説明

無線通信システム、監視装置及び障害検知方法

【課題】より正確に障害発生箇所を特定する。
【解決手段】複数の端末装置と、複数の端末装置のそれぞれの属性情報を保持する監視装置と、複数の端末装置および監視装置を接続するネットワークと、を備え、監視装置は、同一の属性情報を示す端末装置群に対して一斉にポーリングパケットを送出し、ポーリングパケットの応答に基づいてシステムの障害を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、監視装置及び障害検知方法に係り、特に、障害発生の箇所を特定する無線通信システム、監視装置及び障害検知方法に係る。
【背景技術】
【0002】
ネットワークシステムでは、信頼性を確保するために障害監視が重要とされる。この場合、障害発生時におけるサービス停止時間を最小にするために、正確かつ迅速に障害発生の箇所を特定することが求められる。
【0003】
このような要求に対し、特許文献1には、CATV伝送システムを例とし、ポーリングにより収集した測定値から障害情報を判定し、この障害情報から伝送路上の障害個所を解析して推定する際に、判定した障害情報の中から論理的に矛盾する障害情報を除去するスクリーニング処理を予め行うことで、その後に行う障害個所の推定処理の精度を大幅に向上することができるCATV伝送路監視装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、コンピュータネットワークを例とし、複数のサブネットワークが接続されている管理対象ネットワークに対してネットワーク内に存在する端末およびサブネットワークを接続するルータをポーリングにて監視するネットワーク管理装置が開示されている。このネットワーク管理装置は、端末のみにポーリングを行い、ポーリング結果が異常であった時にのみ、ネットワーク管理装置から端末に到達する経路の上位にあるルータに対してポーリングを行い、ポーリング結果が正常であった場合に、端末が障害であると判定し、異常であった場合にさらに経路の上位にあるルータに対してポーリングを行うことを繰り返し経路上のどのルータで異常が発生しているかを特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−165792号公報
【特許文献2】特開2008−299548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は本発明において与えられる。
【0007】
ところで特許文献1では、ポーリング無応答のみであれば監視装置の監視対象であるケーブルモデムそのものが機器障害であると判断している。しかしながら、この場合、監視装置とケーブルモデムとの間のネットワークの障害が原因となりポーリング無応答となっていたとしても、ケーブルモデムそのものの機器障害であると誤判断してしまう。
【0008】
また、特許文献2では、ポーリング結果が異常であり、階層構造の下位層から上位層に向けて順次ポーリングを実行する場合、監視対象端末が構成するネットワーク階層構造の深さに比例して、どの監視対象端末で機器障害が発生しているか特定するまでの時間が増大する傾向にある。時間が増大することで、下位層から順次ポーリングを実行している最中に、上位層でポーリング失敗の原因である監視対象端末の機器障害が復旧した場合、本来ならばその監視対象端末が失敗原因であるにも関わらず、ポーリング成功の最も直前に実行したポーリングの対象端末が機器障害の発生箇所であると誤判断してしまう。
【0009】
したがって、本発明の目的は、より正確に障害発生箇所を特定する無線通信システム、監視装置及び障害検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つのアスペクト(側面)に係る無線通信システムは、複数の端末装置と、複数の端末装置のそれぞれの属性情報を保持する監視装置と、複数の端末装置および監視装置を接続するネットワークと、を備え、監視装置は、同一の属性情報を示す端末装置群に対して一斉にポーリングパケットを送出し、ポーリングパケットの応答に基づいてシステムの障害を検知する。
【0011】
本発明の他のアスペクト(側面)に係る監視装置は、複数の端末装置とネットワークを介して接続され、複数の端末装置のそれぞれの属性情報を保持し、同一の属性情報を示す端末装置群に対して一斉にポーリングパケットを送出し、ポーリングパケットの応答に基づいてシステムの障害を検知する。
【0012】
本発明の別のアスペクト(側面)に係る障害検知方法は、複数の端末装置と、複数の端末装置のそれぞれの属性情報を保持する監視装置と、複数の端末装置および監視装置を接続するネットワークと、を備える無線通信システムにおける障害検知方法であって、監視装置が同一の属性情報を示す端末装置群に対して一斉にポーリングパケットを送出するステップと、監視装置がポーリングパケットの応答に基づいてシステムの障害を検知するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、障害が発生している箇所を従来の方法よりも正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係る監視装置が備える管理テーブルの例を示す図である。
【図3】本発明の一実施例に係る無線通信システムの動作例を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、概説する。なお、以下の概説に付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるための例示であり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0016】
本発明の一実施形態に係る無線通信システムは、複数の端末装置(図1の103、104、105)と、複数の端末装置のそれぞれの属性情報を保持する監視装置(図1の101)と、複数の端末装置および監視装置を接続するネットワーク(図1の102)と、を備え、監視装置は、同一の属性情報を示す端末装置群に対して一斉にポーリングパケットを送出し、ポーリングパケットの応答に基づいてシステムの障害を検知する。
【0017】
無線通信システムにおいて、監視装置は、複数の端末装置のそれぞれに対し、それぞれの属性情報の通知を要求し、それぞれの属性情報を収集する機能を有することが好ましい。
【0018】
無線通信システムにおいて、同一の属性情報を示す端末装置群中の一の端末装置(図1の103)は、同一の属性情報を示す端末装置群中の他の端末装置(図1の104、105)に対し同一の属性情報を付与する機能を有することが好ましい。
【0019】
無線通信システムにおいて、一の端末装置は、一の端末装置の位置を検知する機能を有し、他の端末装置に対し検知した位置情報を属性情報として付与することが好ましい。
【0020】
無線通信システムにおいて、一の端末装置は、一の端末装置の位置を検知するGPS(Global Positioning System)アンテナ(図1の310)を備えることが好ましい。
【0021】
無線通信システムにおいて、同一の属性情報を示す端末装置群は、一つの基地局装置(図1の300)としてセクタを構成することが好ましい。
【0022】
このような無線通信システムによれば、監視装置から無線装置への巡回式ポーリングにおいて、無線基地局のネットワークトポロジーを考慮することにより、障害が発生している箇所を従来よりも正確に検知することができる。すなわち、同一属性情報を持つ親装置および子装置に対して一斉にポーリングパケットを送信すること(図3)で、ポーリング失敗の原因が無線装置の機器障害によるのか、ネットワーク障害によるのかを、従来よりも正確かつ迅速に検知することが出来る。
【0023】
また、監視装置が、無線装置の属性情報を収集しポーリングの実行順序を自律的にスケジュールするため、無線装置の増設や移設、撤去に伴ったネットワークトポロジーの変化に対しても、正確かつ迅速にポーリングのスケジュールが可能である。
【0024】
具体的には、例えば各無線装置でGPSアンテナから取得している位置情報を監視装置が定期的に収集し、同一位置情報を持つ無線装置に対してポーリングパケットを一斉送信するよう監視装置が自律的にスケジューリングする。一斉送信されたポーリングの結果(成功または失敗)の組み合わせに応じて障害発生箇所を特定することができる。
【0025】
以下、実施例に即し、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の一実施例に係る無線通信システムの構成を示す図である。図1において、無線通信システムは、監視装置101と無線基地局300とを備え、監視装置101と無線基地局300とは、バックホールネットワーク102を介して接続される。無線基地局300は、親装置103、子装置104、105からなるセクタを構成する。
【0027】
親装置103は、バックホールネットワーク102と接続され、GPSアンテナ310を備え、自身の位置情報を取得する。子装置104、105は、親装置103とディジーチェーン接続され、親装置103の位置情報と同一の位置情報を自身の位置情報として取得する。すなわち、親装置103、子装置104、105は、GPSアンテナ310から取得した全て同じ位置情報を保持している。
【0028】
監視装置101は、監視対象である全ての無線装置の位置情報を図2に示すような管理テーブルとして保持している。図2の例では、親装置103、子装置104、105が同じ位置情報Aを、親装置198、子装置199、200が同じ位置情報Zを有している。また、監視装置101は、定期的に位置情報取得の要求メッセージを送信して各無線装置から位置情報を収集し、図2のテーブルの内容を更新する。その上で、監視装置101は、同一の位置情報を示す端末装置群に対して一斉にポーリングパケットを送出し、ポーリングパケットの応答に基づいてシステムの障害を検知する。このような処理は、監視装置101のアプリケーションレベルの処理として実行される。
【0029】
次に、無線通信システムの障害検知方法についてより具体的に説明する。
【0030】
監視装置101は、バックホールネットワーク102を経由してセクタを構成する無線基地局に障害検知のためのポーリングパケットを送信する。この場合、監視装置101は、図2のテーブルの内容を参照し、更新した最新の位置情報を基に同一の位置情報を有する無線装置(親装置と子装置)に対して一斉にポーリングパケットを送信するようスケジューリングする。すなわち、各無線装置でGPSアンテナから取得している位置情報を監視装置101が定期的に収集し、同一の位置情報を持つ無線装置に対してポーリングパケットを一斉送信するよう監視装置101が自律的にスケジューリングする。
【0031】
図2の例では、親装置103、子装置104、105が同じ位置情報Aを有し、親装置198、子装置199、200が同じ位置情報Zを有する。そこで監視装置101は、同じ位置情報である親装置と子装置をポーリングパケットの一斉送信対象としてスケジューリングする。図3に示すように、監視装置101は、無線基地局300aとしてセクタを構成する親装置103、子装置104、105に一斉にポーリングパケットを送信し、無線基地局300bとしてセクタを構成する親装置198、子装置199、200に一斉にポーリングパケットを送信する。
【0032】
以上のように監視装置101は、ポーリングパケットを一斉に送信し、応答を受信できたか否かの結果(成功または失敗)の組み合わせに応じて、以下の3通りに障害発生箇所を分類することができる。
【0033】
(1)該当装置への全ポーリングが失敗した場合
障害発生箇所:親装置又は親装置と監視装置の間のネットワーク
理由:該当装置へのポーリングパケットはいずれも監視装置と親装置間のネットワークを経由し親装置に送信される。子装置に対するポーリングの場合は更に親装置を経由し子装置へ転送される。つまり該当装置へのポーリングが全て失敗した場合は、図3に示すように、監視装置101と親装置103の間のネットワーク障害、もしくは親装置103の機器障害として検知することができる。
【0034】
(2)該当装置への全ポーリングが成功した場合
障害発生箇所:なし
理由:全ポーリングが成功しているため。
【0035】
(3)上記以外の場合
障害発生箇所:ポーリングが失敗した該当装置
理由:上記(1)、(2)のどちらでもない場合、ポーリングが失敗した該当装置で機器障害が発生している可能性が高い。
【0036】
監視装置101は、監視対象である全ての無線装置(親装置、子装置)に対して同様の方法により巡回式にポーリングを実行する。
【0037】
なお、上記では、ポーリングパケットを一斉送信するようスケジュールするために使用する情報が、GPSアンテナ310から得た位置情報である場合を例に説明した。しかし、これに限定されること無く、親装置103が同一セクタを構成する子装置104、105に対し、親装置103が有する何らかの属性情報と同一となる属性情報を与えられるように構成すればよい。すなわち、セクタを識別するための識別情報(例えば親装置の識別情報)を属性情報として与えられるように構成すればよい。このような場合にあっても本発明の適用が可能である。
【0038】
なお、前述の特許文献等の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
101 監視装置
102 バックホールネットワーク
103、198 親装置
104、105、199、200 子装置
300、300a、300b 無線基地局
310 GPSアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置と、
前記複数の端末装置のそれぞれの属性情報を保持する監視装置と、
前記複数の端末装置および前記監視装置を接続するネットワークと、
を備え、
前記監視装置は、同一の属性情報を示す端末装置群に対して一斉にポーリングパケットを送出し、前記ポーリングパケットの応答に基づいてシステムの障害を検知することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記監視装置は、前記複数の端末装置のそれぞれに対し、それぞれの前記属性情報の通知を要求し、それぞれの前記属性情報を収集する機能を有することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
同一の前記属性情報を示す端末装置群中の一の端末装置は、同一の前記属性情報を示す端末装置群中の他の端末装置に対し同一の前記属性情報を付与する機能を有することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記一の端末装置は、前記一の端末装置の位置を検知する機能を有し、前記他の端末装置に対し前記検知した位置情報を前記属性情報として付与することを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記一の端末装置は、前記一の端末装置の位置を検知するGPSアンテナを備えることを特徴とする請求項4記載の無線通信システム。
【請求項6】
同一の前記属性情報を示す端末装置群は、一つの基地局装置としてセクタを構成することを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
【請求項7】
複数の端末装置とネットワークを介して接続され、前記複数の端末装置のそれぞれの属性情報を保持し、同一の前記属性情報を示す端末装置群に対して一斉にポーリングパケットを送出し、前記ポーリングパケットの応答に基づいてシステムの障害を検知することを特徴とする監視装置。
【請求項8】
複数の端末装置と、前記複数の端末装置のそれぞれの属性情報を保持する監視装置と、前記複数の端末装置および前記監視装置を接続するネットワークと、を備える無線通信システムにおける障害検知方法であって、
前記監視装置が同一の属性情報を示す端末装置群に対して一斉にポーリングパケットを送出するステップと、
前記監視装置が前記ポーリングパケットの応答に基づいてシステムの障害を検知するステップと、
を含むことを特徴とする障害検知方法。
【請求項9】
前記送出するステップと前記検知するステップとを前記複数の端末装置の全てに対して行うことを特徴とする請求項8記載の障害検知方法。
【請求項10】
前記複数の端末装置の全てに対して行う前または後に、前記複数の端末装置のそれぞれに対し、それぞれの前記属性情報の通知を要求し、それぞれの前記属性情報を収集するステップを含むことを特徴とする請求項9記載の障害検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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