく出力されることを想定している。しかし、スピーカを一つにし、信号処理部206で双方の音声データを合成して出力することも本発明の射程に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は自治体防災無線などシステムに属する端末が限定され、直接通信波及び基地局折り返し通信波を併用するシステムでの使用を想定している。しかしこれに拘るものではなく、直接通信波及び基地局折り返し通信波のデータの同一性によるエコーなどの発生を防ぐ目的で、他の通信システムに用いても良い。
【符号の説明】
【0105】
101…基地局、102―1、102―2、102―N…移動局、
103、103−1、103−2、103−3、103−4、103−5、
103−6…FL、
104、104−2、104−3、104−4、104−6…FH、
200…無線機音声部、201…制御部、202、203…アンテナ、
204、205…無線部、206…信号処理部、207…MPU、
208…PLD、209、210…AIU、211、212…アンプ、
213、214…スピーカ、215…マイク、300…データフレーム、
302…同期ワード、303…情報シンボル、304…個別情報格納エリア、
305…移動局用個別ID、306…基地局用個別ID。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末間で直接通信に用いる直接通信波と前記無線端末間を基地局を介して中継通信を行う基地局折り返し通信波の2つの信号を受信して異なるスピーカから若しくは受信信号を合成して一つのスピーカから音声出力することが可能な無線通信システムにおける無線端末であって、
受信信号を復調して、当該復調信号が同一送信端末からの送信信号である場合には、一方の音声出力をミュート若しくは弱音とすることを特徴とする無線端末。
【請求項2】
請求項1記載の無線端末であって、前記直接通信波及び前記基地局折り返し通信波の信号中に含まれる送信側の無線端末のIDを比較し、比較の結果前記直接通信波及び前記基地局折り返し通信波の信号中に含まれる送信側の無線端末のIDが一致する場合には、一方の音声出力をミュート若しくは弱音とすることを特徴とする無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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