説明

無線装置、無線ネットワーク、ネットワーク存在確認方法

【課題】受信待ち受け状態とそうでない状態とが切り替わる無線装置を含む無線ネットワークを対象に、十分な確度で無線通信を開始することができる無線装置を提供すること。
【解決手段】同期用信号区間とヘッダ区間とペイロード区間とを有する通信パケットを生成し、拡張同期用信号を生成し、拡張同期用信号に続けて通信パケットを付加するようにして、応答要求を伴う送信信号を生成し、送信信号を無線発信する第1の無線装置と、自装置を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかの状態設定の制御を行い、自装置が受信待ち受け状態にあるときに第1の無線装置が無線発信した送信信号に含まれる拡張同期用信号を検知した場合に、該送信信号に含まれる通信パケットを受信し、通信パケットを受信したことに応じて、第1の無線装置に対して自装置が受信待ち受け状態になるスケジュール情報を無線信号で提供する第2の無線装置とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを構成することができる無線装置およびこれを含む無線ネットワーク、ならびにネットワーク動作開始時に使われ得るネットワーク存在確認方法に係り、特に、受信待ち受け状態とそうでない状態とが切り替わり得る無線装置およびこれを含む無線ネットワーク、ならびにこの無線装置へ無線送信を行う無線装置およびそのネットワーク動作開始時に使われ得るネットワーク存在確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一戸建てや集合住宅の各戸に設置されるメータ機器に無線機能を備えさせてネットワーク化し、水道や、ガス、電力の使用量などの各種情報の収集を行うシステム(いわゆるスマートユーティリティネットワーク)が考えられている(無線規格として、IEEE 802.15.4gなどを参照)。
【0003】
このようなネットワークは、十分なサービスエリアをカバーするため、無線信号の中継技術の必要性が高い。また、無線信号を中継する中継ノードにおいては、電池による動作など省電力化を要する場合、受信待ち受け状態でない状態(スリープ状態)を効果的に導入し、その運用期間を延ばすなど技術が重要と考えられる。
【0004】
しかし、中継ノードがスリープ状態である場合、この中継ノードに通信パケットが発信されても受信されないことから、実際に通信がなされる確度が低下し、通信効率が低下する可能性がある。また、中継ノードの数が多くなり多数の中継ノードを経由して情報収集がなされる場合、到来する通信パケット数が集中する中継ノードが生じる可能性があり、これによる通信効率の低下も懸念される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE 802.15.4g標準規格仕様書(draft standard)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、受信待ち受け状態とそうでない状態とが切り替わる無線装置を含む無線ネットワークを対象に、十分な確度で無線通信を開始することができる無線装置、そのためのネットワーク存在確認方法、およびこの無線装置を含む無線ネットワーク、ならびにこの無線ネットワーク内に位置して到来する通信パケット数を抑制することが可能な無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である無線装置は、同期用信号区間と該同期用信号期間に続くヘッダ区間と該ヘッダ区間に続くペイロード区間とを有する通信パケットを生成する第1の手段と、拡張同期用信号を生成する第2の手段と、前記拡張同期用信号に続けて前記通信パケットを付加するようにして、応答要求を伴う送信信号を生成する第3の手段と、前記送信信号を無線発信する第4の手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
この無線装置によれば、通信パケットに先立つように「拡張同期用信号」が付加されて無線発信がなされる。この拡張同期用信号をネットワークに属するほかの無線装置が拾う確度は、通信パケットのみの無線発信がなされその含まれる同期用信号をほかの無線装置が拾う確度より、確実に増大する。これは、ほかの無線装置が、受信待ち受け状態とそうでない状態とが切り替わる無線装置であっても、受信待ち受け状態に拡張同期用信号がタイミングとして重なる確率は、通常の同期用信号が重なる確率より大きくなるためである。
【0009】
したがって、この無線装置は、受信待ち受け状態とそうでない状態とが切り替わる無線装置を含む無線ネットワークを対象に、十分な確度で応答要求を受信させ、その応答をこの無線装置が捉えることによりネットワークの存在確認をすることができる。これにより、そのネットワークを対象に以後は無線通信を開始することが可能になる。
【0010】
また、本発明の別の態様である無線ネットワークは、同期用信号区間と該同期用信号期間に続くヘッダ区間と該ヘッダ区間に続くペイロード区間とを有する通信パケットを生成する第1の手段と、拡張同期用信号を生成する第2の手段と、前記拡張同期用信号に続けて前記通信パケットを付加するようにして、応答要求を伴う送信信号を生成する第3の手段と、前記送信信号を無線発信する第4の手段と、を有する第1の無線装置と、自装置を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかの状態設定の制御を行う第5の手段と、自装置が前記受信待ち受け状態にあるときに前記第1の無線装置が無線発信した前記送信信号に含まれる前記拡張同期用信号を検知した場合に、該送信信号に含まれる前記通信パケットを受信する第6の手段と、前記通信パケットを受信したことに応じて、前記第1の無線装置に対して自装置が受信待ち受け状態になるスケジュール情報を無線信号で提供する第7の手段と、を有する第2の無線装置とを具備することを特徴とする。
【0011】
この無線ネットワークは、上記の無線装置(ここでは第1の無線装置)を含んで構成されたネットワークである。この無線ネットワークにおいて、第2の無線装置が「前記通信パケットを受信したことに応じて、前記第1の無線装置に対して自装置が受信待ち受け状態になるスケジュール情報を無線信号で提供する第7の手段」を有しているのは、以下の理由による。すなわち、これにより、第1の無線装置に、第2の無線装置がいつ受信待ち受け状態になるのかを知らせ、以降は、そのタイミングで第2の無線装置に対して送信を行わせることを可能にするためである。換言すると、これにより、第1の無線装置は無線ネットワークに加入することが可能な状態になっている、ということを意味する。
【0012】
また、本発明のさらに別の態様である無線装置は、自装置を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかの状態設定の制御を行う第1の手段と、自装置が前記受信待ち受け状態にあるときにほかの無線装置が無線発信した送信信号に含まれる同期用信号を検知した場合に、該送信信号が有する通信パケットを受信する第2の手段と、前記通信パケットを受信したことに応じて、前記ほかの無線装置に対して自装置が受信待ち受け状態になるスケジュール情報を無線信号で提供する第3の手段と、を具備し、前記第1の手段が、到来する通信パケット数を制限する必要に応じて、前記受信待ち受け状態にする時間割合を、前記受信待ち受け状態にしない時間割合に対して減少させる制御を行うことを特徴とする。
【0013】
この無線装置は、「自装置を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかの状態設定の制御を行う第1の手段」を有し、さらに、「前記第1の手段が、到来する通信パケット数を制限する必要に応じて、前記受信待ち受け状態にする時間割合を、前記受信待ち受け状態にしない時間割合に対して減少させる制御を行う」という構成を有している。受信待ち受け状態にする時間割合を減少させると、他装置の「拡張同期用信号」または通常の同期用信号を拾う確度が減少する。したがって、これによれば、到来する通信パケット数を制限する必要に応じて、この無線装置を介してネットワークに加入し得る別の無線装置を減らすことができ、それにより到来する通信パケット数を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受信待ち受け状態とそうでない状態とが切り替わる無線装置を含む無線ネットワークを対象に、十分な確度で無線通信を開始することができる無線装置、そのためのネットワーク存在確認方法、およびこの無線装置を含む無線ネットワーク、ならびにこの無線ネットワーク内に位置して到来する通信パケット数を抑制することが可能な無線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である無線装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示した無線装置がネットワーク存在確認を行う対象として想定される無線装置の構成を示すブロック図。
【図3】図1に示した無線装置と図2に示した無線装置とを含む複数の無線装置相互の接続関係を示す説明図。
【図4】図3に示した各無線装置間の情報の流れを示す説明図。
【図5】図1に示した無線装置が発信する応答要求を伴う送信信号のフォーマットの例を示す信号構成図。
【図6】本発明の別の実施形態である無線装置の構成を示すブロック図。
【図7】図6に示した無線装置を含む複数の無線装置相互の接続関係を示す説明図。
【図8】図7に示した各無線装置間の情報の流れを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施態様として、前記第2の手段が生成する前記拡張同期用信号が、前記通信パケットの前記同期用信号区間が有する同期用信号の一部または全部の区間を繰り返す信号である、とすることができる。通常の無線装置は、通信パケットの同期用信号を検知して反応し、続けてこの通信パケットを受信するように構成されている。したがって、このように拡張同期用信号を設ければ、受信する側の無線装置の構成の変更は最小限で済む。
【0017】
また、実施態様として、前記第2の手段が生成する前記拡張同期用信号が、前記通信パケットの前記ペイロード区間が有する信号とは異なる信号を有するペイロード部と、該ペイロード部に先立つ該ペイロードの内容を反映したヘッダ部と、該ヘッダ部に先立つ、前記通信パケットの前記同期用信号区間が有する同期用信号と同じ信号である同期部とを有するダミーパケットを複数回繰り返す信号である、とすることができる。拡張同期用信号は、このように少し複雑な信号にしてもよい。各ペイロード部には、例えば、複数回繰り返しのシリアル番号(および場合により、繰り返しの総数)を反映した情報を持たせることが考えられる。
【0018】
また、実施態様として、前記第2の手段が生成する前記拡張同期用信号が、前記第1の手段が生成した前記通信パケットと同じ通信パケットを複数回繰り返す信号である、とすることができる。拡張同期用信号は、さらに、このように本来の通信パケットを流用して設けてもよい。これによれば、この無線装置としてハードウエアの変更は小さくて済む。
【0019】
また、実施態様として、前記第2の無線装置の前記第5の手段によって制御される前記第2の無線装置の前記状態設定と時間同期するように、自装置を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかの状態設定がされる第3の無線装置をさらに具備する、とすることができる。この無線ネットワークでは、第2の無線装置と第3の無線装置とが、同じタイミングで受信待ち受け状態になる。第2の無線装置と第3の無線装置とは、全体の無線ネットワークの中に位置する、一種のサブネットワークの位置づけとすることができる。このようなサブネットワークは、例えば、ひとつの無線装置の負荷を軽減して分割した無線装置の集合というような意味で設けることができる。
【0020】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態である無線装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この無線装置は、通信パケット生成部11、拡張同期用信号生成部12、送信信号生成部13、無線発信/受信部14、受信信号処理部15を有する。
【0021】
通信パケット生成部11は、送信すべき情報を含む通信パケットを生成する。通信パケットの構成は、例えば、周知のように、同期用信号区間とこの同期用信号期間に続くヘッダ区間とこのヘッダ区間に続くペイロード区間とでなっている。ペイロード区間に乗せられる情報が本来の通信内容に相当し、ヘッダは、ペイロードの情報に関する付加情報(例えばデータ容量、送信元、最終の送信先など)を示し、同期用信号区間は、不図示の受信側がこのパケットの信号を受信するのに必要な同期用の信号を提供するための区間である。通信パケット生成部11で生成された通信パケットは、送信信号生成部13に送られる。
【0022】
拡張同期用信号生成部12は、通信パケット生成部11が生成する通信パケットに含まれる上記の同期用信号とは別の同期用信号(以下、拡張同期用信号と呼ぶ)を生成する。この拡張同期用信号の具体的な形式については後述する(図5)。拡張同期用信号生成部12は、この無線装置10がすでに無線ネットワークに加入している(または加入可能な)状態では機能しなくてもよい。すなわち、この無線装置10が新たに何らかの無線ネットワークに加入するためその存在確認をする場合は、その生成された拡張同期用信号を送信信号生成部13に送る。
【0023】
送信信号生成部13は、通信パケット生成部13から送られてきた通信パケットをもとに送信すべき信号を生成する。この無線装置10がすでに無線ネットワークに加入した状態ならば、通信パケット生成部13から送られてきた通信パケットがそのまま送信信号になる。この無線装置10が新たに何らかの無線ネットワークに加入するためその存在確認をする場合には、拡張同期用信号生成部12からの拡張同期用信号に続けて通信パケットを付加するようにして、応答要求を伴う送信信号を生成する。送信信号生成部13で生成された送信信号は無線発信/受信部14に送られる。
【0024】
無線発信/受信部14は、送られてきた送信信号を用いてこれを無線で発信する。かつまた、ほかの無線装置から無線で発信された信号を受信する。ほかの無線装置からの信号を受信する場合、それに含まれる同期用信号の検知がまずなされることにより、受信状態を確立し通信パケットの受信が可能になる。受信されたほかの無線装置からの信号は受信信号処理部15に送られる。
【0025】
受信信号処理部15は、無線発信/受信部14から送られてきた信号に含まれる情報を用いて必要な受信処理を行う。
【0026】
この無線装置10によれば、通信パケットに先立つように拡張同期用信号が付加されて無線発信がなされる。この拡張同期用信号を、ほかの無線装置が拾う確度は、通信パケットのみの無線発信がなされその含まれる同期用信号をほかの無線装置が拾う確度より、確実に増大する。これは、ほかの無線装置が、受信待ち受け状態とそうでない状態とが切り替わる無線装置であっても、受信待ち受け状態に拡張同期用信号がタイミングとして重なる確率は、通常の同期用信号が重なる確率より相当に大きくなるためである。
【0027】
したがって、この無線装置10は、受信待ち受け状態とそうでない状態とが切り替わる無線装置を含む無線ネットワークを対象に、十分な確度で応答要求を受信させ、その応答をこの無線装置10が捉えることによりネットワークの存在確認をすることができる。これにより、そのネットワークを対象に以後は無線通信の開始が可能になる。
【0028】
次に、図2は、図1に示した無線装置がネットワーク存在確認を行う対象として想定される無線装置の構成を示すブロック図である。この無線装置20は、図示するように、受信待ち受け状態設定制御部/スケジュール情報保持部21、無線発信/受信部22、受信信号処理部23を有する。
【0029】
受信待ち受け状態設定制御部/スケジュール情報保持部21は、まず、受信待ち受け状態設定制御部として、自装置20を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかの状態設定の制御を行う。受信待ち受け状態においては、この装置20は、他の無線装置からの送信信号を受信することが可能である(制御部21が無線発信/受信部22を受信部として機能するように制御する)。受信待ち受け状態にしない場合(いわゆるスリープ状態)にする場合は、少なくとも、制御部21が無線発信/受信部22を受信部としては機能しないように制御する(簡単には電源を切る)。
【0030】
また、受信待ち受け状態設定制御部/スケジュール情報保持部21は、スケジュール情報保持部として、自装置20を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかのスケジュール情報を保持している。すなわち、このスケジュールに従って、上記のように、自装置20を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかを制御している。このスケジュールは、他の無線装置に対して自律的、排他的に決めることにしてもよいし、他の無線装置とのある程度の協調を考慮して決められるようにしてもよい。なお、このような協調を行うためには、他の無線装置との間でその目的のための通信を別途行えばよい。
【0031】
無線発信/受信部22は、まず、無線発信部として、図1に示した無線装置10の無線発信/受信部14と同様の機能を備えさせることができる。すなわち、この装置20は、図1に示した無線装置10が応答要求を行う対象として想定される無線装置を示すものであるが、この装置20として別の無線装置に対して応答要求を行い、あるいはこれを経てすでにネットワーク加入を行ってパケット通信を行う無線装置であることを否定はしない(以下の説明でも同様である。図2では、通信パケット生成部11、拡張同期用信号生成部12、送信信号生成部13が図示省略されていると考え得る)。
【0032】
無線発信/受信部22は、また、受信部として、図1に示した無線装置10が応答要求を伴う送信信号を無線発信した場合に、自装置20が受信待ち受け状態にあるときは、以下の動作を行うことができる。すなわち、無線装置10が無線発信した送信信号に含まれる拡張同期用信号を検知し、これにより続けてこの送信信号に含まれる通信パケットを受信する。拡張同期用信号を含む信号は、応答要求を伴うものであるから、無線発信/受信部22はこの旨を受信待ち受け状態設定制御部/スケジュール情報保持部21に伝える。
【0033】
信待ち受け状態設定制御部/スケジュール情報保持部21は、これに対して、その保持する、自装置20が受信待ち受け状態になるスケジュール情報を無線発信/受信部22に送る。無線発信/受信部22は、そこで、図1に示した無線装置10に向けて、自装置20が受信待ち受け状態になるスケジュール情報を無線信号で提供する。この無線信号は、周知の通信パケットによればよい。
【0034】
これにより、図1に示した無線装置10は、無線装置20がいつ受信待ち受け状態になるのかを知ることができるので、これにより、無線装置20を対象に以後は無線通信を開始することができる。すなわち、スケジュール情報が示す受信受け待ちのタイミングで無線装置20に対して必要な通信パケットの送信を行うことができる(ただし、事情によりこの時点では無線装置20とは通信を開始しないことも選択し得る)。つまり、この状態は、無線装置10が、無線装置20を介して無線装置20が属するネットワークにいつでも加入可能な状態であることを意味する。
【0035】
受信信号処理部23は、図1に示した無線装置10の受信信号処理部15と同様の機能のものである。例えば、図1に示した無線装置10が、無線装置20が属するネットワークにすでに加入した状態になっていれば、無線装置10から無線送信された通信パケットが無線発信/受信部22を介して受信信号処理部23に送られ、ここで必要な処理がなされる。
【0036】
次に、図3は、図1に示した無線装置10と図2に示した無線装置とを含む複数の無線装置相互の接続関係を示す説明図である。図3において、無線装置10は、図1に示した装置自体であり、無線装置20A、20B、20C、20Dは、それぞれ、図2に示した装置に相当する、同一の構成を有するものである。
【0037】
ネットワークNは、すでに構成されたネットワークである。ネットワークN内の矢印は、通信パケットの流れを示している。これらの矢印は次のことを示す。すなわち、装置20Cは、装置20Aがいつ受信待ち受け状態になるのかを了知していて、これに従い通信パケットを装置20Aに流している(つまり、装置20Cは、装置20Aを介してネットワークNに加入している)。装置20Aと装置20Bとの関係も同様である。
【0038】
装置20Aと装置20Bとの関係は、ここでは、受信待ち受け状態になるタイミングがまったく同一になる関係としている。このような関係は、ネットワークNの中にある一種のサブネットワークと捉えることができる。すなわち、一般に、サブネットワークどうしは互いに異なる受信待ち受け状態のタイミングを有し、同一の受信受け待ち状態のタイミングをもつ装置の集合がサブネットワークである。図3では、この定義により、サブネットワークS1、S2、S3の3つのサブネットワークが存在する。複数の装置(無線装置20A、20D)を有するサブネットワーク(サブネットワークS1)は、例えば、本来はひとつの無線装置の負荷を軽減して分割した無線装置の集合として設けることができる。
【0039】
図3に示すように構成されたネットワークNに対して、今、無線装置10が新たにネットワーク存在確認を行ったものとする。このため、装置10は、すでに述べた、拡張同期用信号を伴った通信パケットの無線発信を行う。この無線発信は、装置20A、20C、20Bに物理的に届くものと仮定する。
【0040】
その仮定において、図4は、図3に示した各無線装置間の情報の流れを示す説明図である。図4の横軸は時間の流れであり、縦軸の参照符号は、図3中に示した各無線装置を示している。
【0041】
図4を参照し、まず、装置10が拡張同期用信号を伴った通信パケットを発信すると、その無線発信は、この場合、たまたま、装置20Aの受信待ち受け状態に捉えられる(タイミング1)。これにより、装置10は、すでに説明したように、装置20Aから受信待ち受けのスケジュール情報を得ることができる(タイミング2)。したがって、それ以降は、装置10は、装置20Aが受信待ち受け状態にあるときを見計らって、必要な情報の送信を、装置20Aに向けて通常の通信パケットの形式で行うことができる(タイミング3、4、5)。
【0042】
なお、ここでは装置20Aのタイミング情報を得るだけとして、再度ネットワーク存在確認の動作を行い、その結果として、装置20Aとは異なる別の装置に対して必要な情報の送信を行う(その別な装置を介してネットワーク加入する)、というような場合もあり得る。装置20Aからの電界強度が低い、あるいはそのスケジュール情報が自装置10が送信すべき情報の送信のタイミングに適していない、などの事情がある場合に考えられる。
【0043】
図4中の装置20A、20B、20C、20Dの間の矢印は、それぞれ、図3中に示したネットワークN内の矢印に相当した通信パケットの流れである。これらの通信パケットは、図4中に示すように、送る側の装置が受信受け待ち状態でない場合にも、受け取る側が受信待ち受け状態でありさえすれば、一般的には送信され得る。
【0044】
なお、装置10が拡張同期用信号を伴った通信パケットを発信したときに、たまたま、複数の装置の受信受け待ち状態に捉えられる場合も、それらの受信受け待ち状態のタイミング設定いかんによってはあり得る。このような場合、装置10は、それらの複数の装置それぞれからスケジュール情報を得ることができるので、その受信した中から適当な装置をネットワークの加入先装置として選択することができる。例えば、最初にスケジュール情報を送ってきた装置を選択する、スケジュール情報を送ってきた無線の電界強度が大である装置を選択する、などである。スケジュール情報を送ってきた装置はその通信パケットのヘッダに送信元が記されているので、装置10は、この送信元を送信先としてネットワーク加入する。
【0045】
次に、図5は、図1に示した無線装置10が発信する応答要求を伴う送信信号のフォーマットの例を示す信号構成図である。
【0046】
図5(a)に示すものは、拡張同期用信号が、通信パケットの同期用信号区間が有する同期用信号の一部または全部の区間を繰り返す信号になっている。通常の無線装置は、通信パケットの同期用信号を検知して反応し、これにより続けてこの通信パケットを受信するように構成されている。したがって、このように拡張同期用信号を設ければ、受信する側の無線装置の構成の変更は最小限で済む。この場合の拡張同期用信号の具体例としては、01の繰り返しとすることや、01の繰り返しを複数回続けて次に1を連続するひとつのシーケンスを複数回繰り返す信号とするなどが挙げられる。
【0047】
図5(b)に示すものは、拡張同期用信号が、通信パケットのペイロード区間が有する信号とは異なる信号を有するペイロード部と、このペイロード部に先立つペイロードの内容を反映したヘッダ部と、このヘッダ部に先立つ、通信パケットの同期用信号区間が有する同期用信号と同じ信号である同期部とを有するダミーパケットを複数回繰り返す信号になっている。拡張同期用信号は、このように少し複雑な信号にしてもよい。各ペイロード部には、例えば、複数回繰り返しのシリアル番号(および場合により、繰り返しの総数)を反映した情報を持たせることが考えられる。ダミーパケットどうしの間は一定の間隔を設けるようにしてもよい。
【0048】
図5(c)に示すものは、拡張同期用信号が、本来の通信パケットと同じ通信パケットを複数回繰り返す信号となっている。拡張同期用信号は、このように本来の通信パケットを流用して設けることも考えられる。これによれば、無線装置としてハードウエアの変更は小さくて済む。なお、拡張同期用信号区間においては、通信パケットどうしの間に一定の間隔を設けるようにしてもよい。
【0049】
次に、本発明の別の実施形態である無線装置について図6を参照して説明する。図6は、別の実施形態である無線装置の構成を示すブロック図である。この無線装置200は、図2に示した無線装置20に対して、その一部の構成を変形させた位置づけのものである。その目的は、到来する通信パケット数を制限する必要に応じて、到来する通信パケット数の抑制を可能にしたことである。
【0050】
図6に示すように、この無線装置200は、受信待ち受け状態設定制御部/スケジュール情報保持部201、無線発信/受信部22、受信信号処理部203を有する。このうち、無線発信/受信部22は、図2に示した無線装置20が有する同一名称のものと同一機能である。
【0051】
受信信号処理部203は、図2に示した無線装置20が有する受信信号処理部23が有する機能のほかに、その処理の負荷量の通知を受信受け待ち状態設定制御部/スケジュール情報保持部201に対して行う機能を有する。
【0052】
受信受け待ち状態設定制御部/スケジュール情報保持部201は、図2に示した無線装置20が有する同一名称のものが有する機能のほかに、上記の通知された負荷量が大きい場合は到来する通信パケット数を制限する必要があると判断し、これに応じて、受信待ち受け状態にする時間割合を、受信待ち受け状態にしない時間割合に対して減少させる機能を有する。この減少に伴い、スケジュール情報保持部201が保持する情報は書き換えられる。
【0053】
このように受信待ち受け状態にする時間割合を減少させると、この装置200が他装置の拡張同期用信号(または通常の同期用信号)を拾う確度が減少する。したがって、これによれば、到来する通信パケット数を制限する必要に応じて、この無線装置200を介して新たにネットワークに加入し得る別の無線装置を減らすことができ、それにより到来する通信パケット数を抑制することが可能になる。
【0054】
以上の点を、図7を参照して再度説明する。図7は、図6に示した無線装置200を含む複数の無線装置相互の接続関係を示す説明図である。図7において、無線装置10は、図1に示した装置自体であり、無線装置200A、200Bは、それぞれ、図6に示した装置に相当する、同一の構成を有するものであり、無線装置20E、20Fは、それぞれ、図2に示した装置に相当する、同一の構成を有するものである。
【0055】
無線装置200A、200B、20E、20Fは、すでにネットワークを構成している。ネットワーク内の矢印は、通信パケットの流れを示している。これらの矢印は次のことを示す。すなわち、装置200Bは、装置200Aがいつ受信待ち受け状態になるのかを了知していて、これに従い通信パケットを装置200Aに流している(つまり、装置200Bは、装置200Aを介してネットワークに加入している)。装置20Eと装置200Aとの関係、および装置200Aと装置20Fとの関係も同様である。
【0056】
図7に示すように構成されたネットワークに対して、今、無線装置10が新たにネットワーク存在確認を行ったものとする。このため、装置10は、すでに述べた、拡張同期用信号を伴った通信パケットの無線発信を行う。この無線発信は、装置200A、200Bに物理的に届くものと仮定する。
【0057】
その仮定において、図8は、図7に示した各無線装置間の情報の流れを示す説明図である。図8の横軸は時間の流れであり、縦軸の参照符号は、図7中に示した各無線装置を示している。なお、図8中の装置200A、200B、20E、20Fの間の矢印は、それぞれ、図7中に示したネットワーク内の矢印に相当した通信パケットの流れである。
【0058】
図8に示すように、この場合、装置200Aは、受信待ち受け状態となる時間が減縮されている。これは、図7を参照して、装置200Aは、装置200Bと装置20Eとから通信パケットを受け取り、その処理を行っていて負荷量が大きいと判断したためである。これに対して、装置200Bは、図7に示すように、今のところ通信パケットの受け取り側とはなっておらず、このため、負荷量が大きくないので受信待ち受け状態となる時間は減縮されていない。
【0059】
図8を参照し、装置10が拡張同期用信号を伴った通信パケットを発信すると、その無線発信は、この場合、装置200Aではなく、装置200Bの受信待ち受け状態に捉えられる(タイミング6)。これにより、装置10は、すでに説明したように、装置200Bから受信待ち受けのスケジュール情報を得ることができる(タイミング7)。したがって、それ以降は、装置10は、装置200Bが受信待ち受け状態にあるときを見計らって、必要な情報の送信を、装置200Bに向けて通常の通信パケットの形式で送信することができる。
【0060】
この例で、装置200Aが受信待ち受け状態にする時間割合を減少させると、この装置200Aが他の装置である装置10の拡張同期用信号(または通常の同期用信号)を拾う確度が減少する。したがって、これによれば、到来する通信パケット数を制限する必要に応じて、この無線装置200Aを介して新たにネットワークに加入し得る別の無線装置を減らすことができ、それにより到来する通信パケット数を抑制することが可能になる。
【0061】
再び図7において、装置10が発信する情報の最終的な宛先が例えば、装置20Fである場合、装置200A、200Bはいずれも、装置10から送られる情報の中継装置となり得る。このような場合、上記説明したような到来する通信パケット数を抑制する仕組みが存在すると、中継装置となる各装置での処理負荷量が結果として平準化され、これによりネットワーク全体としての性能の向上を図ることができる。水道や、ガス、電力の使用量などの各種情報の収集を行うセンサネットワークに適用して効果が高い。
【符号の説明】
【0062】
10…無線装置、11…通信パケット生成部、12…拡張同期用信号生成部、13…送信信号生成部、14…無線発信/受信部、15…受信信号処理部、20、20A、20B、20C、20D、20E、20F…無線装置、21…受信受け待ち状態設定制御部/スケジュール情報保持部、22…無線発信/受信部、23…受信信号処理部、200、200A、200B…無線装置、201…受信待ち受け状態設定制御部/スケジュール情報保持部、203…受信信号処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期用信号区間と該同期用信号期間に続くヘッダ区間と該ヘッダ区間に続くペイロード区間とを有する通信パケットを生成する第1の手段と、
拡張同期用信号を生成する第2の手段と、
前記拡張同期用信号に続けて前記通信パケットを付加するようにして、応答要求を伴う送信信号を生成する第3の手段と、
前記送信信号を無線発信する第4の手段と
を具備することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記第2の手段が生成する前記拡張同期用信号が、
前記通信パケットの前記同期用信号区間が有する同期用信号の一部または全部の区間を繰り返す信号であるか、または、
前記通信パケットの前記ペイロード区間が有する信号とは異なる信号を有するペイロード部と、該ペイロード部に先立つ該ペイロードの内容を反映したヘッダ部と、該ヘッダ部に先立つ、前記通信パケットの前記同期用信号区間が有する同期用信号と同じ信号である同期部とを有するダミーパケットを複数回繰り返す信号であるか、または、
前記第1の手段が生成した前記通信パケットと同じ通信パケットを複数回繰り返す信号であること
を特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項3】
同期用信号区間と該同期用信号期間に続くヘッダ区間と該ヘッダ区間に続くペイロード区間とを有する通信パケットを生成する第1の手段と、拡張同期用信号を生成する第2の手段と、前記拡張同期用信号に続けて前記通信パケットを付加するようにして、応答要求を伴う送信信号を生成する第3の手段と、前記送信信号を無線発信する第4の手段と、を有する第1の無線装置と、
自装置を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかの状態設定の制御を行う第5の手段と、自装置が前記受信待ち受け状態にあるときに前記第1の無線装置が無線発信した前記送信信号に含まれる前記拡張同期用信号を検知した場合に、該送信信号に含まれる前記通信パケットを受信する第6の手段と、前記通信パケットを受信したことに応じて、前記第1の無線装置に対して自装置が受信待ち受け状態になるスケジュール情報を無線信号で提供する第7の手段と、を有する第2の無線装置と
を具備することを特徴とする無線ネットワーク。
【請求項4】
前記第2の無線装置の前記第5の手段によって制御される前記第2の無線装置の前記状態設定と時間同期するように、自装置を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかの状態設定がされる第3の無線装置をさらに具備することを特徴とする請求項3記載の無線ネットワーク。
【請求項5】
自装置を受信待ち受け状態にするか受信待ち受け状態にしないかの状態設定の制御を行う第1の手段と、
自装置が前記受信待ち受け状態にあるときにほかの無線装置が無線発信した送信信号に含まれる同期用信号を検知した場合に、該送信信号が有する通信パケットを受信する第2の手段と、
前記通信パケットを受信したことに応じて、前記ほかの無線装置に対して自装置が受信待ち受け状態になるスケジュール情報を無線信号で提供する第3の手段と、を具備し、
前記第1の手段が、到来する通信パケット数を制限する必要に応じて、前記受信待ち受け状態にする時間割合を、前記受信待ち受け状態にしない時間割合に対して減少させる制御を行うこと
を特徴とする無線装置。
【請求項6】
同期用信号区間と該同期用信号期間に続くヘッダ区間と該ヘッダ区間に続くペイロード区間とを有する通信パケットを生成し、
拡張同期用信号を生成し、
前記拡張同期用信号に続けて前記通信パケットを付加するようにして、応答要求を伴う送信信号を生成し、
前記送信信号を無線発信すること
を特徴とするネットワーク存在確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−235260(P2012−235260A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101658(P2011−101658)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】