説明

無線通信システム、移動端末、基地局、および移動端末の位置取得方法

【課題】本発明は、GPS衛星が補足できなかった場合に、より高い精度で現在位置を推定することが可能な無線通信システム、移動端末、基地局、および移動端末の位置取得方法を提供することを目的としている。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、基地局120と、基地局120と無線通信を行う移動端末110と、を備える無線通信システム100において、移動端末110はGPS衛星500からの信号を捕捉して当該移動端末110の位置情報を取得するGPS受信部220を備え、基地局はGPS信号を捕捉不可能な不達エリアを導出可能なGPSエリアマップ238を備え、かつ、移動端末110がGPS信号を捕捉不可能となった場合に移動端末110の要求に応じて不達エリア中のいずれか1点の位置情報を移動端末110に通知する位置通知部244を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動端末の位置取得方法に関し、とくにGPS信号を捕捉できないときに高い精度で推定した位置情報を得ることのできる無線通信システム、移動端末、基地局、および移動端末の位置取得方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、PHSや携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)やスマートフォン等の様々な移動端末が急速に発展し、著しい技術の進歩を伴って高機能化している。例えばPHSや携帯電話では、本来の音声通話機能に留まらず、通信を前提とするメール送受信機能やウェブ閲覧機能、通信を必要としないスケジュール管理やゲームなどのアプリケーションが動作するようになってきている。一方、従来はもっぱらデータ端末であったPDAは音声通話機能を備えるに到り、スマートフォンと呼ばれる一つのジャンルを築いている。また、音声通話は備えないがデータ通信は可能としている携帯端末も提供され始めている。もはやこれらの機器の間に明確な棲み分けはなく、製造メーカーの違いや開発コンセプトの違い、もしくは販路の違いによって分けられているに過ぎない。
【0003】
上記のような事情の中、移動端末の現在位置に依存するサービスも提供されている。当初は接続している基地局の位置情報を用いたサービスが考えられていたため、大まかな現在位置を表示したり、当該地域の天気予報を表示する程度に過ぎなかった。しかし昨今はアンテナ技術の進歩とLSIの高集積化によって、GPS衛星からの信号を捕捉するGPS受信部を搭載するに到り、正確な現在位置の位置情報を得られるようになってきている。この位置情報を利用して、周辺の店舗検索や、ナビゲーションシステムまで実現されている。
【0004】
しかし、主に車道を移動するカーナビゲーションシステムと異なり、主に歩行者が携行することが前提となる移動端末では、ビルや高架などの障害物の陰に隠れたり、建物や地下など信号の届かない場所に入るなど、GPS衛星からの信号が捕捉できなくなる機会が多い。また歩行者は移動速度が遅いために、信号が捕捉できない場所から脱するまでにも時間がかかる。このような場合においてGPS信号を利用するアプリケーションは、GPS受信部から位置情報の出力を得られないことから、その時点で動作を停止せざるを得ない。
【0005】
一方、GPS受信部からの位置情報を利用するアプリケーションであっても、さほど高い精度を要求しないものもある。例えば天気予報は広域で特定できれば良く、店舗検索も数十m程度の誤差は支障がない。すなわち、GPS信号が得られないからといって動作を停止するよりも、ある程度の確からしさをもって位置情報を与えることにより、十分に有用な結果を得ることができる。
【0006】
そこで従来からも、GPS衛星の信号が捕捉できない場合に、代用とする現在位置を推定するシステムが提案されている。特許文献1(特開2005−83859)には、アンテナの指向性を考慮したセルの中心(一般にはセクタセンタ)の位置(セル位置)や、セル位置に代えて無線基地局の位置情報(経度、緯度)を用いて概算位置を求めることができるとしている。
【0007】
図7はGPS信号の不達エリアを説明する図である。図において基地局600を囲む大きな円がセル602と呼ばれる電波到達範囲であり、例えば現在のPHSでは200〜500m、携帯電話では2Km程度といわれている。セクタ604はセル602を円周方向に3つ程度に分割したものであり、セクタセンタ606はそれぞれのセクタ604の中央部である。これに対し不達エリア608は、建物や地形の影響により、不規則な大きさおよび位置に散在する。
【特許文献1】特開2005−83859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、推定であるとしても、位置情報の精度が高くなれば提供できるサービスも増えるため、なるべく精度が高いことが好ましい。上記特許文献1の構成にあっては、セクタセンタ606の中央部を端末の位置として扱っている。したがって例えばPHSの場合、セクタセンタ606間の距離は数百mとなり、誤差が大きくなってしまうという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、GPS衛星が補足できなかった場合に、より高い精度で現在位置を推定することが可能な無線通信システム、移動端末、基地局、および移動端末の位置取得方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、基地局と、基地局と無線通信を行う移動端末と、を備える無線通信システムにおいて、移動端末はGPS衛星からの信号を捕捉して当該移動端末の位置情報を取得するGPS受信部を備え、基地局はGPS信号を捕捉不可能な不達エリアを導出可能なGPSエリアマップを備え、かつ、移動端末がGPS信号を捕捉不可能となった場合に移動端末の要求に応じて不達エリア中のいずれか1点の位置情報を移動端末に通知する位置通知部を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、GPS信号を受信できなくなった場合に、移動端末は基地局からGPS受信部の出力に代わる位置情報を取得することができ、これを代替情報としてアプリケーションを動作させることができる。このとき基地局はGPSエリアマップに基づいて不達エリアの中の1点を推定位置とし、その位置情報を通知することにより、常にセクタセンタの位置情報を返す場合に比して飛躍的に位置精度を向上させることができる。
【0012】
位置通知部は、不達エリアの中心の位置情報を移動端末に通知してもよい。不達エリアはセクタの一部分に過ぎないため、その中点を取ったとしても、セクタセンタと比べて大幅に位置精度を向上させることができる。
【0013】
位置通知部は、移動端末から受信する信号の受信電界強度によって当該基地局から移動端末までの距離を取得し、当該基地局から取得した距離にある不達エリア中のいずれか1点の位置情報を移動端末に通知してもよい。これにより、複数の不達エリアがあった場合に、より移動端末の存在確率が高い不達エリアを特定することができる。
【0014】
位置通知部は、取得した距離に2以上の不達エリアがある場合に、基地局を中心として取得した距離を半径とする円の弧がより長く含まれる不達エリアを選択し、不達エリア内のいずれか1点の位置情報を移動端末に通知してもよい。これにより、基地局から等距離上に複数の不達エリアがあった場合に、より移動端末の存在確率が高い不達エリアを特定することができる。
【0015】
位置通知部は、不達エリア内に描かれた弧の中点を移動端末に通知してもよい。すなわち不達エリアの中点ではなく、不達エリア内において更に基地局からの距離を考慮することにより、さらに位置精度を向上させることができる。
【0016】
移動端末は、捕捉したGPS信号によって取得した位置情報を基地局に送信する位置送信部を備え、基地局は、移動端末から移動端末の位置情報を受信する位置受信部を備え、移動端末の位置送信部は継続的に位置情報を基地局に送信し、基地局の位置受信部は受信した位置情報から移動端末の軌跡を取得し、移動端末がGPS信号を捕捉不可能となった場合に、位置通知部は、軌跡の延長線上に存在または近接する不達エリアを選択し、不達エリア内のいずれか1点の位置情報を移動端末に通知してもよい。これにより、移動端末が存在する不達エリアを確実に特定することができる。
【0017】
移動端末は、捕捉したGPS信号によって取得した位置情報を基地局に送信する位置送信部を備え、基地局は、移動端末から移動端末の位置情報を受信する位置受信部を備え、かつ、複数の移動端末から取得した位置情報を重ね合わせることによってGPSエリアマップを生成するマップ生成部を備えたことを特徴とする。これにより、事業者側でマップを準備せずとも、現状に即した正確なマップを生成することができる。なお登録された位置情報は有効期限を設けることにより、後になって発生した不達エリアも認識することが可能となる。
【0018】
位置送信部は、音声通話の発着信時、データ通信の開始時もしくは終了時、ナビゲーションの動作時、または一定時間ごとに、位置情報を送信してもよい。GPSエリアマップを生成するための位置情報を送信するタイミングの例である。
【0019】
マップ生成部は、移動端末から取得した位置情報につき、所定長さの半径を備えた円として重ね合わせることによりGPSエリアマップを生成してもよい。すなわち、移動端末から取得する位置情報は点の情報であるが、これを所定の大きさの面の情報に変換することにより、利用しやすいマップデータとすることができる。
【0020】
マップ生成部は、移動端末から取得した位置情報と関連づけて移動端末の受信電界強度をGPSエリアマップに格納し、位置通知部は、GPSエリアマップを参照することにより、移動端末から受信する信号の受信電界強度によって基地局から移動端末までの距離を取得してもよい。これにより、受信電界強度によって取得する基地局から移動端末までの距離の精度を向上させることができる。
【0021】
複数の基地局と接続される中継サーバを備え、広域についてのGPSエリアマップを生成してもよい。これにより複数の基地局の生成したGPSエリアマップの整合を図り、より正確なマップを生成することができる。
【0022】
本発明の他の代表的な構成は、基地局と無線通信を行う移動端末において、GPS衛星からの信号を捕捉して移動端末の位置情報を取得するGPS受信部と、捕捉したGPS信号によって取得した位置情報を基地局に送信する位置送信部と、GPS受信部がGPS信号を捕捉不可能となったときに、基地局に対して位置情報を要求する代替位置取得部とを備えたことを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、基地局からGPS受信部の出力に変わる位置情報を取得することができ、また基地局に対してGPSエリアマップを生成するための位置情報を提供することができる。
【0024】
本発明の他の代表的な構成は、移動端末と無線通信を行う基地局において、GPS信号を捕捉不可能な不達エリアを導出可能なGPSエリアマップと、移動端末がGPS信号を捕捉不可能となった場合に移動端末の要求に応じて不達エリア中のいずれか1点の位置情報を移動端末に通知する位置通知部と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、GPSエリアマップに基づいて不達エリアの中の1点の位置情報を移動端末に通知することにより、精度の高い推定位置の位置情報を提供することができる。
【0026】
本発明の他の代表的な構成は、基地局と無線通信を行う移動端末の位置取得方法において、基地局はGPS信号を捕捉不可能な不達エリアを導出可能なGPSエリアマップを備え、移動端末がGPS信号を捕捉不可能となった場合に、移動端末から基地局に位置情報を要求し、基地局は不達エリアを選択し、基地局は不達エリア中のいずれか1点の位置情報を移動端末に通知することを特徴とする。
【0027】
上記方法によれば、GPS信号を捕捉不可能となった場合であっても、基地局は精度の高い推定位置の位置情報を移動端末に提供することができ、移動端末はこれに基づいてアプリケーションを動作させることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、GPS信号を捕捉不可能となった場合であっても、基地局は精度の高い推定位置の位置情報を移動端末に提供することができ、移動端末はこれに基づいてアプリケーションを動作させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明にかかる無線通信システム、移動端末、基地局、および移動端末の位置取得方法の実施形態について説明する。本実施形態において無線通信システムはPHS(Personal Handy phone System)を例に用いて説明する。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0030】
図1は本実施形態にかかる無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。かかる無線通信システム100は、移動端末110と、基地局120と、インターネットや専用回線等の通信網130と、中継サーバ140とを含んで構成される。
【0031】
上記無線通信システム100では、移動端末110を利用して他の移動端末に電話しようと試みた場合、ユーザは、自己の移動端末110を操作して、無線通信可能領域にある基地局120と無線通信を確立し、通信網130、中継サーバ140、および、他の移動端末150の無線通信可能領域にある基地局120を介して、通信相手の有する他の移動端末150と音声通話を遂行する。
【0032】
また本実施形態においては、GPS衛星500からの信号を利用する。なおGPS衛星500は一般の利用に供されているものを用い、それ自体は本システムには含まれない。
【0033】
以下、無線通信システム100における移動端末110と、基地局120、中継サーバ140について説明する。その後で、GPS信号を捕捉不可能となった場合の動作について説明する。
【0034】
(移動端末110)
図2は移動端末110の概略的な機能を示した機能ブロック図である。かかる移動端末110は、端末側制御部210と、端末側メモリ212と、表示部214と、操作部216と、無線通信部218とを含んで構成される。さらに本実施形態において移動端末110には、GPS受信部220、代替位置取得部222、位置送信部224が備えられている。
【0035】
端末側制御部210は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により移動端末110全体を管理および制御する。端末側制御部210は、端末側メモリ212に格納されたプログラムを用いて、移動端末110を利用した通話機能やメール配信機能を実行する。特に本実施形態では、GPS受信部220から取得した位置情報を用いて、天気予報や店舗検索、ナビゲーションなど、現在位置に依存した情報を提供するアプリケーションを実行可能になっている。
【0036】
端末側メモリ212は、ROM、RAM、EPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成され、端末側制御部210で処理されるプログラムやアプリケーション等を記憶する。
【0037】
表示部214は、カラーまたは単色のディスプレイで構成され、端末側メモリ212に記憶された、または通信網を介してアプリケーションサーバ(図示せず)から提供される、WebブラウザやアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示することができる。
【0038】
操作部216は、キーボード、十字キー、ジョイスティック等のスイッチから構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。
【0039】
無線通信部218は、無線通信システム100における基地局120と無線通信を行う。かかる無線通信としては、例えば、基地局120内でフレームを時分割した複数のタイムスロットをそれぞれ移動端末110のチャネルに割り当てて通信を行うTDMA−TDD方式(TDMA: Time Division Multiple Access:時分割多重方式,TDD:Time Division Duplex:時分割複信)、OFDMA方式(Orthogonal Frequency Division Multiplex Access:直交周波数分割多元接続)等が用いられる。
【0040】
GPS受信部220は、GPS衛星500からの信号を受信して移動端末の経緯度を取得する。図1においてGPS衛星500は1つしか図示していないが、一般に3〜5個のGPS衛星500から信号を受け、現在位置の経緯度を絶対値として取得することができる。
【0041】
代替位置取得部222は、GPS受信部220がGPS信号を捕捉不可能となったときに、基地局120に対して位置情報を要求する。なお位置情報としては経緯度情報を用いることができる。代替位置取得部222は、例えばミドルウェア(GPS受信部220のデバイスドライバ)として提供され、アプリケーションがGPS受信部220に問い合わせたとき、GPS受信部220がGPS信号を取得できなければ、代わりに基地局に問い合わせ、位置情報を取得できたらアプリケーションに値を返す。これによりアプリケーション側はGPS衛星500または基地局120から得られた位置情報を区別することなく利用することができるため、特段の変更を加える必要はない。
【0042】
位置送信部224は、捕捉したGPS信号によって取得した位置情報を基地局に送信する。これにより、後述するGPSエリアマップを生成するための位置情報を基地局120に提供することができる。送信するタイミングとしては、例えば音声通話の発着信時、データ通信の開始時もしくは終了時、ナビゲーションの動作時などとすることができる。また、一定時間ごとに、定期的に位置情報を送信してもよい。
【0043】
上記構成の移動端末110によれば、基地局120からGPS受信部220の出力に代わる位置情報を取得することができ、また基地局120に対してGPSエリアマップを生成するための位置情報を提供することができる。
【0044】
(基地局120)
図3は基地局120の概略的な機能を示した機能ブロック図である。基地局120は、基地局側制御部230と、基地局側メモリ232と、無線通信部234と、通信網接続部236と、GPSエリアマップ238、位置受信部240、マップ生成部242、位置通知部244とを含んで構成される。
【0045】
基地局側制御部230は、中央処理装置を含む半導体集積回路により基地局120全体を管理および制御する。基地局側制御部230は、基地局側メモリ232のプログラムを用いて、移動端末同士間の通話もしくは通信を支援する。
【0046】
基地局側メモリ232は、ROM、RAM、EPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、基地局側制御部230で処理されるプログラムや、移動端末同士間で送受信されるデータを記憶する。
【0047】
無線通信部234は、移動端末110と無線通信を行う。例えば、本実施形態では、基地局120内でフレームを時分割した複数のタイムスロットをそれぞれチャネルに割り当てて通信を行う時分割多重方式が採用される。
【0048】
通信網接続部236は、通信網130を通じて中継サーバ140と通信信号の送受信を行う。通信網としては、ISDN通信網でもよく、IP通信網でもよい。
【0049】
GPSエリアマップ238は、GPS信号を捕捉可能な受信エリア、または捕捉不可能な不達エリアを位置情報と関連づけて格納したテーブル(データベース)である。なおGPSエリアマップ238は基地局側メモリ232に記録されていても良いが、ここでは説明の便宜のために独立した要素として説明している。GPSエリアマップ238は事業者が予め準備して格納しておいてもよいが、本実施形態では位置受信部240およびマップ生成部242がGPSエリアマップ238を生成する。
【0050】
位置受信部240は、移動端末110の位置送信部224から送信されたGPS信号の位置情報を受信し、マップ生成部242に値を渡す。マップ生成部242は、取得した位置情報を格納する。マップ生成部242は複数の移動端末110から取得した位置情報を重ね合わせて格納し、データを集積することによってGPSエリアマップ238を生成する。これにより、事業者側でマップを準備せずとも、現状に即した正確なマップを生成することができる。不達エリアについては積極的なデータはないが、位置情報が登録されていない範囲(領域)がすなわち不達エリアとなる。なお登録された位置情報は有効期限を設けることにより、後になって発生した不達エリアも認識することが可能となる。
【0051】
また位置情報を登録するに際して、所定長さの半径を備えた円として登録することでも良い。すなわち、移動端末から取得する位置情報は点の情報であるが、これを所定の大きさの面の情報に変換することにより、利用しやすいマップデータとすることができる。なお半径は大きくするほどマップの生成が早くなり、小さくするほど精度を向上させることができる。したがって半径の長さは、地形の複雑さや移動端末の数に応じて適切に選択することができる。
【0052】
また位置情報を登録するに際して、位置情報と関連づけて移動端末110の受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)をGPSエリアマップ238に格納してもよい。これは後述するように、移動端末110がGPS信号を受信できないとき、受信電界強度と照らし合わせて、基地局からの距離を認識するために利用することができる。
【0053】
位置通知部244は、移動端末110から要求があった場合にGPSエリアマップ238を参照し、基地局120は不達エリア中のいずれか1点の位置情報を移動端末に通知する。なお移動端末110は、上述したように、GPS受信部220がGPS信号を捕捉不可能となった場合に、代替位置取得部222によって基地局に対して位置情報を要求する。
【0054】
上記構成によれば、GPS信号を受信できなくなった場合に、移動端末110は基地局120からGPS受信部220の出力に変わる位置情報を取得することができ、これを代替情報としてアプリケーションを動作させることができる。このとき基地局120はGPSエリアマップ238に基づいて不達エリアの中の1点を推定位置とし、その位置情報を通知することにより、常にセクタセンタの位置情報を返す場合に比して飛躍的に位置精度を向上させることができる。
【0055】
推定位置を決定するに際して、不達エリアが複数存在する場合が考えられるため、いずれの不達エリアを特定(選択)するかという問題がある。また不達エリアは領域であって通知する位置情報は点(ポイント)であるため、特定した不達エリアの中のどの位置の位置情報を通知するかという問題もある。
【0056】
図6はGPS信号の不達エリアを説明する図である。基地局120を電波到達範囲であるセル602が囲んでおり、セル602は円周方向に3つのセクタ604に分割されている。不達エリア608は、建物や地形の影響により、不規則な大きさおよび位置に散在しているものとする。
【0057】
まず不達エリアの中のどの位置に存在するかについては、不達エリアの中心の位置情報を移動端末110に通知してもよい。不達エリアはセクタの一部分に過ぎないため、その中点を取ったとしても、セクタセンタの位置情報を通知する場合と比べて大幅に位置精度を向上させることができる。
【0058】
次に、不達エリアが複数存在する場合には、位置通知部244は、例えば面積の大きな不達エリアを選択することができる。面積が大きいほど存在確率が高いからである。しかしさらに、移動端末110から受信する信号の受信電界強度によって基地局120から移動端末110までの距離を取得し、基地局120からその距離にある不達エリアを選択することができる。このとき、上記のようにGPSエリアマップ238に位置情報とあわせて受信電界強度を格納しておくことにより、より正確に基地局からの距離を決定することができる。これにより、より移動端末の存在確率が高い不達エリアを特定することができる。
【0059】
また基地局120から同じ距離に複数の不達エリア608a、608bが存在する場合も考えられる。この場合において位置通知部244は、基地局120を中心として取得した距離を半径r0とする円Cを設定し、より長い弧が含まれる不達エリア608bを選択することができる。
【0060】
基地局からの距離を考慮する場合においては、位置通知部244は、不達エリア608b内に描かれた弧の中点C1を移動端末110に通知してもよい。すなわち不達エリアの中点ではなく、不達エリア内において更に基地局120からの距離を考慮することにより、さらに位置精度を向上させることができる。
【0061】
さらに移動端末110が継続的にGPS信号を基地局120に送信していた場合、たとえばナビゲーション機能を動作させながら移動していた場合には、基地局120の位置受信部240は移動端末110の軌跡を取得することができる。したがって移動端末110がGPS信号を捕捉不可能となった場合に、位置通知部244は軌跡の延長線上に存在または近接する不達エリアを選択することができる。軌跡は原則としていずれかの不達エリアに突入するように描かれるはずであり、移動端末110が存在する不達エリアを確実に特定することができる。
【0062】
(中継サーバ140)
図4は中継サーバ140の概略的な機能を示した機能ブロック図である。中継サーバ140は、サーバ側制御部260と、サーバ側メモリ262と、通信網接続部264と、広域マップ生成部266とを含んで構成される。
【0063】
サーバ側制御部260は、中央処理装置を含む半導体集積回路により中継サーバ140全体を管理および制御する。サーバ側制御部260は、サーバ側メモリ262のプログラムを用いて、移動端末同士間の通話時に必要な基地局120を選択し、その接続支援を行う。そして、基地局120を通じた通信回線を確立すると、その音声通話処理を基地局に委ね、移動端末110側および移動端末150側の基地局120同士により直接音声信号の送受をさせる。それから中継サーバ140は、各移動端末110、150の通信環境の変化に応じて適切な基地局120を割り当てるための待機状態に移行する。
【0064】
サーバ側メモリ262は、ROM、RAM、EPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、サーバ側制御部260で処理されるプログラムや、サーバ側制御部260が選択した基地局120の対応関係を移動端末110に関連付けたテーブル等に記憶する。
【0065】
通信網接続部264は、通信網130を通じて、移動端末110の通信経路として選択した基地局120にその旨の指令を送信する。また、基地局120からのハンドオーバ要求を受けて、サーバ側制御部260に新たに適切な基地局120を選択させ、その基地局120に対してハンドオーバ先となったことを通知する。
【0066】
広域マップ生成部266は、複数の基地局120から送信されたGPSエリアマップを重畳し、広域のGPSエリアマップを生成する。このとき、特に基地局120の通信範囲(PHSの場合はマイクロセルと呼ばれる)の重なり部分について整合性をとることにより、さらに正確なマップを生成することができる。
【0067】
(位置取得方法)
次に、位置取得方法について説明する。図5は位置取得動作について説明するフローチャートである。状況として移動端末110は基地局120とは通信可能であるがGPS信号は取得できない状態にあり、基地局は既にGPSエリアマップを備えているものとする。
【0068】
まず移動端末110において使用者がGPS信号を利用するアプリケーションの動作を開始すると(S102)、アプリケーションはGPS受信部220に問い合わせを行う(S104)。端末側制御部210はGPS受信部220によってGPS信号の受信を開始し(S106)、受信できたかどうかを判断する(S108)。受信できた場合にはアプリケーションに位置情報を渡し、アプリケーションは所定の演算結果を表示する(S110)。
【0069】
GPS信号が受信できなかったとき(S108)、代替位置取得部222は基地局120に対して位置情報を要求する。すると基地局120では位置通知部244がGPSエリアマップ238を参照し(S122)、不達エリアを選択して(S124)、さらに不達エリア中の一点を選択する(S126)。ここで不達エリアおよびその中の一点を選択するに際し、上記説明したように、受信電界強度を用いて基地局120と移動端末110との距離を算出することにより、存在確率が高い不達エリアおよびその中の位置を選択することができる。
【0070】
そして特定した一点(推定位置)の位置情報を、移動端末110に対して送信する(S128)。移動端末110では代替位置取得部222が位置情報を受信し(S114)、取得した位置情報をアプリケーションに渡す。そしてアプリケーションはGPS受信部220から位置情報を受け取ったときと同様に動作し、所定の演算結果を表示する(S110)。
【0071】
上記説明した如く、GPS信号を捕捉不可能となった場合であっても、基地局120は精度の高い推定位置の位置情報を移動端末110に提供することができ、移動端末110はこれに基づいてアプリケーションを動作させることが可能となる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明はGPS受信部を備えた無線通信システム、移動端末、基地局、および移動端末の位置取得方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施形態にかかる無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】移動端末の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図3】基地局の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図4】中継サーバの概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図5】位置取得動作について説明するフローチャートである。
【図6】GPS信号の不達エリアを説明する図である。
【図7】GPS信号の不達エリアを説明する図である。
【符号の説明】
【0075】
100…無線通信システム、110…移動端末、120…基地局、130…通信網、140…中継サーバ、150…移動端末、210…端末側制御部、212…端末側メモリ、214…表示部、216…操作部、218…無線通信部、220…GPS受信部、222…代替位置取得部、224…位置送信部、230…基地局側制御部、232…基地局側メモリ、234…無線通信部、236…通信網接続部、238…GPSエリアマップ、240…位置受信部、242…マップ生成部、244…位置通知部、260…サーバ側制御部、262…サーバ側メモリ、264…通信網接続部、266…広域マップ生成部、500…GPS衛星、600…基地局、602…セル、604…セクタ、606…セクタセンタ、608…不達エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、基地局と無線通信を行う移動端末と、を備える無線通信システムにおいて、
前記移動端末はGPS衛星からの信号を捕捉して当該移動端末の位置情報を取得するGPS受信部を備え、
前記基地局はGPS信号を捕捉不可能な不達エリアを導出可能なGPSエリアマップを備え、かつ、前記移動端末がGPS信号を捕捉不可能となった場合に該移動端末の要求に応じて前記不達エリア中のいずれか1点の位置情報を前記移動端末に通知する位置通知部を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記位置通知部は、前記不達エリアの中心の位置情報を前記移動端末に通知することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記位置通知部は、前記移動端末から受信する信号の受信電界強度によって当該基地局から前記移動端末までの距離を取得し、当該基地局から前記取得した距離にある不達エリア中のいずれか1点の位置情報を前記移動端末に通知することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記位置通知部は、前記取得した距離に2以上の不達エリアがある場合に、前記基地局を中心として前記取得した距離を半径とする円の弧がより長く含まれる不達エリアを選択し、該不達エリア内のいずれか1点の位置情報を前記移動端末に通知することを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記位置通知部は、前記不達エリア内に描かれた弧の中点を前記移動端末に通知することを特徴とする請求項4記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記移動端末は、捕捉したGPS信号によって取得した位置情報を前記基地局に送信する位置送信部を備え、
前記基地局は、前記移動端末から当該移動端末の位置情報を受信する位置受信部を備え、
前記移動端末の位置送信部は継続的に位置情報を前記基地局に送信し、
前記基地局の位置受信部は受信した位置情報から移動端末の軌跡を取得し、
前記移動端末がGPS信号を捕捉不可能となった場合に、前記位置通知部は、前記軌跡の延長線上に存在または近接する前記不達エリアを選択し、該不達エリア内のいずれか1点の位置情報を前記移動端末に通知することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記移動端末は、捕捉したGPS信号によって取得した位置情報を前記基地局に送信する位置送信部を備え、
前記基地局は、前記移動端末から当該移動端末の位置情報を受信する位置受信部を備え、かつ、複数の移動端末から取得した位置情報を重ね合わせることによって前記GPSエリアマップを生成するマップ生成部を備えたことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記位置送信部は、音声通話の発着信時、データ通信の開始時もしくは終了時、ナビゲーションの動作時、または一定時間ごとに、位置情報を送信することを特徴とする請求項7記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記マップ生成部は、前記移動端末から取得した位置情報につき、所定長さの半径を備えた円として重ね合わせることにより前記GPSエリアマップを生成することを特徴とする請求項7記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記マップ生成部は、前記移動端末から取得した位置情報と関連づけて該移動端末の受信電界強度を前記GPSエリアマップに格納し、
前記位置通知部は、前記GPSエリアマップを参照することにより、前記移動端末から受信する信号の受信電界強度によって当該基地局から前記移動端末までの距離を取得することを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
【請求項11】
複数の前記基地局と接続される中継サーバを備え、広域についての前記GPSエリアマップを生成することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項12】
基地局と無線通信を行う移動端末において、
GPS衛星からの信号を捕捉して当該移動端末の位置情報を取得するGPS受信部と、
捕捉したGPS信号によって取得した位置情報を基地局に送信する位置送信部と、
前記GPS受信部がGPS信号を捕捉不可能となったときに、基地局に対して位置情報を要求する代替位置取得部とを備えたことを特徴とする移動端末。
【請求項13】
移動端末と無線通信を行う基地局において、
GPS信号を捕捉不可能な不達エリアを導出可能なGPSエリアマップと、
移動端末がGPS信号を捕捉不可能となった場合に該移動端末の要求に応じて前記不達エリア中のいずれか1点の位置情報を前記移動端末に通知する位置通知部と、を備えたことを特徴とする基地局。
【請求項14】
基地局と無線通信を行う移動端末の位置取得方法において、
前記基地局はGPS信号を捕捉不可能な不達エリアを導出可能なGPSエリアマップを備え、
前記移動端末がGPS信号を捕捉不可能となった場合に、
前記移動端末から前記基地局に位置情報を要求し、
前記基地局は前記不達エリアを選択し、
前記基地局は前記不達エリア中のいずれか1点の位置情報を前記移動端末に通知することを特徴とする移動端末の位置取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−298484(P2008−298484A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142584(P2007−142584)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】