説明

無線認証用モジュール、および無線認証システム

【課題】局所的且つ単発の認証処理のみでなく、或程度広いエリアであっても所定間隔で定期的に認証処理を行うことができ、且つ比較的小型、薄型の無線認証用モジュールおよび無線認証システムを実現する。
【解決手段】無線認証システム1は、パッシブ通信とアクティブ通信の両方が可能なRFIDカード10を備える。システム制御部21は、パッシブ通信用のリクエスト信号を送信し、パッシブ応答信号を受信できれば、当該パッシブ応答信号による認証処理を行う。RFIDカード10は、一度のパッシブ通信後であって、リクエスト信号を受信できなくなると、アクティブ認証信号を送信する。システム制御部21は、パッシブ応答信号に代えてアクティブ認証信号で認証処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信による認証システムに利用する無線認証用モジュールおよび当該無線認証用モジュールを含む無線認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、従業員等の特定の人達にRFIDカードを持たせ、入退室管理を行うシステムが各種、実用化されている。例えば、特許文献1に記載の入退室管理システムでは、クリーンルームの入り口に読み取り機を設置し、当該クリーンルームへの入室が許可された従業員のそれぞれにICカード(RFIDカード)を携帯させている。従業員がクリーンルームに入室もしく退室しようとすると、出入口において、読み取り機から質問信号が送信される。ICカードは、質問信号を受信して、応答信号を送信する。読み取り機は、この応答信号に基づいて、従業員の入退室管理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−204388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1のシステムを利用した無線認証システムでは、読み取り機からの質問信号に基づいて、認証処理を行っているため、読み取り機からの質問信号が到達しない範囲にRFIDカードが存在する場合には、管理処理を行うことができない。さらに、RFIDカードがパッシブ型の場合、電池を備えていないので、質問信号と同様の無線信号で電力供給を受けて駆動する。このため、上述の質問信号が到達する範囲内でなければ、電気回路的にも認証処理を行うことができない。
【0005】
一方、RFIDカードがアクティブ型の場合、電池を備えているので、電力供給を受けることなく、応答信号を送信することができる。そして、このようなアクティブ型の場合、所定タイミング間隔で送信を続けていれば、質問信号が無くても、上述の認証処理を行える。しかしながら、所定タイミング間隔で常時送信を行う場合、当該定期送信(ローミング)に応じた電力を必要とするため、ボタン電池等の比較的大きく、厚い電池を用いなければならない。したがって、RFIDカードが厚く、大きくなってしまうという問題が生じる。
【0006】
このような問題を鑑みて、本発明の目的は、局所的且つ単発の認証処理のみでなく、或程度広いエリアであっても所定間隔で定期的に認証処理を行うことができ、且つ比較的小型、薄型の無線認証用モジュールおよび無線認証システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、所定周波数の無線信号を送受信可能なアンテナと、アンテナに接続し、無線信号による外部との通信を実行するRFID機能部と、RFID機能部に接続する電力供給機能部と、を備える無線認証用モジュールに関する。この無線認証用モジュールのRFID機能部は、外部からの無線信号によるリクエスト信号を受信した場合には、無線信号による電力を用いてパッシブ応答信号を送信する。また、RFID機能部は、所定のリクエスト信号を受信してパッシブ応答信号を送信した後で、且つリクエスト信号の受信不能を検出すると、電力供給機能部からの電力を用いてアクティブ認証信号を送信する。
【0008】
この構成では、パッシブ通信が可能な領域ではパッシブ通信が行われ、パッシブ通信が可能ではない領域では、自身に装備された二次電池を電源としてアクティブ通信が行われる。この際、パッシブ通信による所定の認証処理(例えば入室検知処理)が行われた後で、且つパッシブ通信が不可能と検出した時点からアクティブ通信が開始されるので、常時アクティブ通信を行うよりも消費電力を抑えることができる。これにより、電力供給機能部としての二次電池の容量が、従来のボタン電池よりも小さくてもよく、小型化、薄型化が可能になる。また、太陽電池や外部接続端子等の充電機構を備えることで、さらに少ない容量でもアクティブ通信が可能であり、より二次電池の小型化、薄型化が可能になる。
【0009】
したがって、単発の認証だけでなく、所定期間継続的な認証処理が可能なシステムのための小型且つ薄型の無線認証用モジュールを実現できる。
【0010】
また、この発明の無線認証用モジュールでは、RFID機能部は、リクエスト信号を受信してパッシブ応答信号を送信するパッシブ通信機能部と、アクティブ認証信号を送信するアクティブ通信機能部と、を個別に備える。
【0011】
この構成では、RFID機能部の具体的構成を示している。このように、パッシブ通信機能部とアクティブ通信機能部とを個別に備えることで、後述するパッシブ通信とアクティブ通信とが異なる周波数、異なるアンテナを用いる場合に有効である。
【0012】
また、この発明の無線認証用モジュールでは、パッシブ通信機能部とアクティブ通信機能部とは、互いに異なる周波数に対応した送受信回路もしくは送信回路を備える。アンテナは、パッシブ通信の周波数に応じた形状の第1のアンテナと、アクティブ通信の周波数に応じた形状の第2のアンテナとを備える。
【0013】
この構成では、パッシブ通信とアクティブ通信で異なる周波数を用いる場合のパッシブ通信機能部、アクティブ通信機能部、およびアンテナの具体的構成を示している。
【0014】
また、この発明の無線認証用モジュールでは、パッシブ通信機能部は、パッシブ応答信号の送信後、所定時間長が経過した後に、アクティブ通信機能部よりも長い時間間隔で、電力供給機能部からの電力を用いて第2のアクティブ認証信号を送信する。
【0015】
この構成では、アクティブ通信機能部のみでなく、パッシブ通信機能部からもアクティブ通信を行う。このような構成とし、例えばアクティブ通信機能部とパッシブ通信機能部とで異なる周波数のアクティブ認証信号を送信すれば、より多様性のある通信が可能になる。
【0016】
また、この発明の無線認証用モジュールでは、RFID機能部は、リクエスト信号の受信不能を検出すると、アクティブ認証信号に警告情報を含んで送信する。
【0017】
この構成では、アクティブ認証信号の具体的情報内容の一例を示している。そして、このような構成とすれば、パッシブ通信が不能になる程度にユーザ(従業員)が所定位置から離れれば、無線認証システムに対して警告が通知される。これにより、例えばユーザが離れたことによるパソコンの自動スリープモードや自動シャットダウン等の処理を行うことができる。
【0018】
また、この発明は、上述の無線認証用モジュールを含む無線認証システムに関する。無線認証システムは、無線認証用モジュールとともに、親機側送受信部およびシステム制御部を備える。親機側送受信部は、リクエスト信号の送信、パッシブ応答信号、およびアクティブ認証信号の受信を行う。システム制御部は、パッシブ応答信号もしくはアクティブ認証信号に基づいて所定の認証処理を実行する。
【0019】
この構成では、上述の無線認証用モジュールを含む無線認証システムの構成を示している。この構成により、無線認証用モジュールからのパッシブ応答信号もしくはアクティブ認証信号を受けて、システム制御部が従来よりも多様性を有する認証処理を実行することができる。
【0020】
また、この発明の無線認証システムでは、親機側送受信部は複数あり、リクエスト信号の送信およびパッシブ応答信号の受信を行う第1送受信部と、アクティブ認証信号の受信を行う第2送受信部とは、異なる領域に配置されている。
【0021】
この構成では、上述の無線認証システムのシステム側の具体的な構成例を示している。この例では、例えば第1送受信部を入退場口に設置し、第2送受信部を部屋内の各所に設置することで、単に従業員の入退室管理のみでなく、当該従業員が入室した部屋内に継続的にいるかどうかや、従業員が室内のどのエリアにいるか等を管理することができる。
【0022】
また、この発明の無線認証システムでは、システム制御部は、アクティブ認証信号の内容もしくは受信状態に基づいて警報処理を実行する。
【0023】
この構成では、上述の無線認証システムの具体的処理の一例を示している。例えば、この場合、児童や生徒に無線認証用モジュールを持たせ、学校の校門にパッシブ通信用の第1送受信部等のパッシブ通信機能を配置する。一方、通学路の各地点にアクティブ通信用の第2送受信部等のアクティブ通信機能をそれぞれ配置する。これにより、パッシブ通信機能で児童が校門をくぐったことを検出し、アクティブ通信機能で児童の通学路上での下校状態を検出することができる。この際、無線認証用モジュールは所謂RFIDカードのような小型薄型のものなので、児童であって持ち運びが容易である。これにより、児童が無線認証用モジュールの存在を気にすることなく、親が登下校の安全を確認することができる。
【0024】
また、この発明の無線認証システムでは、親機側送受信部はユーザに利用する端末機に備えられる。無線認証用モジュールはユーザに付帯しており、システム制御部は、アクティブ認証信号の内容もしくは受信状態に基づいて、端末機に対する異なる複数の処理を実行する。
【0025】
この構成では、上述の無線認証システムの別の具体的処理の一例を示している。これにより、例えばパソコンに第1送受信部、第2送受信部を備えておけば、ユーザがパソコンの前で作業する際には、パソコンが動作しており、ユーザが離れたことによってパソコンの自動スリープモードや自動シャットダウン等の処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、局所的且つ単発の認証処理のみでなく、或程度広いエリアであっても所定間隔で定期的に認証処理を行うことができる。さらにこのような処理が可能な比較的小型、薄型の無線認証用モジュールと、当該無線認証用モジュールを含む無線認証システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るRFIDカード10の機能ブロック図および構成を示すための概略的外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線認証システムの概略構成を示すブロック図であり、パッシブ通信状態とアクティブ通信状態を示している。
【図3】本実施形態の無線認証システムを用いた具体的入退室管理、および在席管理を行った場合の概念図である。
【図4】図3に示す実施例を実行する際のシステムフローを示すフローチャートである。
【図5】災害緊急時における被害者検出処理の概念を示す図である。
【図6】下校時の児童安全確認の概念およびそのための概略構成を示す図である。
【図7】ユーザPの移動によるパソコン920の自動制御処理の概念を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係る無線認証用モジュールおよび無線認証システムについて、図を参照して説明する。なお、本実施形態では、無線認証用モジュールとしてRFIDカードを例に説明する。
【0029】
図1(A)は本実施形態のRFIDカード10の機能ブロック図であり、図1(B)はRFIDカード10の構成を示すための外観図である。
【0030】
まずは、RFIDカード10の回路構成について説明する。RFIDカード10は、RFID機能部11、電力供給機能部12、アンテナ13A,13Bを備える。RFID機能部11は、パッシブ通信用IC110Aおよびアクティブ通信用IC110Bを備える。
【0031】
パッシブ通信用IC110Aは、パッシブ通信用制御部111Aと第1帯域信号送受信部112Aとを備える。第1帯域信号送受信部112Aは、アンテナ13Aで受信したF1周波数帯(具体的に本実施形態ではLF帯)のリクエスト信号を復調して、ベースバンドのリクエストデータをパッシブ通信用制御部111Aへ出力する。この際、第1帯域信号送受信部112Aには、整流回路とキャパシタとからなるパッシブ型電源が備えられており、第1帯域信号送受信部112Aおよびパッシブ通信用制御部111Aを構成する各能動素子やアンプには、当該パッシブ型電源から電力供給される。
【0032】
パッシブ通信用制御部111Aは、リクエストデータに応じて、RFIDカード10の個別IDを含むパッシブ応答データを生成し、第1帯域信号送受信部112Aへ出力する。第1帯域信号送受信部112Aは、ベースバンドのパッシブ応答データに基づいてF1周波数帯(LF帯)のパッシブ応答信号を生成し、アンテナ13Aへ出力する。
【0033】
アンテナ13Aは、放射用コイルLr1とキャパシタCr1とが等価回路的に並列接続された共振型のアンテナである。この共振周波数は、リクエスト信号およびパッシブ応答信号の周波数であるLF帯を基準にして設定されている。
【0034】
アクティブ通信用IC110Bは、アクティブ通信用制御部111Bと第2帯域信号送信部112Bとを備える。アクティブ通信用制御部111Bは、デフォルト状態ではスリープ状態であるが、パッシブ通信用制御部111Aによるリクエストデータの受信状態を定期的に観測している。そして、アクティブ通信用制御部111Bは、パッシブ通信用制御部111Aが所定時間長に亘り、リクエストデータを受信していないことを検出すると、RFIDカード10の個別IDを含むベースバンドのアクティブ認証データを生成し、第2帯域信号送信部112Bへ出力する。
【0035】
第2帯域信号生成部112Bは、ベースバンドのアクティブ認証データに基づいてF2周波数帯(具体的に本実施形態では400MHz帯)のアクティブ認証信号を生成し、アンテナ13Bへ出力する。
【0036】
アンテナ13Bは、放射用コイルLr2とキャパシタCr2とが等価回路的に並列接続された共振型のアンテナである。この共振周波数は、アクティブ認証信号の周波数である400MHz帯を基準にして設定されている。
【0037】
この際、アクティブ通信用制御部111Bおよび第2帯域信号送信部112Bは、RFID機能部11とは別に形成された電力供給機能部12からの電力供給を受けて動作する。
【0038】
電力供給機能部12は、二次電池121および充電機能部122を備える。二次電池121は、例えば電気二重層キャパシタからなり、RFID機能部11へ接続するとともに、充電機能部122へ接続する。充電機能部122は、例えば太陽電池パネルや外部接続用端子からなり、自身で発生した電力もしくは外部から供給された電力を二次電池121へ与える。二次電池121は、充電機能部121から電力で充電し、必要に応じてRFID機能部11へ電力供給する。
【0039】
ここで、二次電池121は、アクティブ通信を安定的に長時間継続するには、容量が大きなものがよいが、上述のように、アクティブ通信を定常的に連続して行うのではなく、パッシブ通信が不可能な領域でのみ行うため、定常的に連続してアクティブ通信を行う場合よりも、容量を小さくすることができる。さらに、太陽電池等の充電機能を備え、定期的に充電が可能であることからも、容量を小さくすることができる。これにより、上述のような薄型の電気二重層キャパシタを用いても、後述する実質的な動作に影響が無い程度に電力供給を行うことができる。
【0040】
このような構成のRFIDカード10は、図1(B)に示すような外観形状からなる。RFIDカード10は、絶縁性で矩形平板状のベース基板100の表面および内部に、上述の回路を構成する各部が備えられた構成からなる。
【0041】
ベース基板100の周端面近傍の内部には、巻回状のコイル電極からなるアンテナ13Aが配設されている。このアンテナ13Aを形成する巻回形は、LF帯の電波に対して低損失で電磁界結合するような形状に形成されている。そして、このアンテナ13Aに対して接続もしくは電磁界結合するように、ベース基板100の内部にはパッシブ通信用IC110Aが配設されている。
【0042】
ベース基板100の前記主面の略中央の内部には、巻回状のコイル電極からなるアンテナ13Bが配設されている。このアンテナ13Bを形成する巻回形は、400MHz帯の電波に対して低損失で電磁界結合するような形状に形成されている。そして、このアンテナ13Bに対して接続もしくは電磁界結合するように、ベース基板100の内部にはアクティブ通信用IC110Bが配設されている。なお、アクティブ通信用制御部111Bは、図示しない配線パターンによりパッシブ通信用制御部111Aに導通されている。
【0043】
さらに、ベース基板100の一方主面には太陽電池からなる充電機能部122が設置されている。また、ベース基板100の他方主面側の内部には、電気二重層キャパシタからなる二次電池121が配設されている。
【0044】
このように、RFIDカード10は薄型且つ小型の形状に形成することができる。これにより、人がRFIDカード10を携帯しても、例えばネックストラップで首からぶら下げていても、違和感なく携帯し続けることができる。そして、このような携帯可能なRFIDカード10を用いて、次に示す無線認証システムに用いることで、ユーザ(従業員等)が意識することなく、多様な認証処理を行うことができる。
【0045】
次に、上述のRFID(無線認証用デバイス)10を用いた無線認証システムの具体的事例を、図を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る無線認証システムの概略構成を示すブロック図であり、図2(A)はパッシブ通信状態を示し、図2(B)はアクティブ通信状態を示している。
【0046】
無線認証システム1は、上述のRFIDカード10と、システム制御部21、第1親機側送受信部22A、第2親機側送受信部22B、親機側アンテナ23A,23Bを備える。
【0047】
システム制御部21は、第1親機側送受信部22Aに対して、自システムに固有のシステムIDを含むリクエスト信号を送信させる制御を行う。また、システム制御部21は、第1親機側送受信部22Aからのパッシブ応答信号(応答データ)もしくは第2親機側受信部22Bからのアクティブ認証信号(認証用データ)に基づいて、後述する各種の認証処理や認証処理に付随する各種処理を実行する。
【0048】
第1親機側送受信部22Aは、システム制御部21からのリクエスト信号送信制御に応じて、LF帯(図2ではF1帯)のリクエスト信号を生成し、アンテナ23Aから送信する。第1親機側送受信部22Aは、アンテナ23Aで受信したパッシブ応答信号を復調して、RFIDカード10の個別IDを含む応答データを生成して、システム制御部21へ出力する。アンテナ23Aは、LF帯の送受波を低損失で行える形状からなる。
【0049】
第2親機側受信部22Bは、アンテナ23Bで受信したアクティブ認証信号を復調して、RFIDカード10の個別IDを含む応答データを生成して、システム制御部21へ出力する。アンテナ23Bは、400MHz帯の受波を低損失で行える形状からなる。
【0050】
このような構成において、システム制御部21は、LF帯での近距離非接触通信が可能な領域内であれば、LF帯のリクエスト信号とパッシブ応答信号により、RFIDカード10の個別IDを取得する。一方、システム制御部21は、LF帯での近距離非接触通信が不可能な領域であれば、400MHz帯でのアクティブ認証信号により、RFIDカード10の個別IDを取得する。これにより、パッシブ通信が可能な領域はもとより、パッシブ通信が不可能な領域でも、アクティブ通信による認証処理が可能になる。すなわち、従来のパッシブ通信のみの場合よりも、汎用性の高い認証を実現することができる。
【0051】
次に、上述の構成を用いて実現される、具体的な実施例の一部を、図を参照にして説明する。まず、第1の具体例である入退室管理および在席管理について説明する。
【0052】
図3は、本実施形態の無線認証システムを用いた具体的入退室管理、および在席管理を行った場合の概念図であり、図3(A)入室時を示し、図3(B)在席時を示す。
【0053】
部屋900の出入口901の近傍には、アンテナ23Aが配設されている。アンテナ23Aは上述のようにLF帯用のアンテナであり、当該アンテナ23Aから所定間隔でリクエスト信号が放射されている。部屋900の天井には、複数のアンテナ23B1,23B2が配設されている。アンテナ23B1,23B2は、上述のように400MHz帯用のアンテナである。また、アンテナ23B1,23B2は、部屋900における所定距離離れた位置に配設されている。
【0054】
図3(A)に示すように、部屋900に入室可能な個別IDを有するRFIDカード10を携帯したユーザPが、出入口901を通過する時、RFIDカード10は、アンテナ23Aに近接する。これにより、アンテナ23Aを介してRFIDカード10とシステム制御部21との間での認証が行われる。そして、この認証結果に基づいて、システム制御部21はユーザPの入室を記録する。
【0055】
次に、図3(B)に示すように、ユーザPが部屋900内の自席910に着席すると、アンテナ23Aからの電波伝搬可能距離外であるので、RFIDカード10はリクエスト信号を受信することができない。RFIDカード10のRF機能部11は、リクエスト信号の受信不能を検出し所定時間が経過すると、二次電池121からの通信用の電力供給を開始して、400MHz帯のアクティブ認証信号を送信する。これにより、アクティブ認証信号は、部屋900の天井に設置されたアンテナ23B1,23B2によって受信される。
【0056】
この際、アクティブ認証信号の送信電力はパッシブ応答信号の送信電力よりも高くされているが、特に、アクティブ認証信号の送信電力を少なくとも部屋全体が伝搬可能範囲となるように設定すれば、部屋900のどの領域にいても、いずれかのアンテナ(図3(B)の場合であればアンテナ23B1)でアクティブ認証信号を確実に受信することができる。ただし、アクティブ認証信号の送信電力を、部屋の高さ程度が伝搬可能距離となるように設定すれば、いずれかのアンテナでほぼ確実にアクティブ認証信号を受信しながら、省電力化が可能になる。これにより、二次電池121の消耗を抑制することができる。
【0057】
このように、RFIDカード10からアンテナ23B1,23B2を介して、アクティブ認証信号がシステム制御部21へ送信されると、RFIDカード10とシステム制御部21との間での認証が行われる。この認証結果に基づいて、システム制御部21はユーザPの在席を記録する。そして、アクティブ認証信号を定期的に送信することで、継続的な在席を記録することができる。
【0058】
なお、ユーザPが退室する際には、入室時と同様に、LF帯によるアンテナ23Aを介した認証が行われ、これにより、システム制御部21は、ユーザPの退室を記録する。そして、このような退室の記録処理が行われた場合には、RFIDカード10は、アクティブ認証信号の送信を自動的に停止する。これにより、定常的で半永久的なアクティブ認証信号の送信が防止され、二次電池121の消耗を抑制することができる。
【0059】
次に、このような場合の処理フローについて、図を参照して説明する。図4は、図3に示す実施例を実行する際のシステムフローを示すフローチャートである。
【0060】
まず、システム制御部21は、LF帯(F1帯)によるシステムの固有IDを含むリクエスト信号を送信する(S101)。この際、システム制御部21は、パッシブ応答信号の受信待機状態にありながら、定期的にリクエスト信号を送信する。
【0061】
RFIDカード10は、図1(B)に示すように太陽電池を備える構成であれば、二次電池121を継続的に充電し続ける(S210)。
【0062】
RFIDカード10は、リクエスト信号を受信するまでは停止状態にあり、リクエスト信号を受信すると(S201)、LF帯によるパッシブ応答信号を生成して送信する(S202)。
【0063】
システム制御部21は、パッシブ応答信号を受信すると(S102)、個別IDに基づいて入室認証処理を実行する(S103)。これにより、ユーザPの入室が検出されると、システム制御部21は、ユーザPの入室を記録する。
【0064】
RFIDカード10は、パッシブ応答信号の送信後に、パッシブ通信の有無を観測し続け、所定時間長に亘りパッシブ通信が行われていないことを検出すると、二次電池による通信処理用の電力供給開始処理を行う(S203)。これにより、アクティブ通信系の各回路部へ通信処理用の電力が供給される。なお、このパッシブ通信の停止を観測する際の電力は、二次電池121から供給されるが、受信の有無を観測するだけのものであり、消費電力量は極小さく、二次電池121の実質的な消耗には殆ど影響しない程度である。
【0065】
RFIDカード10は、自身の二次電池による通信処理用の電力供給で、400MHz帯(F2帯)のアクティブ認証信号を生成し、所定の指向性で外部へ送信する(S204)。RFIDカード10は、アクティブ認証信号の送信処理を、退室処理がされるまで、すなわち、再度LF帯によるパッシブ通信が行われるまで、所定のタイミング間隔で定期的に実行する(S205:No→S204)。RFIDカード10は、退室処理が実行されると(S205:Yes)、アクティブ認証信号の送信とともに、二次電池121による電力供給を停止する。
【0066】
システム制御部21は、アクティブ認証信号を受信すると(S104:Yes)、上述のように、在席認証処理を実行し、ユーザPの在席を記録する(S105)。この処理も、退室処理がされるまで、受信するアクティブ認証信号に基づいて継続的に行われる(S106:No)。
【0067】
一方、退室処理がされないままで、アクティブ認証信号を受信していなければ(S104:No)、計時処理を行いながら(S107)、タイムアウトまで継続的に受信の待機状態となる。ここで、タイムアウトまでにアクティブ認証信号を受信できれば(S108:No)、システム制御部21は、引き続きアクティブ認証信号の受信待機および受信処理を行う。一方で、タイムアウトになると(S108:Yes)、システム制御部21は、警告処理を実行する(S109)。ここで、警告処理とは、例えば、入室記録により部屋900内に居るはずのユーザPが所定時間に亘り在席確認できないことを示すログを記録する等の処理である。
【0068】
以上のように、本実施形態の構成および処理を用いれば、ユーザに意識させることなく、単発的な入退室管理だけではない継続的な在席検出も含む管理を、確実に実行することができる。
【0069】
次に、第2の具体例である災害緊急時の被害者検出について説明する。図5は災害緊急時における被害者検出処理の概念を示す図である。図5では、図4と同じ部屋において、地震が発生し、ユーザPが机の下敷きになり、逃げ遅れた場合について示している。
【0070】
このような場合であっても、上述のように、400MHz帯のアクティブ認証信号は定期的に送信されるので、ユーザPが部屋900に取り残されていることを、より確実に検出することができる。また、さらに、当該具体例の場合、図5(A)にも示すように、上述のパッシブ通信用IC110Aからも、二次電池121からの電力供給により、LF帯のアクティブ認証信号を送信させておくことで、異なる複数の周波数でアクティブ認証信号を送信できるので、ユーザPが部屋900に取り残されていることを、さらに確実に検出することができる。
【0071】
特に、LF帯の場合、400MHz帯と比べて、障害物があっても電波が伝搬しやすく、有効である。なお、この際、LF帯のアクティブ認証信号は、400MHz帯のアクティブ認証信号と同じ周期で送信しても良く、異ならせてもよい。例えば、LF帯のアクティブ認証信号の送信電力を高めながら、送信周期を長くすることで、二次電池121の消耗を抑制しながら、長い間、外部へアクティブ認証信号を送信し続けることが可能になる。
【0072】
なお、地震などの災害の場合、ユーザPが居る建物が崩壊し、建物内に配置したアンテナ23A,23B1,23B2が破壊され、機能しなくなることが考えられる。このような場合、図5(B)に示したように、ユーザPを探索する探索者Qが、アンテナ23B3を備えた携帯型パソコンPC等を持って、建物内を探索することで、被災者であるユーザPを救出することができる。また、携帯型パソコンPC側で、ユーザPの所持するRFIDカード10からの信号強度を表示することで、被災者の位置特定を迅速に行うことができる。なお、RFIDカード10からの信号強度としては電界強度(RSSI)を使用することができる。
【0073】
次に、第3の具体例である下校時の児童安全確認について説明する。図6は下校時の児童安全確認の概念およびそのための概略構成を示す図であり、図6(A)が校門911をくぐる時の図であり、図6(B)が下校途中の図である。この構成では、LF帯のアンテナ23Aは、児童Psが通う学校の校門911に設置されている。また、400MHz帯のアンテナ23B1,23B2は、通学路途中の建築物(例えば電柱)912に、それぞれ所定間隔で設置されている。この際、通学路の長さに応じてアンテナ設置数は適宜決定すればよい。
【0074】
本システムでは、アンテナ23A,23B1,23B2とシステム制御部21とが、離間された位置に配置されているが、これらはネットワーク等により接続されている。
【0075】
図6(A)に示すように、個別IDを有するRFIDカード10を携帯した児童Psが下校する際に、校門911を通過すると、RFIDカード10は、アンテナ23Aに近接する。これにより、アンテナ23Aを介してRFIDカード10とシステム制御部21との間での認証が行われる。そして、この認証結果に基づいて、システム制御部21は児童Psの下校開始(校門通過)を記録する。
【0076】
次に、図6(B)に示すように、児童Psが通学路を通り、アンテナ23B1,23B2の近傍を通過すると、アンテナ23Aからの電波伝搬可能距離外であるので、RFIDカード10はリクエスト信号を受信することができない。RFIDカード10のRF機能部11は、リクエスト信号の受信不能を検出し所定時間が経過すると、二次電池121からの通信用の電力供給を開始して、400MHz帯のアクティブ認証信号を所定タイミング間隔で継続的に送信する。これにより、児童Psの位置に応じて、アクティブ認証信号は、通学路中に設置されたアンテナ23B1,23B2によって受信される。
【0077】
このようなアクティブ認証信号の受信情報は、システム制御部21に伝送され、システム制御部21は、アクティブ認証信号と受信したアンテナ23B1の識別IDとから児童Psが無事に下校していること、および児童Psの概略的位置を検出することができる。このような情報は、例えば、予め契約してる親の携帯端末等に送信されるようにすれば、親は、自分の子供の下校状況を知ることができる。
【0078】
このように、図6に示すような具体的構成を用いれば、児童Psが意識することなく、下校時の安全が確認され、且つ親にその状況を知らせることができる。なお、各家に校門と同じパッシブ通信用のアンテナを設置しておき、上述の退室処理と同様の処理を行えるようにすることで、学校から家庭への下校時の安全確認を、児童に意識させることなく確実に行えるとともに、二次電池121の消耗を抑制することもできる。また、この例では下校時を例にしたが、当然に登校時にも適用でき、さらには予め設定した二地点間での安全確認にも適用することができる。
【0079】
次に、第4の具体例であるパソコンの自動制御処理について説明する。図7は、ユーザPの移動によるパソコン920の自動制御処理の概念を説明するための図であり、図7(A)はパソコン920による作業時、図7(B)はユーザPがパソコン920から離れた場合(近距離)、図7(C)はユーザPがパソコン920から離れた場合(遠距離)を示す。
【0080】
本具体例では、パッシブ通信用のアンテナ23Aおよびアクティブ通信用のアンテナ23Bをパソコン920に内蔵している。
【0081】
まず、図7(A)に示すように、ユーザPが自席910に着席し、パソコン920に対面して座り、作業をする場合、アンテナ23AからのLF帯のリクエスト信号がRFIDカード10で受信される。これにより、RFIDカード10とアンテナ23Aとの間でLF帯によるパッシブ型の認証処理が可能になる。
【0082】
このようなLF帯によるパッシブ型の認証が行われたことを検出すると、パソコン920内に備えられたシステム制御部21は、パソコン920の使用許可IDとRFIDカード10の個別IDとを比較し、一致すれば、パソコン920のロックを解除する。これにより、パソコン920に割り当てられたユーザPは、パソコン920による作業を行うことができる。
【0083】
次に、図7(B)に示すように、ユーザPが自席910から所定距離離れると、アンテナ23AからのLF帯のリクエスト信号をRFIDカード10が受信できなくなる。RFIDカード10は、継続的にパッシブ応答信号の受信を観測し、所定時間以上パッシブ応答信号を受信できなければ、パッシブ応答信号よりも高い信号強度のアクティブ認証信号を送信する。
【0084】
システム制御部21は、継続的にパッシブ応答信号の受信を観測し、所定時間以上パッシブ応答信号を受信できず、且つアクティブ認証信号をアンテナ23Bで受信すると、パソコン920をロック状態にする。これにより、パソコン920およびユーザPに対するセキュリティ性およびプライバシーを向上することができる。
【0085】
次に、図7(C)に示すように、ユーザPがさらに自席910から離れ、アクティブ認証信号が受信できなくなると、システム制御部21は、継続的にアクティブ認証信号の受信を観測し、所定時間以上アクティブ認証信号を受信できないことを検出すると、パソコン920をシャットダウンする。これにより、パソコン920を作業していない期間で、且つ、すぐにユーザPがパソコン920の作業を再開しないような状況に、パソコン920の電源をオフして、消費電力を抑制することができる。
【符号の説明】
【0086】
1−無線認証システム、10−RFIDカード、11−RFID機能部、12−電力供給機能部、13A,13B−アンテナ、21−システム制御部、22A−第1親機側送受信部、22B−第2親機側受信部、23A,23B−親機側アンテナ、110A−パッシブ通信用IC、111A−パッシブ通信用制御部、112A−第1帯域信号送受信部、110B−アクティブ通信用IC、111B−アクティブ通信用制御部、112B−第2帯域信号送信部、121−二次電池、122−充電機能部、100−ベース基板、900−部屋、910−自席、920−パソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の無線信号を送受信可能なアンテナと、
前記アンテナに接続し、前記無線信号による外部との通信を実行するRFID機能部と、
前記RFID機能部に接続する電力供給機能部と、を備え、
前記RFID機能部は、
外部からの前記無線信号によるリクエスト信号を受信した場合には、前記無線信号による電力を用いてパッシブ応答信号を送信し、
所定のリクエスト信号を受信して前記パッシブ応答信号を送信した後で、且つ前記リクエスト信号の受信不能を検出すると、前記電力供給機能部からの電力を用いてアクティブ認証信号を送信する、無線認証用モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の無線認証用モジュールであって、
前記RFID機能部は、
前記リクエスト信号を受信して、前記パッシブ応答信号を送信するパッシブ通信機能部と、
前記アクティブ認証信号を送信するアクティブ通信機能部と、を個別に備える、無線認証用モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の無線認証用モジュールであって、
前記パッシブ通信機能部と前記アクティブ通信機能部とは、互いに異なる周波数に対応した送受信回路もしくは送信回路を備え、
前記アンテナは、前記パッシブ通信の周波数に応じた形状の第1のアンテナと、前記アクティブ通信の周波数に応じた形状の第2のアンテナとを備える、無線認証用モジュール。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の無線認証用モジュールであって、
前記パッシブ通信機能部は、前記パッシブ応答信号の送信後、所定時間長が経過した後に、前記アクティブ通信機能部よりも長い時間間隔で、前記電力供給機能部からの電力を用いて第2のアクティブ認証信号を送信する、無線認証用モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無線認証用モジュールであって、
前記RFID機能部は、前記リクエスト信号の受信不能を検出すると、前記アクティブ認証信号に警告情報を含んで送信する、無線認証用モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の無線認証用モジュールを含むとともに、
前記リクエスト信号の送信、前記パッシブ応答信号および前記アクティブ認証信号の受信を行う親機側送受信部、および、前記パッシブ応答信号もしくは前記アクティブ認証信号に基づいて所定の認証処理を実行するシステム制御部を備えた、無線認証システム。
【請求項7】
請求項6に記載の無線認証システムであって、
前記親機側送受信部は複数あり、前記リクエスト信号の送信および前記パッシブ応答信号の受信を行う第1送受信部と、前記アクティブ認証信号の受信を行う第2送受信部とは、異なる領域に配置されている、無線認証用モジュール。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の無線認証システムであって、
前記システム制御部は、前記アクティブ認証信号の内容もしくは受信状態に基づいて警報処理を実行する、無線認証システム。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の無線認証システムであって、
前記親機側送受信部はユーザに利用する端末機に備えられ、
前記無線認証用モジュールは前記ユーザに付帯しており、
前記システム制御部は、前記アクティブ認証信号の内容もしくは受信状態に基づいて、前記端末機に対する異なる複数の処理を実行する、無線認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−253411(P2011−253411A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127632(P2010−127632)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】