無線通信システム、無線基地局、移動通信端末、および通信制御方法
【課題】ユーザ端末の無線接続先を適切に選択する。
【解決手段】無線通信システム1が、複数の無線基地局100,200と複数の移動通信端末300,400とを備える。各移動通信端末300,400は各無線基地局100,200からの電波の受信品質を測定する。干渉抑圧合成を実行可能な第1移動通信端末300は第1バイアス値αを用いて第2無線基地局200からの電波の受信品質値R2を補正する。干渉抑圧合成を実行不可能な第2移動通信端末400は、第1バイアス値αより低い第2バイアス値βを用いて第2無線基地局200からの電波の受信品質値R2を補正する。第1無線基地局100は、第1受信電力値R1および補正された第2受信電力値R2+α,R2+βのうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局100,200を当該移動通信端末300,400の無線接続先として選択する。
【解決手段】無線通信システム1が、複数の無線基地局100,200と複数の移動通信端末300,400とを備える。各移動通信端末300,400は各無線基地局100,200からの電波の受信品質を測定する。干渉抑圧合成を実行可能な第1移動通信端末300は第1バイアス値αを用いて第2無線基地局200からの電波の受信品質値R2を補正する。干渉抑圧合成を実行不可能な第2移動通信端末400は、第1バイアス値αより低い第2バイアス値βを用いて第2無線基地局200からの電波の受信品質値R2を補正する。第1無線基地局100は、第1受信電力値R1および補正された第2受信電力値R2+α,R2+βのうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局100,200を当該移動通信端末300,400の無線接続先として選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線基地局、移動通信端末、および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局(マクロ基地局、ピコ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド(Remote Radio Head)等)を重層的に設置したヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)が提案されている。ヘテロジーニアスネットワークにおいては、送信電力(送信能力)の大きい基地局(例えばマクロ基地局)の方が、送信電力(送信能力)の小さい基地局(例えばピコ基地局)と比較して、セルサーチまたはハンドオーバの段階でユーザ端末の無線接続先として選択されやすい。したがって、送信電力の大きい基地局にユーザ端末からの接続が集中し、ひいては通信負荷が過大となる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−514367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、無線通信システムの負荷、トラヒック量等の通信環境に応じて通信セル境界を変化させ、ユーザ端末の接続先を制御する技術が開示されている。例えば、マクロセル基地局に接続するユーザ端末に対するマイクロセル基地局からの干渉電力の増大に応じて、マイクロセル基地局の通信セル境界(セルの範囲)が狭められる(すなわち、ユーザ端末が、マイクロセル基地局からの送信電力から所定の補正値(バイアス値)を減じる)ことが例示されている。しかしながら、ユーザ端末の通信環境が同じであっても、そのユーザ端末が有する機能によっては、そのユーザ端末に対する適切なセル範囲は異なる可能性がある。
【0005】
以上の事情に鑑み、本発明は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局を含む無線通信システムにおいて、各ユーザ端末の有する機能に応じて適切なセル範囲を設定し、各ユーザ端末の無線接続先を適切に選択することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無線通信システムは、第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と、前記各移動通信端末の無線接続先となる無線基地局を選択する接続先選択部とを備える無線通信システムであって、前記第1移動通信端末が、当該第1移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、前記第2移動通信端末が、当該第2移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、前記第1無線基地局は、前記移動通信端末から通知された端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定する判定部と、前記判定部の判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定するバイアス値設定部と、前記第1移動通信端末へ前記第1バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備え、前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々は、前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得する受信品質測定部を備え、前記第1移動通信端末は、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記第1バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部と、前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記受信品質補正部で補正された第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知する受信品質通知部とを備え、前記第2移動通信端末は、前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部と、前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記受信品質補正部で補正された第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知する受信品質通知部とを備え、前記接続先選択部は、前記受信品質通知部から通知された前記第1受信品質値および前記第2受信品質値のうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する。
以上の構成において、「バイアス値を用いて受信品質値を補正する」ことは、「0であるバイアス値を用いて受信品質値を補正する」こと、すなわち受信品質値を補正しないことをも包摂する概念である。第1バイアス値よりも第2バイアス値が低いことから、値が0となり得るのは第2バイアス値である。
【0007】
以上の構成によれば、第1無線基地局から受信した電波の第1受信品質値と、干渉抑圧合成の実行可否に応じて設定されるバイアス値を用いて補正された第2受信品質値とに基づいて、接続先選択部が、当該移動通信端末が接続すべき無線基地局を選択するから、バイアス値による補正がされない構成と比較して、移動通信端末の無線接続先として第2無線基地局が選択される(移動通信端末が第2無線基地局にオフロードされる)ケースが増大し得る。
また、干渉抑圧合成を実行可能な第1移動通信端末にて用いられる第1バイアス値が、干渉抑圧合成を実行不可能な第2移動通信端末にて用いられる第2バイアス値を上回るから、第1移動通信端末の無線接続先として第2無線基地局が選択されるケースが増大し得る。
【0008】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記判定部の判定に基づき、前記第2移動通信端末に対するバイアス値として前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を設定し、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部は、前記第2移動通信端末へ前記第2バイアス値を通知し、前記第2移動通信端末の前記受信品質補正部は、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記第2バイアス値を用いて前記第2受信品質値を補正する。
以上の構成によれば、第1無線基地局が、第1バイアス値だけでなく第2バイアス値をも設定し通知する。
【0009】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記第2移動通信端末に対する前記第2バイアス値に所定値を加算することにより、前記第1移動通信端末に対する前記第1バイアス値を設定する。
以上の構成によれば、第2バイアス値が定まると第1バイアス値も定まるので、第1バイアス値を個別に設定しなくてよいから、構成が簡易となり得る。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、複数の前記第1移動通信端末の各々における無線通信の成功確率に応じて当該第1移動通信端末に対する第1バイアス値を設定する。
以上の構成によれば、無線通信の成功確率に応じて第1バイアス値が適切に設定される。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局が前記接続先選択部を備える。
以上の構成によれば、第1無線基地局が移動通信端末の無線接続先を選択し得る。
【0012】
本発明の好適な態様において、前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々が前記接続先選択部を備える。
以上の構成によれば、各移動通信端末が自身の無線接続先を選択し得る。
【0013】
本発明の無線基地局は、第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能であり、各々が前記各無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して通知することが可能な複数の移動通信端末と、を備える無線通信システムにおける第1無線基地局であって、前記第1無線基地局は、前記移動通信端末から通知された当該移動通信端末の端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定する判定部と、前記判定部の判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定するバイアス値設定部と、前記第1移動通信端末へ、当該第1移動通信端末にて測定された第2無線基地局からの電波の受信品質を増加させるように補正するための前記第1バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備える。
【0014】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記判定部の判定に基づき、前記第2移動通信端末に対するバイアス値として前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を設定し、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部は、前記第2移動通信端末へ、当該第2移動通信端末にて測定された第2無線基地局からの電波の受信品質を増加させるように補正するための前記第2バイアス値を通知する。
【0015】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記第2移動通信端末に対する前記第2バイアス値に所定値を加算することにより、前記第1移動通信端末に対する前記第1バイアス値を設定する。
【0016】
本発明の好適な態様によれば、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、複数の前記第1移動通信端末の各々における無線通信の成功確率に応じて当該第1移動通信端末に対する第1バイアス値を設定する。
【0017】
本発明の好適な態様において、無線基地局は、前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々から通知された受信品質のうち、最も良好な受信品質に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する接続先選択部をさらに備える。
【0018】
本発明の移動通信端末は、第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末とを備える無線通信システムにおける第1移動通信端末であって、自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部と、前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得する受信品質測定部とを備える。
【0019】
本発明の好適な態様において、移動通信端末は、前記第1無線基地局から通知された、前記第2移動通信端末に対するバイアス値よりも高いバイアス値を用いて、前記第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部をさらに備える。
【0020】
本発明の好適な態様において、移動通信端末は、前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記補受信品質補正部で補正された前記第2受信品質値とのうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する接続先選択部をさらに備える。
【0021】
本発明の通信制御方法は、第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と前記各移動通信端末の無線接続先となる無線基地局を選択する接続先選択部とを備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、前記第1移動通信端末が、当該第1移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む端末能力情報を前記第1無線基地局に通知することと、前記第2移動通信端末が、当該第2移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない端末能力情報を前記第1無線基地局に通知することと、前記第1無線基地局が、前記移動通信端末から通知された端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定することと、判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定することと、前記第1移動通信端末へ前記第1バイアス値を通知することと、前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々が、前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得することと、前記第1移動通信端末が、前記第1無線基地局から通知された前記第1バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正することと、取得した前記第1受信品質値と補正した第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知することと、前記第2移動通信端末が、前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正することと、取得した前記第1受信品質値と補正した第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知することと、前記接続先選択部が、通知された前記第1受信品質値および前記第2受信品質値のうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択することとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るIRC端末の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る非IRC端末の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るマクロ基地局の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係るピコ基地局の構成を示すブロック図である。
【図6】前記無線通信システムにおける受信電力値の補正動作を示す図である。
【図7】IRC端末から見た前記補正によるピコセルの範囲の拡張を示す図である。
【図8】非IRC端末から見た前記補正によるピコセルの範囲の拡張を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る受信電力値の補正動作の説明図である。
【図10】本発明の変形例に係るIRC端末の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の変形例に係る非IRC端末の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム1のブロック図である。無線通信システム1は、マクロ基地局(マクロeNodeB(evolved Node B))100と、ピコ基地局(ピコeNodeB)200と、干渉抑圧合成(Interference Rejection Combining,IRC)を実行可能であるIRC端末300と、干渉抑圧合成を実行不可能である非IRC端末400とを備える。なお、以下において、IRC端末300と非IRC端末400とを併せて「ユーザ端末(User Equipment)UE」と称する場合がある。
【0024】
干渉抑圧合成とは、3GPP(Third Generation Partnership Project)におけるLTE(Long Term Evolution) Advancedにおいて検討されているユーザ端末UEの受信技術であり、無線基地局からユーザ端末UEへの下りリンク通信に関して、在圏基地局(所望基地局)からの所望電波ビームに対する干渉基地局からの干渉電波ビームの干渉を、ユーザ端末UEにおいて抑圧する(reject)ように、ユーザ端末UEにおいて各受信アンテナで得られる信号に重み付けを与える技術である。干渉抑圧合成については、例えば、特表2000-511370号公報およびR1-111031, 3GPP TSG RAN WG1 Meeting #64, Taipei, Taiwan, 21st - 25th February 2011, Agenda item: 6.3.1.3, Source: Nokia, Nokia Siemens Networks, Title: "On advanced UE MMSE receiver modeling in system simulations", Document for: Discussion and Decisionに記載されている。
【0025】
無線通信システム1内の各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、IRC端末300、非IRC端末400等)は所定の無線アクセス技術(Radio Access Technology)、例えばLTEに従って無線通信を行う。本実施形態では、無線通信システム1がLTEに従って動作する形態を例示して説明するが、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、必要な設計上の変更を施した上で、他の無線アクセス技術にも適用可能である。
【0026】
マクロ基地局100とピコ基地局200とは有線または無線にて相互に接続される。マクロ基地局100はマクロセルCmを形成し、ピコ基地局200はピコセルCpを形成する。ピコセルCpは、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200に接続されたマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内に形成されるセルCである。1つのマクロセルCm内には、複数のピコセルCpが形成され得る。
【0027】
各無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)は、その基地局自身のセルCに在圏するユーザ端末UEと無線通信が可能である。逆に言うと、ユーザ端末UEは、ユーザ端末UE自身が在圏するセルC(マクロセルCm,ピコセルCp)に対応する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能である。
【0028】
マクロ基地局100はピコ基地局200と比較して無線送信能力(最大送信電力,平均送信電力等)が高いので、より遠くに位置するユーザ端末UEと無線通信可能である。したがって、マクロセルCmはピコセルCpよりも面積が大きい。例えば、マクロセルCmは半径数百メートルから数十キロメートル程度の大きさであり、ピコセルCpは半径数メートルから数十メートル程度の大きさである。
【0029】
以上の説明から理解されるように、無線通信システム1内のマクロ基地局100およびピコ基地局200は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局が重層的に設置されたヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)を構成する(3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Further advancements for E-UTRA physical layer aspects (Release 9); 3GPP TR 36.814 V9.0.0 (2010-03); Section 9A, Heterogeneous Deploymentsを参照のこと)。
【0030】
ピコセルCpがマクロセルCmの内部に重層的に形成される(オーバレイされる)ことを考慮すると、ユーザ端末UEがピコセルCp内に在圏する場合、そのユーザ端末UEは、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200と、そのピコセルCpを包含するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100との少なくともいずれか一方と無線通信が可能であると理解できる。
【0031】
なお、各基地局とユーザ端末UEとの間の無線通信の方式は任意である。例えば、下りリンクではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され、上りリンクではSC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用されてもよい。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に係るIRC端末300の構成を示すブロック図である。IRC端末300は無線通信部310と制御部330とを備える。なお、音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は、便宜的に省略されている。
【0033】
無線通信部310は、無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ312と、無線基地局から電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。また、無線通信部310は、IRC端末300が在圏するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100から、第1バイアス値αおよび接続先セル情報Tを受信するとともに、当該マクロ基地局100に対して端末能力情報(UE Capability)UCおよび受信電力値Rを送信する(詳細は後述される)。
【0034】
制御部330は、端末能力情報通知部332、受信品質測定部334、受信品質補正部336、受信品質通知部338、接続部340、およびIRC実行部342を要素として内包する。接続部340およびIRC実行部342は、下りリンク通信において、無線通信部310と協調して前述の干渉抑圧合成を実行し、干渉電力を抑圧することが可能である。制御部330の他の動作の詳細は後述される。
制御部330ならびに制御部330が内包する端末能力情報通知部332、受信品質測定部334、受信品質補正部336、受信品質通知部338、接続部340、およびIRC実行部342は、IRC端末300内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0035】
図3は、本発明の実施形態に係る非IRC端末400の構成を示すブロック図である。IRC端末300と同様に、非IRC端末400は無線通信部410と制御部430とを備える。概略的には、IRC端末300と非IRC端末400とはIRC実行部342を有するか否か(すなわち、干渉抑圧合成を実行可能であるか否か)において異なっており、その他の構成については同様である。
【0036】
無線通信部410は、非IRC端末400が在圏するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100から、第2バイアス値βおよび接続先セル情報Tを受信するとともに、当該マクロ基地局100に対して端末能力情報(UE Capability)UCおよび受信電力値Rを送信する。制御部430は、端末能力情報通知部432、受信品質測定部434、受信品質補正部436、受信品質通知部438、および接続部440を要素として内包し、IRC実行部を備えない。無線通信部410および制御部430の動作の詳細は後述される。
【0037】
図4は、本発明の実施形態に係るマクロ基地局100の構成を示すブロック図である。マクロ基地局100は、無線通信部110と基地局通信部120と制御部130とを備える。
【0038】
無線通信部110は、ユーザ端末UEと無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ112と、ユーザ端末UEから電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。また、無線通信部110は、マクロ基地局100に在圏するIRC端末300に対して第1バイアス値αおよび接続先セル情報Tを示す無線信号を送信し、マクロ基地局100に在圏する非IRC端末400に対して第2バイアス値βおよび接続先セル情報Tを示す無線信号を送信し、各ユーザ端末UEから端末能力情報UCおよび受信電力値Rを示す無線信号を受信する(詳細は後述される)。
基地局通信部120は、他の無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と通信を実行するための要素であり、他の無線基地局との間で電気信号を送受信する。マクロ基地局100が他の無線基地局と無線にて通信を行う場合は、無線通信部110が基地局通信部120を兼ねることも可能であることは当然に理解される。
【0039】
制御部130は、判定部132、バイアス値設定部134、バイアス値通知部136、および接続先選択部138を要素として内包する。制御部130ならびに制御部130が内包する判定部132、バイアス値設定部134、バイアス値通知部136、および接続先選択部138は、マクロ基地局100内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。制御部130の動作の詳細は後述される。
【0040】
図5は、本発明の実施形態に係るピコ基地局200の構成を示すブロック図である。ピコ基地局200は、無線通信部210と基地局通信部220と制御部230とを備える。
【0041】
無線通信部210は、ユーザ端末UEと無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ212と、ユーザ端末UEから電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。
基地局通信部220は、ピコ基地局200自身が接続されるマクロ基地局100と通信を実行するための要素であり、マクロ基地局100との間で電気信号を送受信する。なお、ピコ基地局200がマクロ基地局100と無線にて通信する場合には、無線通信部210が基地局通信部220を兼ねてもよい。
【0042】
ピコ基地局200は、マクロ基地局100が送信した情報(補正値(α,β)または接続先セル情報T等)を受信してユーザ端末UEに転送でき、ユーザ端末UEが送信した情報(端末能力情報UCまたは受信電力値R等)を受信してマクロ基地局100に転送できる。
具体的には、ピコ基地局200の基地局通信部220がマクロ基地局100から受信した情報(補正値(α,β)または接続先セル情報T等)を示す電気信号を、制御部230が無線通信部210に供給する。無線通信部210は、供給された電気信号を電波に変換してユーザ端末UEに対して送信する。また、ピコ基地局200の無線通信部210が受信・変換して得た端末能力情報UCまたは受信電力値R等を示す電気信号を、制御部230が基地局通信部220に供給する。基地局通信部220は、供給された電気信号をマクロ基地局100に対して送信する。以上の構成により、ユーザ端末UEがピコ基地局200に近接しているためマクロ基地局100との無線通信が困難である場合でも、ユーザ端末UEとマクロ基地局100との間で必要な情報を送受信することが可能となる。
なお、ピコ基地局200の制御部230は、ピコ基地局200内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0043】
図6を参照して、本実施形態に係る受信電力(受信品質)の補正動作を説明する。
ユーザ端末UEが、在圏するマクロ基地局100に対して端末能力情報UCを送信(通知)する(S100)。ユーザ端末UEがIRC端末300である場合、端末能力情報通知部332が無線通信部310を介して送信する端末能力情報UCは、そのIRC端末300自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む。具体的には、例えば、端末能力情報通知部332が、端末能力情報UCに対応する上りリンク制御信号のうち干渉抑圧合成可否を示すビットに、干渉抑圧合成が可能であることを意味する「1」を設定する。
【0044】
他方、ユーザ端末UEが非IRC端末400である場合、端末能力情報通知部432が無線通信部410を介して送信する端末能力情報UCは、その非IRC端末400自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない。具体的には、例えば、端末能力情報通知部432は、端末能力情報UCに対応する上りリンク制御信号のうち干渉抑圧合成可否を示すビットに干渉抑圧合成を実行不可能であることを意味する「0」を設定する。また、非IRC端末400が準拠する通信規格において、制御信号にIRC受信可否を示すビットが含まれない場合(すなわち、IRC受信について規定されていない場合)には、端末能力情報UCに干渉抑圧合成を実行可能である情報が元々含まれないから、その非IRC端末400の端末能力情報通知部432は端末能力情報UCをマクロ基地局100に単に通知すればよい。
【0045】
マクロ基地局100の判定部132が、ユーザ端末UEから報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末UEがIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する(S110)。端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む場合には、判定部132は、そのユーザ端末UEがIRC端末300であると判定する。一方、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない場合には、判定部132は、そのユーザ端末UEが非IRC端末400であると判定する。判定結果はバイアス値設定部134に伝達される。
【0046】
マクロ基地局100のバイアス値設定部134が、判定部132の判定に基づき、そのユーザ端末UEがIRC端末300である場合には第1バイアス値αを設定し、そのユーザ端末UEが非IRC端末400である場合には第2バイアス値βを設定する(S120)。第1バイアス値αは第2バイアス値βよりも高く設定される(α>β)。そのようなバイアス値(α,β)による作用効果は後に詳述される。
【0047】
バイアス値通知部136は、設定された第1バイアス値αを無線通信部110を介してIRC端末300に送信(通知)する。他方、バイアス値通知部136は、設定された第2バイアス値βを無線通信部110を介して非IRC端末400に送信(通知)する(S130)。
【0048】
ユーザ端末UE(300,400)の受信品質測定部(334,434)は、電波の受信品質として、マクロ基地局100から受信した電波の受信電力(例えば、参照信号受信電力。Reference Signal Received Power,RSRP)を測定して第1受信電力値R1を取得する一方、ピコ基地局200から受信した電波の受信電力を測定して第2受信電力値R2を取得する(S140)。
【0049】
IRC端末300の受信品質補正部336は、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2を、バイアス値通知部136から通知された第1バイアス値αを用いて補正する(S150)。具体的には、受信品質補正部336は、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2に第1バイアス値αを加算して、補正後の第2受信品質値(R2+α)を取得する。すなわち、図9に示すように、ピコ基地局200については、IRC端末300における電波の受信品質値R2が第1バイアス値αによりオフセットされて、補正後の第2受信電力値(R2+α)となる。
同様に、非IRC端末400の受信品質補正部436は、ピコ基地局200からの電波の第2受信電力値R2をバイアス値通知部136から通知された第2バイアス値βを用いて補正する(S150)。具体的には、上述のIRC端末300の例と同様にして、補正後の第2受信電力値(R2+β)が取得される。
【0050】
IRC端末300の受信品質通知部338は、第1受信電力値R1と、補正された第2受信電力値(R2+α)とを無線通信部310を介してマクロ基地局100に送信(通知)する(S160)。同様にして、非IRC端末400の受信品質通知部438は、第1受信電力値R1と、補正された第2受信電力値(R2+β)とを無線通信部410を介してマクロ基地局100に送信(通知)する(S160)。通知された各受信電力値(R1およびR2+α、またはR1およびR2+β)は、無線通信部110を介して接続先選択部138に供給される。
【0051】
マクロ基地局100の接続先選択部138は、ユーザ端末UE(IRC端末300または非IRC端末400)から通知された第1受信電力値R1および第2受信電力値(R2+αまたはR2+β)のうち、最も高い受信電力を示す受信電力値(すなわち、最も良好な受信品質を示す受信品質値)に対応する無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)を、そのユーザ端末UEの無線接続先として選択する(S170)。
例えば、IRC端末300については、第1受信電力値R1と、第1バイアス値αにて補正された第2受信電力値(R2+α)とが比較される。第1受信電力値R1よりも補正された第2受信電力値(R2+α)が大きい場合には(R1<R2+α)、接続先選択部138は、補正された第2受信電力値(R2+α)に対応するピコ基地局200をそのIRC端末300の接続先として選択する。
【0052】
接続先選択部138は、選択した無線接続先を示す接続先セル情報Tを、無線通信部110を介してユーザ端末UEに通知する(S180)。
ステップS190で、ユーザ端末UEの接続部(340、440)は、マクロ基地局100から受信した接続先セル情報Tが示す接続先セルに対して接続動作を実行する(既に接続先セル情報Tが示す接続先セルに接続している場合は、その接続を維持する)。例えば、ユーザ端末UEがマクロセルCmに接続している場合において、ピコセルCpを接続先として指定する接続先セル情報Tを接続部(340、440)が受信すると、接続部(340、440)は、指定されたピコセルCpへとユーザ端末UE自身を接続(オフロード)させる。
【0053】
図7および図8は、以上に説明した補正動作によるピコセルCpの範囲(ピコ基地局200からの受信電力値R2が、マクロ基地局100からの受信電力値R1を上回る範囲)の変化を示す図である。図7および図8において、原点OがピコセルCpの中心点(すなわち、ピコ基地局200が配置されるマクロセルCm内の位置)であり、半径r0がバイアス値(α,β)による補正がされる前のピコセルCpの半径である。また、図7および図8において、マクロ基地局100からの送信電力(干渉電力)等の外部環境は共通であり、ユーザ端末UEの種別(IRC端末300または非IRC端末400)が相違すると想定する。
【0054】
図7においては、IRC端末300に関して、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2が第1バイアス値αで補正された結果、ピコセルCpの半径がr0からr1に拡張している。一方、図8においては、非IRC端末400に関して、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2が第2バイアス値βで補正された結果、ピコセルCpの半径がr0からr2に拡張している。すなわち、受信品質補正部(336,436)による受信電力値R2の補正(バイアス値(α,β)による増加)は、各ユーザ端末UEにおけるピコ基地局200からの受信電力を擬似的に上昇させることで、ピコ基地局200が形成するピコセルCpの範囲を拡張させるように作用する。
【0055】
前述のように、第1バイアス値αが第2バイアス値βを上回る(α>β)ことから、第1バイアス値αによる拡張後のピコセルCpの半径r1は、第2バイアス値βによる拡張後のピコセルCpの半径r2を上回る。
また、以上から理解されるように、仮にピコ基地局200からの電波の受信電力値R2が一定であったとしても、ユーザ端末UEごとにピコセルCpの半径r(r1,r2)が相違し得る。
【0056】
図9は、図7および図8を参照して説明したピコセルCpの範囲の変化を、マクロ基地局100との関係も含めて説明する図である。前述のように、ユーザ端末UEは、マクロ基地局100およびピコ基地局200から電波を受信して受信電力を測定する。図9に示すように、測定される受信電力値(R1,R2)は各無線基地局から遠ざかるほど低下する。
【0057】
まず、ユーザ端末UEが、原点Oを中心とした半径r2の範囲から、原点Oを中心とした半径r0の範囲を除いた範囲(第2バイアス値βによる拡張後のピコセルCpの範囲から拡張前のピコセルCpの範囲を除いた範囲)に位置すると想定する。そのユーザ端末UEにおいては、ピコ基地局200からの受信電力値R2がマクロ基地局100からの受信電力値R1を上回るが、受信電力値R2を第1バイアス値αまたは第2バイアス値βで補正した値(R2+αまたはR2+β)は受信電力値R1を上回る。したがって、そのユーザ端末UEがIRC端末300と非IRC端末400とのいずれであっても、マクロ基地局100の接続先選択部138は、ピコ基地局200を無線接続先として選択する。
【0058】
次に、ユーザ端末UEが、原点Oを中心とした半径r1の範囲から、原点Oを中心とした半径r2の範囲を除いた範囲(第1バイアス値βによる拡張後のピコセルCpの範囲から第2バイアス値βによる拡張後のピコセルCpの範囲を除いた範囲)に位置すると想定する。そのユーザ端末UEにおいては、受信電力値R2を第1バイアス値αで補正した値(R2+α)は受信電力値R1を上回るが、受信電力値R2を第2バイアス値βで補正した値(R2+β)は受信電力値R1を下回る。したがって、そのユーザ端末UEがIRC端末300である場合には、接続先選択部138はピコ基地局200を無線接続先として選択するが、非IRC端末400である場合には、接続先選択部138はマクロ基地局100を無線接続先として選択する。
【0059】
以上の範囲(原点Oを中心とした半径r1の範囲から、原点Oを中心とした半径r2の範囲を除いた範囲)においては、第1受信電力値R1(マクロ基地局100からの干渉電力)が補正前の第2受信電力値R2を大きく上回るが、IRC端末300は干渉抑圧合成を実行してマクロ基地局100からの干渉電力を抑圧することができるから、ピコ基地局200からの電波を品質良く受信することが可能である。
他方、非IRC端末400は干渉抑圧合成を実行可能ではないから、ピコ基地局200からの電波を品質良く受信できない。したがって、非IRC端末400はマクロ基地局100に接続され、より品質の良いマクロ基地局100からの電波を受信する。
【0060】
以上に説明した実施の形態によれば、マクロ基地局100からの受信電力値R1(補正されない)と、バイアス値を用いて補正されたピコ基地局200からの受信電力値(R2+α,R2+β)とに基づいて、接続先選択部138が、そのユーザ端末UEが接続すべき無線基地局を選択するから、バイアス値による受信電力値の補正がされない構成と比較して、ユーザ端末UEの接続先としてピコ基地局200が選択される(ユーザ端末UEがピコ基地局200にオフロードされる)ケースが増大し得る。
【0061】
また、IRC端末300に対する第1バイアス値αが、非IRC端末400に対する第2バイアス値βよりも高く設定されるから、IRC端末300の接続先としてピコ基地局200が選択されるケースが増大し得る。すなわち、IRC端末300については、干渉抑圧合成が可能であるという特徴を活用してピコセルCpの範囲を拡張し、ピコ基地局200に接続され易くすることで、マクロ基地局100への無線接続の集中が抑制され得る。他方、非IRC端末400については、IRC端末300よりもピコセルCpの範囲が狭く設定されることにより、マクロ基地局100からの干渉電力の影響が抑制されるので、所望信号の受信品質が高く維持され得る。
【0062】
すなわち、ユーザ端末UEの種別(IRC端末300または非IRC端末400)に応じてバイアス値が設定されるので、複数種別のユーザ端末UEが混在する環境において、ピコ基地局200へのオフロード効果と、所望信号の高い受信品質およびユーザスループットの維持との双方が実現され得る。
【0063】
変形例
以上の実施の形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0064】
(1)変形例1
以上の実施形態では、マクロ基地局100の制御部130が接続先選択部138を備える。しかしながら、図10および図11に示すように、IRC端末300および非IRC端末400の各々が接続先選択部(344,442)を備えてもよい。以上の場合、マクロ基地局100の制御部130が接続先選択部138を備えなくてもよいことは当然に理解される。
【0065】
(2)変形例2
以上の実施形態では、マクロ基地局100のバイアス値設定部134が、第2バイアス値βを0でない正の値(β>0)であるように設定する。しかしながら、バイアス値設定部134が、第2バイアス値βを0に設定してもよい(β=0)。
また、バイアス値設定部134が第1バイアス値αのみを設定し、第2バイアス値βを設定しなくてもよい。以上の場合、バイアス値通知部136は非IRC端末400に第2バイアス値βを通知しなくてもよく、非IRC端末400はピコ基地局200からの電波の第2受信電力値R2を補正しなくてもよい。すなわち、第1バイアス値αのみが設定・通知され、IRC端末300のみにおいて第2受信電力値R2の補正が実行される構成も採用され得る。以上の構成によれば、IRC端末300のみで第2受信電力値R2の補正が実行されるから、構成が簡易となる。
しかしながら、第2バイアス値βが0でない正の値に設定され、第2受信電力値R2が補正される実施形態の構成によれば、非IRC端末400であってもピコ基地局200にオフロードされる可能性が高くなるから、マクロ基地局100への無線接続の集中を抑制する観点からは、実施形態の構成の方が好適である。
【0066】
(3)変形例3
以上の実施形態では、マクロ基地局100のバイアス値設定部134が、第1バイアス値αおよび第2バイアス値βをそれぞれ個別に設定する。以上の構成において、バイアス値設定部134が、IRC端末300における無線通信の成功確率(例えば、Ack/Nack(AckとNackとの比))に応じて、そのIRC端末300に対する第1バイアス値αを設定してもよい。特に、複数のIRC端末300が存在する場合において、IRC端末300ごとに第1バイアス値αが設定されると好適である。以上の構成によれば、IRC端末300ごとの通信環境に応じて第1バイアス値αが適切に設定され得る。
【0067】
(4)変形例4
マクロ基地局100のバイアス値設定部134が、非IRC端末400に対する第2バイアス値βに所定値γを加算することにより、IRC端末400に対する第1バイアス値α(α=β+γ)を設定してもよい。以上の構成によれば、バイアス値設定部134が第1バイアス値αおよび第2バイアス値βをそれぞれ個別に設定する構成と比較して、構成が簡易となる。
【0068】
(5)変形例5
以上の実施形態では、電波の受信品質として参照信号受信電力(RSRP)が採用されたが、信号対干渉雑音比(Signal-to-Interference and Noise Ratio,SINR)、参照信号受信品質(Reference Signal Received Quality)等が受信品質として採用されても良い。また、受信品質値が比で表される場合には、受信品質値にバイアス値が乗算されて補正後の受信品質値が算出されてもよい。
また、受信品質値がdB(比の対数)で表される場合には、dBで表された受信品質値に対しdBで表されたバイアス値を加算して補正後の受信品質値を算出してもよい。以上の形態が受信品質値にバイアス値を乗算する形態の一種であることは当然に理解される。
【0069】
(6)変形例6
以上の実施の形態では、マクロ基地局100よりも送信能力の低い無線基地局としてピコ基地局200が例示されたが、マイクロ基地局、ナノ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド等が送信能力の低い無線基地局として採用されてもよい。また、無線通信システム1の要素として、相異なる送信能力を有する複数の無線基地局の組合せ(例えば、マクロ基地局、ピコ基地局、およびフェムト基地局の組合せ)が採用されてもよい。
【0070】
(7)変形例7
ユーザ端末UE(IRC端末300および非IRC端末400)は、各無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能な任意の装置である。ユーザ端末UEは、例えばフィーチャーフォンまたはスマートフォン等の携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
【0071】
(8)変形例8
無線通信システム1内の各要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ端末UE)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1……無線通信システム、100……マクロ基地局、110……無線通信部、120……基地局通信部、130……制御部、132……判定部、134……バイアス値設定部、136……バイアス値通知部、138……接続先選択部、200……ピコ基地局、210……無線通信部、220……基地局通信部、230……制御部、300……IRC端末、310……無線通信部、330……制御部、332……端末能力情報通知部、334……受信品質測定部、336……受信品質補正部、338……受信品質通知部、340……接続部、342……IRC実行部、400……非IRC端末、410……無線通信部、430……制御部、432……端末能力情報通知部、434……受信品質測定部、436……受信品質補正部、438……受信品質通知部、440……接続部、α,β……バイアス値、γ……所定値、C……セル、Cm……マクロセル、Cp……ピコセル、O……原点、R(R1,R2)……受信電力値、T……接続先セル情報、UC……端末能力情報、UE……ユーザ端末、r(r0〜r2)……半径。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線基地局、移動通信端末、および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局(マクロ基地局、ピコ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド(Remote Radio Head)等)を重層的に設置したヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)が提案されている。ヘテロジーニアスネットワークにおいては、送信電力(送信能力)の大きい基地局(例えばマクロ基地局)の方が、送信電力(送信能力)の小さい基地局(例えばピコ基地局)と比較して、セルサーチまたはハンドオーバの段階でユーザ端末の無線接続先として選択されやすい。したがって、送信電力の大きい基地局にユーザ端末からの接続が集中し、ひいては通信負荷が過大となる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−514367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、無線通信システムの負荷、トラヒック量等の通信環境に応じて通信セル境界を変化させ、ユーザ端末の接続先を制御する技術が開示されている。例えば、マクロセル基地局に接続するユーザ端末に対するマイクロセル基地局からの干渉電力の増大に応じて、マイクロセル基地局の通信セル境界(セルの範囲)が狭められる(すなわち、ユーザ端末が、マイクロセル基地局からの送信電力から所定の補正値(バイアス値)を減じる)ことが例示されている。しかしながら、ユーザ端末の通信環境が同じであっても、そのユーザ端末が有する機能によっては、そのユーザ端末に対する適切なセル範囲は異なる可能性がある。
【0005】
以上の事情に鑑み、本発明は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局を含む無線通信システムにおいて、各ユーザ端末の有する機能に応じて適切なセル範囲を設定し、各ユーザ端末の無線接続先を適切に選択することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無線通信システムは、第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と、前記各移動通信端末の無線接続先となる無線基地局を選択する接続先選択部とを備える無線通信システムであって、前記第1移動通信端末が、当該第1移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、前記第2移動通信端末が、当該第2移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、前記第1無線基地局は、前記移動通信端末から通知された端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定する判定部と、前記判定部の判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定するバイアス値設定部と、前記第1移動通信端末へ前記第1バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備え、前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々は、前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得する受信品質測定部を備え、前記第1移動通信端末は、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記第1バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部と、前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記受信品質補正部で補正された第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知する受信品質通知部とを備え、前記第2移動通信端末は、前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部と、前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記受信品質補正部で補正された第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知する受信品質通知部とを備え、前記接続先選択部は、前記受信品質通知部から通知された前記第1受信品質値および前記第2受信品質値のうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する。
以上の構成において、「バイアス値を用いて受信品質値を補正する」ことは、「0であるバイアス値を用いて受信品質値を補正する」こと、すなわち受信品質値を補正しないことをも包摂する概念である。第1バイアス値よりも第2バイアス値が低いことから、値が0となり得るのは第2バイアス値である。
【0007】
以上の構成によれば、第1無線基地局から受信した電波の第1受信品質値と、干渉抑圧合成の実行可否に応じて設定されるバイアス値を用いて補正された第2受信品質値とに基づいて、接続先選択部が、当該移動通信端末が接続すべき無線基地局を選択するから、バイアス値による補正がされない構成と比較して、移動通信端末の無線接続先として第2無線基地局が選択される(移動通信端末が第2無線基地局にオフロードされる)ケースが増大し得る。
また、干渉抑圧合成を実行可能な第1移動通信端末にて用いられる第1バイアス値が、干渉抑圧合成を実行不可能な第2移動通信端末にて用いられる第2バイアス値を上回るから、第1移動通信端末の無線接続先として第2無線基地局が選択されるケースが増大し得る。
【0008】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記判定部の判定に基づき、前記第2移動通信端末に対するバイアス値として前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を設定し、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部は、前記第2移動通信端末へ前記第2バイアス値を通知し、前記第2移動通信端末の前記受信品質補正部は、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記第2バイアス値を用いて前記第2受信品質値を補正する。
以上の構成によれば、第1無線基地局が、第1バイアス値だけでなく第2バイアス値をも設定し通知する。
【0009】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記第2移動通信端末に対する前記第2バイアス値に所定値を加算することにより、前記第1移動通信端末に対する前記第1バイアス値を設定する。
以上の構成によれば、第2バイアス値が定まると第1バイアス値も定まるので、第1バイアス値を個別に設定しなくてよいから、構成が簡易となり得る。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、複数の前記第1移動通信端末の各々における無線通信の成功確率に応じて当該第1移動通信端末に対する第1バイアス値を設定する。
以上の構成によれば、無線通信の成功確率に応じて第1バイアス値が適切に設定される。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局が前記接続先選択部を備える。
以上の構成によれば、第1無線基地局が移動通信端末の無線接続先を選択し得る。
【0012】
本発明の好適な態様において、前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々が前記接続先選択部を備える。
以上の構成によれば、各移動通信端末が自身の無線接続先を選択し得る。
【0013】
本発明の無線基地局は、第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能であり、各々が前記各無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して通知することが可能な複数の移動通信端末と、を備える無線通信システムにおける第1無線基地局であって、前記第1無線基地局は、前記移動通信端末から通知された当該移動通信端末の端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定する判定部と、前記判定部の判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定するバイアス値設定部と、前記第1移動通信端末へ、当該第1移動通信端末にて測定された第2無線基地局からの電波の受信品質を増加させるように補正するための前記第1バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備える。
【0014】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記判定部の判定に基づき、前記第2移動通信端末に対するバイアス値として前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を設定し、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部は、前記第2移動通信端末へ、当該第2移動通信端末にて測定された第2無線基地局からの電波の受信品質を増加させるように補正するための前記第2バイアス値を通知する。
【0015】
本発明の好適な態様において、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記第2移動通信端末に対する前記第2バイアス値に所定値を加算することにより、前記第1移動通信端末に対する前記第1バイアス値を設定する。
【0016】
本発明の好適な態様によれば、前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、複数の前記第1移動通信端末の各々における無線通信の成功確率に応じて当該第1移動通信端末に対する第1バイアス値を設定する。
【0017】
本発明の好適な態様において、無線基地局は、前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々から通知された受信品質のうち、最も良好な受信品質に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する接続先選択部をさらに備える。
【0018】
本発明の移動通信端末は、第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末とを備える無線通信システムにおける第1移動通信端末であって、自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部と、前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得する受信品質測定部とを備える。
【0019】
本発明の好適な態様において、移動通信端末は、前記第1無線基地局から通知された、前記第2移動通信端末に対するバイアス値よりも高いバイアス値を用いて、前記第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部をさらに備える。
【0020】
本発明の好適な態様において、移動通信端末は、前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記補受信品質補正部で補正された前記第2受信品質値とのうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する接続先選択部をさらに備える。
【0021】
本発明の通信制御方法は、第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と前記各移動通信端末の無線接続先となる無線基地局を選択する接続先選択部とを備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、前記第1移動通信端末が、当該第1移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む端末能力情報を前記第1無線基地局に通知することと、前記第2移動通信端末が、当該第2移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない端末能力情報を前記第1無線基地局に通知することと、前記第1無線基地局が、前記移動通信端末から通知された端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定することと、判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定することと、前記第1移動通信端末へ前記第1バイアス値を通知することと、前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々が、前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得することと、前記第1移動通信端末が、前記第1無線基地局から通知された前記第1バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正することと、取得した前記第1受信品質値と補正した第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知することと、前記第2移動通信端末が、前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正することと、取得した前記第1受信品質値と補正した第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知することと、前記接続先選択部が、通知された前記第1受信品質値および前記第2受信品質値のうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択することとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るIRC端末の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る非IRC端末の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るマクロ基地局の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係るピコ基地局の構成を示すブロック図である。
【図6】前記無線通信システムにおける受信電力値の補正動作を示す図である。
【図7】IRC端末から見た前記補正によるピコセルの範囲の拡張を示す図である。
【図8】非IRC端末から見た前記補正によるピコセルの範囲の拡張を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る受信電力値の補正動作の説明図である。
【図10】本発明の変形例に係るIRC端末の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の変形例に係る非IRC端末の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム1のブロック図である。無線通信システム1は、マクロ基地局(マクロeNodeB(evolved Node B))100と、ピコ基地局(ピコeNodeB)200と、干渉抑圧合成(Interference Rejection Combining,IRC)を実行可能であるIRC端末300と、干渉抑圧合成を実行不可能である非IRC端末400とを備える。なお、以下において、IRC端末300と非IRC端末400とを併せて「ユーザ端末(User Equipment)UE」と称する場合がある。
【0024】
干渉抑圧合成とは、3GPP(Third Generation Partnership Project)におけるLTE(Long Term Evolution) Advancedにおいて検討されているユーザ端末UEの受信技術であり、無線基地局からユーザ端末UEへの下りリンク通信に関して、在圏基地局(所望基地局)からの所望電波ビームに対する干渉基地局からの干渉電波ビームの干渉を、ユーザ端末UEにおいて抑圧する(reject)ように、ユーザ端末UEにおいて各受信アンテナで得られる信号に重み付けを与える技術である。干渉抑圧合成については、例えば、特表2000-511370号公報およびR1-111031, 3GPP TSG RAN WG1 Meeting #64, Taipei, Taiwan, 21st - 25th February 2011, Agenda item: 6.3.1.3, Source: Nokia, Nokia Siemens Networks, Title: "On advanced UE MMSE receiver modeling in system simulations", Document for: Discussion and Decisionに記載されている。
【0025】
無線通信システム1内の各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、IRC端末300、非IRC端末400等)は所定の無線アクセス技術(Radio Access Technology)、例えばLTEに従って無線通信を行う。本実施形態では、無線通信システム1がLTEに従って動作する形態を例示して説明するが、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、必要な設計上の変更を施した上で、他の無線アクセス技術にも適用可能である。
【0026】
マクロ基地局100とピコ基地局200とは有線または無線にて相互に接続される。マクロ基地局100はマクロセルCmを形成し、ピコ基地局200はピコセルCpを形成する。ピコセルCpは、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200に接続されたマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内に形成されるセルCである。1つのマクロセルCm内には、複数のピコセルCpが形成され得る。
【0027】
各無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)は、その基地局自身のセルCに在圏するユーザ端末UEと無線通信が可能である。逆に言うと、ユーザ端末UEは、ユーザ端末UE自身が在圏するセルC(マクロセルCm,ピコセルCp)に対応する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能である。
【0028】
マクロ基地局100はピコ基地局200と比較して無線送信能力(最大送信電力,平均送信電力等)が高いので、より遠くに位置するユーザ端末UEと無線通信可能である。したがって、マクロセルCmはピコセルCpよりも面積が大きい。例えば、マクロセルCmは半径数百メートルから数十キロメートル程度の大きさであり、ピコセルCpは半径数メートルから数十メートル程度の大きさである。
【0029】
以上の説明から理解されるように、無線通信システム1内のマクロ基地局100およびピコ基地局200は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局が重層的に設置されたヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)を構成する(3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Further advancements for E-UTRA physical layer aspects (Release 9); 3GPP TR 36.814 V9.0.0 (2010-03); Section 9A, Heterogeneous Deploymentsを参照のこと)。
【0030】
ピコセルCpがマクロセルCmの内部に重層的に形成される(オーバレイされる)ことを考慮すると、ユーザ端末UEがピコセルCp内に在圏する場合、そのユーザ端末UEは、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200と、そのピコセルCpを包含するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100との少なくともいずれか一方と無線通信が可能であると理解できる。
【0031】
なお、各基地局とユーザ端末UEとの間の無線通信の方式は任意である。例えば、下りリンクではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され、上りリンクではSC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用されてもよい。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に係るIRC端末300の構成を示すブロック図である。IRC端末300は無線通信部310と制御部330とを備える。なお、音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は、便宜的に省略されている。
【0033】
無線通信部310は、無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ312と、無線基地局から電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。また、無線通信部310は、IRC端末300が在圏するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100から、第1バイアス値αおよび接続先セル情報Tを受信するとともに、当該マクロ基地局100に対して端末能力情報(UE Capability)UCおよび受信電力値Rを送信する(詳細は後述される)。
【0034】
制御部330は、端末能力情報通知部332、受信品質測定部334、受信品質補正部336、受信品質通知部338、接続部340、およびIRC実行部342を要素として内包する。接続部340およびIRC実行部342は、下りリンク通信において、無線通信部310と協調して前述の干渉抑圧合成を実行し、干渉電力を抑圧することが可能である。制御部330の他の動作の詳細は後述される。
制御部330ならびに制御部330が内包する端末能力情報通知部332、受信品質測定部334、受信品質補正部336、受信品質通知部338、接続部340、およびIRC実行部342は、IRC端末300内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0035】
図3は、本発明の実施形態に係る非IRC端末400の構成を示すブロック図である。IRC端末300と同様に、非IRC端末400は無線通信部410と制御部430とを備える。概略的には、IRC端末300と非IRC端末400とはIRC実行部342を有するか否か(すなわち、干渉抑圧合成を実行可能であるか否か)において異なっており、その他の構成については同様である。
【0036】
無線通信部410は、非IRC端末400が在圏するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100から、第2バイアス値βおよび接続先セル情報Tを受信するとともに、当該マクロ基地局100に対して端末能力情報(UE Capability)UCおよび受信電力値Rを送信する。制御部430は、端末能力情報通知部432、受信品質測定部434、受信品質補正部436、受信品質通知部438、および接続部440を要素として内包し、IRC実行部を備えない。無線通信部410および制御部430の動作の詳細は後述される。
【0037】
図4は、本発明の実施形態に係るマクロ基地局100の構成を示すブロック図である。マクロ基地局100は、無線通信部110と基地局通信部120と制御部130とを備える。
【0038】
無線通信部110は、ユーザ端末UEと無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ112と、ユーザ端末UEから電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。また、無線通信部110は、マクロ基地局100に在圏するIRC端末300に対して第1バイアス値αおよび接続先セル情報Tを示す無線信号を送信し、マクロ基地局100に在圏する非IRC端末400に対して第2バイアス値βおよび接続先セル情報Tを示す無線信号を送信し、各ユーザ端末UEから端末能力情報UCおよび受信電力値Rを示す無線信号を受信する(詳細は後述される)。
基地局通信部120は、他の無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と通信を実行するための要素であり、他の無線基地局との間で電気信号を送受信する。マクロ基地局100が他の無線基地局と無線にて通信を行う場合は、無線通信部110が基地局通信部120を兼ねることも可能であることは当然に理解される。
【0039】
制御部130は、判定部132、バイアス値設定部134、バイアス値通知部136、および接続先選択部138を要素として内包する。制御部130ならびに制御部130が内包する判定部132、バイアス値設定部134、バイアス値通知部136、および接続先選択部138は、マクロ基地局100内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。制御部130の動作の詳細は後述される。
【0040】
図5は、本発明の実施形態に係るピコ基地局200の構成を示すブロック図である。ピコ基地局200は、無線通信部210と基地局通信部220と制御部230とを備える。
【0041】
無線通信部210は、ユーザ端末UEと無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ212と、ユーザ端末UEから電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。
基地局通信部220は、ピコ基地局200自身が接続されるマクロ基地局100と通信を実行するための要素であり、マクロ基地局100との間で電気信号を送受信する。なお、ピコ基地局200がマクロ基地局100と無線にて通信する場合には、無線通信部210が基地局通信部220を兼ねてもよい。
【0042】
ピコ基地局200は、マクロ基地局100が送信した情報(補正値(α,β)または接続先セル情報T等)を受信してユーザ端末UEに転送でき、ユーザ端末UEが送信した情報(端末能力情報UCまたは受信電力値R等)を受信してマクロ基地局100に転送できる。
具体的には、ピコ基地局200の基地局通信部220がマクロ基地局100から受信した情報(補正値(α,β)または接続先セル情報T等)を示す電気信号を、制御部230が無線通信部210に供給する。無線通信部210は、供給された電気信号を電波に変換してユーザ端末UEに対して送信する。また、ピコ基地局200の無線通信部210が受信・変換して得た端末能力情報UCまたは受信電力値R等を示す電気信号を、制御部230が基地局通信部220に供給する。基地局通信部220は、供給された電気信号をマクロ基地局100に対して送信する。以上の構成により、ユーザ端末UEがピコ基地局200に近接しているためマクロ基地局100との無線通信が困難である場合でも、ユーザ端末UEとマクロ基地局100との間で必要な情報を送受信することが可能となる。
なお、ピコ基地局200の制御部230は、ピコ基地局200内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0043】
図6を参照して、本実施形態に係る受信電力(受信品質)の補正動作を説明する。
ユーザ端末UEが、在圏するマクロ基地局100に対して端末能力情報UCを送信(通知)する(S100)。ユーザ端末UEがIRC端末300である場合、端末能力情報通知部332が無線通信部310を介して送信する端末能力情報UCは、そのIRC端末300自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む。具体的には、例えば、端末能力情報通知部332が、端末能力情報UCに対応する上りリンク制御信号のうち干渉抑圧合成可否を示すビットに、干渉抑圧合成が可能であることを意味する「1」を設定する。
【0044】
他方、ユーザ端末UEが非IRC端末400である場合、端末能力情報通知部432が無線通信部410を介して送信する端末能力情報UCは、その非IRC端末400自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない。具体的には、例えば、端末能力情報通知部432は、端末能力情報UCに対応する上りリンク制御信号のうち干渉抑圧合成可否を示すビットに干渉抑圧合成を実行不可能であることを意味する「0」を設定する。また、非IRC端末400が準拠する通信規格において、制御信号にIRC受信可否を示すビットが含まれない場合(すなわち、IRC受信について規定されていない場合)には、端末能力情報UCに干渉抑圧合成を実行可能である情報が元々含まれないから、その非IRC端末400の端末能力情報通知部432は端末能力情報UCをマクロ基地局100に単に通知すればよい。
【0045】
マクロ基地局100の判定部132が、ユーザ端末UEから報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末UEがIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する(S110)。端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む場合には、判定部132は、そのユーザ端末UEがIRC端末300であると判定する。一方、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない場合には、判定部132は、そのユーザ端末UEが非IRC端末400であると判定する。判定結果はバイアス値設定部134に伝達される。
【0046】
マクロ基地局100のバイアス値設定部134が、判定部132の判定に基づき、そのユーザ端末UEがIRC端末300である場合には第1バイアス値αを設定し、そのユーザ端末UEが非IRC端末400である場合には第2バイアス値βを設定する(S120)。第1バイアス値αは第2バイアス値βよりも高く設定される(α>β)。そのようなバイアス値(α,β)による作用効果は後に詳述される。
【0047】
バイアス値通知部136は、設定された第1バイアス値αを無線通信部110を介してIRC端末300に送信(通知)する。他方、バイアス値通知部136は、設定された第2バイアス値βを無線通信部110を介して非IRC端末400に送信(通知)する(S130)。
【0048】
ユーザ端末UE(300,400)の受信品質測定部(334,434)は、電波の受信品質として、マクロ基地局100から受信した電波の受信電力(例えば、参照信号受信電力。Reference Signal Received Power,RSRP)を測定して第1受信電力値R1を取得する一方、ピコ基地局200から受信した電波の受信電力を測定して第2受信電力値R2を取得する(S140)。
【0049】
IRC端末300の受信品質補正部336は、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2を、バイアス値通知部136から通知された第1バイアス値αを用いて補正する(S150)。具体的には、受信品質補正部336は、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2に第1バイアス値αを加算して、補正後の第2受信品質値(R2+α)を取得する。すなわち、図9に示すように、ピコ基地局200については、IRC端末300における電波の受信品質値R2が第1バイアス値αによりオフセットされて、補正後の第2受信電力値(R2+α)となる。
同様に、非IRC端末400の受信品質補正部436は、ピコ基地局200からの電波の第2受信電力値R2をバイアス値通知部136から通知された第2バイアス値βを用いて補正する(S150)。具体的には、上述のIRC端末300の例と同様にして、補正後の第2受信電力値(R2+β)が取得される。
【0050】
IRC端末300の受信品質通知部338は、第1受信電力値R1と、補正された第2受信電力値(R2+α)とを無線通信部310を介してマクロ基地局100に送信(通知)する(S160)。同様にして、非IRC端末400の受信品質通知部438は、第1受信電力値R1と、補正された第2受信電力値(R2+β)とを無線通信部410を介してマクロ基地局100に送信(通知)する(S160)。通知された各受信電力値(R1およびR2+α、またはR1およびR2+β)は、無線通信部110を介して接続先選択部138に供給される。
【0051】
マクロ基地局100の接続先選択部138は、ユーザ端末UE(IRC端末300または非IRC端末400)から通知された第1受信電力値R1および第2受信電力値(R2+αまたはR2+β)のうち、最も高い受信電力を示す受信電力値(すなわち、最も良好な受信品質を示す受信品質値)に対応する無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)を、そのユーザ端末UEの無線接続先として選択する(S170)。
例えば、IRC端末300については、第1受信電力値R1と、第1バイアス値αにて補正された第2受信電力値(R2+α)とが比較される。第1受信電力値R1よりも補正された第2受信電力値(R2+α)が大きい場合には(R1<R2+α)、接続先選択部138は、補正された第2受信電力値(R2+α)に対応するピコ基地局200をそのIRC端末300の接続先として選択する。
【0052】
接続先選択部138は、選択した無線接続先を示す接続先セル情報Tを、無線通信部110を介してユーザ端末UEに通知する(S180)。
ステップS190で、ユーザ端末UEの接続部(340、440)は、マクロ基地局100から受信した接続先セル情報Tが示す接続先セルに対して接続動作を実行する(既に接続先セル情報Tが示す接続先セルに接続している場合は、その接続を維持する)。例えば、ユーザ端末UEがマクロセルCmに接続している場合において、ピコセルCpを接続先として指定する接続先セル情報Tを接続部(340、440)が受信すると、接続部(340、440)は、指定されたピコセルCpへとユーザ端末UE自身を接続(オフロード)させる。
【0053】
図7および図8は、以上に説明した補正動作によるピコセルCpの範囲(ピコ基地局200からの受信電力値R2が、マクロ基地局100からの受信電力値R1を上回る範囲)の変化を示す図である。図7および図8において、原点OがピコセルCpの中心点(すなわち、ピコ基地局200が配置されるマクロセルCm内の位置)であり、半径r0がバイアス値(α,β)による補正がされる前のピコセルCpの半径である。また、図7および図8において、マクロ基地局100からの送信電力(干渉電力)等の外部環境は共通であり、ユーザ端末UEの種別(IRC端末300または非IRC端末400)が相違すると想定する。
【0054】
図7においては、IRC端末300に関して、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2が第1バイアス値αで補正された結果、ピコセルCpの半径がr0からr1に拡張している。一方、図8においては、非IRC端末400に関して、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2が第2バイアス値βで補正された結果、ピコセルCpの半径がr0からr2に拡張している。すなわち、受信品質補正部(336,436)による受信電力値R2の補正(バイアス値(α,β)による増加)は、各ユーザ端末UEにおけるピコ基地局200からの受信電力を擬似的に上昇させることで、ピコ基地局200が形成するピコセルCpの範囲を拡張させるように作用する。
【0055】
前述のように、第1バイアス値αが第2バイアス値βを上回る(α>β)ことから、第1バイアス値αによる拡張後のピコセルCpの半径r1は、第2バイアス値βによる拡張後のピコセルCpの半径r2を上回る。
また、以上から理解されるように、仮にピコ基地局200からの電波の受信電力値R2が一定であったとしても、ユーザ端末UEごとにピコセルCpの半径r(r1,r2)が相違し得る。
【0056】
図9は、図7および図8を参照して説明したピコセルCpの範囲の変化を、マクロ基地局100との関係も含めて説明する図である。前述のように、ユーザ端末UEは、マクロ基地局100およびピコ基地局200から電波を受信して受信電力を測定する。図9に示すように、測定される受信電力値(R1,R2)は各無線基地局から遠ざかるほど低下する。
【0057】
まず、ユーザ端末UEが、原点Oを中心とした半径r2の範囲から、原点Oを中心とした半径r0の範囲を除いた範囲(第2バイアス値βによる拡張後のピコセルCpの範囲から拡張前のピコセルCpの範囲を除いた範囲)に位置すると想定する。そのユーザ端末UEにおいては、ピコ基地局200からの受信電力値R2がマクロ基地局100からの受信電力値R1を上回るが、受信電力値R2を第1バイアス値αまたは第2バイアス値βで補正した値(R2+αまたはR2+β)は受信電力値R1を上回る。したがって、そのユーザ端末UEがIRC端末300と非IRC端末400とのいずれであっても、マクロ基地局100の接続先選択部138は、ピコ基地局200を無線接続先として選択する。
【0058】
次に、ユーザ端末UEが、原点Oを中心とした半径r1の範囲から、原点Oを中心とした半径r2の範囲を除いた範囲(第1バイアス値βによる拡張後のピコセルCpの範囲から第2バイアス値βによる拡張後のピコセルCpの範囲を除いた範囲)に位置すると想定する。そのユーザ端末UEにおいては、受信電力値R2を第1バイアス値αで補正した値(R2+α)は受信電力値R1を上回るが、受信電力値R2を第2バイアス値βで補正した値(R2+β)は受信電力値R1を下回る。したがって、そのユーザ端末UEがIRC端末300である場合には、接続先選択部138はピコ基地局200を無線接続先として選択するが、非IRC端末400である場合には、接続先選択部138はマクロ基地局100を無線接続先として選択する。
【0059】
以上の範囲(原点Oを中心とした半径r1の範囲から、原点Oを中心とした半径r2の範囲を除いた範囲)においては、第1受信電力値R1(マクロ基地局100からの干渉電力)が補正前の第2受信電力値R2を大きく上回るが、IRC端末300は干渉抑圧合成を実行してマクロ基地局100からの干渉電力を抑圧することができるから、ピコ基地局200からの電波を品質良く受信することが可能である。
他方、非IRC端末400は干渉抑圧合成を実行可能ではないから、ピコ基地局200からの電波を品質良く受信できない。したがって、非IRC端末400はマクロ基地局100に接続され、より品質の良いマクロ基地局100からの電波を受信する。
【0060】
以上に説明した実施の形態によれば、マクロ基地局100からの受信電力値R1(補正されない)と、バイアス値を用いて補正されたピコ基地局200からの受信電力値(R2+α,R2+β)とに基づいて、接続先選択部138が、そのユーザ端末UEが接続すべき無線基地局を選択するから、バイアス値による受信電力値の補正がされない構成と比較して、ユーザ端末UEの接続先としてピコ基地局200が選択される(ユーザ端末UEがピコ基地局200にオフロードされる)ケースが増大し得る。
【0061】
また、IRC端末300に対する第1バイアス値αが、非IRC端末400に対する第2バイアス値βよりも高く設定されるから、IRC端末300の接続先としてピコ基地局200が選択されるケースが増大し得る。すなわち、IRC端末300については、干渉抑圧合成が可能であるという特徴を活用してピコセルCpの範囲を拡張し、ピコ基地局200に接続され易くすることで、マクロ基地局100への無線接続の集中が抑制され得る。他方、非IRC端末400については、IRC端末300よりもピコセルCpの範囲が狭く設定されることにより、マクロ基地局100からの干渉電力の影響が抑制されるので、所望信号の受信品質が高く維持され得る。
【0062】
すなわち、ユーザ端末UEの種別(IRC端末300または非IRC端末400)に応じてバイアス値が設定されるので、複数種別のユーザ端末UEが混在する環境において、ピコ基地局200へのオフロード効果と、所望信号の高い受信品質およびユーザスループットの維持との双方が実現され得る。
【0063】
変形例
以上の実施の形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0064】
(1)変形例1
以上の実施形態では、マクロ基地局100の制御部130が接続先選択部138を備える。しかしながら、図10および図11に示すように、IRC端末300および非IRC端末400の各々が接続先選択部(344,442)を備えてもよい。以上の場合、マクロ基地局100の制御部130が接続先選択部138を備えなくてもよいことは当然に理解される。
【0065】
(2)変形例2
以上の実施形態では、マクロ基地局100のバイアス値設定部134が、第2バイアス値βを0でない正の値(β>0)であるように設定する。しかしながら、バイアス値設定部134が、第2バイアス値βを0に設定してもよい(β=0)。
また、バイアス値設定部134が第1バイアス値αのみを設定し、第2バイアス値βを設定しなくてもよい。以上の場合、バイアス値通知部136は非IRC端末400に第2バイアス値βを通知しなくてもよく、非IRC端末400はピコ基地局200からの電波の第2受信電力値R2を補正しなくてもよい。すなわち、第1バイアス値αのみが設定・通知され、IRC端末300のみにおいて第2受信電力値R2の補正が実行される構成も採用され得る。以上の構成によれば、IRC端末300のみで第2受信電力値R2の補正が実行されるから、構成が簡易となる。
しかしながら、第2バイアス値βが0でない正の値に設定され、第2受信電力値R2が補正される実施形態の構成によれば、非IRC端末400であってもピコ基地局200にオフロードされる可能性が高くなるから、マクロ基地局100への無線接続の集中を抑制する観点からは、実施形態の構成の方が好適である。
【0066】
(3)変形例3
以上の実施形態では、マクロ基地局100のバイアス値設定部134が、第1バイアス値αおよび第2バイアス値βをそれぞれ個別に設定する。以上の構成において、バイアス値設定部134が、IRC端末300における無線通信の成功確率(例えば、Ack/Nack(AckとNackとの比))に応じて、そのIRC端末300に対する第1バイアス値αを設定してもよい。特に、複数のIRC端末300が存在する場合において、IRC端末300ごとに第1バイアス値αが設定されると好適である。以上の構成によれば、IRC端末300ごとの通信環境に応じて第1バイアス値αが適切に設定され得る。
【0067】
(4)変形例4
マクロ基地局100のバイアス値設定部134が、非IRC端末400に対する第2バイアス値βに所定値γを加算することにより、IRC端末400に対する第1バイアス値α(α=β+γ)を設定してもよい。以上の構成によれば、バイアス値設定部134が第1バイアス値αおよび第2バイアス値βをそれぞれ個別に設定する構成と比較して、構成が簡易となる。
【0068】
(5)変形例5
以上の実施形態では、電波の受信品質として参照信号受信電力(RSRP)が採用されたが、信号対干渉雑音比(Signal-to-Interference and Noise Ratio,SINR)、参照信号受信品質(Reference Signal Received Quality)等が受信品質として採用されても良い。また、受信品質値が比で表される場合には、受信品質値にバイアス値が乗算されて補正後の受信品質値が算出されてもよい。
また、受信品質値がdB(比の対数)で表される場合には、dBで表された受信品質値に対しdBで表されたバイアス値を加算して補正後の受信品質値を算出してもよい。以上の形態が受信品質値にバイアス値を乗算する形態の一種であることは当然に理解される。
【0069】
(6)変形例6
以上の実施の形態では、マクロ基地局100よりも送信能力の低い無線基地局としてピコ基地局200が例示されたが、マイクロ基地局、ナノ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド等が送信能力の低い無線基地局として採用されてもよい。また、無線通信システム1の要素として、相異なる送信能力を有する複数の無線基地局の組合せ(例えば、マクロ基地局、ピコ基地局、およびフェムト基地局の組合せ)が採用されてもよい。
【0070】
(7)変形例7
ユーザ端末UE(IRC端末300および非IRC端末400)は、各無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能な任意の装置である。ユーザ端末UEは、例えばフィーチャーフォンまたはスマートフォン等の携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
【0071】
(8)変形例8
無線通信システム1内の各要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ端末UE)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1……無線通信システム、100……マクロ基地局、110……無線通信部、120……基地局通信部、130……制御部、132……判定部、134……バイアス値設定部、136……バイアス値通知部、138……接続先選択部、200……ピコ基地局、210……無線通信部、220……基地局通信部、230……制御部、300……IRC端末、310……無線通信部、330……制御部、332……端末能力情報通知部、334……受信品質測定部、336……受信品質補正部、338……受信品質通知部、340……接続部、342……IRC実行部、400……非IRC端末、410……無線通信部、430……制御部、432……端末能力情報通知部、434……受信品質測定部、436……受信品質補正部、438……受信品質通知部、440……接続部、α,β……バイアス値、γ……所定値、C……セル、Cm……マクロセル、Cp……ピコセル、O……原点、R(R1,R2)……受信電力値、T……接続先セル情報、UC……端末能力情報、UE……ユーザ端末、r(r0〜r2)……半径。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、
干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と、
前記各移動通信端末の無線接続先となる無線基地局を選択する接続先選択部と
を備える無線通信システムであって、
前記第1移動通信端末が、当該第1移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、
前記第2移動通信端末が、当該第2移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、
前記第1無線基地局は、
前記移動通信端末から通知された端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定するバイアス値設定部と、
前記第1移動通信端末へ前記第1バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備え、
前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々は、
前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得する受信品質測定部を備え、
前記第1移動通信端末は、
前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記第1バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部と、
前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記受信品質補正部で補正された第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知する受信品質通知部とを備え、
前記第2移動通信端末は、
前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部と、
前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記受信品質補正部で補正された第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知する受信品質通知部とを備え、
前記接続先選択部は、前記受信品質通知部から通知された前記第1受信品質値および前記第2受信品質値のうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する
無線通信システム。
【請求項2】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記判定部の判定に基づき、前記第2移動通信端末に対するバイアス値として前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を設定し、
前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部は、前記第2移動通信端末へ前記第2バイアス値を通知し、
前記第2移動通信端末の前記受信品質補正部は、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記第2バイアス値を用いて前記第2受信品質値を補正する
請求項1の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記第2移動通信端末に対する前記第2バイアス値に所定値を加算することにより、前記第1移動通信端末に対する前記第1バイアス値を設定する
請求項2の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、複数の前記第1移動通信端末の各々における無線通信の成功確率に応じて当該第1移動通信端末に対する第1バイアス値を設定する
請求項1または2の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1無線基地局が前記接続先選択部を備える
請求項1から4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々が前記接続先選択部を備える
請求項1から4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、
干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能であり、各々が前記各無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して通知することが可能な複数の移動通信端末と、
を備える無線通信システムにおける第1無線基地局であって、
前記第1無線基地局は、
前記移動通信端末から通知された当該移動通信端末の端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定するバイアス値設定部と、
前記第1移動通信端末へ、当該第1移動通信端末にて測定された第2無線基地局からの電波の受信品質を増加させるように補正するための前記第1バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備える
無線基地局。
【請求項8】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記判定部の判定に基づき、前記第2移動通信端末に対するバイアス値として前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を設定し、
前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部は、前記第2移動通信端末へ、当該第2移動通信端末にて測定された第2無線基地局からの電波の受信品質を増加させるように補正するための前記第2バイアス値を通知する
請求項7の無線基地局。
【請求項9】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記第2移動通信端末に対する前記第2バイアス値に所定値を加算することにより、前記第1移動通信端末に対する前記第1バイアス値を設定する
請求項8の無線基地局。
【請求項10】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、複数の前記第1移動通信端末の各々における無線通信の成功確率に応じて当該第1移動通信端末に対する第1バイアス値を設定する
請求項7または8の無線基地局。
【請求項11】
前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々から通知された受信品質のうち、最も良好な受信品質に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する接続先選択部をさらに備える
請求項7から10のいずれかに記載の無線基地局。
【請求項12】
第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、
干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と
を備える無線通信システムにおける第1移動通信端末であって、
自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部と、
前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得する受信品質測定部とを備える
移動通信端末。
【請求項13】
前記第1無線基地局から通知された、前記第2移動通信端末に対するバイアス値よりも高いバイアス値を用いて、前記第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部をさらに備える
請求項12の移動通信端末。
【請求項14】
前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記補受信品質補正部で補正された前記第2受信品質値とのうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する接続先選択部をさらに備える
請求項13の移動通信端末。
【請求項15】
第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、
干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と
前記各移動通信端末の無線接続先となる無線基地局を選択する接続先選択部と
を備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、
前記第1移動通信端末が、当該第1移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む端末能力情報を前記第1無線基地局に通知することと、
前記第2移動通信端末が、当該第2移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない端末能力情報を前記第1無線基地局に通知することと、
前記第1無線基地局が、前記移動通信端末から通知された端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定することと、判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定することと、前記第1移動通信端末へ前記第1バイアス値を通知することと、
前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々が、前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得することと、
前記第1移動通信端末が、前記第1無線基地局から通知された前記第1バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正することと、取得した前記第1受信品質値と補正した第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知することと、
前記第2移動通信端末が、前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正することと、取得した前記第1受信品質値と補正した第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知することと、
前記接続先選択部が、通知された前記第1受信品質値および前記第2受信品質値のうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択すること
とを備える通信制御方法。
【請求項1】
第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、
干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と、
前記各移動通信端末の無線接続先となる無線基地局を選択する接続先選択部と
を備える無線通信システムであって、
前記第1移動通信端末が、当該第1移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、
前記第2移動通信端末が、当該第2移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、
前記第1無線基地局は、
前記移動通信端末から通知された端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定するバイアス値設定部と、
前記第1移動通信端末へ前記第1バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備え、
前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々は、
前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得する受信品質測定部を備え、
前記第1移動通信端末は、
前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記第1バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部と、
前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記受信品質補正部で補正された第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知する受信品質通知部とを備え、
前記第2移動通信端末は、
前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部と、
前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記受信品質補正部で補正された第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知する受信品質通知部とを備え、
前記接続先選択部は、前記受信品質通知部から通知された前記第1受信品質値および前記第2受信品質値のうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する
無線通信システム。
【請求項2】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記判定部の判定に基づき、前記第2移動通信端末に対するバイアス値として前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を設定し、
前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部は、前記第2移動通信端末へ前記第2バイアス値を通知し、
前記第2移動通信端末の前記受信品質補正部は、前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記第2バイアス値を用いて前記第2受信品質値を補正する
請求項1の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記第2移動通信端末に対する前記第2バイアス値に所定値を加算することにより、前記第1移動通信端末に対する前記第1バイアス値を設定する
請求項2の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、複数の前記第1移動通信端末の各々における無線通信の成功確率に応じて当該第1移動通信端末に対する第1バイアス値を設定する
請求項1または2の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1無線基地局が前記接続先選択部を備える
請求項1から4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々が前記接続先選択部を備える
請求項1から4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、
干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能であり、各々が前記各無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して通知することが可能な複数の移動通信端末と、
を備える無線通信システムにおける第1無線基地局であって、
前記第1無線基地局は、
前記移動通信端末から通知された当該移動通信端末の端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定するバイアス値設定部と、
前記第1移動通信端末へ、当該第1移動通信端末にて測定された第2無線基地局からの電波の受信品質を増加させるように補正するための前記第1バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備える
無線基地局。
【請求項8】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記判定部の判定に基づき、前記第2移動通信端末に対するバイアス値として前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を設定し、
前記第1無線基地局の前記バイアス値通知部は、前記第2移動通信端末へ、当該第2移動通信端末にて測定された第2無線基地局からの電波の受信品質を増加させるように補正するための前記第2バイアス値を通知する
請求項7の無線基地局。
【請求項9】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、前記第2移動通信端末に対する前記第2バイアス値に所定値を加算することにより、前記第1移動通信端末に対する前記第1バイアス値を設定する
請求項8の無線基地局。
【請求項10】
前記第1無線基地局の前記バイアス値設定部は、複数の前記第1移動通信端末の各々における無線通信の成功確率に応じて当該第1移動通信端末に対する第1バイアス値を設定する
請求項7または8の無線基地局。
【請求項11】
前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々から通知された受信品質のうち、最も良好な受信品質に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する接続先選択部をさらに備える
請求項7から10のいずれかに記載の無線基地局。
【請求項12】
第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、
干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と
を備える無線通信システムにおける第1移動通信端末であって、
自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す端末能力情報を前記第1無線基地局に通知する端末能力情報通知部と、
前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得する受信品質測定部とを備える
移動通信端末。
【請求項13】
前記第1無線基地局から通知された、前記第2移動通信端末に対するバイアス値よりも高いバイアス値を用いて、前記第2受信品質値を増加させるように補正する受信品質補正部をさらに備える
請求項12の移動通信端末。
【請求項14】
前記受信品質測定部で取得された前記第1受信品質値と前記補受信品質補正部で補正された前記第2受信品質値とのうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択する接続先選択部をさらに備える
請求項13の移動通信端末。
【請求項15】
第1無線基地局と、前記第1無線基地局よりも電波の送信電力が小さい第2無線基地局とを含む複数の無線基地局と、
干渉抑圧合成を実行可能である第1移動通信端末と、干渉抑圧合成を実行不可能である第2移動通信端末とを含み、各々が前記無線基地局のいずれかとの間で電波を送受信して無線通信を実行可能な複数の移動通信端末と
前記各移動通信端末の無線接続先となる無線基地局を選択する接続先選択部と
を備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、
前記第1移動通信端末が、当該第1移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含む端末能力情報を前記第1無線基地局に通知することと、
前記第2移動通信端末が、当該第2移動通信端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない端末能力情報を前記第1無線基地局に通知することと、
前記第1無線基地局が、前記移動通信端末から通知された端末能力情報に基づいて、当該移動通信端末が第1移動通信端末であるか第2移動通信端末であるかを判定することと、判定に基づき、第1移動通信端末に対するバイアス値として第1バイアス値を設定することと、前記第1移動通信端末へ前記第1バイアス値を通知することと、
前記第1移動通信端末および前記第2移動通信端末の各々が、前記第1無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第1受信品質値を取得し、前記第2無線基地局から受信した電波の受信品質を測定して第2受信品質値を取得することと、
前記第1移動通信端末が、前記第1無線基地局から通知された前記第1バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正することと、取得した前記第1受信品質値と補正した第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知することと、
前記第2移動通信端末が、前記第1バイアス値よりも低い第2バイアス値を用いて第2受信品質値を増加させるように補正することと、取得した前記第1受信品質値と補正した第2受信品質値とを前記接続先選択部に通知することと、
前記接続先選択部が、通知された前記第1受信品質値および前記第2受信品質値のうち、最も良好な受信品質を示す受信品質値に対応する無線基地局を当該移動通信端末の無線接続先として選択すること
とを備える通信制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−93749(P2013−93749A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234694(P2011−234694)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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