説明

無線通信システム、無線通信装置、及び無線通信方法

【課題】装置間のチャネル情報に基づいた送信ウエイトの算出に要する時間を短縮する。
【解決手段】基地局装置は、自装置に備えられている複数のアンテナ素子と、端末装置それぞれに備えられているアンテナ素子との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報を順に取得するチャネル情報取得部と、チャネル情報取得部がチャネル情報を取得する都度、取得したチャネル情報に基づいて伝搬チャネルの逆特性を示す情報を更新し、すべてのチャネル情報を用いて算出した伝搬チャネルの逆特性を示す情報に基づいて、端末装置に送信するデータを空間多重する際の送信ウエイトを算出する送信ウエイト算出部と、送信ウエイト算出部が算出した送信ウエイトを用いて端末装置に送信するデータに重み付けして送信信号を生成する送信信号生成部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の周波数帯域を用い、異なる複数の送信アンテナ素子より独立な信号系列を空間多重し、複数の通信相手への情報伝達を実現する高速な無線通信システムであるマルチユーザMIMO(Multiple Input Multiple Output;多入力多出力)伝送を行う無線通信システム、無線通信装置、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2.4GHz帯又は5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11g規格、IEEE802.11a規格などの普及が目覚ましい。これらの無線通信システムでは、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM;Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を用い、最大で54Mbpsの伝送速度を実現している。
【0003】
今後、更なる高速な無線通信システムを用いたサービスが増加すると考えられる。それに伴い、無線通信システムにおける端末装置が大幅に増大することが予想される。しかし、通信に利用できる周波数帯域は有限であるために、端末装置数が増大すると、周波数チャネルが逼迫して、周波数チャネルの割り当てを受けられない端末装置が生じ、端末装置を通信に利用できないユーザが生じてしまう。
【0004】
そこで、最近、伝送速度の高速化、大容量化の技術として、最も注目されているのがマルチユーザMIMO送信技術である。図6は、マルチユーザMIMO送信技術が適用される無線通信システムの構成を示す概略図である。マルチユーザMIMO送信技術は、図6に示すような無線通信システムにおいて、基地局装置(アクセスポイント(Access Point;AP))91においてN(Nは、N≧2の自然数)本の送信アンテナ素子から同一周波数、かつ同一タイミングで異なる独立な信号をそれぞれM(u)個(u=1,…,U)のアンテナ素子を持つU(Uは、U≧2の自然数)個の通信相手である端末装置(Station;STA))92−1〜92−Uに送信する。このとき、U個の通信相手の受信アンテナ素子全体を巨大な受信アレーとみなして、下りスループットの向上を実現する技術である。
【0005】
マルチユーザMIMO送信技術としては、ZF(Zero forcing;ゼロフォーシング)法や、MMSE(Minimum mean square error;最小2乗誤差)法などがある(非特許文献1)。これらの通信技術では、送信側の基地局装置において、自装置に備えられているアンテナ素子と、各端末装置に備えられているアンテナ素子との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報を得て、得られたチャネル情報を基に送信ウエイトを算出する。
【0006】
一般的には、マルチユーザMIMO送信技術を用いて複数の送信相手に信号を伝送する前に、基地局装置91でチャネル情報を得るために、予め端末装置92でチャネル情報(伝達関数)を推定して基地局装置91にチャネル情報をフィードバックする。その情報を元に基地局装置91でウエイトを演算してマルチユーザMIMO伝送を行う。
もしくは、基地局装置91と端末装置92との間でTDD(Time Division Duplex;時分割複信)を用いている場合、各端末装置92から送信された既知信号を用いて、基地局装置91で上りリンクチャネル情報を推定し、予め測定しておいたキャリブレーションの値を用いて補正したチャネル情報をチャネル情報として用い、基地局装置91で送信ウエイトを演算してマルチユーザMIMO伝送を行う(例えば、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M. Joham, et al., “Linear transmit processing in MIMO communications systems,” IEEE Trans. Signal Processing, pp. 2700-2712, vol. 53, no. 8, Aug. 2005.
【非特許文献2】IEEE, “Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) specifications: Enhancements for Higher Throughput,” IEEE 802.11n-2009, Oct. 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載の技術は、基地局装置と各端末装置との間のチャネル情報を取得した後に、送信ウエイトを算出するためにチャネル情報の逆行列演算を行う必要があり、送信側である基地局装置の回路規模が大きくなってしまうという問題がある。更に、送信ウエイトの算出に時間が掛かってしまうと、伝搬チャネルの時間変動により、チャネル情報を取得した際の伝搬チャネルの特性と、送信ウエイトを用いて送信を行う際の伝搬チャネルの特性とに差が生じ、算出した送信ウエイトが最適なものでなくなってしまうことがある。この場合、算出した送信ウエイトを用いて送信を行うと、伝送特性が劣化してしまうという問題がある。すなわち、伝搬チャネルの時変動に対して、高速に送信ウエイトを算出する演算ができない場合、マルチユーザMIMO伝送による伝送速度の高速化、及び大容量化を達成できないことがあるという問題がある。また、非特許文献2に記載されている技術においても、非特許文献1と同様の問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、装置間のチャネル情報に基づいた送信ウエイトの算出に要する時間を短縮することができる無線通信システム、無線通信装置、及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するために、本発明は、複数のアンテナ素子を備える第1の通信装置と、該第1の通信装置と通信する複数の第2の通信装置とにより構成される無線通信システムであって、前記第1の通信装置は、自装置に備えられている前記複数のアンテナ素子と、前記第2の通信装置それぞれに備えられているアンテナ素子との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報を取得するチャネル情報取得部と、前記チャネル情報取得部が前記チャネル情報を取得する都度、前記取得したチャネル情報に基づいて前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報を更新し、すべての前記チャネル情報を用いて算出した前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報に基づいて、前記第2の通信装置に送信するデータを空間多重する際の送信ウエイトを算出する送信ウエイト算出部と、前記送信ウエイト算出部が算出した送信ウエイトを用いて前記第2の通信装置に送信するデータに重み付けして送信信号を生成する送信信号生成部とを備えていることを特徴とする無線通信システムである。
【0011】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記第2の通信装置の数をUとした場合、前記送信ウエイト算出部は、前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報としての行列Rの初期値Rを設定する初期値設定部と、u(1≦u≦U)番目の前記第2の通信装置に対する前記チャネル情報を取得すると、行列Ru−1と、前記取得したチャネル情報とから行列Rを逐次算出する逆行列算出部と、前記逆行列算出部が算出した行列Rを用いて前記送信ウエイトを算出するチャネル行列乗算部とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記送信ウエイト算出部は、前記第2の通信装置それぞれにおける信号対雑音電力比を用いて前記送信ウエイトを算出することを特徴とする。
【0013】
また、上記問題を解決するために、本発明は、複数のアンテナ素子を備え、複数の通信装置と通信する無線通信装置であって、自装置に備えられている前記複数のアンテナ素子と、前記通信装置それぞれに備えられているアンテナ素子との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報を取得するチャネル情報取得部と、前記チャネル情報取得部が前記チャネル情報を取得する都度、前記取得したチャネル情報に基づいて前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報を更新し、すべての前記チャネル情報を用いて算出した前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報に基づいて、前記通信装置に送信するデータを空間多重する際の送信ウエイトを算出する送信ウエイト算出部と、前記送信ウエイト算出部が算出した送信ウエイトを用いて前記通信装置に送信するデータに重み付けして送信信号を生成する送信信号生成部とを備えていることを特徴とする無線通信装置である。
【0014】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記通信装置の数をUとした場合、前記送信ウエイト算出部は、前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報としての行列Rの初期値Rを設定する初期値設定部と、u(1≦u≦U)番目の前記通信装置に対する前記チャネル情報を取得すると、行列Ru−1と、前記取得したチャネル情報とから行列Rを逐次算出する逆行列算出部と、前記逆行列算出部が算出した行列Rを用いて前記送信ウエイトを算出するチャネル行列乗算部とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記送信ウエイト算出部は、前記通信装置それぞれにおける信号対雑音電力比を用いて前記送信ウエイトを算出することを特徴とする。
【0016】
また、上記問題を解決するために、本発明は、複数のアンテナ素子を備える第1の通信装置と、該第1の通信装置と通信する複数の第2の通信装置とにより構成される無線通信システムにおける無線通信方法であって、自装置に備えられている前記複数のアンテナ素子と、前記第2の通信装置それぞれに備えられているアンテナ素子との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報を取得するチャネル情報取得ステップと、前記チャネル情報取得ステップにおいて前記チャネル情報を取得する都度、前記取得したチャネル情報に基づいて前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報を更新し、すべての前記チャネル情報を用いて算出した前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報に基づいて、前記第2の通信装置に送信するデータを空間多重する際の送信ウエイトを算出する送信ウエイト算出ステップと、前記送信ウエイト算出ステップにおいて算出した送信ウエイトを用いて前記第2の通信装置に送信するデータに重み付けして送信信号を生成する送信信号生成ステップとを有することを特徴とする無線通信方法である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、第1の通信装置は、自装置と各第2の通信装置との間のチャネル情報を取得し、取得したチャネル情報を用いて、第1の通信装置と第2の通信装置との間の伝搬チャネルの逆特性を示す情報を逐次的に算出する。これにより、すべての第2の通信装置との間のチャネル情報を取得するまで待たずとも、得られたチャネル情報を用いて伝搬チャネルの逆特性を示す情報を算出することができ、送信ウエイトの算出に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態における無線通信システム1が具備する基地局装置100及び端末装置200−1〜200−Uの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態における基地局装置100と端末装置200との動作を説明するためのフレームシーケンスの一例である。
【図3】同実施形態における送信ウエイト算出回路106の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】第2実施形態における無線通信システム2が具備する基地局装置400及び端末装置500−1〜500−Uの構成を示す概略ブロック図である。
【図5】同実施形態における基地局装置400と端末装置500との動作を説明するためのフレームシーケンスの一例である。
【図6】マルチユーザMIMO送信技術が適用される無線通信システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施形態における無線通信システム、無線通信装置、及び無線通信方法を説明する。
以下説明する各実施形態における無線通信システムでは、マルチユーザMIMO伝送を用いて空間多重したデータを送信する基地局装置(第1の通信装置、無線通信装置)と、空間多重されたデータを受信するU(Uは、U≧2の自然数)個の端末装置(第2の通信装置、通信装置)とを具備する場合を例にして説明する。なお、本実施形態の構成において、端末装置を1台とすればシングルユーザMIMO(単に、MIMO)となる。また、無線通信システムにおいて、端末装置が空間多重されたデータを送信し、基地局装置が空間多重されたデータを受信する構成も可能である。
【0020】
(A.第1実施形態)
図1は、第1実施形態における無線通信システム1が具備する基地局装置100及び端末装置200−1〜200−Uの構成を示す概略ブロック図である。無線通信システム1が具備する各端末装置200−1〜200−Uは同じ構成を有している。以下、すべての端末装置200−1〜200−Uを示す場合、あるいはいずれか1つを示す場合、端末装置200という。
【0021】
基地局装置100は、データ発生回路101と、送信信号生成回路102と、無線部103−1〜103−N(Nは、N≧2の自然数)と、アンテナ素子104−1〜104−Nと、チャネル情報復元回路105と、送信ウエイト算出回路106とを備えている。
【0022】
データ発生回路101は、各端末装置200に備えられているアンテナ素子と、自装置に備えられているアンテナ素子104−1〜104−Nとの間の伝搬チャネルの特性を推定するためのトレーニング信号系列を生成する。またデータ発生回路101は、各端末装置200に送信する送信データ系列を生成する。
データ発生回路101が生成するトレーニング信号系列は、基地局装置100に備えられているアンテナ素子104−1〜104−Nと、各端末装置200に備えられているアンテナ素子との間のすべての伝搬チャネルの特性を推定できるパターンを含むデータ系列である。データ発生回路101は、公知の技術を用いて、このパターンを生成する。例えば、非特許文献2に記載されている直交パターンをトレーニング信号系列として用いてもよい。
【0023】
送信信号生成回路102は、データ発生回路101が生成したトレーニング信号系列又は送信データ系列から、送信信号を生成する。例えば、OFDM信号を送信する場合、送信信号生成回路102は、トレーニング信号系列又は誤り訂正符号化された送信データ系列を通信に用いる各サブキャリアにマッピングする。また、送信信号生成回路102は、各サブキャリアにマッピングしたトレーニング信号系列又は送信データ系列を、サブキャリア単位もしくは全サブキャリア共通でシンボル変調を行う。ここで、シンボル変調として、例えば、BPSK(Binary Phase Shift Keying;二位相偏移変調)や、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying;四位相偏移変調)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation;直交振幅変調)などを用いる。あるいは、他の変調方式を用いてシンボル変調を行ってもよい。
また、送信信号生成回路102は、シンボル変調した信号に対して、送信ウェイト算出回路106が算出する送信ウエイトに基づいて、送信ビームフォーミングによるマルチユーザMIMOの信号を生成する。ただし送信ビームフォーミングを行わないで信号を送信する場合(サウンディングフレームを送信する場合も含む)、送信信号生成回路102は送信ビームフォーミング処理を行わない。
また、送信信号生成回路102は、シンボル変調した信号もしくは送信ビームフォーミング処理後の信号に対して、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform;逆高速フーリエ変換)によりOFDM変調を行い、ガードインターバルを挿入して送信信号の時間系列を生成する。
【0024】
無線部103−1〜103−Nは、送信信号生成回路102がトレーニング信号系列又は送信データ系列から生成した送信信号をディジタル−アナログ変換し、更に、送信に利用する周波数帯域の無線信号に周波数変換する。また、無線部103−1〜103−Nは、それぞれに1つずつ接続されたアンテナ素子104−1〜104−Nから生成した信号を送信する。
また、無線部103−1〜103−Nは、端末装置200から送信されるチャネル情報を含む信号系列をアンテナ素子104−1〜104−Nを介して受信し、受信した信号系列をベースバンドのディジタル信号に変換してチャネル情報復元回路105に出力する。ここで、チャネル情報は、各端末装置200と自装置(基地局装置100)との間の下りリンク、つまり基地局装置100から各端末装置200へ送信した場合の伝搬チャネルの特性を示す情報である。
【0025】
チャネル情報復元回路105は、無線部103−1〜103−Nから入力される信号系列からチャネル情報を復元し、復元したチャネル情報を送信ウエイト算出回路106に出力する。ここで、チャネル情報復元回路105によるチャネル情報の復元には、端末装置200においてチャネル情報を圧縮する際に用いた圧縮方法に対応する復元方法を用いる。例えば、圧縮方法及び復元方法として、非特許文献2に記載された方法を用いる。なお、非特許文献2に記載された方法以外の公知の方法を用いてもよい。
【0026】
次に、端末装置200の構成について説明する。各端末装置200は、上述したように同じ構成を有しているので、ここでは端末装置200−1について説明する。図1に示すように、端末装置200−1は、アンテナ素子201−1−1〜201−1−M(1)と、無線部202−1−1〜202−1−M(1)と、受信信号復調回路203−1と、送信信号生成回路204−1と、チャネル情報推定回路205−1と、チャネル情報圧縮回路206−1とを備えている。ここで、M(u)は、u(u=1,…,U)番目の端末装置200−uに備えられているアンテナ素子の数を示す。M(u)は、端末装置200−1〜200−Uにおいて同じ数でもよいし、端末装置200−1〜200−Uごとに異なっていてもよい。
【0027】
アンテナ素子201−1−1〜201−1−M(1)は、それぞれが無線部202−1−1〜202−1−M(1)に1対1に接続されている。
無線部202−1−1〜202−1−M(1)は、それぞれに接続されているアンテナ素子201−1−1〜201−1−M(1)を介して、基地局装置100から送信される信号を受信し、アンテナ素子201−1−1〜201−1−M(1)で受信した信号ごとにベースバンドのディジタル信号系列に変換して、受信信号復調回路203−1と、チャネル情報推定回路205−1とに出力する。
また、無線部202−1−1〜202−1−M(1)は、送信信号生成回路204−1から入力される送信信号をアナログ信号の無線信号に変換し、変換した無線信号をアンテナ素子201−1−1〜201−1−M(1)を介して送信する。
【0028】
受信信号復調回路203−1は、各無線部202−1−1〜202−1−M(1)が出力するディジタル信号系列を復調、復号し、得られたデータ系列を出力する。
送信信号生成回路204−1は、基地局装置100に備えられている送信信号生成回路102と同様に、チャネル情報圧縮回路206−1により圧縮されたチャネル情報から送信信号を生成して無線部202−1−1〜202−1−M(1)に出力する。
【0029】
チャネル情報推定回路205−1は、無線部202−1−1〜202−1−M(1)から入力されるディジタル信号系列に含まれるトレーニング信号系列から、基地局装置100に備えられているアンテナ素子104−1〜104−Nとアンテナ素子201−1−1〜201−1−M(1)との間のチャネル情報を推定する。チャネル情報の推定方法は、公知の技術により行う。例えば、LS(Least Square;最小2乗)法によりチャネル情報を推定する(参考文献1:I. Barhumi, et el., “Optimal training design for MIMO OFDM systems in mobile wireless channels,” IEEE Trans. Sig. Process., vol. 51, no. 6, June 2003.)。
【0030】
チャネル情報圧縮回路206−1は、チャネル情報推定回路205−1により推定されるチャネル情報を量子化、及び圧縮して送信信号生成回路204−1に出力する。ここで、チャネル情報の圧縮方法としては、上述した復元方法と同様に公知の技術、例えば非特許文献2に記載された方法などを用いるようにしてもよい。なお、本実施形態において、端末装置200は、圧縮されたチャネル情報を送信することのみを説明したが、トレーニング信号系列や、他のデータ信号を送信するようにしてもよい。
【0031】
次に、本実施形態の基地局装置100と端末装置200との動作について説明する。
図2は、本実施形態における基地局装置100と端末装置200との動作を説明するためのフレームシーケンスの一例である。同図において、横軸は時間を示し、基地局装置100及び各端末装置200から送信されるフレームが示されている。以下の説明において、端末装置200−u(1≦u≦U)は、端末装置200−1〜200−Uのいずれか1つを示す。また、基地局装置100と端末装置200とはTDMA(Time Division Multiple Access;時分割多元接続)を用いた通信を行う。また、各端末装置200が基地局装置100にチャネル情報をフィードバックする際には、予め定められた順番(例えば、端末装置200−1から順に端末装置200−Uまでの順)でフィードバックを行う場合について説明し、その際、第u番目の端末装置200−uからチャネル情報フィードバックフレームが受信された時刻をt1u(u=1,2,…,U))とするものとする。なお、各端末装置200がチャネル情報をフィードバックする順序は、フィードバックを行う都度、基地局装置100から各端末装置200に通知するようにしてもよい。
【0032】
まず、基地局装置100において、データ発生回路101がトレーニング信号系列を生成し、送信信号生成回路102がデータ発生回路101により生成されたトレーニング信号系列から送信信号を生成し、無線部103−1〜103−Nが生成された送信信号をアンテナ素子104−1〜104−Nを介し、サウンディングフレームとして信号を各端末装置200に送信する。
各端末装置200−uにおいて、無線部202−u−1〜202−u−M(u)がアンテナ素子201−u−1〜201−u−M(u)を介して、基地局装置100から送信されたサウンディングフレームを受信する。そして、無線部202−u−1〜202−u−M(u)が受信したサウンディングフレームをベースバンドのディジタル信号系列に変換し、チャネル情報推定回路205−uが変換されたディジタル信号系列に基づいてチャネル情報を推定する。
【0033】
チャネル情報圧縮回路206−uは、チャネル情報推定回路205−uにより推定されたチャネル情報を量子化、及び圧縮して送信信号生成回路204−uに出力する。送信信号生成回路204−uがチャネル情報圧縮回路206−uにより圧縮されたチャネル情報を送信信号に変換し、無線部202−u−1〜202−u−M(u)が送信信号をアンテナ素子201−u−1〜201−u−M(u)を介してチャネル情報フィードバックフレームとして基地局装置100に送信する。このとき、端末装置200−1、端末装置200−2、…、端末装置200−Uの順に異なるタイミングで、チャネル情報フィードバックフレームを送信する(時刻t11,t12,…,t1U)。
【0034】
基地局装置100において、無線部103−1〜103−Nは、アンテナ素子104−1〜104−Nを介して各端末装置200−uから送信された信号を受信すると、受信した信号をベースバンドのディジタル信号に変換し、チャネル情報復元回路105に順次出力する。チャネル情報復元回路105は、無線部103−1〜103−Nにより変換されたベースバンドのディジタル信号に含まれる圧縮されたチャネル情報をチャネル情報フィードバックフレームの順に復元する。送信ウエイト算出回路106は、復元されたチャネル情報順に用いて送信ウエイトを算出する。
送信信号生成回路102は、データ発生回路101から入力された送信信号に対して上述した信号処理を行い、更に、送信ウエイト算出回路106が算出した送信ウエイトを用いてマルチユーザMIMOの無線信号を生成し、生成した無線信号をアンテナ素子104−1〜104−Nを介してデータフレームとして端末装置200に送信する。なお、送信ビームフォーミングを行わないで信号を送信する場合(サウンディングフレームを送信する場合も含む)、送信信号生成回路102は送信ビームフォーミングは行わない。
【0035】
各端末装置200−uにおいて、無線部202−u−1〜202−u−M(u)が、アンテナ素子201−u−1〜202−u−M(u)を介して、基地局装置100から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号をベースバンドのディジタル信号に変換して受信信号復調回路203−uに出力する。受信信号復調回路203−uは、入力されたディジタル信号からデータ系列を復調、復号して出力する。
【0036】
次に、本実施形態の基地局装置100に備えられている送信ウエイト算出回路106における送信ウエイトの生成処理について説明する。ここで説明する処理は、チャネル情報フィードバックフレームが受信された後に行う処理であり、上述したように、復元されたチャネル情報を順に用いて演算を行い、送信ウエイトを算出する。なお、以下では、説明を簡単にするために、各端末装置200に備えられているアンテナ素子数が1本、つまりM(u)=1(u=1,2,...,U)である場合について説明する。
【0037】
図3は、本実施形態における送信ウエイト算出回路106の構成を示す概略ブロック図である。送信ウエイト算出回路106は、初期値設定回路301、逆行列算出回路302、及びチャネル行列乗算回路303を有している。
初期値設定回路301は、予め次式(1)を用いて、送信ウエイトを生成する際に用いる逆行列R(k)−1の初期値R(k)−1の設定をサブキャリアごとに行い、各サブキャリアの初期値R(k)−1を逆行列算出回路302に出力する。
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、kはサブキャリア番号を示し、IはN×Nの単位行列を示す。δは任意の正の実数もしくは0であり、予め定められた値である。また、δはサブキャリアごとに異なる値を設定してもよいし、同じ値でもよい。
【0040】
逆行列算出回路302は、初期値設定回路301で生成された逆行列の初期値R(k)−1と、チャネル情報復元回路105から入力されるチャネル情報とを用いて、逆行列演算を行う。ここで、逆行列算出回路302は、各端末装置200からフィードバックされたチャネル情報が受信された順に、逆行列演算を行う。
具体的には、時刻t1u(u=1,2,…U)において端末装置200からチャネル情報がフィードバックされる都度、チャネル情報復元部105がチャネル情報を復元し、その後、逆行列算出回路302が第1番目の端末装置200から第(u−1)番目の端末装置200−(u−1)までのチャネル情報から算出された逆行列Ru−1(k)−1から、ベクトルp(k)、及び変数q(k)を次式(2)及び次式(3)を用いて算出する。
【0041】
【数2】

【0042】
【数3】

【0043】
ここで、式(2)における上付きHはエルミート転置を表す。ベクトルh(k)は端末装置200−uと基地局装置100との間のチャネル情報ベクトルの第k周波数成分であり、次式(4)で与えられる。
【0044】
【数4】

【0045】
ここで、Hu,n(k)は端末装置200−uと、基地局装置100の第nアンテナ素子との間に対するチャネル情報の推定値の第k周波数成分である。
【0046】
逆行列算出回路302は、得られたベクトルp(k)及び変数q(k)を用いてチャネル情報から算出された逆行列R(k)−1を次式(5)のように更新する。
【0047】
【数5】

【0048】
上記の式(5)による演算を、すべての端末装置200−1〜200−Uに対して、逐次的に演算を行い第U番目の端末装置200−Uに対するチャネル情報が得られることで算出される逆行列R(k)−1が得られたらその結果をチャネル行列乗算回路303に出力する。
【0049】
チャネル行列乗算回路303は、逆行列算出回路302が算出した逆行列R(k)−1と、チャネル情報復元回路105から入力される各端末装置200のチャネル情報とを入力値として、送信ビームフォーミングウエイト(送信ウエイト)を算出する。第kサブキャリアにおける送信ビームフォーミングウエイトW(k)は、次式(6)を用いて算出される。
【0050】
【数6】

【0051】
チャネル行列乗算回路303は、算出した送信ビームフォーミングウエイトW(k)を送信信号生成回路102に出力する。
なお、基地局装置100において、各端末装置200におけるSNR(Signal-to-noise power ratio;信号対雑音電力比)が得られる場合には、得られたSNRも用いて送信ウエイトW(k)を演算することにより、雑音強調が抑圧されて特性を改善することができる。具体的には、SNRが得られる場合、チャネル行列乗算回路303は、式(6)において用いるチャネル情報ベクトルh(k)に替えて、次式(7)で与えられるチャネル情報ベクトルh’(k)を用いて送信ウエイトW(k)を算出する。
【0052】
【数7】

【0053】
ここで、式(7)におけるPは端末装置200−uにおけるSNRの測定値を示す。SNRは、チャネル情報と同様に、端末装置200で推定して基地局装置100にフィードバックするようにしてもよいし、各端末装置200から同じ送信電力で既知の信号を送信し、基地局装置100で受信した信号に基づいてSNRを推定するようにしてもよい。
【0054】
上述のように、基地局装置100において、各端末装置200から順次フィードバックされるチャネル情報を用いて、基地局装置100と各端末装置200との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報(行列)に対する逆行列を逐次的に算出し、逆行列を更新することにより、チャネル情報に対する逆行列の算出に要する時間を短縮することができる。すなわち、送信ウエイト算出回路106は、チャネル情報復元回路105がチャネル情報を取得する都度、取得したチャネル情報に基づいて基地局装置100とすべての端末装置200との間の伝搬チャネルの逆特性を示す逆行列R(k)−1を更新し、すべてのチャネル情報を用いた逆行列R(k)−1を算出する。このとき、送信ウエイト算出回路106は、最後の端末装置200からチャネル情報を受信してから、式(2)、式(3)、式(5)及び式(7)の演算を行えば、送信ウエイトを算出することができる。式(2)、式(3)、式(5)及び式(7)の演算により、基地局装置100とすべての端末装置200との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報行列が得られてから逆行列の算出を開始する場合よりも、送信ウエイトW(k)の算出に要する時間を削減することができる。
その結果、送信ウエイトW(k)の算出に要する時間(オーバーヘッド)を削減することができ、また、伝搬チャネルの時間変動の影響を低減することができ、無線通信システム1のスループットを向上させることができる。
また、各端末装置200に対するチャネル情報ベクトルを受信すると、逐次的に逆行列を算出するようにしたので、式(2)、式(3)及び式(5)における行列演算を簡単化して演算量を減らすことができ、当該演算を処理する回路の回路規模を削減することができる。
【0055】
なお、上述した第1実施形態は、FDD(Frequency Division Duplex;周波数分割複信)及びTDDいずれの場合でも利用することが可能である。FDDの場合は、上りリンクと下りリンクの使用する周波数帯域を異なるものにすればよい。
【0056】
(B.第2実施形態)
図4は、第2実施形態における無線通信システム2が具備する基地局装置400及び端末装置500−1〜500−Uの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態における無線通信システム2は、TDDを前提としたシステムである点が第1実施形態の無線通信システム1と異なる。また、無線通信システム2が具備する各端末装置500−1〜500−Uは同じ構成を有している。以下、すべての端末装置500−1〜500−Uを示す場合、あるいはいずれか1つを示す場合、端末装置500という。また、無線通信システム2において、第1実施形態の無線通信システム1と同じ機能部に対しては同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
基地局装置400は、データ発生回路101と、送信信号生成回路102と、無線部103−1〜103−N(Nは、N≧2の自然数)と、アンテナ素子104−1〜104−Nと、チャネル情報推定回路405と、送信ウエイト算出回路106とを備えている。基地局装置400は、チャネル情報復元回路105に替えてチャネル情報推定回路405を備えている点が基地局装置100(図1)と異なる。
チャネル情報推定回路405は、無線部103−1〜103−Nから入力される信号系列に含まれるトレーニング信号系列を検出し、検出したトレーニング信号系列に基づいて、基地局装置400に備えられているアンテナ素子104−1〜104−Nと各端末装置500に備えられている各アンテナ素子との間の上りリンクのチャネル情報を推定する。更に、チャネル情報推定回路405は、推定した上りリンクのチャネル情報と、予め測定しておいたキャリブレーションの補正値とを用いて、下りリンクのチャネル情報を算出する。チャネル情報推定回路405は、キャリブレーションを行う際、公知の技術、例えば非特許文献2に記載されている方法を用いる。また、チャネル情報推定回路405は、算出した下りリンクのチャネル情報を送信ウエイト算出回路106に出力する。
【0058】
端末装置500−1は、アンテナ素子201−1−1〜201−1−M(1)と、無線部202−1−1〜202−1−M(1)と、受信信号復調回路203−1と、送信信号生成回路204−1と、データ発生回路506−1とを備えている。端末装置500−1は、チャネル情報推定回路205−1及びチャネル情報圧縮回路206−1に替えてデータ発生回路506−1を備えている点が端末装置200−1(図1)と異なる。本実施形態においては、端末装置500がチャネル情報を推定し、フィードバックする必要がないためである。
データ発生回路506−1は、各端末装置500に備えられているアンテナ素子と、基地局装置400に備えられているアンテナ素子104−1〜104−Nとの間のチャネル情報を推定するためのトレーニング信号系列と、端末装置500−1〜500−Uから基地局装置400へ送信する送信データ系列とを生成する。データ発生回路506−1は、生成したトレーニング信号系列と、生成した送信データ系列とを送信信号生成回路204−1に出力する。
【0059】
次に、本実施形態の基地局装置400と端末装置500との動作について説明する。
図5は、本実施形態における基地局装置400と端末装置500との動作を説明するためのフレームシーケンスの一例である。同図において、横軸は時間を示し、基地局装置400及び各端末装置500から送信されるフレームが示されている。以下の説明において、端末装置500−u(1≦u≦U)は、端末装置500−1〜500−Uのいずれか1つを示す。また、基地局装置400と端末装置500とはTDMAを用いた通信を行う。また、各端末装置500が基地局装置400にトレーニング信号系列を送信する際には、予め定められた順番(例えば、端末装置500−1から順に端末装置500−Uまでの順)でトレーニング信号系列を送信する場合について説明し、その際、第u番目の端末装置500−u(u=1,2,…,U)からチャネル情報フィードバックフレームが受信された時刻をt2uとするものとする。
【0060】
端末装置500−uにおいて、データ生成回路506−uは上りリンクチャネル情報を推定するためのトレーニング信号系列を生成して送信信号生成回路204−uに出力する。送信信号生成回路204−uは、データ生成回路506−uにより生成されたトレーニング信号系列から送信信号を生成する。無線部202−1−1〜202−1−M(u)は、アンテナ素子201−u−1〜201−u−M(u)を介して、送信信号生成回路204−uが生成した送信信号をサウンディングフレームとして基地局装置400に送信する(時刻t21,t22,…,t2U)。ここで、サウンディングフレームは、TDMAで順番に送信される。また、各端末装置500が送信する順番は、予め定めておいてもよし、基地局装置400が各端末装置500に送信する順番を事前に通知するようにしてもよい。
【0061】
基地局装置400において、無線部103−1〜103−Nは、アンテナ素子104−1〜104−Nを介して、端末装置500から送信された順にサウンディングフレームを受信し、受信したサウンディングフレームに含まれる信号をベースバンドのディジタル信号に変換する。チャネル情報推定回路405は、各無線部103−1〜103−Nにより変換されたディジタル信号に含まれるトレーニング信号系列を検出し、該トレーニング信号系列を送信した端末装置500との間の上りリンクのチャネル情報を推定し、推定した上りリンクのチャネル情報とキャリブレーションの補正値とから下りリンクのチャネル情報を推定する。このとき、チャネル情報推定回路405は、サウンディングフレームを受信した順に下りリンクのチャネル情報を推定する。
【0062】
送信ウエイト算出回路106は、チャネル情報推定回路405が推定したチャネル情報を用いて順に演算を行い、送信ウエイトを算出する。このとき、送信ウエイト算出回路106は、第1実施形態において説明したように、第u番目の端末装置500−uに対応する下りリンクのチャネル情報が得られると、第1番目の端末装置500−1から第(u−1)番目の端末装置500−(u−1)までのチャネル情報から算出された逆行列Ru−1(k)−1から逆行列R(k)−1を順次算出する。送信ウエイト算出回路106は、第U番目の端末装置200−Uに対するチャネル情報を用いて逆行列R(k)−1を算出すると、逆行列R(k)−1から送信ウエイトを算出し、算出した送信ウエイトを送信信号生成回路102に出力する。
送信信号生成回路102は、データ発生回路101から入力された送信信号に対して上述した信号処理を行い、更に、送信ウエイト算出回路106が算出した送信ウエイトを用いてマルチユーザMIMOの無線信号を生成し、生成した無線信号をアンテナ素子104−1〜104−Nを介してデータフレームとして端末装置500に送信する。なお、送信ビームフォーミングを行わないで信号を送信する場合、送信信号生成回路102は送信ビームフォーミングは行わない。
【0063】
各端末装置500−uにおいて、無線部202−u−1〜202−u−M(u)は、アンテナ素子201−u−1〜201−u−M(u)を介して、基地局装置400から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号をベースバンドのディジタル信号に変換して受信信号復調回路203−uに出力する。受信信号復調回路203−uは入力されたディジタル信号からデータ系列を復調、復号して出力する。
【0064】
上述のように、本実施形態の無線通信システム2においても、第1実施形態と同様に、チャネル情報が得られてからチャネル情報に対する逆行列の算出に要する時間を短縮することができる。これにより、送信ウエイトW(k)の算出に要する時間(オーバーヘッド)を削減することができ、また、伝搬チャネルの時間変動の影響を低減することができ、無線通信システム2のスループットを向上させることができる。
【0065】
なお、上述の各実施形態では、各端末装置200、500が備えているアンテナ素子が1本の場合について説明したが、アンテナ素子が複数であってよい。この場合、端末装置200、500に対するチャネル情報として複数のチャネル情報ベクトルが得られるが、得られた個々のベクトルを異なる端末装置のチャネル情報ベクトルと見立てることにより、上述の説明と同様に演算可能である。
また、上述の各実施形態では、無線通信システム1、2において、基地局装置100、400がOFDM信号を送信する場合について説明したが、シングルキャリア信号や(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access;直交周波数分割多元接続)信号などを送信するようにしてもよい。
また、上述の各実施形態において、マルチユーザMIMOによる送信を例にして説明したが、マルチユーザMIMO伝送に限らず、ビームフォーミングを行う送信を行う無線通信システムに適用することができる。
【0066】
なお、本発明における送信ウエイト算出回路106の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより初期値設定回路301、逆行列算出回路302、及びチャネル行列乗算回路303による処理を行わせ、送信ウエイトを算出させるようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0067】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。更に、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば、無線LANや、携帯電話などの無線通信システムに用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1,2…無線通信システム
91…基地局装置
92…端末装置
100,400…基地局装置(第1の通信装置,無線通信装置)
101…データ発生回路
102…送信信号生成回路
103−1,103−2,103−N…無線部
104−1,104−2,104−N…アンテナ素子
105…チャネル情報復元回路(チャネル情報取得部)
106…送信ウエイト算出回路
200,200−1,200−u,200−U,500,500−1,500−u,500−U…端末装置(第2の通信装置,通信装置)
201−1−1,201−1−2,201−1−M(u),201−U−1,201−U−M(U)…アンテナ素子
202−1−1,202−1−2,202−1−M(1)…無線部
203−1…受信信号復調回路
204−1…送信信号生成回路
205−1…チャネル情報推定回路
206−1…チャネル情報圧縮回路
301…初期値設定回路
302…逆行列算出回路
303…チャネル行列乗算回路
405…チャネル情報推定回路(チャネル情報取得部)
506−1…データ発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子を備える第1の通信装置と、該第1の通信装置と通信する複数の第2の通信装置とにより構成される無線通信システムであって、
前記第1の通信装置は、
自装置に備えられている前記複数のアンテナ素子と、前記第2の通信装置それぞれに備えられているアンテナ素子との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報を取得するチャネル情報取得部と、
前記チャネル情報取得部が前記チャネル情報を取得する都度、前記取得したチャネル情報に基づいて前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報を更新し、すべての前記チャネル情報を用いて算出した前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報に基づいて、前記第2の通信装置に送信するデータを空間多重する際の送信ウエイトを算出する送信ウエイト算出部と、
前記送信ウエイト算出部が算出した送信ウエイトを用いて前記第2の通信装置に送信するデータに重み付けして送信信号を生成する送信信号生成部と
を備えている
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第2の通信装置の数をUとした場合、
前記送信ウエイト算出部は、
前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報としての行列Rの初期値Rを設定する初期値設定部と、
u(1≦u≦U)番目の前記第2の通信装置に対する前記チャネル情報を取得すると、行列Ru−1と、前記取得したチャネル情報とから行列Rを逐次算出する逆行列算出部と、
前記逆行列算出部が算出した行列Rを用いて前記送信ウエイトを算出するチャネル行列乗算部と
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記送信ウエイト算出部は、
前記第2の通信装置それぞれにおける信号対雑音電力比を用いて前記送信ウエイトを算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
複数のアンテナ素子を備え、複数の通信装置と通信する無線通信装置であって、
自装置に備えられている前記複数のアンテナ素子と、前記通信装置それぞれに備えられているアンテナ素子との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報を取得するチャネル情報取得部と、
前記チャネル情報取得部が前記チャネル情報を取得する都度、前記取得したチャネル情報に基づいて前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報を更新し、すべての前記チャネル情報を用いて算出した前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報に基づいて、前記通信装置に送信するデータを空間多重する際の送信ウエイトを算出する送信ウエイト算出部と、
前記送信ウエイト算出部が算出した送信ウエイトを用いて前記通信装置に送信するデータに重み付けして送信信号を生成する送信信号生成部と
を備えていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
前記通信装置の数をUとした場合、
前記送信ウエイト算出部は、
前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報としての行列Rの初期値Rを設定する初期値設定部と、
u(1≦u≦U)番目の前記通信装置に対する前記チャネル情報を取得すると、行列Ru−1と、前記取得したチャネル情報とから行列Rを逐次算出する逆行列算出部と、
前記逆行列算出部が算出した行列Rを用いて前記送信ウエイトを算出するチャネル行列乗算部と
を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記送信ウエイト算出部は、
前記通信装置それぞれにおける信号対雑音電力比を用いて前記送信ウエイトを算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
複数のアンテナ素子を備える第1の通信装置と、該第1の通信装置と通信する複数の第2の通信装置とにより構成される無線通信システムにおける無線通信方法であって、
自装置に備えられている前記複数のアンテナ素子と、前記第2の通信装置それぞれに備えられているアンテナ素子との間の伝搬チャネルの特性を示すチャネル情報を取得するチャネル情報取得ステップと、
前記チャネル情報取得ステップにおいて前記チャネル情報を取得する都度、前記取得したチャネル情報に基づいて前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報を更新し、すべての前記チャネル情報を用いて算出した前記伝搬チャネルの逆特性を示す情報に基づいて、前記第2の通信装置に送信するデータを空間多重する際の送信ウエイトを算出する送信ウエイト算出ステップと、
前記送信ウエイト算出ステップにおいて算出した送信ウエイトを用いて前記第2の通信装置に送信するデータに重み付けして送信信号を生成する送信信号生成ステップと
を有することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−98615(P2013−98615A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237056(P2011−237056)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】