無線通信システム、基地局および無線通信方法
【課題】端末が要求する通信速度を満たしつつ、フィードバック量を削減する無線通信システムである。
【解決手段】複数のアンテナを持つ複数の基地局102a,bと、複数のアンテナを持つ複数の端末103a〜dと、複数の基地局を集中管理する基地局制御局101aとで構成される無線通信システムにおいて、ある一定時間(タイムスロット)の間に、1つの基地局と1つの端末のみが通信を行う(MIMO+TDMA)通信モードと、1つの基地局が複数の端末と同時通信を行う(SDMA+TDMA)通信モードと、複数の基地局を基地局制御局によって複数の基地局を連携させて複数の端末と同時通信を行う(マルチポイントSDMA)通信モードとを有し、端末からの要求通信速度を満たせるかどうかを基地局や基地局制御局で判断することによって通信モードを切り替えることにより、自動的に適切な通信モードを決定する。
【解決手段】複数のアンテナを持つ複数の基地局102a,bと、複数のアンテナを持つ複数の端末103a〜dと、複数の基地局を集中管理する基地局制御局101aとで構成される無線通信システムにおいて、ある一定時間(タイムスロット)の間に、1つの基地局と1つの端末のみが通信を行う(MIMO+TDMA)通信モードと、1つの基地局が複数の端末と同時通信を行う(SDMA+TDMA)通信モードと、複数の基地局を基地局制御局によって複数の基地局を連携させて複数の端末と同時通信を行う(マルチポイントSDMA)通信モードとを有し、端末からの要求通信速度を満たせるかどうかを基地局や基地局制御局で判断することによって通信モードを切り替えることにより、自動的に適切な通信モードを決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特に、複数の送受信アンテナを持つ複数の基地局と、各基地局に従属する複数の端末との間でデータ送受信を行う方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムに関する技術としては、例えば非特許文献1〜5に記載される技術や、特許文献1〜3に記載される技術などがある。
【0003】
非特許文献1には、送信局が1つに対して受信局がN局の1対Nの無線通信(BC:Broadcast Channel)の通信容量に関して、Dirty Paper Codingがシステム容量の上限を与える方式として開示されている。また、非特許文献2では、容量を最大限引き出すための方式が存在することが開示されている。
【0004】
非特許文献3には、複数の送信局が協調連携して、見かけ上で送信局側のアンテナ総数を増大させ、上記のDirty Paper Codingを行うことによって、システム全体のスループットを向上させる方式の概念が開示されている。
【0005】
非特許文献4には、送信局が1つと受信局が1つの1対1での無線通信(Point to Point)において、無線伝搬路の持つ通信容量を最大限に引き出す方式として、固有モード伝送方式が開示されている。
【0006】
非特許文献5には、送信局が1つと受信局が複数のマルチユーザシステムで、無線区間のチャネル情報を予測する手法が開示されている。
【0007】
特許文献1には、時分割(TDMA:Time Division Multiple Access)のタイムスロットに、複数の端末に対して空間分割(SDMA:Space Division Multiple Access)による同時通信を行う技術が開示されている。
【0008】
特許文献2には、複数の送受信アンテナ間から最適な性能を出すアンテナの組合せを計算する方法が開示されている。
【0009】
特許文献3には、SDMA環境パラメータの変動に応じて、変調方式や符号化率などの送信ビットレート調整を行い、通信容量を増加させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−96727号公報
【特許文献2】特開2008−092433号公報
【特許文献3】特開2005−102136号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Writing on dirty paper”,IEEE Trans.Inform.Theory,vol.29,issue3,May 1983,M.Costa著,IEEE発行,p.440,Figure 1:Variation of Gaussian−Shannon channel
【非特許文献2】W.Yu and J.M.Cioffi,“Sum capacity of Gaussian vector broadcast channels”,IEEE Trans.Inform.Theory,Vol.50,No.9,pp.1875−1892,Sept.2004
【非特許文献3】S.Shamai and B.Zaidel,“Enhancing the cellular downlink capacity via co−processing at the transmitting end”,in Proceedings of IEEE Vehicular Tech.Conf.,May 2001−Spring,pp.1745−1749
【非特許文献4】“MIMOチャンネルにおける空間分割多重方式とその基本特性”,電子情報通信学会論文誌 B Vol.J87_B No.9,September 2004,電子情報通信学会発行,大鐘武雄、西村寿彦、小川恭孝著
【非特許文献5】“チャネル予測及び改良ユーザ選択法を用いたマルチユーザMIMO−BCシステム”,信学技報 RCS2008−11(2008−05),電子情報通信学会発行,関 志、大槻知明著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、無線通信システムに関しては、近年、システムの高速化に伴い、周波数利用効率向上の観点から、複数のアンテナからデータを送信して複数のアンテナで受信するMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が、無線LANや移動通信など、多くの無線規格で採用されている。
【0013】
例えば、送信局が1つと受信局が1つの1対1での無線通信(Point to Point)では、無線伝搬路の持つ通信容量を最大限に引き出す方式として、前記非特許文献4に開示されている固有モード伝送方式が知られている。この固有モード伝送方式では、送受信アンテナ間の無線伝搬路特性としてチャネル行列Hを固有分解(Singular Value Decomposition)して、固有分解で得られた行列を送信ベクトル信号と受信ベクトル信号に重み付け計算することで、伝送路の持つ容量を最大限に引き出す。ただし、受信側で測定したチャネル情報を送信側にフィードバックするため、無線伝搬路の変動が大きい場合には、通信を行うときの実際のチャネル状態が、フィードバックされたチャネル状態と異なるため、通信性能が劣化するという欠点がある。無線LANのようにユーザがあまり移動せず準静的な環境を前提としたシステムでは、無線伝搬路の変動が少ないため、この方式は有効である。
【0014】
また、送信局が1つに対して受信局がN局の1対Nの無線通信(BC)の通信容量や、送信局がM局に対して受信局が1局のM対1の無線通信(MAC:Multiple Access Channel)の通信容量に関して、情報理論の観点から多くの研究がなされている。BCの通信容量に関しては、前記非特許文献1のDirty Paper Codingがシステム容量の上限を与える方式として紹介され、前記非特許文献2では、容量を最大限引き出すための方式が存在することを証明している。
【0015】
前述の1対1の固有モード伝送方式に比べると、1対NのBCでは、ユーザ数の増加に伴い受信側のアンテナ総数が多くなるため、システム全体で提供できる通信容量は増大する。
【0016】
これらの非特許文献に開示の技術では、送受信間の空間に形成されるチャネル情報を瞬時に送信側で把握しないと成立しない。実際のシステムでは、受信側でチャネル情報を測定し、受信側から送信側へのフィードバックリンクを用いてチャネル情報を送信側に通知する。このフィードバックにかかる遅延時間の間に、チャネルが変動することにより、性能劣化が大きく実現が難しいとされている。
【0017】
更に、1対NのBCの通信容量は、送信局のアンテナ数の制約によって提供できる通信容量が制限されてしまう。そこで、複数の送信局が協調連携して、見かけ上で送信局側のアンテナ総数を増大させ、上記のDirty Paper Codingを行うことによって、システム全体のスループットを向上させる方式の概念が、前記非特許文献3に開示されている。
【0018】
また、従来の無線通信システムでは、基地局から端末に同時に送信する際に、隣接する基地局とは周波数を分け(FDMA:Frequency Division Multiple Access)、セル構造を設計して遠く離れた場所で周波数再利用する方法や、同じ周波数で複数の基地局が送信してもコードで多重化して受信側で同じコードで信号を取り出すCDMA(Code Division Multiple Access)の方法などが知られている。また、複数の基地局を時分割(TDMA)する方法も知られている。また、近年では前記非特許文献3で開示されているように、複数の基地局が連携し、複数の端末に空間分割(SDMA)で通信する方式も提案されている。これらの多重アクセス技術については、システム規格に基づいて決定されて運用されている。
【0019】
例えば、TDMAのタイムスロットに、複数の端末に対してSDMAによる同時通信を行う前記特許文献1では、1つの基地局が収容できる端末に対するSDMA通信の開示はあるが、複数の基地局間で連携したSDMA通信を行うことによって、システム全体のスループットを向上する方式に関する開示がない。
【0020】
また、前記特許文献2の方法では、フィードバック情報としては送受信間で共通のコードブックを用いているが、コードブックによって代表されるチャネル情報と測定したチャネル情報との差異が大きい場合は、通信性能が劣化するという課題が挙げられる。特に複数の基地局が連携して複数の端末にSDMA通信する場合には、複数の端末と複数の基地局との間のチャネル情報は、収容エリアが増大するにつれて、一部の端末は変化が少なくても一部の端末は変化が大きいようなチャネル情報の変化量に地理的な分布が発生する。この地理的な分布まで含めて、チャネル情報をコードブックで表そうとすると、結果としてコードブックで扱うチャネル情報の種類を増やさなくてはならない。1つの基地局だけで、SDMA通信で必要なチャネル情報のコードブックと複数の基地局が連携する場合のコードブックの構造に違いが生じる必要があり、このように通信方式をスケーラブルに切り替えるようなシステムにおいて、フィードバック量を削減しつつ、かつチャネル情報を正しく把握できるシステムが求められている。
【0021】
また、前記特許文献3の技術では、受信機側で推定し追従して計算を行ったチャネル情報と本来のチャネル情報の相関をベースに信頼度を判定しており、最後に報告したチャネル情報と受信したチャネル情報の相関で信頼度を判定する本発明とは異なる。また、この信頼度を用いて、前記特許文献3では変調方式や誤り訂正符号を切り替えるが、本発明ではSDMA自体を止めてMIMO−TDMAとするなど、通信モードの切り替えに利用する点も異なる。
【0022】
以上のような無線通信システムにおいて、複数の基地局が連携し、複数の端末にSDMAで通信する方式は、システムが提供できる容量を多くする可能性がある。一方で、システムが同時に扱う端末の数や送受信アンテナの数が増大することによって、送受信間でやり取りするチャネル情報量が多くなるという課題がある。チャネル情報量が多くなると、受信側から送信側に精度高くフィードバックすると、フィードバックの遅延によって、チャネルの状態が変化し、通信する時点でのチャネルとフィードバックで得られたチャネルとが異なることから、システムが提供できる通信速度が劣化してしまう。また、チャネルの状態が変化しない場合においても、フィードバック量が多いと、通信プロトコルのオーバヘッドによって実質的なスループットが劣化するという問題がある。
【0023】
また、端末は、静止しているものから移動しているものまで、様々なチャネル情報を持っているため、時々刻々と変化するチャネル情報を常に最新に保つためには、このフィードバックを適切なタイミングで行う必要がある。また、端末が要求する通信トラフィック量が多くない場合には、基地局間が連携せずとも、単独の基地局で1つまたは複数の端末と通信を行う従来の通信方法でも、要求を満たしている場合もあるため、常時、複数の基地局がSDMA通信をする必要はない。
【0024】
このような状況を鑑みて、端末の要求速度を満たすのに必要なリソースを提供することができる通信方式を自動的に判断して切り替えることのできる無線通信システムが求められている。また、通信方式を切り替えた場合に、フィードバック量が増大してしまう課題に対してフィードバック量を削減する方式を提供して、周波数利用効率の効率低下を防ぐ通信方式も求められている。そこで、本発明の目的は、端末が要求する通信速度を満たしつつ、フィードバック量を削減する無線通信システムを提供することにある。
【0025】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0027】
すなわち、代表的なものの概要は、複数のアンテナを持つ複数の基地局と、複数のアンテナを持つ複数の端末と、複数の基地局を集中管理する基地局制御局とで構成される無線通信システムにおいて、ある一定時間(タイムスロット)の間に、1つの基地局と1つの端末のみが通信を行う通信モード(MIMO+TDMA通信モードと呼ぶ)と、1つの基地局が複数の端末と同時通信を行う通信モード(SDMA+TDMA通信モードと呼ぶ)と、複数の基地局を基地局制御局によって連携させて複数の端末と同時通信を行う通信モード(マルチポイントSDMA通信モードと呼ぶ)とを有し、端末からの要求通信速度を満たせるかどうかを基地局や基地局制御局で判断することによって通信モードを切り替えることにより、自動的に適切な通信モードを決定する。
【0028】
要求通信速度を満たせるかどうかを判断するためには、基地局のアンテナと端末のアンテナ間のチャネル情報を収集し、収集したチャネル情報から各通信モードにおいて提供可能な通信容量を計算し、その通信容量の大きさによって要求通信速度を満足できるかできないかを判定する。
【0029】
基地局のアンテナと端末のアンテナ間のチャネル情報を、基地局や基地局制御局が収集する方法として、基地局はチャネル情報を端末で測定するのに必要な既知のパターンのプリアンブル信号を送信する手段と、端末がチャネル情報をどのような形でフィードバックするかを決めるフィードバック方法に関する情報を通知する手段とを有し、端末は前記プリアンブル信号によってチャネル情報を測定し、その測定したチャネル情報を前記フィードバック方法に関する情報に従って、フィードバックを行うか行わないかなどを含めて判断して、その判断結果に基づいてチャネル情報をフィードバックすることによってチャネル情報のフィードバック量を削減する。
【0030】
具体的には、基地局が利用するチャネル情報は、過去に端末が基地局にフィードバックして通知したチャネル情報に基づいているものであるので、基地局が現在活用しているチャネル情報と、端末が前記プリアンブル信号から測定した最新のチャネル情報との相関を求め、その相関が高い場合には、そのまま過去のチャネル情報を活用してもよいという情報のみをフィードバックすることによって、フィードバック量を削減する。もしくは、実際の通信データの誤り率などを測定し、誤り率が許容範囲内であれば、基地局が利用している過去に通知したチャネル情報を使い続けてもよいと判断して、活用してもよいという情報のみをフィードバックする。
【発明の効果】
【0031】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0032】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、端末が要求する通信速度を満たしつつ、フィードバック量を削減する無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態における無線通信システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において、MIMO+TDMA通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、SDMA+TDMA通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、マルチポイントSDMA通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において、複数の通信モードを混在させた場合の処理とフレームの関係の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において、各通信モードにおけるユーザ当たりの周波数利用効率と送信電力の関係の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態において、チャネル情報の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において、各通信モードにおけるチャネル情報のフィードバック量とユーザ当たりの周波数利用効率の特性の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における拡張プリアンブル信号の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるフィードバック判断情報のフォーマットの一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における制御シーケンスの一例(マルチポイントSDMAとMIMO−TDMAの混在)を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態におけるマルチポイントSDMA通信への移行や解除の動的な運用に関する制御シーケンスの一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における基地局の制御アルゴリズムの一例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態における基地局制御局の制御アルゴリズムの一例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態における基地局の構成の一例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態における基地局制御局の構成の一例を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態における端末の構成の一例を示す図である。
【図18】本発明の別の実施の形態における制御シーケンスの一例(端末が送信する信号でチャネル情報を基地局が測定する例)を示す図である。
【図19】本発明の別の実施の形態における基地局が自律的にマルチポイントSDMA通信を決定する場合の制御シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0035】
図1は、本発明の実施の形態における無線通信システムの全体構成の一例を示している。無線通信システムは、基地局制御局101aと、この基地局制御局101aに接続された複数の基地局102a,102b,…と、これらの基地局102a,102b,…との間でデータ送受信を行う複数の端末103a,103b,103c,103d,…などから構成される。基地局102a,102b,…のそれぞれは、複数(ここでは4本の例)のアンテナを持っている。また、端末103a,103b,103c,103d,…のそれぞれは、複数(ここでは2本の例)のアンテナを持っている。
【0036】
なお、この無線通信システムでは、基地局制御局101aがゲートウェイ104に接続され、さらにこのゲートウェイ104が基地局制御局101bに接続されている。複数の基地局制御局間の信号はゲートウェイ104を介して行われる。また、ゲートウェイはコアネットワーク105へのアクセス手段を提供する。コアネットワーク105は、インターネットに接続されている。
【0037】
基地局制御局101aは、配下の基地局102a,102b,…を管理し、基地局間の協調連携制御を実現する。図1の例では、ある時点において、基地局102aと基地局102bがSDMA通信の協調連携制御を行い、端末103aと103cへデータを送信している様子を示す。端末103aと端末103cは、所望の信号を分離して受信処理を行う。このとき、基地局制御局101aがSDMAのための送信信号を形成し、基地局102aと基地局102bのトータル8本の送信アンテナを利用して、端末103aと103cの合計4本の受信アンテナに対するチャネル情報を取得し、8×4のBroadcast Channelに対する信号処理を行う。
【0038】
また、基地局制御局101aは、ゲートウェイ104を介して、他の基地局制御局101bに接続することができ、配下の基地局情報を互いに交換することで、異なる周波数を割り当てることによって干渉回避をしたり、場合によっては基地局制御局間も協調することによって、各々の配下にある基地局間の協調制御も可能な構成となっている。基地局協調制御によって、送信アンテナ数が増大することによって、システム全体のスループットを向上することができる。
【0039】
図2に、基地局と端末間の通信が瞬時では1対1になるように時分割するMIMO+TDMA(MIMO−TDMAとも記載する)通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す。
【0040】
基地局102aは、TDMAのタイムスロット(Slot)#1にて、まずチャネル情報を取得するためのプリアンブル信号を送信する。端末103aは、予め通信プロトコルに基づいて、タイムスロット#1で通信する権利を獲得しているものとする。端末103aは、前記プリアンブル信号を受信してチャネル推定を行う。得られたチャネル情報Haaを基地局102aにフィードバックする。ここで、端末から基地局に通知するチャネル情報は、瞬時のプリアンブル信号を受信して得られるチャネル推定情報でもよいし、プリアンブル信号を何回か受信して得られたチャネル情報を平均値化したものであってもよい。また、プリアンブル信号をタイムスロットで受信できなかった場合は、前回のタイムスロットで受信したときに得たチャネル情報を用いてもよい。
【0041】
続いて、基地局102aは、フィードバックされたチャネル情報Haaを用いて、送信処理によりMIMO通信を行うMIMOデータ信号を生成し、このMIMOデータ信号を送信する。端末103aは、MIMOデータ信号を受信して複数のアンテナに多重された信号を分離する受信処理を行う。このMIMO通信として、例えば固有モード伝送方式が挙げられる。
【0042】
次のタイムスロット#2では、基地局102aは端末103bと上記と同じ手順によって通信(チャネル情報Hab)し、次のタイムスロット#3では基地局102bが端末103cと通信(チャネル情報Hbc)、更に次のタイムスロット#4では基地局102bが端末103dと通信(チャネル情報Hbd)するといった手順で通信をする。この通信方式では、予め通信プロトコルによって、どの基地局がどの時刻に、どの端末と通信を行うか、予めスケジューリングされていることを前提としている。
【0043】
図3に、1つの基地局が複数の端末にSDMA通信して、基地局と基地局の送信時間を時分割するSDMA+TDMA(SDMA−TDMAとも記載する)通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す。タイムスロット#1は、通信プロトコルによって、予め基地局102aに割り当てられているものとする。また、基地局102aには端末103aと、端末103bが通信プロトコルによって従属している(アソシエーションしている)とする。
【0044】
TDMAのタイムスロット#1では、基地局102aはプリアンブル信号を送信し、このプリアンブル信号を受信した端末103aと端末103bは、チャネル情報Haa,Habを推定して、その結果をチャネル情報として基地局102aにフィードバックする。図2で前述したようにチャネル情報については平均化したものや、前回のプリアンブル信号を受信して推定したチャネル情報であってもよい。
【0045】
基地局102aは、得られたチャネル情報Haa,Habを利用して、例えば前記非特許文献2に開示されているようなSDMA送信処理によりSDMAデータ信号を生成し、このSDMAデータ信号を送信する。端末103aと端末103bは、例えば前記非特許文献2に開示されているSDMA受信処理を行うことによって所望の信号を取り出す。
【0046】
次のタイムスロット#2では、基地局102bは端末103cと端末103dと上記と同じ手順によって通信(チャネル情報Hbc,Hbd)する。
【0047】
図4に、複数の基地局が連携して複数の端末にSDMA通信するマルチポイントSDMA(MP−SDMAとも記載する)通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す。
【0048】
TDMAのタイムスロット#1において、基地局制御局101aで、プリアンブル信号を生成して、基地局102aと基地局102bのアンテナを利用してプリアンブル信号を送信する。もしくは、基地局102aと基地局102bで各々プリアンブル信号を生成し、基地局102aが送信する時間と基地局102bが送信する時間を予め通信プロトコルによって決定していてもよい。端末103a,103b,103c,103dは、このプリアンブル信号を受信してチャネル情報Haa,Hab,Hac,Had,Hba,Hbb,Hbc,Hbdを推定する。各端末は、得られたチャネル情報を基地局制御局101aに通知する。図2で前述したようにチャネル情報については平均化したものや、前回のプリアンブル信号を受信して推定したチャネル情報であってもよい。例えば、端末103aは基地局102aに従属しているため、基地局102bから送信されるプリアンブル信号は、受信できずにチャネル情報を取得できない場合もある。その場合は、チャネル情報をなしとするか、前回のチャネル情報を用いるか、平均化したチャネル情報を送付してもよい。
【0049】
基地局制御局101aは、得られたチャネル情報Haa+Hba,Hab+Hbb,Hac+Hbc,Had+Hbdに基づいて、SDMA送信処理(例えば前記非特許文献2に開示)によりSDMAデータ信号を生成して、基地局102aと基地局102bを経由して端末103a,103b,103c,103dに同時にデータ送信する。各端末は、SDMA受信処理(例えば前記非特許文献2に開示)を行うことによって所望の信号を取り出す。
【0050】
図5は、上記のMIMO−TDMAやSDMA−TDMA、マルチポイントSDMAの複数の通信モードを混在させた場合の処理の一例を示している。併せて、フレームの関係も示す。
【0051】
1つのフレーム内で、各通信モードを混在させているが、各通信モード(MIMO−TDMA(又はSIMO:Single Input Multiple Output)、SDMA−TDMA、MP−SDMA)において、通信を行うべきか、行わないべきかを次のように判断する(0:通信しない、1:通信する)。なお、フレーム時間は、端末のアプリケーションの要求遅延時間を満たすようにあらかじめ固定的に決定されているものとする。もしくは、端末アプリケーションが要求する遅延時間の最小値を満たすように動的に決定してもよい。
【0052】
前回のフレームで活用したチャネル情報や、チャネル情報の統計値を利用して、次のフレームも同じようなチャネル情報が得られることを仮定して、次のフレームにおける通信モードの構成を判断する。
【0053】
例えば、端末kが、フレーム全部を使ってMIMO−TDMA通信を行った場合に得られる通信速度をCmimo_kとし、端末の要求速度をR_kとする。全てのkに対して、次の式(1)を満たす場合、フレーム全体にわたりMIMO−TDMA通信のみ行う。
【0054】
Cmimo_k ≧ R_k 式(1)
ここで、送信側のアンテナを1本固定、もしくはランダムに選択した場合、もしくは固有値の最も大きなストリームを持つアンテナを選択して、送信1本、受信N本のSIMO通信を行った場合に得られる通信速度をCsimo_kとした場合、次の式(2)を満たす端末kについては、MIMO信号処理を行わなくても、SIMO通信を与えられたタイムスロットで行ってもよい。
【0055】
Csimo_k ≧ R_k 式(2)
上記の式(1)を満足しない端末がある場合、フレーム全部を使ってSDMA−TDMA通信を行った場合に得られる通信速度をCsdma_kとし、次の式(3)を満たす場合、フレーム全体にわたりSDMA−TDMA通信のみ行う。
【0056】
Csdma_k ≧ R_k 式(3)
もし、式(3)を満たさない場合は、フレーム全体の時間を1としたときのSDMA−TDMA通信の時間比率をαとして、全てのkに対して次の式(4)を満たす場合は、MIMO−TDMA通信とSDMA−TDMA通信をフレーム内で時間比率αで時間分割して運用する。
【0057】
(1−α)×Cmimo_k+α×Csdma_k ≧ R_k 式(4)
もし、式(4)を満たすことができない場合は、フレーム全部を使ってMP−SDMA通信を行った場合に得られる通信速度をCmpsdma_kとし、次の式(5)を満たす場合、フレーム全体にわたりMP−SDMA通信のみ行う。
【0058】
Cmpsdma_k ≧ R_k 式(5)
もし、式(5)を満たさない場合は、フレーム全体の時間を1としたときのSDMA−TDMA通信の時間比率をα、MP−SDMA通信の時間比率をβとして、次の式(6)を満たすαとβを線形計画法などを用いて探索する。満たす解があれば、それぞれの時間比率にて運用する。
【0059】
(1−α−β)×Cmimo_k+α×Csdma_k+β×Cmpsdma_k
≧ R_k 式(6)
このようにして、MIMO−TDMA通信をベースに、SDMA−TDMA通信やMP−SDMA通信を求めることによって、要求される通信速度が小さい場合は、MIMO−TDMA通信、またはSIMO−TDMA通信を行うようにする。これは、各通信モードで必要となるチャネル情報のサイズが、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信、MP−SDMA通信の順に大きくなるため、不要である場合は、できる限り、フィードバック情報量を削減した運用をすることが可能になるためである。
【0060】
ただし、要求通信速度がベストエフォートのようなケースが含まれる場合、要求通信速度Rkを送受信アンテナの全部を利用したときの理論限界とし、式(5)の左辺−右辺が最小化されるような時間比率を求めればよい。
【0061】
図6に、チャネル情報のフィードバックのオーバヘッドがなかった場合で、各通信モードのユーザ当たりの周波数利用効率と送信電力(Power)の関係の一例を示す。送信電力は、各アンテナにのる熱雑音の電力に対して送信アンテナ全部の総送信電力をデシベル表示したものである。チャネルモデルとしては、i.i.dレイリーチャネルモデルを想定した場合であり、図1に示すようにアンテナを4本持つ基地局が2つと、アンテナを2本持つ端末が4つで計算した例である。なお、MP−SDMAのときの送信電力は、基地局が2つの総トータルの送信電力としている。このように、MIMO−TDMA、SDMA−TDMA、MP−SDMAの順に周波数利用効率が高くなっており、前述のように要求速度が遅ければMIMO−TDMAでまかなえるが、要求速度が高くなるにつれて、SDMA−TDMAやMP−SDMAのような処理が必要となってくることが分かる。
【0062】
図7に、チャネル情報の一例を示す。無線LANのIEEE802.11nで非圧縮のチャネル情報の例である。
【0063】
受信アンテナ数を2本とすると、最初に各アンテナのSNRを8ビットで表す。続いて、OFDM信号の各サブキャリア毎のチャネル情報(H11)が記載されている。最初の3bitは、チャネル全体にかかる振幅ゲインを表す。受信したときに、受信したプリアンブル信号の総送信アンテナ数(Ntx)×受信アンテナ数2の行列が、複素数の実数部と虚数部で、8bitずつ割り当てられている。このチャネル行列がサブキャリア数分(f1〜f_L)ある。このようなチャネル情報では、送信アンテナ数が増えるとチャネル情報のサイズが増える。
【0064】
図1の例を用いると、MIMO−TDMAやSDMA−TDMA通信モードでは、送信アンテナ数は4本であるが、MP−SDMA通信モードでは送信アンテナ数が8本となり、チャネル情報は倍に膨れ上がる。IEEE802.11n規格でも、このチャネル情報を圧縮するための方法があるが、圧縮した分、フィードバックするチャネル情報には誤差が載ることになる。また、WiMAXやLTEといったセルラ系の標準規格ではコードブックを用いて、チャネル情報を送信側と受信側で予め共有しておき、受信側で得られたチャネル情報のどれが最も近いか判定して送信側に送り返す手法がある。この場合も、チャネル情報の劣化が生じている。
【0065】
図8に、各通信モードにおけるチャネル情報のフィードバック量とユーザ当たりの周波数利用効率の特性の一例を示す。各端末から、同じチャネル情報量をフィードバックしたとしても、MIMO−TDMAでは1端末分のチャネル情報を収集するのに対し、SDMA−TDMAでは1基地局は2端末分のチャネル情報を収集し、MP−SDMAでは4端末分のチャネル情報を収集するため、1回の通信を行うためにチャネル情報を収集するオーバヘッドが大きくなっていく。加えて、MP−SDMAでは隣接する基地局からのチャネル情報もあり、チャネル情報も大きいため、実効的に通信できる時間が小さくなり、チャネル情報量が大きいほど、周波数利用効率の劣化の度合いが大きい。
【0066】
図9は、本発明の実施の形態における拡張プリアンブル信号の一例を示す。図2から図4では、チャネル情報を端末で求めるためのプリアンブル信号を記載しているが、図9の拡張プリアンブル信号に置き換えることによって、チャネル情報そのものの測定結果を返さなくてもよくなるケースを作り出すことができる。従来のプリアンブル信号の例と同様に、スキャッタード型で、固定パターンのプリアンブル信号をシンボル毎にアンテナを変えて送信する。各アンテナから同時に出すスペースタイムコード型で出してもよい。
【0067】
続いて、端末がチャネル情報をフィードバックするか否かを判断するために必要なフィードバック判断情報を載せて送信する。まず、アンテナ番号#1からフィードバック判断情報を送信し、受信側ではMIMOやSDMAの信号処理を行わず、従来の方法で受信処理をする。次のフレームでは、フィードバック判断情報をアンテナ番号#2を用いて送信している様子を示している。この例では、受信側ではMIMOやSDMAの信号処理を行わないとしたが、前のフレームでMIMOやSDMAの信号処理が行われている場合は、前のフレームで用いた信号処理を用いれば、アンテナ全部を用いてフィードバック判断情報を載せて送信してもよい。
【0068】
図10に、フィードバック判断情報のフォーマットの一例を示す。併せて、情報要素の例を示している。フィードバック判断情報のフォーマットには、フィードバックモード、基地局ID/基地局制御局ID、基地局利用チャネル情報、フィードバック判断種別、フィードバック判断閾値、端末ID、利用チャネルIDなどのフィールドがある。
【0069】
フィードバックモードは、プリアンブル信号を受信した端末が、どういった形でチャネル情報をフィードバックするかを指定するフィールドである。例えば、1が指定されていれば、端末が従属する基地局の送信アンテナから出たチャネル情報のみをフィードバックする。MIMO−TDMAやSDMA−TDMA通信モードのときに利用する。2が指定されていた場合には、端末で受信することができる全ての基地局から送信されているプリアンブル信号を受信して、そのチャネル情報をフィードバックする。これによって、マルチポイントMIMOの処理が可能になる。
【0070】
3が指定されていた場合、フィードバック判断種別とフィードバック判断閾値のフィールドに記載された条件を満たしているかどうかで、チャネル情報のOKかNGを判断し、OKかNGの1ビットの情報をフィードバックする。4が指定されていた場合、3と同様であるが、チャネル情報のNGがあったときのみチャネル情報NGの1ビット情報をフィードバックする。3や4を指定することによって、チャネル情報に問題がない場合は、フィードバックの情報量を大幅に削減することができる。
【0071】
フィードバック判断種別には、1が設定されていた場合は、チャネル相関係数を判断基準として、基地局が利用しているチャネル情報とプリアンブル信号を受信して得られたチャネル情報をもとに基地局利用チャネルを推定したチャネル推定結果との相関係数で判断する。具体的な判断の値は、フィードバック判断閾値に記載されている。例えば、相関係数がA=0.9より大であればチャネル情報をOKと判断し、A=0.9以下であれば、チャネル情報をNGと判断する。フィードバック判断種別は、チャネル相関係数以外にも、例えば復号結果の誤り率(2が設定)として、フィードバック判断閾値としてB=3として復号誤り率BER>10^−3の場合には、チャネル情報をNGと判断し、それ以外をチャネル情報OKと判断してもよい。
【0072】
他にもフィードバック判断種別としては、プリアンブル信号やデータ信号の受信強度(RSSI)や、ドップラー周波数、端末の移動速度などとしてもよい。つまり、受信電力が低かったり、高速移動でチャネル情報の変動が激しかったりするような環境であれば、MIMOやSDMAに使うことがふさわしくないことを判断し、その場合に自動的にチャネル情報のフィードバック量を削減することを可能にする。
【0073】
フィードバック判断種別にチャネル相関係数を指定した場合、基地局が利用しているチャネル情報の求め方として、基地局利用チャネル情報のフィールドから読み取る。このフィールドに1が指定されている場合は、単純に端末が最後に基地局に報告したチャネル情報を基地局が使っているものと見なす。2が指定されている場合には、基地局側で非特許文献5に開示されている方法など用いて、端末の受信チャネルの状態を推定トラッキング処理を行っているものと想定し、端末も同じアルゴリズムでチャネル推定トラッキングして得られた結果を基地局が利用していると見なす。
【0074】
3が指定されていた場合には、例えば基地局と端末が双方で同じチャネルデータベースを持っているものとして、基地局が利用したチャネルのインデックスをIDとして通知することによって、基地局が利用しているチャネル情報を知ることができる。この場合、端末ごとに何を利用しているかIDが異なるため、端末IDと利用チャネルIDのセットをフィールドとして持つ。また、基地局と端末で同じチャネルデータベースは、前述のコードブックのように事前に計算されたものでもよいし、端末が報告したチャネル情報に対して、基地局がIDを付与するようなプロトコルを追加することにより、双方でチャネル情報のデータベースを作成してもよい。
【0075】
図11に、本発明の実施の形態における制御シーケンスの一例(マルチポイントSDMAとMIMO−TDMAの混在)を示す。既に、全部の端末のチャネル情報を前のフレームにて取得している状態からスタートしており、MP−SDMAの通信が行われている状態からの例を示している。
【0076】
MP−SDMAのタイムスロット#1で、基地局制御局101aは、チャネル情報をフィードバックするか否かを判断する材料を載せた拡張プリアンブル信号を、まず基地局102aを経由で送信し、各端末103a,103b,103c,103dはチャネル推定処理によってチャネル情報Haa,Hab,Hac,Hadを蓄積する。次に、同様にして拡張プリアンブル信号を基地局102bを経由で送信し、各端末103a,103b,103c,103dでチャネル情報Hba,Hbb,Hbc,Hbdを測定して蓄積する。各端末103a,103b,103c,103dは、これらのチャネル情報をベースとして、図10で説明したように基地局で利用しているチャネル情報が利用していてOKであるか、NGであるかを基地局制御局101aに通知する。例えば、端末103dのみがチャネル情報NGとする。基地局制御局101aは、端末103dに対してはチャネル情報を活用できないことを把握し、残りの端末103a,103b,103cに対するSDMAデータ信号を生成して送信する。
【0077】
端末103dに対しては、このままでは要求速度を満たせないことになるため、次のタイムスロット#2で拡張プリアンブル信号を送信し、端末103dで測定した結果のチャネル情報Hbdを基地局制御局101aに通知してもらう。このとき、MIMO−TDMAベースの信号処理によって、MIMOデータ信号を送信して、端末103dで受信する。
【0078】
次のフレームでは、端末103dからアップデートされたチャネル情報を活用してMP−SDMAを活用してもよいかどうか、同様にしてチャネル情報OKかNGかをヒアリングする。このようにして、何度か繰り返すうちに、チャネル情報NGを繰り返し通知してくる端末は、MP−SDMAの処理に不向きなチャネル情報を持つ傾向があるとして、MIMO−TDMAもしくはSDMA−TDMAの候補としていく。
【0079】
チャネル情報のうち、隣接基地局に対するチャネル情報の変動が激しい場合は、その端末はMP−SDMAの処理が不向きであり、またSDMA−TDMAを行っても、SDMAグループに含まれる他の端末とのチャネル情報の相関などに変動が激しい場合はSDMA−TDMAも不向きであり、MIMO−TDMAが望ましい。
【0080】
図12に、本発明の実施の形態におけるマルチポイントSDMA通信への移行や解除の動的な運用に関する制御シーケンスの一例を示す。
【0081】
端末103a,103b,103c,103dからの要求速度が小さい場合は、基地局102a,102bは従属する端末とSDMA−TDMA通信、もしくはMIMO−TDMA通信、もしくはSIMO−TDMA通信を行うことで、要求速度を満たしている。この場合、同一の周波数リソースを基地局102aと基地局102bで活用している場合は、基地局102aと102bとで時分割によって通信を行う。
【0082】
端末の要求速度を満たしていれば、上記の通信を継続するが、ここで、例えば基地局102bに従属する端末103bが要求速度を未達成であることが検出された場合、基地局102bから基地局制御局101aに対してMP−SDMA要求の制御メッセージを送信し、要求速度未達だった端末が周囲に見えている基地局などの情報をもとにして、基地局制御局101aは、基地局102a,102bにMP−SDMA開始通知の制御メッセージを送付することによって、基地局制御局101aが主導によるMP−SDMA通信、またはSDMA−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SIMO−TDMA通信を行う。
【0083】
もし、MP−SDMA通信を行っても、端末の要求速度を満たすことができなかった場合は、基地局制御局101aはリソース不足と判断し、端末が持っている接続維持の優先度情報などから、優先度の低い端末を切り離して、システム全体で要求速度を満足する端末を決定する。切り離される端末には、接続拒否通知の制御メッセージが通知され、リンクが切断される。切断された端末は、ある一定時間待機した後、再度、接続要求を試みるが、基地局制御局101aは、新しい接続要求に対して、システム容量が提供できるマージンが十分でない場合には、接続拒否を行い、マージンが十分ある場合は受け入れる。
【0084】
また、MP−SDMA通信をしなくても、端末の要求速度が満足される状態が連続してNスロット続く場合は、基地局制御局101aはMP−SDMAを不要と判断し、MP−SDMA解除通知を基地局102a,102bに通知することによって、基地局102a,102bは従属する端末に対してSDMA−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SIMO−TDMA通信を行う。
【0085】
図13に、本発明の実施の形態における基地局の制御アルゴリズムの一例を示す。
【0086】
まず、はじめに、基地局に従属している端末からチャネル情報を収集する(Step1)。収集したチャネル情報と、各端末の要求速度から、前述の式(1)から式(4)を用いて、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信を決定する(Step2)。従属している端末の推定速度が要求速度を満足しているか判定し(Step3)、もし、満足していない場合(No)は、基地局制御局にMP−SDMA処理要求の制御メッセージを送信して(Step4)、基地局制御局からMP−SDMA解除待ち状態に入る。基地局制御局からMP−SDMA通信の解除通知を制御メッセージで受け取ると、最初(Step1)の端末チャネル情報収集から再開する。
【0087】
もし、Step3の判定の結果、従属端末全てが、式(1)から式(4)を満たしていて推定速度が要求速度を満たす場合(Yes)は、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信を行う場合は、基地局は従属端末と選択された方式で通信を行う(Step5)。実際の速度が要求速度を満足するまで、Step1からの処理を繰り返す(Step6)。もしくは、実際の速度が要求速度を満足している端末の割合が100%でなかった場合においても、あらかじめ決められた割合を超えていればStep7に移ってもよい。選択された通信を行った次のタイムスロットでは、まず、拡張プリアンブルによって、現在、基地局が用いているチャネル情報でOKかNGかを端末に判断させて、その判断結果の情報を収集する(Step7)。
【0088】
そして、端末を1つ選択して(Step8)、その端末のチャネル情報がOKかを調べる(Step9)。チャネル情報がNGであれば(No)、その端末に対して、MIMOやSDMA通信を行っても効果がないものと判断し、送信側でチャネル情報を不要としたTDMA通信の候補として記憶する(Step11)。例えば、端末側で、最大比合成のダイバーシティのみ行うSIMO−TDMA通信などを行う。
【0089】
チャネル情報がOKであれば(Yes)、その端末は、SDMA−TDMA通信やMIMO−TDMA通信の候補として記憶する(Step10)。全ての端末について、通信の候補を記憶するまで、Step8からの処理を繰り返す(Step12)。記憶された通信の候補をベースとして、チャネル情報OKの端末は、式(1)から式(4)に基づいてSIMO−TDMA通信かMIMO−TDMA通信かSDMA−TDMA通信のいずれかを決定する(Step13)。この計算量を削減する別の実施の形態について説明する。
【0090】
前回のタイムスロットでの通信モードを参照して、例えば前回はSDMA−TDMA通信を行っていた場合、SDMAを構成するグループに属する端末全てのチャネル情報がOKであればSDMA−TDMA通信を継続すると判断してもよい。同様に、前回MIMO−TDMA通信を行っていた場合は、チャネル情報OKであれば、今回もMIMO−TDMA通信を継続すると決め、チャネル情報がOKである限り、前回のタイムスロットで行った通信モードを引き継ぐ。
【0091】
このようにして決定された通信モードに対して、チャネル情報OKの端末の推定速度が要求速度を満足しているかどうかを判定する(Step14)。具体的には、式(1)から式(4)を満たしているかどうかを判定する。もし、チャネル情報OKの端末の推定速度が要求速度を満たしていなければ(No)、最初のStep1に戻る。チャネル情報OKの端末の推定速度が要求速度を満たしていれば(Yes)、Step5に戻り、チャネル情報OKとNGの全ての端末に対して選択された通信モードで通信する。ここにおいても、チャネル情報OKの端末の推定速度が要求速度を満足している割合が100%でなくても、あらかじめ決められた割合を越えていれば、Step8に戻るものとしてもよい。
【0092】
図14に、本発明の実施の形態における基地局制御局の制御アルゴリズムの一例を示す。基地局制御局は、基地局からのMP−SDMA要求待ちをしている。
【0093】
基地局からMP−SDMA要求が来たら、その要求があった基地局に従属している端末が受信しているプリアンブル信号に記載されている基地局IDをベースとして、関連する基地局に対して、MP−SDMA開始通知を発行する(Step1)。各基地局は、MP−SDMA開始通知を受信すると、基地局制御局からの信号をダイレクトにアンテナに送信することができるように切り替えを行う。
【0094】
続いて、関連する基地局からプリアンブル信号を送信して、各端末からチャネル情報を収集する(Step2)。集められたチャネル情報をもとにして、式(1)から式(6)を用いて、各端末の要求速度に応じてSIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信、MP−SDMA通信の通信モードを決定する(Step3)。
【0095】
端末全ての推定速度が、要求速度を満足しているかどうかを調べる(Step4)。もし、満足していな端末があった場合(No)は、要求未達成の端末に対して接続拒否の通知を行う(Step5)。この端末を選ぶ方法としては、単純に速度未達成の端末全てに接続拒否を行って、次のStep6に進んでもよい。
【0096】
もしくは、端末ごとにプライオリティを予め認証プロトコルなどで決めておき、この優先度の低い端末から順に接続拒否を行い、その端末を接続しない状態でStep3の通信モードを再計算して、Step4で推定速度が要求速度を満足していないものがなくなるまでStep3からStep5のループを回してもよい。もしくは、上記のプライオリティとしては、推定速度と要求速度の乖離の大きさを用いてもよい。乖離の大きい端末から順に接続拒否をしてもよいし、乖離の小さい端末から順に接続拒否を行ってもよい。
【0097】
次に、要求達成する端末に対して選択された通信方式で通信する(Step6)。続いて、MP−SDMA通信が、選択された方式としてあるかないかをチェックする(Step7)。例えば、連続N回、MP−SDMA通信を行わなくても、SDMA−TDMA通信やMIMO−TDMA通信、SIMO−TDMA通信で端末の要求速度を満足することが分かった場合(No)は、MP−SDMAが不要と判断し、各基地局にMP−SDMA解除通知を送信して(Step8)、MP−SDMA要求待ちに戻る。
【0098】
MP−SDMA通信が必要であると判断した場合(Yes)は、Step6で通信した結果をもって、実際の通信速度が要求速度を満足していたかどうかをチェックする(Step9)。実際の通信速度が満足していない場合(No)は、Step2に戻る。
【0099】
実際の通信速度が要求速度を満足している場合(Yes)には、次のタイムスロットでは基地局制御局が保持しているチャネル情報でOKかNGかを判断して通信することで、フィードバック量の削減を図る。具体的には、拡張プリアンブル信号を用いて、端末からチャネル情報OKかNGかを収集する(Step10)。
【0100】
ここで、実際の通信速度が要求速度を満足している割合が100%でなくても、あらかじめ決められた割合を越えていればStep10に進み、そうでなければStep2に進むものとしてもよい。
【0101】
端末を1つ選択し(Step11)、その端末のチャネル情報がOKかを調べる(Step12)。OKであれば(Yes)、MP−SDMA通信、SDMA−TDMA通信、MIMO−TDMA通信の候補として記憶する(Step13)。
【0102】
チャネル情報がNGの場合(No)には、その端末に関しては、送信側でチャネル情報を知らなくてもよい通信方式のTDMA通信候補として記憶する(Step14)。例えば、SIMO−TDMA通信で、受信側はアンテナダイバーシティにより最大比もしくは選択合成を行う通信の候補などが挙げられる。
【0103】
全ての端末について調べたかどうかをチェックし(Step15)、まだ調べていない端末があれば(No)、Step11に戻る。全ての端末について調べていれば(Yes)、チャネル情報OKの端末に対して、式(1)から式(6)を満たしているかどうかを計算することによって、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信、MP−SDMA通信を決定する(Step16)。
【0104】
各通信方式によって、チャネル情報OKの端末に対して推定速度が要求速度を満足しているかどうかを調べる(Step17)。推定速度が要求速度を満足していれば(Yes)、Step6に戻って、端末と選択された方式で通信を行う。もし、推定速度が要求速度を満足していない場合(No)は、Step2に戻って端末からチャネル情報を収集する。
【0105】
ここで、チャネル情報OKの端末に対して推定速度が要求速度を満足している割合が100%でなくても、あらかじめ決められた割合を越えていればStep6に戻って、そうでなければStep2に戻るとしてもよい。
【0106】
図15に、本発明の実施の形態における基地局の構成の一例を示す。基地局102(図1の102a,102bに対応)は、アンテナ1501(1501a〜1501d)と、無線部1502と、モデム部1506と、制御部1522と、局間インタフェース1527とからなる。
【0107】
無線部1502は、アンテナ1501に接続された送受信切り替え機能を持つ共用器1503(1503a〜1503d)と、共用器1503に接続された受信部1504(1504a〜1504d)および送信部1505(1505a〜1505d)からなる。受信部1504i(i=a〜d)は、アンテナ1501iからの受信信号をフィルタリング処理し、ベースバンド帯域のアナログ信号に変換した後、ディジタル信号に変換(A/D変換)して、モデム部1506に出力する。一方、送信部1505i(i=a〜d)は、モデム部1506から出力されたディジタル信号をアナログ信号に変換(D/A変換)し、周波数帯域の変換と電力増幅を行った後、共用器1503iに出力する。
【0108】
モデム部1506は、受信信号スイッチ1507と、送信信号スイッチ1508と、受信器1509と、送信器1516と、拡張プリアンブル生成部1515と、パラレルシリアル(P/S)変換回路1514と、シリアルパラレル(S/P)変換回路1521とからなる。
【0109】
受信信号スイッチ1507は、無線部1502の出力である受信信号を、基地局内部の受信器1509で処理するか、それとも局間インタフェース1527を介して基地局制御局にそのまま受信信号をスルーで通知するかを切り替えるためのスイッチとして機能する。
【0110】
受信信号をスルーで基地局制御局に通知する場合は、パラレルシリアル変換回路1514でシリアル信号に変換した後、局間インタフェース1527の局間送信処理部1528で基地局と基地局制御局間の通信方式に合った信号に変換されて通知することになる。基地局と基地局制御局間は光通信モジュールでつながれていたり、イーサ、もしくは専用線であってもよい。
【0111】
受信器1509は、復調器1510と、パラレルシリアル変換回路1511と、誤り訂正復号器1512と、データ制御信号分離回路1513とからなる。受信器1509で受信信号を信号処理する場合は、復調器1510でSIMOまたはMIMO、SDMAの復調処理を行う。SIMOの復調では、例えば最大比合成した信号をOFDMで復調する。MIMO信号処理の例では、固有モード伝送の復調処理を行ったり、Zero Forcing、MMSE(Minimum Mean Square Error)やMLDの復調処理を行う。SDMAの場合も、Block DiagonalizationやTomlinson Harashima Precodingなどのよく知られた復調処理を行う。
【0112】
復調器1510で出力されたストリーム信号をパラレルシリアル変換回路1511によってシリアル信号に戻し、このシリアル信号に対して誤り訂正復号器1512で誤り訂正を行う。誤り訂正処理としては、ビタビ復号やターボ復号、LDPC復号などの方法を用いてもよい。データ制御信号分離回路1513で、復号された受信信号がデータ通信のデータなのか、シグナリングプロトコルに用いる制御信号なのかをヘッダ部分を調べることによって判別し、制御信号は制御部1522に出力し、データ信号であれば、局間インタフェース1527に出力して、局間送信処理部1528で変換されて基地局制御局、もしくはデータを受信する他のルータなどの装置にデータ送信される。
【0113】
送信信号スイッチ1508は、送信器1516の出力信号と、局間インタフェース1527を経由して基地局制御局から来た信号をシリアルパラレル変換回路1521でシリアルパラレル変換して出力した信号とを切り替える。マルチポイントSDMA通信を扱うときは、基地局制御局に切り替える。
【0114】
拡張プリアンブル生成部1515は、制御部1522からフィードバック判断情報を得て、この情報をプリアンブル信号に追加して、図9で説明した拡張プリアンブル信号を生成する。特に、フィードバック判断情報を追記する必要がない場合は、プリアンブル信号のみを生成する。
【0115】
送信器1516は、変調器1517と、シリアルパラレル変換回路1518と、誤り訂正符号器1519と、多重化回路1520とからなる。制御信号とデータ信号は、多重化回路1520で多重化され、誤り訂正符号器1519では受信側で誤り訂正を行うことができるように符号化処理を行う。符号化処理は、ビタビ符号や、ターボ符号、LDPC符号などであってもよい。この例では、誤り訂正符号器1519の出力をシリアルパラレル変換回路1518によって、4本のデータストリームに分離して、変調器1517でSIMO、またはMIMO、SDMAでOFDMベースの変調処理を行う。前述の復調処理で説明したような変調処理を行い、端末の受信器の復調処理と同じ通信方式で変調する。変調処理では、基地局と端末間のチャネル情報を用いて信号処理を行うが、制御部1522で保持しているチャネル情報データ1525が、物理メモリ上に保存されており、これにアクセスすることで、チャネル情報を取り出し、このチャネル情報から送信ウェイト行列などの計算を行う。
【0116】
制御部1522は、制御信号処理部1523と、フィードバック判断情報生成部1524と、チャネル推定トラッキング処理部1526とで構成される。この制御部1522が扱うデータとしては、チャネル情報データ1525のデータベースがある。
【0117】
制御信号処理部1523は、前述の図13の制御アルゴリズムを実行し、図2,3,4,11,12に示す制御フローを実行する。フィードバック判断情報生成部1524は、制御信号処理部1523の状態に応じて、図10のフィードバック判断情報を生成する。例えば、基地局が全ての端末からチャネル情報を収集する場合のフィードバックモードを決定したり、チャネル情報でOKかNGのみを収集する場合には、そのフィードバックモードを決定する。また、チャネル情報データ1525のデータベースを参照して、図10の端末IDや利用チャネルIDなどを決定する。その他の要素については、基地局が起動したときに、不揮発メモリなどに蓄えられている設定情報を参照することによって値が決まる。
【0118】
チャネル情報データ1525は、端末ごとにチャネル情報を蓄えており、基地局のアンテナ数N本、端末のアンテナ数M本とすると、N×Mの行列を1つのチャネル情報とし、このチャネル情報をL個分蓄えている構成をとっている。各行列の要素は、チャネルインパルスレスポンスであり、IQ信号を複素数で表現したものである。
【0119】
チャネル推定トラッキング処理部1526は、過去に基地局が用いたチャネル情報が、現時点でどのような状態になっているかを推定し、この推定結果の情報をチャネル情報データ1525に追加して戻す。推定アルゴリズムとしては、例えば時間的変動要因がJake’s Modelに従うと仮定した場合、チャネル変動の予測フィルタ重み付け計算をする手法などが知られており、この手法に従って予測した結果を計算する。なお、チャネル推定トラッキング処理部1526がない構成であってもよい。予測のための重み付けフィルタを用いた推定結果と、時折、収集するチャネル情報との差分を最小にするように重み付けフィルタを学習的に再構築してもよい。
【0120】
局間インタフェース1527は、データ制御信号分離回路1529と、局間送信処理部1528と、局間信号受信処理部1530とからなる。局間送信処理部1528は、モデム部1506のパラレルシリアル変換回路1514の出力や、受信器1509の出力のデータ信号や、制御部1522からの制御信号などを多重化して、基地局制御局や他の通信機器に対して信号を送信する。局間信号受信処理部1530は、基地局制御局から来た信号や、他の通信機器から受けた信号に対する受信信号処理を行った後、データ制御信号分離回路1529にてデータ信号と制御信号を分離し、データ信号についてはモデム部1506に、制御信号については制御部1522に受け渡す。
【0121】
図16に、本発明の実施の形態における基地局制御局の構成の一例を示す。基地局制御局101(図1の101aに対応)は、局間インタフェース1601と、モデム部1609と、制御部1623とからなる。
【0122】
局間インタフェース1601は、局間信号受信処理部1602と、局間信号送信処理部1603と、受信信号スイッチ1604と、送信信号スイッチ1605と、シリアルパラレル変換回路1606と、データ制御信号分離回路1607と、パラレルシリアル変換回路1608とからなる。
【0123】
基地局から受信した信号は、局間信号受信処理部1602で処理され、受信信号スイッチ1604にてモデム部1609の受信器1610を使う信号か、その必要のない信号かを分離する。基地局102の代わりに無線区間の復調や復号信号処理を基地局制御局101で行うときは、受信器1610が必要となる。
【0124】
局間インタフェース1601の受信信号スイッチ1604でデータ制御信号分離回路1607に出力された信号は、データ制御信号分離回路1607において、ヘッダ情報を解析することによって制御信号かデータ信号かを分離し、制御信号は制御部1623の制御信号処理部1624に出力する。データ信号である場合は、モデム部1609のデータ信号スイッチ1621に信号を受け渡す。受け渡された信号は、データ信号スイッチ1621によって、そのまま局間インタフェース1601の送信信号スイッチ1605に折り返し信号として受け渡す場合もあれば、無線区間に変調をかけて送信するためにモデム部1609の送信器1616に引き渡す場合などがある。送信信号スイッチ1605は、モデム部1609のデータ信号スイッチ1621で折り返された信号や、モデム部1609の送信器1616にて変調された信号をパラレルシリアル変換回路1608でシリアル信号にされた信号を選択し、局間信号送信処理部1603に渡す。局間信号送信処理部1603は、受け取った信号を、基地局や他の通信機器へデータ信号や制御信号として送信する。
【0125】
モデム部1609は、受信器1610と、送信器1616と、拡張プリアンブル生成部1615と、データ信号スイッチ1621と、制御信号スイッチ1622とからなる。受信器1610と送信器1616は、基本的に基地局102の受信器1509や送信器1516と同様の機能を持っている。すなわち、受信器1610は、復調器1611、パラレルシリアル変換回路1612、誤り訂正復号器1613、データ制御信号分離回路1614からなる。また、送信器1616は、変調器1617、シリアルパラレル変換回路1618、誤り訂正符号器1619、多重化回路1620からなる。複数の基地局のアンテナ総数分に相当してシリアルパラレル変換やパラレルシリアル変換の並列度を高くしている点が異なる。
【0126】
制御部1623は、制御信号処理部1624と、フィードバック判断情報生成部1625と、チャネル推定トラッキング処理部1627とからなる。この制御部1623が扱うデータとしては、チャネル情報データ1626のデータベースがある。
【0127】
制御信号処理部1624は、図14で説明した制御アルゴリズムの動作を行い、図2,3,4,11,12に示す制御フローを実行する。制御信号処理部1624が扱う制御信号としては、モデム部1609の受信器1610を介して得た信号や、局間インタフェース1601のデータ制御信号分離回路1607から来た信号などを受信する。マルチポイントSDMA処理を行っている場合は、モデム部1609の受信器1610などを必要とするが、基地局102の制御部1522から送信される制御信号は、後者のデータ制御信号分離回路1607経由で制御部1623に届けられる。制御部1623の制御信号処理部1624で生成された制御信号は、モデム部1609の制御信号スイッチ1622を介して、送信器1616に出力したり、直接、局間インタフェース1601の送信信号スイッチ1605に出力して受け渡される。
【0128】
チャネル情報データ1626やフィードバック判断情報生成部1625、チャネル推定トラッキング処理部1627は、基地局で説明したものと同等の機能を持つ。フィードバック判断情報生成部1625で生成した情報をもとに、拡張プリアンブル生成部1615で拡張プリアンブル信号を生成し、各基地局を経由して拡張プリアンブル信号を送信する。
【0129】
図17に、本発明の実施の形態における端末の構成の一例を示す。端末103(図1の103a〜103dに対応)は、アンテナ1701a,1701bと、無線部1702と、モデム部1706と、制御部1718と、外部インタフェース1724とからなる。
【0130】
無線部1702は、基地局102で説明したものと同様の機能を持つブロック構成となっている。すなわち、無線部1702は、共用器1703a,1703b、受信部1704a,1704b、送信部1705a,1705bからなる。図17の例ではアンテナ本数が2本である場合の例を書いてあるが、4本の場合は基地局と同じ構成になる。
【0131】
モデム部1706は、受信器1707と、送信器1713とからなる。受信器1707は、基地局にある受信器1509と基本的に同じ構成である。すなわち、受信器1707は、復調器1709、パラレルシリアル変換回路1710、誤り訂正復号器1711、データ信号分離回路1712からなる。復調器1709が、復調処理を行うためには、プリアンブル信号を受信した際に、チャネル推定を行う。このチャネル推定結果を制御部1718のチャネル情報データ1721として蓄積する。
【0132】
送信器1713も、基地局の送信器1516と同じ構成である。すなわち、送信器1713は、変調器1714、シリアルパラレル変換回路1715、誤り訂正符号器1716、多重化回路1717からなる。
【0133】
制御部1718は、制御信号処理部1719と、チャネル情報判定処理部1720と、チャネル推定トラッキング処理部1722とからなる。制御部1718が扱うデータとしては、チャネル情報データ1721と、復号誤り率データ1723のデータベースがある。チャネル情報データ1721は、復調器1709のチャネル推定結果をデータベースとして蓄積する。このデータに対して、時間的変動を推測するのがチャネル推定トラッキング処理部1722であり、基地局のチャネル推定トラッキング処理部1526と同じ動作をする。また、基地局と同じ結果を得るためにも、予測のための重み付けフィルタは基地局に揃えておく必要がある。これは基地局と端末間で予め、プロトコルで揃っているものとする。また、チャネル推定トラッキング処理部1722がない構成であってもよい。
【0134】
制御信号処理部1719は、図2,3,4,11,12に示す制御フローを実行する。基地局が指定するフィードバック判断情報に従って、チャネル情報を基地局に通知したり、チャネル情報がOKかNGかの判定結果を通知すればよい。
【0135】
チャネル情報がOKかNGかを判定する方法を以下に示す。まず、図10のフィードバック判断情報のフォーマットからフィードバック判断種別とフィードバック判断閾値を抽出する。フィードバック判断種別で、チャネル相関係数が指定されていた場合は、次のように相関係数を求め、閾値との比較によって判断を行う。具体的には、チャネル情報データ1721を参照することによって、最新のプリアンブル信号に対して復調器1709が出力したチャネル推定結果と基地局で利用しているチャネル情報とを参照し、例えば、時刻tにおけるOFDM信号のサブキャリアkにおけるチャネル推定結果の応答行列のi行j列成分をHijk(t)とし、基地局で利用しているチャネル情報として、時刻t−τの情報をHijk(t−τ)とした場合、次の式(7)によって相関係数を計算し、相関係数が閾値以上ならばOK、それ以外ならばNGを通知する。
【0136】
【数1】
【0137】
ここで、A[*]は、時刻tから過去に遡って得られたデータに対してN個のサンプルを用いて、Nサンプルの標本平均を表すものとする。ここで、H’は、チャネルHに対する複素共役転置行列を表すものとする。
【0138】
次に、図10のフィードバック判断種別が復号誤り率を指定していた場合におけるチャネル情報のOK、NGの判断方法について述べる。この場合、復号誤り率データ1723を参照する。復号誤り率は、外部インタフェース1724にある復号誤り率測定部1725によって測定される。この測定方法としては、CRC判定を行ってフレーム単位であっているかどうかのフレーム誤り率を計算し、その結果を通知する。これ以外の測定方法としては、既知のパターンをデータ信号の中に埋め込んでおき、そのパターン結果と復号結果とのずれた数を計算する方法もある。もしくは、復号されたデータ信号を再度符号化し、符号化されたデータと誤り訂正復号器の入力との差を求めて誤り訂正を行ったbit数を用いて誤り率のデータとしてもよい。このようにして判断されたデータの誤り率を、フィードバック判断閾値と比較することによって、誤り率が閾値より大きければ、チャネル情報をNGと判断し、閾値よりも小さければチャネル情報をOKと判断する。
【0139】
外部インタフェース1724は、例えば端末における入出力デバイスとして、例えばマイクやスピーカなどに接続するインタフェースを持つ。音声端末の場合は、コーデック1726の処理を搭載しており、モデム部1706とデータのやり取りを行う。
【0140】
図18に、本発明の別の実施の形態における制御シーケンスの一例(端末が送信する信号でチャネル情報を基地局が測定する例)を示す。前述の実施の形態では、基地局のプリアンブル信号を受信した端末がチャネル推定を行って、チャネル情報を得て、その情報を基地局に通知したり、チャネル情報がOKかNGかを判断する機能を端末に持たせていたが、図18に示す別の実施の形態は、この機能を基地局に持たせた場合の例である。基地局にも復調器1510(図15)があるので、チャネル推定結果を用いれば同様のことができる。
【0141】
まず、チャネル情報収集期間において、基地局102aからプリアンブル信号要求の制御メッセージを通知する。このとき、拡張プリアンブルを用いて、端末103a,103b,103c,103d側がチャネル情報OK、NGを判断したものと同様の判断を下し、チャネル情報OKと判断した場合にのみ、端末からプリアンブル信号を送信するというプリアンブル送信判定処理を行う。このプリアンブル送信判定処理をせずに、全部の端末から順にプリアンブル信号を送信することとしてもよい。ただし、収容する端末数が多い場合は、比較的、チャネル情報OKの端末に予め絞ってプリアンブル信号を送信した方が、トータルでプリアンブル信号を基地局が受ける時間が短くて済む。
【0142】
例えば、端末103aが、プリアンブル送信判定でプリアンブル信号を送信すると決定したら、送信する周波数を変更する。基地局から端末への下り信号と、端末から基地局の上り信号で同じ周波数を用いるTDD(Time Division Duplex)システムであれば、周波数を変更しなくてもよい。上り信号と下り信号で異なる周波数を用いるFDD(Frequency Division Duplex)システムでは、下り信号で活用するチャネル情報を知るためには、端末が周波数を下り信号で用いている信号に変更してからプリアンブル信号を送信すれば、そのプリアンブル信号を受信した基地局は下り信号のチャネル情報と同じチャネル推定結果が得られる。同様にして、端末103b,103c,103dからもプリアンブル信号を送信し、チャネル推定によって最新のチャネル情報を収集する。
【0143】
次に、タイムスロット#1(MP−SDMA)において、チャネル情報収集期間で得られたチャネル情報と、基地局が活用しているチャネル情報との相関係数を式(7)によって求めることによって、相関係数が閾値以上ならばチャネル情報OK、それ以外ならばNGと判断して、基地局102a,102bの間でチャネル情報がOK/NGの結果を情報交換する。チャネル情報OKの情報を用いて、MP−SDMAの送信処理を行って、各端末にSDMAデータ信号を送信する。このとき、基地局102aは、収容している従属端末以外からのチャネル情報も収集しているため、基地局102aで閉じてMP−SDMAの信号処理を行うことが可能となり、基地局制御局101aを介さないでも信号処理を行うことが可能になる。もちろん、MP−SDMAの信号処理を基地局制御局101aで行う形態も可能である。
【0144】
図19に、本発明の別の実施の形態における基地局が自律的にマルチポイントSDMA通信を決定する場合の制御シーケンスの一例を示す。
【0145】
このシーケンスでは、チャネル情報収集期間において、基地局102aから端末103a,103b,103c,103dへの下り信号の周波数で、端末がプリアンブル信号を送信する。これによって、基地局は下り信号で通信可能な全ての端末に対するチャネル情報を取得することができる。
【0146】
次に、通信モード決定期間において、チャネル情報収集期間で収集したチャネル情報をもとに、従属する端末に対して、式(1)から式(4)を用いて、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信のいずれが要求速度を満たすかを計算し、通信モードを決定する。
【0147】
従属端末が要求する通信速度を満たせなくなったことを検出した基地局102aは、周囲の基地局102bにブロードキャストメッセージとして、MP−SDMAリクエストを出す。この制御信号には、MP−SDMA対象となる端末のIDリストが掲載されている。周囲の基地局102bは、MP−SDMAリクエストを受け取ると、端末IDリストを調べてMP−SDMAに加わることが可能な場合は、要求した基地局102aに対してMP−SDMA参加可能通知を送る。この制御信号には、端末IDと、その端末IDに対するチャネル情報を通知する。
【0148】
基地局102aは、MP−SDMAを行う可能性のある基地局から、端末に関するチャネル情報が集約されるため、そのチャネル情報を用いて、MP−SDMAを行った場合に端末の要求速度を満たせるかどうかを調べる。要求速度を満たしているようであればMP−SDMA実行通知を周囲の基地局102bと基地局制御局101aに通知する。もし、要求速度を満たせない場合は、要求速度を満たしていない端末に対して接続拒否を行う。
【0149】
MP−SDMA実行通知を発行した場合、要求を発行した基地局102aは、MP−SDMA通信に加わる基地局102bに対してSDMAの信号処理を行うための情報(その端末に関するチャネル情報全て、もしくはその基地局で行うべきプリコーディング情報)などを通知し、基地局102bのアンテナからどういった信号を出すのか必要な情報を提供する。
【0150】
そして、タイムスロット#1(MP−SDMA)において、基地局制御局101aは、MP−SDMA通信をする複数の基地局に対して同じデータ信号をコピーして信号を送る。各基地局では、MP−SDMAの演算処理を行ってSDMAデータ信号を生成し、端末に送信する。このようにして、基地局が自律的にMP−SDMA通信を行うことが可能になる。
【0151】
なお、チャネル情報を収集するフェーズである通信モード決定期間では、図18のようなフィードバック情報を削減するための方法を用いてもよい。
【0152】
以上説明した本発明の実施の形態および別の実施の形態によって得られる効果を纏めると、以下のようになる。
【0153】
(1)端末の要求通信速度を満たすために最適な通信モードを自動的に切り替えることが可能となり、無線区間のリソースを要求速度に応じて必要なだけ活用することができる。特に、複数の基地局が連携して、複数の端末に同時通信を行うマルチポイントSDMA通信では、送信側のアンテナ数を実質的に多く見せることにより、1基地局ではサポートできなかったシステム容量を増大する効果がある。このマルチポイントSDMA通信とするか、1つの基地局内でSDMA通信やMIMO通信を行うのか、自動的に切り替えることによって、これまで収容できなかったトラフィックまで収容可能となる。また、最初からマルチポイントSDMA通信のように固定的にシステムを組む必要がなく、端末のトラフィックが地理的に偏って発生するような場合、必要な基地局間で自動的にマルチポイントSDMA通信を自律的に構築することが可能となり、トラフィックの分布に応じて、必要なリソース割り当てが実現できる。
【0154】
(2)各通信モードにおいて、送信アンテナと受信アンテナ間のチャネル情報の変動量が少ないユーザは、本来、フィードバックを行わなくてもよいので、送信側が利用しているチャネル情報が、そのまま利用可能なのかどうかだけフィードバックすれば、フィードバックの情報量を削減することができ、オーバヘッド削減によって、ユーザ当たりの周波数利用効率を向上することができる。特に、マルチポイントSDMA通信のように、複数の基地局と、その配下にある端末の数が増えるため、チャネル情報のフィードバック量が飛躍的に増えてしまい、オーバヘッドによって、マルチポイントSDMA通信をするメリットがなくなってしまうという問題を解決し、マルチポイントSDMA通信のメリットを享受することによって、システム全体のスループットを向上させ、エリア内に収容可能なユーザ数を増加させることができる。
【0155】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、無線通信システムに関し、特に、複数の送受信アンテナを持つ複数の基地局と、各基地局に従属する複数の端末との間でデータ送受信を行う方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0157】
101a,101b:基地局制御局、102a,102b:基地局、103a〜d:端末、104:ゲートウェイ、105:コアネットワーク、
1501a〜d:アンテナ、1502:無線部、1503a〜d:共用器、1504a〜d:受信部、1505a〜d:送信部、1506:モデム部、1507:受信信号スイッチ、1508:送信信号スイッチ、1509:受信器、1510:復調器、1511:パラレルシリアル変換回路、1512:誤り訂正復号器、1513:データ制御信号分離回路、1514:パラレルシリアル変換回路、1515:拡張プリアンブル生成部、1516:送信器、1517:変調器、1518:シリアルパラレル変換回路、1519:誤り訂正符号器、1520:多重化回路、1521:シリアルパラレル変換回路、1522:制御部、1523:制御信号処理部、1524:フィードバック判断情報生成部、1525:チャネル情報データ、1526:チャネル推定トラッキング処理部、1527:局間インタフェース、1528:局間送信処理部、1529:データ制御信号分離回路、1530:局間信号受信処理部、
1601:局間インタフェース、1602:局間信号受信処理部、1603:局間信号送信処理部、1604:受信信号スイッチ、1605:送信信号スイッチ、1606:シリアルパラレル変換回路、1607:データ制御信号分離回路、1608:パラレルシリアル変換回路、1609:モデム部、1610:受信器、1611:復調器、1612:パラレルシリアル変換回路、1613:誤り訂正復号器、1614:データ制御信号分離回路、1615:拡張プリアンブル生成部、1616:送信器、1617:変調器、1618:シリアルパラレル変換回路、1619:誤り訂正符号器、1620:多重化回路、1621:データ信号スイッチ、1622:制御信号スイッチ、1623:制御部、1624:制御信号処理部、1625:フィードバック判断情報生成部、1626:チャネル情報データ、1627:チャネル推定トラッキング処理部、
1701a,1701b:アンテナ、1702:無線部、1703a,1703b:共用器、1704a,1704b:受信部、1705a,1705b:送信部、1706:モデム部、1707:受信器、1709:復調器、1710:パラレルシリアル変換回路、1711:誤り訂正復号器、1712:データ信号分離回路、1713:送信器、1714:変調器、1715:シリアルパラレル変換回路、1716:誤り訂正符号器、1717:多重化回路、1718:制御部、1719:制御信号処理部、1720:チャネル情報判定処理部、1721:チャネル情報データ、1722:チャネル推定トラッキング処理部、1723:復号誤り率データ、1724:外部インタフェース、1725:復号誤り率測定部、1726:コーデック。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特に、複数の送受信アンテナを持つ複数の基地局と、各基地局に従属する複数の端末との間でデータ送受信を行う方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムに関する技術としては、例えば非特許文献1〜5に記載される技術や、特許文献1〜3に記載される技術などがある。
【0003】
非特許文献1には、送信局が1つに対して受信局がN局の1対Nの無線通信(BC:Broadcast Channel)の通信容量に関して、Dirty Paper Codingがシステム容量の上限を与える方式として開示されている。また、非特許文献2では、容量を最大限引き出すための方式が存在することが開示されている。
【0004】
非特許文献3には、複数の送信局が協調連携して、見かけ上で送信局側のアンテナ総数を増大させ、上記のDirty Paper Codingを行うことによって、システム全体のスループットを向上させる方式の概念が開示されている。
【0005】
非特許文献4には、送信局が1つと受信局が1つの1対1での無線通信(Point to Point)において、無線伝搬路の持つ通信容量を最大限に引き出す方式として、固有モード伝送方式が開示されている。
【0006】
非特許文献5には、送信局が1つと受信局が複数のマルチユーザシステムで、無線区間のチャネル情報を予測する手法が開示されている。
【0007】
特許文献1には、時分割(TDMA:Time Division Multiple Access)のタイムスロットに、複数の端末に対して空間分割(SDMA:Space Division Multiple Access)による同時通信を行う技術が開示されている。
【0008】
特許文献2には、複数の送受信アンテナ間から最適な性能を出すアンテナの組合せを計算する方法が開示されている。
【0009】
特許文献3には、SDMA環境パラメータの変動に応じて、変調方式や符号化率などの送信ビットレート調整を行い、通信容量を増加させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−96727号公報
【特許文献2】特開2008−092433号公報
【特許文献3】特開2005−102136号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Writing on dirty paper”,IEEE Trans.Inform.Theory,vol.29,issue3,May 1983,M.Costa著,IEEE発行,p.440,Figure 1:Variation of Gaussian−Shannon channel
【非特許文献2】W.Yu and J.M.Cioffi,“Sum capacity of Gaussian vector broadcast channels”,IEEE Trans.Inform.Theory,Vol.50,No.9,pp.1875−1892,Sept.2004
【非特許文献3】S.Shamai and B.Zaidel,“Enhancing the cellular downlink capacity via co−processing at the transmitting end”,in Proceedings of IEEE Vehicular Tech.Conf.,May 2001−Spring,pp.1745−1749
【非特許文献4】“MIMOチャンネルにおける空間分割多重方式とその基本特性”,電子情報通信学会論文誌 B Vol.J87_B No.9,September 2004,電子情報通信学会発行,大鐘武雄、西村寿彦、小川恭孝著
【非特許文献5】“チャネル予測及び改良ユーザ選択法を用いたマルチユーザMIMO−BCシステム”,信学技報 RCS2008−11(2008−05),電子情報通信学会発行,関 志、大槻知明著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、無線通信システムに関しては、近年、システムの高速化に伴い、周波数利用効率向上の観点から、複数のアンテナからデータを送信して複数のアンテナで受信するMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が、無線LANや移動通信など、多くの無線規格で採用されている。
【0013】
例えば、送信局が1つと受信局が1つの1対1での無線通信(Point to Point)では、無線伝搬路の持つ通信容量を最大限に引き出す方式として、前記非特許文献4に開示されている固有モード伝送方式が知られている。この固有モード伝送方式では、送受信アンテナ間の無線伝搬路特性としてチャネル行列Hを固有分解(Singular Value Decomposition)して、固有分解で得られた行列を送信ベクトル信号と受信ベクトル信号に重み付け計算することで、伝送路の持つ容量を最大限に引き出す。ただし、受信側で測定したチャネル情報を送信側にフィードバックするため、無線伝搬路の変動が大きい場合には、通信を行うときの実際のチャネル状態が、フィードバックされたチャネル状態と異なるため、通信性能が劣化するという欠点がある。無線LANのようにユーザがあまり移動せず準静的な環境を前提としたシステムでは、無線伝搬路の変動が少ないため、この方式は有効である。
【0014】
また、送信局が1つに対して受信局がN局の1対Nの無線通信(BC)の通信容量や、送信局がM局に対して受信局が1局のM対1の無線通信(MAC:Multiple Access Channel)の通信容量に関して、情報理論の観点から多くの研究がなされている。BCの通信容量に関しては、前記非特許文献1のDirty Paper Codingがシステム容量の上限を与える方式として紹介され、前記非特許文献2では、容量を最大限引き出すための方式が存在することを証明している。
【0015】
前述の1対1の固有モード伝送方式に比べると、1対NのBCでは、ユーザ数の増加に伴い受信側のアンテナ総数が多くなるため、システム全体で提供できる通信容量は増大する。
【0016】
これらの非特許文献に開示の技術では、送受信間の空間に形成されるチャネル情報を瞬時に送信側で把握しないと成立しない。実際のシステムでは、受信側でチャネル情報を測定し、受信側から送信側へのフィードバックリンクを用いてチャネル情報を送信側に通知する。このフィードバックにかかる遅延時間の間に、チャネルが変動することにより、性能劣化が大きく実現が難しいとされている。
【0017】
更に、1対NのBCの通信容量は、送信局のアンテナ数の制約によって提供できる通信容量が制限されてしまう。そこで、複数の送信局が協調連携して、見かけ上で送信局側のアンテナ総数を増大させ、上記のDirty Paper Codingを行うことによって、システム全体のスループットを向上させる方式の概念が、前記非特許文献3に開示されている。
【0018】
また、従来の無線通信システムでは、基地局から端末に同時に送信する際に、隣接する基地局とは周波数を分け(FDMA:Frequency Division Multiple Access)、セル構造を設計して遠く離れた場所で周波数再利用する方法や、同じ周波数で複数の基地局が送信してもコードで多重化して受信側で同じコードで信号を取り出すCDMA(Code Division Multiple Access)の方法などが知られている。また、複数の基地局を時分割(TDMA)する方法も知られている。また、近年では前記非特許文献3で開示されているように、複数の基地局が連携し、複数の端末に空間分割(SDMA)で通信する方式も提案されている。これらの多重アクセス技術については、システム規格に基づいて決定されて運用されている。
【0019】
例えば、TDMAのタイムスロットに、複数の端末に対してSDMAによる同時通信を行う前記特許文献1では、1つの基地局が収容できる端末に対するSDMA通信の開示はあるが、複数の基地局間で連携したSDMA通信を行うことによって、システム全体のスループットを向上する方式に関する開示がない。
【0020】
また、前記特許文献2の方法では、フィードバック情報としては送受信間で共通のコードブックを用いているが、コードブックによって代表されるチャネル情報と測定したチャネル情報との差異が大きい場合は、通信性能が劣化するという課題が挙げられる。特に複数の基地局が連携して複数の端末にSDMA通信する場合には、複数の端末と複数の基地局との間のチャネル情報は、収容エリアが増大するにつれて、一部の端末は変化が少なくても一部の端末は変化が大きいようなチャネル情報の変化量に地理的な分布が発生する。この地理的な分布まで含めて、チャネル情報をコードブックで表そうとすると、結果としてコードブックで扱うチャネル情報の種類を増やさなくてはならない。1つの基地局だけで、SDMA通信で必要なチャネル情報のコードブックと複数の基地局が連携する場合のコードブックの構造に違いが生じる必要があり、このように通信方式をスケーラブルに切り替えるようなシステムにおいて、フィードバック量を削減しつつ、かつチャネル情報を正しく把握できるシステムが求められている。
【0021】
また、前記特許文献3の技術では、受信機側で推定し追従して計算を行ったチャネル情報と本来のチャネル情報の相関をベースに信頼度を判定しており、最後に報告したチャネル情報と受信したチャネル情報の相関で信頼度を判定する本発明とは異なる。また、この信頼度を用いて、前記特許文献3では変調方式や誤り訂正符号を切り替えるが、本発明ではSDMA自体を止めてMIMO−TDMAとするなど、通信モードの切り替えに利用する点も異なる。
【0022】
以上のような無線通信システムにおいて、複数の基地局が連携し、複数の端末にSDMAで通信する方式は、システムが提供できる容量を多くする可能性がある。一方で、システムが同時に扱う端末の数や送受信アンテナの数が増大することによって、送受信間でやり取りするチャネル情報量が多くなるという課題がある。チャネル情報量が多くなると、受信側から送信側に精度高くフィードバックすると、フィードバックの遅延によって、チャネルの状態が変化し、通信する時点でのチャネルとフィードバックで得られたチャネルとが異なることから、システムが提供できる通信速度が劣化してしまう。また、チャネルの状態が変化しない場合においても、フィードバック量が多いと、通信プロトコルのオーバヘッドによって実質的なスループットが劣化するという問題がある。
【0023】
また、端末は、静止しているものから移動しているものまで、様々なチャネル情報を持っているため、時々刻々と変化するチャネル情報を常に最新に保つためには、このフィードバックを適切なタイミングで行う必要がある。また、端末が要求する通信トラフィック量が多くない場合には、基地局間が連携せずとも、単独の基地局で1つまたは複数の端末と通信を行う従来の通信方法でも、要求を満たしている場合もあるため、常時、複数の基地局がSDMA通信をする必要はない。
【0024】
このような状況を鑑みて、端末の要求速度を満たすのに必要なリソースを提供することができる通信方式を自動的に判断して切り替えることのできる無線通信システムが求められている。また、通信方式を切り替えた場合に、フィードバック量が増大してしまう課題に対してフィードバック量を削減する方式を提供して、周波数利用効率の効率低下を防ぐ通信方式も求められている。そこで、本発明の目的は、端末が要求する通信速度を満たしつつ、フィードバック量を削減する無線通信システムを提供することにある。
【0025】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0027】
すなわち、代表的なものの概要は、複数のアンテナを持つ複数の基地局と、複数のアンテナを持つ複数の端末と、複数の基地局を集中管理する基地局制御局とで構成される無線通信システムにおいて、ある一定時間(タイムスロット)の間に、1つの基地局と1つの端末のみが通信を行う通信モード(MIMO+TDMA通信モードと呼ぶ)と、1つの基地局が複数の端末と同時通信を行う通信モード(SDMA+TDMA通信モードと呼ぶ)と、複数の基地局を基地局制御局によって連携させて複数の端末と同時通信を行う通信モード(マルチポイントSDMA通信モードと呼ぶ)とを有し、端末からの要求通信速度を満たせるかどうかを基地局や基地局制御局で判断することによって通信モードを切り替えることにより、自動的に適切な通信モードを決定する。
【0028】
要求通信速度を満たせるかどうかを判断するためには、基地局のアンテナと端末のアンテナ間のチャネル情報を収集し、収集したチャネル情報から各通信モードにおいて提供可能な通信容量を計算し、その通信容量の大きさによって要求通信速度を満足できるかできないかを判定する。
【0029】
基地局のアンテナと端末のアンテナ間のチャネル情報を、基地局や基地局制御局が収集する方法として、基地局はチャネル情報を端末で測定するのに必要な既知のパターンのプリアンブル信号を送信する手段と、端末がチャネル情報をどのような形でフィードバックするかを決めるフィードバック方法に関する情報を通知する手段とを有し、端末は前記プリアンブル信号によってチャネル情報を測定し、その測定したチャネル情報を前記フィードバック方法に関する情報に従って、フィードバックを行うか行わないかなどを含めて判断して、その判断結果に基づいてチャネル情報をフィードバックすることによってチャネル情報のフィードバック量を削減する。
【0030】
具体的には、基地局が利用するチャネル情報は、過去に端末が基地局にフィードバックして通知したチャネル情報に基づいているものであるので、基地局が現在活用しているチャネル情報と、端末が前記プリアンブル信号から測定した最新のチャネル情報との相関を求め、その相関が高い場合には、そのまま過去のチャネル情報を活用してもよいという情報のみをフィードバックすることによって、フィードバック量を削減する。もしくは、実際の通信データの誤り率などを測定し、誤り率が許容範囲内であれば、基地局が利用している過去に通知したチャネル情報を使い続けてもよいと判断して、活用してもよいという情報のみをフィードバックする。
【発明の効果】
【0031】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0032】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、端末が要求する通信速度を満たしつつ、フィードバック量を削減する無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態における無線通信システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において、MIMO+TDMA通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、SDMA+TDMA通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、マルチポイントSDMA通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において、複数の通信モードを混在させた場合の処理とフレームの関係の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において、各通信モードにおけるユーザ当たりの周波数利用効率と送信電力の関係の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態において、チャネル情報の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において、各通信モードにおけるチャネル情報のフィードバック量とユーザ当たりの周波数利用効率の特性の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における拡張プリアンブル信号の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるフィードバック判断情報のフォーマットの一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における制御シーケンスの一例(マルチポイントSDMAとMIMO−TDMAの混在)を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態におけるマルチポイントSDMA通信への移行や解除の動的な運用に関する制御シーケンスの一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における基地局の制御アルゴリズムの一例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態における基地局制御局の制御アルゴリズムの一例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態における基地局の構成の一例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態における基地局制御局の構成の一例を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態における端末の構成の一例を示す図である。
【図18】本発明の別の実施の形態における制御シーケンスの一例(端末が送信する信号でチャネル情報を基地局が測定する例)を示す図である。
【図19】本発明の別の実施の形態における基地局が自律的にマルチポイントSDMA通信を決定する場合の制御シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0035】
図1は、本発明の実施の形態における無線通信システムの全体構成の一例を示している。無線通信システムは、基地局制御局101aと、この基地局制御局101aに接続された複数の基地局102a,102b,…と、これらの基地局102a,102b,…との間でデータ送受信を行う複数の端末103a,103b,103c,103d,…などから構成される。基地局102a,102b,…のそれぞれは、複数(ここでは4本の例)のアンテナを持っている。また、端末103a,103b,103c,103d,…のそれぞれは、複数(ここでは2本の例)のアンテナを持っている。
【0036】
なお、この無線通信システムでは、基地局制御局101aがゲートウェイ104に接続され、さらにこのゲートウェイ104が基地局制御局101bに接続されている。複数の基地局制御局間の信号はゲートウェイ104を介して行われる。また、ゲートウェイはコアネットワーク105へのアクセス手段を提供する。コアネットワーク105は、インターネットに接続されている。
【0037】
基地局制御局101aは、配下の基地局102a,102b,…を管理し、基地局間の協調連携制御を実現する。図1の例では、ある時点において、基地局102aと基地局102bがSDMA通信の協調連携制御を行い、端末103aと103cへデータを送信している様子を示す。端末103aと端末103cは、所望の信号を分離して受信処理を行う。このとき、基地局制御局101aがSDMAのための送信信号を形成し、基地局102aと基地局102bのトータル8本の送信アンテナを利用して、端末103aと103cの合計4本の受信アンテナに対するチャネル情報を取得し、8×4のBroadcast Channelに対する信号処理を行う。
【0038】
また、基地局制御局101aは、ゲートウェイ104を介して、他の基地局制御局101bに接続することができ、配下の基地局情報を互いに交換することで、異なる周波数を割り当てることによって干渉回避をしたり、場合によっては基地局制御局間も協調することによって、各々の配下にある基地局間の協調制御も可能な構成となっている。基地局協調制御によって、送信アンテナ数が増大することによって、システム全体のスループットを向上することができる。
【0039】
図2に、基地局と端末間の通信が瞬時では1対1になるように時分割するMIMO+TDMA(MIMO−TDMAとも記載する)通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す。
【0040】
基地局102aは、TDMAのタイムスロット(Slot)#1にて、まずチャネル情報を取得するためのプリアンブル信号を送信する。端末103aは、予め通信プロトコルに基づいて、タイムスロット#1で通信する権利を獲得しているものとする。端末103aは、前記プリアンブル信号を受信してチャネル推定を行う。得られたチャネル情報Haaを基地局102aにフィードバックする。ここで、端末から基地局に通知するチャネル情報は、瞬時のプリアンブル信号を受信して得られるチャネル推定情報でもよいし、プリアンブル信号を何回か受信して得られたチャネル情報を平均値化したものであってもよい。また、プリアンブル信号をタイムスロットで受信できなかった場合は、前回のタイムスロットで受信したときに得たチャネル情報を用いてもよい。
【0041】
続いて、基地局102aは、フィードバックされたチャネル情報Haaを用いて、送信処理によりMIMO通信を行うMIMOデータ信号を生成し、このMIMOデータ信号を送信する。端末103aは、MIMOデータ信号を受信して複数のアンテナに多重された信号を分離する受信処理を行う。このMIMO通信として、例えば固有モード伝送方式が挙げられる。
【0042】
次のタイムスロット#2では、基地局102aは端末103bと上記と同じ手順によって通信(チャネル情報Hab)し、次のタイムスロット#3では基地局102bが端末103cと通信(チャネル情報Hbc)、更に次のタイムスロット#4では基地局102bが端末103dと通信(チャネル情報Hbd)するといった手順で通信をする。この通信方式では、予め通信プロトコルによって、どの基地局がどの時刻に、どの端末と通信を行うか、予めスケジューリングされていることを前提としている。
【0043】
図3に、1つの基地局が複数の端末にSDMA通信して、基地局と基地局の送信時間を時分割するSDMA+TDMA(SDMA−TDMAとも記載する)通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す。タイムスロット#1は、通信プロトコルによって、予め基地局102aに割り当てられているものとする。また、基地局102aには端末103aと、端末103bが通信プロトコルによって従属している(アソシエーションしている)とする。
【0044】
TDMAのタイムスロット#1では、基地局102aはプリアンブル信号を送信し、このプリアンブル信号を受信した端末103aと端末103bは、チャネル情報Haa,Habを推定して、その結果をチャネル情報として基地局102aにフィードバックする。図2で前述したようにチャネル情報については平均化したものや、前回のプリアンブル信号を受信して推定したチャネル情報であってもよい。
【0045】
基地局102aは、得られたチャネル情報Haa,Habを利用して、例えば前記非特許文献2に開示されているようなSDMA送信処理によりSDMAデータ信号を生成し、このSDMAデータ信号を送信する。端末103aと端末103bは、例えば前記非特許文献2に開示されているSDMA受信処理を行うことによって所望の信号を取り出す。
【0046】
次のタイムスロット#2では、基地局102bは端末103cと端末103dと上記と同じ手順によって通信(チャネル情報Hbc,Hbd)する。
【0047】
図4に、複数の基地局が連携して複数の端末にSDMA通信するマルチポイントSDMA(MP−SDMAとも記載する)通信モードにおける制御シーケンスの一例を示す。
【0048】
TDMAのタイムスロット#1において、基地局制御局101aで、プリアンブル信号を生成して、基地局102aと基地局102bのアンテナを利用してプリアンブル信号を送信する。もしくは、基地局102aと基地局102bで各々プリアンブル信号を生成し、基地局102aが送信する時間と基地局102bが送信する時間を予め通信プロトコルによって決定していてもよい。端末103a,103b,103c,103dは、このプリアンブル信号を受信してチャネル情報Haa,Hab,Hac,Had,Hba,Hbb,Hbc,Hbdを推定する。各端末は、得られたチャネル情報を基地局制御局101aに通知する。図2で前述したようにチャネル情報については平均化したものや、前回のプリアンブル信号を受信して推定したチャネル情報であってもよい。例えば、端末103aは基地局102aに従属しているため、基地局102bから送信されるプリアンブル信号は、受信できずにチャネル情報を取得できない場合もある。その場合は、チャネル情報をなしとするか、前回のチャネル情報を用いるか、平均化したチャネル情報を送付してもよい。
【0049】
基地局制御局101aは、得られたチャネル情報Haa+Hba,Hab+Hbb,Hac+Hbc,Had+Hbdに基づいて、SDMA送信処理(例えば前記非特許文献2に開示)によりSDMAデータ信号を生成して、基地局102aと基地局102bを経由して端末103a,103b,103c,103dに同時にデータ送信する。各端末は、SDMA受信処理(例えば前記非特許文献2に開示)を行うことによって所望の信号を取り出す。
【0050】
図5は、上記のMIMO−TDMAやSDMA−TDMA、マルチポイントSDMAの複数の通信モードを混在させた場合の処理の一例を示している。併せて、フレームの関係も示す。
【0051】
1つのフレーム内で、各通信モードを混在させているが、各通信モード(MIMO−TDMA(又はSIMO:Single Input Multiple Output)、SDMA−TDMA、MP−SDMA)において、通信を行うべきか、行わないべきかを次のように判断する(0:通信しない、1:通信する)。なお、フレーム時間は、端末のアプリケーションの要求遅延時間を満たすようにあらかじめ固定的に決定されているものとする。もしくは、端末アプリケーションが要求する遅延時間の最小値を満たすように動的に決定してもよい。
【0052】
前回のフレームで活用したチャネル情報や、チャネル情報の統計値を利用して、次のフレームも同じようなチャネル情報が得られることを仮定して、次のフレームにおける通信モードの構成を判断する。
【0053】
例えば、端末kが、フレーム全部を使ってMIMO−TDMA通信を行った場合に得られる通信速度をCmimo_kとし、端末の要求速度をR_kとする。全てのkに対して、次の式(1)を満たす場合、フレーム全体にわたりMIMO−TDMA通信のみ行う。
【0054】
Cmimo_k ≧ R_k 式(1)
ここで、送信側のアンテナを1本固定、もしくはランダムに選択した場合、もしくは固有値の最も大きなストリームを持つアンテナを選択して、送信1本、受信N本のSIMO通信を行った場合に得られる通信速度をCsimo_kとした場合、次の式(2)を満たす端末kについては、MIMO信号処理を行わなくても、SIMO通信を与えられたタイムスロットで行ってもよい。
【0055】
Csimo_k ≧ R_k 式(2)
上記の式(1)を満足しない端末がある場合、フレーム全部を使ってSDMA−TDMA通信を行った場合に得られる通信速度をCsdma_kとし、次の式(3)を満たす場合、フレーム全体にわたりSDMA−TDMA通信のみ行う。
【0056】
Csdma_k ≧ R_k 式(3)
もし、式(3)を満たさない場合は、フレーム全体の時間を1としたときのSDMA−TDMA通信の時間比率をαとして、全てのkに対して次の式(4)を満たす場合は、MIMO−TDMA通信とSDMA−TDMA通信をフレーム内で時間比率αで時間分割して運用する。
【0057】
(1−α)×Cmimo_k+α×Csdma_k ≧ R_k 式(4)
もし、式(4)を満たすことができない場合は、フレーム全部を使ってMP−SDMA通信を行った場合に得られる通信速度をCmpsdma_kとし、次の式(5)を満たす場合、フレーム全体にわたりMP−SDMA通信のみ行う。
【0058】
Cmpsdma_k ≧ R_k 式(5)
もし、式(5)を満たさない場合は、フレーム全体の時間を1としたときのSDMA−TDMA通信の時間比率をα、MP−SDMA通信の時間比率をβとして、次の式(6)を満たすαとβを線形計画法などを用いて探索する。満たす解があれば、それぞれの時間比率にて運用する。
【0059】
(1−α−β)×Cmimo_k+α×Csdma_k+β×Cmpsdma_k
≧ R_k 式(6)
このようにして、MIMO−TDMA通信をベースに、SDMA−TDMA通信やMP−SDMA通信を求めることによって、要求される通信速度が小さい場合は、MIMO−TDMA通信、またはSIMO−TDMA通信を行うようにする。これは、各通信モードで必要となるチャネル情報のサイズが、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信、MP−SDMA通信の順に大きくなるため、不要である場合は、できる限り、フィードバック情報量を削減した運用をすることが可能になるためである。
【0060】
ただし、要求通信速度がベストエフォートのようなケースが含まれる場合、要求通信速度Rkを送受信アンテナの全部を利用したときの理論限界とし、式(5)の左辺−右辺が最小化されるような時間比率を求めればよい。
【0061】
図6に、チャネル情報のフィードバックのオーバヘッドがなかった場合で、各通信モードのユーザ当たりの周波数利用効率と送信電力(Power)の関係の一例を示す。送信電力は、各アンテナにのる熱雑音の電力に対して送信アンテナ全部の総送信電力をデシベル表示したものである。チャネルモデルとしては、i.i.dレイリーチャネルモデルを想定した場合であり、図1に示すようにアンテナを4本持つ基地局が2つと、アンテナを2本持つ端末が4つで計算した例である。なお、MP−SDMAのときの送信電力は、基地局が2つの総トータルの送信電力としている。このように、MIMO−TDMA、SDMA−TDMA、MP−SDMAの順に周波数利用効率が高くなっており、前述のように要求速度が遅ければMIMO−TDMAでまかなえるが、要求速度が高くなるにつれて、SDMA−TDMAやMP−SDMAのような処理が必要となってくることが分かる。
【0062】
図7に、チャネル情報の一例を示す。無線LANのIEEE802.11nで非圧縮のチャネル情報の例である。
【0063】
受信アンテナ数を2本とすると、最初に各アンテナのSNRを8ビットで表す。続いて、OFDM信号の各サブキャリア毎のチャネル情報(H11)が記載されている。最初の3bitは、チャネル全体にかかる振幅ゲインを表す。受信したときに、受信したプリアンブル信号の総送信アンテナ数(Ntx)×受信アンテナ数2の行列が、複素数の実数部と虚数部で、8bitずつ割り当てられている。このチャネル行列がサブキャリア数分(f1〜f_L)ある。このようなチャネル情報では、送信アンテナ数が増えるとチャネル情報のサイズが増える。
【0064】
図1の例を用いると、MIMO−TDMAやSDMA−TDMA通信モードでは、送信アンテナ数は4本であるが、MP−SDMA通信モードでは送信アンテナ数が8本となり、チャネル情報は倍に膨れ上がる。IEEE802.11n規格でも、このチャネル情報を圧縮するための方法があるが、圧縮した分、フィードバックするチャネル情報には誤差が載ることになる。また、WiMAXやLTEといったセルラ系の標準規格ではコードブックを用いて、チャネル情報を送信側と受信側で予め共有しておき、受信側で得られたチャネル情報のどれが最も近いか判定して送信側に送り返す手法がある。この場合も、チャネル情報の劣化が生じている。
【0065】
図8に、各通信モードにおけるチャネル情報のフィードバック量とユーザ当たりの周波数利用効率の特性の一例を示す。各端末から、同じチャネル情報量をフィードバックしたとしても、MIMO−TDMAでは1端末分のチャネル情報を収集するのに対し、SDMA−TDMAでは1基地局は2端末分のチャネル情報を収集し、MP−SDMAでは4端末分のチャネル情報を収集するため、1回の通信を行うためにチャネル情報を収集するオーバヘッドが大きくなっていく。加えて、MP−SDMAでは隣接する基地局からのチャネル情報もあり、チャネル情報も大きいため、実効的に通信できる時間が小さくなり、チャネル情報量が大きいほど、周波数利用効率の劣化の度合いが大きい。
【0066】
図9は、本発明の実施の形態における拡張プリアンブル信号の一例を示す。図2から図4では、チャネル情報を端末で求めるためのプリアンブル信号を記載しているが、図9の拡張プリアンブル信号に置き換えることによって、チャネル情報そのものの測定結果を返さなくてもよくなるケースを作り出すことができる。従来のプリアンブル信号の例と同様に、スキャッタード型で、固定パターンのプリアンブル信号をシンボル毎にアンテナを変えて送信する。各アンテナから同時に出すスペースタイムコード型で出してもよい。
【0067】
続いて、端末がチャネル情報をフィードバックするか否かを判断するために必要なフィードバック判断情報を載せて送信する。まず、アンテナ番号#1からフィードバック判断情報を送信し、受信側ではMIMOやSDMAの信号処理を行わず、従来の方法で受信処理をする。次のフレームでは、フィードバック判断情報をアンテナ番号#2を用いて送信している様子を示している。この例では、受信側ではMIMOやSDMAの信号処理を行わないとしたが、前のフレームでMIMOやSDMAの信号処理が行われている場合は、前のフレームで用いた信号処理を用いれば、アンテナ全部を用いてフィードバック判断情報を載せて送信してもよい。
【0068】
図10に、フィードバック判断情報のフォーマットの一例を示す。併せて、情報要素の例を示している。フィードバック判断情報のフォーマットには、フィードバックモード、基地局ID/基地局制御局ID、基地局利用チャネル情報、フィードバック判断種別、フィードバック判断閾値、端末ID、利用チャネルIDなどのフィールドがある。
【0069】
フィードバックモードは、プリアンブル信号を受信した端末が、どういった形でチャネル情報をフィードバックするかを指定するフィールドである。例えば、1が指定されていれば、端末が従属する基地局の送信アンテナから出たチャネル情報のみをフィードバックする。MIMO−TDMAやSDMA−TDMA通信モードのときに利用する。2が指定されていた場合には、端末で受信することができる全ての基地局から送信されているプリアンブル信号を受信して、そのチャネル情報をフィードバックする。これによって、マルチポイントMIMOの処理が可能になる。
【0070】
3が指定されていた場合、フィードバック判断種別とフィードバック判断閾値のフィールドに記載された条件を満たしているかどうかで、チャネル情報のOKかNGを判断し、OKかNGの1ビットの情報をフィードバックする。4が指定されていた場合、3と同様であるが、チャネル情報のNGがあったときのみチャネル情報NGの1ビット情報をフィードバックする。3や4を指定することによって、チャネル情報に問題がない場合は、フィードバックの情報量を大幅に削減することができる。
【0071】
フィードバック判断種別には、1が設定されていた場合は、チャネル相関係数を判断基準として、基地局が利用しているチャネル情報とプリアンブル信号を受信して得られたチャネル情報をもとに基地局利用チャネルを推定したチャネル推定結果との相関係数で判断する。具体的な判断の値は、フィードバック判断閾値に記載されている。例えば、相関係数がA=0.9より大であればチャネル情報をOKと判断し、A=0.9以下であれば、チャネル情報をNGと判断する。フィードバック判断種別は、チャネル相関係数以外にも、例えば復号結果の誤り率(2が設定)として、フィードバック判断閾値としてB=3として復号誤り率BER>10^−3の場合には、チャネル情報をNGと判断し、それ以外をチャネル情報OKと判断してもよい。
【0072】
他にもフィードバック判断種別としては、プリアンブル信号やデータ信号の受信強度(RSSI)や、ドップラー周波数、端末の移動速度などとしてもよい。つまり、受信電力が低かったり、高速移動でチャネル情報の変動が激しかったりするような環境であれば、MIMOやSDMAに使うことがふさわしくないことを判断し、その場合に自動的にチャネル情報のフィードバック量を削減することを可能にする。
【0073】
フィードバック判断種別にチャネル相関係数を指定した場合、基地局が利用しているチャネル情報の求め方として、基地局利用チャネル情報のフィールドから読み取る。このフィールドに1が指定されている場合は、単純に端末が最後に基地局に報告したチャネル情報を基地局が使っているものと見なす。2が指定されている場合には、基地局側で非特許文献5に開示されている方法など用いて、端末の受信チャネルの状態を推定トラッキング処理を行っているものと想定し、端末も同じアルゴリズムでチャネル推定トラッキングして得られた結果を基地局が利用していると見なす。
【0074】
3が指定されていた場合には、例えば基地局と端末が双方で同じチャネルデータベースを持っているものとして、基地局が利用したチャネルのインデックスをIDとして通知することによって、基地局が利用しているチャネル情報を知ることができる。この場合、端末ごとに何を利用しているかIDが異なるため、端末IDと利用チャネルIDのセットをフィールドとして持つ。また、基地局と端末で同じチャネルデータベースは、前述のコードブックのように事前に計算されたものでもよいし、端末が報告したチャネル情報に対して、基地局がIDを付与するようなプロトコルを追加することにより、双方でチャネル情報のデータベースを作成してもよい。
【0075】
図11に、本発明の実施の形態における制御シーケンスの一例(マルチポイントSDMAとMIMO−TDMAの混在)を示す。既に、全部の端末のチャネル情報を前のフレームにて取得している状態からスタートしており、MP−SDMAの通信が行われている状態からの例を示している。
【0076】
MP−SDMAのタイムスロット#1で、基地局制御局101aは、チャネル情報をフィードバックするか否かを判断する材料を載せた拡張プリアンブル信号を、まず基地局102aを経由で送信し、各端末103a,103b,103c,103dはチャネル推定処理によってチャネル情報Haa,Hab,Hac,Hadを蓄積する。次に、同様にして拡張プリアンブル信号を基地局102bを経由で送信し、各端末103a,103b,103c,103dでチャネル情報Hba,Hbb,Hbc,Hbdを測定して蓄積する。各端末103a,103b,103c,103dは、これらのチャネル情報をベースとして、図10で説明したように基地局で利用しているチャネル情報が利用していてOKであるか、NGであるかを基地局制御局101aに通知する。例えば、端末103dのみがチャネル情報NGとする。基地局制御局101aは、端末103dに対してはチャネル情報を活用できないことを把握し、残りの端末103a,103b,103cに対するSDMAデータ信号を生成して送信する。
【0077】
端末103dに対しては、このままでは要求速度を満たせないことになるため、次のタイムスロット#2で拡張プリアンブル信号を送信し、端末103dで測定した結果のチャネル情報Hbdを基地局制御局101aに通知してもらう。このとき、MIMO−TDMAベースの信号処理によって、MIMOデータ信号を送信して、端末103dで受信する。
【0078】
次のフレームでは、端末103dからアップデートされたチャネル情報を活用してMP−SDMAを活用してもよいかどうか、同様にしてチャネル情報OKかNGかをヒアリングする。このようにして、何度か繰り返すうちに、チャネル情報NGを繰り返し通知してくる端末は、MP−SDMAの処理に不向きなチャネル情報を持つ傾向があるとして、MIMO−TDMAもしくはSDMA−TDMAの候補としていく。
【0079】
チャネル情報のうち、隣接基地局に対するチャネル情報の変動が激しい場合は、その端末はMP−SDMAの処理が不向きであり、またSDMA−TDMAを行っても、SDMAグループに含まれる他の端末とのチャネル情報の相関などに変動が激しい場合はSDMA−TDMAも不向きであり、MIMO−TDMAが望ましい。
【0080】
図12に、本発明の実施の形態におけるマルチポイントSDMA通信への移行や解除の動的な運用に関する制御シーケンスの一例を示す。
【0081】
端末103a,103b,103c,103dからの要求速度が小さい場合は、基地局102a,102bは従属する端末とSDMA−TDMA通信、もしくはMIMO−TDMA通信、もしくはSIMO−TDMA通信を行うことで、要求速度を満たしている。この場合、同一の周波数リソースを基地局102aと基地局102bで活用している場合は、基地局102aと102bとで時分割によって通信を行う。
【0082】
端末の要求速度を満たしていれば、上記の通信を継続するが、ここで、例えば基地局102bに従属する端末103bが要求速度を未達成であることが検出された場合、基地局102bから基地局制御局101aに対してMP−SDMA要求の制御メッセージを送信し、要求速度未達だった端末が周囲に見えている基地局などの情報をもとにして、基地局制御局101aは、基地局102a,102bにMP−SDMA開始通知の制御メッセージを送付することによって、基地局制御局101aが主導によるMP−SDMA通信、またはSDMA−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SIMO−TDMA通信を行う。
【0083】
もし、MP−SDMA通信を行っても、端末の要求速度を満たすことができなかった場合は、基地局制御局101aはリソース不足と判断し、端末が持っている接続維持の優先度情報などから、優先度の低い端末を切り離して、システム全体で要求速度を満足する端末を決定する。切り離される端末には、接続拒否通知の制御メッセージが通知され、リンクが切断される。切断された端末は、ある一定時間待機した後、再度、接続要求を試みるが、基地局制御局101aは、新しい接続要求に対して、システム容量が提供できるマージンが十分でない場合には、接続拒否を行い、マージンが十分ある場合は受け入れる。
【0084】
また、MP−SDMA通信をしなくても、端末の要求速度が満足される状態が連続してNスロット続く場合は、基地局制御局101aはMP−SDMAを不要と判断し、MP−SDMA解除通知を基地局102a,102bに通知することによって、基地局102a,102bは従属する端末に対してSDMA−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SIMO−TDMA通信を行う。
【0085】
図13に、本発明の実施の形態における基地局の制御アルゴリズムの一例を示す。
【0086】
まず、はじめに、基地局に従属している端末からチャネル情報を収集する(Step1)。収集したチャネル情報と、各端末の要求速度から、前述の式(1)から式(4)を用いて、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信を決定する(Step2)。従属している端末の推定速度が要求速度を満足しているか判定し(Step3)、もし、満足していない場合(No)は、基地局制御局にMP−SDMA処理要求の制御メッセージを送信して(Step4)、基地局制御局からMP−SDMA解除待ち状態に入る。基地局制御局からMP−SDMA通信の解除通知を制御メッセージで受け取ると、最初(Step1)の端末チャネル情報収集から再開する。
【0087】
もし、Step3の判定の結果、従属端末全てが、式(1)から式(4)を満たしていて推定速度が要求速度を満たす場合(Yes)は、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信を行う場合は、基地局は従属端末と選択された方式で通信を行う(Step5)。実際の速度が要求速度を満足するまで、Step1からの処理を繰り返す(Step6)。もしくは、実際の速度が要求速度を満足している端末の割合が100%でなかった場合においても、あらかじめ決められた割合を超えていればStep7に移ってもよい。選択された通信を行った次のタイムスロットでは、まず、拡張プリアンブルによって、現在、基地局が用いているチャネル情報でOKかNGかを端末に判断させて、その判断結果の情報を収集する(Step7)。
【0088】
そして、端末を1つ選択して(Step8)、その端末のチャネル情報がOKかを調べる(Step9)。チャネル情報がNGであれば(No)、その端末に対して、MIMOやSDMA通信を行っても効果がないものと判断し、送信側でチャネル情報を不要としたTDMA通信の候補として記憶する(Step11)。例えば、端末側で、最大比合成のダイバーシティのみ行うSIMO−TDMA通信などを行う。
【0089】
チャネル情報がOKであれば(Yes)、その端末は、SDMA−TDMA通信やMIMO−TDMA通信の候補として記憶する(Step10)。全ての端末について、通信の候補を記憶するまで、Step8からの処理を繰り返す(Step12)。記憶された通信の候補をベースとして、チャネル情報OKの端末は、式(1)から式(4)に基づいてSIMO−TDMA通信かMIMO−TDMA通信かSDMA−TDMA通信のいずれかを決定する(Step13)。この計算量を削減する別の実施の形態について説明する。
【0090】
前回のタイムスロットでの通信モードを参照して、例えば前回はSDMA−TDMA通信を行っていた場合、SDMAを構成するグループに属する端末全てのチャネル情報がOKであればSDMA−TDMA通信を継続すると判断してもよい。同様に、前回MIMO−TDMA通信を行っていた場合は、チャネル情報OKであれば、今回もMIMO−TDMA通信を継続すると決め、チャネル情報がOKである限り、前回のタイムスロットで行った通信モードを引き継ぐ。
【0091】
このようにして決定された通信モードに対して、チャネル情報OKの端末の推定速度が要求速度を満足しているかどうかを判定する(Step14)。具体的には、式(1)から式(4)を満たしているかどうかを判定する。もし、チャネル情報OKの端末の推定速度が要求速度を満たしていなければ(No)、最初のStep1に戻る。チャネル情報OKの端末の推定速度が要求速度を満たしていれば(Yes)、Step5に戻り、チャネル情報OKとNGの全ての端末に対して選択された通信モードで通信する。ここにおいても、チャネル情報OKの端末の推定速度が要求速度を満足している割合が100%でなくても、あらかじめ決められた割合を越えていれば、Step8に戻るものとしてもよい。
【0092】
図14に、本発明の実施の形態における基地局制御局の制御アルゴリズムの一例を示す。基地局制御局は、基地局からのMP−SDMA要求待ちをしている。
【0093】
基地局からMP−SDMA要求が来たら、その要求があった基地局に従属している端末が受信しているプリアンブル信号に記載されている基地局IDをベースとして、関連する基地局に対して、MP−SDMA開始通知を発行する(Step1)。各基地局は、MP−SDMA開始通知を受信すると、基地局制御局からの信号をダイレクトにアンテナに送信することができるように切り替えを行う。
【0094】
続いて、関連する基地局からプリアンブル信号を送信して、各端末からチャネル情報を収集する(Step2)。集められたチャネル情報をもとにして、式(1)から式(6)を用いて、各端末の要求速度に応じてSIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信、MP−SDMA通信の通信モードを決定する(Step3)。
【0095】
端末全ての推定速度が、要求速度を満足しているかどうかを調べる(Step4)。もし、満足していな端末があった場合(No)は、要求未達成の端末に対して接続拒否の通知を行う(Step5)。この端末を選ぶ方法としては、単純に速度未達成の端末全てに接続拒否を行って、次のStep6に進んでもよい。
【0096】
もしくは、端末ごとにプライオリティを予め認証プロトコルなどで決めておき、この優先度の低い端末から順に接続拒否を行い、その端末を接続しない状態でStep3の通信モードを再計算して、Step4で推定速度が要求速度を満足していないものがなくなるまでStep3からStep5のループを回してもよい。もしくは、上記のプライオリティとしては、推定速度と要求速度の乖離の大きさを用いてもよい。乖離の大きい端末から順に接続拒否をしてもよいし、乖離の小さい端末から順に接続拒否を行ってもよい。
【0097】
次に、要求達成する端末に対して選択された通信方式で通信する(Step6)。続いて、MP−SDMA通信が、選択された方式としてあるかないかをチェックする(Step7)。例えば、連続N回、MP−SDMA通信を行わなくても、SDMA−TDMA通信やMIMO−TDMA通信、SIMO−TDMA通信で端末の要求速度を満足することが分かった場合(No)は、MP−SDMAが不要と判断し、各基地局にMP−SDMA解除通知を送信して(Step8)、MP−SDMA要求待ちに戻る。
【0098】
MP−SDMA通信が必要であると判断した場合(Yes)は、Step6で通信した結果をもって、実際の通信速度が要求速度を満足していたかどうかをチェックする(Step9)。実際の通信速度が満足していない場合(No)は、Step2に戻る。
【0099】
実際の通信速度が要求速度を満足している場合(Yes)には、次のタイムスロットでは基地局制御局が保持しているチャネル情報でOKかNGかを判断して通信することで、フィードバック量の削減を図る。具体的には、拡張プリアンブル信号を用いて、端末からチャネル情報OKかNGかを収集する(Step10)。
【0100】
ここで、実際の通信速度が要求速度を満足している割合が100%でなくても、あらかじめ決められた割合を越えていればStep10に進み、そうでなければStep2に進むものとしてもよい。
【0101】
端末を1つ選択し(Step11)、その端末のチャネル情報がOKかを調べる(Step12)。OKであれば(Yes)、MP−SDMA通信、SDMA−TDMA通信、MIMO−TDMA通信の候補として記憶する(Step13)。
【0102】
チャネル情報がNGの場合(No)には、その端末に関しては、送信側でチャネル情報を知らなくてもよい通信方式のTDMA通信候補として記憶する(Step14)。例えば、SIMO−TDMA通信で、受信側はアンテナダイバーシティにより最大比もしくは選択合成を行う通信の候補などが挙げられる。
【0103】
全ての端末について調べたかどうかをチェックし(Step15)、まだ調べていない端末があれば(No)、Step11に戻る。全ての端末について調べていれば(Yes)、チャネル情報OKの端末に対して、式(1)から式(6)を満たしているかどうかを計算することによって、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信、MP−SDMA通信を決定する(Step16)。
【0104】
各通信方式によって、チャネル情報OKの端末に対して推定速度が要求速度を満足しているかどうかを調べる(Step17)。推定速度が要求速度を満足していれば(Yes)、Step6に戻って、端末と選択された方式で通信を行う。もし、推定速度が要求速度を満足していない場合(No)は、Step2に戻って端末からチャネル情報を収集する。
【0105】
ここで、チャネル情報OKの端末に対して推定速度が要求速度を満足している割合が100%でなくても、あらかじめ決められた割合を越えていればStep6に戻って、そうでなければStep2に戻るとしてもよい。
【0106】
図15に、本発明の実施の形態における基地局の構成の一例を示す。基地局102(図1の102a,102bに対応)は、アンテナ1501(1501a〜1501d)と、無線部1502と、モデム部1506と、制御部1522と、局間インタフェース1527とからなる。
【0107】
無線部1502は、アンテナ1501に接続された送受信切り替え機能を持つ共用器1503(1503a〜1503d)と、共用器1503に接続された受信部1504(1504a〜1504d)および送信部1505(1505a〜1505d)からなる。受信部1504i(i=a〜d)は、アンテナ1501iからの受信信号をフィルタリング処理し、ベースバンド帯域のアナログ信号に変換した後、ディジタル信号に変換(A/D変換)して、モデム部1506に出力する。一方、送信部1505i(i=a〜d)は、モデム部1506から出力されたディジタル信号をアナログ信号に変換(D/A変換)し、周波数帯域の変換と電力増幅を行った後、共用器1503iに出力する。
【0108】
モデム部1506は、受信信号スイッチ1507と、送信信号スイッチ1508と、受信器1509と、送信器1516と、拡張プリアンブル生成部1515と、パラレルシリアル(P/S)変換回路1514と、シリアルパラレル(S/P)変換回路1521とからなる。
【0109】
受信信号スイッチ1507は、無線部1502の出力である受信信号を、基地局内部の受信器1509で処理するか、それとも局間インタフェース1527を介して基地局制御局にそのまま受信信号をスルーで通知するかを切り替えるためのスイッチとして機能する。
【0110】
受信信号をスルーで基地局制御局に通知する場合は、パラレルシリアル変換回路1514でシリアル信号に変換した後、局間インタフェース1527の局間送信処理部1528で基地局と基地局制御局間の通信方式に合った信号に変換されて通知することになる。基地局と基地局制御局間は光通信モジュールでつながれていたり、イーサ、もしくは専用線であってもよい。
【0111】
受信器1509は、復調器1510と、パラレルシリアル変換回路1511と、誤り訂正復号器1512と、データ制御信号分離回路1513とからなる。受信器1509で受信信号を信号処理する場合は、復調器1510でSIMOまたはMIMO、SDMAの復調処理を行う。SIMOの復調では、例えば最大比合成した信号をOFDMで復調する。MIMO信号処理の例では、固有モード伝送の復調処理を行ったり、Zero Forcing、MMSE(Minimum Mean Square Error)やMLDの復調処理を行う。SDMAの場合も、Block DiagonalizationやTomlinson Harashima Precodingなどのよく知られた復調処理を行う。
【0112】
復調器1510で出力されたストリーム信号をパラレルシリアル変換回路1511によってシリアル信号に戻し、このシリアル信号に対して誤り訂正復号器1512で誤り訂正を行う。誤り訂正処理としては、ビタビ復号やターボ復号、LDPC復号などの方法を用いてもよい。データ制御信号分離回路1513で、復号された受信信号がデータ通信のデータなのか、シグナリングプロトコルに用いる制御信号なのかをヘッダ部分を調べることによって判別し、制御信号は制御部1522に出力し、データ信号であれば、局間インタフェース1527に出力して、局間送信処理部1528で変換されて基地局制御局、もしくはデータを受信する他のルータなどの装置にデータ送信される。
【0113】
送信信号スイッチ1508は、送信器1516の出力信号と、局間インタフェース1527を経由して基地局制御局から来た信号をシリアルパラレル変換回路1521でシリアルパラレル変換して出力した信号とを切り替える。マルチポイントSDMA通信を扱うときは、基地局制御局に切り替える。
【0114】
拡張プリアンブル生成部1515は、制御部1522からフィードバック判断情報を得て、この情報をプリアンブル信号に追加して、図9で説明した拡張プリアンブル信号を生成する。特に、フィードバック判断情報を追記する必要がない場合は、プリアンブル信号のみを生成する。
【0115】
送信器1516は、変調器1517と、シリアルパラレル変換回路1518と、誤り訂正符号器1519と、多重化回路1520とからなる。制御信号とデータ信号は、多重化回路1520で多重化され、誤り訂正符号器1519では受信側で誤り訂正を行うことができるように符号化処理を行う。符号化処理は、ビタビ符号や、ターボ符号、LDPC符号などであってもよい。この例では、誤り訂正符号器1519の出力をシリアルパラレル変換回路1518によって、4本のデータストリームに分離して、変調器1517でSIMO、またはMIMO、SDMAでOFDMベースの変調処理を行う。前述の復調処理で説明したような変調処理を行い、端末の受信器の復調処理と同じ通信方式で変調する。変調処理では、基地局と端末間のチャネル情報を用いて信号処理を行うが、制御部1522で保持しているチャネル情報データ1525が、物理メモリ上に保存されており、これにアクセスすることで、チャネル情報を取り出し、このチャネル情報から送信ウェイト行列などの計算を行う。
【0116】
制御部1522は、制御信号処理部1523と、フィードバック判断情報生成部1524と、チャネル推定トラッキング処理部1526とで構成される。この制御部1522が扱うデータとしては、チャネル情報データ1525のデータベースがある。
【0117】
制御信号処理部1523は、前述の図13の制御アルゴリズムを実行し、図2,3,4,11,12に示す制御フローを実行する。フィードバック判断情報生成部1524は、制御信号処理部1523の状態に応じて、図10のフィードバック判断情報を生成する。例えば、基地局が全ての端末からチャネル情報を収集する場合のフィードバックモードを決定したり、チャネル情報でOKかNGのみを収集する場合には、そのフィードバックモードを決定する。また、チャネル情報データ1525のデータベースを参照して、図10の端末IDや利用チャネルIDなどを決定する。その他の要素については、基地局が起動したときに、不揮発メモリなどに蓄えられている設定情報を参照することによって値が決まる。
【0118】
チャネル情報データ1525は、端末ごとにチャネル情報を蓄えており、基地局のアンテナ数N本、端末のアンテナ数M本とすると、N×Mの行列を1つのチャネル情報とし、このチャネル情報をL個分蓄えている構成をとっている。各行列の要素は、チャネルインパルスレスポンスであり、IQ信号を複素数で表現したものである。
【0119】
チャネル推定トラッキング処理部1526は、過去に基地局が用いたチャネル情報が、現時点でどのような状態になっているかを推定し、この推定結果の情報をチャネル情報データ1525に追加して戻す。推定アルゴリズムとしては、例えば時間的変動要因がJake’s Modelに従うと仮定した場合、チャネル変動の予測フィルタ重み付け計算をする手法などが知られており、この手法に従って予測した結果を計算する。なお、チャネル推定トラッキング処理部1526がない構成であってもよい。予測のための重み付けフィルタを用いた推定結果と、時折、収集するチャネル情報との差分を最小にするように重み付けフィルタを学習的に再構築してもよい。
【0120】
局間インタフェース1527は、データ制御信号分離回路1529と、局間送信処理部1528と、局間信号受信処理部1530とからなる。局間送信処理部1528は、モデム部1506のパラレルシリアル変換回路1514の出力や、受信器1509の出力のデータ信号や、制御部1522からの制御信号などを多重化して、基地局制御局や他の通信機器に対して信号を送信する。局間信号受信処理部1530は、基地局制御局から来た信号や、他の通信機器から受けた信号に対する受信信号処理を行った後、データ制御信号分離回路1529にてデータ信号と制御信号を分離し、データ信号についてはモデム部1506に、制御信号については制御部1522に受け渡す。
【0121】
図16に、本発明の実施の形態における基地局制御局の構成の一例を示す。基地局制御局101(図1の101aに対応)は、局間インタフェース1601と、モデム部1609と、制御部1623とからなる。
【0122】
局間インタフェース1601は、局間信号受信処理部1602と、局間信号送信処理部1603と、受信信号スイッチ1604と、送信信号スイッチ1605と、シリアルパラレル変換回路1606と、データ制御信号分離回路1607と、パラレルシリアル変換回路1608とからなる。
【0123】
基地局から受信した信号は、局間信号受信処理部1602で処理され、受信信号スイッチ1604にてモデム部1609の受信器1610を使う信号か、その必要のない信号かを分離する。基地局102の代わりに無線区間の復調や復号信号処理を基地局制御局101で行うときは、受信器1610が必要となる。
【0124】
局間インタフェース1601の受信信号スイッチ1604でデータ制御信号分離回路1607に出力された信号は、データ制御信号分離回路1607において、ヘッダ情報を解析することによって制御信号かデータ信号かを分離し、制御信号は制御部1623の制御信号処理部1624に出力する。データ信号である場合は、モデム部1609のデータ信号スイッチ1621に信号を受け渡す。受け渡された信号は、データ信号スイッチ1621によって、そのまま局間インタフェース1601の送信信号スイッチ1605に折り返し信号として受け渡す場合もあれば、無線区間に変調をかけて送信するためにモデム部1609の送信器1616に引き渡す場合などがある。送信信号スイッチ1605は、モデム部1609のデータ信号スイッチ1621で折り返された信号や、モデム部1609の送信器1616にて変調された信号をパラレルシリアル変換回路1608でシリアル信号にされた信号を選択し、局間信号送信処理部1603に渡す。局間信号送信処理部1603は、受け取った信号を、基地局や他の通信機器へデータ信号や制御信号として送信する。
【0125】
モデム部1609は、受信器1610と、送信器1616と、拡張プリアンブル生成部1615と、データ信号スイッチ1621と、制御信号スイッチ1622とからなる。受信器1610と送信器1616は、基本的に基地局102の受信器1509や送信器1516と同様の機能を持っている。すなわち、受信器1610は、復調器1611、パラレルシリアル変換回路1612、誤り訂正復号器1613、データ制御信号分離回路1614からなる。また、送信器1616は、変調器1617、シリアルパラレル変換回路1618、誤り訂正符号器1619、多重化回路1620からなる。複数の基地局のアンテナ総数分に相当してシリアルパラレル変換やパラレルシリアル変換の並列度を高くしている点が異なる。
【0126】
制御部1623は、制御信号処理部1624と、フィードバック判断情報生成部1625と、チャネル推定トラッキング処理部1627とからなる。この制御部1623が扱うデータとしては、チャネル情報データ1626のデータベースがある。
【0127】
制御信号処理部1624は、図14で説明した制御アルゴリズムの動作を行い、図2,3,4,11,12に示す制御フローを実行する。制御信号処理部1624が扱う制御信号としては、モデム部1609の受信器1610を介して得た信号や、局間インタフェース1601のデータ制御信号分離回路1607から来た信号などを受信する。マルチポイントSDMA処理を行っている場合は、モデム部1609の受信器1610などを必要とするが、基地局102の制御部1522から送信される制御信号は、後者のデータ制御信号分離回路1607経由で制御部1623に届けられる。制御部1623の制御信号処理部1624で生成された制御信号は、モデム部1609の制御信号スイッチ1622を介して、送信器1616に出力したり、直接、局間インタフェース1601の送信信号スイッチ1605に出力して受け渡される。
【0128】
チャネル情報データ1626やフィードバック判断情報生成部1625、チャネル推定トラッキング処理部1627は、基地局で説明したものと同等の機能を持つ。フィードバック判断情報生成部1625で生成した情報をもとに、拡張プリアンブル生成部1615で拡張プリアンブル信号を生成し、各基地局を経由して拡張プリアンブル信号を送信する。
【0129】
図17に、本発明の実施の形態における端末の構成の一例を示す。端末103(図1の103a〜103dに対応)は、アンテナ1701a,1701bと、無線部1702と、モデム部1706と、制御部1718と、外部インタフェース1724とからなる。
【0130】
無線部1702は、基地局102で説明したものと同様の機能を持つブロック構成となっている。すなわち、無線部1702は、共用器1703a,1703b、受信部1704a,1704b、送信部1705a,1705bからなる。図17の例ではアンテナ本数が2本である場合の例を書いてあるが、4本の場合は基地局と同じ構成になる。
【0131】
モデム部1706は、受信器1707と、送信器1713とからなる。受信器1707は、基地局にある受信器1509と基本的に同じ構成である。すなわち、受信器1707は、復調器1709、パラレルシリアル変換回路1710、誤り訂正復号器1711、データ信号分離回路1712からなる。復調器1709が、復調処理を行うためには、プリアンブル信号を受信した際に、チャネル推定を行う。このチャネル推定結果を制御部1718のチャネル情報データ1721として蓄積する。
【0132】
送信器1713も、基地局の送信器1516と同じ構成である。すなわち、送信器1713は、変調器1714、シリアルパラレル変換回路1715、誤り訂正符号器1716、多重化回路1717からなる。
【0133】
制御部1718は、制御信号処理部1719と、チャネル情報判定処理部1720と、チャネル推定トラッキング処理部1722とからなる。制御部1718が扱うデータとしては、チャネル情報データ1721と、復号誤り率データ1723のデータベースがある。チャネル情報データ1721は、復調器1709のチャネル推定結果をデータベースとして蓄積する。このデータに対して、時間的変動を推測するのがチャネル推定トラッキング処理部1722であり、基地局のチャネル推定トラッキング処理部1526と同じ動作をする。また、基地局と同じ結果を得るためにも、予測のための重み付けフィルタは基地局に揃えておく必要がある。これは基地局と端末間で予め、プロトコルで揃っているものとする。また、チャネル推定トラッキング処理部1722がない構成であってもよい。
【0134】
制御信号処理部1719は、図2,3,4,11,12に示す制御フローを実行する。基地局が指定するフィードバック判断情報に従って、チャネル情報を基地局に通知したり、チャネル情報がOKかNGかの判定結果を通知すればよい。
【0135】
チャネル情報がOKかNGかを判定する方法を以下に示す。まず、図10のフィードバック判断情報のフォーマットからフィードバック判断種別とフィードバック判断閾値を抽出する。フィードバック判断種別で、チャネル相関係数が指定されていた場合は、次のように相関係数を求め、閾値との比較によって判断を行う。具体的には、チャネル情報データ1721を参照することによって、最新のプリアンブル信号に対して復調器1709が出力したチャネル推定結果と基地局で利用しているチャネル情報とを参照し、例えば、時刻tにおけるOFDM信号のサブキャリアkにおけるチャネル推定結果の応答行列のi行j列成分をHijk(t)とし、基地局で利用しているチャネル情報として、時刻t−τの情報をHijk(t−τ)とした場合、次の式(7)によって相関係数を計算し、相関係数が閾値以上ならばOK、それ以外ならばNGを通知する。
【0136】
【数1】
【0137】
ここで、A[*]は、時刻tから過去に遡って得られたデータに対してN個のサンプルを用いて、Nサンプルの標本平均を表すものとする。ここで、H’は、チャネルHに対する複素共役転置行列を表すものとする。
【0138】
次に、図10のフィードバック判断種別が復号誤り率を指定していた場合におけるチャネル情報のOK、NGの判断方法について述べる。この場合、復号誤り率データ1723を参照する。復号誤り率は、外部インタフェース1724にある復号誤り率測定部1725によって測定される。この測定方法としては、CRC判定を行ってフレーム単位であっているかどうかのフレーム誤り率を計算し、その結果を通知する。これ以外の測定方法としては、既知のパターンをデータ信号の中に埋め込んでおき、そのパターン結果と復号結果とのずれた数を計算する方法もある。もしくは、復号されたデータ信号を再度符号化し、符号化されたデータと誤り訂正復号器の入力との差を求めて誤り訂正を行ったbit数を用いて誤り率のデータとしてもよい。このようにして判断されたデータの誤り率を、フィードバック判断閾値と比較することによって、誤り率が閾値より大きければ、チャネル情報をNGと判断し、閾値よりも小さければチャネル情報をOKと判断する。
【0139】
外部インタフェース1724は、例えば端末における入出力デバイスとして、例えばマイクやスピーカなどに接続するインタフェースを持つ。音声端末の場合は、コーデック1726の処理を搭載しており、モデム部1706とデータのやり取りを行う。
【0140】
図18に、本発明の別の実施の形態における制御シーケンスの一例(端末が送信する信号でチャネル情報を基地局が測定する例)を示す。前述の実施の形態では、基地局のプリアンブル信号を受信した端末がチャネル推定を行って、チャネル情報を得て、その情報を基地局に通知したり、チャネル情報がOKかNGかを判断する機能を端末に持たせていたが、図18に示す別の実施の形態は、この機能を基地局に持たせた場合の例である。基地局にも復調器1510(図15)があるので、チャネル推定結果を用いれば同様のことができる。
【0141】
まず、チャネル情報収集期間において、基地局102aからプリアンブル信号要求の制御メッセージを通知する。このとき、拡張プリアンブルを用いて、端末103a,103b,103c,103d側がチャネル情報OK、NGを判断したものと同様の判断を下し、チャネル情報OKと判断した場合にのみ、端末からプリアンブル信号を送信するというプリアンブル送信判定処理を行う。このプリアンブル送信判定処理をせずに、全部の端末から順にプリアンブル信号を送信することとしてもよい。ただし、収容する端末数が多い場合は、比較的、チャネル情報OKの端末に予め絞ってプリアンブル信号を送信した方が、トータルでプリアンブル信号を基地局が受ける時間が短くて済む。
【0142】
例えば、端末103aが、プリアンブル送信判定でプリアンブル信号を送信すると決定したら、送信する周波数を変更する。基地局から端末への下り信号と、端末から基地局の上り信号で同じ周波数を用いるTDD(Time Division Duplex)システムであれば、周波数を変更しなくてもよい。上り信号と下り信号で異なる周波数を用いるFDD(Frequency Division Duplex)システムでは、下り信号で活用するチャネル情報を知るためには、端末が周波数を下り信号で用いている信号に変更してからプリアンブル信号を送信すれば、そのプリアンブル信号を受信した基地局は下り信号のチャネル情報と同じチャネル推定結果が得られる。同様にして、端末103b,103c,103dからもプリアンブル信号を送信し、チャネル推定によって最新のチャネル情報を収集する。
【0143】
次に、タイムスロット#1(MP−SDMA)において、チャネル情報収集期間で得られたチャネル情報と、基地局が活用しているチャネル情報との相関係数を式(7)によって求めることによって、相関係数が閾値以上ならばチャネル情報OK、それ以外ならばNGと判断して、基地局102a,102bの間でチャネル情報がOK/NGの結果を情報交換する。チャネル情報OKの情報を用いて、MP−SDMAの送信処理を行って、各端末にSDMAデータ信号を送信する。このとき、基地局102aは、収容している従属端末以外からのチャネル情報も収集しているため、基地局102aで閉じてMP−SDMAの信号処理を行うことが可能となり、基地局制御局101aを介さないでも信号処理を行うことが可能になる。もちろん、MP−SDMAの信号処理を基地局制御局101aで行う形態も可能である。
【0144】
図19に、本発明の別の実施の形態における基地局が自律的にマルチポイントSDMA通信を決定する場合の制御シーケンスの一例を示す。
【0145】
このシーケンスでは、チャネル情報収集期間において、基地局102aから端末103a,103b,103c,103dへの下り信号の周波数で、端末がプリアンブル信号を送信する。これによって、基地局は下り信号で通信可能な全ての端末に対するチャネル情報を取得することができる。
【0146】
次に、通信モード決定期間において、チャネル情報収集期間で収集したチャネル情報をもとに、従属する端末に対して、式(1)から式(4)を用いて、SIMO−TDMA通信、MIMO−TDMA通信、SDMA−TDMA通信のいずれが要求速度を満たすかを計算し、通信モードを決定する。
【0147】
従属端末が要求する通信速度を満たせなくなったことを検出した基地局102aは、周囲の基地局102bにブロードキャストメッセージとして、MP−SDMAリクエストを出す。この制御信号には、MP−SDMA対象となる端末のIDリストが掲載されている。周囲の基地局102bは、MP−SDMAリクエストを受け取ると、端末IDリストを調べてMP−SDMAに加わることが可能な場合は、要求した基地局102aに対してMP−SDMA参加可能通知を送る。この制御信号には、端末IDと、その端末IDに対するチャネル情報を通知する。
【0148】
基地局102aは、MP−SDMAを行う可能性のある基地局から、端末に関するチャネル情報が集約されるため、そのチャネル情報を用いて、MP−SDMAを行った場合に端末の要求速度を満たせるかどうかを調べる。要求速度を満たしているようであればMP−SDMA実行通知を周囲の基地局102bと基地局制御局101aに通知する。もし、要求速度を満たせない場合は、要求速度を満たしていない端末に対して接続拒否を行う。
【0149】
MP−SDMA実行通知を発行した場合、要求を発行した基地局102aは、MP−SDMA通信に加わる基地局102bに対してSDMAの信号処理を行うための情報(その端末に関するチャネル情報全て、もしくはその基地局で行うべきプリコーディング情報)などを通知し、基地局102bのアンテナからどういった信号を出すのか必要な情報を提供する。
【0150】
そして、タイムスロット#1(MP−SDMA)において、基地局制御局101aは、MP−SDMA通信をする複数の基地局に対して同じデータ信号をコピーして信号を送る。各基地局では、MP−SDMAの演算処理を行ってSDMAデータ信号を生成し、端末に送信する。このようにして、基地局が自律的にMP−SDMA通信を行うことが可能になる。
【0151】
なお、チャネル情報を収集するフェーズである通信モード決定期間では、図18のようなフィードバック情報を削減するための方法を用いてもよい。
【0152】
以上説明した本発明の実施の形態および別の実施の形態によって得られる効果を纏めると、以下のようになる。
【0153】
(1)端末の要求通信速度を満たすために最適な通信モードを自動的に切り替えることが可能となり、無線区間のリソースを要求速度に応じて必要なだけ活用することができる。特に、複数の基地局が連携して、複数の端末に同時通信を行うマルチポイントSDMA通信では、送信側のアンテナ数を実質的に多く見せることにより、1基地局ではサポートできなかったシステム容量を増大する効果がある。このマルチポイントSDMA通信とするか、1つの基地局内でSDMA通信やMIMO通信を行うのか、自動的に切り替えることによって、これまで収容できなかったトラフィックまで収容可能となる。また、最初からマルチポイントSDMA通信のように固定的にシステムを組む必要がなく、端末のトラフィックが地理的に偏って発生するような場合、必要な基地局間で自動的にマルチポイントSDMA通信を自律的に構築することが可能となり、トラフィックの分布に応じて、必要なリソース割り当てが実現できる。
【0154】
(2)各通信モードにおいて、送信アンテナと受信アンテナ間のチャネル情報の変動量が少ないユーザは、本来、フィードバックを行わなくてもよいので、送信側が利用しているチャネル情報が、そのまま利用可能なのかどうかだけフィードバックすれば、フィードバックの情報量を削減することができ、オーバヘッド削減によって、ユーザ当たりの周波数利用効率を向上することができる。特に、マルチポイントSDMA通信のように、複数の基地局と、その配下にある端末の数が増えるため、チャネル情報のフィードバック量が飛躍的に増えてしまい、オーバヘッドによって、マルチポイントSDMA通信をするメリットがなくなってしまうという問題を解決し、マルチポイントSDMA通信のメリットを享受することによって、システム全体のスループットを向上させ、エリア内に収容可能なユーザ数を増加させることができる。
【0155】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、無線通信システムに関し、特に、複数の送受信アンテナを持つ複数の基地局と、各基地局に従属する複数の端末との間でデータ送受信を行う方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0157】
101a,101b:基地局制御局、102a,102b:基地局、103a〜d:端末、104:ゲートウェイ、105:コアネットワーク、
1501a〜d:アンテナ、1502:無線部、1503a〜d:共用器、1504a〜d:受信部、1505a〜d:送信部、1506:モデム部、1507:受信信号スイッチ、1508:送信信号スイッチ、1509:受信器、1510:復調器、1511:パラレルシリアル変換回路、1512:誤り訂正復号器、1513:データ制御信号分離回路、1514:パラレルシリアル変換回路、1515:拡張プリアンブル生成部、1516:送信器、1517:変調器、1518:シリアルパラレル変換回路、1519:誤り訂正符号器、1520:多重化回路、1521:シリアルパラレル変換回路、1522:制御部、1523:制御信号処理部、1524:フィードバック判断情報生成部、1525:チャネル情報データ、1526:チャネル推定トラッキング処理部、1527:局間インタフェース、1528:局間送信処理部、1529:データ制御信号分離回路、1530:局間信号受信処理部、
1601:局間インタフェース、1602:局間信号受信処理部、1603:局間信号送信処理部、1604:受信信号スイッチ、1605:送信信号スイッチ、1606:シリアルパラレル変換回路、1607:データ制御信号分離回路、1608:パラレルシリアル変換回路、1609:モデム部、1610:受信器、1611:復調器、1612:パラレルシリアル変換回路、1613:誤り訂正復号器、1614:データ制御信号分離回路、1615:拡張プリアンブル生成部、1616:送信器、1617:変調器、1618:シリアルパラレル変換回路、1619:誤り訂正符号器、1620:多重化回路、1621:データ信号スイッチ、1622:制御信号スイッチ、1623:制御部、1624:制御信号処理部、1625:フィードバック判断情報生成部、1626:チャネル情報データ、1627:チャネル推定トラッキング処理部、
1701a,1701b:アンテナ、1702:無線部、1703a,1703b:共用器、1704a,1704b:受信部、1705a,1705b:送信部、1706:モデム部、1707:受信器、1709:復調器、1710:パラレルシリアル変換回路、1711:誤り訂正復号器、1712:データ信号分離回路、1713:送信器、1714:変調器、1715:シリアルパラレル変換回路、1716:誤り訂正符号器、1717:多重化回路、1718:制御部、1719:制御信号処理部、1720:チャネル情報判定処理部、1721:チャネル情報データ、1722:チャネル推定トラッキング処理部、1723:復号誤り率データ、1724:外部インタフェース、1725:復号誤り率測定部、1726:コーデック。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムであって、
複数の第一のアンテナを持つ複数の端末と、
複数の第二のアンテナを有し、前記第二のアンテナと前記第一のアンテナとの間のチャネル情報に基づいて計算される、前記端末の少なくとも一と通信を行う通信モードの通信容量に基づいて、各端末が要求する通信速度に対応するいずれか一の通信モードを、複数の通信モードのうちから選択する基地局と、を有する、ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項1】
無線通信システムであって、
複数の第一のアンテナを持つ複数の端末と、
複数の第二のアンテナを有し、前記第二のアンテナと前記第一のアンテナとの間のチャネル情報に基づいて計算される、前記端末の少なくとも一と通信を行う通信モードの通信容量に基づいて、各端末が要求する通信速度に対応するいずれか一の通信モードを、複数の通信モードのうちから選択する基地局と、を有する、ことを特徴とする無線通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−93879(P2013−93879A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−284076(P2012−284076)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2010−522741(P2010−522741)の分割
【原出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2010−522741(P2010−522741)の分割
【原出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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