説明

無線通信システム、及び無線信号処理割当方法

【課題】信号処理を割り当てるべき、アクセスポイントを含めたネットワーク上に配置された信号処理装置を効率的に特定する。
【解決手段】無線方式管理装置1−8は、アクセスポイント1−3から無線方式が通知された場合に、無線処理ソフトウェア管理データベース1−8−1、無線信号処理装置管理データベース1−8−2を参照して、当該無線方式に対応する無線処理ソフトウェアを実行可能で、当該無線処理ソフトウェアを実行したときの負荷量が閾値以下となる無線信号処理装置を選択し、該当無線処理ソフトウェアを送信する。無線信号処理装置1−7は、受信した無線処理ソフトウェアに対応する無線方式で、アクセスポイント1−3を介して無線端末1−4〜1−6と通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局(アクセスポイント)で必要な無線信号処理を、アクセスポイント内、あるいはネットワークを介して、ネットワーク上に配置された汎用の信号処理装置上のソフトウェアにより実現することで無線方式を収容する無線通信システム、及び無線信号処理割当方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクセスポイントにおいてハードウェアにて実行していた無線信号処理を、アクセスポイント内、あるいはネットワーク上に配置された汎用の信号処理装置上のソフトウェアにより実行する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。このように、アクセスポイントが、無線信号処理をソフトウェアにより実現することで無線方式を収容することにより、1台のアクセスポイントにおいて複数の無線方式を収容可能となるだけに止まらず、アクセスポイントの単機能化による小型・低コスト化、並びに長寿命化が実現できる。また、ネットワーク上の信号処理装置では、新たな無線方式をサポートする際にソフトウェア更新により柔軟に対応可能となる。
【0003】
図6は、従来技術(特許文献1参照)による無線通信システムの構成を示すブロック図である。無線通信システム1は、ネットワーク100を介して接続される無線信号処理を実行する無線信号処理装置1−1と、無線方式管理装置1−2と、ホーム1−20に備えられるアクセスポイント1−3とを備えている。ネットワーク100は、電話網、インターネットなどの公衆網や、LAN(Local Area Network)、専用線などの私設網からなる。
【0004】
無線信号処理装置1−1は、通信処理手段1−1−1と、信号処理手段1−1−2とを備え、アクセスポイント1−3から受信する信号処理要求信号に応じて、信号処理を行う。通信処理手段1−1−1は、ネットワーク100を介してアクセスポイント1−3から信号処理要求信号を受信し、信号処理要求信号に対応する応答信号をアクセスポイント1−3に送信する。信号処理手段1−1−2は、通信処理手段1−1−1が受信する信号処理要求信号に応じて信号処理を行い、処理結果と、当該信号処理を識別する信号処理識別情報とを応答信号として通信処理手段1−1−1に出力する。
【0005】
無線方式管理装置1−2は、通信処理手段1−2−1と、ソフトウェア記憶手段1−2−2とを備えている。通信処理手段1−2−1は、アクセスポイント1−3から受信するプログラム要求信号に対応する応答信号として、対応する無線処理ソフトウェアをアクセスポイント1−3に送信する。ソフトウェア記憶手段1−2−2は、複数の無線方式を実現するためのそれぞれの無線方式に対応する無線処理ソフトウェアを記憶する。
【0006】
アクセスポイント1−3は、自身の信号処理手段1−3−4において処理できる無線方式については自身の信号処理手段1−3−4によって無線信号処理を行い、自身の信号処理手段1−3−4において処理できない無線方式については無線信号処理装置1−1に信号処理要求信号を送信し、無線信号処理装置1−1から送信される処理結果を受信する。すなわち、無線信号処理は、アクセスポイント1−3内、あるいはネットワーク100を介した無線信号処理装置1−1において実行される。この際、無線方式の種類によって処理する場所が決定され、一無線方式を実現するための無線処理ソフトウェアがアクセスポイント1−3にダウンロードされている場合には、アクセスポイント1−3で無線信号処理を行い、アクセスポイント1−3にダウンロードされていない場合には、ネットワーク100を介して、無線信号処理装置1−1にて無線信号処理を行う。さらに、アクセスポイント1−3からの要求に基づき、無線方式管理装置1−2からアクセスポイント1−3に必要な無線処理ソフトウェアをダウンロードし、書き換えることで、柔軟な信号処理を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−231903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、無線通信においては、信号送信手順(シーケンス)や、フレームフォーマットに基づいて無線信号を送受信することで信号伝送を実現しており、遵守すべき時間規定がある(例えば、パケット通信、TDMA:Time Division Multiple Access)。このため、ソフトウェア処理によってある無線方式の無線信号処理を実行する際には、時間規定を守れなければ、システムとして成立しない(成立したとしても、信号伝送効率が大幅に低下する)。例えば、IEEE802.11で規定される各種無線LANにおいては、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)に基づいたパケット送出間隔を実現する際に、マイクロ秒オーダの時間制約を満足する必要がある。
【0009】
各無線方式の時間規定を満足する観点からは、アクセスポイント1−3において全ての信号処理を行うことが望ましいが、アクセスポイント1−3の小型・低コスト化が重要なメリットであることを勘案すれば、アクセスポイント1−3に具備される信号処理リソースは、小さくする必要がある。このため、各無線方式の時間規定を満足しつつ、アクセスポイント1−3、及び信号処理装置1−1の信号処理リソースに効率的に信号処理を割当てることが必要となる。
【0010】
上述した特許文献1においては、アクセスポイント1−3が信号処理種別を自律的に判断し、例えば、アクセスポイント1−3は、所定の信号処理時間を越えてしまう場合に、アクセスポイント1−3内で信号処理することをせず、ネットワーク100を介して信号処理装置1−1に信号処理要求を出し、処理を任せる方法について、具体的な信号処理リソースの割当方法は示されていない。
【0011】
したがって、従来技術では、本来的にアクセスポイント1−3が行っていた信号処理を、当該アクセスポイント1−3を含めたネットワーク上に配置された無線信号処理装置1−1のいずれかを用いて実施するときの、当該処理を割り当てるべき信号処理装置(またはアクセスポイント)を効果的に特定することができないという問題がある。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、アクセスポイントを含めたネットワーク上に配置された信号処理装置のいずれかを用いて実施するときの、個々の信号処理装置の使用率が高くなるように当該信号処理を割り当てるべき信号処理装置を特定することができる無線通信システム、及び無線信号処理割当方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明は、互いに接続された無線方式管理装置と、複数の無線信号処理装置と、無線端末装置を収容する基地局装置とにより構成される無線通信システムであって、基地局装置は、無線端末装置が使用する無線方式を無線方式管理装置に通知する通信処理手段と、複数の無線信号処理装置と無線端末装置との間で信号を中継する中継手段と、を備え、無線信号処理装置は、記憶された無線処理ソフトウェアに基づく無線方式により、基地局装置から中継された信号の無線信号処理を実行し、処理結果を応答する信号処理手段と、無線端末装置において用いられる無線方式に応じた無線処理ソフトウェアを、無線方式管理装置から受信し、受信した無線処理ソフトウェアを、信号処理手段に記憶させるソフトウェア書換手段と、を備え、無線方式管理装置は、無線端末装置で用いられる複数の無線方式の各々に対応する無線処理ソフトウェアを記憶するソフトウェア記憶手段と、無線端末装置で用いられる複数の無線方式の各々に対応する無線処理ソフトウェアを実行する際に必要とされる条件と、複数の無線信号処理装置が持つ信号処理リソースの割当状況とを管理する管理手段と、基地局装置から無線端末装置が使用する無線方式が通知された場合に、管理手段を参照して、複数の無線信号処理装置の中から無線方式に対応する無線処理ソフトウェアを実行可能な無線信号処理装置を抽出し、抽出した無線信号処理装置において無線処理ソフトウェアが実行されたときの負荷量を算出し、負荷量が閾値以下となる無線信号処理装置を選択する選択手段と、選択手段により選択した無線信号処理装置に、基地局装置から通知された無線方式に対応する無線処理ソフトウェアを送信する通信処理手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、選択手段が、選択すべき無線信号処理装置として、基地局装置から距離の近い無線信号処理装置を選択することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、選択手段が、選択すべき無線信号処理装置として、最も負荷量が小さい無線信号処理装置を選択することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、選択手段が、無線方式で遵守すべき時間規定が存在する場合の最短応答時間が必要なシーケンスでの処理時間と、無線方式において規定される最短応答時間規定とに基づいて、抽出した無線信号処理装置に無線処理ソフトウェアを実行したときの負荷量を算出することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、無線方式管理装置が、対象の無線処理ソフトウェアをエミュレート動作させ、各信号処理時間との間で所要の処理ステップ数についての処理時間を測定することにより、最短応答時間での処理時間を取得する処理時間測定手段を更に備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、互いに接続された無線方式管理装置と、複数の無線信号処理装置と、無線端末装置を収容する基地局装置とにより構成される無線通信システムの無線信号処理割当方法であって、基地局装置が、無線端末装置が使用する無線方式を無線方式管理装置に通知するステップと、無線端末装置で用いられる複数の無線方式の各々に対応する無線処理ソフトウェアを記憶するソフトウェア記憶手段を備えた無線方式管理装置が、基地局装置から無線端末装置が使用する無線方式が通知されると、無線端末装置で用いられる複数の無線方式の各々に対応する無線処理ソフトウェアを実行する際に必要とされる条件と、複数の無線信号処理装置が持つ信号処理リソースの割当状況とを参照して、複数の無線信号処理装置の中から無線方式に対応する無線処理ソフトウェアを実行可能な無線信号処理装置を抽出し、抽出した無線信号処理装置において無線処理ソフトウェアが実行されたときの負荷量を算出し、負荷量が閾値以下となる無線信号処理装置を選択する選択ステップと、選択した無線信号処理装置に、基地局装置から通知された無線方式に対応する無線処理ソフトウェアを送信するステップと、無線信号処理装置が、無線端末装置において用いられる無線方式に応じた無線処理ソフトウェアを、無線方式管理装置から受信し、受信した無線処理ソフトウェアを記憶するステップと、基地局装置が、複数の無線信号処理装置と無線端末装置との間で信号を中継するステップと、無線信号処理装置が、記憶した無線処理ソフトウェアに基づく無線方式により、基地局装置から中継された信号の無線信号処理を実行し、処理結果を応答するステップと、を含むことを特徴とする無線信号処理割当方法である。
【0019】
また、本発明は、選択ステップは、選択すべき無線信号処理装置として、基地局装置から距離の近い無線信号処理装置を選択することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、選択ステップは、選択すべき無線信号処理装置として、最も負荷量が小さい無線信号処理装置を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、アクセスポイントを含めたネットワーク上に配置された信号処理装置のいずれかを用いて実施するときの、個々の信号処理装置の使用率が高くなるように当該信号処理を割り当てるべき信号処理装置を特定することができる。すなわち、無線方式が要求する時間規定を守れるように信号処理リソースを割当てることができる。加えて、本発明により1CPUコアに複数プロセスを割当てることが可能となることから、無線信号処理装置に具備すべき信号処理リソースが過剰に増大することを防止できるため、効率的なシステムの構築・運用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による無線処理ソフトウェア管理データベース1−8−1の一例を示す概念図である。
【図3】本実施形態による無線信号処理装置管理データベース1−8−2の一例を示す概念図である。
【図4】本実施形態による信号処理リソース割当方法(無線信号処理割当方法)を説明するためのフローチャートである。
【図5】本実施形態による信号処理リソース割当方法(無線信号処理割当方法)の動作タイミング例を示す概念図である。
【図6】従来技術による無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を用いて、本発明の請求項1記載の無線通信システムの実施の形態について説明する。本発明においては、無線方式管理装置は、無線処理ソフトウェアの管理を行う無線処理ソフトウェア管理データベース及びネットワーク上に多数配置された無線信号処理装置の持つ信号処理リソースの割当状況を管理する無線信号処理装置管理データベース、登録された無線処理ソフトウェアを記憶するソフトウェア記憶手段及び新規に無線処理ソフトウェアを登録する際に当該無線処理ソフトウェアが必要とする信号処理時間を測定する処理時間測定手段を具備する。
【0024】
アクセスポイントに収容されている複数の無線方式を実現するため、アクセスポイント内の信号処理手段およびネットワークを介した無線信号処理装置の信号処理手段において、変調・復調等の無線信号処理が行われる。当該アクセスポイントに係わる無線信号処理をどこに配置された信号処理手段で実行するかを決定するのが本発明の信号処理割当方法である。
【0025】
なお、複数の無線信号処理装置が割当ての条件を満たす場合には、基地局から最も近いものを選択することにより、処理遅延をより小さくすることが可能となる。また、ハードウェアの負荷量が最も小さいものを選択することにより、システム全体の負荷分散を行うことができる。
【0026】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。ホーム1−20は、ネットワーク100に接続するアクセスポイント1−3と、アクセスポイント1−3と無線通信が可能となる無線通信端末の例として、特定小電力無線通信を行う無線端末(タグ)1−4と、無線端末(センサ)1−5と、無線端末(無線LAN)1−6とを備えている。無線端末(タグ)1−4、無線端末(センサ)1−5、及び無線端末(無線LAN)1−6は、それぞれ異なる無線方式を用いてアクセスポイント1−3と無線通信を行う。
【0027】
アクセスポイント1−3は、無線送受信手段1−3−1、アナログ信号処理手段1−3−2、AD(アナログ−ディジタル)信号変換手段1−3−3、信号処理手段1−3−4、ソフトウェア書換手段1−3−5、通信処理手段1−3−6、及びメモリ手段1−3−7を備えている。
【0028】
無線送受信手段1−3−1は、無線タグ・センサ等用の特定小電力無線基地局機能を備え、ホーム1−20が備える無線端末(タグ)1−4、無線端末(センサ)1−5、及び無線端末(無線LAN)1−6から送信されるアナログの無線信号を受信し、アナログ信号処理手段1−3−2に出力する。
【0029】
アナログ信号処理手段1−3−2は、無線送受信手段1−3−1から入力される受信信号のアナログ処理を行う。AD信号変換手段1−3−3は、入力されたアナログ信号の受信信号をデジタル変換し、デジタル変換したデジタル信号列をメモリ手段1−3−7に出力するとともに、信号処理手段1−3−4から入力されるデジタル信号列をアナログ変換する。
【0030】
メモリ手段1−3−7は、AD信号変換手段1−3−3から入力されるデジタル信号列を一時的に記憶する。記憶したデジタル信号列は、通信処理手段1−3−6によって読み出される。信号処理手段1−3−4は、実行されている無線処理ソフトウェアの無線方式に従って、AD信号変換手段1−3−3から入力されるデジタル信号列の信号処理を行う。
【0031】
ソフトウェア書換手段1−3−5は、無線信号処理装置1−1から受信する信号処理識別情報に基づき、無線処理ソフトウェアを、ネットワーク100を介して無線方式管理装置1−2からダウンロードし、信号処理手段1−3−4における無線方式を実現する無線処理ソフトウェアを、ダウンロードした無線処理ソフトウェアに書き換えて、信号処理手段1−3−4における無線方式を変更する。通信処理手段1−3−6は、ネットワーク100を介して無線信号処理装置1−1と、無線方式管理装置1−2との間で信号を送受信する。
【0032】
無線方式管理装置1−8は、無線処理ソフトウェア管理データベース1−8−1、無線信号処理装置管理データベース1−8−2、ソフトウェア記憶手段1−8−3、割当制御手段1−8−4、処理時間測定手段1−8−5、及び通信処理手段1−8−6を備えている。
【0033】
無線処理ソフトウェア管理データベース1−8−1は、複数の無銭方式に対応する無線処理ソフトウェアを実行する際に必要とされる条件の管理を行う。無線信号処理装置管理データベース1−8−2は、ネットワーク100上に配置された無線信号処理装置1−7が持つ信号処理リソースの割当状況を管理する。ソフトウェア記憶手段1−8−3は、複数の無線方式を実現するためのそれぞれの無線方式に対応する無線処理ソフトウェアを記憶する。
【0034】
割当制御手段1−8−4は、アクセスポイント1−3、及び無線信号処理装置1−7の実装するハードウェア、処理すべき無線方式における最小の所要応答時間、及び当該ハードウェアの負荷量に基づいて、アクセスポイント1−3、または無線信号処理装置1−7のどちらに割り当てるかを決定する。処理時間測定手段1−8−5は、新規に無線処理ソフトウェアを登録する際に当該無線処理ソフトウェアが必要とする信号処理時間を測定する。通信処理手段1−8−6は、アクセスポイント1−3から受信するプログラム要求信号に対応する応答信号として、対応する無線処理ソフトウェアをアクセスポイント1−3に送信する。
【0035】
無線信号処理装置1−7は、通信処理手段1−7−1、信号処理手段1−7−2、及びソフトウェア書換手段1−7−3を備えている。アクセスポイント1−3に収容されている、複数の無線端末1−4、1−5、1−6のそれぞれで用いられる複数の無線方式を実現するため、アクセスポイント1−3内の信号処理手段1−3−4、またはネットワーク100を介した無線信号処理装置1−7の信号処理手段1−7−2において、変調・復調等の無線信号処理が行われる。本実施形態による信号処理割当方法では、当該アクセスポイント1−3に係わる無線信号処理をどちらに配置された信号処理手段1−3−4、1−4−2で実行するかを決定する。
【0036】
図2は、本実施形態による無線処理ソフトウェア管理データベース1−8−1に記憶されるデータの一例を示す図である。無線処理ソフトウェア管理データベース1−8−1には、各無線方式に対応して無線処理ソフトウェアIDが関連付けられており、無線処理ソフトウェア毎に、動作可能なCPU(の種類)、最短応答時間での処理時間、及び最短応答時間規定が保存されている。
【0037】
なお、最短応答時間での処理時間とは、無線方式で遵守すべき時間規定が存在する場合の最短応答時間が必要なシーケンスでの処理時間であり、最短応答時間規定の処理を対応CPUで実施するときに要する処理時間である。また、最短応答時間規定とは、対応する無線方式において規定される応答期間の中で最も短い値である。例えば、IEEE 802.11aでは、データ信号の後にACK信号を送信するまでの応答期間が16μsecと規定されており、この期間が最も短い応答期間である。
【0038】
図3は、本実施形態による無線信号処理装置管理データベース1−8−2に記憶されるデータの一例を示す図である。無線信号処理装置管理データベース1−8−2には、無線信号処理装置1−7、及びアクセスポイント(AP)1−3に対して、無線信号処理装置ID−CPU番号−#コア番号、それぞれの信号処理手段のCPU種類、CPUコア毎の割り当て中ソフトウェア詳細(利用状況:未/割当済みの場合、アクセスポイントID、及び無線処理ソフトウェアID)、及び残信号処理リソース情報が格納されている。すなわち、本実施形態において信号処理を行うのは、無線信号処理装置1−7とアクセスポイント1−3とのうち、いずれか一方である。
【0039】
図4は、本実施形態による信号処理リソース割当方法(無線信号処理割当方法)を説明するためのフローチャートである。当該フローチャートは、アクセスポイント1−3からの新規無線サービス開始要求、または無線方式管理装置1−8における設定時に、無線方式名(またはSW−ID:方式名−xx01)を引数として実行開始される。
【0040】
無線方式管理装置1−8の割当制御手段1−8−4は、ネットワーク100経由でアクセスポイント1−3からの新規無線サービス(すなわち、新たにサポートする無線方式)の開始要求信号を受信し、無線方式管理装置1−8における設定に基づいて、n方式目(nは自然数)の信号処理を割当てる際に、当該無線方式(のソフトウェア:SW)が登録済のものが否かを判定する(ステップS1)。そして、登録済でない場合には(ステップS1のNO)、要求元に割当失敗を通知し(ステップS2)、当該処理を終了する。
【0041】
一方、登録済である場合には(ステップS1のYES)、当該無線方式(のソフトウェア)が動作可能なCPUを持つ無線信号処理装置を抽出する(ステップS3)。すなわち、無線処理ソフトウェア管理データベース1−8−1の無線方式情報を参照し、対応する無線処理ソフトウェアを決定し、当該無線処理ソフトウェアが実行可能な信号処理装置の一覧(図2)を、上記信号処理装置管理データベース1−8−2から抽出する。ここで、無線処理ソフトウェアが実行可能な信号処理装置とは、当該無線処理ソフトウェアをサポートすることが可能なCPUを備え、かつ、最短応答時間規定を超えることなく当該信号処理を完了できる信号処理装置である。
【0042】
なお、無線方式を実現する無線処理ソフトウェアが複数あれば、同一手順にて割当候補を探す。ここで、利用可能なCPUを持つ信号処理装置を、アクセスポイント−信号処理装置間の距離が近い順にリスト化して信号処理装置管理データベース1−8−2に記憶させておくと、遅延時間の最小化の観点から都合が良い。また、リストの上位から順に、信号処理装置内の利用可能なCPUコアを探すことにより、最も近い距離の信号処理装置を検出することができる。
【0043】
次に、抽出結果に記載された信号処理装置の一覧について、残信号処理リソースに基づいて、当該信号処理装置に処理(CPUコア)を割り当て可能であるか否かを判定する。すなわち、残利用可能信号処理リソース情報に対して、当該無線処理ソフトウェアの処理時間情報C、及び最短応答時間規定情報Tを、無線処理ソフトウェア管理データベース1−8−1から受信し、負荷量としてのUが次式(1)の条件を満足すれば、割当可能と判定する。
【0044】
【数1】

【0045】
図示のフローチャートでは、まず、変数L(抽出された複数の信号処理装置)、M(利用可能なCPUコア)を1に設定する(ステップS4)。次に、抽出したL番目の信号処理装置のM番目のCPUコアが割り当て可能であるか否かを判定する(ステップS5)。そして、割り当て不可の場合には(ステップS5のNO)、信号処理装置内の全CPUコアについて検査済であるか否かを判定し(ステップS6)、検査済でなければ(ステップS6のNO)、変数Mをインクリメントし(ステップS7)、ステップS5に戻り、CPUコアを替えて再び割り当て可能であるか判定する。
【0046】
一方、信号処理装置内の全CPUコアについて検査済であれば(ステップS6のYES)、全信号処理装置について検査済であるか否かを判定し(ステップS8)、検査済でなければ(ステップS8のNO)、変数Lをインクリメントし(ステップS9)、ステップS5に戻り、信号処理装置を替えて再び割り当て可能であるか判定する。
【0047】
そして、抽出結果に記載された信号処理装置の一覧について、いずれの信号処理装置、いずれのCPUコアも割り当て可能でない場合には(ステップS8のYES)、当該処理を終了する。
【0048】
例えば、当該無線処理ソフトウェアを実行可能な上記信号処理装置一覧を無線信号処理装置管理データベース1−8−2より抽出する際、アクセスポイント−信号処理装置間の距離が短い順にリスト化し、リストの上位から順に利用可能な信号処理リソース(U)の判定を行う。これにより、信号処理時間低減の観点から効率的な割当が可能となる。なお、無線処理ソフトウェアを実行可能な信号処理装置の全てに対して、Uを算出し、最も小さいUnとなる信号処理装置を選択すれば、負荷分散が可能となる。
【0049】
一方、抽出したL番目の信号処理装置のM番目のCPUコアが割り当て可能である場合には(ステップS5のYES)、無線処理ソフトウェアの割当処理を行う(ステップS10)。すなわち、決定した信号処理装置に無線処理ソフトウェアのロードを行い、通信相手となるアクセスポイント1−3と割当てられた信号処理装置との間の信号のルーチング制御を行い、無線信号処理装置管理データベース1−8−2への割当情報、残信号処理リソース情報を、次式(2)として更新する。次に、要求元に割当成功を通知し(ステップS11)、当該処理を終了する。
【0050】
【数2】

【0051】
なお、無線処理ソフトウェアの処理が規定された最短応答時間を満足できなければ、無線通信を維持できないため、信号処理割当に際しては、正確な信号処理時間を必要とする。
【0052】
処理時間測定手段1−8−5は、測定対象の無線処理ソフトウェアを動作させるエミュレータを備え、各信号処理時間との間で所要の処理ステップ数についての処理時間を測定することにより、最短応答時間での処理時間を取得し、図2の無線処理ソフトウェア管理データベース1−8−1に記録する。なお、当該時間測定は、割当を行うたびに実行する必要は無く、無線処理ソフトウェアを登録する際に実行し、その結果を無線処理ソフトウェア管理データベースに蓄積することで、リアルタイムな割当が可能となっている。
【0053】
処理時間測定手段1−8−5は、ダイナミックステップ数から分析するために、アセンブラレベルでの処理ステップ数(ダイナミックステップ数)D[step]を計数するための逆アセンブル手段を具備し、平均実行性能(=同種の信号処理1ステップの実行に要する平均クロック数)E[clk/step]、CPUの信号処理性能P[clk/sec]とから次式(3)により所要処理時間Cを算出する。
【0054】
【数3】

【0055】
図5(a)、(b)は、本実施形態による信号処理リソース割当方法(無線信号処理割当方法)の動作タイミング例を示す概念図である。最短応答時間での応答を必要とするシーケンスが3つの無線方式A、B、Cで同時に発生した場合の時間の経過を示している。各信号処理のスケジューリングは、各無線方式A、B、Cのデッドラインが全て満足できれば任意の方法で良いが、図5(a)においては、一例として、最短応答時間規定が厳しい方式から処理する場合について示している。なお、後から新たな信号処理要求が来ても、最短応答時間規定が厳しい方式から処理する。図5に示すように、余裕を持って処理を完了できていることから、本実施形態による割当方法が良好に動作することが分かる。
【0056】
上述した実施形態によれば、無線方式が要求する時間規定を守れるように信号処理リソースを割当てることができる。加えて、本発明により1CPUコアに複数プロセスを割当てることが可能となることから、無線信号処理装置に具備すべき信号処理リソースが過剰に増大することを防止できるため、効率的なシステムの構築・運用が可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1−7 無線信号処理装置
1−7−1 通信処理手段
1−7−2 信号処理手段
1−8 無線方式管理装置
1−8−1 無線処理ソフトウェア管理データベース
1−8−2 無線信号処理装置管理データベース
1−8−3 ソフトウェア記憶手段
1−8−4 割当制御手段
1−8−5 処理測定手段
1−3 アクセスポイント
1−3−1 無線信号送受信手段
1−3−2 アナログ信号処理手段
1−3−3 AD信号変換手段
1−3−4 信号処理手段
1−3−5 ソフトウェア書換手段
1−3−6 通信処理手段
1−3−7 メモリ手段
1−4 無線端末(タグ)
1−5 無線端末(センサ)
1−6 無線端末(無線LAN)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続された無線方式管理装置と、複数の無線信号処理装置と、無線端末装置を収容する基地局装置とにより構成される無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
前記無線端末装置が使用する無線方式を前記無線方式管理装置に通知する通信処理手段と、
前記複数の無線信号処理装置と前記無線端末装置との間で信号を中継する中継手段と、
を備え、
前記無線信号処理装置は、
記憶された無線処理ソフトウェアに基づく無線方式により、前記基地局装置から中継された信号の無線信号処理を実行し、処理結果を応答する信号処理手段と、
前記無線端末装置において用いられる無線方式に応じた無線処理ソフトウェアを、前記無線方式管理装置から受信し、受信した無線処理ソフトウェアを、前記信号処理手段に記憶させるソフトウェア書換手段と、
を備え、
前記無線方式管理装置は、
前記無線端末装置で用いられる複数の無線方式の各々に対応する無線処理ソフトウェアを記憶するソフトウェア記憶手段と、
前記無線端末装置で用いられる複数の無線方式の各々に対応する無線処理ソフトウェアを実行する際に必要とされる条件と、前記複数の無線信号処理装置が持つ信号処理リソースの割当状況とを管理する管理手段と、
前記基地局装置から前記無線端末装置が使用する無線方式が通知された場合に、前記管理手段を参照して、前記複数の無線信号処理装置の中から当該無線方式に対応する無線処理ソフトウェアを実行可能な無線信号処理装置を抽出し、当該抽出した無線信号処理装置において当該無線処理ソフトウェアが実行されたときの負荷量を算出し、当該負荷量が閾値以下となる無線信号処理装置を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択した無線信号処理装置に、前記基地局装置から通知された前記無線方式に対応する前記無線処理ソフトウェアを送信する通信処理手段と
を備える
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記選択手段は、前記選択すべき無線信号処理装置として、前記基地局装置から距離の近い無線信号処理装置を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記選択手段は、前記選択すべき無線信号処理装置として、最も負荷量が小さい無線信号処理装置を選択する
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記選択手段は、前記無線方式で遵守すべき時間規定が存在する場合の最短応答時間が必要なシーケンスでの処理時間と、当該無線方式において規定される最短応答時間規定とに基づいて、前記抽出した無線信号処理装置に当該無線処理ソフトウェアを実行したときの負荷量を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線方式管理装置は、対象の無線処理ソフトウェアをエミュレート動作させ、各信号処理時間との間で所要の処理ステップ数についての処理時間を測定することにより、前記最短応答時間での処理時間を取得する処理時間測定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
互いに接続された無線方式管理装置と、複数の無線信号処理装置と、無線端末装置を収容する基地局装置とにより構成される無線通信システムの無線信号処理割当方法であって、
前記基地局装置が、
前記無線端末装置が使用する無線方式を前記無線方式管理装置に通知するステップと、
前記無線端末装置で用いられる複数の無線方式の各々に対応する無線処理ソフトウェアを記憶するソフトウェア記憶手段を備えた前記無線方式管理装置が、
前記基地局装置から前記無線端末装置が使用する無線方式が通知されると、前記無線端末装置で用いられる複数の無線方式の各々に対応する無線処理ソフトウェアを実行する際に必要とされる条件と、前記複数の無線信号処理装置が持つ信号処理リソースの割当状況とを参照して、前記複数の無線信号処理装置の中から当該無線方式に対応する無線処理ソフトウェアを実行可能な無線信号処理装置を抽出し、当該抽出した無線信号処理装置において当該無線処理ソフトウェアが実行されたときの負荷量を算出し、当該負荷量が閾値以下となる無線信号処理装置を選択する選択ステップと、
選択した無線信号処理装置に、前記基地局装置から通知された前記無線方式に対応する前記無線処理ソフトウェアを送信するステップと、
前記無線信号処理装置が、
前記無線端末装置において用いられる無線方式に応じた無線処理ソフトウェアを、前記無線方式管理装置から受信し、受信した無線処理ソフトウェアを記憶するステップと、
前記基地局装置が、
前記複数の無線信号処理装置と前記無線端末装置との間で信号を中継するステップと、
前記無線信号処理装置が、
記憶した前記無線処理ソフトウェアに基づく無線方式により、前記基地局装置から中継された信号の無線信号処理を実行し、処理結果を応答するステップと、
を含むことを特徴とする無線信号処理割当方法。
【請求項7】
前記選択ステップは、前記選択すべき無線信号処理装置として、前記基地局装置から距離の近い無線信号処理装置を選択することを特徴とする請求項6に記載の無線信号処理割当方法。
【請求項8】
前記選択ステップは、前記選択すべき無線信号処理装置として、最も負荷量が小さい無線信号処理装置を選択することを特徴とする請求項6または請求項7のいずれか1項に記載の無線信号処理割当方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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