説明

無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末、及び無線通信方法

【課題】HetNet環境においても上りリンクの送信電力を適切に制御可能な無線通信システムを提供すること。
【解決手段】第1の無線基地局装置と、第1の無線基地局装置と通信可能に構成された第2の無線基地局装置と、を備えた無線通信システムであって、第1の無線基地局装置は、ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して第1の受信品質情報を生成する第1の通信品質測定部と、第1の通信品質情報を第2の無線基地局装置に通知する通知部と、を備え、第2の無線基地局装置は、ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して第2の通信品質情報を生成する第2の通信品質測定部と、第1の通信品質情報及び第2の通信品質情報を基に上りリンクにおけるユーザ端末の送信電力の補正値を決定する補正値決定部と、決定された補正値をユーザ端末に通知する通知部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラーシステム等に適用可能な無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、3GPP(Third Generation Partnership Project)では、LTE(Long Term Evolution)Release 8仕様(以下、LTE又はRel.8という)の発展形無線インタフェースであるLTE−Advanced(以下、LTE Release 10仕様以降の仕様を総称して「LTE−A」という)の標準化が進められている。LTE−Aは、LTEとのバックワードコンパチビリティを保ちつつ、LTEよりもさらに高いシステム性能の実現を目指している。
【0003】
LTEシステムの上りリンクにおいて、低いピーク対平均電力比(PAPR:Peak−to−Average Power Ratio)を実現し、カバレッジの増大に有効なSC−FDMA(Single−Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用されている。この方式では、無線基地局装置(eNB:evolved NodeB)でのスケジューリングにより、ある周波数及び時間の無線リソースを一つのユーザ端末(UE:User Equipment)に割り当てるため、同一セル内において各ユーザ端末は互いに干渉しない。しかしながら、LTEシステムでは全てのセルで同一の周波数を用いる1セル周波数繰り返しをベースとしているため、周辺セルのセル端に存在するユーザ端末からの干渉レベルは特に高い。このような周辺セルからの干渉を補償し一定の受信品質を維持するため、セル間干渉の対策が必要となる。
【0004】
セル間干渉対策において、上りリンクの送信電力制御が大きな役割を果たしている。無線基地局装置は、ユーザ端末と無線基地局装置との間の伝搬ロス、及び、周辺セルに与える干渉を考慮して、所要の受信品質を満たすようにユーザ端末の送信電力を制御することが要求される。LTEシステムにおいては、セル間干渉を考慮した送信電力制御法として、Fractional送信電力制御が採用されている。
【0005】
LTEシステムの上りリンク(PUSCH(Physical Uplink Shared Channel)、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)、SRS(Sounding Reference Signal))の送信電力は、開ループ制御と閉ループ制御との組み合わせで制御される。開ループ制御は、無線基地局装置が比較的長周期で通知するパラメータ、及びユーザ端末が測定する伝搬ロスを用いて行われる。閉ループ制御は、無線基地局装置とユーザ端末との間の通信状況(例えば、無線基地局装置での受信SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio))を基に無線基地局装置が比較的短周期で通知するTPCコマンドにより行われる。
【0006】
例えば、PUSCHの送信電力は下記式(1)によって制御される(非特許文献1)。下記式(1)において、iはサブフレームを示すインデックスであり、jはスケジューリング種別を示すインデックスであり、PCMAX,C(i)はユーザ端末の最大送信可能電力であり、MPUSCH,C(i)は使用周波数帯域幅であり、PO_PUSCH,C(j)はPUSCHの基本送信電力であり、PLは伝搬ロスであり、α(j)は伝搬ロスの係数であり、ΔTF,C(j)は使用フォーマット毎のオフセット量であり、f(i)はTPCコマンドに基づくオフセット量である。
【数1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP, TS 36.213, V10.1.0, “Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E−UTRA)semikoron Physical layer procedures”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、LTE−Aシステムでは、例えば、半径数キロメートル程度の広範囲のカバレッジエリアを有するマクロセル内に、半径数十メートル程度の局所的なカバレッジエリアを有するマイクロセル(例えば、ピコセル、フェムトセルなど)が形成されるHetNet(Heterogeneous Network)が検討されている。このHetNetにおいて、マクロセルを形成する無線基地局装置(マクロ基地局)は、光回線などを介してピコセルを形成する無線基地局装置(ピコ基地局)と接続されることがある。ユーザ端末は、マクロ基地局及びピコ基地局のうち、通信に適した一方、又は双方の無線基地局装置と通信を行う。
【0009】
上述の場合、各無線基地局装置とユーザ端末との通信状況に応じて上りリンクの最適送信電力は異なってくる。しかしながら、これまでの送信電力制御は必ずしもHetNet環境での運用に適したものではないため、HetNetが適用されたLTE−Aシステムにおいて従来の送信電力制御を適用する場合には、上りリンクの送信電力を適切に制御できない恐れがある。その結果、セル間干渉を十分に抑制できなくなり、上りリンクの通信品質が低下する恐れがある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、HetNet環境においても上りリンクの送信電力を適切に制御可能な無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末、及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線通信システムは、第1の無線基地局装置と、前記第1の無線基地局装置と通信可能に構成された第2の無線基地局装置と、を備えた無線通信システムであって、前記第1の無線基地局装置は、ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して第1の受信品質情報を生成する第1の通信品質測定部と、前記第1の通信品質情報を前記第2の無線基地局装置に通知する通知部と、を備え、前記第2の無線基地局装置は、前記ユーザ端末から送信される前記上り参照信号の受信品質を測定して第2の通信品質情報を生成する第2の通信品質測定部と、前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報を基に上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を決定する補正値決定部と、前記決定された補正値を前記ユーザ端末に通知する通知部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の無線通信方法は、ユーザ端末が第1の無線基地局装置及び第2の無線基地局装置に対して上り参照信号を送信するステップと、前記第1の無線基地局装置が前記上り参照信号の受信品質を測定して第1の通信品質情報を生成するステップと、前記第2の無線基地局装置が前記上り参照信号の受信品質を測定して第2の通信品質情報を生成するステップと、前記第1の無線基地局装置が前記第1の通信品質情報を前記第2の無線基地局装置に通知するステップと、前記第2の無線基地局装置が前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報を基に上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を決定するステップと、前記決定された補正値を前記ユーザ端末に通知するステップと、前記ユーザ端末が前記補正値に基づいて上りリンクにおける送信電力を設定するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の無線基地局装置は、他の無線基地局装置と通信可能に構成された無線基地局装置であって、ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して通信品質情報を生成する通信品質測定部と、前記他の無線基地局装置が、前記ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して生成した通信品質情報を受信する受信部と、前記通信品質情報、及び前記他の無線基地局装置の通信品質情報を基に上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を決定する補正値決定部と、前記決定された補正値を前記ユーザ端末に通知する通知部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明のユーザ端末は、互いに通信可能に構成された第1の無線基地局装置及び第2の無線基地局装置に対して上り参照信号を送信する送信部と、前記第1の無線基地局装置又は前記第2の無線基地局装置が、各無線基地局装置に対する上り参照信号の受信品質に基づいて決定した上りリンクにおける送信電力の補正値を受信する受信部と、前記補正値に基づいて上りリンクにおける送信電力を設定する設定部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、HetNet環境においても上りリンクの送信電力を適切に制御可能な無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末、及び無線通信方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図2】上下リンクにおける接続セルの境界を示す模式図である。
【図3】上り送信電力制御の第1の態様について説明するための模式図である。
【図4】上位レイヤシグナリングで通知する場合の上り送信電力制御の制御フロー図である。
【図5】PHRに基づいて送信電力を補正する場合(上位レイヤシグナリングで通知)の上り送信電力制御の制御フロー図である。
【図6】TPCコマンドに基づくオフセット量によって送信電力を補正する場合の上り送信電力制御の制御フロー図である。
【図7】PHRに基づいて送信電力を補正する場合(TPCコマンドを使用)の上り送信電力制御の制御フロー図である。
【図8】同一セルIDによる下りリンクの協調マルチポイント送信が適用される場合の無線通信について示す模式図である。
【図9】第2の態様における上り送信電力制御の制御フロー図である。
【図10】無線基地局装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】無線基地局装置(マクロ基地局)におけるベースバンド信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図12】無線基地局装置(ピコ基地局)におけるベースバンド信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図13】ユーザ端末の概略構成を示すブロック図である。
【図14】ユーザ端末におけるベースバンド信号処理部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成概略図である。図1に示す無線通信システムは、マクロセルC1を形成する無線基地局装置(マクロ基地局)B1と、ピコセルC2を形成する無線基地局装置(ピコ基地局)B2と、ユーザ端末UEとを含んで構成されている。なお、無線通信システムを構成する無線基地局装置(マクロ基地局)B1、無線基地局装置(ピコ基地局)B2、ユーザ端末UEは、それぞれ複数存在していても良い。
【0018】
図1に示すように、マクロ基地局B1とピコ基地局B2とは、有線で(例えば、X2インタフェースを介して)接続されている。また、マクロ基地局B1とピコ基地局B2とは、それぞれ、不図示のコアネットワークに接続されている。
【0019】
図1に示すLTE−Aシステムは、ローカルエリア環境を重視したHetNet構成となっている。HetNetとは、既存のマクロセルC1に加え、ピコセルC2やフェムトセル等(小規模セル)の様々な形態の、特に下り送信電力の異なるセルをオーバレイした階層型ネットワークである。このHetNetにおいては、相対的に広いエリアをカバーするマクロセルC1のマクロ基地局B1は、相対的に狭いエリアをカバーするピコセルC2のピコ基地局B2よりも下り送信電力が大きく設定されている。
【0020】
LTE−Aシステムにおいて、ユーザ端末の上り送信電力は、周辺セルへの干渉レベルが低減されるように設定される。すなわち、ユーザ端末と帰属先の無線基地局装置との間の伝搬ロス(パスロス)、及び、周辺セルに与える干渉を考慮して、所要の受信品質を満たすようにユーザ端末の送信電力が制御される。
【0021】
上りリンクにおけるPUSCH、PUCCH、SRSの送信電力は、開ループ制御と閉ループ制御との組み合わせで制御される。開ループ制御は、無線基地局装置が比較的長周期で通知するパラメータ、及びユーザ端末が測定する伝搬ロスを用いて行われる。閉ループ制御は、無線基地局装置とユーザ端末との間の通信状況(例えば、無線基地局装置での受信SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio))を基に無線基地局装置が比較的短周期で通知するTPCコマンドにより行われる。
【0022】
上述したように、PUSCHの送信電力は下記式(1)で表される。下記式(1)において、iはサブフレームを示すインデックスであり、jはPUSCHのスケジューリング種別を示すインデックスであり、開ループ制御に係るパラメータは、PUSCHの目標受信電力相当を示すパラメータPO_PUSCH,c(j)、使用周波数帯域幅MPUSCH,c(i)、伝搬ロスPL、Fractional送信電力制御の係数α(j)、及び送信フォーマットに応じたオフセット値ΔTF,c(j)である。閉ループ制御に係るパラメータはTPCコマンドに基づくオフセット量f(i)である。PUSCHの送信電力は、上述の開ループ制御及び閉ループ制御で決定される電力と、ユーザ端末の最大送信可能電力PCMAX,c(i)とのいずれか小さい方が選択される。
【数2】

【0023】
また、PUCCHの送信電力は下記式(2)で表される。下記式(2)において、開ループ制御に係るパラメータは、PUCCHの目標受信電力相当を示すパラメータPO_PUCCH、伝搬ロスPL、送信内容に応じたオフセットh(nCQI,nHARQ,nSR)、送信フォーマットに応じたオフセット値ΔF_PUCCH(F)、及びPUCCH送信ダイバーシチに応じたオフセット値ΔTxD(F‘)である。閉ループ制御に係るパラメータはTPCコマンドに基づくオフセット量g(i)である。PUCCHの送信電力は、上述の開ループ制御及び閉ループ制御で決定される送信電力値と、ユーザ端末の最大送信可能電力PCMAX,c(i)とのいずれか小さい方が選択される。
【数3】

【0024】
また、SRSの送信電力は下記式(3)で表される。下記式(3)において、PSRS_OFFSET,c(m)はSRSの種別m毎のPUSCH送信電力からのオフセット量であり、MSRS,cはSRSの送信周波数帯域幅であり、その他のパラメータはPUSCH送信電力の式(1)と同じである。SRSの送信電力は、上述の開ループ制御及び閉ループ制御で決定される送信電力値と、ユーザ端末の最大送信可能電力PCMAX,c(i)とのいずれか小さい方が選択される。
【数4】

【0025】
上述した式(1)〜(3)において開ループ制御に用いられる伝搬ロスPLは、下りリンクでユーザ端末が受信するCRS(Cell specific Reference Signal)の受信レベルに基づいて決定される。CRSは、各サブフレームに多重され下りリンクデータ信号の復調に用いられると共に、Mobility測定、チャネル品質情報(CQI:Channel Quality Indicator)測定に用いられる。
【0026】
ところで、HetNet環境では、マクロ基地局B1の下り送信電力とピコ基地局B2の下り送信電力とに差があるため、ユーザ端末の位置等に応じて下りリンクにおける最適な接続セルと上りリンクにおける最適な接続セルとが異なる場合がある。図2は、上下リンクにおける接続セルの境界を示す模式図である。下りリンクにおける最適な接続セルは、無線基地局装置からの下り受信電力が最大となるセルとなるため、下りリンクにおける接続セルの境界は、図2に示すようにユーザ端末UEの受信電力に基づくB_DLになる。一方で、上りリンクにおける最適な接続セルは、伝搬ロスが最小のセルとなるため、上りリンクにおける接続セルの境界は、図2に示すように伝搬ロスに基づくB_ULになる。
【0027】
このように、ユーザ端末UEの接続セルが上りリンクと下りリンクとで一致しないように運用する場合に、CRSの受信レベルに基づいて伝搬ロスPLを決定するとその推定精度が低下する恐れがある。例えば、ユーザ端末UEが図2の領域Aに存在する場合、ユーザ端末UEは、下りリンクにおいてマクロ基地局B1と接続し、上りリンクにおいてピコ基地局B2と接続する。CRSは下りリンクにおいてマクロ基地局B1から送信されるため、伝搬ロスPLはマクロ基地局B1とユーザ端末UEとの通信状況に基づいて決定される。しかし、ユーザ端末UEが上りリンクにおいて接続するのはピコ基地局B2となるため、決定された伝搬ロスPLを用いて上り送信電力を制御する場合には送信電力制御の精度が低下する。このように、伝搬ロスPLが適切に決定されない場合、送信電力の最適化が困難になりセル間干渉を十分に抑制できなくなる。
【0028】
そこで、本発明者等は、HetNet環境における伝搬ロスPLの決定方法の問題点に着目し、本発明に至った。本発明は、伝搬ロスを異なる方法で推定することにより送信電力の適切な制御を実現しようとするものである。以下、具体的な態様について説明する。
【0029】
(第1の態様)
図3は、HetNet環境における上り送信電力制御の第1の態様について説明するための模式図である。図3Aは上りリンクと下りリンクとでユーザ端末が接続するセルが同じ場合について示しており、図3Bは上りリンクと下りリンクとでユーザ端末が接続するセルが異なる場合について示している。なお、ここでは、マクロ基地局B1とピコ基地局B2とに独立した識別符号(セルID)を付与するものとする。また、以下の説明では、マクロ基地局B1と通信可能に構成されたピコ基地局が1つの場合について示すが、ピコ基地局は複数設けられていてもよい。
【0030】
図3Aに示すように、上りリンクと下りリンクとでユーザ端末が接続するセルが同じ場合、伝搬ロスPLは、下りリンクにおいてユーザ端末UEが受信するCRSの受信レベルに基づいて精度よく決定できる。一方、上りリンクと下りリンクとで接続セルが異なる場合、CRSの受信レベルから上りリンクの送信電力制御に適した伝搬ロスPLを決定できない。上りリンクと下りリンクとで接続セルが異なる場合、下りリンクにおいてユーザ端末にCRSを送信する無線基地局装置と、上りリンクにおいてユーザ端末が接続する無線基地局装置とが異なるためである。図3Bでは、ユーザ端末UEは、下りリンクにおいてマクロ基地局B1と接続され、上りリンクにおいてピコ基地局B2と接続されている。この場合、CRSの受信レベルによって推定される伝搬ロスPLは下りリンクの伝搬経路(マクロ基地局B1とユーザ端末UEとの間の伝搬経路)に依存するが、電力制御の対象となる上りリンクの伝搬経路(ピコ基地局B1とユーザ端末UEとの間の伝搬経路)に依存しない。
【0031】
そこで、上りリンクと下りリンクとで接続セルが異なる場合にも上り送信電力を精度よく制御できるように、伝搬ロスPLを補正するためのオフセット量(補正値)をユーザ端末UEに対して通知する。また、送信電力の算出式にオフセット量(補正値)ΔHetNet(i)を設ける。この場合、PUSCHの送信電力について下記式(4)で表し、PUCCHの送信電力について下記式(5)で表し、SRSの送信電力について下記式(6)で表すことができる。
【数5】

【数6】

【数7】

【0032】
上記式(4)〜(6)において、オフセット量ΔHetNet(i)は、上りリンクにおいて各無線基地局装置がユーザ端末UEから受信する参照信号(例えば、SRS)の受信レベル(受信品質)に基づいて決定される値である。具体的には、例えば、オフセット値ΔHetNet(i)は、マクロ基地局B1が受信するSRSの受信レベルと、ピコ基地局B2が受信するSRSの受信レベルとの差に相当する。図3Bに示す場合、マクロ基地局B1が受信するSRSの受信レベルと、ユーザ端末UEが受信するCRSの受信レベルとは、いずれも、マクロ基地局B1とユーザ端末UEとの間の伝搬経路に依存している。このため、マクロ基地局B1が受信するSRSの受信レベルと、ユーザ端末UEが受信するCRSの受信レベルとは対応関係にある。一方、ピコ基地局B2が受信するSRSの受信レベルは、ピコ基地局B1とユーザ端末UEとの間の伝搬経路に依存する。つまり、ピコ基地局B2が受信するSRSの受信レベルは、上りリンクの送信電力制御に必要な本来の伝搬ロスに対応する。よって、上述のように各無線基地局装置がユーザ端末UEから受信するSRSの受信レベルに基づいてオフセット量を決定することで、CRSの受信レベルによって決定された伝搬ロスPLを補正できる。なお、オフセット量の決定はSRSに限られず、上りリンクにおいてユーザ端末から送信され、各無線基地局装置が受信する他の参照信号又はデータ信号の受信レベルに基づいて決定されても良い。
【0033】
あるいは、上記式(4)〜(6)において、オフセット量ΔHetNet(i)は、上りリンクにおいてMACレイヤで報告されるパワーヘッドルームレポート(PHR:Power Headroom Report)と、ピコ基地局B2がユーザ端末UEから受信するデータ信号あるいは参照信号の受信電力に基づいて決定されてもよい。ここで、PHRとは、ユーザ端末UEから報告される電力使用についての通知情報をいう。具体的には、例えば、ユーザ端末UEがMACレイヤで定期的に報告するPHRにより、それを受信するピコ基地局B2は、ユーザ端末UEが測定・保持する伝搬ロスPLを含むユーザ端末UEの送信電力を知ることができる。つまり、ピコ基地局B2は、PHRによってユーザ端末UEの設定する送信電力を把握可能である。従って、ユーザ端末UEの送信電力と実際の受信レベル(受信品質)との差分より、ピコ基地局B2とユーザ端末UEの実際の伝搬ロスを算出することができる。よって、ユーザ端末UEの測定する伝搬ロスPLとピコ基地局B2が算出する実際の伝搬ロス値の差分を、オフセット量として設定・決定し、マクロ基地局B1を介して下りリンクでユーザ端末UEに通知することにより、伝搬ロスに起因する送信電力誤差を補正できる。
【0034】
図3Bに示す場合、ユーザ端末UEがマクロ基地局B1から受信するCRSの受信レベルに基づいて決定された伝搬ロスPLは、適正値より大きくなると考えられる。この場合、オフセット量ΔHetNet(i)が負の値になり、上りリンクの送信電力における伝搬ロスPLの誤差の影響が補正される。
【0035】
図4は、第1の態様における上り送信電力制御の制御フロー図の一例である。まず、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2は、それぞれ、ユーザ端末UEから送信された参照信号(例えば、SRS)の受信レベルを測定する。ピコ基地局B2は、SRSの受信レベルの測定結果をマクロ基地局B1に対してバックホール(backhaul)で通知する(ステップS101)。なお、ユーザ端末UEから送信される信号はSRS以外の参照信号であっても良い。次に、マクロ基地局B1は、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2において測定されたSRSの受信レベルに基づいて、ユーザ端末UEが上りリンクにおいて接続する無線基地局装置を決定する(ステップS102)。
【0036】
マクロ基地局B1は、ユーザ端末UEが上りリンクにおいて接続する無線基地局装置と、下りリンクにおいて接続する無線基地局装置が異なるか否かを判定する(ステップS103)。ユーザ端末UEが上りリンクにおいて接続する無線基地局装置と、下りリンクにおいて接続する無線基地局装置が異なる場合(ステップS103:YES)、マクロ基地局B1は、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2において測定されたSRSの受信レベルに基づいて、ユーザ端末UEの上りリンク送信電力制御に用いられるオフセット量ΔHetNet(i)を決定する(ステップS104)。決定されたオフセット量ΔHetNet(i)は、下りリンクにおいてユーザ端末UEと接続する無線基地局装置から、上位レイヤシグナリング(例えば、RRC(Radio Resource Control)シグナリング)でユーザ端末UEに対して通知される(ステップS105)。ユーザ端末装置UEは、通知されたオフセット量ΔHetNet(i)等の情報に基づいて上りリンクの送信電力を設定し(例えば、上記式(4)〜(6)参照)、上りリンクの送信を行う(ステップS106)。
【0037】
なお、オフセット量ΔHetNet(i)を、上りリンクにおいてMACレイヤで報告されるPHRと、ピコ基地局B2がユーザ端末UEから受信するデータ信号又は参照信号の受信電力に基づいて決定する場合には、図5に示すように、上記ステップS104に変えてステップS104’を設ければよい。ステップS104’においては、上りリンク接続基地局(例えば、ピコ基地局B2)が、ユーザ端末UEから送信されたデータ信号あるいは参照信号の受信電力の測定値と、UEから報告されるPHRとに基づいて、ユーザ端末UEの上りリンク送信電力制御に用いられるオフセット量ΔHetNet(i)を計算することができる。
【0038】
上りリンクにおいて接続する無線基地局装置と、下りリンクにおいて接続する無線基地局装置が同じ場合(ステップS103:NO)、ユーザ端末装置UEは、オフセット量ΔHetNet(i)の情報を用いずに上りリンクの送信電力を設定し、上りリンクの送信を行う(ステップS106)。
【0039】
なお、上記態様では、オフセット量ΔHetNet(i)を開ループ制御に追加することで伝搬ロスPLの誤差を補正しているが、他の方法で補正しても良い。例えば、閉ループ制御のTPCコマンドに基づくオフセット量f(i)及びg(i)を用いて伝搬ロスPLの誤差を補正することができる。この場合、PUSCHの送信電力は式(1)で表され、PUCCHの送信電力は式(2)で表され、SRSの送信電力は式(3)で表される。ただし、所要の送信電力値に収束させる観点から、下りリンク制御信号内に設けられる送信電力制御コマンド(TPCコマンド)フィールドにおけるビット数を3ビット以上に拡張し、規定する電力値のステップ幅を拡張することが好ましい。
【0040】
例えば、下り制御情報(DCI:Downlink Control Information)フォーマットにおけるTPCコマンドのビット数を3ビットに拡張して、−5dB、−3dB、−1dB、0dB、1dB、3dB、5dB、7dB、のようなステップとすることが好ましい。なお、この場合、オフセット量f(i)及びg(i)は、上りリンクにおいて各無線基地局装置が受信する信号、例えばSRSの受信レベルに基づいて、伝搬ロスPLの誤差が補正されるように制御される。このように、TPCコマンドのビット数を拡張して、電力値のステップ幅を拡張することにより、閉ループ制御のTPCコマンドに基づくオフセット量f(i)及びg(i)で制御する場合においてステップ幅を拡張しない場合と比較して、所要の送信電力に収束させる期間を短縮することができる。
【0041】
あるいは、既存の開ループ制御のパラメータを用いて伝搬ロスPLの誤差を補正しても良い。例えば、前述の開ループ制御のパラメータPO_PUSCH,c(j)およびPO_PUCCHのUE−specificのシグナリングに、補正すべき伝搬ロスPLの誤差(伝搬ロスPLに対する補正値)を含めて通知してもよい。ただし、所要の補正誤差をカバーする観点から、RRCシグナリングで通知されるUE−specificのPO_PUSCH,c(j)およびPO_PUCCHのビット数/レンジを既存の4bit/[−8,+7]dBから、例えば、5bit/[−16, +15]dB又は6bit/[−32, +31]dBのようにいずれも拡張することが好ましい。この場合、上記図4のステップS105において、ユーザ端末UEに対して、拡張されたUE−specificの開ループ送信電力制御パラメータPO_PUSCH,c(j)及びPO_PUCCHを用いてRRCシグナリングで電力制御情報を通知する構成とすることができる。
【0042】
図6は、TPCコマンドに基づくオフセット量f(i)及びg(i)、あるいはUE−specificのPO_PUSCH,c(j)及びPO_PUCCHを用いて送信電力を補正する場合の上り送信電力制御の制御フロー図の一例である。まず、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2は、それぞれ、ユーザ端末UEから送信されたSRSの受信レベルを測定する。ピコ基地局B2は、SRSの受信レベルの測定結果をマクロ基地局B1に対してバックホールで通知する(ステップS201)。なお、ユーザ端末UEから送信される信号はSRS以外の参照信号であっても良い。次に、マクロ基地局B1は、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2において測定されたSRSの受信レベルに基づいて、ユーザ端末UEが上りリンクにおいて接続する無線基地局装置を決定する(ステップS202)。
【0043】
マクロ基地局B1は、ユーザ端末UEが上りリンクにおいて接続する無線基地局装置と、下りリンクにおいて接続する無線基地局装置が異なるか否かを判定する(ステップS203)。ユーザ端末UEが上りリンクにおいて接続する無線基地局装置と、下りリンクにおいて接続する無線基地局装置が異なる場合(ステップS203:YES)、マクロ基地局B1は、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2において測定されたSRSの受信レベルに基づいて、ユーザ端末UEの上りリンク送信電力のオフセット量を算出する(ステップS204)。決定されたオフセット量を満たすように、下りリンクにおいてユーザ端末UEと接続する無線基地局装置(例えば、マクロ基地局B1)からユーザ端末UEに対して、3ビット以上の拡張されたTPCコマンド用フィールドを用いてPDCCHで電力制御情報が通知される(ステップS205)。ユーザ端末装置UEは、通知されたオフセット量等の情報に基づいて上りリンクの送信電力を設定し、上りリンクの送信を行う(ステップS206)。
【0044】
なお、オフセット量ΔHetNet(i)を、上りリンクにおいてMACレイヤで報告されるPHRと、ピコ基地局B2がユーザ端末UEから受信するデータ信号あるいは参照信号の受信電力に基づいて決定する場合には、図7に示すように上記ステップS204に変えてステップS204’を設ければよい。ステップS204’においては、上りリンク接続基地局(例えば、ピコ基地局B2)は、ユーザ端末UEから送信されたデータ信号又は参照信号の受信電力の測定値と、ユーザ端末UEから報告されるPHRとに基づいて、ユーザ端末UEの上りリンク送信電力制御に用いられるオフセット量ΔHetNet(i)を計算することができる。
【0045】
上りリンクにおいて接続する無線基地局装置と、下りリンクにおいて接続する無線基地局装置が同じ場合(ステップS203:NO)、ユーザ端末装置UEは、オフセット量の情報を用いずに上りリンクの送信電力を設定し、上りリンクの送信を行う(ステップS206)。
【0046】
このように、各無線基地局装置でユーザ端末からの上り参照信号又はデータ信号の受信品質(例えば、受信レベル)を測定し、当該測定結果に基づいて伝搬ロスPLを補正するオフセット量(補正値)を決定して、ユーザ端末に通知することにより、HetNet環境においても上りリンクの送信電力を適切に制御することが可能となる。
【0047】
(第2の態様)
協調マルチポイント送受信(CoMP)が適用される場合の上り送信電力制御について説明する。なお、本態様において、マクロ基地局B1とピコ基地局B2とに共通の識別符号(セルID)を付与するものとする。
【0048】
なお、CoMP送受信を実現する構成としては、無線基地局装置と、この無線基地局装置と光張り出し構成(光ファイバ)で接続された複数の遠隔無線装置(RRE:Remote Radio Equipment)とを含む構成(遠隔無線装置構成に基づく集中制御)と、無線基地局装置同士の構成(独立基地局構成に基づく自律分散制御)とがある。本態様では、上記いずれの構成であっても適用可能である。
【0049】
図8は、下りリンクの協調マルチポイント送信(DLCoMP送信)が適用される場合の無線通信について示す模式図である。DLCoMP送信としては、Coordinated scheduling/Coordinated beamforming(CS/CB)と、Joint processing(JP)とがある。本態様では、複数セル同時送信であるJPにおいて、特に、1つのユーザ端末UEに対して複数のセルから送信するJoint transmission(JT)を適用する場合について説明する。
【0050】
図8に示すようにJT−CoMPが適用される場合、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2から送信されるCRSは、ユーザ端末UEにおいて合成受信される。この場合、ユーザ端末UEにおけるCRSの受信レベルは、マクロ基地局B1とユーザ端末UEとの間の伝搬経路、及び、ピコ基地局B1とユーザ端末UEとの間の伝搬経路の双方に依存する。
【0051】
図8Aに示すように、上りリンクの協調マルチポイント受信(ULCoMP受信)が適用されない場合、ユーザ端末UEは上りリンクにおいて最適な一つのセル(図8Aにおいてはピコセル)に接続される。しかし、合成受信されたCRSの受信レベルに基づいて推定される伝搬ロスPLは、上りリンクの伝搬経路のみに基づいて推定したものではない。この場合、ユーザ端末において、パスロスが実際より小さく決定されるため、上りリンクの送信電力制御の精度が低下する。つまり、合成受信されたCRSの受信レベルから上りリンクの送信電力制御に適した伝搬ロスPLを決定できない。
【0052】
そこで、このような場合にも上り送信電力を精度よく制御できるように、伝搬ロスPLを補正するためのオフセット量(補正値)をユーザ端末UEに対して通知する。また、送信電力の算出式にオフセット量(補正値)ΔHetNet(i)を設ける。この場合、PUSCHの送信電力について式(4)で表し、PUCCHの送信電力について式(5)で表し、SRSの送信電力について式(6)で表すことができる。
【数8】

【数9】

【数10】

【0053】
式(4)〜(6)において、オフセット量ΔHetNet(i)は、上りリンクにおいて各無線基地局装置が受信するSRSの受信レベルに基づいて決定される値である。具体的には、例えば図8Aに示す場合、オフセット量ΔHetNet(i)は、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2が受信するSRSの受信レベルの合成値と、ピコ基地局B2(上りリンクにおけるユーザ端末UEの接続対象)が受信するSRSの受信レベルとの差に相当する。図8Aに示す場合、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2が受信するSRSの受信レベルの合成値は、ユーザ端末UEにおいて合成受信されるCSRの受信レベルと対応関係にある。また、ピコ基地局B2が受信するSRSの受信レベルは、上りリンクの送信電力制御に必要な本来の伝搬ロスに対応する。よって、上述のように各無線基地局装置が受信するSRSの受信レベルに基づいてオフセット量ΔHetNet(i)を決定することで、CRSの受信レベルによって決定された伝搬ロスPLを補正できる。なお、オフセット量ΔHetNet(i)は、上りリンクにおいてユーザ端末から送信され、各無線基地局装置が受信する他の参照信号又はデータ信号の受信レベルに基づいて決定されても良い。
【0054】
あるいは、上記式(4)〜(6)において、オフセット量ΔHetNet(i)は、上りリンクにおいてMACレイヤで報告されるパワーヘッドルームレポート(PHR:Power Headroom Report)と、ピコ基地局B2がユーザ端末UEから受信するデータ信号あるいは参照信号の受信電力に基づいて決定されてもよい。具体的には、例えば、ユーザ端末UEがMACレイヤで定期的に報告するPHRにより、それを受信するピコ基地局B2は、ユーザ端末UEが測定・保持する伝搬ロスPLを含むユーザ端末UEの送信電力を知ることができる。つまり、ピコ基地局B2は、ユーザ端末UEの設定する送信電力を把握可能である。従って、ユーザ端末UEの送信電力と実際の受信レベル(受信品質)との差分より、ピコ基地局B2とユーザ端末UEの実際の伝搬ロスを算出することができる。よって、ユーザ端末UEの測定する伝搬ロスPLとピコ基地局B2が算出する実際の伝搬ロス値の差分を、オフセット量として設定・決定し、マクロ基地局B1を介して下りリンクでユーザ端末UEに通知することにより、伝搬ロスに起因する送信電力誤差を補正できる。
【0055】
図8Aに示す場合、ユーザ端末UEが合成受信するCRSの受信レベルに基づいて決定された伝搬ロスPLは、適正値より小さくなると考えられる。この場合、オフセット量ΔHetNet(i)が正の値になり、送信電力における伝搬ロスPLの誤差の影響が補正される。
【0056】
一方で、図8Bに示すように、上りリンクの協調マルチポイント受信(ULCoMP受信)が適用される場合、ユーザ端末UEから送信されるデータはマクロセル及びピコセルで受信される。この場合、ULCoMP受信の適用がない場合と比較して、上りリンクの送信電力を小さくしても適切に通信可能な場合がある。このような場合には、ULCoMP受信が適用されない場合と比較してオフセット値ΔHetNet(i)を小さくしても良い。具体的には、例えば、マクロ基地局B1がULCoMP受信の適用の有無を判定し、その判定結果に基づいて決定されたオフセット量ΔHetNet(i)をユーザ端末UEに通知すればよい。
【0057】
なお、上記方法では、合成受信されたCRSの受信レベルと、ULCoMP受信の適用の有無とに応じてオフセット量ΔHetNet(i)を決定しているが、ULCoMP受信の適用の有無に応じて変動するするオフセット量ΔCoMP(i)を別に設けても良い。この場合、PUSCHの送信電力について下記式(7)で表し、PUCCHの送信電力について下記式(8)で表し、SRSの送信電力について下記式(9)で表すことができる。
【数11】

【数12】

【数13】

【0058】
また、第1の態様において説明したように、TPCコマンドに基づくオフセット量f(i)及びg(i)を用いて伝搬ロスPLの誤差を補正する構成としても良い。また、UE−specificなPUSCHの目標受信電力相当を示すパラメータPO_PUSCH,c(j)、及びPUCCHの目標受信電力相当を示すパラメータPO_PUCCHを用いて送信電力を補正しても良い。
【0059】
なお、上記態様では、ユーザ端末UEが受信するCRSの受信レベルに基づいて決定された伝搬ロスPLを補正する方法で上り送信電力制御を行っているが、当該方法は、より精度良く伝搬ロスPLを求めることが可能な他の方法と切り替えて用いるようにしても良い。
【0060】
例えば、伝搬ロスPLは、チャネル品質測定用のCSI−RS(Channel State Information−Reference Signal)の受信レベルに基づいて精度良く推定することが可能である。LTE/LTE−Aシステムにおいては、下り参照信号として、CRSの他にDM−RS(Demodulation−Reference Signal)、CSI−RSが規定されている。CSI−RSは、チャネル状態情報(CQI、PMI、RI)の測定に用いられる参照信号であり、共有データチャネル(PDSCH)内に多重される。
【0061】
CRSは、セル固有の参照信号であり、識別符号(セルID)に関連づけられている。このため、共通の識別符号(セルID)が付与された複数の無線基地局装置においてDLCoMP送信が適用される場合には、ユーザ端末UEが受信したCRSの送信元を特定できない。よって、CRSの受信レベルから推定される伝搬ロスPLの推定精度が低い場合がある。一方、CSI−RSもセル固有の参照信号であるが、CSI−RSはperiodisityとsubframe offsetとを指定可能になっているため、識別符号(セルID)が共通の場合にもCSI−RSが多重されるタイミングから送信元を特定できる。このように、CSI−RSの受信レベルに基づいて伝搬ロスを推定する場合、送信元に対応する伝搬ロスを推定することが可能であり、推定精度を高くすることができる。
【0062】
また、CSI−RSの受信レベルに基づいて伝搬ロスPLを推定する場合、送信電力の算出式にULCoMP受信の適用の有無に対応するオフセット値ΔCoMP(i)を設けてもよい。ULCoMP受信の適用の有無に応じてオフセット量ΔCoMP(i)を決定することで、送信電力をより最適化することができる。この場合、送信電力の算出式は、例えば、上述した式(4)〜(6)におけるΔHetNet(i)をΔCoMP(i)に置き換えた式とすることができる。なお、CSI−RSの受信レベルに基づいて伝搬ロスPLを推定する方法は、これのみを単独で用いることもできる。
【0063】
図9は、第2の態様における上り送信電力制御の制御フロー図である。マクロ基地局B1及びピコ基地局B2は、それぞれ、ユーザ端末UEから送信されたSRSの受信レベルを測定する。ピコ基地局B2は、SRSの受信レベルの測定結果をマクロ基地局B1に対してバックホールで通知する(ステップS301)。なお、SRS以外の参照信号を用いても良い。次に、マクロ基地局B1は、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2において測定されたSRSの受信レベルに基づいて、ユーザ端末UEが上りリンクにおいて接続する無線基地局装置を決定する(ステップS302)。
【0064】
ユーザ端末UEがCRSの受信レベルに基づいて伝搬ロスPLを測定し(ステップS303:YES)、ULCoMP受信が適用されない場合(ステップS304:YES)、マクロ基地局B1は、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2において測定されたSRSの受信レベルに基づいて、ユーザ端末UEの上りリンク送信電力制御に用いられるオフセット量ΔHetNet(i)を決定する(ステップS305)。決定されたオフセット量ΔHetNet(i)は、下りリンクにおいてユーザ端末UEと接続する無線基地局装置から、RRCシグナリングでユーザ端末UEに対して通知される(ステップS306)。ユーザ端末装置UEは、通知されたオフセット量ΔHetNet(i)等の情報に基づいて上りリンクの送信電力を設定し、上りリンクの送信を行う(ステップS307)。
【0065】
なお、オフセット量ΔHetNet(i)を、上りリンクにおいてMACレイヤで報告されるPHRと、ピコ基地局B2がユーザ端末UEから受信するデータ信号あるいは参照信号の受信電力に基づいて決定する場合には、上記ステップS104に変えて、上りリンク接続基地局(例えば、ピコ基地局B2)が、ユーザ端末UEから送信されたデータ信号又は参照信号の受信電力の測定値と、ユーザ端末UEから報告されるPHRとに基づいて、ユーザ端末UEの上りリンク送信電力制御に用いられるオフセット量ΔHetNet(i)を計算するステップを設ければよい。
【0066】
ユーザ端末UEがCRSの受信レベルに基づいて伝搬ロスPLを測定し(ステップS303:YES)、ULCoMP受信が適用される場合(ステップS304:NO)、マクロ基地局B1は、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2において測定されたSRSの受信レベルに基づいて、ユーザ端末UEの上りリンク送信電力制御に用いられるオフセット量ΔHetNet(i)を決定する。オフセット量ΔHetNet(i)の決定においては、ULCoMP受信が行われる無線基地局装置を考慮する(ステップS308)。決定されたオフセット量ΔHetNet(i)は、下りリンクにおいてユーザ端末UEと接続する無線基地局装置から、RRCシグナリングでユーザ端末UEに対して通知される(ステップS306)。ユーザ端末装置UEは、通知されたオフセット量ΔHetNet(i)等の情報に基づいて上りリンクの送信電力を設定し、上りリンクの送信を行う(ステップS307)。なお、上述したように、ULCoMP受信の適用の有無に対応するオフセット値ΔCoMP(i)を別途設けてもよい。
【0067】
ユーザ端末UEがCRSの受信レベルに基づいて伝搬ロスPLを測定しない場合(ステップS303:NO)、ユーザ端末UEは、マクロ基地局B1及びピコ基地局B2から送信されるCSI−RSの受信レベルに基づいて伝搬ロスPLを測定する(ステップS309)。ここで、ULCoMP受信が適用される場合(ステップS310:YES)、マクロ基地局B1は、ULCoMP受信を考慮してオフセット量ΔCoMP(i)を決定する(ステップS310)。決定されたオフセット量ΔCoMP(i)はユーザ端末UEに対して通知され(ステップS306)、ユーザ端末装置UEは、オフセット量ΔCoMP(i)等の情報に基づいて上りリンクの送信電力を設定し、上りリンクの送信を行う(ステップS307)。
【0068】
一方、ULCoMP受信が適用されない場合(ステップS310:NO)、ユーザ端末装置UEは、CSI−RSの受信レベルに基づいて推定された伝搬ロスPL等の情報に基づいて上りリンクの送信電力を設定し、上りリンクの送信を行う(ステップS307)。この場合、ユーザ端末UEは、上りリンクにおいて接続する無線基地局装置から送信されるCSI−RSの受信レベルに基づいて伝搬ロスを決定する。
【0069】
このように、合成受信されたCRSの受信レベルや、ULCoMP受信の適用の有無に応じて伝搬ロスPLを補正するオフセット量(補正値)を決定して、ユーザ端末に通知することにより、上りリンクの送信電力制御を適切に行うことが可能となる。
【0070】
以下、実施の形態に係る無線通信システムに適用される無線基地局装置及びユーザ端末について詳細に説明する。図10は、実施の形態に係る無線基地局装置(マクロ基地局及びピコ基地局)の概略構成を示すブロック図である。図10に示す無線基地局装置100は、アンテナ102と、アンプ部104と、送受信部106と、ベースバンド信号処理部108と、呼処理部110と、伝送路インタフェース112とから主に構成されている。
【0071】
このような構成の無線基地局装置100において、上りリンクのデータについては、アンテナ102で受信された無線周波数信号がアンプ部104で増幅される。増幅は、AGC(Auto Gain Control)の下で受信電力が一定電力に補正されるように行われる。増幅された無線周波数信号は、送受信部106においてベースバンド信号へ周波数変換される。このベースバンド信号は、ベースバンド信号処理部108で所定の処理(誤り訂正、復号など)がなされた後、伝送路インタフェース112を介して図示しないアクセスゲートウェイ装置に転送される。アクセスゲートウェイ装置は、コアネットワークに接続されており、各ユーザ端末を管理している。
【0072】
呼処理部110は、上位装置の無線制御局との間で呼処理制御信号を送受信し、無線基地局装置100の状態管理やリソース割り当てをする。なお、後述するレイヤ1処理部181とMAC処理部182における処理は、呼処理部110において設定されている無線基地局装置100と移動局装置200との間の通信状態に基づいてなされる。
【0073】
下りリンクのデータについては、上位装置から伝送路インタフェース112を介してベースバンド信号処理部108に入力される。ベースバンド信号処理部108では、再送制御の処理、スケジューリング、伝送フォーマット選択、チャネル符号化などがなされて送受信部106に転送される。送受信部106では、ベースバンド信号処理部108から出力されたベースバンド信号を無線周波数信号へ周波数変換する。周波数変換された信号は、その後、アンプ部104で増幅されてアンテナ102から送信される。
【0074】
図11及び図12は、図10に示す無線基地局装置におけるベースバンド信号処理部の構成を示すブロック図である。図11はマクロ基地局におけるベースバンド信号処理部の構成を示しており、図12は、ピコ基地局におけるベースバンド信号処理部の構成を示している。
【0075】
図11に示すように、マクロ基地局におけるベースバンド信号処理部108は、主に、レイヤ1処理部181と、MAC(Medium Access Control)処理部182と、RLC(Radio Link Control)処理部183と、上り受信品質測定部184と、上り接続セル決定部185と、上り送信電力オフセット量決定部186と、TPCコマンド決定部187とで構成されている。また、図12に示すように、ピコ基地局におけるベースバンド信号処理部108は、主に、レイヤ1処理部181と、MAC処理部182と、RLC処理部183と、上り受信品質測定部184と、上り受信品質報告部(通知部)188とで構成されている。
【0076】
レイヤ1処理部181は、主に物理レイヤに関する処理を行う。レイヤ1処理部181は、例えば、上りリンクで受信した信号に対して、チャネル復号化、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)、周波数デマッピング、逆フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)、データ復調などの処理を行う。また、レイヤ1処理部181は、下りリンクで送信する信号に対して、チャネル符号化、データ変調、周波数マッピング、逆フーリエ変換(IFFT)などの処理を行う。
【0077】
MAC処理部182は、上りリンクで受信した信号に対するMACレイヤでの再送制御(HARQ)、上りリンク/下りリンクに対するスケジューリング、PUSCH/PDSCHの伝送フォーマットの選択、PUSCH/PDSCHのリソースブロックの選択などの処理を行う。
【0078】
RLC処理部183は、上りリンクで受信したパケット/下りリンクで送信するパケットに対して、パケットの分割、パケットの結合、RLCレイヤでの再送制御などを行う。
【0079】
上り品質測定部184は、上りリンクでユーザ端末から受信したSRSの受信レベルを測定する。なお、他の参照信号を用いて上り送信電力を補正する場合には、対象となる参照信号の受信レベルも測定する。上り品質測定部184において測定された受信レベルは、上り接続セル決定部185及び上り送信電力オフセット量決定部186に送られる。
【0080】
上り接続セル決定部185は、マクロ基地局において受信したSRSの受信レベル、及び、周辺のピコ基地局が受信したSRSの受信レベルに基づいて、上りリンクにおいてユーザ端末が接続する無線基地局装置を決定する。ULCoMP受信が適用される場合には、ULCoMP受信の対象となる無線基地局装置を決定する。
【0081】
上り送信電力オフセット量決定部186は、マクロ基地局において受信したSRSの受信レベル、及び、周辺のピコ基地局が受信したSRSの受信レベルに基づいて、ユーザ端末の上りリンク送信電力のオフセット量(補正値)を決定する。あるいは、ピコ基地局からbackhaulで報告される、ユーザ端末が上りリンクで接続されるピコ基地局が受信したデータ信号あるいは参照信号の受信電力の測定値、及び、ユーザ端末から報告されるPHRに基づいて、ユーザ端末の上りリンク送信電力のオフセット量ΔHetNet(i)を決定する。ULCoMP受信が適用される場合には、ULCoMP受信が適用されることを考慮してオフセット量(補正値)を決定する。このオフセット量は、RRCシグナリングによりユーザ端末に通知される。又は、オフセット量は、拡張されたUE−specificなPUSCHの目標受信電力相当を示すパラメータPO_PUSCH,c(j)、及びPUCCHの目標受信電力相当を示すパラメータPO_PUCCHに含めて、RRCシグナリングによりユーザ端末に通知される。
【0082】
TPCコマンド決定部187は、上り送信電力オフセット量決定部186において決定されたオフセット量からTPCコマンドの値を設定する。ビット数が拡張された拡張TPCコマンドが適用される場合、拡張TPCコマンドの値を設定する。設定されたTPCコマンドは、PDCCHによりユーザ端末に通知される。
【0083】
上り受信品質報告部188は、ピコ基地局において上り品質測定部184で測定したSRSの受信レベルをマクロ基地局の上り接続セル決定部185及び上り送信電力オフセット量決定部186に通知する。また、図5に示すステップS104’などを設ける場合には、ピコ基地局において受信したデータ信号又は参照信号の受信電力の測定値、及び、ユーザ端末から報告されるPHRに基づいて、ユーザ端末の上りリンク送信電力のオフセット量ΔHetNet(i)を計算し、マクロ基地局の上り送信電力オフセット量決定部186に通知する。
【0084】
図13は、実施の形態に係るユーザ端末の概略構成を示すブロック図である。図13に示すユーザ端末200は、主に、アンテナ202と、アンプ部204と、送受信部206と、ベースバンド信号処理部208と、呼処理部210と、アプリケーション部212とで構成されている。
【0085】
このような構成のユーザ端末200において、下りリンクのデータについては、アンテナ202で受信された無線周波数信号がアンプ部204で増幅される。当該増幅は、AGCの下で受信電力が一定電力に補正されるように行われる。増幅された無線周波数信号は、送受信部206においてベースバンド信号へ周波数変換される。このベースバンド信号は、ベースバンド信号処理部208で所定の処理(誤り訂正、復号など)がなされた後、呼処理部210及びアプリケーション部212に送られる。呼処理部210は、無線基地局装置100との通信の管理などを行い、アプリケーション部212は、物理レイヤやMACレイヤより上位のレイヤに関する処理などを行う。
【0086】
上りリンクのデータについては、アプリケーション部212からベースバンド信号処理部208に入力される。ベースバンド信号処理部208では、再送制御の処理、スケジューリング、伝送フォーマット選択、チャネル符号化などがなされて送受信部206に転送される。送受信部206では、ベースバンド信号処理部208から出力されたベースバンド信号を無線周波数信号へ周波数変換する。周波数変換された信号は、その後、アンプ部204で増幅されてアンテナ202から送信される。
【0087】
図14は、図13に示すユーザ端末におけるベースバンド信号処理部の構成を示すブロック図である。ベースバンド信号処理部208は、レイヤ1処理部281と、MAC処理部282と、RLC処理部283と、伝搬ロス測定部284と、送信電力オフセット量受信部285と、TPCコマンド受信部286と、上り送信電力設定部287とで構成されている。
【0088】
レイヤ1処理部281は、主に物理レイヤに関する処理を行う。レイヤ1処理部281は、例えば、下りリンクで受信した信号に対して、チャネル復号化、離散フーリエ変換(DFT)、周波数デマッピング、逆フーリエ変換(IFFT)、データ復調などの処理を行う。また、レイヤ1処理部281は、上りリンクで送信する信号に対して、チャネル符号化、データ変調、周波数マッピング、逆フーリエ変換(IFFT)などの処理を行う。
【0089】
MAC処理部282は、下りリンクで受信した信号に対するMACレイヤでの再送制御(HARQ)、下りスケジューリング情報の解析(PDSCHの伝送フォーマットの特定、PDSCHのリソースブロックの特定)などを行う。また、MAC処理部282は、上りリンクで送信する信号に対するMAC再送制御、上りスケジューリング情報の解析(PUSCHの伝送フォーマットの特定、PUSCHのリソースブロックの特定)などの処理を行う。
【0090】
RLC処理部283は、下りリンクで受信したパケット/上りリンクで送信するパケットに対して、パケットの分割、パケットの結合、RLCレイヤでの再送制御などを行う。
【0091】
伝搬ロス測定部284は、下りリンクで受信したCRSの受信レベルに基づいて伝搬ロスを測定する。伝搬ロスの測定にCSI−RSを用いる場合は、CSI−RSの受信レベルに基づいて伝搬ロスを測定する。
【0092】
送信電力オフセット量受信部285は、下りリンクにおいてRRCシグナリンクで通知される送信電力オフセット量を受信する。オフセット量が複数ある場合(例えば、ΔHetNet(i)及びΔCoMP(i)を用いる場合など)は、複数の送信電力オフセット量を受信する。
【0093】
TPCコマンド受信部286は、下りリンクにおいてPDCCHで通知されるTPCコマンドを受信する。ビット数が拡張された拡張TPCコマンドが適用されている場合は、拡張TPCコマンドを受信する。
【0094】
上り送信電力設定部287は、伝搬ロス測定部284において測定された伝搬ロスの値、送信電力オフセット量受信部285において受信した送信電力オフセット量、TPCコマンド受信部286において受信したTPCコマンドの値などを用い、式(4)〜(6)に基づいて上りリンクの送信電力を設定する。
【0095】
以上のように、本発明においては、上下リンクにおける接続セルや、合成受信されたCRSの受信レベルや、ULCoMP受信の適用の有無等を考慮して、各無線基地局装置で測定したユーザ端末からの上り参照信号又はデータ信号の受信レベルに基づいて伝搬ロスPLを補正するオフセット量(補正値)を決定し、ユーザ端末に通知する。これにより、HetNet環境においても上りリンクの送信電力を適切に制御可能な無線通信システム、無線基地局装置、ユーザ端末、及び無線通信方法が提供される。
【0096】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態における構成要素の接続関係、機能などは適宜変更して実施することが可能である。また、上記実施の形態に示す構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0097】
100 無線基地局装置
102 アンテナ
104 アンプ部
106 送受信部
108 ベースバンド信号処理部
110 呼処理部
112 伝送路インタフェース
181 レイヤ1処理部
182 MAC処理部
183 RLC処理部
184 上り受信品質測定部
185 上り接続セル決定部
186 上り送信電力オフセット量決定部
187 TPCコマンド決定部
188 上り受信品質報告部
200 ユーザ端末
202 アンテナ
204 アンプ部
206 送受信部
208 ベースバンド信号処理部
210 呼処理部
212 アプリケーション部
281 レイヤ1処理部
282 MAC処理部
283 RLC処理部
284 伝搬ロス測定部
285 送信電力オフセット量受信部
286 TPCコマンド受信部
287 上り送信電力設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線基地局装置と、前記第1の無線基地局装置と通信可能に構成された第2の無線基地局装置と、を備えた無線通信システムであって、
前記第1の無線基地局装置は、ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して第1の受信品質情報を生成する第1の通信品質測定部と、前記第1の通信品質情報を前記第2の無線基地局装置に通知する通知部と、を備え、
前記第2の無線基地局装置は、前記ユーザ端末から送信される前記上り参照信号の受信品質を測定して第2の通信品質情報を生成する第2の通信品質測定部と、前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報を基に上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を決定する補正値決定部と、前記決定された補正値を前記ユーザ端末に通知する通知部と、を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第1の無線基地局装置と、前記第2の無線基地局装置とは、異なる識別符号が付与されていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1の無線基地局装置と、前記第2の無線基地局装置とは、同一の識別符号が付与されていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記補正値決定部は、前記第1の無線基地局装置及び前記第2の無線基地局装置が前記ユーザ端末からの信号を協調マルチポイント受信するか否かに応じて前記補正値を変化させることを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記補正値決定部は、前記第1の無線基地局装置及び前記第2の無線基地局装置が前記ユーザ端末からの信号を協調マルチポイント受信するか否かに応じて変動する別の補正値をさらに生成することを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記補正値は、上位レイヤシグナリングにより前記ユーザ端末に通知されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記ユーザ端末に通知された補正値に基づいて、前記ユーザ端末の上りリンクにおけるデータチャネル、上り制御チャネル、及び上り参照信号の送信電力が制御されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項8】
第1の無線基地局装置と、前記第1の無線基地局装置と通信可能に構成された第2の無線基地局装置と、を備えた無線通信システムであって、
前記第1の無線基地局装置は、ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して第1の受信品質情報を生成する第1の通信品質測定部と、前記第1の通信品質情報を前記第2の無線基地局装置に通知する通知部と、を備え、
前記第2の無線基地局装置は、前記ユーザ端末から送信される前記上り参照信号の受信品質を測定して第2の通信品質情報を生成する第2の通信品質測定部と、前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報を基に上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を決定する補正値決定部と、前記決定された補正値を前記ユーザ端末に通知する通知部と、を備え、
前記通知部は、下りリンク制御信号内に設けられた3ビット以上の送信電力制御コマンド用フィールドを用いて、前記補正値を前記ユーザ端末に通知することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
第1の無線基地局装置と、前記第1の無線基地局装置と通信可能に構成された第2の無線基地局装置と、を備えた無線通信システムであって、
前記第1の無線基地局装置は、ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して第1の受信品質情報を生成する第1の通信品質測定部と、前記第1の通信品質情報を前記第2の無線基地局装置に通知する通知部と、ユーザ端末に対してチャネル品質測定用の第1の参照信号を送信する送信部と、を備え、
前記第2の無線基地局装置は、前記ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して第2の受信品質情報を生成する第2の通信品質測定部と、前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報を基に、前記ユーザ端末が上りリンクにおいて接続する無線基地局装置を決定する決定部と、前記ユーザ端末に対してチャネル品質測定用の第2の参照信号を送信する送信部と、を備え、
前記ユーザ端末は、上りリンクにおいて接続する無線基地局装置から送信される前記第1の参照信号又は前記第2の参照信号に基づいてパスロスを決定し、当該パスロスに基づいて上りリンクにおける送信電力を設定することを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
第1の無線基地局装置と、前記第1の無線基地局装置と通信可能に構成された第2の無線基地局装置と、を備えた無線通信システムであって、
前記第1の無線基地局装置は、ユーザ端末から送信される上り参照信号又はデータ信号の受信電力の測定値と、前記ユーザ端末から送信される電力使用についての通知情報とに基づいて、上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を計算し、前記計算された補正値を前記第2の無線基地局装置に通知する通知部と、を備え、
前記第2の無線基地局装置は、前記第1の無線基地局装置から通知される前記補正値を前記ユーザ端末に通知する通知部と、を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
ユーザ端末が第1の無線基地局装置及び第2の無線基地局装置に対して上り参照信号を送信するステップと、
前記第1の無線基地局装置が前記上り参照信号の受信品質を測定して第1の通信品質情報を生成するステップと、
前記第2の無線基地局装置が前記上り参照信号の受信品質を測定して第2の通信品質情報を生成するステップと、
前記第1の無線基地局装置が前記第1の通信品質情報を前記第2の無線基地局装置に通知するステップと、
前記第2の無線基地局装置が前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報を基に上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を決定するステップと、
前記決定された補正値を前記ユーザ端末に通知するステップと、
前記ユーザ端末が前記補正値に基づいて上りリンクにおける送信電力を設定するステップと、を備えたことを特徴とする無線通信方法。
【請求項12】
ユーザ端末が第1の無線基地局装置及び第2の無線基地局装置に対して上り参照信号を送信するステップと、
前記第1の無線基地局装置が前記上り参照信号の受信品質を測定して第1の通信品質情報を生成するステップと、
前記第2の無線基地局装置が前記上り参照信号の受信品質を測定して第2の通信品質情報を生成するステップと、
前記第1の無線基地局装置が前記第1の通信品質情報を前記第2の無線基地局装置に通知するステップと、
前記第2の無線基地局装置が前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報を基に上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を決定するステップと、
前記決定された補正値を、下りリンク制御信号内に設けられた3ビット以上の送信電力制御コマンド用フィールドを用いて前記ユーザ端末に通知するステップと、
前記ユーザ端末が前記補正値に基づいて上りリンクにおける送信電力を設定するステップと、を備えたことを特徴とする無線通信方法。
【請求項13】
ユーザ端末が第1の無線基地局装置及び第2の無線基地局装置に対して上り参照信号を送信するステップと、
前記第1の無線基地局装置が前記上り参照信号の受信品質を測定して第1の通信品質情報を生成するステップと、
前記第2の無線基地局装置が前記上り参照信号の受信品質を測定して第2の通信品質情報を生成するステップと、
前記第1の無線基地局装置が前記第1の通信品質情報を前記第2の無線基地局装置に通知するステップと、
前記第2の無線基地局装置が前記第1の通信品質情報及び前記第2の通信品質情報を基に前記ユーザ端末が上りリンクにおいて接続する無線基地局装置を決定するステップと、
前記第1の無線基地局装置が前記ユーザ端末に対してチャネル品質測定用の第1の参照信号を送信するステップと、
前記第2の無線基地局装置が前記ユーザ端末に対してチャネル品質測定用の第2の参照信号を送信するステップと、
前記ユーザ端末が上りリンクにおいて接続する無線基地局装置から送信される前記第1の参照信号又は前記第2の参照信号に基づいてパスロスを決定するステップと、
当該パスロスに基づいて上りリンクにおける送信電力を設定するステップと、を備えたことを特徴とする無線通信方法。
【請求項14】
第1の無線基地局装置と、前記第1の無線基地局装置と通信可能に構成された第2の無線基地局装置と、前記第1の無線基地局装置及び前記第2の無線基地局装置と無線通信を行うユーザ端末と、を用いる無線通信方法であって、
前記第1の無線基地局装置が前記ユーザ端末から、参照信号又はデータ信号と、電力使用についての通知情報とを受信し、これらに基づいて補正値を計算するステップと、
前記補正値を第2の無線基地局装置に通知するステップと、
前記第2の無線基地局装置が前記第1の無線基地局装置から通知される前記補正値を前記ユーザ端末に通知するステップと、を備えたことを特徴とする無線通信方法。
【請求項15】
他の無線基地局装置と通信可能に構成された無線基地局装置であって、
ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して通信品質情報を生成する通信品質測定部と、
前記他の無線基地局装置が、前記ユーザ端末から送信される上り参照信号の受信品質を測定して生成した通信品質情報を受信する受信部と、
前記通信品質情報、及び前記他の無線基地局装置の通信品質情報を基に上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を決定する補正値決定部と、
前記決定された補正値を前記ユーザ端末に通知する通知部と、を備えたことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項16】
他の無線基地局装置と通信可能に構成された無線基地局装置であって、
ユーザ端末から送信される上り参照信号、データ信号、及び電力使用についての通知情報を受信する受信部と、
前記上り参照信号又は前記データ信号の受信電力を測定する測定部と、
前記受信電力、及び前記電力使用についての通知情報を基に上りリンクにおける前記ユーザ端末の送信電力の補正値を計算して、前記補正値を前記他の無線基地局装置に通知する通知部と、を備えたことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項17】
互いに通信可能に構成された第1の無線基地局装置及び第2の無線基地局装置に対して上り参照信号を送信する送信部と、
前記第1の無線基地局装置又は前記第2の無線基地局装置が、各無線基地局装置に対する上り参照信号の受信品質に基づいて決定した上りリンクにおける送信電力の補正値を受信する受信部と、
前記補正値に基づいて上りリンクにおける送信電力を設定する設定部と、を備えたことを特徴とするユーザ端末。
【請求項18】
第1の無線基地局装置に対して上り参照信号、データ信号、及び電力使用についての通知情報を送信する送信部と、
前記第1の無線基地局装置が上り参照信号又はデータ信号の受信電力、及び前記電力使用についての通知情報を基に計算した上りリンクにおける送信電力の補正値を、前記第1の無線基地局装置と通信可能に構成された第2の無線基地局装置から受信する受信部と、
前記補正値に基づいて上りリンクにおける送信電力を設定する設定部と、を備えたことを特徴とするユーザ端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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