説明

無線装置

【課題】アンテナが近接配置された場合でもアンテナの利得が劣化するのを抑制する。
【解決手段】携帯電話機は、第1の共振周波数で共振するセルラー2ndアンテナ160と、セルラー2ndアンテナ160を介して第1の共振周波数の無線信号を受信する無線部163とを備える。また、携帯電話機100は、第1の共振周波数の偶数倍である第2の共振周波数で共振するGPSアンテナ170と、GPSアンテナ170を介して第2の共振周波数の無線信号を受信する無線部175とを備える。また、携帯電話機100は、GPSアンテナ170と無線部175との間に設けられ、第2の共振周波数の無線信号に対するインピーダンスよりも第1の共振周波数の無線信号に対するインピーダンスが高い特性を有するLC並列共振回路179を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、スマートフォンなどの無線装置は高機能化が進み、単なる通話用のアンテナだけでなく様々な種類のアンテナが搭載されるようになっている。例えば、無線装置に搭載されるアンテナは、ダイバーシチ用アンテナ、GPS(Global Positioning System)用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、WirelessLAN(Local Area Network)用アンテナなどが挙げられる。その他、無線装置に搭載されるアンテナは、例えば、地上デジタルテレビ放送用アンテナ、WiMAX(登録商標:Worldwide Interoperability for Microwave Access)用アンテナ、FeliCa(登録商標)用アンテナなどが挙げられる。
【0003】
このように、装置内に搭載されるアンテナの数が増加する一方、無線装置は軽薄短小化が進んでいるため、各アンテナの実装スペースは狭くなっている。その結果、アンテナ間の距離が十分にとれなくなることによって、各アンテナのアイソレーション劣化による利得劣化を招くおそれがある。
【0004】
これに対して従来、第1の基板に給電される第1のアンテナと、第2の基板に給電される第2のアンテナとを備える無線装置において、第1の基板と第2の基板のアース電位同士を、周波数選択性素子を介して接続することが知られている。周波数選択性素子とは、第1のアンテナの使用周波数帯の電流を阻止し、第2のアンテナの使用周波数帯の電流を透過する素子である。これにより、複数のアンテナを備えた無線装置において、アンテナ間の結合が生じるのを回避することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−135361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術は、アンテナが小型化され近接配置された場合にアンテナの利得が劣化するのを抑制することは考慮されていない。
【0007】
すなわち、従来技術は、第1のアンテナによって励起される基板上電流が第2のアンテナまで流れるのを抑制することにより、基板上電流が第2のアンテナまで流れることに起因するアンテナ間結合を回避するものである。
【0008】
これに対して、例えば、小型化された2つのアンテナA,Bが近接配置されている状態では、アンテナAから放射された無線信号の一部がアンテナBの影響で放射に寄与せず、アンテナAの利得が劣化するおそれがある。
【0009】
例えば、アンテナBの整合回路(マッチング回路)がGND(グラウンド)との間に設けられており、かつ、アンテナBの整合回路がアンテナAの共振周波数に対して低インピーダンスになっているとする。この場合、アンテナAから放射された無線信号は、その一部がアンテナBの低インピーダンスの整合回路を介してGNDへ流れるため放射に寄与せず、アンテナAの利得が劣化するおそれがある。
【0010】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、アンテナが近接配置された場合でもアンテナの利得が劣化するのを抑制することができる無線装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する無線装置は、一つの態様において、第1の共振周波数で共振する第1のアンテナと、前記第1のアンテナを介して前記第1の共振周波数の無線信号を受信する第1の無線部とを備える。また、無線装置は、前記第1の共振周波数の偶数倍である第2の共振周波数で共振する第2のアンテナと、前記第2のアンテナを介して前記第2の共振周波数の無線信号を受信する第2の無線部とを備える。また、無線装置は、前記第2のアンテナと前記第2の無線部との間に設けられ、前記第2の共振周波数の無線信号に対するインピーダンスよりも前記第1の共振周波数の無線信号に対するインピーダンスが高い特性を有する回路を備える。
【発明の効果】
【0012】
本願の開示する無線装置の一つの態様によれば、アンテナが近接配置された場合でもアンテナの利得が劣化するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、携帯電話機の正面外観図である。
【図1B】図1Bは、携帯電話機の背面外観図である。
【図2】図2は、携帯電話機の分解斜視図の一例を示す図である。
【図3A】図3Aは、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの配置関係の一例を示す図である。
【図3B】図3Bは、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの一例配置関係を示す図である。
【図4】図4は、携帯電話機の分解斜視図の他の例を示す図である。
【図5A】図5Aは、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの配置関係の他の例を示す図である。
【図5B】図5Bは、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの配置関係の他の例を示す図である。
【図6】図6は、携帯電話機のハードウェア構成を示す図である。
【図7】図7は、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの回路を模式的に示した図である。
【図8】図8は、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの回路を模式的に示した図である。
【図9】図9は、セルラー2ndアンテナの回路図である。
【図10】図10は、GPSアンテナの回路図である。
【図11】図11は、セルラー2ndアンテナのインピーダンス特性の一例を示す図である。
【図12】図12は、セルラー2ndアンテナのインピーダンス特性の比較例を示す図である。
【図13】図13は、GPSアンテナのインピーダンス特性の一例を示す図である。
【図14】図14は、GPSアンテナのインピーダンス特性の比較例を示す図である。
【図15】図15は、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの回路による効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する無線装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。例えば、以下の実施形態では、無線装置の一例として携帯電話機を挙げて説明するが、これに限らず、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、PC(Personal Computer)など無線通信機能を有する無線装置に対して以下の実施形態を適用することができる。
【0015】
図1Aは、携帯電話機の正面外観図である。図1Bは、携帯電話機の背面外観図である。図2は、携帯電話機の分解斜視図の一例を示す図である。図1A,1B,2に示すように、携帯電話機100は、フロントパネルモジュール110、ケース120、及びリアカバー130を備える。また、携帯電話機100は、ケース120とリアカバー130との間に組み込まれる電池140を備える。また、携帯電話機100は、フロントパネルモジュール110とケース120との間に組み込まれるプリント配線基板150を備える。また、携帯電話機100は、プリント配線基板150に実装されるセルラー1stアンテナ(図示せず)、セルラー2ndアンテナ160及びGPSアンテナ170を備える。以下の実施形態では、セルラー1stアンテナとセルラー2ndアンテナ160の2つのアンテナを用いてダイバーシチ受信を実現する携帯電話機におけるセルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170の組合せを例に説明するが、発明が適用できるアンテナの組合せはこれに限られるものではない。
【0016】
フロントパネルモジュール110は、フロントパネルカバー112、フロントパネルカバー112に設けられたタッチパネル式の表示デバイス114、及び操作キー116などを有する。ケース120には、電池140、プリント配線基板150、セルラー2ndアンテナ160及びGPSアンテナ170などが収容されるとともに、ケース120の一方の開口を覆うようにしてフロントパネルモジュール110が組み着けられる。また、ケース120の他方の開口には、電池140を覆うようにリアカバー130が組み着けられる。
【0017】
プリント配線基板150上には、配線パターンが形成されるとともに、携帯電話機100の各種機能を実現するための各種部品が実装される。例えば、プリント配線基板150上には、無線通信機能を実現するための無線部、セルラー2ndアンテナ160の整合回路、GPSアンテナ170の整合回路、及びCPU(Central Processing Unit)などの各種部品が実装される。
【0018】
次に、セルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170について説明する。図3Aは、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの配置関係の一例を示す図である。図3Bは、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの一例配置関係を示す図である。図3Aは、プリント配線基板150を一方の側から見た斜視図であり、図3Bは、プリント配線基板150を他方の側から見た斜視図である。
【0019】
図3A,3Bに示すように、セルラー2ndアンテナ160は、誘電体チップ部品として形成されており、プリント配線基板150の一方の面に実装される。また、GPSアンテナ170は、板金によって形成されており、プリント配線基板150の他方の面に実装される。
【0020】
セルラー2ndアンテナ160は通話用のアンテナであり、共振周波数は、f1−1:800MHz,f1−2:2GHzの2共振アンテナである。GPSアンテナ170は、GPS電波の受信用のアンテナであり、共振周波数は、f2:1575.42MHzである。すなわち、セルラー2ndアンテナ160の共振周波数であるf1−1:800MHzとGPSアンテナ170の共振周波数であるf2:1575.42MHzを比較すると、f2はf1−1の約2倍となっている。また、セルラー2ndアンテナ160は、f1−1:800MHzの波長に対して約1/16以下の大きさの小型化されたアンテナである。
【0021】
また、図3A,3Bに示すように、セルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170は、近接して配置される。例えばセルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170は、10mm以下の距離で近接して配置される。また、図3A,3Bに示すように、セルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170は、それぞれの長手方向が平行になるように配置される。
【0022】
次に、携帯電話機100の他の例を説明する。図4は、携帯電話機の分解斜視図の他の例を示す図である。図5Aは、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの配置関係の他の例を示す図である。図5Bは、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの配置関係の他の例を示す図である。
【0023】
図4,5A,5Bに示すように、携帯電話機100が備える部品については、図2,3A,3Bと同様である。また、図4,5A,5Bに示すように、セルラー2ndアンテナ160がチップ部品として形成され、プリント配線基板150の一方の面に実装される点も同様である。また、GPSアンテナ170が板金によって形成され、プリント配線基板150の他方の面に実装される点も同様である。
【0024】
一方、図4,5A,5Bに示すように、セルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170の配置関係については、図2,3A,3Bと異なる。すなわち、セルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170は、それぞれの長手方向が直交するように配置される。なお、セルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170が例えば10mm以下の距離で近接して配置される点は図2,3A,3Bと同様である。以下説明するセルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170の回路は、図2,3A,3Bのような配置関係でも、図4,5A,5Bのような配置関係でも同様に適用することができる。
【0025】
次に、携帯電話機100のハードウェア構成について説明する。図6は、携帯電話機のハードウェア構成を示す図である。図6に示すように、本実施形態の携帯電話機100は、セルラー2ndアンテナ160、無線部163、GPSアンテナ170、無線部175、スピーカ191、マイク192、及びオーディオ入出力部193を備える。また、携帯電話機100は、記憶部194、表示デバイス114、操作キー116、及びプロセッサ198を備える。
【0026】
無線部163は、セルラー2ndアンテナ160を介して音声や文字などの各種データの無線通信を行う。無線部175は、GPSアンテナ170を介してGPS衛星からの各種データの無線通信を行う。なお、本実施形態では、無線部163と無線部175を別々のハードウェア構成をして説明したが、これには限られない。例えば、無線部163と無線部175は、セルラー2ndアンテナ160及びGPSアンテナ170を介して音声や文字などの各種データやGPS衛星からの各種データの無線通信を行う1つのハードウェア構成とすることもできる。
【0027】
また、オーディオ入出力部193は、マイク192を介して音声を入力するとともにスピーカ191を介して音声を出力する入出力インターフェースである。記憶部194は、携帯電話機100の各種機能を実行するためのデータ、及び携帯電話機100の各種機能を実行するための各種プログラムを格納するROM(Read Only Memory)195を有する。また、記憶部194は、ROM195に格納された各種プログラムのうち実行されるプログラムを格納するRAM(Random Access Memory)196を有する。表示デバイス114は、文字や画像などの各種情報を表示するとともにユーザから入力された操作を受け付けるタッチパネル式の入出力インターフェースである。操作キー116は、携帯電話機100に設けられた各種の操作キーであり、ユーザから入力された操作を受け付ける入力インターフェースである。
【0028】
プロセッサ198は、ROM195又はRAM196に格納された各種プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算処理部である。プロセッサ198は、ROM195又はRAM196に格納された各種プログラムを実行することにより、上述した無線部163,175、オーディオ入出力部193、表示デバイス114等を制御する。なお、プロセッサ198で実行されるプログラムは、ROM195又はRAM196に格納されるだけではなく、CD(Compact Disc)−ROMやメモリ媒体等の頒布できる記憶媒体に記録しておき、記憶媒体から読み出して実行することができる。また、ネットワークを介して接続されたサーバにプログラムを格納し、サーバ上でプログラムが動作するようにしておいて、ネットワークを介して接続される携帯電話機100からの要求に応じてサービスを要求元の携帯電話機100に提供することもできる。
【0029】
次に、セルラー2ndアンテナ160と無線部163との間に設けられる回路、及びGPSアンテナ170と無線部175との間に設けられる回路について説明する。図7は、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの回路を模式的に示した図である。図7に示すように、セルラー2ndアンテナ160は、例えばコイルで形成される整合素子161の一端に接続される。整合素子161の他端は、f1−1,f1−2の共振周波数の無線信号を受信する無線部163に接続される。つまり、無線部163は、セルラー2ndアンテナ160及び整合素子161を介してf1−1,f1−2の共振周波数の無線信号を受信する。また、整合素子161の他端は、例えばコンデンサで形成される整合素子162の一端に接続され、整合素子162の他端は、GNDに接続される。なお、整合素子161と整合素子162により第1の整合回路が形成される。第1の整合回路は、セルラー2ndアンテナ160と無線部163の整合(マッチング)のために設けられ、整合素子161はGPSアンテナ170の共振周波数f2に対して十分高インピーダンスとなっている。
【0030】
一方、GPSアンテナ170は、コイル171とコンデンサ172が並列接続されたLC並列共振回路179の一端に接続される。コイル171とコンデンサ172が並列接続されたLC並列共振回路179の他端は、例えばコイルで形成される整合素子173の一端に接続される。ここで、コイル171とコンデンサ172が並列接続されたLC並列共振回路179は、共振周波数f2の無線信号に対するインピーダンスよりも共振周波数f1−1の無線信号に対するインピーダンスが高い特性を有する回路である。言い換えればLC並列共振回路179を構成するコンデンサ172は、共振周波数f2の無線信号に対して十分低いインピーダンスであり、LC並列共振回路179は共振周波数f1−1の無線信号に対して共振するように設定しているので共振周波数f1−1に対して十分高インピーダンスである。なお、本実施形態では、LC並列共振回路179を設ける例を示すが、これには限られない。GPSアンテナ170と無線部175との間に、共振周波数f2の無線信号に対するインピーダンスよりも共振周波数f1−1の無線信号に対するインピーダンスが高い特性を有する回路を設けることができればよい。
【0031】
整合素子173の他端は、f2の共振周波数の無線信号を受信する無線部175に接続される。つまり、無線部175は、GPSアンテナ170、LC並列共振回路179、及び整合素子173を介してf2の共振周波数の無線信号を受信する。また、整合素子173の他端は、例えばコイルで形成される整合素子174の一端に接続され、整合素子174の他端は、GNDに接続される。なお、整合素子173と整合素子174により第2の整合回路が形成される。
【0032】
このように、本実施形態では、GPSアンテナ170と第2の整合回路との間に、コイル171とコンデンサ172が並列接続されたLC並列共振回路179を設けることにより、セルラー2ndアンテナ160の利得を改善することができる。また、GPSアンテナ170の利得が劣化するのを抑制することができる。まず、GPSアンテナ170の利得が劣化するのを抑制することができる点について、以下説明する。
【0033】
LC並列共振回路179のコンデンサ172は、GPSアンテナ170の共振周波数f2に対して十分低インピーダンスであるため、図7の破線182に示すように、GPSアンテナ170を介して受信される共振周波数f2の無線信号にはほとんど影響を与えない。よって、共振周波数f2の無線信号については、LC並列共振回路179の挿入による利得の劣化はほとんど考慮しなくてよい。
【0034】
また、セルラー2ndアンテナ160の共振周波数f1−1(800MHz)と、GPSアンテナ170の共振周波数f2(1575.42MHz)は、f1−1<f2であり、f2はf1−1の約2倍となる。このため、セルラー2ndアンテナ160はf2に対して十分高インピーダンスとなり、GPSアンテナ170とは結合し難い。仮に、セルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170が結合したとしても、整合素子161は共振周波数f2に対して高インピーダンスなので、図7の破線184に示すように、共振周波数f2の無線信号は整合素子161によってチョークされる。
【0035】
次に、セルラー2ndアンテナ160の利得を改善することができる点について、以下説明する。コイル171とコンデンサ172が並列接続されたLC並列共振回路179は、セルラー2ndアンテナ160の共振周波数f1−1の無線信号に対して高インピーダンスとなっている。このため、図7の破線186に示すように、共振周波数f1−1の無線信号はLC並列共振回路179によってチョークされる。その結果、例えばLC並列共振回路179が無い場合には、セルラー2ndアンテナ160から放射された無線信号の一部がGPSアンテナ170の第2の整合回路を介してGNDへ流れるため放射に寄与せず利得が劣化していたが、LC並列共振回路179を実装することにより、GNDへの経路がなくなるので、セルラー2ndアンテナ160の利得が劣化することを抑制することができる。
【0036】
また、図8は、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの回路を模式的に示した図である。GPSアンテナ170の第2の整合回路(整合素子173及び整合素子174)は、セルラー2ndアンテナ160の共振周波数f1−1に対して低インピーダンスとなる。このため、図8に示すように、LC並列共振回路179の整合素子173側はGNDに接地されているのと等価となるため、GPSアンテナ170とLC並列共振回路179が無給電素子として動作する。その結果、図8の破線188で示すように、GPSアンテナ170はセルラー2ndアンテナ160の一部として動作するため、セルラー2ndアンテナ160の利得を改善することができる。
【0037】
次に、セルラー2ndアンテナ160の回路及びGPSアンテナ170の回路について説明する。図9は、セルラー2ndアンテナの回路図である。図10は、GPSアンテナの回路図である。
【0038】
図9に示すように、セルラー2ndアンテナ160は、共振周波数f1−1用の端子と共振周波数f1−2用の端子を有する。共振周波数f1−1用の端子は、コイル165の一端に接続される。コイル165の他端はコイル166の一端に接続される。コイル166の他端は無線部163に接続される。また、コイル166の他端と無線部163の間の点がコンデンサ167の一端に接続され、コンデンサ167の他端はGNDに接続される。なお、コイル165は例えば27nHとすることができ、コイル166は例えば10nHとすることができる。また、コンデンサ167は1pFとすることができる。
【0039】
一方、共振周波数f1−2用の端子は、コイル166の一端に接続され、コイル166の他端は無線部163に接続される。また、コイル166の他端と無線部163の間の点がコンデンサ167の一端に接続され、コンデンサ167の他端はGNDに接続される。
【0040】
また、図10に示すように、GPSアンテナ170は、コイル171及びコンデンサ172が並列接続されたLC並列共振回路179の一端に接続され、LC並列共振回路179の他端はコイル176に接続される。コイル176の他端は無線部175に接続される。コイル176の他端と無線部175の間の点がコイル177の一端に接続され、コイル177の他端がGNDに接続される。なお、コイル171は4.7nHとすることができ、コンデンサ172は6pFとすることができる。また、コイル176は4.7nHとすることができ、コイル177は2.7nHとすることができる。
【0041】
次に、セルラー2ndアンテナ160及びGPSアンテナ170のインピーダンス特性及び比較例について説明する。図11は、セルラー2ndアンテナのインピーダンス特性の一例を示す図である。図12は、セルラー2ndアンテナのインピーダンス特性の比較例を示す図である。図13は、GPSアンテナのインピーダンス特性の一例を示す図である。図14は、GPSアンテナのインピーダンス特性の比較例を示す図である。
【0042】
図11−14においては、上部がスミスチャート202であり、下部が周波数に対するVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)を示すグラフ204である。また、図11−14においては、ポイント1,2で示した部分が、約800MHz(f1−1)のインピーダンス特性及びVSWRであり、ポイント3,4で示した部分が、約2GHz(f1−2)のインピーダンス特性及びVSWRである。また、ポイント5で示した部分が、約1575.42MHz(f2)のインピーダンス特性及びVSWRである。
【0043】
また、図11は、LC並列共振回路179を挿入した状態のセルラー2ndアンテナのインピーダンス特性であり、図12は、LC並列共振回路179を挿入していない状態のセルラー2ndアンテナのインピーダンス特性である。図11と図12を比較すると、いずれもポイント5のインピーダンスがスミスチャート右側にあり、f2の共振周波数に対して高インピーダンスとなっていることがわかる。
【0044】
また、図11及び図12いずれも、ポイント1,2及びポイント3,4の部分でVSWRが低くなっており、約800MHz(f1−1)と約2GHz(f1−2)で共振していることがわかる。一方、図12に比べて図11のスミスチャートでは、ポイント1,2のインピーダンスが変化していることがわかる。これは、LC並列共振回路179を挿入したことによって、GPSアンテナ170が約800MHzで共振しことに起因するものである。
【0045】
次に、図13は、LC並列共振回路179を挿入した状態のGPSアンテナ170のインピーダンス特性であり、図14は、LC並列共振回路179を挿入していない状態のGPSアンテナ170のインピーダンス特性である。図13と図14を比較すると、いずれもポイント5で示した部分のVSWRが低くなっているので、約1575.42MHz(f2)で共振していることがわかる。これにより、LC並列共振回路179を挿入したとしても、GPSアンテナ170の約1575.42MHz(f2)の共振にはほとんど影響がないので、GPSアンテナ170の利得の劣化を抑制することができる。
【0046】
一方、図14では、ポイント1,2のVSWRが低くなっていないので、約800MHzで共振していないことがわかる。これに対して、図13では、LC並列共振回路179を挿入したことによって、ポイント1,2のVSWRが低くなり、GPSアンテナ170が約800MHzで共振していることがわかる。これにより、LC並列共振回路179を挿入したことによって、GPSアンテナ170がセルラー2ndアンテナ160の一部として約800MHzで共振することにより、セルラー2ndアンテナ160の利得を改善することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、アンテナが小型化され近接配置された場合にアンテナの利得が劣化するのを抑制することができる。例えば、本実施形態では、セルラー2ndアンテナ160が例えば波長の1/16以下のサイズに小型化され、かつ、セルラー2ndアンテナ160とGPSアンテナ170が例えば10mm以内に近接配置された場合でも、アンテナの利得が劣化するのを抑制することができる。以下、本実施形態の効果についてより具体的に説明する。
【0048】
図15は、セルラー2ndアンテナとGPSアンテナの回路による効果を示す図である。図15は、横軸が各アンテナでの動作周波数帯(セルラー2ndアンテナ:800MHz_Lch,800MHz_Mch,800MHz_Hch,2GHz_Lch,2GHz_Mch,2GHz_Hch,GPSアンテナ:GPS)であり、縦軸が放射効率(dB)を示しており、各アンテナでの動作周波数帯に対するセルラー2ndアンテナとGPSアンテナの放射効率を示すグラフである。また、図15において、破線222は、LC並列共振回路179を挿入していない状態のセルラー2ndアンテナとGPSアンテナのアンテナ放射効率を示している。また、実線224は、LC並列共振回路179を挿入した状態のセルラー2ndアンテナとGPSアンテナのアンテナ放射効率を示している。
【0049】
破線222で示すように、LC並列共振回路179を挿入していない状態では、約800MHzのセルラー2ndアンテナ160の放射効率が−30dB以下となっており、放射効率の特性がよくないことがわかる。一方、実線224で示すように、LC並列共振回路179を挿入することによって、セルラー2ndアンテナ160の共振周波数f1(約800MHz)の放射効率を15dB以上改善することができる。また、GPSアンテナ170の共振周波数f2(約1575.42MHz)、及びセルラー2ndアンテナ160の共振周波数f1−2(約2GHz)については、破線222及び実線224にほとんど差は見られない。よって、本実施形態では、LC並列共振回路179を挿入することによる放射効率の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0050】
100 携帯電話機
150 プリント配線基板
160 セルラー2ndアンテナ
161,162,173,174 整合素子
163,175 無線部
170 GPSアンテナ
171 コイル
172 コンデンサ
179 LC並列共振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の共振周波数で共振する第1のアンテナと、
前記第1のアンテナを介して前記第1の共振周波数の無線信号を受信する第1の無線部と、
前記第1の共振周波数の偶数倍である第2の共振周波数で共振する第2のアンテナと、
前記第2のアンテナを介して前記第2の共振周波数の無線信号を受信する第2の無線部と、
前記第2のアンテナと前記第2の無線部との間に設けられ、前記第2の共振周波数の無線信号に対するインピーダンスよりも前記第1の共振周波数の無線信号に対するインピーダンスが高い特性を有する回路と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記回路は、並列配置されたコイルとコンデンサが前記第2のアンテナと前記第2の無線部との間に直列に設けられたLC回路である
ことを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記第1の無線部と前記第1のアンテナとの間に設けられ、前記第1の共振周波数の無線信号に対するインピーダンスよりも前記第2の共振周波数の無線信号に対するインピーダンスが高い特性を有する第1の整合回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記LC回路と前記第2の無線部との間とグラウンドとの間に設けられた整合素子を含む第2の整合回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記第1のアンテナは、前記第1の共振周波数の無線信号の波長の1/16以下の大きさである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項6】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは、10mm以内に配置される
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−110473(P2013−110473A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251964(P2011−251964)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(310022372)富士通モバイルコミュニケーションズ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】