説明

無線装置および無線ネットワークシステム

【課題】設備の監視対象の設置現場の無線通信状況に合わせて、異なる周波数帯や無線方式を用いて、無線通信を容易に行える無線装置および無線ネットワークを提供する。
【解決手段】ベース基板に複数の無線モジュールを備え、通信状況に適した無線モジュールで無線通信を行なう無線装置において、前記無線モジュールは周波数と通信方式の少なくとも一方が異なる複数の無線モジュールであって、前記ベース基板に着脱式に取付けられ、前記複数の無線モジュールと信号線を介して接続され、通信状況に適した前記無線モジュールを選択する装置制御部と、前記装置制御部に接続され外部との接続用端子台および通信用インターフェースを備え、前記端子台または通信用インタフェースから取得したデータを前記装置制御部で選択された無線モジュールにより無線通信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信において複数種類の周波数、無線方式を用いて、データ通信を行う無線装置および無線ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、無線装置の用途のなかで、各種設備の監視や操作を無線で行う事があげられる。このような各種設備の監視対象として、電力量、温度などのセンサ情報や、異常通知などのデータ情報がある。これら設備からの情報の取得は、主に有線によるデータ通信が多いが、監視対象の設備と監視を行う場所が離れている事が多く、その間の配線工事が必要となる。これらを無線化すると配線工事の必要なく、離れた設備の監視、操作が容易となる。
【0003】
しかしながら、設備の配置環境は、現場により様々であり、対象となる設備の監視に必要な通信情報量も様々である。このため、設備の場所や通信条件などにより無線通信に最適な周波数帯および無線方式を選ぶ必要がある。無線の周波数の特徴として、高い周波数は、通信速度が速いが通信距離が短く、低い周波数は、通信速度は遅いが通信距離が長くなる傾向がある。また、同じ周波数でも通信方式(LANやBluetoothなど)、規格などで特徴が異なる。これらの中から電波環境および設備の配置環境に合わせて、最適な無線ネットワークを構築するのは、作業が困難となる。
【0004】
一般的に設備の監視、操作を無線で行う場合、使用する無線方式を決定し、その無線方式における周波数の現場電波調査を行い、ネットワーク構築を行う必要がある。また、異なる無線方式をネットワーク内で一緒に採用する場合は、使用する無線周波数の無線装置は、別々の物となり、組み合わせた場合、ネットワークとして複合的になり、導入のしやすさやその後の運用性は悪くなる傾向がある。
【0005】
特許文献1には、複数の通信チャネルを用いて各移動端末と基地局との間の無線通信を効率よく実行する構成が示されている。無線LANアクセスポイントは、互いに周波数の異なる複数の通信チャネル内の幾つかの通信チャネルを同時に使用できるようにするため、複数の無線LANモジュールを備えている。各無線LANモジュールには、互いに異なる通信チャネルが設定されている。無線LANアクセスポイントは、通信チャネルそれぞれに対応する移動端末の接続台数を検出し、各通信チャネルの移動端末の接続台数を示す通信チャネル情報を移動端末に送信する。これにより、接続台数が少ない通信チャネルを端末側で選択できるようにし、各移動端末と基地局との間の無線通信を効率よく実行することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−20566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、同じ無線LANモジュールを複数おいて、無線LANの通信方式における周波数帯でのチャネルを変更することで周波数のリソースを有効に使用する方式である。
【0008】
しかしながら、その周波数帯においてのチャネルだけの使用に限定され、1つの無線通信方式(LAN)の帯域内でのチャネルだけの変更では帯域が狭い為、その周波数帯での干渉を受けると通信自体が難しくなる。また、無線LANの通信方式以外の無線モジュールを搭載した場合、そのモジュールを動作させる各通信方式や、各通信方式毎の設定情報を持つ必要があり、構成が複雑となる。
【0009】
また、無線で使用する場合、周波数帯によって特徴があり、周波数が低くなれば、電波の回析性が上がり到達性が上がるが、通信速度は遅くなる傾向がある。設備の配置により無線環境が異なってくるので、通信を安定させるため適切な周波数を用いた無線ネットワークを構築する必要がある。これらを現地調査や運用において調査を行い、さらに試行錯誤しながら、適切な無線ネットワークを構築するには、時間がかかる。また、導入後においても、周りの無線環境の変化により通信において干渉を起こす可能性もある。従って、複数の無線装置を組み合わせてネットワーク構築する場合、各モジュールの設定に手数がかかると共に、構築後のネットワーク運用と保守も工数がかかって、コストアップとなる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、各種設備の監視対象の設置される現場の無線通信状況に合わせて、複数の周波数帯や複数の無線方式を用いて、無線通信を容易に行える無線装置および無線ネットワークを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、ベース基板に複数の無線モジュールを備え、通信状況に適した無線モジュールで無線通信を行なう無線装置において、
前記無線モジュールは周波数と通信方式の少なくとも一方が異なる複数の無線モジュールであって、前記ベース基板に着脱式に取付けられ、
前記複数の無線モジュールと信号線を介して接続され、通信状況に適した前記無線モジュールを選択する装置制御部と、
前記装置制御部に接続され外部との接続用端子台および通信用インターフェースを備え、
前記端子台または通信用インタフェースから取得したデータを前記装置制御部で選択された無線モジュールにより、無線通信することを特徴とする。
【0012】
また、上記に記載の無線装置において、前記装置制御部は通信状況に適した前記無線モジュールを選択すると共に、選択された無線モジュールの動作を制御する制御器を有することを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の無線装置において、前記無線モジュールは、周波数及び無線方式に適合した無線モデムとモジュール制御部で構成され、前記モジュール制御部は前記信号線を介して共通の通信コマンドで前記装置制御部と通信するように構成されたことを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の無線装置において、前記装置制御部は複数の無線装置による無線ネットワークシステムのネットワーク情報を設定するメモリを有することを特徴とする。
【0015】
また、上記に記載の無線装置において、前記装置制御部は、前記装置制御部は、ネットワーク情報として無線装置を識別する任意なID番号と、送受信する相手無線装置のID番号と、使用する無線モジュールの選択情報を前記メモリに設定し、選択された無線モジュールにより送受信先と無線通信することを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、ベース基板に複数の無線モジュールを備え、通信状況に適した無線モジュールで無線通信を行なう複数の無線装置で構成された無線ネットワークシステムにおいて、
前記各無線装置内の無線モジュールは、周波数と通信方式の少なくとも一方が異なる周波数及び/又は通信方式を有する複数の無線モジュールであって、前記ベース基板に着脱式に取付けられ、
前記各無線装置は、前記複数の無線モジュールと信号線を介して接続され、通信状況に適した前記無線モジュールを選択して動作させる装置制御部と、前記装置制御部に接続され外部との接続用端子台および通信用インターフェースを備え、前記端子台または通信用インタフェースから取得したデータを前記装置制御部で選択された無線モジュールにより、無線装置間で無線通信することを特徴とする。
【0017】
また、上記に記載の無線ネットワークシステムにおいて、前記各無線装置の装置制御部は通信状態に適した無線モジュールを選択すると共に、選択された無線モジュールの動作を制御する制御器を有することを特徴とする。
【0018】
また、上記に記載の無線ネットワークシステムにおいて、前記各無線装置の無線モジュールは、周波数及び無線方式に適合した無線モデムとモジュール制御部で構成され、前記各モジュール制御部は前記信号線を介して共通の通信コマンドで前記装置制御部と通信するように構成されたことを特徴とする。
【0019】
また、上記に記載の無線ネットワークシステムにおいて、前記各無線装置の装置制御部はネットワーク情報を設定するメモリを有することを特徴とする。
【0020】
また、上記に記載の無線ネットワークシステムにおいて、前記装置制御部は、ネットワーク情報として無線装置を識別する任意なID番号と、送受信する相手無線装置のID番号と、使用する無線モジュールの選択情報を前記メモリに設定し、選択された無線モジュールにより送受信先と無線通信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、無線装置での設定で、複数の異なる周波数および異なる無線通信方式の中から、現場に最適な周波数と通信方式で容易に無線通信することができる。また、様々な現場に対して最適な無線ネットワークを容易に構築でき、通信の信頼性向上、構築後の運用および保守の容易化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1の無線装置の構造説明図である。
【図2】同じく無線装置内のベース基板の構成説明図である。
【図3】同じく無線装置内の無線モジュールの構成説明図である。
【図4】本発明の実施例2の無線装置内の周波数の異なる無線モジュールの機能の説明図である。
【図5】本発明実施例3の無線装置の通信方式の異なる無線モジュールの機能の説明図である。
【図6】本発明の実施例4の無線装置内の選択と動作設定がされた無線モジュールの通信動作の説明図である。
【図7】同じく複数無線装置の間の通信動作の説明図である。
【図8】無線装置内の無線モジュールの選択基準例の説明図である。
【図9】本発明の実施例5の無線ネットワークの構成図である。
【図10】本発明の実施例6無線ネットワークの構成図である。
【図11】本発明の実施例1の無線装置の動作フローを示した説明図である。
【図12】無線通信のシーケンス図の説明図である。
【図13】再送時の無線通信のシーケンス図の説明図である。
【図14】送信データのパケットの説明図である。
【図15】無線方式が標準化されている無線通信方式の説明図である。
【図16】無線装置内の無線モジュールの選択変更の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施例1の無線装置の動作原理を示した構造説明図である。無線装置1は、筐体内にベース基板2を持ち、この基板2上に無線モジュール3(3a〜3d)が装着されている。無線モジュール3は、異なる周波数及び/又は通信方式を有する複数の無線モジュールであって、ベース基板2に着脱式に取付けられている。
【0025】
ここで、周波数とは例えば、2.4GHz、950MHz、429MHzの無線周波数であり、周波数通信方式とは、無線LAN(Wireless LAN)、BluetoothおよびZigBeeの無線通信方式である。
【0026】
図2は、図1の無線装置1内のベース基板2の実装構成を示す説明図である。ベース基板2には、信号線4を介して実装された無線モジュール3と通信する、装置制御部21が装着されている。装置制御装置21は、CPU(中央演算装置)を含む制御系で構成され、データを一時バッファリングし転送する機能を有する。装置制御装置21は、各無線モジュール3と通信するインタフェース21aと、情報の設定や設定情報に基づいて通信に適した無線モジュールを選択する制御器21bと、無線装置1内を設定する上記設定情報や、無線ネットワーク構築時のネットワーク情報(後述)などを設定するメモリ21cを持つ。また、ベース基板2には、装置制御部21と無線装置外部を接続するインタフェースを備え、具体的には外部機器(パソコン等)との接続用のUSBコネクタ22、シリアルコネクタ23、イーサネット(登録商標)コネクタ24と、被監視機器の測定センサ接続用の端子台25を備えている。
【0027】
無線通信に使用する周波数、無線方式の決定や無線モジュールの動作役割の設定を行う上でネットワーク情報が必要となる。ネットワーク情報は、あらかじめパソコンなどでシミュレーションにより最適情報を作成し、これらを無線装置にUSBコネクタ22などの通信インタフェース(22〜24)を通じて設定する。
【0028】
設定情報は、各無線装置の番号(各無線装置を特定する任意のID番号)、ネットワークを構築している他の無線装置の情報(送受信する相手の無線装置のID番号)やグループID(後述)である。無線ネットワークを構築する無線装置全てにネットワーク情報を共有すれば、各無線装置の役割を決定させることができる。各無線装置のID番号とその番号を持った無線ネットワーク内各無線装置の情報を互いの無線装置が持つことで、隣同士の無線装置の状態を把握が可能となる。一定時間、通信が発生しないなど、近隣の無線装置の状態を確認することが出来、それにより動作停止などの装置の特定を容易に行う事ができる。
【0029】
図3は、無線モジュールの構成説明図である。各無線モジュール3は、無線通信用の無線モデム31と、装置制御部21と通信するためのモジュール制御部32を内蔵し、コネクタ33を介してベース基板2に着脱式に装着される。無線モジュール3は、様々な周波数および通信方式で送受信できる異なる種類の無線モデム31を実装したものが多数準備され、各種設備が設置される現場の無線通信状況に合わせて、ベース基板2に着脱式に装着される。
【0030】
各無線モジュール3は、ベース基板2へ装着されたとき、信号線4を介して装置制御部21と接続される。各無線モジュールは、モジュール制御部32のインタフェース機能と、装置制御部21のインタフェース21aの変換によって、共通の通信コマンド(共通のプロトコル)で通信するように構成される。したがって、ベース基板2に装着する無線モジュールの種類(無線周波数の種類、無線通信方式の種類)にかかわらず、共通のプロトコルで通信することができる。したがって、異なる無線モジュールが装着されてもベース基板は、無線方式を考慮することなく、無線通信を行うことが出来る。これにより、アプリケーションに適した無線モジュールの脱着で多様な無線方式に対応できる。
【0031】
上記構成において、被監視機器の測定センサから得られた測定信号を外部に無線送信するときは、センサから端子台25を経由して得られた測定信号を装置制御部21に取込み、装置制御部21で選択した無線モジュールに共通の通信コマンドで送信し、この無線モジュールの通信方式により外部に無線送信する。他方、外部から無線モジュール3に受信したデータは、モジュール制御部32から共通の通信コマンドで装置制御部21に送信され、必要に応じて、USBコネクタ22、シリアルコネクタ23、イーサネット(登録商標)コネクタ24を介して、外部機器(パソコン等)に出力される。
【0032】
図4は、本発明の実施例2の無線装置内の周波数の異なる無線モジュールを複数個設置した場合の機能説明図である。周波数の違う無線モジュール3a、3c、3dをベース基板2に装着し、各モジュールはそれぞれ、周波数2.4GHz、950MHz、429MHzのモデム31を内蔵している。実装された無線モジュールについては、装置制御部21の制御器21bによりモジュール番号とその周波数がメモリ21cに設定される。
【0033】
装置制御部21は、メモリ21cの記憶内容に従い、制御器21bにより基本的には高速通信のために無線通信速度の速い(周波数の高い)無線モジュールを選択して通信を試行する。先ず、無線通信速度の最も速い周波数2.4GHzの無線モジュール3aを選択して無線通信を試行する。この通信の結果、正常通信が行われない場合は、無線通信速度の速い周波数950MHzの無線モジュール3cに選択を変更して通信を行う。装着している無線モジュール全ての周波数エリアで干渉などを受けない限り、正常に通信が行われる。このように、装置制御部21は試行を行って、できるだけ高速通信できるように、適切な周波数の無線モジュールを選択する。
【0034】
周波数の低い無線モジュールは、遠くまで通信が可能なので、運用途中で被測定設備の設置環境が変化して通信不良になった場合は、実装された無線モジュールのなかで周波数のより低いモジュールに切換えて通信を継続する。このように、装置制御部21の試行により、できるだけ高速でかつ安定した通信が可能な無線モジュールを選択して通信を行うので、設置および運用時において、容易に無線装置と被測定設備の間のネットワークを構築することができる。
【0035】
また、稼働途中において、一時的な通信干渉や通信品質の低下が起こった場合は、より低い周波数帯の無線モジュールに切替えて通信の品質を維持することができる。
【0036】
図5は、本発明の実施例3の無線装置内の通信方式の異なる無線モジュールの機能の説明図である。同じ周波数2.4GHzで無線通信方式が異なる無線モジュール3a、3c、3dをベース基板2に装着し、各モジュールはそれぞれ、無線LAN(Wireless LAN)、Bluetooth、ZigBeeのモデム31を内蔵している。実装された無線モジュールについては、装置制御部21のモジュール番号、周波数および通信方式が、制御器21bによりメモリ21cに設定される。
【0037】
装置制御部21は、これらの無線モジュールを組み合わせて通信を行う事で、被測定設備の設置環境に応じた無線通信を行うことができる。装置制御部21は、被測定設備と無線装置の距離などからできるだけ無線速度の速い通信方式から試行の通信を行っていく。また、通信したい相手設備(機器)が無線LAN、Bluetoothなど異なる他無線方式であっても、無線装置が、それらに合った無線方式の無線モジュールを装着していることから、無線装置を変更することなく、装置制御部21のモジュール選択により無線通信を行う事が出きる。これにより異なる無線方式の混合においても、容易に無線装置と被測定設備の間のネットワークを構築することができる。
【0038】
図6は、本発明の実施例4の無線装置内の選択と動作設定がされた無線モジュールの通信動作の説明図である。本実施例では無線装置を中継機として使用する例を示している。装置制御部21のメモリ21cには、ベース基板2に装着された無線モジュール(モジュール番号、周波数および通信方式)が設定される。装置制御部21は、無線モジュール3aを選択して受信専用の設定を行い、さらに無線モジュール3cを選択して、受信したデータを送信する送信専用に設定する。これにより一方の無線モジュール3aは受信に専念し、無線データの受信を受け待ち、受信したデータを一度ベース基板2の装置制御部21に送る。受信したデータは、装置制御部21から信号線4を通じて他方の無線モジュール3cに送られ、他方の無線モジュールを使用して無線送信を行う。両無線モジュール3a、3cは、別個のもので切り分けられていることから、異なる周波数で送信と受信を行うことができ、互いに干渉することがないので、安定した無線通信と、データ通信の効率をあげることが出来る。
【0039】
図7は、図6に示す無線装置をネットワークとして構築したシステムの通信動作の説明図である。無線装置を3台(1a、1b、1c)準備し、1台(1b)を中継機として使用したシステムである。無線装置間で送受信する無線モジュールの周波数および通信方式を合わせることで、特定の周波数帯で専用的に混信のない安定した無線通信を行う事ができる。これらを組み合わせることで、異なる周波数の無線通信が可能となり、その無線装置間において適用するアプリケーションに合わせた無線ネットワークを構築することができる。
【0040】
図8は、無線モジュールの選定基準例の説明図である。無線通信したい被測定設備の現場の環境から、用意する無線モジュールは想定が可能である。例えば、入り組んだ環境で遠くの設備と通信したい場合は、周波数が低く無線通信速度の遅い無線モジュールを選定すれば良い。このように、測定対象設備および無線通信の環境を把握することで、無線モジュールの選定が可能となる。
【0041】
図9は、本発明の実施例5の無線ネットワークの構成図である。ネットワークは、無線装置1aを最上位の無線装置とし、多数の下位の無線装置1b〜1hがツリー型に無線で接続されるようにシステム構成されている。無線ネットワークの構成に際しては、一例としてネットワーク情報をシステム構築する全ての無線装置の装置制御部に格納する。ネットワーク情報とは、ネットワークを構築する各無線装置を特定する任意な番号(ID)と、それぞれの無線装置間の送受信する相手の無線装置を特定する番号(ID)の情報である。ネットワークの中で自分の無線装置の役割と、番号(ID)を装置制御部に設定することで、ネットワーク内での動作が決定される。
【0042】
各無線装置を特定する任意な番号(ID)とは、LAN通信で用いられるMACアドレス(Media Access Control address)のような通信方式に依存するアドレスではなく、通信方式に依存しない任意な番号(ID)である。従って、無線装置間を無線通信する異なる通信方式であっても共通の番号(ID)を用いることができ、無線ネットワークシステムの構築が容易であり、またネットワークシステムの変更も容易となる。
【0043】
例えば図9で、無線装置1aはネットワークの最上位に位置してシステム全体のデータを収集する無線装置となり、無線装置1b〜1dはネットワークの中間に位置して測定対象設備で測定された監視データを受信して、より上位の無線装置に転送する中継機となり、無線装置1e〜1hは測定対象設備のセンサで測定した監視データを上位の無線装置に発信する監視データ発信用の無線装置となる。
【0044】
図10は、本発明の実施例6の無線ネットワークの構成図で、無線装置で故障発生時のネットワーク障害を切り分けて除外する方法を示している。ネットワークシステムで故障した無線装置からは、一定時間以上の通信が行われないので、ツリー型の上位の無線装置は、下位の無線装置が故障していることが判断できる。図10で無線装置5が故障したと仮定すると、このツリー型を構成する無線装置5の上位側の無線装置1b(正常動作している)が、この故障した無線装置を特定することができる。
【0045】
この場合の復旧としては、故障の無線装置を正常のものに交換し、交換された無線装置の装置制御部にID=5の番号を設定すればよい。交換された無線装置は、被測定設備の測定監視データに「5」のIDを付加して上位の無線装置1bに送信するので、無線装置1bで正常な測定監視データと送信元ID番号を受信することができる。このように、本実施例では無線装置を特定するのに装置の機器固有の識別番号を用いることなく、単純なID番号を付加するのみであるから、ID番号を再設定した無線装置に置き換えるだけで復旧を行うことができる。このように、故障箇所の特定と再設定を容易にすることで、無線ネットワークの保守、運用性が高まる。
【0046】
図11は、無線ネットワークシステムにおいて、各無線装置1の動作フローを示した説明図である。電源が投入された後、S(シーケンス)101で各無線装置の装置制御部21で装置のモード状態(通常モード/設定モード)の判定を行う。
【0047】
通常動作時を示す通常モードと判定されると、S102でベース基板に装着されている無線モジュールの確認のため、無線モジュールの情報を取得する。無線モジュールは共通のインターフェースコマンドを備えているため、各モジュールに装置制御部21から問い合わせを行い、モジュールの情報を取得する。次いで、S104で、装置制御部21のメモリに格納されているネットワーク情報の設定情報を取得(確認)して、ネットワーク構成を把握する。次にS105で、設定されている自分の番号(ID)およびネットワーク内での役割を確認し、S106で動作内容に従って動作を開始する。
【0048】
S101で、設定状態を示す設定モードと判定されると、S103で装置制御部21に内蔵する制御器21bで無線装置を特定するID番号が設定される。この設定は、例えば制御器21bに設けたディップスイッチにより簡単に設定・変更ができる。
【0049】
図12は、無線通信のシーケンス図の説明図である。例えば図9で、無線装置1fと1cの間の無線通信の例で説明する。無線装置1は電源通電後に受信状態となる。無線装置1fの被測定設備から測定データが発生した場合、無線装置1fはこのデータを設備から無線受信する。その後無線装置1fは送信モードに変更してデータ送信用のパケットを作成し、測定データを無線送信する。この無線送信においては、相手となる無線装置の場所が分からない為、ブロードキャスト送信(アドレスを指定しないで送信)を行う。
【0050】
このデータを受信した無線装置1cは、データの中身チェックを行い、ネットワーク情報のIDとチェックを行い、自分が受信して良いデータであるか確認を行う。具体的には、送信元である無線装置1fのID番号と、メモリに保持しているネットワーク情報のID番号とを比較し、受信してよいデータであるかを判断する。ネットワークの下位無線装置からのデータで、受信してよいデータであればデータ部の取り出しを行う。それ以外であればデータを破棄する。無線装置1cは受信した場合、送信モードに切り換わって送信元(無線装置1f)に対してACK(Acknowledgement)の受領応答を行う。この場合は、相手が特定できている為、ユニキャスト送信(単一のアドレスを指定して送信)を行い、確実に相手に到達する方法をとる。無線装置1fは、応答確認後、受信状態に切り換わる。
【0051】
図13は、無線通信のシーケンス図の再送についての説明図である。送信データが発生し、無線装置1fがブロードキャスト送信を行い、その後受信状態になっても、ACKの応答データがない場合は、再送の処理を行う。再送は、複数回を行い、それでも送信できない場合は、周波数・無線方式を変えた別のモジュールに変更選択して上記と同様の再送の手順を行い、無線通信を行う。
【0052】
図14は、送信データのパケットの説明図である。パケットデータは、送信データに対して、送信元のID番号と送信先のID番号、およびグループID番号を付加した形で構成される。グループID番号は、無線装置群のID番号となり、ネットワーク内で複数の無線装置のグループ分けを行う。データを受信した無線装置は、グループID番号をチェックし、その後、送信元のID番号と送信先のID番号をチェックする。すなわち、各ID番号と保持しているネットワーク情報とを照合し、前記同様にデータの扱いを決める。
【0053】
図15は、無線方式が標準化されている無線通信方式を使用した無線通信の方法についての説明図である。図15(a)は標準化されている無線通信方式のパケットデータを示している。無線方式が決まっている方式においては、図15(b)に示すように、データの先端が伝送手順やパケットフォーマットが決まっている。したがって、標準のフォーマットをそのまま使用して、データ部分に図15(a)の送信データのパケットを格納する。無線モジュール間は、同じ無線方式のモジュールであることから通信には問題なく、そのデータ部に格納された送信データを取得し、その後判断して、データの扱いを決める。無線モジュール間は、対応した無線方式であるが、ベース基板は、抜き出したデータとなるので無線装置のID番号のみのデータの扱いとなる。これにより、無線装置としては、無線方式にしばられることなく、ID番号のみで無線通信の送受信を行うため、無線方式を意識することなく通信が可能である。無線方式とは、無線LAN、Bluetooth、ZigBeeなどの方式である。
【0054】
図16は、無線装置内の無線モジュールの選択変更の説明図である。無線装置内の無線モジュール選定のプログラム処理動作を示している。周波数における無線通信の特徴に示すように、無線で使用する周波数が高くなると通信速度が早く、通信距離が短くなり、周波数が低くなると通信速度が遅く、通信距離が長くなる傾向にある。装置制御部によりベース基板に実装した無線モジュールから無線周波数の情報を取得し、まずは、速度の早い周波数の高い無線モジュールを選定する。この無線モジュールの周波数帯での通信において通信品質が悪いと判断した場合は、周波数の低い無線モジュールへ変更する。これらの試行を繰り返して、被測定設備の設置状況に最適な無線モジュールの選定を行う。
【0055】
以上説明のように、本実施例では、無線装置内がベース基板と各周波数、無線方式に対応した無線モジュールで構成される。無線モジュールは、各方式に対応した無線モデムと制御部で構成され、制御部へ送信される通信方式(コマンド)は統一される。制御部は、その統一されたコマンドを解釈し、搭載された無線モデムにあわせた通信方式に変換し、無線通信を行う。周波数、無線方式の異なる無線モジュールは、ベース基板上で制御部と通信方式を共通にしているので、異なる無線モジュールが装着されてもベース基板は通信を行うことができる。また無線装置の識別IDは、単に番号を設定する方法とし、MACアドレス(LANで使用)など特定の無線方式の通信方式に依存しないので、異なる通信方式で、共通に使用できる。
【0056】
無線装置内のベース基板に無線ネットワーク情報の設定を行うことで、環境にあわせた無線方式の使用が行える。また、全ての無線ネットワーク情報を、構築する全ての無線装置に設定して共有すれば、互いの無線装置の確認を行うことからネットワークの運用、保守が容易に行える。
【符号の説明】
【0057】
1(1a〜1h)、5…無線装置、2…ベース基板、3(3a〜3d)…無線モジュール、4…信号線、21…装置制御部、21a…インターフェース、21b…制御器、21c…メモリ、22〜23…通信用インターフェース、25…端子台、31…無線モデム、32…モジュール制御部、33…コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板に複数の無線モジュールを備え、通信状況に適した無線モジュールで無線通信を行なう無線装置において、
前記無線モジュールは周波数と通信方式の少なくとも一方が異なる複数の無線モジュールであって、前記ベース基板に着脱式に取付けられ、
前記複数の無線モジュールと信号線を介して接続され、通信状況に適した前記無線モジュールを選択する装置制御部と、
前記装置制御部に接続され外部との接続用端子台および通信用インターフェースを備え、
前記端子台または通信用インタフェースから取得したデータを前記装置制御部で選択された無線モジュールにより、無線通信することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線装置において、前記装置制御部は通信状況に適した前記無線モジュールを選択すると共に、選択された無線モジュールの動作を制御する制御器を有することを特徴とする無線装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線装置において、前記無線モジュールは、周波数及び無線方式に適合した無線モデムとモジュール制御部で構成され、前記モジュール制御部は前記信号線を介して共通の通信コマンドで前記装置制御部と通信するように構成されたことを特徴とする無線装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の無線装置において、前記装置制御部は複数の無線装置による無線ネットワークシステムのネットワーク情報を設定するメモリを有することを特徴とする無線装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無線装置において、前記装置制御部は、ネットワーク情報として無線装置を識別する任意なID番号と、送受信する相手無線装置のID番号と、使用する無線モジュールの選択情報を前記メモリに設定し、選択された無線モジュールにより送受信先と無線通信することを特徴とする無線装置。
【請求項6】
ベース基板に複数の無線モジュールを備え、通信状況に適した無線モジュールで無線通信を行なう複数の無線装置で構成された無線ネットワークシステムにおいて、
前記各無線装置内の無線モジュールは、周波数と通信方式の少なくとも一方が異なる周波数及び/又は通信方式を有する複数の無線モジュールであって、前記ベース基板に着脱式に取付けられ、
前記各無線装置は、前記複数の無線モジュールと信号線を介して接続され、通信状況に適した前記無線モジュールを選択して動作させる装置制御部と、前記装置制御部に接続され外部との接続用端子台および通信用インターフェースを備え、前記端子台または通信用インタフェースから取得したデータを前記装置制御部で選択された無線モジュールにより、無線装置間で無線通信することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の無線ネットワークシステムにおいて、前記各無線装置の装置制御部は通信状態に適した無線モジュールを選択すると共に、選択された無線モジュールの動作を制御する制御器を有することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の無線ネットワークシステムにおいて、前記各無線装置の無線モジュールは、周波数及び無線方式に適合した無線モデムとモジュール制御部で構成され、前記各モジュール制御部は前記信号線を介して共通の通信コマンドで前記装置制御部と通信するように構成されたことを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項9】
請求項6〜8にいずれかに記載の無線ネットワークシステムにおいて、前記各無線装置の装置制御部はネットワーク情報を設定するメモリを有することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の無線ネットワークシステムにおいて、前記各無線装置の前記装置制御部は、ネットワーク情報として無線装置を識別する任意なID番号と、送受信する相手無線装置のID番号と、使用する無線モジュールの選択情報を前記メモリに設定し、選択された無線モジュールにより送受信先と無線通信することを特徴とする無線ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−231413(P2012−231413A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99819(P2011−99819)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】