説明

無線通信システム、ゲートウェイ及びページング抑制方法

【課題】無線通信システムにおいてポートスキャンや不正アクセスによるページングを抑制し、無線通信ネットワークへの不要な負荷の増大や無線リソースの無駄遣いを防止する。
【解決手段】移動体通信ネットワークにおいて移動端末101は無線リンクが接続されているアクティブ状態から無線リンクが解放されるアイドル状態に移行する際に、無線通信ネットワーク内の移動端末を収容しているモバイルゲートウェイ105に対して、通信中のポート情報、あるいは待受け状態のポート情報を通知する。モバイルゲートウェイ105は、アイドル状態の移動端末宛のパケットが届いた場合に、該パケットに含まれるポート情報が、通知された通信中あるいは待受け状態のポート状態にマッチした場合には、ページング処理を起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、ゲートウェイ及びページング抑制方法に係り、特に、無線通信上でのパケットデータ通信に関して、特に移動端末に対する攻撃パケットによる無線通信ネットワークにおけるページングを抑制する無線通信システム、ゲートウェイ及びページング抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体通信ネットワークでは、メールサービス・インターネットサイトの閲覧などのサービスは、モバイルオペレータによって保護されたネットワークワーク経由でインターネットへアクセスすることで行われている。しかし、3Gの高速データ通信サービスのHSPA(High Speed Packet Access)やEV−DO(Evolution Data Only)、3.9Gと呼ばれるWiMAXやLTE(Long Term Evolution)などの高速のブロードバンドモバイルが普及するにつれて、スマートフォンと呼ばれる高性能な移動端末やパソコンをこれらの高速ブロードバンド経由でインターネットへ接続することが一般化しつつある。企業内のネットワークや家庭内のネットワークでは、インターネット等の外部ネットワークからの不正アクセスあるいは攻撃から、企業内あるいは家庭内のネットワーク内部のネットワークを保護するためにファイヤウォール装置を設置することが従来より行なわれている。
【0003】
インターネット接続に用いられているプロトコルとしてはTCP/IPが一般的であり、インターネットからの不正アクセスや攻撃としてよく知られているものの一つがポートスキャンである。ポートスキャンは不正アクセスや攻撃を行う対象のサーバを発見するために、IPアドレスを次々変更しながら該当サービスへ接続要求を送信し、接続要求への応答があるかを観察することで行われる。
【0004】
一方、移動体通信では、無線リソースの効率的な運用や移動端末の省電力制御のためにアイドルモードと呼ばれる無線リソースを解放した状態がある。アイドルモード状態の端末は、ネットワーク側において複数の無線基地局から構成されるページングエリアと呼ばれる単位で管理される。移動端末は電源投入時に、ページングエリアをネットワーク側に登録し、ページングエリアを跨ぐ移動を行った場合には、再度ページングエリアをネットワーク側に登録する。アイドル状態の移動端末宛のパケットが移動体通信ネットワーク内のゲートウェイに到着した場合には、ゲートウェイは到着したパケットをバッファリングした後に、移動体通信ネットワーク内のページング機能によりページングエリア内の基地局に対して端末へのページングを要求する。端末はページングを受信後に無線回線を設定し、無線回線の設定後にゲートウェイは移動端末にバッファリングしたパケットを送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−104438号公報
【特許文献2】特許第4020587号
【特許文献3】特表第2011−519494号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】マスタリングTCP/IP入門編
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、移動体通信ネットワーク内のアイドル状態の移動端末に対してポートスキャンなどの不正アクセスや攻撃が行われた場合には、移動端末に対する脅威だけでなく、移動端末が通信に利用していないサービスのパケットにもかかわらず、攻撃が行われたアドレスを持つ移動端末宛のページングが頻発するなどして移動体通信ネットワークへの不要な負荷の増大や無線リソースの無駄遣いとなり、大きな脅威となりうる。
【0008】
移動体通信ネットワークにおいて、上述のように、アイドル状態にいる端末に対して不正アクセスやポートスキャンなどの攻撃が行われた場合に、移動端末に対する脅威だけでなく、攻撃が行われたアドレスを持つ移動端末宛のページングが頻発する。このため移動体通信ネットワークへの不要な負荷の増大や無線リソースの無駄遣いとなり大きな脅威となることを防止し、移動端末が必要とする通信をブロックすることなく移動体通信ネットワークにおいて不要なページングの発生を防止するモバイルゲートウェイ装置を提供することが求められる。
【0009】
非特許文献1では企業内や家庭に設置された端末への保護方法としてファイヤウォールを用いた保護方法について述べられている。ファイヤウォールを用いた保護は、企業内や家庭内などの内部のネットワークとインターネットなどの外部のネットワークとの境界点にファイヤウォールを設置し、通過可能なパケットにアドレス/プロトコル/ポート番号の制限を設けたり、TCPコネクションの接続方向に制限を設けたりすることで、内部ネットワークに接続された端末の保護を行っている。ファイヤウォールによる保護では内部ネットワークに接続された端末に一律のセキュリティポリシーを適用することになる。一方、移動体通信ネットワークのサービスでは、どのような通信を行うかは移動端末に依存しており、一律なセキュリティポリシーを適用することはできない。
【0010】
特許文献1では、企業内あるいは家庭内の内部ネットワークで企業内・家庭内のネットワークでのみで一意なプライベートIPアドレスが使用されている場合に、プライベートIPアドレスを持つ内部ネットワークの端末がNAT(Network Address Translation)あるいはNAPT(Network Address Port Translation)機能を搭載したルータを介してインターネットなどのグローバルIPアドレスを持つ外部ネットワークに接続された通信機器と通信を行う場合に、上記ルータにおいて、IPパケット中のプライベートIPアドレス・ポート番号とグローバルIPアドレス・ポート番号を変換することで通信を行う技術が開示されている。さらに、特許文献1では、グローバルIPアドレスを持つ外部ネットワークのサーバ側からプライベートIPアドレスを持つ内部ネットワークの端末に接続を行うには、予めルータにプライベートIPアドレス・ポート番号とグローバルIPアドレス・ポート番号のマッピング情報を登録しておくことで、外部ネットワークのサーバから内部ネットワークの端末の接続する手順が開示されている。ルータにプライベートIPアドレス・ポート番号とグローバルIPアドレス・ポート番号のマッピング情報が存在しない接続要求は、結果的に実行されないことになる。この例においても、上記内部ネットワークの端末には、一律なセキュリティポリシーを適用することになる。一方、移動体通信ネットワークのサービスでは、どのような通信を行うかは移動端末に依存しており、一律のセキュリティポリシーを適用することはできない。
【0011】
特許文献2は、移動体ネットワークと遠隔ネットワーク(インターネット等)との境界に設置されるゲートウェイパケット移動体交換局において、TCPプロキシ機能を含めるものである。移動端末宛に遠隔ホストからTCP SYNパケットが到着した場合には、ゲートウェイパケット移動体交換局はTCP SYNパケットを移動端末に転送せずにバッファリングし、ゲートウェイパケット移動体交換局と遠隔ホストの間で第1のTCP 3ハンドシェイクを実施し、TCP 3ハンドシェイクの完了後に、移動端末とゲートウェイパケット移動体交換局との間で第2のTCP 3ハンドシェイクを実施し、完了後にはゲートウェイパケット移動体交換局はTCPプロキシとして動作し、移動端末と遠隔ホスト間のTCP接続の中継を行う。特許文献2ではアイドル状態の移動端末に対してポートスキャン攻撃が行われた場合には、遠隔ホストとゲートウェイパケット移動体交換局間の第1のTCP 3ハンドシェイクが未完了なために、ページングを抑制しうる。しかし、特許文献2ではTCP接続に対する攻撃のみが防御の対象となり、ゲートウェイパケット移動体交換局においてTCPプロキシ処理が行われることによる負荷の増大が懸念される。
【0012】
特許文献3では、低電力インタフェースと高電力インタフェースを有するクライアント端末において、クライアント端末の電力を節約するために高電力インタフェースの電源切断が可能な場合に、低電力インタフェースと高電力インタフェースとを備え、かつ、クライアント端末に対してページング処理のプロキシとして動作可能なホスト端末を割り当てることが可能な技術が開示されている。特許文献3では、クライアント端末は高電力インタフェースの電源切断を行う際にホスト端末に登録し、ホスト端末は高電力インタフェースのページングを監視し、上記登録されたクライアント端末宛の高出力インタフェースのページングが送られてこないかを監視し、該当ページングを受信すると低電力インタフェースを通じて高電力インタフェースのページングメッセージの少なくとも一部を転送する例が開示されている。特許文献3では、クライアント端末のページングの受信は防御されているが高出力インタフェース側のネットワークでのページング送信が抑制されているわけではない。
以上の点に鑑み、本発明は、無線端末が通信に利用していないパケットの到着時に発生する無駄なページングを抑制することを目的とする。また、本発明は、無線端末毎に、ページング抑制のセキュリティポリシーを適用可能にすることを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、例えば、移動体通信ネットワークにおいて移動端末は無線リンクが接続されているアクティブ状態から無線リンクが解放されるアイドル状態に移行する際に、移動体通信ネットワーク内の前記移動端末を収容しているモバイルゲートウェイに対して、通信中のポート情報、あるいは待受け状態のポート情報を通知する手段を設ける。前記モバイルゲートウェイは通知された通信中のポート情報、あるいは待受け状態のポート情報を記憶する手段とアイドル状態の移動端末宛のパケットが外部ネットワークから到着した場合に前記の通信中のポート情報、あるいは待受け状態のポート情報と合致しないパケットであった場合には破棄する手段を設けることを主な特徴とする。
【0014】
また、移動体通信システムにおいて携帯電話などの第1の無線システムに加えて無線LANなどの第2の無線システムを併用可能な場合において、第1の無線システムがアイドル状態の場合に、第1の無線システムで利用しているIPアドレス宛てのパケットが到着した場合には、到着した第1の無線システムのIPアドレスを持つパケットを第2の無線システムのIPアドレスでカプセル化して第2の無線システム経由で移動端末に送信する。移動端末は第2の無線システムで使用しているIPアドレスでカプセル化された第1の無線システム宛のパケットを受信後に、第1の無線システムをアイドル状態からアクティブ状態へ遷移することにより、第1の無線システムのページングを抑制する。
【0015】
本発明の第1の解決手段によると、
無線端末と、該無線端末と無線で通信する基地局と、ゲートウェイとを備え、
前記ゲートウェイは、
前記無線端末が前記基地局と前記ゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を受信し、該ポート情報又は待受け状態のポート情報を記憶し、
前記無線端末が無線リンクを解放したアイドル状態に遷移したことを示す情報を受信して、該無線端末がアイドル状態かアクティブ状態かを管理し、
前記無線端末がアイドル状態のときに、前記無線端末宛のパケットを受信した場合に、受信されたパケット内のポート情報と、記憶された通信中あるいは待受け状態のポート状態とが合致するか判断し、合致した場合には該無線端末に対するページング処理を起動する無線通信システムが提供される。
【0016】
本発明の第2の解決手段によると、
無線端末と、該無線端末と無線で通信する基地局と、ゲートウェイとを備えた無線通信システムにおける前記ゲートウェイであって、
前記無線端末が前記基地局と前記ゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を受信するポート状態受信部と、
該ポート情報又は待受け状態のポート情報を記憶する記憶領域と、
前記無線端末が無線リンクを解放したアイドル状態に遷移したことを示す情報を受信して、該無線端末がアイドル状態かアクティブ状態かを管理するアイドル状態管理部と、
前記無線端末がアイドル状態のときに、前記無線端末宛のパケットを受信した場合に、受信されたパケット内のポート情報と、記憶された通信中あるいは待受け状態のポート状態とが合致するか判断し、合致した場合には該無線端末に対するページング処理を起動するページング制御部と
を備えた前記ゲートウェイが提供される。
【0017】
本発明の第3の解決手段によると、
無線端末と、該無線端末と無線で通信する基地局と、ゲートウェイとを備えた無線通信システムにおけるページング抑制方法であって、
ゲートウェイは、無線端末が基地局とゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を受信し、該ポート情報又は待受け状態のポート情報を記憶し、
ゲートウェイは、無線端末が無線リンクを解放したアイドル状態に遷移したことを示す情報を受信して、該無線端末がアイドル状態かアクティブ状態かを管理し、
ゲートウェイは、無線端末がアイドル状態のときに、無線端末宛のパケットを受信した場合に、受信されたパケット内のポート情報と、記憶された通信中あるいは待受け状態のポート状態とが合致するか判断し、合致した場合には該無線端末に対するページング処理を起動するページング抑制方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、無線端末が通信に利用していないパケットの到着時に発生する無駄なページングを抑制することができる。また、本発明によると、無線端末毎に、ページング抑制のセキュリティポリシーを適用可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態における移動通信システムの第1の構成例。
【図2】移動端末のアイドル状態遷移を説明する第1のシーケンス図。
【図3】移動端末のアイドル状態遷移を説明する第2のシーケンス図。
【図4】アイドル状態時モバイルゲートウェイ動作のシーケンス図。
【図5】モバイルゲートウェイの移動端末向けフィルタテーブルの1構成例。
【図6】本発明を適用したモバイルゲートウェイの1構成例。
【図7】パケット・メッセージ受信時のモバイルゲートウェイ動作。
【図8】本実施の形態における移動通信システムの第2の構成例。
【図9】第2の無線システムによるリンク設定手順。
【図10】第2の移動通信システムのゲートウェイにおける移動端末管理テーブルの1構成例。
【図11】第2の移動通信システムにおける アイドル状態時モバイルゲートウェイ動作のシーケンス図。
【図12】第2の実施例におけるモバイルゲートウェイの構成図。
【図13】無線端末の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.第1の実施例
図1は、本実施の形態における1実施例の移動体通信システムの構成を示す図である。
本実施例では3.9Gと呼ばれるLTEにシステムに適用した例について述べるが、WiMAXや3Gシステムにおいても同様に適用可能である。図1において、符号101は移動端末(UE:User Equipment)であり、符号102は端末と無線で通信する基地局(eNB: enhanced NodeB)であり、符号103は端末の位置管理や認証処理を行う移動管理サーバ(MME: Mobility Management Entity)であり、符号104は無線アクセス網内のアンカーポイントとなる第1のモバイルゲートウェイ(S−GW)であり、符号105はサービスネットワークと無線ネットワークの境界となる第2のモバイルゲートウェイ(P−GW: Packet Data Network GW)であり、符号106は無線アクセス網であり、符号107は移動端末(101)に対してサービス提供する外部ネットワーク(インターネット)である。また、符号108は、ポリシーサーバ(PCRF)であり、モバイルゲートウェイ(105)などに対してユーザが使用するQoSの情報や利用可能通信ポートの情報などの記憶・提供を行う。移動端末は、アイドル状態に遷移する適宜の無線端末でもよい。
【0021】
図1ではLTEを例にしているが、WiMAXシステムでは上述のS−GW/MMEがASN−GW(Access Service Network GateWay)に、上述のP−GWがHA(Home Agent)に相当する機能をそれぞれ有し、3Gシステムでは上述のS−GW/MMEがSGSN(Serving GPRS Support Node)に、上述のP−GWがGGSN(Gateway GPRS Support Node)に相当する機能をそれぞれ有する。なお、これら以外の規格のシステムでもよい。
【0022】
図6は、本実施の形態におけるモバイルゲートウェイ(104)、(105)の1構成例を示す図である。
モバイルゲートウェイ(104)、(105)は、例えば、CPU(601)と、メモリ(602)と、不揮発性メモリ(603)と、インタフェース(604)と、スイッチ処理部(605)を有する。
不揮発性メモリ(603)は例えば、フラッシュメモリ等であり、CPU(601)で実行されるプログラムやコンフィギュレーション情報が格納される。メモリ(602)は、不揮発性メモリ(603)からロードされたプログラムが格納されて、CPU(601)が実行時にアクセスしたり、図5に示す移動端末(101)へのフィルタ情報が格納される。例えば、第2のモバイルゲートウェイ(105)のメモリ(602)には、移動端末向けフローフィルタテーブル(510)と、移動端末向けアイドル状態用テーブル(520)とを含む。各テーブルについては後述する。また、メモリ(602)には、CPU(601)により実行されて、ポート状態受信部、アイドル状態管理部、及び、ページング制御部を実現する各プログラムが格納される。ポート状態受信部は、移動端末(101)が基地局(102)とゲートウェイ(104、105)を介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報(接続待ちのポート情報)を受信する。アイドル状態管理部は、移動端末(101)が無線リンクを解放したアイドル状態に遷移したことを示す情報を受信して、該移動端末(101)がアイドル状態かアクティブ状態かを管理する。ページング制御部は、移動端末(101)がアイドル状態のときに、移動端末(101)宛のパケットを受信した場合に、受信されたパケット内のポート情報と、記憶された通信中あるいは待受け状態のポート状態とが合致するか判断し、合致した場合には該移動端末(101)に対するページング処理を起動する。
【0023】
インタフェース(604)は、基地局(102)や外部ネットワーク(107)などの他のノードからのパケットを受信してメモリ(602)に格納したり、CPU(601)で処理されたパケットを他のノードへ送信したりする際に、使用される。スイッチ処理部(605)は、インタフェース(604)を介して受信したパケットをメモリ(602)に格納したり、CPU(601)で処理されたパケットをメモリ(602)からインタフェース(604)を通じて送信したりする際に、パケットを転送する。
【0024】
図2は、移動端末がアイドル状態に遷移する場合の動作の一例を説明する図である。
移動端末(101)は、eNB(102)、S−GW(104)及びP−GW(105)を経由して外部ネットワーク(107)内の端末、サーバ等と通信する(201〜204)。移動端末(101)は、外部ネットワーク(107)とやり取りを行うパケットが所定時間以上途絶えた場合には、モバイルゲートウェイ(104)、(105)に対して現在通信に利用しているポートの情報(例えば、送信元IPアドレス、受信先IPアドレス、プロトコル種別、送信元ポート番号及び受信元ポート番号を含む)、あるいは、接続待ちのポート情報(例えば、受信先IPアドレス、プロトコル番号及び受信先ポート番号を含む)を、アウトバンドのシグナリングを利用して通知する(210〜212)。この情報の通知は通信が途絶える場合に行われても良いし、通信が開始された場合や待受け状態のポートが設定された場合などアイドル状態に遷移する前に行われても良い。その後、無通信状態の検出などを契機にアイドル状態への遷移処理が実行され、基地局(102)からMME(109)を通して、モバイルゲートウェイ(104)、(105)へ移動端末(101)がアイドル状態へ移行したことが通知される(220−227)。モバイルゲートウェイ(104)、(105)は、通知された、現在通信に利用しているポートの情報、あるいは接続待ちのポート情報を記憶する。またモバイルゲートウェイ(104)、(105)は、移動端末(101)の状態(例えばアイドル状態)を記憶する。
【0025】
なお、モバイルゲートウェイ(104)、(105)に対して通知される、現在通信に利用しているポートの情報、あるいは接続待ちのポート情報については、ポリシーサーバ(108)からモバイルゲートウェイ(104)、(105)に通知されても良い。例えば、図2において、モバイルゲートウェイ(105)は、移動端末(101)がアイドル状態に遷移した場合に、CCRメッセージ(228)によってポリシーサーバ(108)に移動端末(101)がアイドル状態に遷移したことを通知しても良い。ポリシーサーバ(108)は、移動端末毎に、現在通信に利用しているポートの情報、あるいは接続待ちのポート情報を管理し、受信されたCCRメッセージ(228)に応答して、その応答となるCCAメッセージ(229)によって、該当する移動端末(101)が現在通信に利用しているポートの情報、あるいは接続待ちのポート情報について、モバイルゲートウェイ(104)、(105)に通知しても良い。この場合、処理210−212において、移動端末(101)からモバイルゲートウェイ(105)へは、アイドル状態へ遷移したことが通知されればよく、ポート情報の通知は省略してもよい。
【0026】
図3は、移動端末がアイドル状態に遷移する場合の他の動作例を示す図である。図2ではアウトバンドのシグナリングを利用して、現在通信に利用しているポートの情報、あるいは接続待ちのポート情報をモバイルゲートウェイ(104)、(105)に通知したが、図3に示すようにインバンドのIP通信(データプレーン、U−plane)を利用して移動端末(101)からモバイルゲートウェイ(105)に通知してもよい(310、311)。他の処理は図2と同様である。
【0027】
図4は、移動端末(101)がアイドル状態時のモバイルゲートウェイ(105)の動作を示すシーケンス図である。
外部ネットワーク(107)から移動端末(101)宛のパケットが第2のモバイルゲートウェイ(105)に届いた場合には(402)、第2のモバイルゲートウェイ(105)は、パケット内の情報が、図2あるいは図3の処理において移動端末(101)がアイドル状態に遷移する際あるいは遷移する前に通知してきた、現在通信に利用しているポートの情報(送信元IPアドレス、受信先IPアドレス、プロトコル種別、送信元ポート番号、受信元ポート番号)、あるいは接続待ちのポート情報(受信先IPアドレス、プロトコル番号、受信先ポート番号)の情報と合致するものかをチェックする(403−a)。なお、移動端末(101)から通知された情報は、メモリ(602)に記憶されている。チェックした結果、移動端末(101)が現在通信に利用しているポートの情報(送信元IPアドレス、受信先IPアドレス、プロトコル種別、送信元ポート番号、受信元ポート番号)、あるいは接続待ちのポート情報(受信先IPアドレス、プロトコル番号、受信先ポート番号)の情報と、パケット内の情報が合致しない場合には、第2のモバイルゲートウェイ(105)は受信したパケットを破棄する(404)。
【0028】
一方、移動端末(101)宛の他のパケットが外部ネットワーク(107)から第2のモバイルゲートウェイ(105)に届くと(410)、上述と同様に第2のモバイルゲートウェイ(105)はチェック(403−b)を行う。移動端末(101)が現在通信に利用しているポートの情報、あるいは接続待ちのポート情報と、パケット内の情報が一致した場合には、第2のモバイルゲートウェイ(105)は受信したパケットを第1のモバイルゲートウェイ(104)に送信する。第1のモバイルゲートウェイ(104)は、移動端末(101)がアイドル状態のため、ページングを発生させるために移動管理サーバ(103)にパケットの到着を通知する(412)とともに、受信したパケットをバッファリングする。
【0029】
移動管理サーバ(103)は、上記通知(412)に対する応答を第1のモバイルゲートウェイ(104)に返す(413)。また、移動管理サーバ(103)は、移動端末(101)に対するページング要求を、移動端末(101)に対応するページングエリアに属する基地局(102)に送信(414)する。ページング要求は、ページングエリアに属する基地局(102)から無線を介して移動端末(101)に送信される。ページングエリアに属する基地局は予め定められることができる。
【0030】
移動端末(101)は、ページング要求を受信すると基地局(102)との無線回線を設定し(416)、無線回線を設定した基地局(102)は第1のモバイルゲートウェイ(104)との通信路を移動管理サーバ(103)を通して確立する(417〜421)。第1のモバイルゲートウェイ(104)は基地局(102)との通信路の確立後に、バッファリングしていたパケットを移動端末(101)へ送信する(422)。
【0031】
このように、アイドル状態の移動端末(101)に対して、移動端末(101)が現在通信に利用しているポートの情報、あるいは接続待ちのポート情報と一致するパケットについてはページングを行って通信し、これらのポート情報と一致しないパケットについて破棄できる。従って、アイドル状態の移動端末(101)に対するポートスキャンに対する無駄なページングを抑制できる。
【0032】
次に、モバイルゲートウェイ(105)のテーブル構成例、動作フローチャートについてより詳細に説明する。
図5は、モバイルゲートウェイの移動端末向けフィルタテーブルの1構成例を示す。図5(a)に、移動端末向けフローフィルタテーブル(第2フィルタ)(510)を示し、図5(b)に、移動端末向けアイドル状態用テーブル(第1フィルタ)(520)を示す。これらのテーブルは、モバイルゲートウェイ(105)において移動端末(101)宛てのパケットに対しどのような処理を行うかを特定するために参照されるテーブルである。
【0033】
移動端末向けフローフィルタテーブル(510)は、移動端末の状態(アクティブ状態かアイドル状態か)にかかわらず適用されるテーブルである。移動端末向けフローフィルタテーブル(510)は、例えば、評価順(501)と、ポート情報(502〜508)と、送信ベアラ情報(509)とが対応して予め記憶される。ポート情報(502〜508)は、送信元アドレス(502)と、送信元prefix情報(503)と、受信先(宛先)アドレス(504)と、受信先prefix情報(505)と、プロトコル(506)と、送信元ポート番号(507)と、受信先ポート番号(508)とを含む。なお、ポート情報は、各情報項目(502〜508)の適宜の組み合わせてでも良い。
【0034】
評価順(501)は、パケットに適用するフィルタの順位を示すものであり、ポート情報(502〜508)が示すフィルタ条件に合致するかをチェックするときの優先度を示す。図5(a)の例では、テーブルの上から順に参照される。送信元アドレス(502)と送信元prefix情報(503)は、IPパケットの送信元IPアドレスフィールドとのマッチングに使用する部分である。送信元アドレス(502)が示すアドレスと送信元prefix情報(503)が示すPrefix長で指定される範囲に、受信パケットの送信元IPアドレスフィールドの値が含まれる場合には、マッチしたことになる。
【0035】
受信先アドレス(504)と受信先prefix情報(505)は、IPパケットの受信先IPアドレスフィールドとのマッチングに使用する部分である。受信先アドレス(504)が示すアドレスと受信先prefix情報(505)が示すPrefix長で指定される範囲に、受信パケットの受信先IPアドレスフィールドの値が含まれる場合にはマッチしたことになる。プロトコル(506)は、受信されるIPパケットのプロトコルフィールドとのマッチングに使用する部分である。送信元ポート番号(507)は、IPパケットの送信元ポート番号とのマッチングに使用する部分である。プロトコル(506)のプロトコルフィールドと送信元ポート番号(507)の送信元ポート番号が、受信パケットのプロトコルフィールドと送信元ポート番号と一致した場合にマッチしたことになる。受信先ポート番号(508)は、受信されるIPパケットの受信先ポート番号とのマッチング使用する部分である。プロトコル(506)のプロトコルフィールドと受信先ポート番号(508)の受信先ポート番号が、受信パケットのプロトコルフィールドと受信先ポート番号と一致した場合にマッチしたことになる。ポート情報(502〜508)の各データは特定の値だけでなく、全ての場合にマッチングすることを示すANY指定や、範囲指定も可能である。
【0036】
送信ベアラ情報(509)は、受信パケットの各フィールドの値が502〜508で示されるフィールドの値と一致した場合の動作を示すものである。LTEで使用される特定のベアラで送信することを指定したり、Default Bearerと呼ばれる不特定多数のアプリケーション向けのベアラで送信することを指定したり、破棄を指定することができる。なお、送信ベアラ情報以外にも、第2のモバイルゲートウェイ(105)の動作を示す動作情報(フィルタ情報、転送情報)でもよく、対象するシステムに応じて適宜の形態をとることができる。
【0037】
移動端末向けアイドル状態用テーブル(520)は、移動端末向けフローフィルタテーブル(510)の他に移動端末(101)がアイドルモード時に適用されるフィルタであり、図5(b)に1構成例を示す。例えば、移動端末向けアイドル状態用テーブル(520)は、受信パケットが521〜527で規定されるフィルタ条件に一致した場合に通過可能であることを示し、一致しなかったパケットは破棄される。移動端末向けアイドル状態用テーブル(520)は通過可能なフィルタを指定する例となっているが、一致したものを破棄し、一致しなかったものを通過させる構成も可能である。521〜527の構成は、502〜508と同様なものである。
【0038】
移動端末向けアイドル状態用テーブル(520)へのエントリは、図2中のメッセージ(212)、あるいは図3中のメッセージ(310)で通知されたものから構築される。また、図4中の403での処理において参照されることにより、移動端末(101)がアイドル状態において、パケットを破棄するかページングを発生させる動作を行うかを判断するときに利用される。移動端末向けアイドル状態用テーブル(520)は、移動端末向けフローフィルタテーブル(510)と統合されて管理されてもよいし、分離されて管理されても良い。
【0039】
図7は、モバイルゲートウェイ(105)のパケット・メッセージ受信時の動作を説明するフローチャートである。
処理701で、モバイルゲートウェイ(105)が、メッセージあるいは移動端末(101)宛のパケット受信すると、モバイルゲートウェイ(105)は、処理702でアイドル時に適用されるフィルタに関係する情報かを判断する。例えば、受信したメッセージ又はパケットに適宜の識別情報を含めることで、フィルタに関係する情報と判断できるようにしてもよいし、他の情報により判断してもよい。関係する場合には、モバイルゲートウェイ(105)(例えば、ポート状態受信部)は、処理703にて図5の移動端末向けアイドル状態(IDLEモード)用テーブル(520)に対し、受信したメッセージ又はパケットに従い内容を追加・修正を行う。一方、処理702でフィルタ情報でない場合には、モバイルゲートウェイ(105)は、処理704において、移動端末(101)がアクティブ状態とアイドル状態との状態変更にかかわるメッセージかを判断する。状態変更にかかわる場合にはモバイルゲートウェイ(105)(例えばアイドル状態管理部)は、移動端末(101)の管理状態をメッセージ内容に従い変更する(処理705)。一方、状態変更にかかわらない場合で(処理704、No)、かつ、移動端末(101)宛のパケットである場合には(処理706)、さらに移動端末の状態がアクティブ状態かアイドル状態かで処理が分かれる(処理706)。モバイルゲートウェイ(105)は、例えばアイドル状態管理部で管理する移動端末(101)の状態がアイドル状態の場合には(処理707、Yes)、図5の移動端末向けアイドル状態用テーブル(520)のフィルタを適用し(処理708)、受信されたパケット内の情報と移動端末向けアイドル状態用テーブル(520)内の情報がマッチするかを判断する(処理709)。マッチした場合には(処理709、Yes)、モバイルゲートウェイ(105)は、パケットの受信をトリガーにページングを発生させる処理の起動し(処理710)、あるいは他のノードへ転送する。一方、マッチしない場合には(処理709、No)、モバイルゲートウェイ(105)は、該当パケットを破棄する(処理711)。アイドル状態でない場合には(処理707、No)、モバイルゲートウェイ(105)は、図5の移動端末向けフローフィルタテーブル(510)のフィルタを参照してパケットの処理を決定する。例えば、受信したパケット内の情報とテーブル内の情報を比較し、マッチしたエントリの送信ベアラ情報(509)に従い処理を決定する。
なお、モバイルゲートウェイ(105)の処理は、モバイルゲートウェイ(104)で行っても良い。
【0040】
以上のように本実施例のモバイルゲートウェイは、移動端末がアクティブ状態からアイドル状態に遷移する際に、移動端末が通信状態のポート情報、あるいは待受け状態のポート情報を通知し、本実施例のモバイルゲートウェイは移動端末より通知された通信状態のポート情報、あるいは待受け状態のポート情報を記憶し、アイドル状態おいて外部ネットワークより移動端末宛のパケットが到着した場合に、記憶している移動端末の通信状態のポート情報、あるいは待受け状態のポート情報にマッチしないパケットを破棄することにより、移動端末が通信に利用していないパケットの到着時に発生する無駄なページングを抑制することが可能となる。また、モバイルゲートウェイは無線リンクがアイドル中に移動端末が通信中あるいは待受け状態のポートに合致するかをチェックするのみで、アクティブ状態では同様のチェックを行わないことによりチェックを行う負荷を低減することができる。

【0041】
2.第2の実施例
図8は、第2の実施例の移動体通信システムを説明する図である。
図8のシステムでは、図1の移動体無線通信システムなどの第1の無線システムに加えて、無線LANなどの第2の無線システムを備える。移動端末(101)は、無線LANなどの第2の無線システムのインタフェースをさらに備えている。移動端末(101)は、第1の無線システム及び第2の無線システムと同時に又は適宜切り替えて通信可能である。第2の無線システムにおいて、符号801は無線LANなどの第2の無線システムの基地局であり、符号802は第2の無線システムに関するモバイルゲートウェイであり、第1の無線システムの第1のモバイルゲートウェイ(104)に相当する動作を行い、符号803はAAAであり移動端末の認証や各種の情報を配布する。
【0042】
図9〜図11を用いて第2の実施例の動作を説明する。例えば、図8のシステムにおいて、移動端末(101)が第1の無線システムにおいてアイドル状態のときに、移動端末(101)が第1の無線システムで利用しているIPアドレス宛のパケットをモバイルゲートウェイ(105)が受信した場合に、モバイルゲートウェイ(105)が第1の無線システムのIPアドレス宛てのパケットを第2の無線システム用にカプセル化して第2の無線システム経由で移動端末(101)に届ける。
【0043】
図9は、第2の無線システムおけるリンク設定手順の説明図である。
901は移動端末(101)が第1の無線システムにおいてアイドル状態であることを示す。902は移動端末(101)が第2の無線システムのサービスエリアに入り、第2の無線システムの無線リンクを設定した場合を示す。さらに第2の無線システムに関する認証処理を行うために、WLAN基地局(801)は移動端末(101)から受信した認証情報を第2の無線システムのモバイルゲートウェイ(802)経由でAAA(803)に送り、AAAにて移動端末(101)の第2の無線システムに関する認証を行う。AAA(802)には移動端末(101)が第1の無線システムの接続時に第1の無線システムのモバイルゲートウェイ(105)から移動端末(101)のIMSIや第1の無線システムで使用しているIPアドレスおよび第1の無線システムのモバイルゲートウェイ(105)のIPアドレスを通知しておく。AAA(803)は、受信した認証情報に含まれる移動端末(101)のIMSIや移動端末が第1の無線システムで利用しているIPアドレスをキーにモバイルゲートウェイ(105)のアドレスを取得し、認証処理の応答で第2の無線システムのモバイルゲートウェイ(802)に通知する。認証が成功すると第2の無線システムのモバイルゲートウェイ(802)は、AAA(803)から取得した第1の無線システムのモバイルゲートウェイ(105)に対して通信路を設定し、第2の無線システムを経由した通信路の確立処理を行い(904)、第2の無線システム経由での通信路を確立する(905)。この、状態では図10に示すテーブルにより移動端末の管理を行う。
【0044】
図12は、第2の実施例におけるモバイルゲートウェイ(105)の構成図である。図10は、第2の実施例におけるモバイルゲートウェイ(105)における移動端末管理テーブルの1構成例を示す。
図12に示すように、モバイルゲートウェイ(105)は、第1の実施例の構成に加え、移動端末管理テーブル(1000)をメモリに有する。他の構成は第1の実施例と同様である。
移動端末管理テーブル(1000)は、例えば図10に示すように、移動端末(101)のIMSI(識別情報)(1001)と、第1の無線システムで利用している移動端末のIPアドレス(1002)と、第2の無線システムで利用している移動端末のIPアドレス(1003)の対応付けと、移動端末が第1の無線システムにおいてアイドル状態かアクティブ状態かを示す第1の無線システムの状態情報(1004)とを管理する。
【0045】
図11は、第2の実施例におけるアイドル状態時のページング動作のシーケンス図である。移動端末(101)が第1の無線システムにおいてアイドル状態であり、図9のように第2の無線システムでの通信路が確立された状態において、移動端末が第1の無線システムで使用しているIPアドレス宛にパケットが到着した場合に、第1の無線システムでのページングを回避して移動端末(101)宛てにパケットを送信する動作を示す。
【0046】
図11では、移動端末(101)は第1の無線システムにおいてアイドル状態(901)であり、第2の無線システムは通信路を確立している状態にある(905)。この場合、第1の実施例のように、移動端末(101)がアイドル状態に遷移する際にあるいは遷移する前に、現在通信に利用しているポートの情報あるいは接続待ちのポート情報と、第2の無線システムで通信路を確立していることと、図10の各情報とをモバイルゲートウェイ(105)に通知しても良い。
【0047】
通知した場合には、モバイルゲートウェイ(105)は、現在通信に利用しているポートの情報(送信元IPアドレス、受信先IPアドレス、プロトコル種別、送信元ポート番号、受信元ポート番号)、あるいは接続待ちのポート情報(受信先IPアドレス、プロトコル番号、受信先ポート番号)の情報と、受信したパケット内の情報が合致するかをチェックして(403)、合致する場合は下記の動作を行い、合致しない場合はパケットを廃棄する。処理403は、第1の実施例と同様である。一方、通知されない場合には、モバイルゲートウェイ(105)は、移動端末宛のすべての受信パケットについて以下の処理を行う。
【0048】
この状態で、第1の無線システムで利用している移動端末のIPアドレス宛のパケットをモバイルゲートウェイ(105)が受信した場合(1101)、モバイルゲートウェイ(105)は図10の移動端末管理テーブル(1000)を参照して、移動端末(101)が第1の無線システムにおいてアイドル状態であることを検出し、かつ、ページング動作を行う前に第2の無線システムで通信路を確立していることを検出する(1102)。例えば、モバイルゲートウェイ(105)は、受信パケットの宛先IPアドレスに基づき、移動端末管理テーブル(1000)の第1の無線システムのIPアドレス(1002)を参照し、対応する第1の無線システムの状態情報(1004)がアイドル状態を示し、かつ、対応する第2の無線システムのIPアドレス(1003)に情報が記憶されていることにより、移動端末(101)が第1の無線システムにおいてアイドル状態であり、かつ、ページング動作を行う前に第2の無線システムで通信路を確立していることを検出する。
【0049】
モバイルゲートウェイ(105)は、第1の無線システムのIPアドレス(1002)宛ての受信パケットを、第2の無線システム利用しているIPアドレス(1003)でカプセル化し、第2の無線システムを介して移動端末(101)宛てに送信する(1103)。移動端末(101)は、第2の無線システムで利用しているIPアドレスでカプセル化された第1の無線システムでのIPアドレス宛てのパケットを受信すると、第1の無線システムでの通信が開始されたと判断する。そして、移動端末(101)は、第1の無線システムのページングを受信することなく、第1の無線システムをアクティブ状態にするための処理(1104〜1109)を行う。アクティブ状態への遷移後(1110)は、第1の無線システム宛てのIPアドレスを持つパケットは、第1の無線システム経由で移動端末(101)に送信される。
【0050】
本実施例によると、第1の無線システムのIPアドレス宛てのパケットを第2の無線システム用にカプセル化して第2の無線システム経由で移動端末(101)に届けることができ、第1の無線システムでのページング処理を抑制することができる。また、第1の実施例と同様に移動端末が第1の無線システムにおいてアイドル状態に遷移する際などに通知したポート情報と、受信パケット内の情報が合致しない場合はパケットを廃棄することで、第2の無線システムにおけるカプセル化の処理も低減できる。

【0051】
3.構成例
3.1 通信システムの構成例
本移動体通信システム(移動体に限らず、無線通信システムでもよい)は、複数の移動端末、複数の基地局と前記基地局を収容する複数の第一のモバイルゲートウェイ、サービスネットワークに設置された複数の第二のモバイルゲートウェイと移動管理サーバから構成される無線アクセスネットワークにおいて、前記移動端末は第1のモバイルゲートウェイあるいは第2のモバイルゲートウェイに対して通信中のポート情報あるいは待受け状態のポート情報を通知することが可能で、
通知を受けた前記の第1のモバイルゲートウェイあるいは第2のモバイルゲートウェイは前記の移動端末が通信中のポート情報あるいは待受け状態のポート情報を記憶し、
前記移動端末が無線リンクを解放したアイドル状態の場合に、前記第1のモバイルゲートウェイあるいは第2のモバイルゲートウェイに、前記移動端末宛のパケットが届いた場合に、前記の通信中あるいは待受け状態のポート状態にマッチした場合にはページング処理を起動する。
【0052】
また、上述の移動体通信システムにおいて、前記移動端末は無線リンクを解放するアイドル状態に遷移する前に、前記の第1のモバイルゲートウェイあるいは第2のモバイルゲートウェイに通信中あるいは待受け状態のポート情報を通知すること、あるいは通信中あるいは待受け状態のポート情報が変更された場合に通知することを特徴のひとつとする。
上述の移動体通信システムにおいて、前記移動端末が無線リンクを解放したアイドル状態の場合に、前記第1のモバイルゲートウェイあるいは第2のモバイルゲートウェイに、前記移動端末宛のパケットが届いた場合に、前記の通信中あるいは待受け状態のポート状態にマッチしないパケットであった場合にはパケットを破棄することを特徴のひとつとする。
【0053】
また、上述の移動体通信システムにおいて、前記の第1のモバイルゲートウェイあるいは第2のモバイルゲートウェイは、前記移動端末が無線リンクを解放しているアイドル状態か、無線リンクを使用しているアクティブ状態かに応じて、移動端末宛のパケットが到着した場合に適用されるフィルタが変化することを特徴のひとつとする。
上述の移動体通信システムにおいて、前記の第1のモバイルゲートウェイあるいは第2のモバイルゲートウェイは、前記移動端末が無線リンクを解放しているアイドル状態か、無線リンクを使用しているアクティブ状態かに応じて、移動端末宛に転送されるパケット種別が変化することを特徴のひとつとする。
【0054】
また、他の態様では、移動体通信システムは、複数の移動端末、複数の基地局と前記基地局を収容する複数の第一のモバイルゲートウェイ、サービスネットワークに設置された複数の第二のモバイルゲートウェイと移動管理サーバから構成される無線アクセスネットワークにおいて、
前記移動端末は第1の無線システムと第2の無線システムの両方を利用することが可能で、前記基地局は第1の無線システムが利用可能な基地局と第2の無線システムが利用可能な基地局とから構成され、
前記移動端末は第1の無線システムを利用する場合に割り当てられたIPアドレスと、第2の無線システムを利用する場合に割り当てられたIPアドレスを利用可能で、
前記モバイルゲートウェイは、移動端末の第1の無線システムがアイドル状態で第1の無線システム宛のIPパケットが到着した場合に、該当パケットを第2の無線システム利用されているIPアドレス宛てにカプセル化して送信する。
【0055】
また、上述の移動体通信システムにおいて、前記移動端末は第1の無線システムがアイドル状態の場合に、第2の無線システムのIPアドレス宛てのパケットに第1の無線システムのIPアドレス宛てのパケットがカプセル化されているときに、第1の無線システムの状態をアイドル状態から無線リンクを張り、アクティブ状態へ遷移することを特徴のひとつとする。
【0056】
また、上述の移動体通信システムにおいて、前記モバイルゲートウェイは移動端末の固有の番号と第1の無線システムで利用しているIPアドレスと第2の無線システムで利用しているIPアドレスと第1の無線システムがアイドル状態であるかアクティブ状態であるかを管理し、第1の無線システムの状態に応じて利用する無線システムを変更することを特徴のひとつとする。

【0057】
3.2 端末の構成例
図13は、無線端末の構成例を示す。
本発明の1実施例における無線端末は、無線端末と、該無線端末と無線で通信する基地局と、ゲートウェイとを備えた無線通信システムにおける無線端末であって、
前記基地局と前記ゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を、該ゲートウェイに通知する通知部と、
前記無線端末が無線リンクを解放したアイドル状態においてページング要求を受信すると、自移動端末をアイドル状態からアクティブ状態へ遷移させる状態遷移部と
を備えることができる。
【0058】
また、本発明の他の実施例における無線端末は、無線端末と、該無線端末と無線で通信する第1の無線システムの第1基地局と、該無線端末と無線で通信する第2の無線システムの第2基地局と、ゲートウェイとを備えた無線通信システムにおける無線端末であって、
前記基地局と前記ゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を、該ゲートウェイに通知する通知部と、
第1の無線システムにおいてアイドル状態の場合に、第2の無線システムで利用する第2IPアドレス宛ての受信パケットに第1の無線システムの第1IPアドレス宛てのパケットがカプセル化されていると、自移動端末を第1の無線システムにおいてアイドル状態からアクティブ状態へ遷移させる状態遷移部と
を備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば、端末がアイドル状態に遷移する通信ネットワークに適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
101 移動端末
102 基地局
103 移動管理サーバ
104 第1のモバイルゲートウェイ
105 第2のモバイルゲートウェイ
106 無線アクセス網
107 外部ネットワーク
108 ポリシーサーバ
510 移動端末向けフローフィルターテーブル
520 移動端末アイドル状態用テーブル
601 CPU
602 メモリ
603 不揮発性メモリ
604 ネットワークインタフェース
605 スイッチ
801 無線LAN基地局
802 無線LANゲートウェイ
803 AAA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末と、該無線端末と無線で通信する基地局と、ゲートウェイとを備え、
前記ゲートウェイは、
前記無線端末が前記基地局と前記ゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を受信し、該ポート情報又は待受け状態のポート情報を記憶し、
前記無線端末が無線リンクを解放したアイドル状態に遷移したことを示す情報を受信して、該無線端末がアイドル状態かアクティブ状態かを管理し、
前記無線端末がアイドル状態のときに、前記無線端末宛のパケットを受信した場合に、受信されたパケット内のポート情報と、記憶された通信中あるいは待受け状態のポート状態とが合致するか判断し、合致した場合には該無線端末に対するページング処理を起動する無線通信システム。
【請求項2】
前記パケット内のポート情報と、記憶された通信中あるいは待受け状態のポート状態とが合致いない場合には、受信されたパケットを破棄することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線端末は、前記基地局と前記ゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を、該ゲートウェイに通知する請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線端末は、アイドル状態に遷移する際に、前記通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を、前記ゲートウェイに通知する請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線端末は、無線リンクを解放するアイドル状態に遷移する前に、前記通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を前記ゲートウェイに通知すること、若しくは、通信中あるいは待受け状態のポート情報が変更された場合に通知することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線端末が前記基地局と前記ゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を有するサーバ
をさらに備え、
前記サーバは、該通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を、前記ゲートウェイに通知する請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記サーバは、前記無線端末がアイドル状態に遷移したことを示す情報を受信すると、前記通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を、前記ゲートウェイに通知する請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記基地局は、第1の無線システムを構成し、
前記無線端末と無線で通信する第2の基地局を有し、前記無線端末と前記ゲートウェイ間で該第2の基地局を介して通信可能な第2の無線システムをさらに備え、
前記ゲートウェイは、
前記無線端末が第1の無線システムで利用する第1IPアドレス宛のパケットを受信した場合に、受信されたパケット内のポート情報と、記憶された通信中あるいは待受け状態のポート状態とが合致すると、該無線端末が第2の無線システムで利用する第2IPアドレス宛てに該受信パケットをカプセル化して、第2の無線システムを介して該無線端末に送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記無線端末は、
第1の無線システムにおいてアイドル状態の場合に、第2の無線システムで利用する第2IPアドレス宛ての受信パケットに第1の無線システムの第1IPアドレス宛てのパケットがカプセル化されていると、第1の無線システムにおいてアイドル状態からアクティブ状態へ遷移することを特徴とする請求項8に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記ゲートウェイは、
前記無線端末の識別情報と、該無線端末が第1の無線システムで利用している第1IPアドレスと、第2の無線システムで利用している第2IPアドレスと、無線端末が第1の無線システムにおいてアイドル状態であるかアクティブ状態であるかを示す状態情報を対応して記憶し、
第1の無線システムにおける前記状態情報に応じて、第1IPアドレスを用いて第1の無線システムを利用するか、又は、第2IPアドレスを用いて第2の無線システムを利用するかを変更することを特徴とする請求項8に記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記ゲートウェイは、
前記ポート情報又は待受け状態のポート情報を記憶し、前記無線端末がアイドル状態のときに参照される第1フィルタと、
前記ポート情報と、該ポート情報に合致するパケットの処理方法を示す動作情報とを記憶する第2フィルタと
を有し、
前記無線端末が無線リンクを解放しているアイドル状態か、無線リンクを使用しているアクティブ状態かに応じて、無線端末宛のパケットが到着した場合に適用されるフィルタが変化することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記ゲートウェイは、前記無線端末が無線リンクを解放しているアイドル状態か、無線リンクを使用しているアクティブ状態かに応じて、無線端末宛に転送されるパケット種別が変化することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項13】
通信中のポート情報は、送信元IPアドレス、受信先IPアドレス、プロトコル種別、送信元ポート番号及び受信元ポート番号を含み、
待受け状態のポート情報は、受信先IPアドレス、プロトコル番号及び受信先ポート番号を含む請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項14】
無線端末と、該無線端末と無線で通信する基地局と、ゲートウェイとを備えた無線通信システムにおける前記ゲートウェイであって、
前記無線端末が前記基地局と前記ゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を受信するポート状態受信部と、
該ポート情報又は待受け状態のポート情報を記憶する記憶領域と、
前記無線端末が無線リンクを解放したアイドル状態に遷移したことを示す情報を受信して、該無線端末がアイドル状態かアクティブ状態かを管理するアイドル状態管理部と、
前記無線端末がアイドル状態のときに、前記無線端末宛のパケットを受信した場合に、受信されたパケット内のポート情報と、記憶された通信中あるいは待受け状態のポート状態とが合致するか判断し、合致した場合には該無線端末に対するページング処理を起動するページング制御部と
を備えた前記ゲートウェイ。
【請求項15】
無線端末と、該無線端末と無線で通信する基地局と、ゲートウェイとを備えた無線通信システムにおけるページング抑制方法であって、
ゲートウェイは、無線端末が基地局とゲートウェイを介して通信中のポート情報又は待受け状態のポート情報を受信し、該ポート情報又は待受け状態のポート情報を記憶し、
ゲートウェイは、無線端末が無線リンクを解放したアイドル状態に遷移したことを示す情報を受信して、該無線端末がアイドル状態かアクティブ状態かを管理し、
ゲートウェイは、無線端末がアイドル状態のときに、無線端末宛のパケットを受信した場合に、受信されたパケット内のポート情報と、記憶された通信中あるいは待受け状態のポート状態とが合致するか判断し、合致した場合には該無線端末に対するページング処理を起動するページング抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−115809(P2013−115809A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263532(P2011−263532)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】