説明

無線装置、無線システムおよび無線装置検出方法

【課題】無線装置に電波を放射した際に、より大きい発熱量を急峻に得られるようにする。
【解決手段】ICタグ100において、比較器136は、受信電力が所定の大きさ以上であると判定すると、アンテナ101とコンデンサ121とを接続するようにスイッチ102を制御する。この状態において、アンテナ101がICタグリーダから送信される電波を受信することで、アンテナ101が発熱する。この状態では、RF回路111がアンテナ101から切り離されているので、ICタグリーダが強い電波を送信してアンテナ101の発熱量を大きくすることができ、より大きい発熱量を急峻に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置、無線システムおよび無線装置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を行う無線装置には様々なものがある。例えば、ICタグは、ICタグリーダと無線通信を行う微小な無線ICチップである。ICタグを用いることで、例えば、商品の追跡・回収の際に商品を識別することが可能となり、物流の効率化を図ることができる。
特許文献1には、ICタグに電波を放射し、当該電波によるICタグの発熱パターンを検知することで、ICタグの位置や形状等を検出する技術が開示されている。
例えば、特許文献1に記載の電波ICタグシステムにおいて、ICタグ(電波ICタグ)には、フェライトなどの電波吸収体が設けられている。この電波吸収体は、所定の周波数の電波を吸収すると発熱する。そして、電波ICタグ走査装置が、電波を照射し、赤外線カメラで2次元赤外線分布データを得る。この2次元赤外線分布データから、ICタグに設けられた電波吸収体の発熱を検知することで、当該ICタグの位置や形状を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−199993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電波ICタグシステムのように、ICタグ等の無線装置に電波を放射し、当該電波による無線装置の発熱パターンを検出するシステムにおいて、放射する電波が弱いと、無線装置において充分な発熱量を得られず、当該無線装置の位置や形状の検出に時間がかかってしまう畏れがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、電波を放射した際に、より大きい発熱量を急峻に得られる無線装置、無線システムおよび無線装置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による無線装置は、第1のアンテナと、通信部と、共振部と、前記第1のアンテナと前記共振部とを接続して構成される回路を流れる電流を制御する電流制御部とを具備し、前記第1のアンテナと前記通信部とを接続して構成される回路を流れる電流によって前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量よりも、前記第1のアンテナと前記共振部とを接続して構成される回路を流れる電流によって前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量が大きいことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様による無線装置は、上述の無線装置であって、前記電流制御部は、前記第1のアンテナの接続先を切り替える切替部であり、前記切替部により、前記第1のアンテナと前記通信部とを電気的に接続する第1の形態と、前記切替部により、前記第1のアンテナと前記共振部とを電気的に接続する第2の形態とを有し、前記第1の形態において前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量よりも、前記第2の形態において前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量が大きいことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様による無線装置は、上述の無線装置であって、第2のアンテナと、前記第2のアンテナで受信した電波に起因する電圧値を検知する再生電圧検知回路とを備え、前記再生電圧検知回路は、検知した前記電圧値によって前記切替部を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様による無線装置は、上述の無線装置であって、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは同一のアンテナであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様による無線システムは、第1の無線装置と、前記第1の無線装置と通信を行う第2の無線装置と、前記第1の無線装置の発熱を検出する発熱検出装置と、を具備し、前記第1の無線装置は、第1のアンテナと、通信部と、共振部と、前記第1のアンテナと前記共振部とを接続して構成される回路を流れる電流を制御する電流制御部とを具備し、前記第1のアンテナと前記通信部とを接続して構成される回路を流れる電流によって前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量よりも、前記第1のアンテナと前記共振部とを接続して構成される回路を流れる電流によって前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量が大きく、前記発熱検出装置は、二次元の温度分布を検出する温度センサと、前記温度センサの検出する温度分布に基づいて、前記第1の無線装置の前記第1のアンテナの発熱による温度変化を検出する温度変化検出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様による無線装置検出方法は、第1の無線装置と、前記第1の無線装置と通信を行う第2の無線装置と、前記第1の無線装置の発熱を検出する発熱検出装置と、を具備する無線システムの無線装置検出方法であって、前記第1の無線装置が、前記第2の無線装置と無線通信を行う通信ステップと、前記第1の無線装置が、前記第2無線装置の送信する電波を取得して発熱する発熱ステップと、前記通信ステップと、前記発熱ステップとのいずれを実行するかを制御する制御ステップと、を備え、前記発熱検出装置は、二次元の温度分布を検出する温度分布検出ステップと、前記温度分布検出ステップにて検出する温度分布に基づいて、前記第1の無線装置が前記発熱ステップにて発熱することによる温度変化を検出する温度変化検出ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線装置が電波を受信した際に、無線装置が備えるアンテナが、より大きい発熱量を急峻に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態におけるICタグシステムの概略構成を示すシステム構成図である。
【図2】同実施形態におけるICタグリーダの概略構成を示す構成図である。
【図3】同実施形態における発熱検出装置の概略構成を示す構成図である。
【図4】同実施形態におけるICタグの概略構成を示す構成図である。
【図5】同実施形態におけるICタグの概略構成を示す構成図である。
【図6】同実施形態のICタグにおける再生電圧と、スイッチをコンデンサ121側に接続するタイミングとの関係を示す説明図である。
【図7】同実施形態のICタグにおける再生電圧と、スイッチをRF回路側に接続するタイミングとの関係を示す説明図である。
【図8】同実施形態において、アンテナとRF回路とが接続された回路における、抵抗、キャパシタンス、およびリアクタンスの等価回路を示す説明図である。
【図9】同実施形態において、スイッチをコンデンサ側に接続した際の、抵抗、キャパシタンス、およびリアクタンスの等価回路を示す説明図である。
【図10】同実施形態において、ICタグの位置を検出する際の、ICタグシステムの動作の例を示すシーケンス図である。
【図11】同実施形態において、ICタグリーダと通信を行う際のICタグの処理手順を示すフローチャートである。
【図12】同実施形態において、ICタグリーダと通信を行う際のICタグの処理手順を示すフローチャートである。
【図13】同実施形態において、ICタグの位置を検出する際の、ICタグリーダおよび発熱検出装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】同実施形態における、スイッチを用いずに通信用回路や発熱用回路を流れる電流を制御するICタグの概略構成を示す構成図である。
【図15】同実施形態における、コンデンサの温度と、コンデンサの容量と、ICタグの共振周波数との関係を示すグラフである。
【図16】同実施形態において、ICタグリーダがICタグに送信する電波の、周波数毎の受信電力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態では、本発明をICタグに適用した場合について説明するが、本発明は、ICタグに限らず様々な無線装置に適用可能である。ここでいう無線装置は、無線通信を行う装置であり、ICタグや携帯端末装置を含む。
図1は、本発明の一実施形態におけるICタグシステムの概略構成を示すシステム構成図である。同図において、ICタグシステム(無線システム)1は、ICタグ(無線装置、第1の無線装置)100と、ICタグ(無線装置、第1の無線装置)200と、ICタグリーダ(第2の無線装置)600と、発熱検出装置700とを具備する。
【0015】
ICタグリーダ600とICタグ100とは無線通信を行う。すなわち、ICタグリーダ600が送信する電波をICタグ100が受信し、また、ICタグ100が送信する電波をICタグリーダ600が受信する。加えて、ICタグ100は、ICタグリーダ600から送信される電波を吸収して発熱する。そして、発熱検出装置700は、ICタグ100の発熱による赤外線放射を検出することで発熱を検出し、ICタグ100の位置を検出する。
同様に、ICタグリーダ600とICタグ200とは通信を行い、加えて、ICタグ200は、ICタグリーダ600から送信される電波を吸収して発熱する。そして、発熱検出装置700は、ICタグ200の発熱による赤外線放射を検出することで発熱を検出し、ICタグ200の位置を検出する。
【0016】
なお、ICタグリーダ600と発熱検出装置700との構成は、図1に示す別装置としての構成に限らない。すなわち、ICタグリーダ600と発熱検出装置700とが、1つの筺体内に組み込まれて、1つの装置として構成されていてもよい。
また、ICタグシステム1の具備するICタグの数は1つまたはそれ以上であればよい。従って、ICタグシステム1が、1つまたはそれ以上のICタグ100を具備し、ICタグ200を具備しないようにしてもよい。逆に、ICタグシステム1が、1つまたはそれ以上のICタグ200を具備し、ICタグ100を具備しないようにしてもよい。あるいは、ICタグシステム1が、1つまたはそれ以上のICタグ100と、1つまたはそれ以上のICタグ200とを具備するようにしてもよい。なお、ICタグ100およびICタグ200のそれぞれの詳細については後述する。
【0017】
図2は、ICタグリーダ600の構成を示す概略ブロック図である。同図において、ICタグリーダ600は、入力装置601と、RF回路602と、通信回路603と、制御回路604と、メモリ605とを具備する。
入力装置601は、例えばキーボードやマウスなどの操作入力デバイスであり、ユーザの操作入力を受け付ける。特に、入力装置601は、ICタグ100の位置を検出する指示を示す操作入力や、ICタグ200の位置を検出する指示を示す操作入力を受け付ける。
【0018】
RF回路602は、電波の送受信を行うことで、ICタグ100やICタグ200との間で無線通信を行う。ICタグとの無線通信に用いる電波の帯域としては、125kHz帯、13.56MHz帯、2.45GHz帯、等がある。通信回路603は、発熱検出装置700との間で通信を行う。
制御回路604は、ICタグリーダ600の各部を制御する。特に、制御回路604は、入力装置601の受け付ける操作入力に従って、ICタグ100やICタグ200と通信を行うように、RF回路602を制御し、また、ICタグ100やICタグ200を発熱させるための電波を送信するように、RF回路602を制御する。また、制御回路604は、ICタグ100やICタグ200の発熱を検出するタイミングを示す信号を、発熱検出装置700に対して送信するように、通信回路603を制御する。
メモリ605は、RF回路602が送信する電波の送信電力の大きさの設定値や、ICタグ100やICタグ200の各々の識別情報(タグID)など、制御回路604がICタグリーダ600の各部を制御するための各種情報を記憶する。
【0019】
図3は、発熱検出装置700の概略構成を示す構成図である。同図において、発熱検出装置700は、赤外線センサ701と、通信回路702と、温度変化検出回路703と、メモリ704と、表示装置705とを具備する。
赤外線センサ701は、赤外線カメラを具備し、撮像範囲における赤外線を受光して二次元の温度分布を検出する。赤外線センサ701は、本発明における温度センサの一例であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。
【0020】
通信回路702は、ICタグリーダ600との間で有線または無線により通信を行う。特に、通信回路702は、ICタグリーダ600から送信されるところの、赤外線センサ701が温度分布を検出するタイミングを示す信号を受信する。
温度変化検出回路703は、通信回路702が受信する信号に基づいて、二次元の温度分布を検出するように赤外線センサ701を制御する。そして、温度変化検出回路703は、赤外線センサ701の検出結果に基づいて、ICタグ100やICタグ200の発熱による温度変化(特に、後述するアンテナ101(図4または図5)の発熱による温度変化)を検出する。温度変化検出回路703は、本発明における温度変化検出部の一例であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。
【0021】
メモリ704は、ICタグ100やICタグ200が発熱していない状態における温度分布の検出結果を一時的に記憶するなど、温度変化検出回路703が上記の温度変化を検出するための各種情報を記憶する。
表示装置705は、例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示画面を有し、各種情報を表示する。特に表示装置705は、ICタグ100やICタグ200の位置情報として、温度変化検出回路703が検出する温度変化を二次元画像にて表示する。
【0022】
図4は、ICタグ100の概略構成を示す構成図である。同図において、ICタグ100は、アンテナ(第1のアンテナ)101と、スイッチ(電流制御部、切替部)102と、RF回路(通信部)111と、CPU112と、メモリ113と、コンデンサ(共振部)121と、アンテナ(第2のアンテナ)131と、整流回路132と、コイル133と、平滑化コンデンサ134と、閾値電圧生成回路135と、比較器(再生電圧検知回路)136とを具備する。
また、アンテナ101の抵抗(Resistance)とリアクタンス(Reactance)とが、抵抗器(Resistor)R11とコイルL11とで構成される等価回路にて示されている。また、RF回路111の抵抗とキャパシタンス(Capacitance、静電容量)とが、コンデンサC12と抵抗器R12とで構成される等価回路にて示されている。
【0023】
アンテナ101は、電波の送受信を行うアンテナである。特に、アンテナ101は、RF回路111に接続された状態で、ICタグリーダ600から送信される電波を受信して当該アンテナ101に電圧を生じさせることで、ICタグリーダ600から送信される信号を電気信号(電流)としてRF回路111に出力する。また、アンテナ101は、コンデンサ121に接続された状態で、ICタグリーダ600から送信される電波を受信して電圧を生じさせることで、アンテナ101自らに電流を流して発熱する。また、アンテナ101は、RF回路111から出力される電流によって電波を送信する。
【0024】
スイッチ102は、アンテナ101を、RF回路111またはコンデンサ121のいずれか一方に接続する。スイッチ102は、比較器136から出力される信号に従って、アンテナ101の接続先を切り替える。
RF回路111は、アンテナ101と接続された状態において、アンテナ101から出力される高周波電流をデジタルの信号に変換して、CPU112に出力する。また、RF回路111は、CPU112から出力されるデジタルの信号を高周波電流に変換してアンテナ101に出力することで、アンテナ101を介してICタグリーダ600に信号を送信する。
なお、以下では、アンテナ101とRF回路111とで構成する回路を「通信用回路110」と称する。この通信用回路110は、本発明における第1の形態の一例であり、ICタグリーダ600のRF回路602(図2)との間で無線通信を行う。
【0025】
CPU112は、RF回路111を制御することで、ICタグリーダ600と通信を行う。より具体的には、CPU112は、RF回路111から出力されるデータ書込信号に従って、メモリ113にデータを書き込む。また、CPU112は、RF回路111から出力されるデータ読出信号に従って、メモリ113からデータを読み出し、RF回路111に出力する。
CPU112は、メモリ113からプログラムを読み出して実行することで、上述したICタグリーダ600との通信を行う。
メモリ113は、CPU112が読み出して実行するプログラムや、CPU112がICタグリーダ600と通信を行うための各種データを記憶する。
【0026】
コンデンサ121は、アンテナ101と接続された状態において、アンテナ101と共に共振回路を構成し、アンテナ101が電波を受信して共振回路に流す電流によって発熱する。
なお、以下では、アンテナ101とコンデンサ121とで構成する回路を「発熱用回路120」と称する。この発熱用回路120は、本発明における第2の形態の一例である。
【0027】
アンテナ131は、電波を受信するアンテナである。アンテナ131は、電波を受信して電圧を生じさせることで、整流回路132に交流電圧を供給する。アンテナ131は、本発明における受信部の一例である。
整流回路132は、アンテナ131から供給される高周波電圧を整流してコイル133に出力する。
【0028】
コイル133は、整流回路132から出力される、整流された電圧から高調波成分を除去する。平滑化コンデンサ134は、コイル133の一端に接続され、コイル133から出力される、高調波成分を除去された電圧を平滑化する。以下では、コイル133と平滑化コンデンサ134の接続箇所に生じる電圧を「再生電圧」と称する。この再生電圧は、アンテナ131が受信した電波によって生じる電圧を整流し、高調波成分を除去し、さらに平滑化して得られる電圧であり、アンテナ131が受信した電波の受信電力を示す。
【0029】
閾値電圧生成回路135は、比較器136が行う受信電力の大きさの判定の基準となる電圧を供給する。閾値電圧生成回路135は、例えば内臓の電池を具備して閾値電圧を生成する。以下では、閾値電圧生成回路135の供給する電圧を「閾値電圧」と称する。
【0030】
比較器136は、上記の再生電圧の大きさと閾値電圧の大きさとを比較することで、アンテナ131の受信電力が所定の大きさ以上か否かを判定する。
そして、比較器136は、アンテナ131の受信した電波の電力が所定の電力値以上であると判定した場合、すなわち、再生電圧(の大きさ)が閾値電圧(の大きさ)以上であると判定した場合は、電圧「High(高い)」(例えば5ボルト)の信号をスイッチ102に出力する。この電圧「High」の信号は、アンテナ101とコンデンサ121とを接続するようにスイッチ102を制御する信号である。
このように、比較器136は、アンテナ131で受信した電波に起因する電圧値(再生電圧の電圧値)を検出し、検出した電圧値によってスイッチ102を制御する。
なお、以下では、比較器136がスイッチ102に出力する信号を「発熱信号」と称する。
【0031】
一方、比較器136は、アンテナ131の受信した電波の電力が所定の電力値未満であると判定した場合、すなわち、再生電圧が閾値電圧未満であると判定した場合は、電圧「Low(低い)」(例えば0ボルト)の発熱信号をスイッチ102に出力する。この電圧「Low」の発熱信号は、アンテナ101とRF回路111とを接続するようにスイッチ102を制御する信号である。
【0032】
なお、比較器136がスイッチ102に出力する信号(発熱信号)は、アンテナ101をRF回路111とコンデンサ121とのどちらに接続するかを示す信号であればよく、様々なものを用いることができる。例えば、上記とは逆に、比較器136が、アンテナ101とコンデンサ121とを接続するようにスイッチ102を制御する信号として電圧「Low」の発熱信号を出力し、アンテナ101とRF回路111とを接続するようにスイッチ102を制御する信号として電圧「High」の発熱信号を出力するようにしてもよい。
【0033】
比較器136は、本発明の一実施形態におけるICタグ100の制御部の一部を構成し、上記のように、アンテナ131の受信する電波の電力の大きさに基づいてスイッチ102を制御することにより、アンテナ101を、RF回路111とコンデンサ121とのいずれか一方に接続させる。すなわち、比較器136は、アンテナ101とRF回路111とで構成する通信用回路110と、アンテナ101とコンデンサ121とで構成する発熱用回路120とのいずれか一方の回路を閉じ、他方の回路を開くようにスイッチ102を制御する。ここで、通信用回路110と発熱用回路120とのうち、回路を開かれたほうは、その内部に電流を流さない。この点で、比較器136は、スイッチ102を制御することによって、電流が通信用回路110を流れるか発熱用回路120を流れるかを制御する。
【0034】
なお、アンテナ101がアンテナ131を兼ねる(すなわち、アンテナ101とアンテナ131とが同一のアンテナである)ようにしてもよい。すなわち、RF回路111とコンデンサ121と整流回路132とがアンテナ101を共有するようにしてもよい。具体的には、アンテナ101に対してスイッチ102と整流回路132とを並列接続する。その際、アンテナ101と整流回路132との間にコンデンサを直列接続する(Cカップリングする)ことで、整流回路132における共振周波数を調整することができる。
【0035】
図5は、ICタグ200の構成を示す概略ブロック図である。同図において、ICタグ200は、アンテナ(第1のアンテナ、第2のアンテナ)101と、スイッチ(電流制御部、切替部)102と、RF回路(通信部)111と、CPU212と、メモリ113と、コンデンサ(共振部)121とを具備する。同図において、図4の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(101、102、111、113、121)を付して説明を省略する。
【0036】
上述したように、ICタグ100(図4)が、アンテナ101の受信する電波の電力の大きさ(ICタグリーダ600から送信される電波の電力の大きさ)に基づいてスイッチ102の制御を行うのに対して、ICタグ200は、ICタグリーダ600から送信される、通信用回路と発熱用回路との切替指示に従ってスイッチ102の制御を行う。すなわち、ICタグ200では、アンテナ101とRF回路111とが接続された形態において、アンテナ101がスイッチ102の制御(切替)を指示する電波を受信すると、当該指示に従ってアンテナ101の接続先を切り替える。
【0037】
CPU212は、CPU112(図4)と同様、RF回路111を制御することでICタグリーダ600と通信を行う。さらに、CPU212は、ICタグリーダ600から送信される、通信用回路と発熱用回路との切替指示を取得すると、当該指示に従ってスイッチ102を制御する。
【0038】
次に、図6および図7を参照して、ICタグ100(図4)におけるスイッチ102の切替タイミングについて説明する。
図6は、ICタグ100における再生電圧と、スイッチ102をコンデンサ121側に接続するタイミングとの関係を示す説明図である。同図の横軸は時刻を示し、縦軸は再生電圧の大きさを示す。
【0039】
ICタグリーダ600が、送信電力を徐々に大きくすることにより、図6に示すように、再生電圧が徐々に大きくなっていく。そして、同図では、時刻t11において、再生電圧の大きさが閾値電圧の大きさに達している。
同図において、再生電圧が閾値電圧よりも小さい時点、すなわち時刻t11よりも前の時点においては、比較器136は、電圧「Low」の信号をスイッチ102に出力し、スイッチ102は、アンテナ101とRF回路111とを接続している。この状態では、ICタグ100は、ICタグリーダ600との間で通信を行う。
【0040】
一方、再生電圧が閾値電圧以上である時点、すなわち時刻t11以後の時点においては、比較器136は、電圧「High」の信号をスイッチ102に出力し、スイッチ102は、アンテナ101とコンデンサ121とを接続している。この状態では、ICタグ100は、ICタグリーダ600から送信される電波を受信して発熱する。特に、アンテナ101に電流が流れることで、当該アンテナ101の有する抵抗(等価回路の抵抗R11にて示される抵抗)によって発熱する。
【0041】
このように、ICタグリーダ600から送信される電波(アンテナ101やアンテナ131の受信する電波)が強くなると、スイッチ102が、アンテナ101をコンデンサ121に接続する。これによって、アンテナ101とRF回路111とで構成する通信用回路110が開かれ、アンテナ101とコンデンサ121とで構成する発熱用回路120が閉じられる。
通信用回路110が開かれることで、RF回路111に過大な電圧がかかってRF回路111を損傷することを防止できる。また、発熱用回路120が閉じられた状態で、ICタグリーダ600が、送信電力を大きくすることで、発熱用回路120が、より急峻に、また、より高い温度に発熱し、発熱検出装置700が、ICタグ100の発熱による温度変化を、より正確に検出し得る。
【0042】
図7は、ICタグ100における再生電圧と、スイッチ102をRF回路111側に接続するタイミングとの関係を示す説明図である。図6の場合と同様、同図の横軸は時刻を示し、縦軸は再生電圧の大きさを示す。
【0043】
図6で説明した、ICタグ100における再生電圧が閾値電圧よりも大きくなった状態で、例えば、ICタグリーダ600が、電波を送信しないようにする。そうすると、コンデンサ121の自己放電(自然放電)によって、再生電圧の大きさは徐々に減少する。図7に示される例では、時刻が進むにつれて再生電圧の大きさが徐々に減少し、時刻t21において、再生電圧が閾値電圧VTと等しくなっている。
【0044】
図7において、再生電圧が閾値電圧以上である時点、すなわち時刻t21以前の時点においては、比較器136は、電圧「High」の信号をスイッチ102に出力し、スイッチ102は、アンテナ101とコンデンサ121とを接続している。この状態では、ICタグ100は、ICタグリーダ600から送信される電波を受信して発熱する。
【0045】
一方、再生電圧が閾値電圧よりも小さい時点、すなわち時刻t21よりも後の時点においては、比較器136は、電圧「Low」の信号をスイッチ102に出力し、スイッチ102は、アンテナ101とRF回路111とを接続している。このように、スイッチ102がコンデンサ121側に接続された状態において、ICタグリーダ600が電波を送信しない状態にして、時間が経過すると、スイッチ102がRF回路111側に接続され、ICタグ100とICタグリーダ600との間で再び通信を行えるようになる。なお、上述のように、ICタグリーダ600が電波を送信しない状態にする代わりに、強い電波の出力を抑制するようにしてもよい。
【0046】
次に、図8および図9を参照して、ICタグ100の発熱について説明する。
図8は、アンテナ101とRF回路111とが接続された回路における、抵抗、キャパシタンス、およびリアクタンスの等価回路を示す説明図である。
同図において、抵抗器R11とコイルL11とで、アンテナ101の等価回路を構成する。抵抗器R11の抵抗(抵抗値)が、アンテナ101の抵抗と等価であり、コイルL11のインダクタンスが、アンテナ101のインダクタンスと等価である。
また、コンデンサC12と抵抗器R12とで、RF回路111の等価回路を構成する。コンデンサC12のキャパシタンスが、RF回路111のキャパシタンスと等価であり、抵抗器R12の抵抗が、RF回路111の抵抗と等価である。
【0047】
ここで、抵抗器R11の抵抗をRで示し、コイルL11のインダクタンスをLで示し、コンデンサC12のキャパシタンスをCで示し、抵抗器R12の抵抗をRで示すと、アンテナ101とRF回路111とが接続された状態におけるアンテナ101のインピーダンスZは、式(1)のようになる。
【0048】
【数1】

【0049】
ここで、角周波数ωは、アンテナ101の受信する電波の周波数をfとして、ω=2πfとなる。
【0050】
一方、図9は、スイッチ102をコンデンサ121側に接続した際の、抵抗、キャパシタンス、およびリアクタンスの等価回路を示す説明図である。
図8の場合と同様、同図において、抵抗器R11とコイルL11とで、アンテナ101の等価回路を構成する。抵抗器R11の抵抗が、アンテナ101の抵抗と等価であり、コイルL11のインダクタンスが、アンテナ101のインダクタンスと等価である。
そして、このアンテナ101の等価回路が、コンデンサ121に接続されている。
【0051】
ここで、抵抗器R11の抵抗をRで示し、コイルL11のインダクタンスをLで示し、コンデンサ121のキャパシタンスをCresで示すと、アンテナ101とRF回路111とが接続された状態におけるアンテナ101のインピーダンスZは、式(2)のようになる。
【0052】
【数2】

【0053】
なお、式(1)の場合と同様、角周波数ωは、アンテナ101の受信する電波の周波数をfとして、ω=2πfとなる。
【0054】
コンデンサC12のキャパシタンスと、コンデンサ121のキャパシタンスとが、おおよそ等しい場合、Z>Zとなる。すなわち、図9に示す回路(アンテナ101とコンデンサ121とで構成する発熱用回路120)のインピーダンスのほうが、図8に示す回路(アンテナ101とRF回路111とで構成する通信用回路110)のインピーダンスよりも小さくなる。
【0055】
ここで、図8に示す回路と、図9に示す回路とにおいて、同じ大きさの誘導電圧が、アンテナ101(コイルL11)に生じた場合、これらの回路を流れる電流は、インピーダンスに反比例するので、図9に示す回路に流れる電流のほうが、図8に示す回路に流れる電流よりも大きくなる。
そして、発熱量は電流に比例するので、図9に示す回路における単位時間当たりの発熱量のほうが、図8に示す回路における単位時間当たりの発熱量よりも大きくなる。
なお、一般的にコンデンサには、純粋な容量成分だけでなく、等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance;ESR)等の寄生成分が存在する。コンデンサ121は、等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance;ESR)等の寄生成分が小さく良質な特性を有するコンデンサであることが望ましい。特に、コンデンサ121として等価直列抵抗が小さいものを用いて、図9に示す回路の抵抗値(インピーダンス)を図8に示す回路の抵抗値よりも小さくすることで、図9に示す回路における単位時間当たりの発熱量を、図8に示す回路における単位時間当たりの発熱量よりも大きくできる。すなわち、発熱用回路120における単位時間当たりの発熱量を、通信用回路110における単位時間当たりの発熱量よりも大きくできる。
【0056】
このように、コンデンサ121のキャパシタンスを、RF回路111のキャパシタンスとおおよそ等しくすると、同じ大きさのアンテナ受信電圧が生じた場合に、アンテナ101とコンデンサ121とで構成する発熱用回路120の発熱量が、アンテナ101とRF回路111とで構成する通信用回路110の発熱量よりも大きくなる。
さらに、図6に関連して上述したように、通信用回路110が開かれ、発熱用回路120が閉じられた状態では、ICタグリーダ600がより大きい電力の電波を送信して、アンテナ101に生じる受信電圧をより大きくすることができる。これにより、発熱用回路120が、より急峻に、また、より高い温度に発熱するようにできる。
【0057】
また、ICタグ200(図5)においても、アンテナ101とRF回路111とを接続して構成される通信用回路110や、アンテナ101とコンデンサ121とを接続して構成される発熱用回路120は、ICタグ100(図4)の場合と同様である。
【0058】
従って、ICタグ200においても、ICタグ100について上述したのと同様に、コンデンサ121のキャパシタンスを、RF回路111のキャパシタンスとおおよそ等しくすると、同じ大きさの誘導電圧が生じた場合に、アンテナ101とコンデンサ121とで構成される発熱用回路120の発熱量が、アンテナ101とRF回路111とで構成する通信用回路110の発熱量よりも大きくなる。
【0059】
さらに、通信用回路110が開かれ、発熱用回路120が閉じられた状態では、RF回路111に過大な電圧がかかってRF回路111を損傷することを防止でき、ICタグリーダ600がより強い電波を送信して、アンテナ101に生じる誘導電圧をより大きくすることができる。従って、ICタグ200(発熱用回路120)が、より急峻に、また、より高い温度に発熱するようにでき、発熱検出装置700が、ICタグ200の発熱による温度変化を、より正確に検出し得る。
【0060】
次に、図10〜図13を参照してICタグシステム1の動作について説明する。
図10は、ICタグ100の位置を検出する際の、ICタグシステム1の動作の例を示すシーケンス図である。ICタグシステム1において、例えば、ICタグリーダ600の入力装置601が、ICタグ100の位置を検出するよう指示する操作入力を受け付けると、同図の処理を開始する。
【0061】
同図において、ICタグリーダ600は、まず、比較的弱い電波に設定されている所定の初期送信電力にて(シーケンスS101)、ICタグ100に対してタグの種類を問い合わせる信号を送信する(シーケンスS102)。
そして、ICタグ100からの応答が無い場合、ICタグリーダ600は、段階的に送信電力を大きくして、ICタグに対してタグの種類を問い合わせる信号の送信を繰り返す(シーケンスS103)。このように、ICタグからの応答が無い場合に送信電力を徐々に大きくすることで、ICタグリーダ600が過大な送信電力の電波を送信して、ICタグに過大な電圧が生じ、当該ICタグを損傷することを防止できる。
【0062】
ICタグリーダ600が、タグの種類を問い合わせる信号を送信し(シーケンスS111)、ICタグ100が、RF回路111で処理可能な受信電力の電波を受信すると、当該ICタグ100は、タグの種類を回答する電波を送信する(シーケンスS112)。ここで、ICタグ100は、タグの種類の回答として、発熱タグであることを回答する。
【0063】
ここでいう「発熱タグ」は、通信用回路と発熱用回路とを備え、通信用回路を流れる電流を抑制でき、また、発熱用回路を発熱させることができるタグである。例えばICタグ100は、スイッチ102をコンデンサ121側に接続することで、通信用回路110を流れる電流を抑制でき、また、アンテナ101に生じる電圧で発熱用回路120を発熱させることができるので、発熱タグに該当する。
【0064】
ICタグリーダ600は、全てのICタグ100から発熱タグであることを示す回答を得た場合など、より強い電波を送信してもICタグを損傷しないと判定すると(シーケンスS121)、まず、発熱検出装置700に対して、温度分布の検出を開始するよう指示する信号を送信する(シーケンスS122)。
【0065】
そして、発熱検出装置700は、ICタグリーダ600からの指示に従って温度分布の検出を開始する(シーケンスS123)。具体的には、赤外線センサ701が、例えば一定周期で撮像を行い、撮像範囲内の温度分布を検出する。温度分布の検出を開始した段階では、発熱検出装置700は、ICタグ100が発熱する前の状態における温度分布を検出することになる。
【0066】
また、シーケンスS122において指示を送信したICタグリーダ600は、送信電力を大きく設定して(シーケンスS124)、電波の送信を行う(シーケンスS125)。当該電波を受信したICタグ100では、再生電力が閾値電力以上となったことを比較器136が検出すると、当該比較器136が、スイッチ102を制御してコンデンサ121側に接続されるようにする。これにより、アンテナ101とコンデンサ121とが接続される(シーケンスS126)。
【0067】
ここで、ICタグリーダ600は、図6に示すように、送信電力を徐々に、あるいは段階的に大きくする。これにより、図6で説明したように、ICタグ100のスイッチ102(図4)がコンデンサ121側に接続されるようにできる。すなわち、ICタグ100の通信用回路110が開く前にICタグリーダ600が過大な強さの電波を送信してRF回路111を損傷することを防止できる。
【0068】
ICタグ100において、アンテナ101とコンデンサ121とが接続され、ICタグリーダ600から送信される電波でICタグ100が発熱すると、発熱検出装置700は、ICタグ100の発熱による温度変化を検出する(シーケンスS131)。具体的には、赤外線センサ701が撮像を行う毎に、温度変化検出回路703が、当該撮像によって検出された温度分布と、ICタグ100が発熱する前の状態で得られた温度分布(シーケンスS123の段階で得られた温度分布)との差分を取ることで温度変化を検出する。
【0069】
このように温度変化検出回路703が温度変化を検出することで、ICタグ100の位置を検出することができる。例えば、温度変化検出回路703が、赤外線センサ701による撮像画像の画素毎の温度変化を検出し、検出結果を表示装置705が二次元画像にて表示することで、赤外線センサ701の撮像範囲内におけるどの位置で、ICタグ100の発熱による温度変化が検出されているかを示すことができる。すなわち、赤外線センサ701の撮像範囲内におけるICタグ100の位置を示すことができる。
【0070】
なお、ICタグシステム1が複数のICタグを具備する場合、ICタグ毎に発熱パターンを変えるようにしてもよい。ここで、発熱パターンとしては、例えば、発熱用回路120の形状を用いることができる。すなわち、ICタグ毎に発熱用回路120の形状(例えばアンテナ101の形状)が異なるようにすることで、温度変化検出回路703が温度変化を検出した部分の形状によって、どのICタグかを判定し得る。当該判定は、温度変化検出回路703が画像のパターンマッチングによって行うようにしてもよいし、表示装置705が表示する画像に基づいてユーザが行うようにしてもよい。
【0071】
なお、ICタグにおいて発熱部分の形状が変化するようにしてもよい。例えば、ICタグ100が、閾値電圧の異なる複数の発熱用回路120を具備し、ICタグリーダ600が送信電力を徐々に大きくすることで、複数の発熱用回路120が順に発熱するようにする。あるいは、ICタグ200が、複数の発熱用回路120を具備し、発熱用回路120毎に異なる発熱コマンド(ICタグリーダ600から送信される切替指示)によって、当該発熱用回路120が構成される(スイッチ102によって接続される)ようにしておく。そして、ICタグリーダ600が、一連の発熱コマンドを一定間隔で順に送信することで、複数の発熱用回路120が順に発熱するようにする。
このように、複数の形状を組み合わせることで、発熱パターンのバリエーションが増え、どのICタグを検出したかを、より正確に判定し得る。
【0072】
あるいは、発熱用回路120に比熱の大きい素材を用いて発熱用回路120が素早く温度変化するようにした場合や、発熱パターンの検出に時間をかけることができる場合、発熱用回路120が、モールス符号など所定のパターンに従って温度変化を繰り返すようにしてもよい。例えば、発熱用回路120が、さらに回路の開閉を行うスイッチを具備し、CPU112が当該スイッチの開閉を制御することで、発熱用回路120の温度を変化させる。
【0073】
あるいは、ICタグ毎に発熱用回路120の共振周波数が異なるようにし、ICタグリーダ600が、送信する電波の周波数を徐々に変化させるようにしてもよい。これにより、ICタグの共振周波数を検出することができ、どのICタグかを判定することができる。
例えば、図10のシーケンスS112において、ICタグ100が、自らのタグIDと共振周波数とを対応付けてICタグリーダ600に通知することで、ICタグリーダ600は、共振周波数とICタグとの照合を行うことができる。
【0074】
ICタグの検出を完了した発熱検出装置700は、検出を完了したことの通知を、ICタグリーダ600に送信する(シーケンスS132)。その際、発熱検出装置700が、検出したICタグの数をICタグリーダ600に送信するようにしてもよい。ICタグリーダ600が、発熱によって検出されたICタグの数と、通信に応答したICタグの数とを比較することで、発熱はするが通信に応答しないICタグの数、すなわち、通信用回路110が故障していると思われるICタグの数を検出することができる。
【0075】
ICタグの検出を完了したことの通知を受信したICタグリーダ600は、送信電力を小さく設定する(シーケンスS133)。これにより、ICタグリーダ600は、強い電波の出力を抑制する。
図7に関連して上述したように、ICタグリーダ600が強い電波の出力を抑制して時間が経過すると、ICタグ100において、再生電圧が閾値電圧未満となり、比較器136は、スイッチ102を制御してRF回路111側に接続されるようにする。これにより、アンテナ101とRF回路111とが接続され(シーケンスS134)、ICタグリーダ600とICタグ100との間で通信を行えるようになる(シーケンスS135、S136)。
【0076】
図11は、ICタグリーダ600と通信を行う際のICタグ100の処理手順を示すフローチャートである。ICタグ100は、例えば図10のシーケンスS111におけるタグの種類の問合せなど、ICタグリーダ600からの通信要求を、RF回路111が処理可能な受信電力の電波にて受信すると、同図の処理を開始する。
【0077】
同図を開始する段階では、再生電圧が閾値電圧未満となっており、比較器136は、電圧「Low」の発熱信号を出力している。これによって、スイッチ102は、RF回路111の側に接続されており、CPU112が、アンテナ101とRF回路111とで構成される通信用回路110を介して、ICタグリーダ600との通信を行う(ステップS201)。例えば、通信用回路110が、図10のシーケンスS111におけるタグの種類の問合せを受信すると、CPU112は、当該問合せを取得して、同図のシーケンスS112におけるタグの種類の回答を通信用回路110に出力する。そして、通信用回路110は、当該回答を、無線にてICタグリーダ600に送信する。
【0078】
また、比較器136は、再生電圧が閾値電圧以上か否かを判定する(ステップS202)。
再生電圧が閾値電圧未満であると判定した場合(ステップS202:NO)、ステップS201に戻り、CPU112は、引き続き通信用回路110を介してICタグリーダ600との通信を行う。
【0079】
一方、再生電圧が閾値電圧以上であると判定した場合(ステップS202:YES)、比較器136は、電圧「High」の発熱信号をスイッチ102に出力する(ステップS211)。
この発熱信号の出力を受けたスイッチ102は、コンデンサ121側に接続する(ステップS212)。これにより、アンテナ101とコンデンサ121とが接続されて発熱用回路120が閉じた状態となる。一方、RF回路111は、アンテナ101から切り離されて通信用回路110は開いた状態となる。
この状態において、アンテナ101とコンデンサ121とで構成する発熱用回路120は、ICタグリーダ600から送信される電波を受信して発熱する。
【0080】
次に、比較器136は、再生電圧が閾値電圧未満か否かを判定する(ステップS213)。
再生電圧が閾値電圧以上であると判定した場合(ステップS213:NO)、発熱用回路120が閉じた状態が維持され、当該発熱用回路120は、ICタグリーダ600から送信される電波を受信して発熱する。そして、ステップS213に戻り、比較器136が、再生電圧が閾値電圧未満か否かの判定を繰り返す。
【0081】
なお、フローチャートでは、比較器136がステップ毎に再生電圧と閾値電圧との比較を行うように表現されるが、比較器136が、(電源を得られる限り)常に再生電圧と閾値電圧とを比較するようにしてもよい。例えば、比較器136が、アナログ回路のコンパレータ(Comparator、比較器)として構成され、再生電圧と閾値電圧との大きさの比較を常に行って、発熱信号を常に出力するようにしてもよい。
【0082】
一方、ステップS213において、再生電圧が閾値電圧未満であると判定した場合(ステップS213:YES)、比較器136は、電圧「Low」の発熱信号をスイッチ102に出力する(ステップS221)。
この発熱信号の出力を受けたスイッチ102は、RF回路111側に接続する(ステップS222)。これにより、アンテナ101とRF回路111とが接続されて通信用回路110が閉じた状態となる。一方、コンデンサ121は、アンテナ101から切り離されて発熱用回路120は開いた状態となる。
【0083】
通信用回路110が閉じた状態となることで、ICタグ100はICタグリーダ600と通信可能となる。そして、例えば通信用回路110がICタグリーダ600からのデータ読出信号を受信すると、CPU112がメモリ113からデータを読み出し、通信用回路110が当該信号を無線にて送信するなど、ICタグ100は、ICタグリーダ600との間で通信を行う(ステップS223)。
その後、ICタグリーダ600が必要な処理を全て完了してICタグ100との通信を終了すると、ICタグ100は、同図の処理を終了する。
【0084】
図12は、ICタグリーダ600と通信を行う際のICタグ200の処理手順を示すフローチャートである。
ステップS301は、図11のステップS201と同様である。ただし、比較器136に代えて、CPU212が、電圧「Low」の発熱信号をスイッチ102に出力している。
また、CPU212は、ICタグリーダ600からの発熱コマンドを受信したか否かを判定する(ステップS302)。
【0085】
発熱コマンドを受信していないと判定した場合(ステップS302:NO)、ステップS301に戻り、CPU212は、引き続き通信用回路110を介してICタグリーダ600との通信や、発熱コマンドを受信したか否かの判定を行う。
一方、発熱コマンドを受信したと判定した場合(ステップS302:YES)、ステップS311に進む。ステプS311〜S312は、図11のステップS211〜S212と同様である。ただし、比較器136に代えて、CPU212が、電圧「High」の発熱信号をスイッチ102に出力する。
【0086】
次に、CPU112は、スイッチ102がコンデンサ121側に接続してからの経過時間の測定(タイマカウント)を開始する(ステップS313)。
そして、CPU112は、スイッチ102がコンデンサ121側に接続してから所定時間を経過したか否かを判定する(ステップS314)。ここでの所定時間は、例えば、発熱検出装置700がICタグの発熱を検出するのに充分な時間として予め設定された時間である。
【0087】
未だ所定時間を経過していないと判定した場合(ステップS314:NO)、発熱用回路120が閉じた状態が維持され、当該発熱用回路120は、ICタグリーダ600から送信される電波を受信して発熱する。そして、ステップS314に戻り、CPU112が、所定時間を経過したか否かの判定を繰り返す。
【0088】
一方、所定時間を経過したと判定した場合(ステップS314:YES)、ステップS321に進む。
ステップS321〜S323は、図11のステップS221〜S223と同様である。ただし、比較器136に代えて、CPU212が、電圧「Low」の発熱信号をスイッチ102に出力する。
その後、図11の場合と同様、ICタグリーダ600が必要な処理を全て完了してICタグ200との通信を終了すると、ICタグ200は、同図の処理を終了する。
【0089】
図13は、ICタグ100またはICタグ200の位置を検出する際の、ICタグリーダ600および発熱検出装置700の処理手順を示すフローチャートである。ICタグ100、ICタグ200の各々に対する処理を説明するために、同図では、ICタグシステム1が、ICタグとしてICタグ100またはICタグ200のいずれか1種類のみを複数個具備する場合について説明する。ICタグシステム1がICタグ100とICタグ200の両方を具備する場合の処理については後述する。
ICタグリーダ600および発熱検出装置700は、入力装置601が、ICタグの位置を検出するよう指示する操作入力を受け付けると、同図の処理を開始する。
【0090】
同図において、まず、RF回路602が、制御回路604の制御に従って、ICタグに応答を要求する信号として、ICタグの種類を問い合わせる信号を電波にて送信する。その際、RF回路602は、制御回路604の制御に従って、最小電力として予め設定されている送信電力で電波を送信する(ステップS401)。
【0091】
次に、制御回路604は、ICタグシステム1の具備する全てのICタグ(メモリ605がタグIDを記憶している全てのICタグ)から返信を得られたか否か、あるいは、送信電力が所定の電力(電力値)に達しているか否かを判定する(ステップS402)。ここでの所定の電力は、ICタグリーダ600がICタグとの通信を行う際の最大電力として予め設定されている電力である。
【0092】
返信を得ていないICタグがあり、かつ、送信電力が所定の電力未満であると判定した場合(ステップS402:NO)、制御回路604は、送信電力を一段増加させる(大きくする)よう設定する。そして、RF回路602は、制御回路604の制御に従って、ICタグの種類を問い合わせる信号を、設定された送信電力の電波にて送信する(ステップS411)。その後、ステップS402に戻る。
【0093】
一方、ステップS402において、全てのICタグから返信を得ている、または、送信電力が所定の電力に達したと判定した場合(ステップS402:YES)、制御回路604は、送信電力を大きくしても損傷するICタグが無いか否かを判定する(ステップS421)。例えば、返信を得られた全てのICタグが発熱タグであると判定した場合、制御回路604は、送信電力を大きくしても損傷するICタグが無いと判定する。
【0094】
送信電力を大きくするといずれかのICタグを損傷する畏れがあると判定した場合(ステップS421:NO)、ICタグリーダ600および発熱検出装置700は、ICタグの位置の検出を行わない。この場合、例えば、表示装置705が、ICタグを損傷する畏れがあるためICタグの位置の検出を行えないことを示すメッセージを表示する。
そして、ICタグリーダ600は、ICタグと通信を行う必要があれば通信を行い(ステップS431)、必要な通信を全て完了すると、同図の処理を終了する。
【0095】
一方、ステップS421において、送信電力を大きくしても損傷するICタグが無いと判定した場合(ステップS421:YES)、制御回路604は、通信回路603を介して発熱検出装置700に、温度分布の検出を開始するよう指示する信号を送信する。そして、発熱検出装置700では、ICタグリーダ600からの指示に従って、赤外線センサ701が赤外線による撮像を開始し、温度変化検出回路703が、赤外線センサ701の撮像画像に基づいて、撮像範囲の温度分布を示すデータ(例えば撮像画像のデータ)を、メモリ704に書き込む(ステップS441)。その後、赤外線センサ701は、一定周期で撮像を行い、温度変化検出回路703は、赤外線センサ701が撮像を行う毎に、当該撮像画像における温度分布と、最初に(ステップS441の温度分布検出処理の開始時点で)得られた温度分布との差分を算出することで温度変化を算出し、算出した温度変化をメモリ704に書き込む。
【0096】
また、ステップS441において発熱検出装置700に指示を送信した制御回路604は、ICタグシステム1の具備するICタグがコマンド方式(すなわちICタグ200)か否かを判定する(ステップS451)。例えば、制御回路604は、ICタグから返信されたタグの種類を示す信号に基づいて当該判定を行う。あるいは、メモリ605が、ICタグ100とICタグ200のいずれかを示すデータを予め記憶しておき、制御回路604が、当該データに基づいて判定を行うようにしてもよい。
【0097】
ICタグがコマンド方式ではないと判定した場合(ステップS451:NO)、すなわち、ICタグシステム1の具備するICタグが全てICタグ100であると判定した場合、制御回路604は、送信電力を一段増加させるよう設定する。そして、RF回路602は、制御回路604の制御に従って、設定された送信電力で電波を送信する(ステップS501)。
【0098】
送信電力の増加によって、上述したようにICタグ100の発熱用回路120が発熱すると、発熱検出装置700の温度変化検出回路703が、ICタグ100の発熱による温度変化を検出する(ステップS502)。
そして、温度変化検出回路703は、温度変化を検出したICタグの数、あるいは、検出した発熱パターンを、通信回路702を介してICタグリーダ600に送信する。
【0099】
そして、ICタグリーダ600では、制御回路604が、発熱検出装置700から送信される、温度変化を検出したICタグの数、あるいは、検出した発熱パターンに基づいて、ICタグシステム1の具備する全てのICタグを検出したか、あるいは、送信電力が、ICタグリーダ600が送信可能な最大電力に達しているか否かを判定する(ステップS503)。ここで、ICタグシステム1の具備するICタグの数、あるいは、全てのICタグのタグIDまたは発熱パターンをメモリ605が予め記憶しておき、制御回路604は、発熱検出装置700から送信されるICタグの数あるいは発熱パターンの数と、メモリ605が記憶するICタグの数(あるいはタグIDないし発熱パターンの数)とを比較することで、ICタグシステム1の具備する全てのICタグを検出したか否かを判定する。
【0100】
発熱検出装置700が検出していないICタグがあり、かつ、ICタグリーダ600の送信出力が最大電力に達していないと判定した場合(ステップS503:NO)、ステップS501に戻る。
一方、発熱検出装置700が全てのICタグを検出した、または、ICタグリーダ600の送信出力が最大電力に達したと判定した場合(ステップS503:YES)、制御回路604は、送信電力を減少させる設定を行い、RF回路602からの強い電波の出力を抑制する(ステップS511)。
【0101】
その後、制御回路604は、ステップS401またはS411で検出した全てのICタグと通信を行えるようになったか否かを判定する(ステップS512)。例えば制御回路604は、RF回路602を介して各ICタグに対して応答を求める信号を無線にて送信し、ICタグからの応答状況に基づいて当該判定を行う。
【0102】
未だ通信を行えるようになっていないICタグがあると判定した場合(ステップS512:NO)、ステップS512に戻り、当該判定を繰り返す。
一方、全てのICタグと通信を行えるようになったと判定した場合(ステップS512:YES)、制御回路604は、必要に応じて、RF回路602を介してICタグと通信を行う(ステップS521)。
【0103】
必要な通信を全て完了すると、制御回路604は、発熱検出装置700が検出した全てのICタグと通信可能となったか否かを判定する(ステップS562)。
発熱検出装置700が検出したICタグのうち、通信できないICタグがあると判定した場合(ステップS562:NO)、当該ICタグの通信用回路110が損傷している畏れがある。
そこで、制御回路604は、例えば、発熱検出装置700の表示装置705に、通信を行えなかったICタグの数やタグIDを表示させるなどのエラー処理を行う(ステップS571)。その後、同図の処理を終了する。
一方、ステップS562において、発熱検出装置700が検出した全てのICタグと通信可能であると判定した場合(ステップS562:YES)、同図の処理を終了する。
【0104】
一方、ステップS451において、ICタグがコマンド方式であると判定した場合(ステップS451:YES)、すなわち、ICタグシステム1の具備するICタグが全てICタグ200であると判定した場合、制御回路604は、RF回路602を介して発熱コマンドを送信し、ICタグ200のスイッチ102を、コンデンサ121側に接続させる(ステップS551)。
【0105】
そして、制御回路604は、発熱コマンドを送信してからの経過時間の測定(タイマカウント)を開始する(ステップS552)。
その後、制御回路604は、送信電力を増加させる設定を行う。そして、RF回路602は、制御回路604の制御に従って、設定された送信電力で電波を送信して、ICタグ200の発熱用回路120を発熱させる(ステップS553)。
【0106】
ICタグ200の発熱用回路120が発熱すると、発熱検出装置700の温度変化検出回路703が、ICタグ200の発熱による温度変化を検出する(ステップS554)。
そして、温度変化検出回路703は、温度変化を検出したICタグの数、あるいは、検出した発熱パターンを、通信回路702を介してICタグリーダ600に送信する。
【0107】
また、ICタグリーダ600では、制御回路604が、発熱コマンドを送信してから所定時間を経過したか否かを判定する(ステップS555)。ここでの所定時間は、ステップS314における所定時間よりも短い時間にて予め設定された時間である。すなわち、ICタグ200において、アンテナ101とRF回路111とが接続した状態に戻る前に、ICタグリーダ600が強い電波の送信を終了することで、RF回路111を損傷することを防止する。
【0108】
ステップS555において、未だ所定時間を経過していないと判定した場合(ステップS555:NO)、ステップS554に戻る。
一方、ステップS555において、所定時間を経過したと判定した場合(ステップS555:YES)、制御回路604は、必要に応じて、RF回路602を介してICタグと通信を行う(ステップS561)。そして、必要な通信を全て完了すると、ステップS562に進む。
【0109】
なお、ICタグシステム1がICタグ100とICタグ200の両方を具備する場合、ICタグリーダ600および発熱検出装置700は、図13のステップS441の後、ステップS501以降の処理と、ステップS551以降の処理とを組み合わせた処理を行う。
【0110】
具体的には、ICタグリーダ600および発熱検出装置700は、ステップS551以降の処理を行い、ステップS553において、制御回路604は、送信電力を徐々に増加させて、RF回路602を介して電波を送信する。ICタグ100のスイッチ102がRF回路111側に接続されている状態で強い電波を送信してRF回路111を損傷することを防止するためである。
【0111】
また、ステップS555において所定時間を経過したと判定した後、制御回路604は、ステップS512のように、全てのタグと通信を行える状態となるのを待って(特に、ICタグ100と通信可能となるのを待って)ステップS561に進む。
【0112】
以上のように、ICタグ100において、比較器136は、アンテナ131が受信する電波の受信電力に基づいてスイッチ102を制御して、通信用回路110と発熱用回路120とのいずれか一方の回路を閉じ、他方の回路を開く。
通信用回路110を閉じ、発熱用回路120を開いた状態では、通信用回路110に電流が流れるように制御してICタグ100がICタグリーダ600と通信を行えるようにできる。また、発熱用回路120に電流が流れないように制御してICタグ100の温度上昇を抑えることができる。
また、通信用回路110を開き、発熱用回路120を閉じた状態では、通信用回路110に電流が流れないように制御して、ICタグリーダ600が強い電波を送信しても、RF回路111の損傷を防止することができる。また、発熱用回路120に電流が流れるようにして、ICタグ100(特に、アンテナ101)の温度を上昇させることができる。その際、ICタグリーダ600が強い電波を送信して大きい発熱量を得つつ、RF回路111の損傷を防止することができる。すなわち、ICタグ100が電波を受信した際に、ICタグ100が備えるアンテナ101が、より大きい発熱量を急峻に得られる。
【0113】
また、ICタグ100において、受信部と通信用回路110とがアンテナ101を共有するようにでき、ICタグ100の構成をコンパクト化することができる。
また、ICタグ100において、通信用回路110と発熱用回路120とがアンテナ101を共有するので、ICタグ100の構成をコンパクト化することができる。
【0114】
また、ICタグ100において、通信用回路110と発熱用回路120とがアンテナ101を共有し、発熱用回路120が、アンテナ101とコンデンサ121とが接続されて構成され、コンデンサ121の等価直列抵抗値とアンテナの抵抗値とを合計した発熱用回路120の抵抗値が通信用回路110の抵抗値よりも小さいことで、発熱用回路120における単位時間当たりの発熱量を、通信用回路110における単位時間当たりの発熱量よりも大きくできる。
【0115】
また、ICタグ200において、CPU112は、ICタグリーダ600から送信される、通信用回路と発熱用回路との切替指示(発熱コマンド)に従って、スイッチ102を制御する。これにより、ICタグ200においてもICタグ100の場合と同様に、通信用回路110を閉じ、発熱用回路120を開いた状態では、通信用回路110に電流が流れるように制御してICタグ100がICタグリーダ600と通信を行えるようにできる。また、発熱用回路120に電流が流れないように制御してICタグ100の温度上昇を抑えることができる。
また、通信用回路110を開き、発熱用回路120を閉じた状態では、通信用回路110に電流が流れないように制御して、ICタグリーダ600が強い電波を送信しても、RF回路111の損傷を防止することができる。また、発熱用回路120に電流が流れるようにして、ICタグ100の温度を上昇させることができる。その際、ICタグリーダ600が強い電波を送信して大きい発熱量を得つつ、RF回路111の損傷を防止することができる。
【0116】
また、ICタグ200において、受信部と通信用回路110とがアンテナ101を共有するので、ICタグ100の構成をコンパクト化することができる。
また、ICタグ200において、通信用回路110と発熱用回路120とがアンテナ101を共有するので、ICタグ100の構成をコンパクト化することができる。
【0117】
なお、ICタグにおいて、制御部が、通信用回路110や発熱用回路120を流れる電流を制御する方法は、ICタグ100やICタグ200で説明した、スイッチを用いて回路の接続を切り替える方法に限らない。
【0118】
図14は、スイッチを用いずに通信用回路や発熱用回路を流れる電流を制御するICタグである、ICタグ300の概略構成を示す構成図である。同図において、ICタグ300は、アンテナ(第1のアンテナ、第2のアンテナ)101と、RF回路(通信部)111と、CPU112と、メモリ113と、コンデンサ(電流制御部、共振部)321とを具備する。同図において、図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(101、111、112、113)を付して説明を省略する。
【0119】
以下では、ICタグ300では、アンテナ101とコンデンサ321とで構成する回路を、「発熱用回路320」と称する。
また、ICタグ300では、コンデンサ321が、本発明における制御部の一例であり、コンデンサ321は、温度変化に応じて自らのキャパシタンスを変化させることで、発熱用回路320の回路(アンテナ101とコンデンサ121とで構成する共振回路(発熱用回路320))の共振周波数を変化させ、通信用回路110を流れる電流に影響を及ぼさずに、発熱用回路320を流れる電流を増加させる。
以下、図15および図16を参照して、ICタグ300における電流の変化について説明する。
【0120】
図15は、コンデンサ321の温度と、コンデンサ321の容量と、ICタグ300の共振周波数との関係を示すグラフである。
同図(a)の横軸はコンデンサ321の温度を示し、縦軸はコンデンサ321の容量を示す。また、同図(b)の横軸は、同図(a)と同様にコンデンサ321の温度を示し、縦軸は、発熱用回路320の共振周波数を示す。
【0121】
同図(a)に示すように、コンデンサ321は、常温では比較的大きいキャパシタンスを有する。例えば、摂氏20度において、コンデンサ321のキャパシタンスはd11となっている。一方、コンデンサ321の温度が上昇すると、コンデンサ321のキャパシタンスは小さくなる。例えば、コンデンサ321の温度がu11の場合、コンデンサ321のキャパシタンスはd12となっている。
【0122】
このコンデンサ321のキャパシタンスの変化に従って、同図(b)に示すように、発熱用回路320の共振周波数が変化する。例えば、コンデンサ321の温度が摂氏20度の状態では、発熱用回路320の共振周波数がf1であるのに対し、コンデンサ321の温度がu11の状態では、発熱用回路320の共振周波数はf2となっている。
【0123】
この発熱用回路320の特性に応じた電波をICタグリーダ600が送信することで、発熱用回路320を流れる電流を変化させて、発熱用回路320の温度を変化させることができる。
図16は、ICタグリーダ600がICタグ300に送信する電波の、ICタグ300における周波数毎の受信電力を示すグラフである。同図に示すように、ICタグリーダ600が送信する電波において、周波数f1の成分の受信電力は、やや大きい値q1を示し、周波数f2の成分の受信電力は、さらに大きい値q2を示している。
【0124】
すると、まず、コンデンサ321の温度が摂氏20度(常温)の状態で、発熱用回路320には、周波数f1における受信電力q1に応じた電流が流れる。この電流による発熱によってコンデンサ321の温度が徐々に上昇し、発熱用回路320の共振周波数が徐々に大きくなる。そして、コンデンサ321の温度がu11となると、発熱用回路320の共振周波数がf2となり、周波数f2における受信電力q2に応じて、発熱用回路320に、より多くの電流が流れる。この電流によって、発熱用回路320の温度がさらに上昇する。
この発熱用回路320の温度変化を発熱検出装置700が検出することで、ICタグ300の位置を検出することができる。
【0125】
以上のように、ICタグ300は、温度に応じて容量の変化するコンデンサ321を有し、コンデンサ321の温度に応じて発熱用回路320の共振周波数を変化させることで、電流を制御する。これによって、通信用回路110を流れる電流に影響を及ぼさずに、発熱用回路320を流れる電流を増加させることができ、ICタグ300の温度を変化させることができる。すなわち、通信用回路110を流れる電流に影響を及ぼさないので、RF回路111を損傷しにくく、かつ、発熱用回路320を流れる電流を増加させて、より大きな発熱量を得ることができる。
また、通信用回路110と発熱用回路320とがアンテナ101を共有するので、ICタグ300の構成をコンパクトにできる。
【0126】
本発明の以上説明した実施形態においては、通信回路とかRF回路とかの回路を用いるとして説明を行ったが、これらの回路はハードウエアではなくて、ソフトウェアとしてコンピュータプログラムの実行により実現することができる。
【0127】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1 ICタグシステム
100、200、300 ICタグ
101、131 アンテナ
102 スイッチ
111 RF回路
112、212 CPU
113、605、704 メモリ
121、134、321 コンデンサ
132 整流回路
133 コイル
135 閾値電圧生成回路
136 比較器
600 ICタグリーダ
601 入力装置
602 RF回路
603 通信回路
604 制御回路
700 発熱検出装置
701 赤外線センサ
702 通信回路
703 温度変化検出回路
705 表示装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンテナと、通信部と、共振部と、前記第1のアンテナと前記共振部とを接続して構成される回路を流れる電流を制御する電流制御部とを具備し、
前記第1のアンテナと前記通信部とを接続して構成される回路を流れる電流によって前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量よりも、前記第1のアンテナと前記共振部とを接続して構成される回路を流れる電流によって前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量が大きいことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記電流制御部は、前記第1のアンテナの接続先を切り替える切替部であり、
前記切替部により、前記第1のアンテナと前記通信部とを電気的に接続する第1の形態と、
前記切替部により、前記第1のアンテナと前記共振部とを電気的に接続する第2の形態とを有し、
前記第1の形態において前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量よりも、前記第2の形態において前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量が大きいことを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
第2のアンテナと、前記第2のアンテナで受信した電波に起因する電圧値を検知する再生電圧検知回路とを備え、
前記再生電圧検知回路は、検知した前記電圧値によって前記切替部を制御することを特徴とする請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは同一のアンテナであることを特徴とする請求項3に記載の無線装置。
【請求項5】
第1の無線装置と、
前記第1の無線装置と通信を行う第2の無線装置と、
前記第1の無線装置の発熱を検出する発熱検出装置と、
を具備し、
前記第1の無線装置は、
第1のアンテナと、通信部と、共振部と、前記第1のアンテナと前記共振部とを接続して構成される回路を流れる電流を制御する電流制御部とを具備し、
前記第1のアンテナと前記通信部とを接続して構成される回路を流れる電流によって前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量よりも、前記第1のアンテナと前記共振部とを接続して構成される回路を流れる電流によって前記第1のアンテナが発熱し得る発熱量が大きく、
前記発熱検出装置は、
二次元の温度分布を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出する温度分布に基づいて、前記第1の無線装置の前記第1のアンテナの発熱による温度変化を検出する温度変化検出部と、
を備えることを特徴とする無線システム。
【請求項6】
第1の無線装置と、前記第1の無線装置と通信を行う第2の無線装置と、前記第1の無線装置の発熱を検出する発熱検出装置と、を具備する無線システムの無線装置検出方法であって、
前記第1の無線装置が、前記第2の無線装置と無線通信を行う通信ステップと、
前記第1の無線装置が、前記第2の無線装置の送信する電波を取得して発熱する発熱ステップと、
前記通信ステップと、前記発熱ステップとのいずれを実行するかを制御する制御ステップと、
を備え、
前記発熱検出装置は、
二次元の温度分布を検出する温度分布検出ステップと、
前記温度分布検出ステップにて検出する温度分布に基づいて、前記第1の無線装置が前記発熱ステップにて発熱することによる温度変化を検出する温度変化検出ステップと、
を備えることを特徴とする無線装置検出方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−33424(P2013−33424A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170081(P2011−170081)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】