説明

無線通信システム、移動局、基地局、および通信制御方法

【課題】消費電力の増大を抑制しつつ、移動局の無線通信先をより適切に選択(決定)する。
【解決手段】無線通信システム1が、第1基地局100と第2基地局200とを含む複数の基地局と、移動局300とを備える。候補基地局選択部136が、移動局300から報告された複数の受信電力P1,P2に基づいて、移動局300の無線通信先の候補である複数の候補基地局を選択する。移動局300が基地局100,200と実際に無線通信を実行する際に、通信先基地局決定部140が、プロテクテッドリソースPSFにおいて測定された受信品質Q2と、非プロテクテッドリソースNSFにおいて測定された無線信号の受信品質Q1とのうち、最も良好な受信品質Qに対応する基地局100,200を、移動局300の実際の無線通信先である通信先基地局として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、移動局、基地局、および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線能力が相異なる複数種の無線基地局(マクロ基地局、ピコ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド(Remote Radio Head)等)を重層的に設置したヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)が提案されている。ヘテロジーニアスネットワークにおいて、セルサーチまたはハンドオーバの際に受信電力に応じて無線通信先を選択する場合、無線能力(最大送信電力、平均送信電力等)の高い基地局(例えばマクロ基地局)の方が、無線能力の低い基地局(例えばピコ基地局)と比較して、無線通信先として選択されやすい。したがって、無線能力の高い基地局に移動局からの無線接続が集中し、ひいては無線能力の高い基地局の通信負荷が過大となる傾向がある。
【0003】
以上の問題を解消するために、例えば特許文献1には、無線通信システムの負荷、トラヒック量等のパラメータに応じて、移動局が受信する電力レベルを数値的に低減させるオフセット値(バイアス値)を変更することにより、通信セル境界を可変に制御する技術が開示されている。特許文献1の移動局は、オフセットされた後の電力レベル(受信電力)に基づいて通信先の基地局(マクロセル基地局,マイクロセル基地局)を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−514367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信システムの負荷、トラヒック量等のパラメータに応じて、移動局が受信する電力レベルを数値的に低減させるように補正する特許文献1の構成では、雑音電力および他の無線基地局からの干渉等(すなわち、希望波以外の成分)が希望波に与える影響(移動局における電波の受信品質)が無線通信先の選択に適切に反映されないので、移動局の無線通信先が適切に選択されない可能性がある。他方、移動局における電波の受信品質の測定は処理負荷が大きいので、無線通信先の選択のために受信品質測定の頻度を増加させることは、移動局の消費電力を低減する観点から問題がある。
【0006】
以上の事情を考慮して、本発明は、相異なる無線能力を有する複数種の基地局を含む無線通信システムにおいて、消費電力の増大を抑制しつつ、移動局の無線通信先を受信品質に基づいてより適切に選択(決定)することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線通信システムは、第1基地局と、前記第1基地局よりも無線能力が低い第2基地局とを含む複数の基地局と、前記第2基地局のみが無線信号を送信するプロテクテッドリソースと前記第1基地局および前記第2基地局の双方が無線信号を送信する非プロテクテッドリソースとの少なくともいずれかを使用して無線通信を実行可能な移動局と、前記移動局の無線通信先の候補である候補基地局を選択する候補基地局選択部と、前記移動局の実際の無線通信先である通信先基地局を決定する通信先基地局決定部とを備える無線通信システムであって、前記移動局は、複数の前記基地局から受信した無線信号の各々について受信電力を測定する受信電力測定部と、前記受信電力測定部が測定した前記受信電力の各々を前記候補基地局選択部に報告する受信電力報告部とを備え、前記候補基地局選択部は、前記移動局の前記受信電力報告部から報告された複数の前記受信電力に基づいて、前記移動局の無線通信先の候補である複数の前記候補基地局を選択可能であり、前記移動局は、さらに前記基地局と実際に無線通信を実行する際に、前記候補基地局選択部が選択した複数の前記候補基地局との通信に用いられる無線信号の各々について受信品質を測定する受信品質測定部と、前記受信品質測定部が測定した前記受信品質の各々を前記通信先基地局決定部に報告する受信品質報告部とを備え、前記通信先基地局決定部は、前記プロテクテッドリソースにおいて前記移動局の前記受信品質測定部が測定した、前記第2基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質と、前記非プロテクテッドリソースにおいて前記移動局の前記受信品質測定部が測定した、前記第1基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質とのうち、最も良好な受信品質に対応する基地局を、前記移動局の無線通信先である前記通信先基地局として決定する。
【0008】
以上の構成によれば、移動局が測定した受信電力を基準として複数の候補基地局が選択された上で、実際の無線通信を実行する際にそれらの候補基地局の中から移動局における受信品質のよりよい基地局が通信先基地局として決定され無線通信が実行され得るので、単に受信電力のみを基準として通信先基地局を決定する構成と比較して、より適切な(すなわち、より受信品質の良い)基地局を無線通信先として決定することが可能である。また、受信品質に基づく通信先基地局の決定が実際の無線通信を実行する際に行われるので、常に受信品質の測定および報告が行われる構成と比較して、移動局における受信品質の測定および報告の頻度が低減され得る。したがって、移動局の電力消費が抑制され得る。
【0009】
本発明の好適な態様において、前記第1基地局は、さらに、前記移動局に対するバイアス値を設定するバイアス値設定部と、前記移動局へ前記バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備え、前記移動局は、さらに、前記第1基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記バイアス値を用いて、前記第2基地局から受信した無線信号について前記受信電力測定部が測定した前記受信電力を増加させるように補正する受信電力補正部を備え、前記受信電力報告部は、前記第2基地局の受信電力として、前記受信電力補正部による補正後の受信電力を前記候補基地局選択部に報告する。
以上の構成によれば、第2基地局から受信した無線信号の受信電力が、バイアス値によって増加するように補正されるので、より多くの移動局が第2基地局と無線通信するようになり得る。他方、バイアス値による補正によっても無線信号の実際の強さは変化しないから、バイアス値による補正で第2基地局と無線通信するようになった移動局においては、受信電力と受信品質とが相関しない場合が生じ得る。以上の構成によれば、受信品質に基づいて実際の無線通信先が決定されるので、バイアス値による補正がされても、各移動局についてより適切な(すなわち、より受信品質の良い)基地局が選択(決定)され得る。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記第1基地局は、前記候補基地局選択部と、前記候補基地局選択部が選択した複数の前記候補基地局を示す情報を前記移動局へ通知する候補基地局通知部と、前記通信先基地局決定部と、前記通信先基地局決定部が決定した前記通信先基地局を示す情報を前記移動局へ通知する通信先基地局通知部とを備え、前記移動局の前記受信品質報告部は、前記受信品質測定部が測定した前記受信品質の各々を所定の期間にわたり平均化して、前記第1基地局の前記通信先基地局決定部に所定の頻度で報告する。
以上の構成によれば、第1基地局が候補基地局の選択および通信先基地局の決定を実行するので、移動局がそのような動作を実行する構成と比較して、移動局の消費電力がより低減され得る。また、所定の期間にわたって平均化された受信品質が報告されるので、受信品質が測定されるごとに報告される構成と比較して、報告のためのオーバヘッドが低減され得る。
【0011】
本発明の移動局は、第1基地局と、前記第1基地局よりも無線能力が低い第2基地局とを含む複数の基地局と、前記第2基地局のみが無線信号を送信するプロテクテッドリソースと前記第1基地局および前記第2基地局の双方が無線信号を送信する非プロテクテッドリソースとの少なくともいずれかを使用して無線通信を実行可能な移動局と、前記移動局の無線通信先の候補である候補基地局を選択する候補基地局選択部と、前記移動局の実際の無線通信先である通信先基地局を決定する通信先基地局決定部とを備える無線通信システムにおける移動局であって、複数の前記基地局から受信した無線信号の各々について受信電力を測定する受信電力測定部と、前記受信電力測定部が測定した前記受信電力の各々を前記候補基地局選択部に報告する受信電力報告部と、前記基地局と実際に無線通信を実行する際に、前記受信電力報告部から報告された複数の前記受信電力に基づいて前記候補基地局選択部が選択した複数の前記候補基地局との通信に用いられる無線信号の各々について受信品質を測定する受信品質測定部と、前記受信品質測定部が測定した前記受信品質の各々を前記通信先基地局決定部に報告する受信品質報告部と、前記プロテクテッドリソースにおいて前記移動局の前記受信品質測定部が測定した、前記第2基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質と、前記非プロテクテッドリソースにおいて前記移動局の前記受信品質測定部が測定した、前記第1基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質とのうち、最も良好な受信品質に対応する基地局を、前記移動局の無線通信先である前記通信先基地局として決定する前記通信先基地局決定部とを備える。
【0012】
本発明の好適な態様において、移動局は、前記基地局から通知されたバイアス値を用いて、前記第2基地局から受信した無線信号について前記受信電力測定部が測定した前記受信電力を増加させるように補正する受信電力補正部を備え、前記受信電力報告部は、前記第2基地局の受信電力として、前記受信電力補正部による補正後の受信電力を前記候補基地局選択部に報告する。
【0013】
本発明の基地局は、第1基地局と、前記第1基地局よりも無線能力が低い第2基地局とを含む複数の基地局と、前記第2基地局のみが無線信号を送信するプロテクテッドリソースと前記第1基地局および前記第2基地局の双方が無線信号を送信する非プロテクテッドリソースとの少なくともいずれかを使用して無線通信を実行可能な移動局とを備える無線通信システムにおける基地局であって、複数の前記基地局から受信した無線信号の各々について前記移動局が測定し報告した複数の受信電力に基づいて、前記移動局の無線通信先の候補である複数の候補基地局を選択する候補基地局選択部と、前記移動局と実際に無線通信を実行する際に、前記プロテクテッドリソースにおいて前記移動局が測定した、前記第2基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質と、前記非プロテクテッドリソースにおいて前記移動局が測定した、前記第1基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質とのうち、最も良好な受信品質に対応する基地局を、前記移動局の実際の無線通信先である前記通信先基地局として決定する通信先基地局決定部とを備える。
【0014】
本発明の好適な態様において、基地局は、前記移動局において、前記第2基地局から受信した無線信号について前記移動局が測定した前記受信電力を増加させるように補正するのに使用されるバイアス値を設定するバイアス値設定部と、前記移動局へ前記バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備える。
【0015】
本発明の通信制御方法は、第1基地局と、前記第1基地局よりも無線能力が低い第2基地局とを含む複数の基地局と、前記第2基地局のみが無線信号を送信するプロテクテッドリソースと前記第1基地局および前記第2基地局の双方が無線信号を送信する非プロテクテッドリソースとの少なくともいずれかを使用して無線通信を実行可能な移動局とを備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、前記移動局が、複数の前記基地局から受信した無線信号の各々について受信電力を測定することと、測定された前記受信電力の各々を候補基地局選択部に報告することと、前記候補基地局選択部が、前記移動局から報告された複数の前記受信電力に基づいて、前記移動局の無線通信先の候補である複数の候補基地局を選択することと、前記移動局が、前記基地局と実際に無線通信を実行する際に、前記候補基地局選択部が選択した複数の前記候補基地局との通信に用いられる無線信号の各々について受信品質を測定することと、測定された前記受信品質の各々を通信先基地局決定部に報告することと、前記通信先基地局決定部が、前記プロテクテッドリソースにおいて前記移動局が測定した、前記第2基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質と、前記非プロテクテッドリソースにおいて前記移動局が測定した、前記第1基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質とのうち、最も良好な受信品質に対応する基地局を、前記移動局の実際の無線通信先である前記通信先基地局として決定することとを備える。
【0016】
本発明の好適な態様において、通信制御方法は、前記基地局が、前記移動局に対するバイアス値を設定することと、前記移動局へ前記バイアス値を通知することと、前記移動局が、前記基地局から通知された前記バイアス値を用いて、前記第2基地局から受信した無線信号について前記受信電力測定部が測定した前記受信電力を増加させるように補正することと、前記受信電力補正部による補正後の受信電力を前記第2基地局の受信電力として前記候補基地局選択部に報告することとを更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る移動局の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るマクロ基地局の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るピコ基地局の構成を示すブロック図である。
【図5】前記無線通信システムにおける受信電力値の補正動作を示す図である。
【図6】前記補正動作によるセル範囲拡張前の様子を示す図である。
【図7】前記補正動作によるセル範囲拡張後の様子を示す図である。
【図8】前記無線通信システムにおいて送受信される無線フレームのフォーマットを示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る時間領域におけるセル間干渉コーディネーションの説明図である。
【図10】セル間干渉コーディネーションを適用した場合の無線信号の受信電力および受信品質の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
【図12】本発明の実施形態に係る段階的な基地局選択の動作フロー図である。
【図13】前記段階的な基地局選択の様子を説明する図である。
【図14】本発明の変形例に係る周波数領域におけるセル間干渉コーディネーションの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)無線通信システムの概略
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム1のブロック図である。無線通信システム1は、マクロ基地局(マクロeNodeB(evolved Node B))100と、ピコ基地局(ピコeNodeB)200と、移動局(ユーザ端末(User Equipment))300とを備える。なお、説明の簡単のため、1つのマクロ基地局100のみが図示されているが、無線通信システム1が複数のマクロ基地局100を含み得ることは当然に理解される。
【0019】
無線通信システム1内の各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、移動局300等)は所定の無線アクセス技術(Radio Access Technology)、例えばLTE(Long Term Evolution)に従って無線通信を行う。本実施形態では、無線通信システム1がLTEに従って動作する形態を例示して説明するが、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、必要な設計上の変更を施した上で、他の無線アクセス技術(例えば、IEEE 802.16-2004およびIEEE 802.16eに規定されるWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access))にも適用可能であることが当然に理解される。
【0020】
マクロ基地局100とピコ基地局200とは無線または有線にて(例えば、X2インタフェースまたは光ファイバにて)相互に接続される。マクロ基地局100はその周囲にマクロセルCmを形成し、ピコ基地局200はその周囲にピコセルCpを形成する。ピコセルCpは、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200に接続されたマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内に形成され得る。1つのマクロセルCm内には、複数のピコセルCpが形成され得る。
【0021】
各基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)は、その基地局自身が形成するセルC(Cm,Cp)に在圏する移動局300と無線通信が可能である。逆に言うと、移動局300は、移動局300自身が在圏するセル(マクロセルCm,ピコセルCp)に対応する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能である。
【0022】
ピコセルCpがマクロセルCmの内部に重層的に形成される(オーバレイされる)ことを考慮すると、移動局300がピコセルCp内に在圏する場合、その移動局300は、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200と、そのピコセルCpを包含するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100との少なくともいずれか一方と無線通信が可能であると理解できる。
【0023】
なお、各基地局と移動局300との間の無線通信の方式は任意である。例えば、下りリンクではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され得、上りリンクではSC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用され得る。
【0024】
(2)移動局の構成
図2は、本発明の実施形態に係る移動局300の構成を示すブロック図である。移動局300は無線通信部310と制御部330とを備える。なお、音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は、便宜的に省略されている。
【0025】
無線通信部310は、基地局(マクロ基地局100、ピコ基地局200)と無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ312と、基地局から無線信号(電波)を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を無線信号に変換して送信する送信回路とを含む。
【0026】
制御部330は、受信電力測定部332、受信電力補正部334、受信電力報告部336、受信品質測定部338、受信品質報告部340、および接続部342を要素として内包する。制御部330の動作の詳細は後述される。制御部330および制御部330が内包する受信電力測定部332、受信電力補正部334、受信電力報告部336、受信品質測定部338、受信品質報告部340、および接続部342は、移動局300内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0027】
(3)マクロ基地局の構成
図3は、本発明の実施形態に係るマクロ基地局100の構成を示すブロック図である。マクロ基地局100は、無線通信部110と基地局通信部120と制御部130とを備える。
【0028】
無線通信部110は、移動局300と無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ112と、移動局300から無線信号(電波)を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を無線信号に変換して送信する送信回路とを含む。
基地局通信部120は、他の基地局(他のマクロ基地局100,ピコ基地局200)と通信を実行するための要素であり、他の基地局との間で有線または無線で電気信号を送受信する。
【0029】
制御部130は、バイアス値設定部132、バイアス値通知部134、候補基地局選択部136、候補基地局通知部138、通信先基地局決定部140、および通信先基地局通知部142を要素として内包する。制御部130の動作の詳細は後述される。
制御部130ならびに制御部130が内包するバイアス値設定部132、バイアス値通知部134、候補基地局選択部136、候補基地局通知部138、通信先基地局決定部140、および通信先基地局通知部142は、マクロ基地局100内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0030】
(4)ピコ基地局の構成
図4は、本発明の実施形態に係るピコ基地局200の構成を示すブロック図である。ピコ基地局200は、無線通信部210と基地局通信部220と制御部230とを備える。ピコ基地局200は、任意の移動局300からの無線接続を許容するオープン型の基地局である。
【0031】
無線通信部210は、移動局300と無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナ212と、移動局300から無線信号を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声等の電気信号を無線信号に変換して送信する送信回路とを含む。
基地局通信部220は、ピコ基地局200自身が接続されるマクロ基地局100と通信を実行するための要素であり、マクロ基地局100との間で有線または無線で電気信号を送受信する。
制御部230は、ピコ基地局200内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。制御部230の動作の詳細は後述される。
【0032】
ピコ基地局200は、マクロ基地局100が送信した情報を受信して移動局300に転送でき、移動局300が送信した情報を受信してマクロ基地局100に転送できる。具体的には、ピコ基地局200の基地局通信部220がマクロ基地局100から受信した情報を示す電気信号を、制御部230が無線通信部210に供給する。無線通信部210は、供給された電気信号を無線信号に変換して移動局300に対して送信する。また、ピコ基地局200の無線通信部210が受信・変換して得た、移動局300から送信された情報を示す電気信号を、制御部230が基地局通信部220に供給する。基地局通信部220は、供給された電気信号をマクロ基地局100に対して送信する。以上の構成により、移動局300がピコ基地局200に近接しているため(すなわち、ピコ基地局200からの干渉電力が大きいため)マクロ基地局100との無線通信が困難である場合でも、移動局300とマクロ基地局100との間で必要な情報を送受信することが可能となる。
【0033】
(5)ヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)
マクロ基地局100はピコ基地局200と比較して無線送信能力(アンテナゲイン,最大送信電力,平均送信電力等)が高い。また、マクロ基地局100はピコ基地局200と比較してサイズ(幅、奥行き、および高さ)が大きく、送受信アンテナが設置される高さもピコ基地局200と比較して高い。したがって、より遠くに位置する移動局300と無線通信可能である。つまり、マクロセルCmはピコセルCpよりも面積が大きい(例えば、マクロセルCmは半径数百メートルから数十キロメートル程度の大きさであり、ピコセルCpは半径数メートルから数十メートル程度の大きさである)。
【0034】
以上の説明から理解されるように、無線通信システム1内のマクロ基地局100およびピコ基地局200は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の基地局が重層的に設置されたヘテロジーニアスネットワークを構成する(例えば、3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Further advancements for E-UTRA physical layer aspects (Release 9); 3GPP TR 36.814 V9.0.0 (2010-03); Section 9A, Heterogeneous Deploymentsを参照のこと)。
【0035】
ヘテロジーニアスネットワークにおいては、マクロセルCm内に配置されたピコ基地局200に移動局300が接続(オフロード)されることによって、マクロ基地局100への無線接続およびトラヒックの集中が抑制される。したがって、単位面積当たりの周波数利用効率が改善され得る。ピコ基地局200は、トラヒックの集中するホットスポット(例えば、鉄道の駅等)に配置されるとより好適である。
【0036】
しかしながら、前述したように、ピコ基地局200が形成するピコセルCpのサイズは小さい(すなわち、ピコ基地局200の無線能力は低い)から、移動局300における受信電力(Reference Signal Received Power,RSRP)の大きさに基づいて無線通信先の基地局を選択する構成においては、多くの移動局300が無線能力の高いマクロ基地局100に接続される。したがって、オフロードによる無線接続およびトラヒックの集中を抑制する効果が限定的となる場合がある。
【0037】
(6)セル範囲拡張(Cell Range Expansion,CRE)
そこで、ヘテロジーニアスネットワークにおいて、セル範囲拡張の技術が提案されている。以下、図5ないし図7を参照してセル範囲拡張について説明する。図5は、バイアス値αを用いた受信電力値の補正の様子を示す図である。以下、マクロ基地局100からの無線信号の受信電力を移動局300(受信電力測定部332)が測定して得た値を受信電力値P1とし、ピコ基地局200からの無線信号の受信電力を移動局300(受信電力測定部332)が測定して得た値を受信電力値P2とする。バイアス値αは、バイアス値設定部132にて設定されバイアス値通知部134から移動局300に通知される。バイアス値αの設定方法は任意であるが、例えば、マクロ基地局100におけるトラヒック量またはマクロ基地局100に接続する移動局300の数等に応じて設定され得る。
【0038】
各基地局(マクロ基地局100、ピコ基地局200)から送信される無線信号(電波)はその基地局から遠ざかるほど減衰する。そのため、各受信電力値(P1、P2)も各基地局から遠ざかるほど減少する。マクロ基地局100からの無線信号の受信電力値P1がピコ基地局200からの無線信号の受信電力値P2を上回る範囲では、移動局300はマクロ基地局100に接続するように判定される。他方、受信電力値P2が受信電力値P1を上回る範囲(ピコ基地局200の中心Oから距離d0以内の範囲)では、移動局300はピコ基地局200に接続するように判定される。
【0039】
前述の通り、ピコ基地局200の無線能力はマクロ基地局100の無線能力よりも相対的に低いから、図5に例示されるように、受信電力値P2が受信電力値P1を上回る範囲も相対的に小さい。そのため、ピコ基地局200に接続すべきと判定される移動局300の数も相対的に少ない。そこで、移動局300が接続すべき基地局の判定に先立ち、無線能力が低いピコ基地局200からの無線信号の受信電力値P2に、移動局300の受信電力補正部334がバイアス値αを加算する。その結果として、受信電力値P2が受信電力値P1を上回る範囲(すなわち、ピコセルCpの範囲)が、ピコ基地局200の中心Oから距離d0以内の範囲から、中心Oから距離d1以内の範囲にまで拡大する。
【0040】
図6は、図5を参照して説明したセル範囲拡張が実行される前の様子を示す図であり、図7は、セル範囲拡張が実行された後の様子を示す図である。説明の簡単のため、図6および図7においてマクロ基地局100およびピコ基地局200の図示は省略されるが、各セル(マクロセルCm、ピコセルCp)の中央に各基地局(マクロ基地局100、ピコ基地局200)が配置されることは当然に理解される。図6および図7に示されるように、バイアス値αを用いたセル範囲拡張により、各ピコセル(Cp1,Cp2)の半径がd0からd1に拡大した結果(d1>d0)、より多くの移動局300がピコセル(Cp1,Cp2)内に位置するようになっている。すなわち、セル範囲拡張により、より多くの移動局300がピコ基地局200に無線接続されるようになる。
【0041】
以上のようにして本実施形態のセル範囲拡張が実行される。しかしながら、バイアス値αは取得された受信電力値P2を数値的に増加させるのに用いられる値であり、移動局300におけるピコ基地局200からの無線信号の強さは変化しない。したがって、セル範囲拡張によりピコ基地局200に接続された移動局300(バイアス値αによる補正がなければマクロ基地局100に接続されていた移動局300)については、依然としてマクロ基地局100からの干渉が大きいという問題がある。
【0042】
(7)セル間干渉コーディネーション(Inter-Cell Interference Coordination,ICIC)
そこで、ヘテロジーニアスネットワークにおいて、セル間干渉コーディネーション技術が提案される。セル間干渉コーディネーションにおいては、部分的な無線リソース(例えば、時間領域または周波数領域)においてマクロ基地局100の無線送信が停止されることにより、ピコ基地局200と無線接続する移動局300への干渉が抑制され得る。
【0043】
図8は、無線通信システム1の各通信要素間で送受信される無線フレームFのフォーマットを示す図である。無線フレームFは、各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、移動局300等)が送受信する無線信号の通信単位であり、所定の時間長(例えば、10ミリ秒)および所定の周波数帯域幅(例えば、15MHz幅)を占める。無線フレームFが連続的に送信されることにより一連の無線信号が構成される。
また、無線フレームFは複数のサブフレームSFを含む。サブフレームSFは、無線フレームFよりも短い時間長(例えば、1ミリ秒)を占める送信単位である。各サブフレームSFには複数のリソースブロックRB(不図示)が含まれる。リソースブロックRBは、サブフレームSFよりも短い時間長(例えば、0.5ミリ秒)およびサブフレームSFよりも狭い所定の周波数帯域幅(例えば、180kHz)を占める送信単位である。
【0044】
図9は、時間領域におけるセル間干渉コーディネーションの一例の説明図である。斜線で塗りつぶされた部分がマクロ基地局からの無線信号を示し、点で塗りつぶされた部分がピコ基地局からの無線信号を示す。マクロ基地局100およびピコ基地局200は共通の送信周波数および共通の無線フレームタイミングで無線信号を送信する。マクロ基地局100の無線通信部110は、1サブフレームSFごとに無線信号の送信実行と送信停止とを切り替え可能である。他方、ピコ基地局200の無線通信部210は、無線信号を継続的に無線信号を移動局300へ送信する。
マクロ基地局100が送信する無線信号による干渉からピコ基地局200の無線信号が守られる(プロテクトされる)ことから、マクロ基地局100が無線信号の送信を停止するサブフレームSFを「プロテクテッドサブフレーム(Protected Subframe)PSF」と称し、逆に、マクロ基地局100が無線信号の送信を実行するサブフレームSFを「非プロテクテッドサブフレーム(Non-Protected Subframe)NSF」と称する。
図9では、例示的に、1サブフレームSFおきにプロテクテッドサブフレームPSFと非プロテクテッドサブフレームNSFとが繰り返されるが、プロテクテッドサブフレームPSFおよび非プロテクテッドサブフレームNSFが時間軸方向に任意に配置されることは当然に理解される。
【0045】
図10は、図9に例示したセル間干渉コーディネーションを適用した場合の、移動局300における無線信号の受信電力および受信品質の一例を示す図である。図10では、図5にて例示したように、移動局300が存在する位置においてマクロ基地局100からの受信電力がピコ基地局200からの受信電力を上回ることを想定する。
受信品質を示す値は、SINR(Signal-to-Interference and Noise Ratio)等の受信品質を直接的に示す値でもよく、受信品質に基づいて算出される基地局への要求を示す制御パラメータ(例えば、ユーザ端末UEが基地局に要求するデータレート)でもよい。基地局間協調送受信(Coordinated Multi-Point transmission and reception,CoMP)におけるストリーム数に対応するランク番号、またはプリコーディングマトリクスインジケータ(Precoding Matrix Indicator,PMI)等が受信品質を示す値として採用され得る。本実施形態では、SINRが例示的に採用される。
【0046】
図10(a)は、1サブフレームSFおきにマクロ基地局100からの無線信号の送信と停止とが繰り返される(すなわち、プロテクテッドサブフレームPSFと非プロテクテッドサブフレームNSFとが交互に到来する)ことを示す。
【0047】
図10(b)は、移動局300におけるマクロ基地局100からの無線信号の受信電力(斜線部分)およびピコ基地局200からの無線信号の受信電力(点部分)を示す。電波の伝搬環境は時間に応じて変化するから、各無線信号の移動局300における受信電力も時間に応じて変化する。また、前述のように、プロテクテッドサブフレームPSFにおいてはマクロ基地局100が無線信号の送信を停止するので、マクロ受信電力が0となる。
【0048】
図10(c)は、移動局300におけるマクロ基地局100からの無線信号の受信品質(斜線部分)およびピコ基地局200からの無線信号の受信品質(点部分)を示す。プロテクテッドサブフレームPSFにおいては、ピコ基地局200のみが無線信号を送信するためマクロ基地局100が送信する無線信号からの干渉がない。したがって、ピコ基地局200からの無線信号の受信品質が高い。他方、非プロテクテッドサブフレームNSFにおいては、マクロ基地局100からの無線信号とピコ基地局200からの無線信号とが相互に干渉する。したがって、非プロテクテッドサブフレームNSFにおける各無線信号(マクロ基地局100からの無線信号およびピコ基地局200からの無線信号)の受信品質は、プロテクテッドサブフレームPSFにおけるピコ基地局からの無線信号の受信品質を下回る。また、非プロテクテッドサブフレームNSFにおいては、マクロ基地局100からの受信電力がピコ基地局200からの受信電力を上回ることから、マクロ基地局100からの無線信号の受信品質がピコ基地局200からの無線信号の受信品質を上回る。
【0049】
以上から理解されるように、セル間干渉コーディネーションを適用した場合には、無線信号の受信電力を基準に無線通信先の基地局を選択しても(すなわち、より高い受信電力値を示す無線信号に対応する基地局を無線通信先として選択しても)、必ずしも高い受信品質が実現されない場合がある。例えば、図10の例では、より高い受信電力を示す無線信号を送信するマクロ基地局100を無線通信先として選択すると(図10(b))、却って、より低い受信品質が実現されてしまう(図10(c))。
【0050】
(8)段階的な基地局選択
そこで、本実施形態では、受信電力に基づいて無線通信先の候補となる基地局を複数選択した上で、実際に無線通信を実行する際に、受信品質に基づいて複数の候補基地局から無線通信先を決定する。
【0051】
図11ないし図13を参照して、本実施形態の段階的な基地局選択を説明する。図11に示すように、マクロ基地局100には2つのピコ基地局(200a、200b)が接続されている。2つのピコ基地局(200a、200b)はそれぞれピコセル(Cpa、Cpb)を形成する。移動局300は各ピコセル(Cpa、Cpb)の範囲内に位置する。
【0052】
図12は、本実施形態の段階的な基地局選択の動作フローである。まず、移動局300の受信電力測定部332が、各基地局(マクロ基地局100、ピコ基地局(200a、200b))から送信され無線通信部310に受信された複数の無線信号の受信電力を測定して、それぞれの受信電力値(P1、P2a、P2b)を得る(ステップS100)。
【0053】
移動局300の受信電力補正部334が、各ピコ基地局(200a、200b)からの無線信号の受信電力値(P2a、P2b)を、マクロ基地局100のバイアス値通知部134から予め通知されたバイアス値αを用いて補正する。具体的には、受信電力補正部334は、ピコ基地局(200a、200b)から受信した無線信号の受信電力を測定して得られた受信電力値(P2a、P2b)にバイアス値αを加算して、補正後の受信電力値(P2a+α、P2b+α)を得る(ステップS110)。
【0054】
受信電力測定部332からマクロ基地局100の受信電力値P1が、受信電力補正部334からピコ基地局(200a、200b)の補正後の受信電力値(P2a+α、P2b+α)が、受信電力報告部336に供給される。受信電力報告部336は、各受信電力値(P1、P2a+α、P2b+α)をマクロ基地局100に報告(送信)する(ステップS120)。
【0055】
マクロ基地局100の候補基地局選択部136が、移動局300の受信電力報告部336から報告された複数の受信電力値(P1、P2a+α、P2b+α)に基づいて、その移動局300の無線通信先の候補である候補基地局を選択する(ステップS130)。候補基地局の選択の方法は任意であるが、例えば、所定の閾値を超える受信電力値Pに対応する1以上の基地局が候補基地局として選択されてもよいし、基地局の種別(マクロ基地局100、ピコ基地局200)ごとに最も受信電力値の高い基地局が1つずつ選択されてもよい。図12および図13の例では、閾値Thに基づいて、候補基地局選択部136がマクロ基地局100およびピコ基地局200aを候補基地局として選択する。
【0056】
候補基地局(マクロ基地局100、ピコ基地局200a)を示す候補基地局情報CBが候補基地局選択部136から候補基地局通知部138に供給され、無線通信部110を介して移動局300に通知される(ステップS140)。移動局300の受信品質測定部338は、無線通信部310を介して候補基地局情報CBを受信し、不図示の記憶部に記憶する。
【0057】
移動局300に対するデータ送信(下りリンク通信)を実行する際に、移動局300の受信品質測定部338は、候補基地局情報CBが示す候補基地局(マクロ基地局100、ピコ基地局200a)との無線通信に用いられる無線信号の各々について受信品質を測定する(ステップS200)。具体的には、受信品質測定部338は、非プロテクテッドサブフレームNSFにおいてマクロ基地局100から受信した無線信号の受信品質を測定して受信品質値Q1を得るとともに、プロテクテッドサブフレームPSFにおいてピコ基地局200aから受信した無線信号の受信品質を測定して受信品質値Q2を得る。図13に示すように、受信品質値Q2は受信品質値Q1を上回る(Q2>Q1)。
【0058】
受信品質値(Q1、Q2)は、受信品質測定部338から受信品質報告部340に供給され、無線通信部310を介してマクロ基地局100に報告(送信)される(ステップS210)。なお、受信品質値Qの報告方法は任意であるが、例えば、受信品質報告部340が、受信品質測定部338が測定した受信品質値Qの各々を所定の期間にわたり平均化して、マクロ基地局100に所定の頻度で報告してもよい。また、受信品質測定部338が受信品質値Qを測定する度に、測定された受信品質値Qを受信品質報告部340がマクロ基地局100に報告してもよい。
【0059】
マクロ基地局100の通信先基地局決定部140が、移動局300の受信品質報告部340から報告された複数の受信品質値(Q1、Q2)に基づいて、その移動局300が実際に下りリンク通信を実行する(すなわち、その移動局300へ無線信号を送信する送信元となる)基地局を決定する(ステップS220)。具体的には、通信先基地局決定部140は、プロテクテッドサブフレームPSFにおいて受信品質測定部338が測定した受信品質値Q2と、非プロテクテッドサブフレームNSFにおいて受信品質測定部338が測定した受信品質値Q1とのうち、値がより大きい(すなわち、受信品質がより良好な)受信品質値Qに対応する基地局を、移動局300の無線通信先である通信先基地局として決定する。前述の通り、受信品質値Q2が受信品質値Q1を上回るから、通信先基地局決定部140は受信品質値Q2に対応するピコ基地局200aを移動局300の通信先基地局として決定する。
【0060】
通信先基地局(ピコ基地局200a)を示す通信先基地局情報TBが通信先基地局決定部140から通信先基地局通知部142に供給され、無線通信部110を介してピコ基地局200aおよび移動局300に通知される(ステップS230)。結果として、通信先基地局として決定されたピコ基地局200aと移動局300とが無線通信を実行する(ステップS240)。
【0061】
以上に説明したステップS100〜S140により、移動局300の無線通信先の候補である候補基地局が選択され、以上に説明したステップS200〜S240により、移動局300の実際の無線通信先である通信先基地局が決定される。
説明の簡単のため、全ての動作(ステップS100〜S240)を一連に説明したが、ステップS100〜S140の動作およびステップS200〜S240の動作は、それぞれ任意の時点にて実行され得る。特に、ステップS100〜S140の動作は、移動局300のセルサーチ時またはハンドオーバ時に実行されると好適である。また、ステップS200〜S240の動作は、移動局300に対する無線送信(下り無線通信)が発生した際に実行されると好適である。
【0062】
(9)本実施形態の効果
以上に説明した実施形態によれば、移動局300における受信電力(受信電力値P)を基準として複数の候補基地局が選択された上で、実際の無線通信を実行する際に、それらの候補基地局の中から移動局300における受信品質(受信品質値Q)のよりよい基地局が通信先基地局として決定され無線通信が実行されるので、単に受信電力値Pのみを基準として通信先基地局を決定する構成と比較して、より適切な(すなわち、より受信品質の良い)基地局を無線通信先として選択(決定)することが可能である。また、受信品質に基づく通信先基地局の決定が実際の無線通信を実行する際に行われるので、常に受信品質の測定および報告が行われる構成と比較して、移動局300における受信品質の測定および報告の頻度が低減され得る。したがって、移動局300の電力消費が抑制され得る。
【0063】
変形例
以上の実施の形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0064】
(1)変形例1
以上の実施形態では、時間領域におけるセル間干渉コーディネーションを採用した無線通信システム1が説明されたが、周波数領域におけるセル間干渉コーディネーションが無線通信システム1において採用されてもよい。具体的には、図14に示すように、周波数帯域f1において、マクロ基地局100とピコ基地局200との双方が無線信号を送信し、周波数帯域f1とは異なる周波数帯域f2において、ピコ基地局200のみが無線信号を送信する構成において、以上の実施形態で説明した構成が採用され得る。周波数帯域f1が非プロテクテッドリソースであり、周波数帯域f2がプロテクテッドリソースである。以上の構成においては、移動局300における受信電力値Pを基準として複数の候補基地局が選択された上で、実際の無線通信を実行する際に、周波数帯域(f1、f2)ごとに受信品質値Qが測定され取得される。そして、最も良好な受信品質値Qに対応する基地局が通信先基地局として決定され無線通信が実行される。
【0065】
(2)変形例2
以上の実施形態では、移動局300の通信先の候補基地局の選択および実際の通信先基地局の決定がマクロ基地局100において実行されたが、以上の候補基地局の選択および通信先基地局の決定は無線通信システム1内の任意の箇所にて実行され得る。例えば、移動局300が候補基地局選択部と通信先基地局決定部とを備え、移動局300において候補基地局の選択および通信先基地局の決定が実行されてもよい。また、ピコ基地局200が候補基地局選択部と通信先基地局決定部とを備え、ピコ基地局200において候補基地局の選択および通信先基地局の決定が実行されてもよい。さらに、無線通信システム1内の任意の2以上の要素(例えば、マクロ基地局100およびピコ基地局200)が共同して候補基地局の選択および通信先基地局の決定を実行してもよい。
【0066】
(3)変形例3
以上の実施形態では、受信電力(RSRP)を基準として候補基地局を選択した上で、下り無線通信の受信品質に基づいて実際の通信先基地局を決定したが、上り無線通信の受信品質に基づいて実際の通信先基地局(特に、上り送信先の基地局)を決定する構成も採用可能である。
【0067】
(4)変形例4
以上の実施形態では、移動局300の受信品質報告部340がマクロ基地局100に受信品質値Qを報告したが、受信電力値Pまたは受信品質値Qが最も良い基地局に受信品質値Qを報告してもよい。また、移動局300が無線通信可能な全ての基地局に受信品質値Qを報告してもよい。さらに、1つの基地局に報告された受信品質値Qが、基地局通信部(120、220)を介して他の基地局に提供されてもよい。
【0068】
(5)変形例5
以上の実施形態では、セル範囲拡張の動作において、受信電力値Pにバイアス値αが加算されて補正後の受信電力値(P+α)が算出されたが、受信電力値Pが比で表される場合には、受信電力値Pにバイアス値αが乗算されて補正後の受信電力値(P・α)が算出されてもよい。また、受信電力値PがdB(比の対数)で表される場合には、dBで表された受信電力値Pに対しdBで表されたバイアス値αを加算して補正後の受信電力値Pを算出してもよい。以上の形態が受信電力値Pにバイアス値αを乗算する形態の一種であることは当然に理解される。
【0069】
(6)変形例6
以上の実施の形態では、マクロ基地局100よりも無線能力の低い基地局としてピコ基地局200が例示されたが、マイクロ基地局、ナノ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド等が無線能力の低い基地局として採用されてもよい。また、無線通信システム1の要素として、相異なる無線能力を有する複数の基地局の組合せ(例えば、マクロ基地局、ピコ基地局、およびフェムト基地局の組合せ)が採用されてもよい。
【0070】
(7)変形例7
移動局300は、各基地局(マクロ基地局100、ピコ基地局200)と無線通信が可能な任意の装置である。移動局300は、例えば、フィーチャーフォンまたはスマートフォン等の携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
【0071】
(8)変形例8
無線通信システム1内の各要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、移動局300)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1……無線通信システム、100……マクロ基地局、110……無線通信部、112……送受信アンテナ、120……基地局通信部、130……制御部、132……バイアス値設定部、134……バイアス値通知部、136……候補基地局選択部、138……候補基地局通知部、140……通信先基地局決定部、142……通信先基地局通知部、200……ピコ基地局、210……無線通信部、212……送受信アンテナ、220……基地局通信部、230……制御部、300……移動局、310……無線通信部、312……送受信アンテナ、330……制御部、332……受信電力測定部、334……受信電力補正部、336……受信電力報告部、338……受信品質測定部、340……受信品質報告部、342……接続部、CB……候補基地局情報、Cm……マクロセル、Cp……ピコセル、f(f1,f2)……周波数帯域、F……無線フレーム、NSF……非プロテクテッドサブフレーム、PSF……プロテクテッドサブフレーム、P(P1,P2)……受信電力値、Q(Q1,Q2)……受信品質値、RB……リソースブロック、SF……サブフレーム、TB……通信先基地局情報、Th……閾値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基地局と、前記第1基地局よりも無線能力が低い第2基地局とを含む複数の基地局と、
前記第2基地局のみが無線信号を送信するプロテクテッドリソースと前記第1基地局および前記第2基地局の双方が無線信号を送信する非プロテクテッドリソースとの少なくともいずれかを使用して無線通信を実行可能な移動局と、
前記移動局の無線通信先の候補である候補基地局を選択する候補基地局選択部と、
前記移動局の実際の無線通信先である通信先基地局を決定する通信先基地局決定部と
を備える無線通信システムであって、
前記移動局は、
複数の前記基地局から受信した無線信号の各々について受信電力を測定する受信電力測定部と、
前記受信電力測定部が測定した前記受信電力の各々を前記候補基地局選択部に報告する受信電力報告部とを備え、
前記候補基地局選択部は、
前記移動局の前記受信電力報告部から報告された複数の前記受信電力に基づいて、前記移動局の無線通信先の候補である複数の前記候補基地局を選択可能であり、
前記移動局は、さらに
前記基地局と実際に無線通信を実行する際に、前記候補基地局選択部が選択した複数の前記候補基地局との通信に用いられる無線信号の各々について受信品質を測定する受信品質測定部と、
前記受信品質測定部が測定した前記受信品質の各々を前記通信先基地局決定部に報告する受信品質報告部とを備え、
前記通信先基地局決定部は、
前記プロテクテッドリソースにおいて前記移動局の前記受信品質測定部が測定した、前記第2基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質と、前記非プロテクテッドリソースにおいて前記移動局の前記受信品質測定部が測定した、前記第1基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質とのうち、最も良好な受信品質に対応する基地局を、前記移動局の無線通信先である前記通信先基地局として決定する
無線通信システム。
【請求項2】
前記第1基地局は、さらに、
前記移動局に対するバイアス値を設定するバイアス値設定部と、
前記移動局へ前記バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備え、
前記移動局は、さらに、
前記第1基地局の前記バイアス値通知部から通知された前記バイアス値を用いて、前記第2基地局から受信した無線信号について前記受信電力測定部が測定した前記受信電力を増加させるように補正する受信電力補正部を備え、
前記受信電力報告部は、前記第2基地局の受信電力として、前記受信電力補正部による補正後の受信電力を前記候補基地局選択部に報告する
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1基地局は、
前記候補基地局選択部と、
前記候補基地局選択部が選択した複数の前記候補基地局を示す情報を前記移動局へ通知する候補基地局通知部と、
前記通信先基地局決定部と、
前記通信先基地局決定部が決定した前記通信先基地局を示す情報を前記移動局へ通知する通信先基地局通知部と
を備え、
前記移動局の前記受信品質報告部は、前記受信品質測定部が測定した前記受信品質の各々を所定の期間にわたり平均化して、前記第1基地局の前記通信先基地局決定部に所定の頻度で報告する
請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
第1基地局と、前記第1基地局よりも無線能力が低い第2基地局とを含む複数の基地局と、
前記第2基地局のみが無線信号を送信するプロテクテッドリソースと前記第1基地局および前記第2基地局の双方が無線信号を送信する非プロテクテッドリソースとの少なくともいずれかを使用して無線通信を実行可能な移動局と、
前記移動局の無線通信先の候補である候補基地局を選択する候補基地局選択部と、
前記移動局の実際の無線通信先である通信先基地局を決定する通信先基地局決定部と
を備える無線通信システムにおける移動局であって、
複数の前記基地局から受信した無線信号の各々について受信電力を測定する受信電力測定部と、
前記受信電力測定部が測定した前記受信電力の各々を前記候補基地局選択部に報告する受信電力報告部と、
前記基地局と実際に無線通信を実行する際に、前記受信電力報告部から報告された複数の前記受信電力に基づいて前記候補基地局選択部が選択した複数の前記候補基地局との通信に用いられる無線信号の各々について受信品質を測定する受信品質測定部と、
前記受信品質測定部が測定した前記受信品質の各々を前記通信先基地局決定部に報告する受信品質報告部と、
前記プロテクテッドリソースにおいて前記移動局の前記受信品質測定部が測定した、前記第2基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質と、前記非プロテクテッドリソースにおいて前記移動局の前記受信品質測定部が測定した、前記第1基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質とのうち、最も良好な受信品質に対応する基地局を、前記移動局の無線通信先である前記通信先基地局として決定する前記通信先基地局決定部とを備える
移動局。
【請求項5】
前記基地局から通知されたバイアス値を用いて、前記第2基地局から受信した無線信号について前記受信電力測定部が測定した前記受信電力を増加させるように補正する受信電力補正部を備え、
前記受信電力報告部は、前記第2基地局の受信電力として、前記受信電力補正部による補正後の受信電力を前記候補基地局選択部に報告する
請求項4に記載の移動局。
【請求項6】
第1基地局と、前記第1基地局よりも無線能力が低い第2基地局とを含む複数の基地局と、
前記第2基地局のみが無線信号を送信するプロテクテッドリソースと前記第1基地局および前記第2基地局の双方が無線信号を送信する非プロテクテッドリソースとの少なくともいずれかを使用して無線通信を実行可能な移動局と
を備える無線通信システムにおける基地局であって、
複数の前記基地局から受信した無線信号の各々について前記移動局が測定し報告した複数の受信電力に基づいて、前記移動局の無線通信先の候補である複数の候補基地局を選択する候補基地局選択部と、
前記移動局と実際に無線通信を実行する際に、前記プロテクテッドリソースにおいて前記移動局が測定した、前記第2基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質と、前記非プロテクテッドリソースにおいて前記移動局が測定した、前記第1基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質とのうち、最も良好な受信品質に対応する基地局を、前記移動局の実際の無線通信先である前記通信先基地局として決定する通信先基地局決定部とを備える
基地局。
【請求項7】
前記移動局において、前記第2基地局から受信した無線信号について前記移動局が測定した前記受信電力を増加させるように補正するのに使用されるバイアス値を設定するバイアス値設定部と、
前記移動局へ前記バイアス値を通知するバイアス値通知部とを備える
請求項6に記載の基地局。
【請求項8】
第1基地局と、前記第1基地局よりも無線能力が低い第2基地局とを含む複数の基地局と、
前記第2基地局のみが無線信号を送信するプロテクテッドリソースと前記第1基地局および前記第2基地局の双方が無線信号を送信する非プロテクテッドリソースとの少なくともいずれかを使用して無線通信を実行可能な移動局と
を備える無線通信システムにおける通信制御方法であって、
前記移動局が、複数の前記基地局から受信した無線信号の各々について受信電力を測定することと、測定された前記受信電力の各々を候補基地局選択部に報告することと、
前記候補基地局選択部が、前記移動局から報告された複数の前記受信電力に基づいて、前記移動局の無線通信先の候補である複数の候補基地局を選択することと、
前記移動局が、前記基地局と実際に無線通信を実行する際に、前記候補基地局選択部が選択した複数の前記候補基地局との通信に用いられる無線信号の各々について受信品質を測定することと、測定された前記受信品質の各々を通信先基地局決定部に報告することと、
前記通信先基地局決定部が、前記プロテクテッドリソースにおいて前記移動局が測定した、前記第2基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質と、前記非プロテクテッドリソースにおいて前記移動局が測定した、前記第1基地局と前記移動局との通信に用いられる無線信号の受信品質とのうち、最も良好な受信品質に対応する基地局を、前記移動局の実際の無線通信先である前記通信先基地局として決定することとを備える
通信制御方法。
【請求項9】
前記基地局が、前記移動局に対するバイアス値を設定することと、前記移動局へ前記バイアス値を通知することと、
前記移動局が、前記基地局から通知された前記バイアス値を用いて、前記第2基地局から受信した無線信号について前記受信電力測定部が測定した前記受信電力を増加させるように補正することと、前記受信電力補正部による補正後の受信電力を前記第2基地局の受信電力として前記候補基地局選択部に報告することとを更に備える
請求項8の通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−110664(P2013−110664A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255902(P2011−255902)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】