説明

無線通信システム、無線基地局および通信制御方法

【課題】ユーザ装置からの接続が特定の無線基地局に集中するのを抑制する。
【解決手段】無線通信システム1が、第1セルCmを形成する第1無線基地局100と、各々が第2セルCpを形成する複数の第2無線基地局200と、各無線基地局100,200と無線接続する無線通信部310を備える移動局300とを備える。第1無線基地局100が、その第1無線基地局100の第1セルCm内に形成された第2セルCpの個数Nに応じて補正値Aを設定して移動局300に通知する。移動局300は、第2無線基地局200からの電波の受信特性を示す特性値R2を補正値Aを用いて補正する。第1無線基地局100または移動局300は、第1無線基地局100の特性値R1および第2無線基地局200の補正後の特性値R2’に基づいて移動局300の接続先を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線基地局および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局(マクロ基地局、ピコ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド(Remote Radio Head)等)を重層的に設置したヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)が提案されている。ヘテロジーニアスネットワークにおいては、送信電力の大きい基地局(例えばマクロ基地局)の方が、送信電力の小さい基地局(例えばピコ基地局)と比較して、セルサーチまたはハンドオーバの段階でユーザ装置の無線接続先として選択されやすい。したがって、送信電力の大きい基地局にユーザ装置からの接続が集中し、ひいては通信負荷が過大となる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−514367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、無線通信システムの負荷、トラヒック量等のパラメータに応じて通信セル境界を可変に制御する技術が開示されている。例えば、マクロセル基地局に接続するユーザ装置のサービス品質の低下、マクロセル基地局に接続するユーザ装置に対するマイクロセル基地局からの干渉電力の増大等に応じて、マイクロセル基地局の通信セル境界が狭められることが例示されている。
【0005】
しかしながら、無線通信システムの負荷、トラヒック量等のパラメータに応じた通信セル境界の制御を用いる場合、送信電力の大きい基地局のセル内に重層(オーバレイ)される送信電力の小さい基地局のセルの数によっては、設定される通信セル境界が適当でなく、ユーザ装置の接続集中を適切に回避できない可能性がある。
【0006】
以上の事情に鑑み、本発明は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局を含む無線通信システムにおいて、ユーザ装置からの接続が特定の無線基地局に集中するのを抑制して、無線資源のより公平かつ効率的な利用を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線通信システムは、第1セルを形成する第1無線基地局と、前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを前記第1セル内に形成する複数の第2無線基地局と、前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏するセルに対応する、前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々と無線接続する無線通信部と、前記第1無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第1特性値および前記第2無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第2特性値を測定する特性値測定部とを備える移動局とを備える無線通信システムであって、前記第1無線基地局は、当該第1無線基地局の第1セル内に形成された第2セルの個数に応じて、前記第2特性値の補正に用いられる補正値を設定する補正値設定部と、前記補正値設定部で設定された前記補正値を前記移動局に通知する補正値通知部とを備え、前記移動局は、前記第1無線基地局の前記補正値通知部から通知された前記補正値を用いて、前記特性値測定部で測定された前記第2特性値を補正する特性値補正部を備え、前記第1無線基地局または前記移動局は、前記第1特性値および補正後の前記第2特性値のうち、前記受信特性が最も良好であることを示す特性値に対応する第1無線基地局または第2無線基地局を前記移動局の無線接続先として選択する。
【0008】
以上の構成によれば、第2無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値を、第2セルの個数に応じた補正値で補正した補正後の特性値に基づいて移動局の接続先を選択するから、そのような補正をしない構成(すなわち、単に各基地局からの電波の受信特性に応じて接続先を選択する構成)と比較して、第2セルの範囲がより拡大し、第2無線基地局に接続される移動局の数がより増大し得る。したがって、第1無線基地局への移動局の接続集中が抑制され、無線資源がより公平かつ効率的に利用されることが可能である。
【0009】
前記第1無線基地局の前記補正値設定部は、当該第1無線基地局の第1セル内に形成された第2セルの個数が少ないほど、前記第2特性値に示される、前記移動局が前記第2無線基地局から受信した電波の受信特性がより良好となるように前記補正値を設定する。
【0010】
以上の構成によれば、第1セル内に形成された第2セルの個数が少ないほど受信特性がより良好となるように補正値が設定され、第1セル内に形成された第2セルの範囲がより拡大するので、第1セル内の第2セルの個数が少ない場合であっても、第1セル内の第2セルの面積の総計ひいては第2無線基地局に接続される移動局の数が維持され得る。したがって、移動局からの接続が第1無線基地局に集中することが抑制され得る。
なお、電波の受信特性を示す特性値は、値が大きいほど良好である特性値(例えば、受信電力)と、値が小さいほど良好である特性値とのいずれでもよい。したがって、「受信特性がより良好となるように補正値を設定」するとは、値が大きいほど良好である特性値が採用される場合には、特性値がより大きくなるように補正値を設定することであり得、値が小さいほど良好である特性値が採用される場合には、特性値がより小さくなるように補正値を設定することであり得る。
【0011】
また、本発明に係る無線基地局は、第1セルを形成する第1無線基地局と、前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを前記第1セル内に形成する複数の第2無線基地局と、前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏するセルに対応する、前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々と無線接続する無線通信部と、前記第1無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第1特性値および前記第2無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第2特性値を測定する特性値測定部とを備える移動局とを備える無線通信システムにおける第1無線基地局であって、当該第1無線基地局の第1セル内に形成された第2セルの個数に応じて、前記移動局の無線接続先である無線基地局の選択のために前記第1特性値と比較される前記第2特性値の補正に用いられる補正値を設定する補正値設定部と、前記補正値設定部で設定された前記補正値を前記移動局に通知する補正値通知部とを備える。
【0012】
本発明の好適な態様において、無線基地局は、前記第1特性値および補正後の前記第2特性値のうち、前記受信特性が最も良好であることを示す特性値に対応する第1無線基地局または第2無線基地局を前記移動局の無線接続先として選択する。
【0013】
また、本発明の通信制御方法は、第1セルを形成する第1無線基地局と、前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを前記第1セル内に形成する複数の第2無線基地局と、前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏するセルに対応する、前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々と無線接続する無線通信部と、前記第1無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第1特性値および前記第2無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第2特性値を測定する特性値測定部とを備える移動局とを備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、前記第1無線基地局が、当該第1無線基地局の第1セル内に形成された第2セルの個数に応じて、前記第2特性値の補正に用いられる補正値を設定し、前記補正値設定部で設定された前記補正値を前記移動局に通知することと、前記移動局が、前記第1無線基地局から通知された前記補正値を用いて、前記特性値測定部で測定された前記第2特性値を補正することと、前記第1無線基地局または前記移動局が、前記第1特性値または補正後の前記第2特性値のうち、前記受信特性が最も良好であることを示す特性値に対応する第1無線基地局または第2無線基地局を前記移動局の無線接続先として選択することとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るユーザ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るマクロ基地局の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るピコ基地局の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る受信特性(受信電力)の補正の説明図である。
【図6】前記無線通信システムにおける受信特性の補正のシーケンス図である。
【図7】前記補正の有無に応じたピコセルの範囲の変化を示す図である。
【図8】マクロセル内のピコセル数が5の場合のピコセルの範囲を示す図である。
【図9】マクロセル内のピコセル数が2の場合のピコセルの範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム1のブロック図である。無線通信システム1は、マクロ基地局(マクロeNodeB(evolved Node B))100と、ピコ基地局(ピコeNodeB)200と、ユーザ装置300とを備える。無線通信システム1内の各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ装置300等)は所定の無線アクセス技術(Radio Access Technology)、例えばLTE(Long Term Evolution)に従って無線通信を行う。本実施形態では、無線通信システム1がLTEに従って動作する形態を例示して説明するが、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、必要な設計上の変更を施した上で、他の無線アクセス技術にも適用可能である。
【0016】
マクロ基地局100とピコ基地局200とは有線または無線にて相互に接続される。マクロ基地局100はマクロセルCmを形成し、ピコ基地局200はピコセルCpを形成する。ピコセルCpは、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200に接続されたマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内に形成されるセルCである。1つのマクロセルCm内には、複数のピコセルCpが形成され得る。
【0017】
各基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)は、その基地局自身のセルCに在圏するユーザ装置(User Equipment,UE)300と無線通信が可能である。逆に言うと、ユーザ装置300は、ユーザ装置300自身が在圏するセルC(マクロセルCm,ピコセルCp)に対応する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能である。
【0018】
マクロ基地局100はピコ基地局200と比較して無線送信能力(最大送信電力,平均送信電力等)が高いので、より遠くに位置するユーザ装置300と無線通信可能である。したがって、マクロセルCmはピコセルCpよりも面積が大きい。例えば、マクロセルCmは半径数百メートルから数十キロメートル程度の大きさであり、ピコセルCpは半径数メートルから数十メートル程度の大きさである。
【0019】
以上の説明から理解されるように、無線通信システム1内のマクロ基地局100およびピコ基地局200は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局が重層的に設置されたヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)を構成する(3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Further advancements for E-UTRA physical layer aspects (Release 9); 3GPP TR 36.814 V9.0.0 (2010-03); Section 9A, Heterogeneous Deploymentsを参照のこと)。
【0020】
ピコセルCpがマクロセルCmの内部に重層的に形成される(オーバレイされる)ことを考慮すると、ユーザ装置300がピコセルCp内に在圏する場合、そのユーザ装置300は、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200と、そのピコセルCpを包含するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100との双方と無線通信が可能であると理解できる。
【0021】
なお、各基地局とユーザ装置300との間の無線通信の方式は任意である。例えば、ダウンリンクではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され、アップリンクではSC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用されてもよい。
【0022】
図2は、本発明の実施形態に係るユーザ装置300の構成を示すブロック図である。ユーザ装置300は無線通信部310と制御部330とを備える。なお、音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの支持を受け付ける入力装置等の図示は、便宜的に省略されている。
【0023】
無線通信部310は、基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ312と、基地局から電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。また、無線通信部310は、ユーザ装置300が在圏するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100から、補正値Aおよび接続先セル情報Tを受信するとともに、当該マクロ基地局100に対して特性値Rを送信する(詳細は後述される)。
【0024】
制御部330は、特性値測定部332、特性値補正部334、特性値報告部336、および接続部338を要素として内包する。制御部330ならびに制御部330が内包する特性値測定部332、特性値補正部334、特性値報告部336、および接続部338は、ユーザ装置300内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。制御部330の動作の詳細は後述される。
【0025】
図3は、本発明の実施形態に係るマクロ基地局100の構成を示すブロック図である。マクロ基地局100は、無線通信部110と基地局通信部120と制御部130と記憶部140とを備える。
【0026】
無線通信部110は、ユーザ装置300と無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ112と、ユーザ装置300から電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。また、無線通信部110は、マクロ基地局100に在圏するユーザ装置300に対して補正値Aおよび接続先セル情報Tを送信するとともに、ユーザ装置300から特性値Rを受信する(詳細は後述される)。
基地局通信部120は、他の基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と通信を実行するための要素であり、他の基地局との間で電気信号を送受信する。マクロ基地局100が他の基地局と無線にて通信を行う場合は、無線通信部110が基地局通信部120を兼ねることも可能であることは当然に理解される。
【0027】
制御部130は、補正値設定部132、補正値通知部134、および接続先選択部136を要素として内包する。制御部130ならびに制御部130が内包する補正値設定部132、補正値通知部134、および接続先選択部136は、マクロ基地局100内の図示しないCPUが、記憶部140に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。制御部130の動作の詳細は後述される。
記憶部140は、以上のコンピュータプログラムおよび本発明の送信制御に必要な各種の情報を記憶する記憶媒体であり、例えばRAM(Random Access Memory)で構成される。特に、マクロ基地局100自身が形成するマクロセルCm内に形成されるピコセルCpの個数Nが、記憶部140内に記憶される。
【0028】
図4は、本発明の実施形態に係るピコ基地局200の構成を示すブロック図である。ピコ基地局200は、無線通信部210と基地局通信部220と制御部230とを備える。
【0029】
無線通信部210は、ユーザ装置300と無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ212と、ユーザ装置300から電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。
基地局通信部220は、ピコ基地局200自身が接続されるマクロ基地局100と通信を実行するための要素であり、マクロ基地局100との間で電気信号を送受信する。なお、ピコ基地局200がマクロ基地局100と無線にて通信する場合には、無線通信部210が基地局通信部220を兼ねてもよい。
【0030】
ピコ基地局200は、マクロ基地局100が送信した情報(補正値Aまたは接続先セル情報T等)を受信してユーザ装置300に転送でき、ユーザ装置300が送信した情報(特性値R等)を受信してマクロ基地局100に転送できる。具体的には、ピコ基地局200の基地局通信部220がマクロ基地局100から受信した、補正値Aまたは接続先セル情報T等を示す電気信号を、制御部230が無線通信部210に供給する。無線通信部210は、供給された電気信号を電波に変換してユーザ装置300に対して送信する。また、ピコ基地局200の無線通信部210が受信・変換して得た特性値R等を示す電気信号を、制御部230が基地局通信部220に供給する。基地局通信部220は、供給された電気信号をマクロ基地局100に対して送信する。以上の構成により、ユーザ装置300がピコ基地局200に近接しているためマクロ基地局100との無線通信が困難である場合でも、ユーザ装置300とマクロ基地局100との間で必要な情報を送受信することが可能となる。
なお、ピコ基地局200の制御部230は、ピコ基地局200内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0031】
図5を参照して、本発明の実施形態に係る受信特性(受信電力)の補正の詳細を説明する。図5に示すように、ユーザ装置300はマクロ基地局100およびピコ基地局200の各々から電波を受信する。ユーザ装置300の特性値測定部332は、マクロ基地局100およびピコ基地局200の各々から受信した電波の受信電力(Reference Signal Received Power,RSRP)を測定し、マクロ基地局100からの受信電力を示す特性値R1およびピコ基地局200からの受信電力を示す特性値R2を得る。図示の通り、受信電力(特性値R1および特性値R2)は各基地局から遠ざかるほど低下する。
【0032】
以下、説明のため、マクロ基地局100が配置される位置を位置L0、ピコ基地局200が配置される位置を位置L3とし、マクロ基地局100からの受信電力を示す特性値R1とピコ基地局200からの受信電力を示す特性値R2が等しい位置を位置L2とする。ユーザ装置300は、位置L2よりもマクロ基地局100に近い位置Luに位置すると想定する。
【0033】
図5に示す通り、位置Luにおいては、マクロ基地局100からの電波の受信電力をユーザ装置300が測定した特性値R1の方が、ピコ基地局200からの電波の受信電力をユーザ装置300が測定した特性値R2よりも大きい。したがって、単に受信電力の大きい電波を送信した基地局にユーザ装置300が接続する技術によれば、位置Luに位置するユーザ装置300はマクロ基地局100と無線接続すべきであると、基地局等のネットワーク側の装置またはユーザ装置300自身によって判定される。
【0034】
しかしながら、マクロセルCm内に形成されたピコセルCpの個数Nが少ない場合に、単に受信電力に基づいてユーザ装置300の接続先を判定すると、ピコセルCpに対応するピコ基地局200に接続すべきと判定されるユーザ装置300の数が少なくなり、その分、マクロ基地局100に接続すべきと判定されるユーザ装置300の数が多くなるので、ユーザ装置300からの接続がマクロ基地局100へ集中するという問題がある。
【0035】
以上の事情に鑑み、本実施形態では、マクロセルCm内に形成されたピコセルCpの個数Nに応じてピコ基地局200からの受信電力(受信特性)を示す特性値R2を補正する(すなわち、ピコセルCpの範囲を広げる)ことにより、より多くのユーザ装置300をピコ基地局200に接続させ、マクロ基地局100への接続集中を抑制する。以下、図6をも参照して具体的な動作を説明する。
【0036】
マクロ基地局100の補正値設定部132が、記憶部140に記憶されている、マクロ基地局100自身のマクロセルCm内に形成されたピコセルCpの個数Nに応じて補正値Aを設定する(ステップS100)。補正値通知部134は、設定された補正値Aを無線通信部110を介してユーザ装置300に通知する(ステップS110)。補正値Aは、ピコ基地局200からユーザ装置300が受信した電波の受信電力(受信特性)を示す特性値R2を増加させる補正に用いられる値であり、マクロセルCm内に形成されたピコセルCpの個数Nが少ないほど、より大きい値(すなわち、ピコセルCpからの電波の受信電力がより大きいと認識される値)を取る。
【0037】
前述のように、ユーザ装置300の特性値測定部332は、各基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)から送信されて無線通信部310に受信された各電波の受信電力を測定し、それぞれの特性値R1および特性値R2を得る(ステップS120)。
【0038】
そして、ユーザ装置300の特性値補正部334は、ピコ基地局200からの電波の受信電力(特性値R2)を補正値Aを用いて補正する。具体的には、特性値補正部334は、ピコ基地局200から受信した電波の受信電力を測定して得られた特性値R2に補正値Aを加算して、補正後の特性値R2’(R2’=R2+A)を得る(ステップS130)。すなわち、図5に示すように、ピコ基地局200については、ユーザ装置300における特性値R2が補正値Aによりオフセットされて補正後の特性値R2’となる。
【0039】
マクロ基地局100に対応する特性値R1とピコ基地局200に対応する補正後の特性値R2’とが等しい位置を位置L1とする(図5参照)。ユーザ装置300は、位置L1と位置L2(特性値R1と補正前の特性値R2とが等しい位置)との間の位置Luに存在すると想定する。位置Luでは、マクロ基地局100からの実際の受信電力(特性値R1)がピコ基地局200からの実際の受信電力(特性値R2)を上回るが(R1>R2)、ピコ基地局200に対応する補正後の特性値R2’はマクロ基地局100に対応する特性値R1を上回る(R1<R2’(=R2+A))。
【0040】
特性値測定部332から特性値R1が、特性値補正部334から補正後の特性値R2’が、特性値報告部336に供給される。特性値報告部336は、各特性値R(R1,R2’)を無線通信部310を介してマクロ基地局100に報告(送信)する(ステップS140)。
【0041】
マクロ基地局100の接続先選択部136は、ユーザ装置300の特性値報告部336から報告された特性値R(R1,R2’)のうち、受信電力が最も高い、すなわち受信特性が最も良好であることを示す特性値Rに対応する基地局を、ユーザ装置300の無線接続先として選択する(ステップS150)。
前述の通り、本実施形態では、ユーザ装置300が位置Luに位置するので、最も高い受信電力を示すのは特性値R2’(R2’>R1)であるから、マクロ基地局100の接続先選択部136は、特性値R2’に対応するピコ基地局200(ピコセルCp)をユーザ装置300の無線接続先として選択する。
接続先選択部136は、選択した無線接続先を示す接続先セル情報Tを、無線通信部110を介してユーザ装置300に通知する(ステップS160)。
【0042】
ステップS170で、ユーザ装置300の接続部338は、マクロ基地局100から受信した接続先セル情報Tが示す接続先セルに対して接続動作を実行する(既に接続先セル情報Tが示す接続先セルに接続している場合は、その接続を維持する)。例えば、ユーザ装置300がマクロセルCmに接続している場合において、ピコセルCpを接続先として指定する接続先セル情報Tを接続部338が受信すると、接続部338は、指定されたピコセルCpへとユーザ装置300自身を接続(オフロード)させる。
【0043】
以上の説明、特にステップS130およびステップS150の説明から理解されるように、特性値補正部334による特性値R2の補正(補正値Aによる増加)は、各ユーザ装置300におけるピコ基地局200からの受信電力を擬似的に上昇させることで、ピコ基地局200が形成するピコセルCpの範囲を拡張させるように作用する。
【0044】
図7は、補正値Aによる補正の有無に応じたピコセルCpの範囲の変化を示した図であり、図5に対応している。補正無しの場合(図7(A))、位置L3に配置された不図示のピコ基地局200が形成するピコセルCpは、マクロ基地局100に対応する特性値R1をピコ基地局200に対応する特性値R2が上回る範囲(位置L2を境界上の点として含む範囲)を有するから、ユーザ装置300の位置する位置Lu(位置L2よりもマクロ基地局100寄り)はピコセルCpの範囲外である。一方、補正ありの場合(図7(B))、ピコセルCpは、マクロ基地局100に対応する特性値R1をピコ基地局200に対応する補正後の特性値R2’が上回る範囲(位置L1を境界上の点として含む範囲)を有するから、ユーザ装置300の位置する位置Lu(位置L1よりもピコ基地局200寄り)はピコセルCpの範囲内となる。以上に示したように、補正値Aを用いた補正により、ピコセルCpの範囲が拡大する。
【0045】
図8および図9は、マクロセルCm内に形成されるピコセルCpの個数Nに応じた各ピコセルCpの範囲の変化を示す図である。図8ではマクロセルCm内に5つのピコセルCpが形成され、図9ではマクロセルCm内に2つのピコセルCpが形成されている。前述の通り、補正値Aは、マクロセルCm内のピコセルCpの個数Nが少ないほどより大きい値を取るから、ピコセルCpの個数Nが少ないほどピコセルCpの範囲もより拡大する。すなわち、ピコセルCp数が5である図8の場合と比べてピコセル数が2である(すなわち、よりピコセルCpの個数Nが少ない)図9の場合の方が補正値Aが大きく、各ピコセルCpの範囲(面積)も大きい。
【0046】
以上に説明した実施の形態によれば、ピコ基地局200から受信した電波の受信電力を示す特性値R2を補正値Aで補正した特性値R2’に基づいてユーザ装置300の接続先を選択するから、そのような補正をしない構成(すなわち、単に各基地局からの電波の受信電力に応じて接続先を選択する構成)と比較して、ピコセルCpの範囲がより拡大し、ピコ基地局200に接続(オフロード)されるユーザ装置300の数がより増大する。したがって、マクロ基地局100への接続集中が抑制され、無線資源がより公平かつ効率的に利用される。
【0047】
また、マクロセルCm内のピコセルCpの個数Nが少ないほど補正値Aが大きくなり、マクロセルCm内のピコセルCpの範囲も拡大するので、ピコセルCpが少ない場合であっても、マクロセルCm内のピコセルCp面積の総計ひいてはピコ基地局200に接続されるユーザ装置300の数が維持される。したがって、ユーザ装置300からの接続がマクロ基地局100に集中することが抑制される。
【0048】
変形例
以上の実施の形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0049】
(1)変形例1
以上の実施の形態では、電波の受信特性は受信電力(RSRP)であったが、信号対干渉雑音比(Signal-to-Interference and Noise Ratio,SINR)、受信品質(Reference Signal Received Quality)等が受信特性として採用されても良い。信号対干渉雑音比など、受信特性が比で表される場合には、受信特性の特性値Rに補正値Aが乗算されて補正後の特性値R’が算出される形態(すなわち、R’=R×A)が採用されてもよい。
また、受信特性がdB(比の対数)で表される場合には、dBで表された特性値Rに対しdBで表された補正値を加算して特性値R’を算出してもよい。以上の形態は、特性値Rに補正値Aを乗算する形態の一種であることが当然に理解される。
【0050】
(2)変形例2
以上の実施の形態では、値が大きいほど受信状態が良好であることを示す特性値R(受信電力等)が採用されたが、値が小さいほど受信状態が良好であることを示す特性値Rが採用されてもよい。例えば、受信電力を示す値の逆数を特性値Rとしてもよい。以上の場合では、より小さい特性値Rに対応する基地局がユーザ装置300の無線接続先として接続先選択部136に選択される。また、以上の場合、特性値補正部334は、特性値Rから補正値Aを減算して、または特性値Rを補正値Aで除算して、補正後の特性値R’を算出してもよい。
【0051】
(3)変形例3
以上の実施の形態では、マクロ基地局100よりも送信能力の低い基地局としてピコ基地局200が例示されたが、マイクロ基地局、ナノ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド等が送信能力の低い基地局として採用されてもよい。
特に、無線通信システム1の要素として、相異なる送信能力を有する複数の基地局の組合せ(例えば、マクロ基地局、ピコ基地局、およびフェムト基地局の組合せ)が採用されてもよい。その場合、各基地局の送信能力に応じて補正値Aが個別に定められてもよい(例えば、ピコ基地局用に定められた補正値A1が、フェムト基地局用に定められた補正値A2と相違する)とより好適である。
【0052】
(4)変形例4
マクロセルCm内のピコセルCpの個数Nが動的に変化する構成も採用可能である。すなわち、マクロ基地局100の稼働中に、必要に応じてピコ基地局200が追加または削除されてもよい。以上の場合、マクロ基地局100の制御部130が、そのマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内のピコセルCpの個数Nを検出して記憶部140に記憶し、記憶された個数Nに基づいて補正値Aが設定されると好適である。
【0053】
(5)変形例5
マクロセルCm内に形成されたピコセルCpの個数Nに応じた補正値Aの設定方法は任意であるが、例えば、マクロ基地局100の送信能力に基づいた標準セル面積と、そのマクロ基地局に接続されるN個のピコ基地局200の送信能力に基づいた各標準セル面積の総計との比が一定になるように、補正値Aが設定されると好適である。以上の構成によれば、ピコセルCpの個数Nが変化しても、マクロセルCmの大きさ(面積)と、そのマクロセルCm内に形成される複数のピコセルCpの大きさ(面積)の総計との比が一定に近づく(好適には一定となる)ので、ピコセルCpにオフロードされるユーザ装置300の数(割合)も維持される。したがって、マクロ基地局100へのユーザ装置300の接続集中がより回避され得る。
【0054】
(6)変形例6
以上の実施の形態では、ユーザ装置300から報告された特性値R(R1,R2)に基づいて、マクロ基地局100(接続先選択部136)がそのユーザ装置300の接続先を選択したが、ユーザ装置300の制御部330内に設けられた接続先選択部が、ユーザ装置300自身が取得した特性値R(R1,R2)に基づいて接続先を選択してもよい。
【0055】
(7)変形例7
ユーザ装置300は、各基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能な任意の装置である。ユーザ装置300は、例えばフィーチャーフォンまたはスマートフォン等の携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
【0056】
(8)変形例8
無線通信システム1内の各要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ装置300)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1……無線通信システム、100……マクロ基地局、110……無線通信部、120……基地局通信部、130……制御部、132……補正値設定部、134……補正値通知部、136……接続先選択部、200……ピコ基地局、210……無線通信部、220……基地局通信部、230……制御部、300……ユーザ装置、310……無線通信部、330……制御部、332……特性値測定部、334……特性値補正部、336……特性値報告部、338……接続部、A……補正値、C(Cm,Cp)……セル、L(L0〜L3,Lu)……位置、N……個数、R(R1,R2)……特性値、T……接続先セル情報。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セルを形成する第1無線基地局と、
前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを前記第1セル内に形成する複数の第2無線基地局と、
前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏するセルに対応する、前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々と無線接続する無線通信部と、前記第1無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第1特性値および前記第2無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第2特性値を測定する特性値測定部とを備える移動局と
を備える無線通信システムであって、
前記第1無線基地局は、
当該第1無線基地局の第1セル内に形成された第2セルの個数に応じて、前記第2特性値の補正に用いられる補正値を設定する補正値設定部と、
前記補正値設定部で設定された前記補正値を前記移動局に通知する補正値通知部とを備え、
前記移動局は、
前記第1無線基地局の前記補正値通知部から通知された前記補正値を用いて、前記特性値測定部で測定された前記第2特性値を補正する特性値補正部を備え、
前記第1無線基地局または前記移動局は、
前記第1特性値および補正後の前記第2特性値のうち、前記受信特性が最も良好であることを示す特性値に対応する第1無線基地局または第2無線基地局を前記移動局の無線接続先として選択する
無線通信システム。
【請求項2】
前記第1無線基地局の前記補正値設定部は、当該第1無線基地局の第1セル内に形成された第2セルの個数が少ないほど、前記第2特性値に示される、前記移動局が前記第2無線基地局から受信した電波の受信特性がより良好となるように前記補正値を設定する
請求項1の無線通信システム。
【請求項3】
第1セルを形成する第1無線基地局と、
前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを前記第1セル内に形成する複数の第2無線基地局と、
前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏するセルに対応する、前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々と無線接続する無線通信部と、前記第1無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第1特性値および前記第2無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第2特性値を測定する特性値測定部とを備える移動局と
を備える無線通信システムにおける第1無線基地局であって、
当該第1無線基地局の第1セル内に形成された第2セルの個数に応じて、前記移動局の無線接続先である無線基地局の選択のために前記第1特性値と比較される前記第2特性値の補正に用いられる補正値を設定する補正値設定部と、
前記補正値設定部で設定された前記補正値を前記移動局に通知する補正値通知部とを備える
無線基地局。
【請求項4】
前記第1特性値および補正後の前記第2特性値のうち、前記受信特性が最も良好であることを示す特性値に対応する第1無線基地局または第2無線基地局を前記移動局の無線接続先として選択する
請求項3に記載の無線基地局。
【請求項5】
第1セルを形成する第1無線基地局と、
前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを前記第1セル内に形成する複数の第2無線基地局と、
前記第1セルおよび前記第2セルのうち移動局自身が在圏するセルに対応する、前記第1無線基地局および前記第2無線基地局の各々と無線接続する無線通信部と、前記第1無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第1特性値および前記第2無線基地局から受信した電波の受信特性を示す特性値である第2特性値を測定する特性値測定部とを備える移動局と
を備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、
前記第1無線基地局が、当該第1無線基地局の第1セル内に形成された第2セルの個数に応じて、前記第2特性値の補正に用いられる補正値を設定し、前記補正値設定部で設定された前記補正値を前記移動局に通知することと、
前記移動局が、前記第1無線基地局から通知された前記補正値を用いて、前記特性値測定部で測定された前記第2特性値を補正することと、
前記第1無線基地局または前記移動局が、前記第1特性値または補正後の前記第2特性値のうち、前記受信特性が最も良好であることを示す特性値に対応する第1無線基地局または第2無線基地局を前記移動局の無線接続先として選択することとを備える
通信制御方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−26823(P2013−26823A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159774(P2011−159774)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】