説明

無線通信を利用したデジタル静電潜像の作成

【課題】直接的なデジタル式印刷システムであって、安価な電子的潜像形成システムを提供する。
【解決手段】プリントエンジンの印刷コントローラ305が、デジタル印刷信号を無線によって伝送すると、静電潜像が作られる。駆動している電子部品は、無線によって伝送されたデジタル印刷信号を受信し、薄膜トランジスタ(TFT)配列の中の個々の複数のTFTを割り当てるためのデジタル信号を伝送する。また、駆動している電子部品は、ピクセル電圧を送り、TFT配列内の個々のTFTにバイアスをかけ、電荷輸送層でオーバーコーティングされた正孔注入ピクセルを駆動させ、受信したデジタル印刷信号に応答して、電荷輸送層表面に静電潜像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
今回開示されている実施形態は、直接的なデジタル式マーキング(印刷)システムで使用されるデータ通信システム、つまり、プリントエンジンと新規画像形成体との間を数百万ビットのデータを伝送するための無線通信を利用するデータ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2種類の従来のカラー印刷技術プラットフォーム(すなわち、インクジェットおよびゼログラフィー)が存在し、他の新しいカラー印刷技術プラットフォーム(すなわち、デジタルフレキソ印刷またはデジタルオフセット印刷)が存在する。これらのカラー印刷技術プラットフォームは、それぞれ、非常に複雑な印刷システムを有しており、本体(デバイス)の費用が高く、印刷のランニングコストが高い。
【0003】
ナノテクノロジーおよびディスプレイ技術における新しい進歩によって、デジタル電場は、パターン形成可能な正孔注入材料とXerox電荷(正孔)輸送層との間で、電場によって誘発される正孔注入反応を利用して作り出すことができるという開発/発見がもたらされた。例えば、出願番号第12/539,397号および第12/539,557号、整理番号20090312−US−NP 0010.0183、名称Digital Electrostatic Latent Image Generator、整理番号 20090608−381238、名称Digital Electrostatic Latent Image Generating Memberにおいて、カーボンナノチューブ(CNT)およびPEDOTが、電場の影響を受けつつ、Xerox電荷輸送層(ポリカーボネート中のCTL、TPD)に効果的に正孔を注入することがわかった。CNTおよびPEDOTは、ナノ製造技術を用いてパターン形成可能であり、これによって、ミクロン単位の寸法でピクセルを作成することができる。これらのピクセルをTPD CTLでオーバーコーティングすると、デジタル潜像を作ることができ、印刷システムを完全にデジタル化するための適切なバックプレーン技術にこれらのピクセルを組み込んでもよい。
【0004】
それに加え、ゼログラフィー式現像システムでは、潜像の作成、トナーの現像は、ROS/レーザおよびチャージャーという従来の組み合わせを用いなくても行うことができ、これによって、ゼログラフィーと比較して、静電潜像の作成が単純になる。このことは、出願番号第12/869,605号、整理番号20100057−US−NP 0010.0236、名称「Direct Digital Marking Systems」に開示されている。実例として、PEDOT正孔注入層とTPD CTLとを含む二層デバイスを、CRUのOPCドラムに取り付けてもよい。このドラムは、現像爪に沿って回転し、トナー画像は、現像後領域で観察された。まず、二層部材が磁気ブラシと接すると、磁気ブラシにバイアスがかかり、正孔注入反応を誘発し、二層のCTL表面に静電潜像が作られる。その後、トナーを現像した後、二層部材は、現像爪から出る。この2工程プロセスは、現像爪内で起こり、レーザ/ROS、チャージャーまたは光受容体を用いずに、トナーが直接印刷される。色づけされた画像を紙に転写した後、融合させることによって、永続的な画像を得てもよい。
【0005】
このナノ画像マーカーおよび直接的なデジタル式印刷プロセスを、出願番号第12/854,526号、整理番号20091495−US−NP/0010.0226、名称「Electrostatic Digital Offset/Flexo Printing」に記載されているように、フレキソインク、オフセットインク、液体トナーを用いる印刷まで拡張することもできる。したがって、新しい直接的な印刷概念は、潜在的な新規デジタル式印刷プラットフォームと呼ばれることもある。
【0006】
米国特許第6,100,909号(発明者HassおよびKubbyらに対する)は、画像形成体を作成するための装置を記載している。この装置は、高電圧薄膜トランジスタ(TFT)およびコンデンサの配列を備えている。潜像は、高電圧電源と、帯電領域検出(CAD)型の現像を利用し、それぞれのTFTに対して直流のバイアスをかけることによって作られる。図1は、画像形成体を作成するための装置内にある薄膜トランジスタの整列を示す。配列10は、5行5列の長方形のマトリックス内に整列している。5個のみの行および列が図示されているが、本発明のいくつかの実施形態では、600dpiの解像度を有する8.5インチ×11インチの配列で印刷するか、または画像形成するデバイスに配置されており、この配列は、約3×10のトランジスタを有しており、これは、約3×10百万ピクセルのセルに対応するだろう。それに加え、解像度が1200dpiの場合、この配列は、7×10のトランジスタを有しており、7×10ピクセルのセルを有しているだろう。
【0007】
配列10は、正孔輸送層でオーバーコーティングされた正孔注入ピクセルからなる二層画像形成体と接続している場合、コンピュータ44(例えば、プリントエンジン)からコントローラ42に供給されるデジタル情報から潜像を作成する。コントローラ42は、デジタルフロントエンド(「DFE」)と呼ばれることもある。コンピュータは、コントローラ42(またはDFE)にデジタル信号を供給し、このデジタル信号を、利用する色空間(例えば、CMYK色空間またはRGB色空間)内のビットに分解する。ビットは、画像を印刷するためにプリンタが利用する、異なる強度を有する異なる色をあらわす。コントローラ42は、デコーダ12、リフレッシュ回路18、デジタル−アナログ(D/A)変換器16を備える多数のインターフェースデバイスを介して配列10の操作を命令する。
【0008】
静止している他のアクティブマトリクス方式の製品(例えば、テレビ受像機またはモニタ)とは対照的に、新しいナノ画像形成体(ベルトの一部分に接続しているか、ドラムの一部分に接続しているかにかかわらず)は、印刷プロセス中に移動していると予想される。移動する画像形成体に転写してデジタル電場を作るには、数百万のビットが必要であろう。したがって、ベルト(またはドラム)が動いている間に、駆動する電子部品とバックプレーンとを連結するのは、きわめて困難な問題である。ベルトまたはドラムは動いているが、数百万のビットと、さらに電流がバックプレーンに供給される。
【0009】
したがって、印刷デバイス内で移動しているナノ画像形成体に、大量のデータおよび/または電流を正確に、費用対効果が優れた状態で提供するシステムおよび/または方法が、満たされていない要求として存在する。
【発明の概要】
【0010】
本明細書に示されている実施形態によれば、プリントエンジン、駆動している電子部品、ナノ画像形成体の間を連結するためにワイヤレスディスプレイ(「WiDi」)技術を利用するシステムおよび方法が記載される。より特定的には、WiDiアンテナ/受信機は、ナノ画像形成マーカーの駆動している電子部品に組み込まれ、コントローラ(またはデジタルフロントエンド)を介してコンピュータまたはプリントエンジンから伝送された信号を受信する。現在のカラープリンタでは、デジタルファイルを作成するためにコンピュータを利用する。デジタルファイルをコントローラ(デジタルフロントエンド)に送り、このコントローラ(デジタルフロントエンド)で、デジタル印刷ファイルが、CMYKビットまたはRBGビットに分解される。コントローラは、デジタルビットをアンテナ/受信機にWiDiを利用して無線で送る。次いで、受信した無線デジタル信号は、駆動している電子部品に送られ、この電子部品が、移動しているナノ画像形成体のTFTにデジタル信号を伝送する。TFTが受信した信号および電圧は、二層画像形成体の正孔注入ピクセルにおいて正孔注入を誘発し、デジタル電場を作り出すだろう。このデジタル電場が潜像を作り出し、印刷は、コントローラと、駆動している電子部品との間に配線がなくても行われる。次いで、潜像を、その後のマーキング技術によって、印刷する(か、または現像する)。本発明のいくつかの実施形態では、ナノ画像形成体を、デバイスの印刷速度によって多数のデータゾーンに分けることができる。
【0011】
特に、本実施形態は、プリントエンジンの印刷コントローラから無線によって伝送されたデジタル印刷信号を受信することと、バックプレーンにおいて、受信したデジタル印刷信号に応答して、多数の薄膜トランジスタ(TFT)を個々に割り当てるための駆動信号を伝送することと、受信したデジタル印刷信号に応答して、ピクセル電圧を送り、バックプレーン内の個々のTFTにバイアスをかけ、静電潜像を作成することとを含む、静電潜像を作成する方法を提供する。受信したデジタル信号を、WiDiワイヤレスプロトコルにしたがって伝送してもよい。それに加え、この実施形態は、現像サブシステムで静電潜像を受け取ることと、この静電潜像を色づけされた画像に変換することとをさらに実現する。また、いくつかの実施形態は、色づけされた画像を受け取ることと、この色づけされた画像を媒体に転写することと、この色づけされた画像を媒体上に定着させることとを実現する。
【0012】
さらなる実施形態では、コントローラから無線によって伝送されたデジタル信号を受信し、選択信号と、デジタルピクセル電圧とを作成するような構成の受信機と;選択信号とデジタルピクセル電圧とを受信し、バイアス信号およびピクセル電圧を作成するような構成である、駆動している電子部品と;バックプレーン内に整列し、バイアス信号およびピクセル電圧を受け取る、複数の薄膜トランジスタ(TFT)とを備え、TFTが正孔注入ピクセルを駆動させ、バイアス信号およびピクセル電圧に応答して静電潜像を作成する、潜像を印刷するための装置が提供される。さらなる実施形態は、コントローラから無線によって伝送されたデジタル信号を受信し、受信したデジタル信号を受信機に送るアンテナを備えていてもよい。受信機は、ワイヤレスディスプレイプロトコル(WiDi)受信機であってもよい。さらなる実施形態では、バックプレーンは、複数のゾーンに分けられ、複数のゾーンは、それぞれ、プリントエンジンのコントローラから無線によって伝送されたデジタル信号を受信し、対応する選択信号とデジタルピクセル電圧とを作成するような、対応する受信機を備えている。または、バックプレーンは、複数のゾーンに分けられており、この複数のゾーンの1つは受信機を備えており、この受信機は、受信した選択信号およびデジタルピクセル電圧を、複数のゾーンのうち、選択したゾーンに送る。
【0013】
本実施形態をよりよく理解するために、添付の図面を参照しなければならないだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、従来技術の画像形成体を作成するための装置における薄膜トランジスタの配列を示す。
【図2】図2は、WiDi技術を組み込んだテレビ受像システムを示す。
【図3A】図3(a)は、一実施形態の潜像画像を形成する装置の操作を示す。
【図3B】図3(b)は、一実施形態の直接的なナノデジタル印刷システムの一実施形態を示す。
【図3C】図3(c)は、一実施形態のナノ画像形成体の断面図をあらわす。
【図3D】図3(d)は、一実施形態のナノ画像形成体の上面図をあらわす。
【図4】図4は、一実施形態の印刷デバイスにおけるナノ画像形成体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
2010年代初期に、Intel Corporationは、Wireless Display(「WiDi」)技術を導入した。WiDiによって、追加費用はほとんどなく、ラップトップユーザが、ディスプレイ信号(例えば、ビデオ信号)を無線によってテレビ受像機(「TV」)に伝送し、伝送されたビデオをTVでリアルタイムに見ることができる。図2は、WiDi技術が組み込まれたテレビ受像システムを示す。このシステムは、WiDi能力を有するラップトップ210と、テレビ受像機用WiDiアダプタ220と、HDMIケーブル230と、テレビ受像機240とを備えている。ラップトップ210は、無線伝送を介し、ラップトップのスクリーンに映し出されているものをテレビ受像機用アダプタ220に送る(または伝送する)。テレビ受像機用アダプタ220は、Netgear Push2TVアダプタであってもよい。テレビ受像機用アダプタ220は、受信した信号(ラップトップのディスプレイに対応する)を、HDMIケーブル230を介してテレビ受像機240に送る。このように、ラップトップディスプレイの情報が、部屋にケーブルを張りめぐらせることなく、テレビ受像機に送られる。
【0016】
本実施形態では、印刷デバイス内でデータをやりとりするために無線通信を利用するシステムおよび方法が記載されている。印刷デバイスにおいて、コントローラは、ナノ画像形成体内の駆動している電子部品にデータを無線によって伝送する。いくつかの実施形態では、印刷デバイスで利用される無線通信プロトコルは、WiDiプロトコルである。ナノ画像形成体の駆動している電子部品に、無線アンテナ/受信機を組み込んでもよい。具体的には、ナノ画像形成マーカーの駆動している電子部品にWiDiアンテナ/受信機が組み込まれ、無線によって伝送されたデジタル信号を受信してもよい。
【0017】
コンピュータ(またはプリントエンジン)は、印刷ファイルをコントローラ(またはDFE)に送り、プリンタが印刷ファイルに対応する画像を印刷することができるように、印刷ファイルをCMYKデジタルビットまたはRGBデジタルビットに変換するだろう。コントローラ(またはDFE)は、CMYKデジタルビットまたはRGBデジタルビットをアンテナ/受信機に無線によって伝送する。アンテナは、ナノ画像形成体のための駆動している電子部品の一部分であってもよく、ナノ画像形成体の駆動している電子部品に接続していてもよい。次いで、受信したデジタル信号を用い、薄膜トランジスタ(TFT)の配列を駆動させ、ナノ画像形成体の中にデジタル電場を作り出す。デジタル電場は、潜像を作り出す。次いで、潜像を、その後のマーキング技術によって、印刷する(か、または現像する)。
【0018】
さらなる実施形態では、ナノ画像形成体を、印刷デバイスの印刷速度または設計に応じて多数のデータゾーンに分けることができる。ナノ画像形成体のそれぞれのデータゾーンは、組み込まれたアンテナ/受信機を有していてもよい。さらなる実施形態では、ナノ画像形成体は、駆動している電子部品の一部として、たった1個のアンテナ/受信機を有していてもよい。アンテナ/受信機は、コントローラから無線によって伝送されたデジタル信号を受信し、受信したデジタル信号を選択したデータゾーンに分配する。
【0019】
図3(a)は、ナノ画像形成体を用いる、潜像画像を形成する装置380の操作を示す。潜像画像を形成する装置は、正孔注入ピクセル385の配列を基板382の上に備えている。正孔注入ピクセルは、個々のピクセルを割り当てるために、複数のTFT384を有するTFTバックプレーンとつながっている。ナノ画像形成体は、さらに、正孔注入ピクセルの配列の上に配置されている電荷輸送層386を備えている。電荷輸送層386は、1つ以上のピクセル385によって与えられる正孔を輸送し、印刷に必要な静電電荷のコントラストを作り出すような構成であってもよい。
【0020】
種々の実施形態では、配列の各ピクセル385は、ナノカーボン材料の層を含んでいてもよい。他の実施形態では、配列の各ピクセル385は、共役した有機ポリマーの層を含んでいてもよい。さらにいくつかの他の実施形態では、配列の各ピクセル385は、ナノカーボン材料と、共役した有機ポリマーとを含む混合物の層(例えば、1種類以上の共役した有機ポリマーに分散したナノカーボン材料)を含んでいてもよい。特定の実施形態では、1つ以上のナノカーボン材料および/または共役した有機ポリマーを含む層の表面抵抗率は、約50ohm/sq〜約10,000ohm/sq、または約100ohm/sq〜約5,000ohm/sq、または約120ohm/sq〜約2,500ohm/sqであってもよい。ナノカーボン材料および共役した有機ポリマーは、潜像を静電的に作成するための正孔注入材料として作用してもよい。ナノカーボン材料および共役した有機ポリマーを正孔注入材料として用いることの利点のひとつは、この材料を、例えば、フォトリソグラフィー、インクジェット印刷、スクリーン印刷、転写印刷などの種々の加工技術によってパターン形成することが可能なことである。
【0021】
ナノカーボン材料を含む正孔注入ピクセル。本明細書で使用される場合、句「ナノカーボン材料」は、少なくとも1つの寸法がナノメートルの大きさであり、例えば、約1000nm未満である、炭素を含有する材料を指す。いくつかの実施形態では、ナノカーボン材料としては、例えば、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT);官能基化されたカーボンナノチューブ;および/またはグラフェンおよび官能基化されたグラフェンを含むナノチューブが挙げられ、ここで、グラフェンは、ハニカム型の結晶格子に緻密に封入された、sp混成軌道で結合した炭素原子の1枚の平らなシートであり、実際には、厚みは1原子分であり、それぞれの原子は、表面原子である。
【0022】
カーボンナノチューブは、例えば、精製後の合成されたままのカーボンナノチューブは、層の数、直径、長さ、キラリティ、および/または欠陥率という観点で構造的にカーボンナノチューブの混合物であってもよい。例えば、カーボンナノチューブが金属であるか、または半導体であるかにかかわらず、キラリティが記述されていてもよい。金属性のカーボンナノチューブは、金属が約33%であってもよい。カーボンナノチューブは、直径が、約0.1nm〜約100nm、または約0.5nm〜約50nm、または約1.0nm〜約10nmの範囲であってもよく、長さが、約10nm〜約5mm、または約200nm〜約10μm、または約500nm〜約1000nmの範囲であってもよい。特定の実施形態では、1つ以上のナノカーボン材料を含む層の中のカーボンナノチューブの濃度は、約0.5重量%〜約99重量%、または約50重量%〜約99重量%、または約90重量%〜約99重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブをバインダー材料と混合し、1つ以上のナノカーボン材料の層を作成してもよい。バインダー材料は、当業者が知っているような任意のバインダーポリマーを含んでいてもよい。
【0023】
種々の実施形態では、ピクセル配列の各ピクセル385の中のナノカーボン材料の層は、溶媒を含有するコーティング可能なカーボンナノチューブ層を含んでいてもよい。溶媒を含有するコーティング可能なカーボンナノチューブ層は、カーボンナノチューブの水分散物またはアルコール分散物からコーティングされてもよく、カーボンナノチューブは、界面活性剤、DNAまたはポリマー材料で安定化することができる。他の実施形態では、カーボンナノチューブの層は、限定されないが、カーボンナノチューブポリマーコンポジットおよび/またはカーボンナノチューブが充填された樹脂を含む、カーボンナノチューブコンポジットを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ナノカーボン材料の層は、薄くてもよく、厚みが、約1nm〜約1μm、または約50nm〜約500nm、または約5nm〜約100nmの範囲であってもよい。
【0024】
共役した有機ポリマーを含む正孔注入ピクセル。種々の実施形態では、各ピクセル385の中の共役した有機ポリマーの層は、任意の適切な材料を含んでいてもよく、例えば、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)またはその誘導体に由来する共役したポリマーを含んでいてもよい。共役したポリマーとしては、限定されないが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、アルキル置換されたEDOT、フェニル置換されたEDOT、ジメチル置換されたポリプロピレンジオキシチオフェン、シアノビフェニル置換された3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、テトラデシル置換されたPEDOT、ジベンジル置換されたPEDOT、イオン性基で置換されたPEDOT、例えば、スルホネート置換されたPEDOT、デンドロン置換されたPEDOT、例えば、デンドロン化ポリ(パラ−フェニレン)など、およびこれらの混合物を挙げることができる。さらなる実施形態では、共役した有機ポリマーは、PEDOTと、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)とを含む錯体であってもよい。PEDOT−PSS錯体の分子構造は、以下のように示すことができる。
【化1】

例示的なPEDOT−PSS錯体は、テンプレートポリマーPSSが存在する条件下で、EDOTの重合によって得ることができる。PEDOT−PSS錯体を含む層の導電性は、2個以上の極性基を有する化合物(例えば、エチレングリコール)をPEDOT−PSS水溶液に加えることによって、制御することができる(例えば、高めることができる)。Alexander M.Nardesの表題「On the Conductivity of PEDOT−PSS Thin Films,」、2007、Chapter 2、Eindhoven University of Technology(その全体が本明細書に参考として組み込まれる)の論文に記載されているように、このような添加剤は、PEDOT−PSS錯体のPEDOT鎖の構造変化を誘発することがある。PEDOTの導電性は、酸化工程中に調節することもできる。PEDOT−PSSの水分散物は、BAYTRON P(登録商標)としてH.C.Starck,Inc.(ボストン、MA)から市販されている。MylarにコーティングされたPEDOT−PSS膜は、Orgacon(商標)膜(Agfa−Gevaert Group、モルツェル、ベルギー)で市販されている。また、PEDOTは、例えば、電子を豊富に含むEDOTに由来するモノマーを水系媒体または非水系媒体から電気化学的に酸化することによって、化学重合によって得てもよい。PEDOTの例示的な化学重合としては、Li Niuら、表題「Electrochemically Controlled Surface Morphology and Crystallinity in Poly(3,4−ethylenedioxythiophene) Films」、Synthetic Metals、2001、Vol.122、425−429;およびMark Lefebvreらによる、表題「Chemical Synthesis, Characterization,and Electrochemical Studies of Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/Poly(styrene−4−sulfonate)Composites」、Chemistry of Materials、1999、Vol.11、262−268(これらは、その全体が本明細書に参考として組み込まれる)に開示されているものを挙げることができる。また、上の参考文献に記載されているように、PEDOTの電気化学的合成は、少量のモノマーを用い、短い重合時間で行ってもよく、電極に担持された膜および/または自立する膜を得ることができる。
【0025】
種々の実施形態では、ピクセル385の配列は、まず、ナノカーボン材料および/または共役した有機ポリマーを含む層を基板382の上に作成することによって作られてもよい。例えば、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ウェブコーティング、ドローダウンコーティング、フローコーティング、および/または押出ダイコーティングのような任意の適切な方法を用いて、この層を作成してもよい。次いで、基板382の上にあるナノカーボン材料および/または共役した有機ポリマーを含む層を、パターン形成するか、または他の方法で処理し、ピクセル385の配列を作成してもよい。限定されないが、フォトリソグラフィーによるエッチング、または直接的なパターン形成のような適切なナノ加工技術を用い、ピクセル385の配列を作成してもよい。例えば、ナノインプリンティング、インクジェット印刷および/またはスクリーン印刷によって、材料に直接パターン形成してもよい。結果として、配列の各ピクセル385は、少なくとも1つの寸法(例えば、長さまたは幅)が、約100nm〜約500μm、または約1μm〜約250μm、または約5μm〜約150μmの範囲であってもよい。
【0026】
基板382のために、限定されないが、アルミニウム、ステンレス鋼、マイラー、ポリイミド(PI)、可とう性ステンレス鋼、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、可とう性ガラスのような任意の適切な材料を用いてもよい。
【0027】
電荷輸送層−図3(a)を再び参照すると、ナノサイズで使用可能な画像形成体380は、ピクセル配列385から1つ以上のピクセルによって、ピクセル配列の反対側にある表面388に与えられる正孔を輸送するような構成の電荷輸送層386も備えていてもよい。電荷輸送層386は、表面電荷を選択的に散逸させるために、電荷輸送層386を介して正孔または電子を輸送することが可能な材料を含んでいてもよい。特定の実施形態では、電荷輸送層386は、電気的に不活性なポリマーに溶解しているか、または分子状態で分散している、電荷を輸送する低分子を含んでいてもよい。一実施形態では、電荷を輸送する低分子を、電気的に不活性なポリマーに溶解し、ポリマーを含む均一相を作成してもよい。別の実施形態では、電荷を輸送する低分子は、分子スケールでポリマーに分子状態で分散していてもよい。任意の適切な電荷を輸送する低分子または電気的に活性な低分子が、電荷輸送層386で使用されてもよい。いくつかの実施形態では、電荷を輸送する低分子は、電荷輸送層とピクセルとの界面で生成する自由正孔が、電荷輸送層386を通って表面388に輸送することが可能なモノマーを含んでいてもよい。例示的な電荷を輸送する低分子としては、限定されないが、ピラゾリン、例えば、1−フェニル−3−(4’−ジエチルアミノスチリル)−5−(4”−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン;ジアミン、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD);トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TM−TPD)のような他のアリールアミン;ヒドラゾン、例えば、N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾン;オキサジアゾール、例えば、2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール;スチルベン;アリールアミンなどが挙げられる。例示的なアリールアミンは、以下の式/構造
【化2】

および
【化3】

を有していてもよく、式中、Xは、アルキル、アルコキシ、アリール、およびこれらの誘導体のような適切な炭化水素;ハロゲン、またはこれらの混合物、特に、ClおよびCHからなる群から選択されるこれらの置換基;以下の式を有する分子
【化4】

および
【化5】

であり、式中、X、Y、Zは、独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、またはこれらの混合物であり、Y、Zのうち、少なくとも1つは存在する。アルキル基および/またはアルコキシ基は、例えば、炭素原子を1〜約25個、または1〜約18個、または1〜約12個含んでいてもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、および/またはこれらの対応するアルコキシドであってもよい。アリール基は、例えば、炭素原子を約6〜約36個含んでいてもよく、例えば、フェニルなどであってもよい。ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素および/またはフッ素を挙げることができる。置換アルキル、置換アルコキシ、置換アリールも、種々の実施形態にしたがって用いてもよい。
【0028】
電荷輸送層386に使用可能な特定のアリールアミンの例としては、限定されないが、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどからなる群から選択される);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(ハロフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(ここで、ハロ置換基は、クロロ置換基である);N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2,5−ジメチルフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミンなどが挙げられる。任意の他の既知の電荷輸送層分子を選択してもよい。
【0029】
上に示されるように、適切な電気的に活性な低分子である、電荷を輸送する分子または化合物を、電気的に不活性なポリマー膜を形成する材料に溶解するか、または分子状態で分散させてもよい。所望な場合、電荷輸送層386の電荷輸送材料は、ポリマー電荷輸送材料、または低分子電荷輸送材料とポリマー電荷輸送材料との組み合わせを含んでいてもよい。限定されないが、ポリ(N−ビニルカルバゾール);ポリ(ビニルピレン);ポリ(−ビニルテトラフェン);ポリ(ビニルテトラセン)および/またはポリ(ビニルペリレン)のような任意の適切なポリマー電荷輸送材料を用いてもよい。
【0030】
任意の適切な電気的に不活性なポリマーを電荷輸送層386で用いてもよい。典型的な電気的に不活性なポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスチレン、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、ポリスルホン、エポキシ、これらのランダムポリマーまたは交互ポリマーを挙げることができる。しかし、電荷輸送層に、任意の他の適切なポリマーを利用してもよい。
【0031】
種々の実施形態では、電荷輸送層386は、側方電荷移動(LCM)に対する耐性を高めるために、限定されないが、ヒンダードフェノール酸化防止剤、例えば、テトラキスメチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン(IRGANOX(登録商標)1010(Ciba Specialty Chemical、タリータウン、NYから入手可能)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、および、SUMILIZER(商標) BHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GM、GS(Sumitomo Chemical America、Inc.、ニューヨーク、NYから入手可能)、IRGANOX(登録商標)1035、1076、1098、1135、1141、1222、1330、1425WL、1520L、245、259、3114、3790、5057、565(Ciba Specialties Chemicals、タリータウン、NYから入手可能)、ADEKA STAB(商標) AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80、AO−330(Asahi Denka Co.,Ltd.から入手可能)を含む他のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ヒンダードアミン酸化防止剤、例えば、SANOL(商標) LS−2626、LS−765、LS−770、LS−744(SANKYO CO.,Ltd.から入手可能)、TINUVIN(登録商標)144および622LD(Ciba Specialties Chemicals、タリータウン、NYから入手可能)、MARK(商標) LA57、LA67、LA62、LA68、LA63(Amfine Chemical Corporation、アッパーサドルリバー、NJから入手可能)、SUMILIZER(登録商標)TPS(Sumitomo Chemical America、Inc.、ニューヨーク、NYから入手可能);チオエーテル酸化防止剤、例えば、SUMILIZER TP−D(Sumitomo Chemical America、Inc.、ニューヨーク、NYから入手可能);ホスファイト酸化防止剤、例えば、MARKTM 2112、PEP−8、PEP−24G、PEP−36、329K、HP−10(Amfine Chemical Corporation、アッパーサドルリバー、NJから入手可能);他の分子、例えば、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン(BDETPM)、ビス−[2−メチル−4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル−アミノフェニル)]−フェニルメタン(DHTPM)などのような、1つ以上の任意要素の材料を含んでいてもよい。電荷輸送層240は、酸化防止剤を、電荷輸送層全体を基準として約0〜約20重量%、約1〜約10重量%、または約3〜約8重量%の範囲の量で含んでいてもよい。
【0032】
電荷を輸送する分子または化合物が、電気的に不活性なポリマーに分散した電荷輸送層386は、ある程度絶縁体であってもよく、電荷輸送層386の上にある静電電荷は、その上に静電潜像を形成したり、保持したりしないように、導電性ではない。一方、電荷輸送層386は、電気的に「活性」であってもよく、正孔を注入するピクセル385の配列の各ピクセル中のナノカーボン材料および共役した有機ポリマーのうち1つ以上を含む層から、正孔を注入することができ、これらの正孔を、電荷輸送層386自体を通して輸送することができ、表面388の上にある表面負電荷を選択的に放電することができる。
【0033】
任意の適切な技術および従来の技術を利用し、ピクセル385の配列を作成し、その後に、ピクセル385の配列の上に電荷輸送層386を塗布してもよい。例えば、電荷輸送層386を、1回のコーティング工程または複数回のコーティング工程で作成してもよい。これらの塗布技術としては、噴霧、浸漬コーティング、ロールコーティング、ワイヤ巻き付けロッドによるコーティング、インクジェットコーテイング、リングコーティング、グラビア印刷、ドラムコーティングなどが挙げられる。
【0034】
堆積したコーティングの乾燥尾は、例えば、乾燥器による乾燥、赤外線照射による乾燥、風乾などのような任意の適切な従来の技術によって行われてもよい。電荷輸送層386は、乾燥後に、厚みが約1μm〜約50μm、約5μm〜約45μm、または約15μm〜約40μmであってもよいが、この範囲からはずれた厚みを有していてもよい。
【0035】
バックプレーン中のトランジスタ配列を製造するためのアモルファスケイ素。アモルファスケイ素は、トランジスタを製造するための半導体材料として選択されてもよい。アモルファスSi TFTは、低コスト処理および成熟した製造技術のためのディスプレイ産業において、ピクセルを割り当てる要素として広範囲に用いられる。また、アモルファスSi TFTは、トランジスタの形状を変えることによって高電圧操作も適している(参考文献:K.S.Karimら、Microelectronics Journal 35(2004)、311.、H.C.Tuan、Mat.Res.Symp.Proc.70(1986))。
【0036】
TFTバックプレーンを用いる潜像作成システム380は、基板382に接続するソース電極を有する複数のTFT384を備えており、電荷輸送層386(すなわち、正孔輸送層)に連結した正孔注入ピクセル385を駆動する。このシステム380は、表面の電位を減らすため、さらに、潜像を作成するための放電に、TFTコントロールを使用する。現像(印刷)電極を用い、電荷輸送層386を帯電させるか、またはこの層を通過するような電場を作り出してもよい。現像電極は、バイアスがかけられ、調整された磁気ブラシ、バイアスがかけられたインクロール、コロトロン、スコロトロン、ディスコロトロン、バイアスがかけられた帯電ロール、バイアス転写ローラーなどであってもよい。例えば、爪を形成する構造の中にあるナノ画像形成体に、バイアスを調整した磁気ロールを加えることによって、直接的な印刷を行ってもよい。磁気ロールは、−Vの電圧で負のバイアスがかけられていてもよい。TFTが接地されている(V=0)か、または正であるときに、印刷が行われる。この構造では、印刷電極と正孔注入ピクセル385との間に電場が作りだされる。この電場によって、正孔注入が誘発され、表面388に正の表面電荷が生じる。次いで、この正の電荷が現像され、印刷される。一方、TFTが、磁気ロールのようにバイアスがかけられている場合(−V)、磁場は作り出されない。その結果、表面388に表面電荷は生じず、印刷も行われない。
【0037】
図3(b)は、本発明の直接的なナノデジタル印刷システムの一実施形態を示す。直接的なナノデジタル印刷システムは、コントローラ305と、ナノ画像形成体310と、現像サブシステム320と、転写/フューザーサブシステム325とを備えている。コントローラ305は、デジタル印刷データを、ナノ画像形成体310に連結したアンテナ/受信機に伝送する。コントローラ305は、デジタル印刷データを、ナノ画像形成体310に連結したアンテナ/受信機に無線によって伝送する。具体的には、コントローラ305は、ワイヤレスディスプレイ(WiDi)プロトコルを介して印刷データを伝送してもよい。
【0038】
ナノ画像形成体310は、アンテナ/受信機から印刷信号を受信し、この印刷信号を静電潜像に変換する。もっと特定的には、ナノ画像形成体のアンテナ/受信機が、印刷信号を受信し、この印刷信号をアナログ信号に変換し、このアナログ信号が、駆動している電子部品を制御し、ナノ画像形成体のバックプレーンにある多数のTFTを駆動させる。次いで、TFTは、画像形成体の正孔注入を個々に割り当て、これにより、現像サブシステム320と接しているときに、ナノ画像形成体を通過するデジタル電場が作りだされる。接触している間に静電潜像が作成され、これが現像され、印刷されてもよい。適切な印刷材料は、ゼログラフィー用乾燥粉末トナー、液体トナー、フレキソインク、オフセットインク、または他の低粘度インクである。転写/フューザーサブシステム325は、この像を受け取り、媒体の上に転写する。次いで、この像を、用いられる画像形成材料に依存して、熱、圧力および/またはUV照射によって媒体の上に定着させてもよい。
【0039】
コントローラとアンテナ/受信機との間の伝送経路には、障害物が存在しないことが必要である。それに加え、印刷デバイスに特定の電磁遮蔽を組み込んでおき、無線によって伝送される印刷データとの干渉が最低限になるようにすることが必要な場合がある。アンテナ/受信機は、1個の集積回路の上にあってもよい。または、アンテナが、ある集積回路の上にあってもよく、受信機は、別の集積回路の上にあってもよい。
【0040】
さらに図3(b)を参照すると、代替的な実施形態では、ナノ画像形成体310は、複数のゾーンに分けられていてもよい。コントローラ305は、デジタル印刷データ信号をナノ画像形成体310全体に一度に伝送することができないため、ナノ画像形成体は、いくつかのゾーンにわけられていてもよい。図3(b)に示されている本発明の実施形態では、ナノ画像形成体310は、8個のゾーンに分けられており、参照番号1〜8がつけられている。本発明のいくつかの実施形態では、ナノ画像形成体310は、2個のゾーン、3個のゾーン、4個のゾーン、または16個のゾーンに分けられていてもよい。それぞれのゾーンは、大きさ(または幾何学的面積)が同じでなければならない。したがって、8個のゾーンが存在する場合、この8個のゾーンは、互いに大きさまたは面積が同じであってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、ナノ画像形成体310の各ゾーンは、コントローラ305からの印刷信号を受信するためのアンテナ/受信機を備えていてもよい。具体的には、ナノ画像形成体が8個のゾーンを有している場合、ナノ画像形成体310は、8個のアンテナ/受信機を有していてもよい。さらなる代替的な実施形態では、各ゾーンが複数のアンテナ/受信機を有していてもよい。各ゾーンは、プリンタによって運ばれる媒体の上で転写され、固定される画像の一部分に対応していてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ナノ画像形成体の1個のゾーンのみがアンテナ/受信機を有していてもよい。この実施形態では、ゾーンのアンテナ/受信機は、伝送されたデータを無線によって受信し、受信したデータを、ナノ画像形成体の選択したゾーンに送る。
【0042】
図3(c)は、本発明の一実施形態のナノ画像形成体の断面図をあらわす。図3(d)は、本発明の一実施形態のナノ画像形成体の上面図をあらわす。図3(c)を参照すると、ナノ画像形成体310は、基板360と、アンテナ/受信機362と、駆動している電子部品364と、TFT配列を形成する複数の薄膜トランジスタ(TFT)365と、複数の正孔注入ピクセル368と、電荷輸送層370とを備えている。アンテナ/受信機362は、駆動している電子部品364を備えるボードまたは基板に取り付けられていてもよい。または、アンテナ/受信機362は、図3(c)に示されているように、駆動している電子部品364とは別の集積回路に搭載されていてもよい。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態にかかる、潜像を作成する装置または直接印刷するための装置の中の薄膜トランジスタの配列を示す。示されているように、図4は、5行5列の長方形のマトリックス内に整列しているTFT配列410を示す。TFT配列410は、コンピュータ444によってコントローラ442に供給されるデジタル情報から潜像を作り出す。本発明の一実施形態では、コンピュータ444は、デジタル印刷ファイルをコントローラまたはデジタルフロントエンド(DFE)442に送る。コントローラ442は、デジタル信号をCMYKビットまたはRGBビットに分解し、次いで、このデジタルビットを無線によってアンテナ/受信機441に送るだろう。アンテナ/受信機441は、受信したデジタル情報をTFT配列410に送り、この情報には、ピクセルの位置と、ピクセル電圧が含まれている。本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ442は、デジタル情報をアンテナ/受信機441に送り、デコーダ412、リフレッシュ回路418、デジタル−アナログ(D/A)変換器416を含む複数のインターフェースデバイスを駆動させることによって、TFT配列410の操作を制御/命令する。デコーダ412、リフレッシュ回路418、D/A変換器416は、駆動している電子部品と呼ばれることがある。
【0044】
アンテナ/受信機441からデジタル信号を受信した後、デコーダ412は、行および列の位置によって配列410内の個々のピクセルセルを選択して潜像を作り出す信号を作成する。具体的には、コントローラ442は、信号を無線によってアンテナ/受信機に送り、アンテナ/受信機441は、バス437によってデコーダ412に情報を送る。この実施形態では、コントローラ442は、ピクセル電圧と位置情報をデジタル化したものを作成し、このデジタル化されたピクセル電圧を、アンテナ/受信機に無線によって送り、このアンテナ/受信機は、バス438を介してデジタル−アナログ(D/A)変換器416を備えている。D/A変換器416は、デジタル化されたピクセル電圧を、1つ以上の選択された列Y1〜Y5に配置されているアナログ電圧に変換する。ナノ画像形成体をリフレッシュするために、コントローラ442は、アドレスデータを無線によってアンテナ/受信機441に送り、次いで、バス439を介してリフレッシュ回路418に送り、行Z1〜Z5を選択する。リフレッシュ回路418は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)のコンデンサを再帯電させるのに用いられるメモリのリフレッシュ回路と同様の様式で動く。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、TFT配列410の操作時のバイアス電圧は、+20ボルト〜−200ボルトの範囲であってもよい。本発明の代替的な実施形態では、TFT配列410の操作時のバイアス電圧は、+100ボルト〜−400ボルトの範囲であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ピクセルの大きさは、10ミクロン×10ミクロン〜30ミクロン×30ミクロンの範囲であってもよい。本発明の他の実施形態では、ピクセルの大きさは、1ミクロン×1ミクロン〜200ミクロン×200ミクロンの範囲であってもよい。
【0046】
図4に示される実施形態では、各ピクセルパッド428は、薄膜トランジスタ420に接続しており、正孔注入ピクセルと接したコンデンサを備えている。半導体材料(例えば、アモルファスケイ素(a−Si:H))は、トランジスタの望ましい操作特性および加工特性に十分に適している。広い領域のフォーマットに及ぶアクティブ型およびパッシブ型の薄膜デバイスの製造コストが比較的安価であるという観点から(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ガラス、ポリイミド、または他の適切な基板)、費用対効果の高いTFT配列410を得ることが可能である。さらに、TFT配列410は、高電圧コンデンサおよびデコーダ412と同じ集積回路の上にある高電圧薄膜トランジスタ420に組み込まれていてもよい。
【0047】
配列410の示されている部分の操作は、以下のとおりである。コンピュータ444は、駆動している電子部品を介し、デジタル画像情報をTFT配列410に供給する。さらに図4を参照すると、コンピュータは、デジタルフロントエンド(またはコントローラ)442にデジタルプリントを送り、このデジタルプリントをCMYKカラービットまたはRGBカラービットに変換する。次いで、コントローラ442は、このデジタル情報を無線によって、駆動している電子部品の一部分であるアンテナ/受信機441に送る。このデジタル信号は、画像の一部分を作成するために帯電されるべきピクセル位置およびバイアス電圧に関する情報(例えば、(1)X行とY列の交差点;(2)X行とY列の交差点;(3)X行とY列の交差点)を有しているだろう。具体的には、コントローラ442は、ピクセルを帯電させるための行を選択するために、2桁のコードX、X、Xを送る。図4の実施形態では、駆動している電子部品のアンテナ/受信機441は、伝送された2桁のコードを受信し、X行、X行、X行のトランジスタ420にゲートバイアス電圧を加える。コントローラ442は、デジタル化されたピクセル電圧をアンテナ/受信機441に送り、このデジタル化されたピクセル電圧をD/A変換器416に送る。D/A変換器416は、このデジタル入力値に対応するアナログ出力を行ない、Y列、Y列、Y列に接続した高電圧トランジスタのソース電極に対し、アナログ出力を行う。図4に示されているように、Xゲートバイアス電圧と、Y列にかかる電圧との組み合わせによって、Xゲートバイアス電圧と、Y列にかかる電圧との組み合わせによって、さらに、Xゲートバイアス電圧と、Y列にかかる電圧との組み合わせによって、3個のトランジスタのみ(一般的には、参照番号460、462、464で示されている)がONに切り替わる。したがって、トランジスタ460、462、464のドレインにのみアナログ電圧が生じ、参照番号461、463、465で示されるピクセルパッドに含まれる高電圧コンデンサが帯電する。このプロセスを、望ましい潜像が作られるまで、割り当てられているそれぞれのピクセルについて繰り返す。時間経過に伴い、コンデンサは放電し始めるだろう。電荷を保存するために、各ピクセルセルは、リフレッシュ回路418によってリフレッシュされなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントエンジンの印刷コントローラから無線によって伝送されたデジタル印刷信号を受信することと;
バックプレーンにおいて、受信したデジタル印刷信号に応答して、多数の薄膜トランジスタ(TFT)を個々に割り当てるための駆動信号を伝送することと;
受信したデジタル印刷信号に応答して、ピクセル電圧を送り、バックプレーン内の個々のTFTにバイアスをかけ、静電潜像を作成することとを含む、静電潜像を作成する方法。
【請求項2】
コントローラから無線によって伝送されたデジタル信号を受信し、選択信号と、デジタルピクセル電圧とを作成するような構成の受信機と;
選択信号とデジタルピクセル電圧とを受信し、バイアス信号およびピクセル電圧を作成するような構成である、駆動している電子部品と;
バックプレーン内に整列し、バイアス信号およびピクセル電圧を受け取る、複数の薄膜トランジスタ(TFT)とを備え、TFTが正孔注入ピクセルを駆動させ、バイアス信号およびピクセル電圧に応答して静電潜像を作成する、潜像を印刷するための装置。
【請求項3】
コントローラから無線によって伝送されたデジタル信号を受信し、受信したデジタル信号を受信機に送るような構成のアンテナをさらに備えている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記受信機が、ワイヤレスディスプレイプロトコル(WiDi)受信機である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記バックプレーンが、基板の上に配置されているピクセルの配列と、このピクセルの配列の上に配置されている電荷輸送層とで構成され、ピクセルの配列の各ピクセルが、電気的に隔離されており、個々に割り当て可能であり、1つ以上のナノカーボン材料または共役した有機ポリマーの層を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記バックプレーンが、複数のゾーンに分けられており、複数のゾーンは、それぞれ、プリントエンジンのコントローラから無線によって伝送されたデジタル信号を受信し、対応する選択信号とデジタルピクセル電圧とを作成するような、対応する受信機を備えている、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記バックプレーンが、複数のゾーンに分けられており、この複数のゾーンの1つは受信機を備えており、この受信機は、受信した選択信号およびデジタルピクセル電圧を、複数のゾーンのうち、選択したゾーンに送る、請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記バックプレーンが、回転しているドラムまたはベルトに接続するような構成であり、さらに、静電潜像を色づけされた画像に変換するような構成の印刷ステーションをさらに備える、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
色づけされた画像を受け入れ、この色づけされた画像を媒体に転写し、融合する転写融合システムをさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
コンピュータからデジタル画像ファイルを受信し、受信したデジタル画像ファイルに対応するデジタル信号を作成するような構成のコントローラと;
作成したデジタル信号を伝送するような構成の無線送信機と;
作成したデジタル信号を受信し、受信したデジタル信号を伝送するような構成の無線受信機と;
無線受信機から伝送されたデジタル信号を受信する、駆動している電子部品とを備え、伝送されたデジタル信号は、バックプレーン内の個々の薄膜トランジスタ(TFT)にバイアスをかけ、静電潜像を作成するためのコントロール信号と、ピクセル電圧とを含む、印刷デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−150474(P2012−150474A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3555(P2012−3555)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】