無線通信システム、親機及び子機
【課題】生産ライン等の移動側の状態に応じて固定側との間に双方向無線回線を確立した場合の信号送受信の信頼性と安定性を向上する。
【解決手段】移動側となるワーク24には子機12と振動センサ15が設けられ、固定側となる制御部16側には親機10が設けられる。ワーク24が制御開始に伴って移動すると、ワーク24の振動を振動センサ15が検知し、子機12は親機10との間に周波数の異なる上り無線回線と下り無線回線からなる双方向無線回線を確立し、例えば停止位置センサ14による停止位置検知電文を子機12から親機10に送信し、制御部16に出力して移動を停止させる。
【解決手段】移動側となるワーク24には子機12と振動センサ15が設けられ、固定側となる制御部16側には親機10が設けられる。ワーク24が制御開始に伴って移動すると、ワーク24の振動を振動センサ15が検知し、子機12は親機10との間に周波数の異なる上り無線回線と下り無線回線からなる双方向無線回線を確立し、例えば停止位置センサ14による停止位置検知電文を子機12から親機10に送信し、制御部16に出力して移動を停止させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定側と移動側との間に双方向無線回線を確立して必要な情報や信号を送受信する無線通信システム、親機及び子機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種機器や装置の生産設備にあっては、複数の工程を作業順に分け、各工程毎に必要な機械装置を設置したステーションを順番に並べ、複数のステーションに対し搬送機構を使用してワークを順番に移動させながら加工、組立などの作業を行うライン生産方式がとられている。
【0003】
このようなライン生産方式にあっては、工程順に並べられた複数のステーションに、適宜の搬送機構を使用してワークを移動する場合、ステーション毎にワークの停止位置を予め定め、移動中のワークが所定の停止位置に到達したこと検知して搬送機構を停止し、ステーションにワークを送り込んで必要な工程作業をしている。
【0004】
ワークの停止位置の検知は、通常、固定設備となるステーション側に適宜のセンサを設置し、ワークの停止位置への移動をセンサにより検知して搬送機構を停止するような制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−182388号公報
【特許文献2】特開2004−221277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の生産設備におけるワークの停止位置検知にあっては、ステーションなどの固定側にセンサを設置し、ワークの特定部位がセンサの検知エリアに入ることで停止位置への到達を検知していたため、ワークの形が変わると停止位置を検知するセンサの配置も変更して再調整しなければならず、生産設備の自由度が低いという問題がある。
【0007】
この問題を解決するためには移動側となるワークにセンサを搭載し、ステーションの停止位置に停止位置を示す部材を設置し、ワークの形が変わってもセンサの位置を予め決めておくことで、ステーション側の固定設備を変更することなく柔軟に対応することを可能とする。
【0008】
しかし、移動側のワークにセンサを設置した場合、センサからの信号を固定側の制御部に送るための信号線として搬送機構によるワークの移動範囲で伸縮するものが必要となり、また信号線は伸縮を繰り返すとストレスが加わるために断線の可能性もある。
【0009】
このため移動側のワークに設けたセンサからの検知信号を無線により固定側となる制御部に伝送するリモートセンシングが考えられる。即ち、固定側となる制御部に無線送受信機能を備えた親機を設置し、移動側となるワークに無線送受信機能を備えた子機を配置し、親機と子機の間で必要な信号を通信する。
【0010】
しかし、生産現場には様々なノイズ源が存在し、子機を配置したワークが移動することから電波環境が変化し、そのときの電波の通信状況によっては無線通信がうまくいかない可能性があり、信頼性の点で課題が残されている。
【0011】
このような問題はワークの停止位置検知に限らず、移動物体の種別や状態を監視して、移動物体の種別や状態に応じて生産ラインのルート変更、移動物体の取り外しやライン停止を行う場合に信号や情報を送受信する場合に同様の問題が考えられる。
【0012】
その他にも例えば生体位置検知システムにあっては、クマ、サル、イノシシ、シカ等の野生動物の生態を、電波を用いて観察するため、対象となる野生動物の身体にアンテナを一体化した小型送信機として機能する発信機(子機)を装着して放獣し、発信機からの電波を受信機(親機)で受信して位置を把握するようにしている。
【0013】
しかしながら、野生動物に装着した発信機からの電波は、山間地が多い観察エリアでは地形や樹木などにより電波が妨げられて受信機に届かない場合が頻繁に発生し、単に発信機からの電波を受信機で受信しているだけでは、無線回線の確立が保証されず、野生動物の行動に関する情報を安定して収集することが困難になるといった同様な問題がある。
また、電池駆動している送信機から絶えず無線電波を送信すると電池寿命が短くなり、送信機のメンテナンスを行う頻度が多くなるという問題がある。
【0014】
本発明は、固定側と移動側との間で双方向無線回線を確立した場合の信号送受信の信頼性と安定性を向上する無線通信システム、親機及び子機を提供することを目的とする。
【0015】
また本発明は、移動側の動き等の状態に応じて固定側との間に双方向無線回線を確立した場合の信号送受信の信頼性と安定性を向上する無線通信システム、親機及び子機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(無線通信システム)
本発明は、固定側に配置されて無線送受信部を備えた親機と、移動側に配置されて電池電源で動作する無線送受信部を備えた子機とを設け、親機と子機との間に下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して移動側の状態を通信する無線通信システムに於いて、
移動側の状態を検知して子機に状態検知信号を出力する状態センサを設け、
下り電波と上り電波を異なる周波数に設定し、
親機は待機状態で上り電波を連続受信しており、
子機は待機状態で下り電波を間欠受信しており、
子機は待機状態で状態センサの状態検知信号から所定の状態を検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波に状態センサの検知情報を乗せて親機に送信し、
親機は子機からの上り電波の受信を検知した場合、下り無線回線を確立することを特徴とする。
【0017】
本発明の無線通信システムおいて、更に、
親機は、下り電波の送信を開始して下り無線回線を確立した後に、下り電波に乗せて通信開始電文を子機に送信し、
子機は親機からの通信開始電文の受信を検知した場合、所定の応答電文を上り電波に乗せて親機に送信し、
親機は子機からの応答電文の受信を検知した場合、応答電文を処理する。
【0018】
ここで、子機は、応答電文として状態センサの状態検知信号に基づく状態検知電文または他のセンサの検知信号に基づく所定の検知電文を送信する。
【0019】
子機及び/又は親機に無線回線の確立を表示する表示部を備える。
【0020】
親機は上り無線回線の確立中に所定時間のあいだ上り電波の受信が断たれた場合に、待機状態に移行する。
【0021】
子機は上り電波の送信開始から所定時間を経過しても親機から下り電波を受信しない場合、待機状態に移行する。
【0022】
状態センサは、移動側の振動を検知して子機に振動検知信号を出力する振動センサであり、
子機は待機状態で振動センサの振動検知信号から振動を検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始する。
【0023】
子機は待機状態で振動センサの振動検知信号から所定時間を超える振動停止検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始して上り無線回線を確立する。
【0024】
(親機)
本発明は、固定側に配置され、移動側に配置された電池電源で動作する子機との間で下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して移動側の状態を通信する親機に於いて、
下り電波と上り電波を異なる周波数に設定して子機との間で送受信を行う送受信部と、
待機状態で上り電波を連続受信しており、子機が移動側の状態変化を検知して子機から上り電波の受信を検知した場合、下り電波の送信を開始して下り無線回線を確立し、子機からの状態変化を乗せた上り電波を受信して処理する親機制御部と、
を設けたことを特徴とする。
【0025】
親機制御部は、下り電波の送信を開始して下り無線回線を確立した後に、下り電波に乗せて通信開始電文を子機に送信し、子機からの応答電文の受信を検知した場合に、応答電文を処理してする。
親機制御部は、下り電波の送信開始から所定時間を経過しても子機から上り電波を受信しない場合、外部に通信障害信号を出力して待機状態に移行する。
【0026】
親機制御部は、上り無線回線の確立中に所定時間のあいだ上り電波の受信が断たれた場合、待機状態に移行する。
【0027】
(子機)
本発明は、移動側に配置され、固定側に配置された親機との間で下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して通信する電池電源で動作する子機に於いて、
移動側に配置され、移動側の状態を検知して状態検知信号を出力する状態センサと、
下り電波と上り電波を異なる周波数に設定して親機との間で送受信を行う送受信部と、
待機状態で下り電波を間欠受信しており、待機状態で状態センサの状態検知信号から所定の状態を検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えて下り無線回線を確立すると共に上り電波の送信を開始して上り無線回線を確立して状態センサの検知情報を送信する子機制御部と、
を設けたことを特徴とする。
【0028】
子機制御部は、更に、上り電波の送信を開始して下り無線回線を確立した後に、親機からの通信開始電文の受信を検知した場合、所定の応答電文を上り電波に乗せて親機に送信する。
【0029】
子機制御部は、応答電文として振動センサの状態検知信号に基づく状態検知電文または他のセンサの検知信号に基づく所定の検知電文を送信する。
状態センサは、移動側の振動を検知して子機に振動検知信号を出力する振動センサであり、
子機制御部は、子機制御部は、待機状態で前記振動センサの振動検知信号から所定時間を越える振動停止検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始して上り無線回線を確立する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、例えば生産設備の移動側のワークに子機と共に状態センサとして配置した例えば振動センサにより移動側の動きに伴う振動が検知された場合、待機状態にある子機が間欠受信から連続受信に切り替わると共に親機に対し上り電波を送信し、これを受けて待機状態にある親機が子機に下り電波を送信し、これによって上り無線回線と下り無線回線からなる双方向無線回線が親機と子機の間に確立され、親機からの通信開始信号やこれに応答した子機側のセンサで検知した検知電文を略リアルタイムで送受信することができる。
【0031】
特に子機の振動センサによる移動側の振動検知を契機に、子機と親機の間に双方向無線回線が確立されるという移動側となる子機を主体として通信動作が開始され、例えば生産設備で移動するワークに子機と振動センサを配置しておくことで、固定側の親機からの制御指示を必要とすることなく、ワークの移動を開始すると子機と親機の間に双方向無線回線が確立されて必要な信号や情報の送受信ができる。
【0032】
また子機を振動センサと共に野生動物に装着している場合には、野生動物の活動中は振動検知に基づく双方向無線回線が確立で振動検知電文等を上り電波に載せて親機に送信し、その時の野生動物の行動を略リアルタイムで検知することができる。
【0033】
また親機と子機との間に確立される上り無線回線と下り無線回線の周波数を別々にすることで、上り電文と下り電文を重複して送信しても、混信を起すことなく確実に電文を送受信することができる。
【0034】
また親機と子機の間に確立されている上り無線回線と下り無線回線の状況を常に監視しており、電波受信が所定時間を越えて断たれた場合、通信障害を検知して待機状態に戻ることで、適切に対応できる。
【0035】
また子機は電池電源で動作しており、待機状態では間欠受信とすることで充分な電池寿命を確保することができる。
【0036】
また、振動センサによる所定時間を越える振動停止検知を契機に、上り無線回線と下り無線回線からなる双方向無線回線が親機と子機の間に確立して必要な信号や情報を送受信することで、例えば生産設備であれば移動側の休止が判別でき、また野生動物の場合であれば例えば冬眠に入ったことが判別でき、移動側の状況を適切に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による無線通信システムを生産設備に適用した例を示した説明図
【図2】本発明による親機と子機の機能構成の実施形態を示したブロック図
【図3】本発明による無線通信処理を示したタイムチャート
【図4】図3に続く無線通信処理を示したフローチャート
【図5】回線確立中に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャート
【図6】回線確立中に他の通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャート
【図7】回線確立後に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャート
【図8】図7に続く回線確立後に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャート
【図9】図2の子機制御処理の実施形態を例示したフローチャート
【図10】図2の親機制御処理の実施形態を例示したフローチャート
【図11】本発明による無線通信システムを生産設備に適用した他の例を示した説明図
【図12】本発明による無線通信システムを生産設備に適用した他の例を示した説明図
【図13】本発明による無線通信システムを野生動物観察に適用した例を示した説明図
【図14】図13の野生動物観察における本発明による無線通信処理を示したタイムチャート
【図15】図14に続く無線通信処理を示したフローチャート
【図16】振動停止検知を契機に双方向無線回線を確立する本発明による無線通信処理を示したタイムチャート
【図17】図16に続く無線通信処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は本発明による無線通信システムを適用した生産設備の一例を示した説明図である。図1において、生産設備は制御部16、駆動部18、搬送機構20及び工程順に従って搬送機構20に対し順番に配置されたステーション22a〜22cで構成されている。
【0039】
制御部16は駆動部18を制御し、駆動部18は搬送機構20の作動により被駆動部となるワーク24をステーション22a側からステーション22b,ステーション22cの順に搬送し、各ステーションで必要な作業を行わせる。
【0040】
制御部16は駆動部18に対し制御開始信号を出力し、搬送機構20によりワーク24をステーション22aの停止位置マーカ26aで定まる所定位置に移動した後、駆動部18に制御終了信号を出力して停止させる。
【0041】
停止位置マーカ26aで定まる位置に停止したワーク24は、ステーション22aにおいて必要な組立作業などが行われる。組立作業が終了すると、制御部16はワーク24を次のステーション22bに設けた停止位置マーカ26bで定まる位置に、駆動部18に対する制御に基づく搬送機構20の作動で移動し、ステーション22bにおいて必要な組立作業などを行う。最終的にワーク24は、ステーション22cの停止位置マーカ26cで定まる位置に移動され、ステーション22cによる組立作業を行って一連の作業工程を終了する。
【0042】
このような生産設備に対し、本発明による無線通信システムとして、固定側となる制御部18側に親機10が設置されて信号線接続され、一方、移動側となるワーク24に子機12が設置されている。またワーク24には、停止位置マーカ26a〜26cへの到達を検知する停止位置センサ14と、移動側となるワーク24の振動を検知して振動検知信号を出力する振動センサ15が設けられ、子機12に入力接続している。
【0043】
停止位置センサ14としては機械的なセンサスイッチ、光学的な光検出スイッチなど適宜のセンサを用いることができる。振動センサ15としては例えば万歩計(R)などに使用している鋼球の機械的な動きを検知するセンサや加速度を検知するセンサ等を用いる。
【0044】
親機10は無線送受信部を備え、また子機12も同様に無線送受信部を備えている。制御部16は制御を開始する場合、駆動部18に制御信号を出力し、搬送機構20を作動してワーク24の移動を開始させる。
【0045】
ワーク24が搬送機構20により移動を開始すると、移動開始で発生するワーク24の振動を振動センサ15の振動検知信号から子機12が検知し、親機10との間に周波数の異なる上り無線回線と下り無線回線からなる双方向無線回線を確立し、制御中、確立した双方向無線回線を維持する。
【0046】
双方向無線回線の確立中にワーク24に設けている停止位置センサ14で例えば停止位置マーカ26aを検出すると、子機12から上り無線回線を介して親機10に停止位置検知電文を送信する。停止位置検知電文を受信した親機10は、制御部16に対し停止位置検出信号を出力し、これにより制御部16は駆動部18に制御終了信号を出力し、搬送機構20を停止して、ワーク24を検知した停止位置マーカ26aに対応した位置に停止させる。勿論、下り無線回線と上り無線回線の確立中にあっては、親機10と子機12の間で必要に応じて適宜の信号送受信ができる。
【0047】
親機10は双方向無線回線の確立から所定時間経過すると子機12に対し通信終了電文を送信し、これによって制御中に確立されていた双方向無線回線が解除されて待機状態に戻るようになる。
【0048】
図2は図1に示した親機と子機の機能構成の実施形態を例示したブロック図である。図2において、親機10はマイクロプロセッサなどを用いた親機制御部28、送信部30、受信部32、アンテナ34、メモリ35、操作部36、表示部38、入出力部40及び外部からの商用電源が常時供給された電源部42で構成されている。
【0049】
一方、子機12はマイクロプロセッサなどを用いた子機制御部44、受信部46、送信部48、アンテナ50、メモリ51、操作部52、表示部54及び電池電源部56で構成され、子機制御部44に対しては停止位置センサ14と振動センサ15が入力接続されている。
【0050】
親機10に設けた送信部30と受信部32、及び子機12に設けた受信部46と送信部48は、日本国内の場合には例えば特定小電力無線局に準拠した構成を備える。
【0051】
本実施形態にあっては、親機10の送信部30は下り周波数f1=315MHzの下り電波を送信し、子機の受信部46は親機10から送信した下り周波数f1=315MHzの下り電波を受信する。これが下り無線回線となる。
【0052】
一方、子機12の送信部48は上り周波数f2=429MHzの電波を送信し、親機10の受信部32は子機12が送信した上り周波数f2=429MHzの電波を受信し、これが上り無線回線となる。
【0053】
このように親機10から子機12に対する下り無線回線の周波数を315MHzとし、子機12から親機10に対する上り無線回線の周波数を429MHzと異なった周波数とすることで、親機10と子機12との間で同時に送受信を行っても混信が起きないようにしている。
【0054】
親機10は、待機状態で送信部30の送信を停止しており、受信部32は連続受信となっている。これに対し子機12は、待機状態で送信部48の送信を停止しており、受信部46は電池電源56による電池消耗を抑制するため間欠受信を行っている。
【0055】
親機制御部28に対しては、入出力部40を介して、図1に示した制御部16との間で信号を入出力できるようにしている。
【0056】
子機12の子機制御部44にはワーク24に設けた振動センサ15が入力接続されており、ワーク24の移動開始に伴う振動を振動センサ15の振動検知信号から検知すると、まず親機10との間に上り無線回線と上り無線回線を確立するための動作を開始する。
【0057】
即ち子機制御部44は、ワーク24の振動検知を判別すると、受信部46の間欠受信を連続受信に切替えると共に、送信部48を動作して429MHzの上り電波の送信を開始する。また子機制御部44は表示部54に設けた送信LEDをオンし、親機10との間における上り無線回線の確立による通信可能状態を表示すると共に所定のタイムアウト時間を設定した回線確立タイマをスタートする。
【0058】
子機12からの429MHzの上り電波は親機10の受信部32により受信され、これによって子機12の送信部48と親機10の受信部32との間に429MHzの上り電波を送受信する上り無線回線が確立される。
【0059】
また親機制御部28は子機12からの429MHzの上り電波の受信を検知すると、送信部30を動作して子機12に対し315MHzの下り電波の送信を開始し、続いて315MHzの下り電波に乗せて通信開始電文を送信し、更に所定のタイムアウト時間を設定した通信管理タイマをスタートする。通信管理タイマをタイムアウト時間は、制御部16による制御開始から制御終了までの時間に所定の余裕時間を加えた時間が設定される。
【0060】
また親機制御部28は受信部32で子機12が送信した429MHzの上り電波受信を検知した場合、表示部38に設けた受信LEDをオンし、子機12との間における上り無線回線の確立による通信可能状態を表示する。
【0061】
子機12の受信部46は間欠受信から連続受信に切り替わっており、親機10からの315MHzの下り電波を受信すると、親機10の送信部30と子機12の受信部46との間に315MHzの下り電波を送受信する下り無線回線が確立される。この状態で子機制御部44は親機10から送信された通信開始電文の受信を検知すると、親機10との間に双方向無線回線が確立されたことを認識し、必要とする検知電文の送信待機状態となる。
【0062】
子機制御部44は、親機10との間の双方向無線回線の確立後にあっては、親機10からの315MHzの上り電波の受信を継続しており、315MHzの下り電波受信が所定の電波遮断許容時間を越えて断たれた場合、通信障害を検知して待機常態に移行する。
【0063】
親機制御部28は、子機12との間の双方向無線回線の確立後にあっては、子機12からの429MHzの上り電波の受信を継続しており、429MHzの上り電波受信が所定の電波遮断許容時間を越えて断たれた場合は通信障害を検知し、入出力部40を介して制御部16に通信障害信号を出力して待機状態に移行し、これを受けて制御部16は制御停止などの必要な通信障害対応制御を行うことになる。
【0064】
親機10と子機12の間の双方向無線回線の確立後、子機制御部44は停止位置センサ14からの検知信号を読み込んでおり、例えば停止位置センサ14から図1に示した停止位置マーカ26aの検知信号が得られると、停止位置検知電文を作成し、送信部48から429MHzの上り電波に乗せて停止位置検知電文を親機10に送信する。
【0065】
子機12からの停止位置検知電文を受信した親機制御部28は、入出力部40を介して制御部16に停止位置検知信号を出力し、これを受けて制御部16は搬送停止などの制御動作を行う。
【0066】
所定の制御動作が終了すると、親機制御部28で通信管理タイマのタイムアウトが検知され、これに基づき親機制御部28は通信終了電文を生成し、送信部30から315MHzの下り電波に乗せて子機12に送信する。親機10からの通信終了電文を受信した子機12の子機制御部44は、受信部46を連続受信から間欠受信に切り替えると共に、送信部48による429MHzの上り電波送信を停止し、待機状態に移行する。
【0067】
親機10の親機制御部28は、子機12からの429MHzの上り電波受信が断たれると、通信終了を検知し、送信部30による315MHzの下り電波送信を停止し、待機状態に移行する。
【0068】
親機10に設けた操作部36及び子機12に設けた操作部52は、315MHzの下り無線回線及び429MHzの上り無線回線で使用するチャネル周波数選択を初期設定として行う。
【0069】
また親機10及び子機12のそれぞれには予めアドレスが割り当てられており、例えば操作部36に設けているディップスイッチなどにより、それぞれのアドレスを設定することができる。親機10及び子機12のアドレス設定は操作部36のディップスイッチによらず、メモリ35,51のそれぞれにシリアル番号などをアドレスとして予め記憶しても良い。
【0070】
親機10と子機12の間で送受信される電文には、送信元アドレス、送信先アドレス、データまたはコマンド、チェックコードを含んでいる。このためメモリ35、51は送信先となる親機10又は子機12の送信先アドレスを記憶してあり、送信電文に含ませている。また親機制御部28及び子機制御部44は、受信電文に含まれる送信先アドレスを自己アドレスと比較して一致した場合に、有効な電文受信を検知して、電文データもしくはコマンドに基づく処理を行うことになる。
【0071】
また親機10の送信部30及び子機12の送信部48による電文の送信動作は、所定時間に亘り同じ電文データを複数回繰り返して送信する送信動作を行い、必要に応じて送信先からのACK電文(確認応答電文)を受信し、万一、ACK電文を受信しない場合には再送動作を予め定めたリトライ回数分、繰り返すことになる。
【0072】
更に親機10にあっては、所定周期ごとに子機12に対し定期通報電文を送信している。親機10からの定期通報電文を受信した子機12は、そのときの子機の状態を応答する。即ち子機12は電池電源56の電圧低下によるローバッテリ障害や各部の障害監視をバックグラウンドで実行しており、障害を検知すると障害結果をメモリ51に保持しており、親機10から定期通報電文を受信した際に、障害を検知していれば、応答電文に障害情報を入れて送信する。
【0073】
これを受けて親機10は障害を電文から検知した場合、定期異常通報を認識して入出力部40から制御部16に定期通報異常信号を出力して、必要な対応措置を行わせることになる。特に子機12は電池電源56で動作しており、電池電圧の低下に伴うローバッテリ障害が定期通報異常として検知された場合には、オペレータに対し子機12の電池交換を促すアラーム出力などを行うことになる。
【0074】
図3及び図4は本発明の無線通信システムにおける無線通信処理を示したタイムチャートである。図3において、親機10はステップS1で待機状態にあり、待機状態にあっては315MHzの下り電波の送信を停止すると共に429MHzの上り電波を連続受信している。また子機12はステップS101で待機状態にあり、この待機状態にあっては、429MHzの上り電波の送信は停止し、315MHzの下り電波の受信は間欠受信としている。
【0075】
このような親機10及び子機12の待機状態で、図1に示したワーク24が制御開始に伴い搬送機構20の駆動で移動を開始したとすると、ワーク24に設けている振動センサ15がステップS201で移動開始に伴う振動を検知して子機12に出力する。
【0076】
子機12は振動センサ15の振動検知信号からの振動検知に基づきステップS102で間欠受信を連続受信に切替え、ステップS103で429MHzの上り電波を送信し、ステップS104で送信LEDをオンして回線確立表示を行い、ステップS105で回線確立タイマをスタートする。回線確立タイマのタイムアウト時間は、親機10との間で双方向無線回線の確立に必要な所定時間が設定されている。
【0077】
親機10はステップS2で子機12からの429MHzの上り電波を受信すると、ステップS3で通信管理タイマをスタートする。続いて親機10はステップS3で315MHzの下り電波を送信し、ステップS5で受信LEDをオンする。これにより親機側で回線確立表示を行う。続いてステップS6で315MHzの下り電波に乗せて通信開始電文を子機12に送信する。
【0078】
子機12はステップS106で親機10からの通信開始電文を受信すると、停止位置センサ14による停止位置検知待ちとなる。なお、子機18は親機10からの下り電波の受信を検知するとステップS105でスタートした回線確立タイマをリセット停止する。
【0079】
このように親機10と子機12の間に下り無線回線と上り無線回線からなる双方向無線回線が確立された状態でワークが所定の停止位置に達すると、停止位置センサ14がステップS301で停止位置を検知して検知信号を子機12に出力し、これを受けて子機12はステップS107で停止位置検知電文を親機10に送信する。
【0080】
続いて図4に示すように、親機10はステップS7で子機12からの停止位置検知電文を受信すると、停止位置検知信号を制御部16に出力し、制御部16は停止位置検知信号に基づく処理を行い、例えばワーク24の搬送を停止する。
【0081】
親機10はステップS9で通信管理タイマのタイムアウトを検知すると、ステップS10で通信終了電文を子機12に送信する。子機12はステップS108で通信終了電文を受信すると、ステップS109で429MHzの上り電波の送信を停止し、ステップS110で連続受信を間欠受信に切り替えて待機状態に移行する。
【0082】
親機10はステップS11で子機12からの上り電波の受信停止を検知すると、ステップS12で待機状態に移行する。
【0083】
図5は親機と子機の間の回線確立時に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャートである。図5において、子機12はステップS101で待機状態にあり、振動センサ15がステップS201でワーク24の移動に伴う振動を検知すると、子機12は振動センサ15の振動検知信号による振動検知に基づきステップS102で間欠受信を連続受信に切替え、続いてステップS103で429MHzの上り電波を送信し、ステップS104で送信LEDをオンし、ステップS105で回線確立タイマをスタートする。
【0084】
しかしながら、親機10との間に通信障害60が発生し、親機10側で子機12から送信した429MHzの上り電波が受信できなかったとする。この場合に親機10はステップS1の待機状態を継続しており、315MHzの下り電波の送信は行われない。
【0085】
このため子機12ではステップS105でスタートした回線確立タイマが315MHzの下り電波が断たれていることでステップS111でタイムアウトし、ステップS112で待機状態に戻る。
【0086】
ここで、子機12がステップS112で待機状態に戻った場合、ワーク24の移動に伴う振動が振動センサ15で検知されていれば、再びステップS102からの処理が繰り返され、通信障害は一時的なことが多いため、このとき親機10に対する通信障害が解消されていれば図3及び図4に示した正常処理を行うことができる。
【0087】
図6は回線確立時に他の通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャートである。図6にあっては、振動センサ15の振動検知に基づく子機12のステップS103における上り無線回線の確立は成功している。
【0088】
しかしながら、親機10がステップS4で下り電波を送信した場合に通信障害62が発生し、またステップS6で通信開始電文を送信した場合にも通信障害64が発生し、子機12側で下り電波及び通信開始電文の受信ができなかったとする。このため子機12は下り電波が断たれたことを検知してステップS114で受信タイマをスタートし、受信タイマに設定している所定の電波遮断許容時間を経過してステップS115でタイムアウトすると、ステップS116で待機状態に移行する。
【0089】
また親機10にあっては、子機12がステップS116で待機状態に戻ることで上り電波の受信が遮断されてステップS13で受信タイマをスタートする。受信タイマには所定の電波遮断許容時間がタイムアウト時間として設定されており、ステップS14で受信タイマがタイムアウトし、ステップS15で親機10も待機状態に戻る。
【0090】
ここで、子機12がステップS116で待機状態に戻った場合、ワーク24の移動に伴う振動が振動センサ15で検知されていれば、再びステップS102からの処理が繰り返され、通信障害は一時的なことが多いため、この時、親機10に対する通信障害が解消されていれば図3及び図4に示した正常処理を行うことができる。
【0091】
図7及び図8は、双方向無線回線の確立に成功したが、その後に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャートである。図7において、子機12のステップS101〜S106の処理、および親機10のステップS1〜S6の処理は図3に示したと同じであり、両者の間に315MHzの下り無線回線と429MHzの上り無線回線からなる双方向無線回線が確立されており、停止位置センサ14によるワーク24の停止位置検知を待っている。
【0092】
この状態で停止位置センサ14がステップS301で停止位置検知を行ったとすると、子機12はステップS107で停止位置検知電文を送信するが、この電文送信につき通信障害66が発生したとする。
【0093】
この通信障害66の発生により、親機10は子機12からの429MHzの上り電波受信が断たれることで図8のステップS16で所定の電波遮断許容時間をタイムアウト時間に設定した受信タイマをスタートし、スタートした受信タイマがステップS17でタイムアウトするとステップS18に進み、通信障害信号を制御部16に出力し、ステップS19で315MHzの下り電波の送信を停止した待機状態に移行する。親機10からの通信障害検知信号を受けた制御部16は、必要な通信障害処理を実行する。
【0094】
一方、子機12にあっては、親機10がステップS19で待機状態に戻ることで下り電波の受信が断たれ、このため子機12は下り電波が断たれたことを検知してステップS118で受信タイマをスタートし、受信タイマに設定している所定の電波遮断許容時間を経過してステップS119でタイムアウトすると、ステップS120で待機状態に移行する。
【0095】
図9は図2の子機12の制御処理の実施形態を示したフローチャートである。図9において、子機12の電池電源を投入すると、ステップS1001で初期化及び自己診断、更には各種の設定を行い、自己診断の結果、エラーがなければステップS1002の待機状態に進み、待機状態にあっては429MHzの上り電波の送信は停止とし、315MHzの下り電波の受信は間欠受信としている。
【0096】
続いてステップS1003で振動センサ15による振動検知の有無を判別しており、振動検知を判別するとステップS1004に進み、315MHzの下り電波の間欠受信を連続受信に切り替え、429MHzの上り電波を送信した後、ステップS1005で送信LEDをオンして無線回線の確立を表示し、更に回線確立タイマをスタートする。
【0097】
続いてステップ1006で親機10からの通信開始電文の受信の有無を検知しており、通信開始電文の受信を検知しない場合はステップS1007に進み、下り電波の通信障害の有無を検知している。即ち、下り電波の受信停止が検知された場合に、所定の許容電波遮断時間を設定した受信タイマをスタートし、受信タイマがタイムアウトした場合に下り電波遮断による通信障害を検知し、ステップS1002の待機状態に戻る。
【0098】
ステップS1006で通信開始電文の受信が検知された場合はステップS1008に進み、停止位置センサ14による停止位置検知の有無を判別している。停止位置検知を判別しない場合はステップS1009に進み、ステップS1007と同様に、下り電波の通信障害の有無を検知している。
【0099】
ステップS1008で停止位置検知が判別されるとステップS1010に進み、親機10に対し停止位置検知電文を送信する。続いてステップS1011で親機10からの通信終了電文の受信の有無を検知しており、通信終了電文の受信を検知しない場合はステップS1012に進み、ステップS1007と同様に、下り電波の通信障害の有無を検知している。
【0100】
ステップS1011で通信終了電文の受信を検知するとステップS1013に進んで上り電波の送信を停止し、ステップ1002の待機状態に戻る。
【0101】
図10は図2の親機10の制御処理の実施形態を示したフローチャートである。図10において、親機処理は、電源投入に伴いステップS2001で初期化及び自己診断、更には各種の設定処理を行い、自己診断により異常がなければステップS2002の待機状態に移行し、315MHzの下り電波送信は停止し、429MHzの上り電波の受信は連続受信としている。
【0102】
続いてステップS2003で子機12からの上り電波の受信を検知すると、ステップS2004に進み、315MHzの下り電波の送信を開始し、同時に通信開始電文を下り電波に乗せて送信する。続いてステップS2005で通信管理タイマをスタートし、ステップS2006で受信LEDをオンする。
【0103】
続いてステップS2007で子機12からの停止位置検知電文の受信の有無を検知しており、電文を検知しない場合には、ステップS2008で上り電波の通信障害の有無を検知しており、下り電波の受信停止が検知された場合に、所定の許容電波遮断時間を設定した受信タイマをスタートし、受信タイマがタイムアウトした場合に下り電波遮断による通信障害を検知し、ステップS2002の待機状態に戻る。
【0104】
ステップS2007で停止位置検知電文の受信を検知するとステップS2009に進み、停止位置検知信号を制御部16に出力する。続いてステップS2010で、ステップS2005でスタートした通信管理タイマのタイムアウトの有無を検知しており、タイムアウトを検知しない場合はステップS2011に進み、ステップS2008と同様、上り電波の通信障害の有無を検知している。
【0105】
ステップS2010で通信管理タイマのタイムアウトが検知されるとステップS2012に進み、子機12に対し通信終了電文を送信し、ステップS2013で子機12の待機状態への移行に伴う上り電波の受信停止を検知するとステップS2002の待機状態に戻る。
【0106】
図11は本発明による無線通信システムを適用した生産設備の他の例を示した説明図である。図11において、生産設備は監視制御装置100、生産ライン102及び保管部104で構成されている。生産ライン102は所定の生産物106を移動しながらラインに沿って配置された機器及び作業員による作業を通じて完成品となり、保管部104に送り込まれて保管される。
【0107】
このような生産設備にあっては、生産ライン102での作業中及び作業完了して保管部104に送り込まれた時に、生産物106における特定のパラメータ、例えば内部温度上昇などを監視し、異常な内部温度上昇が見られた場合に、不良品としての対応を必要とする場合がある。
【0108】
そこで本発明の無線通信システムにあっては、生産ライン102の監視制御装置100側に親機10を配置し、生産物106に子機12を配置すると共に生産物106の状態を検知する状態センサとして例えば生産物106の内部温度を測定する温度センサ108及び生産物の移動を検出する図2と同様の振動センサ15を設けて子機12に入力接続している。
【0109】
親機10及び子機12の詳細は図2の実施形態と基本的に同じであるが、子機12に状態センサとして生産物の内部温度を検知する温度センサ108を入力接続している点で相違し、これに伴い子機制御部44は温度センサ108による検出温度が所定の閾値温度を超えたことを判別した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始し、これによって親機12との間に双方向無線回線を確立し、親機10から通信開始電文を受信した場合、温度センサ108の温度検知信号に基づく温度検知電文を応答電文として親機10に送信する。また、振動センサ15による生産物106がライン上を移動した場合の子機12の間欠受信から連続受信への切替える制御を行い、親機10へ状態情報を送信するが、この制御は図3と同様になる。
【0110】
なお、子機12は親機10に送信する電文中に、振動センサ15の情報を使用し、生産物106が生産ライン102上で移動中なのか、保管部104で保管中なのかを送信することができる。
【0111】
図11の無線通信システムにおける親機と子機の間の無線通信処理は図3及び図4に示したタイムチャートと基本的に同じになる。即ち、子機12は待機状態で温度センサ108からの温度検知信号による検知温度が所定の閾値温度を超えたことを判別すると、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始し、これによって親機10との間に双方向無線回線が確立する。
【0112】
このように双方向無線回線が確立されると、子機12は親機10から通信開始電文を送ってくることから、子機12は温度センサ108の温度検知信号に基づき温度検知電文を生成して親機10に送信し、親機10から監視制御装置100に温度検知信号を出力する。監視制御装置100は親機10から出力された温度検知信号による検知温度を監視しており、異常警報を出力して内部温度が上昇した生産物の存在を報知する。そして、異常警報した生産物が移動中の場合は生産ラインを停止して除去し、保管中の場合は保管部104から不良品として除去するといった対応措置を行わせる。
【0113】
なお、子機12側で双方向無線回線を確立するための閾値温度と、親機10で生産物の異常を判別するための閾値温度は、同じ閾値温度であっても良いし、後者に対し前者を低い閾値温度に設定し、異常を判定する閾値温度に達する前に双方向無線回線を確立して生産物の検知温度を制御部側に送り、制御部側で生産物の異常の有無を判定するようにしても良い。
【0114】
このような生産中及び生産完了後に生産物の状態を監視する具体的例としては、例えばリチウム電池の生産ラインがある。リチウム電池の生産ラインでは、電池本体に電解液を投入後、電池本体の温度上昇や電圧の状態を確認する必要があり、各パラメータに異常がある場合は別工程で対応する必要があることから、このようなリチウム電池のパラメータ監視に図11に示したように本発明による無線通信システムが適用できる。
【0115】
そこで電池本体に電解液を投入した後に、子機12に入力接続した温度センサや電圧センサにより温度や電圧を検知し、所定時間の間に温度が所定の閾値を超えた場合や電圧が規定値に達しないような場合に、子機10側の動作で親機10との間に双方向無線回線を確立して温度検知電文や電圧検知電文を親機10に送信して監視制御装置10に出力し、異常を判断した場合は電解液を交換するなどの修復作業を行い、修復できない場合は不良品として取り除く。
【0116】
また生産ラインにおける生産物の状態を監視する他の例としては、電気部品を実装した機器等の生産物をエポキシ樹脂で封印する生産ラインがある。生産物にエポキシ樹脂を充填した場合、エポキシ樹脂の硬化が順調に行なわれていることを監視する必要がある。このようなエポキシ樹脂の硬化の判断は、反応温度や硬度の測定値をパラメータとして扱う。
【0117】
そこでエポキシ樹脂で封印した生産物に、状態センサとして温度センサや硬度センサを設けて子機12に入力接続し、所定時間を経過しても反応温度や硬度が閾値に達しないような場合に、子機10側の動作で親機10との間に双方向無線回線を確立して温度検知電文や硬度検知電文を親機10に送信して監視制御装置100に出力し、エポキシ樹脂の硬化が順調に行なわれているか否か監視し、異常を判断した場合はエポキシ樹脂を再充填するなど修復作業を行い、修復できない場合は不良品として取り除く。
【0118】
図12は本発明による無線通信システムを適用した生産設備の他の例を平面的に示した説明図である。図12において、生産設備は監視制御装置200、生産ライン202、分岐部204、分岐生産ライン206,208で構成されている。生産ライン202は所定の生産物210を移動しながらラインに沿って配置された機器及び作業員による作業を通じて組み上げられて例えば半完成品となり、分岐部204に送り込まれ、生産物210の状態に応じて分岐ライン206,208のいずれかに分岐され、分岐ライン206,208に沿って配置された機器及び作業員による作業を通じて完成品となる。
【0119】
監視制御装置200は、生産ライン202による半完成品としての生産物210の状態、例えば内部温度を監視し、内部温度が正常であれば分岐部204を制御して分岐生産ライン206に生産物210を分岐して完成品に至る工程を行い、一方、内部温度に異常があれば、分岐生産ライン208に分岐し、内部温度の異常を解消する工程を経て完成品とし、もし内部温度の異常が解消されなければ不良品として取り除く。
【0120】
このような生産設備にあっては、生産ライン202において生産物210における特定のパラメータ、例えば内部温度などを監視する必要がある。
【0121】
そこで本発明の無線通信システムにあっては、分岐部204の分岐制御を行う監視制御装置200側に親機10を配置し、生産ライン202を移動する生産物210に子機12を配置すると共に生産物210の状態を検知する状態センサとして例えば生産物210の内部温度を測定する温度センサ212を設けて子機12に入力接続している。
【0122】
親機10及び子機12の詳細は図2の実施形態と基本的に同じであるが、子機12に状態センサとして生産物210の内部温度を検知する温度センサ212を入力接続している点で相違し、これに伴い子機制御部44は温度センサ212による検出温度が所定の閾値温度を超えたことを判別した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始し、これによって親機12との間に双方向無線回線が確立し、親機10から通信開始電文を受信した場合、温度センサ212の温度検知信号に基づく温度検知電文を応答電文として親機10に送信する。
【0123】
図12の無線通信システムにおける親機と子機の間の無線通信処理も図3及び図4に示したタイムチャートと基本的に同じになる。即ち、子機12は待機状態で温度センサ108からの温度検知信号による検知温度が所定の閾値温度を超えたことを判別すると、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始し、これによって親機12との間に双方向無線回線が確立する。
【0124】
このように双方向無線回線が確立されると、親機10は子機12に通信開始電文を送ってくることから、子機12は温度センサ212の温度検知信号に基づき温度検知電文を生成して親機10に応答電文として送信し、親機10から監視制御装置200に温度検知信号を出力する。監視制御装置200は親機10から出力された温度検知信号による検知温度を監視しており、例えば所定の閾値温度以下であれば正常と判断し、分岐部204の制御で生産物210を分岐生産ライン206に分岐し、一方、所定の閾値温度を越える温度上昇を判別した場合は温度異常と判断し、生産物210を分岐生産ライン208に分岐する。
【0125】
生産中に監視する他の項目としては生産物210の重量でもよく、重量がその生産工程段階における規定重量範囲にあれば分岐生産ライン206に分岐して完成品に至る工程を行い、一方、重量がその工程段階での規定重量範囲から外れていれば、組み立て異常として、分岐生産ライン208に分岐して不良品として取り除く。
【0126】
このような生産の途中段階で生産物の状態を監視し、生産物の状態に応じてその後の生産工程を変更する生産設備の具体的な例としては、前述したリチウム電池の生産ラインがある。リチウム電池の生産ラインでは、電池本体に電解液を投入後、電池本体の温度上昇や電圧の状態を確認する必要があり、各パラメータに異常がある場合は別工程で対応する必要がある。
【0127】
そこで生産ライン202で電池本体に電解液を投入した後に、子機12に入力接続した温度センサや電圧センサにより温度や電圧を検知し、温度が所定の閾値を超えた場合や電圧が規定値に達しないような場合に、子機10側の動作で親機10との間に双方向無線回線を確立して温度検知電文や電圧検知電文を親機10に送信して監視制御装置10に出力し、正常であれば分岐生産ライン206に分岐して完成品とし、異常な場合は電界液の交換や電極の入れ替え等といった修復工程をもつ分岐生産ライン208に分岐する。
【0128】
また図12の生産ラインにおける生産物の状態を監視して分岐する他の例としては、前述した電気部品を実装した機器等の生産物をエポキシ樹脂で封印する生産ラインにも適用できる。
【0129】
即ち、生産ライン202において生産物にエポキシ樹脂を充填した場合、エポキシ樹脂の硬化が順調に行なわれていることを監視するため、生産物に温度センサや硬度センサを設けて子機12に入力接続し、所定時間を経過しても反応温度や硬度が閾値に達しないような場合に、子機10側の動作で親機10との間に双方向無線回線を確立して温度検知電文や硬度検知電文を親機10に送信して監視制御装置10に出力し、エポキシ樹脂の硬化が順調に行なわれているか否か監視し、正常であれば分岐生産ライン206に分岐して完成品とし、異常であれば分岐生産ライン208に分岐してエポキシ樹脂の再充填等を行って修復し、修復不可の場合は不良品として取り除く。
【0130】
また図12に示した生産物の状態を検知して生産ラインを分岐する生産設備としては、同一生産ラインで機種の異なる製品を混在させて生産する生産設備や小規模多品種のフレキシブル生産設備があり、このような生産設備で特定の機種に固有な工程について分岐生産ラインを設けて分岐したりバイパスさせるような場合、制御装置側に親機10を配置し、生産品に機種情報等の状態センサ付きの子機12を設けることで、必要なタイミングで親機10と子機12の間に双方向無線回線を確立して生産物の機種や温度など状態検知電文を送信して生産物の分岐制御等を行う。この通信の確立タイミングは子機12に設けた図2と同様の振動センサ15を設けて、移動を検知した際に機種情報やそのほかの監視情報を親機側に通信して生産ラインの分岐を行うことができる。
【0131】
図13は本発明の無線通信システムを野生動物の観察に適用した実施形態の概略を示した説明図である。
【0132】
図13において、子機12は振動センサを内蔵しており、観察対象とする例えばクマなどの野生動物300に装着され、電池電源で動作する。野性動物300に対する子機12の装着には例えば首バンドを使用する。
【0133】
親機10は子機12を装着した野生動物の行動予測エリア付近に設置される。親機10の電源は電池、太陽電池、商用電源など適宜の電源が設置環境に応じて使用できる。また親機10は観察者が携帯したり、車両に搭載して移動しても良い。
【0134】
親機10は例えばネットワーク302を介して観察装置304に接続され、観測装置304は親機10から送信された野生動物の活動検知データを収集して記憶管理し、また必要に応じて時間軸に対する行動パターンを生成する。活動検知データとしては、緯度経度や高度で示す現在の位置情報、移動履歴、移動時間、停止時間、体温などの情報であり、観測する情報にあわせてセンサを備える。ネットワーク302としては携帯端末用の無線ネットワークでも良いし、適宜の有線ネットワークでも良い。
【0135】
親機10及び子機12の詳細は図2の実施形態と基本的に同じであるが、双方向無線回線で使用する周波数として野生動物の監視に適した周波数を選択し、また、子機10に対するセンサとしては振動センサ15のみを設けている。
【0136】
親機10及び子機12は、例えば送信電力1mW低下の特定小電力無線局(免許不要)または簡易無線局(免許必要)に準拠した構成を備える。
【0137】
特定小電力無線局に準拠する場合、図2と同様に、親機10は下り周波数f1=315MHzの電波を送信し、子機10は親機10から送信した下り周波数f1=315MHzの電波を受信する。これが下り無線回線となる。一方、子機12は上り周波数f2=429MHzの電波を送信し、親機10は子機12が送信した上り周波数f2=429MHzの電波を受信し、これが上り無線回線となる。なお、下り周波数f1=315MHzと上り周波数f2=429MHzの電波は所謂400MHz帯と呼ばれる。
【0138】
また簡易無線局に準拠する場合、親機10は下り周波数f1=154.45MHzの電波を送信し、子機12は親機10から送信した下り周波数f1=154.25MHzの電波を受信する。これが下り無線回線となる。一方、子機12は上り周波数f2=154.61MHzの電波を送信し、親機10は子機12が送信した上り周波数f2=154.61MHzの電波を受信し、これが上り無線回線となる。なお、下り周波数f1=154.25MHzと上り周波数f2=154.61MHzの電波は所謂150MHz帯と呼ばれる。
【0139】
観察対象とする野生動物300が生息する場所は山間地が多く、樹木や地形により電波が妨げられ、各種の検証試験結果から150MHz帯が望ましいとされており、送信電力1mWにより約500〜1000mの通信可能距離が確保可能である。一方、400MHz帯も使用可能であるが、150MHz帯に比べ通信可能距離が数百メートル以内と短めになることが報告されている。このため行動範囲の狭い野生動物については400MHz帯とし、行動範囲の広い野生動物については150MHz帯とするといった使い分けが望ましい。
【0140】
また1台の親機10では野生動物の行動範囲をカバーできないことから、複数台の親機10を分散配置するようにしても良いし、下り周波数f1の電波と上り周波数f2の電波をそれぞれ送受信する中継器を設置するようにしても良い。
【0141】
図14及び図15は、図13の野生動物の観察に適用した本発明による無線通信システムの無線通信処理を示したタイムチャートである。図14において、親機10はステップS1で待機状態にあり、待機状態にあっては下り電波の送信を停止すると共に上り電波を連続受信している。また野生動物100に設けた子機12はステップS101で待機状態にあり、この待機状態にあっては、上り電波の送信は停止し、下り電波の受信は間欠受信としている。なお、親機10は必要に応じて子機側に状態監視の問い合わせ電文を送信し、これを受けた子機12は現在の位置情報、行動履歴や電池残量などの子機側の情報を連絡する。子機12は電池駆動なので受信部を間欠駆動することで電池消耗を抑えている。
【0142】
このような親機10及び子機12の待機状態で、野生動物300が活動していると、野生動物300の動きに応じて振動センサ15がステップS201で振動を検知して子機12に出力し、子機12はステップS102で間欠受信を連続受信に切替え、ステップS103で上り電波を送信し、ステップS104で送信LEDをオンして回線確立表示を行い、ステップS105で回線確立タイマをスタートする。
【0143】
親機10はステップS2で子機12からの上り電波を受信すると、ステップS3で通信管理タイマをスタートする。続いて親機10はステップS4で下り電波を送信し、ステップS5で受信LEDをオンする。これにより親機側で回線確立表示を行う。続いてステップS6で下り電波に乗せて通信開始電文を子機12に送信する。
【0144】
子機12はステップS106で親機10からの通信開始電文を受信すると、ステップS202の振動センサ15による振動検知に基づきステップS121で野生動物300の活動を示す活動検知電文を生成して親機10に送信する。続いて図15に示すように、親機10はステップS19で子機12からの活動検知電文を受信すると、観察装置304に活動検知データを時刻情報と共に送信して記憶させる。
【0145】
親機10はステップS9で通信管理タイマのタイムアウトを検知すると、ステップS10で通信終了電文を子機12に送信する。子機12はステップS108で通信終了電文を受信すると、ステップS109で上り電波の送信を停止し、ステップS110で連続受信を間欠受信に切り替えて待機状態に移行する。親機10はステップS11で子機12からの上り電波の受信停止を検知すると、ステップS12で下り電波の送信停止に切り替えて待機状態に移行する。
【0146】
図16及び図17は、図13の野生動物の観察に適用した本発明による無線通信システムの無線通信処理の他の実施形態を示したタイムチャートであり、野生動物に設けた振動センサの振動検知信号から所定時間を越える振動停止を検知した場合に、子機と親機の間に双方向無線回線を確立して必要な電文を送受信するようにしたことを特徴とする。
【0147】
図16において、親機10はステップS1で待機状態にあり、また野生動物300に設けた子機12はステップS101で待機状態にあり、この待機状態にあっては、上り電波の送信は停止し、下り電波の受信は間欠受信としている。
【0148】
このような親機10及び子機12の待機状態で、野生動物300が活動を休止していたとすると、子機12はステップS122で例えば数日といった所定期間にわたる振動停止を検知した場合、子機12のステップS102〜S106の処理及び親機10のステップS2〜S6の処理となる図3に示したと同じ処理を通じて双方向無線回線を確立する。
【0149】
続いて子機12はステップS106で親機10からの通信開始電文の受信を検知すると、ステップS123で活動停止電文を生成して親機10に送信する。親機10は図17のステップS21で子機12からの活動停止検知電文を受信し、ステップS22で活動停止検知データを時刻情報と共に観察装置104に送信し、例えば野生動物300が冬眠に入ったことを認識処理する。
【0150】
続いて親機10はステップS9〜S12の処理、また子機12はステップS108〜S110の処理を通じて待機状態に戻るが、子機12にあっては、野生動物300が活動を停止して冬眠に入ったことから、ステップS124で待機状態における下り電波を受信する間欠受信の周期を拡大し、冬眠中における子機の消費電力を低減して電池寿命を延ばすようにする。
【0151】
勿論、ステップS124で間欠受信周期を拡大した後の待機状態で図12に示したように、野生動物が冬眠から覚めて活動を開始することで振動検知され、これに基づき子機12と親機10の間に無線通信回線が確立されて信号送受信が行われると、元の間欠受信周期に戻す。
【0152】
また、子機12に備えた緯度経度などの位置情報センサで位置を検出して、所定期間位置に変化がなかったら、通常の睡眠あるいは冬眠中であると判断して間欠受信周期を拡大するようにしても良い。
【0153】
なお本発明の無線通信システムの適用は生産設備や野生動物監視に限定されず、固定側と移動側の配置又は装置をもつ適宜の対象に適用することができる。
【0154】
また親機と子機の間で双方向無線回線を確立した状態で送受信される信号は、子機側からのセンサによる検知信号以外に、必要に応じて適宜の信号を送受信することができる。
【0155】
また上記の実施形態にあっては、子機からの上り電波を親機で受信して下り電波を送信することにより双方向無線回線を確立した後に、親機から通信開始電文を子機に送信し、子機で通信開始電文を受信してセンサによる停止位置検知や振動検知に基づく応答電文を送信しているが、親機から通信開始電文を送信せず、子機で下り電波の受信を検知したら、センサによる停止位置検知や振動検知に基づく応答電文を送信するようにしても良い。
【0156】
また上記の実施形態にあっては、親機と子機を1台ずつ設けた場合を例にとっているが、複数の生産物や野生動物の状態を監視または観察する場合には、親機から送信する下り電波と子機から送信する上り電波について複数の周波数チャンネルを準備し、親機と子機のペア毎に割当てる周波数分割多重方式とすれば良い。この場合、親機側については親機制御部を共通とし、送信回路と受信回路を複数の周波数チャンネル分設けるような構成とし、1台の親機に対し複数台の子機を対応させることができる。
【0157】
また本実施形態の無線通信システムにあっては、親機と子機との間に周波数の異なる下り無線回線と上り無線回線(双方向無線回線)を確立して、子機に入力接続しているセンサによる検知信号をリアルタイムで親機側に送って外部に出力するようにしているが、センサで検知してから無線回線を介して子機から親機に送り、更に外部の機器に出力されるまでには、所定の伝送時間が必要になることから、この伝送時間の遅れを考慮した制御処理を行うことが必要であり、同時に伝送遅れがあっても十分に対応できる制御に本実施形態の無線通信システムを適用することが必要となる。
【0158】
また図14〜図17に示した野生動物の観察に利用した本発明による無線通信システムの処理は、図1に示した生産設備にも適用できる。即ち移動側となるワーク24に子機12と振動センサ15を設け、ワーク24の移動に伴う振動検知で子機12と親機10の間に双方向無線回線を確立して必要な信号を送受信し、また生産作業が終了した場合に振動停止を検知して子機12と親機10の間に双方向無線回線を確立して必要な信号を送受信すれば良い。
【0159】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0160】
10:親機
12:子機
14:停止位置センサ
15:振動センサ
16:制御部
18:駆動部
20:搬送機構
22a〜22c:ステーション
24:ワーク(移動側)
26a〜26c:停止位置マーカ
28:親機制御部
30,48:送信部
32,46:受信部
34,50:アンテナ
36,52:操作部
38,54:表示部
40:入出力部
42:電源部
44:子機制御部
56:電池電源
300:野生動物
304:観察装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定側と移動側との間に双方向無線回線を確立して必要な情報や信号を送受信する無線通信システム、親機及び子機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種機器や装置の生産設備にあっては、複数の工程を作業順に分け、各工程毎に必要な機械装置を設置したステーションを順番に並べ、複数のステーションに対し搬送機構を使用してワークを順番に移動させながら加工、組立などの作業を行うライン生産方式がとられている。
【0003】
このようなライン生産方式にあっては、工程順に並べられた複数のステーションに、適宜の搬送機構を使用してワークを移動する場合、ステーション毎にワークの停止位置を予め定め、移動中のワークが所定の停止位置に到達したこと検知して搬送機構を停止し、ステーションにワークを送り込んで必要な工程作業をしている。
【0004】
ワークの停止位置の検知は、通常、固定設備となるステーション側に適宜のセンサを設置し、ワークの停止位置への移動をセンサにより検知して搬送機構を停止するような制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−182388号公報
【特許文献2】特開2004−221277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の生産設備におけるワークの停止位置検知にあっては、ステーションなどの固定側にセンサを設置し、ワークの特定部位がセンサの検知エリアに入ることで停止位置への到達を検知していたため、ワークの形が変わると停止位置を検知するセンサの配置も変更して再調整しなければならず、生産設備の自由度が低いという問題がある。
【0007】
この問題を解決するためには移動側となるワークにセンサを搭載し、ステーションの停止位置に停止位置を示す部材を設置し、ワークの形が変わってもセンサの位置を予め決めておくことで、ステーション側の固定設備を変更することなく柔軟に対応することを可能とする。
【0008】
しかし、移動側のワークにセンサを設置した場合、センサからの信号を固定側の制御部に送るための信号線として搬送機構によるワークの移動範囲で伸縮するものが必要となり、また信号線は伸縮を繰り返すとストレスが加わるために断線の可能性もある。
【0009】
このため移動側のワークに設けたセンサからの検知信号を無線により固定側となる制御部に伝送するリモートセンシングが考えられる。即ち、固定側となる制御部に無線送受信機能を備えた親機を設置し、移動側となるワークに無線送受信機能を備えた子機を配置し、親機と子機の間で必要な信号を通信する。
【0010】
しかし、生産現場には様々なノイズ源が存在し、子機を配置したワークが移動することから電波環境が変化し、そのときの電波の通信状況によっては無線通信がうまくいかない可能性があり、信頼性の点で課題が残されている。
【0011】
このような問題はワークの停止位置検知に限らず、移動物体の種別や状態を監視して、移動物体の種別や状態に応じて生産ラインのルート変更、移動物体の取り外しやライン停止を行う場合に信号や情報を送受信する場合に同様の問題が考えられる。
【0012】
その他にも例えば生体位置検知システムにあっては、クマ、サル、イノシシ、シカ等の野生動物の生態を、電波を用いて観察するため、対象となる野生動物の身体にアンテナを一体化した小型送信機として機能する発信機(子機)を装着して放獣し、発信機からの電波を受信機(親機)で受信して位置を把握するようにしている。
【0013】
しかしながら、野生動物に装着した発信機からの電波は、山間地が多い観察エリアでは地形や樹木などにより電波が妨げられて受信機に届かない場合が頻繁に発生し、単に発信機からの電波を受信機で受信しているだけでは、無線回線の確立が保証されず、野生動物の行動に関する情報を安定して収集することが困難になるといった同様な問題がある。
また、電池駆動している送信機から絶えず無線電波を送信すると電池寿命が短くなり、送信機のメンテナンスを行う頻度が多くなるという問題がある。
【0014】
本発明は、固定側と移動側との間で双方向無線回線を確立した場合の信号送受信の信頼性と安定性を向上する無線通信システム、親機及び子機を提供することを目的とする。
【0015】
また本発明は、移動側の動き等の状態に応じて固定側との間に双方向無線回線を確立した場合の信号送受信の信頼性と安定性を向上する無線通信システム、親機及び子機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(無線通信システム)
本発明は、固定側に配置されて無線送受信部を備えた親機と、移動側に配置されて電池電源で動作する無線送受信部を備えた子機とを設け、親機と子機との間に下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して移動側の状態を通信する無線通信システムに於いて、
移動側の状態を検知して子機に状態検知信号を出力する状態センサを設け、
下り電波と上り電波を異なる周波数に設定し、
親機は待機状態で上り電波を連続受信しており、
子機は待機状態で下り電波を間欠受信しており、
子機は待機状態で状態センサの状態検知信号から所定の状態を検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波に状態センサの検知情報を乗せて親機に送信し、
親機は子機からの上り電波の受信を検知した場合、下り無線回線を確立することを特徴とする。
【0017】
本発明の無線通信システムおいて、更に、
親機は、下り電波の送信を開始して下り無線回線を確立した後に、下り電波に乗せて通信開始電文を子機に送信し、
子機は親機からの通信開始電文の受信を検知した場合、所定の応答電文を上り電波に乗せて親機に送信し、
親機は子機からの応答電文の受信を検知した場合、応答電文を処理する。
【0018】
ここで、子機は、応答電文として状態センサの状態検知信号に基づく状態検知電文または他のセンサの検知信号に基づく所定の検知電文を送信する。
【0019】
子機及び/又は親機に無線回線の確立を表示する表示部を備える。
【0020】
親機は上り無線回線の確立中に所定時間のあいだ上り電波の受信が断たれた場合に、待機状態に移行する。
【0021】
子機は上り電波の送信開始から所定時間を経過しても親機から下り電波を受信しない場合、待機状態に移行する。
【0022】
状態センサは、移動側の振動を検知して子機に振動検知信号を出力する振動センサであり、
子機は待機状態で振動センサの振動検知信号から振動を検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始する。
【0023】
子機は待機状態で振動センサの振動検知信号から所定時間を超える振動停止検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始して上り無線回線を確立する。
【0024】
(親機)
本発明は、固定側に配置され、移動側に配置された電池電源で動作する子機との間で下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して移動側の状態を通信する親機に於いて、
下り電波と上り電波を異なる周波数に設定して子機との間で送受信を行う送受信部と、
待機状態で上り電波を連続受信しており、子機が移動側の状態変化を検知して子機から上り電波の受信を検知した場合、下り電波の送信を開始して下り無線回線を確立し、子機からの状態変化を乗せた上り電波を受信して処理する親機制御部と、
を設けたことを特徴とする。
【0025】
親機制御部は、下り電波の送信を開始して下り無線回線を確立した後に、下り電波に乗せて通信開始電文を子機に送信し、子機からの応答電文の受信を検知した場合に、応答電文を処理してする。
親機制御部は、下り電波の送信開始から所定時間を経過しても子機から上り電波を受信しない場合、外部に通信障害信号を出力して待機状態に移行する。
【0026】
親機制御部は、上り無線回線の確立中に所定時間のあいだ上り電波の受信が断たれた場合、待機状態に移行する。
【0027】
(子機)
本発明は、移動側に配置され、固定側に配置された親機との間で下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して通信する電池電源で動作する子機に於いて、
移動側に配置され、移動側の状態を検知して状態検知信号を出力する状態センサと、
下り電波と上り電波を異なる周波数に設定して親機との間で送受信を行う送受信部と、
待機状態で下り電波を間欠受信しており、待機状態で状態センサの状態検知信号から所定の状態を検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えて下り無線回線を確立すると共に上り電波の送信を開始して上り無線回線を確立して状態センサの検知情報を送信する子機制御部と、
を設けたことを特徴とする。
【0028】
子機制御部は、更に、上り電波の送信を開始して下り無線回線を確立した後に、親機からの通信開始電文の受信を検知した場合、所定の応答電文を上り電波に乗せて親機に送信する。
【0029】
子機制御部は、応答電文として振動センサの状態検知信号に基づく状態検知電文または他のセンサの検知信号に基づく所定の検知電文を送信する。
状態センサは、移動側の振動を検知して子機に振動検知信号を出力する振動センサであり、
子機制御部は、子機制御部は、待機状態で前記振動センサの振動検知信号から所定時間を越える振動停止検知した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始して上り無線回線を確立する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、例えば生産設備の移動側のワークに子機と共に状態センサとして配置した例えば振動センサにより移動側の動きに伴う振動が検知された場合、待機状態にある子機が間欠受信から連続受信に切り替わると共に親機に対し上り電波を送信し、これを受けて待機状態にある親機が子機に下り電波を送信し、これによって上り無線回線と下り無線回線からなる双方向無線回線が親機と子機の間に確立され、親機からの通信開始信号やこれに応答した子機側のセンサで検知した検知電文を略リアルタイムで送受信することができる。
【0031】
特に子機の振動センサによる移動側の振動検知を契機に、子機と親機の間に双方向無線回線が確立されるという移動側となる子機を主体として通信動作が開始され、例えば生産設備で移動するワークに子機と振動センサを配置しておくことで、固定側の親機からの制御指示を必要とすることなく、ワークの移動を開始すると子機と親機の間に双方向無線回線が確立されて必要な信号や情報の送受信ができる。
【0032】
また子機を振動センサと共に野生動物に装着している場合には、野生動物の活動中は振動検知に基づく双方向無線回線が確立で振動検知電文等を上り電波に載せて親機に送信し、その時の野生動物の行動を略リアルタイムで検知することができる。
【0033】
また親機と子機との間に確立される上り無線回線と下り無線回線の周波数を別々にすることで、上り電文と下り電文を重複して送信しても、混信を起すことなく確実に電文を送受信することができる。
【0034】
また親機と子機の間に確立されている上り無線回線と下り無線回線の状況を常に監視しており、電波受信が所定時間を越えて断たれた場合、通信障害を検知して待機状態に戻ることで、適切に対応できる。
【0035】
また子機は電池電源で動作しており、待機状態では間欠受信とすることで充分な電池寿命を確保することができる。
【0036】
また、振動センサによる所定時間を越える振動停止検知を契機に、上り無線回線と下り無線回線からなる双方向無線回線が親機と子機の間に確立して必要な信号や情報を送受信することで、例えば生産設備であれば移動側の休止が判別でき、また野生動物の場合であれば例えば冬眠に入ったことが判別でき、移動側の状況を適切に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による無線通信システムを生産設備に適用した例を示した説明図
【図2】本発明による親機と子機の機能構成の実施形態を示したブロック図
【図3】本発明による無線通信処理を示したタイムチャート
【図4】図3に続く無線通信処理を示したフローチャート
【図5】回線確立中に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャート
【図6】回線確立中に他の通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャート
【図7】回線確立後に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャート
【図8】図7に続く回線確立後に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャート
【図9】図2の子機制御処理の実施形態を例示したフローチャート
【図10】図2の親機制御処理の実施形態を例示したフローチャート
【図11】本発明による無線通信システムを生産設備に適用した他の例を示した説明図
【図12】本発明による無線通信システムを生産設備に適用した他の例を示した説明図
【図13】本発明による無線通信システムを野生動物観察に適用した例を示した説明図
【図14】図13の野生動物観察における本発明による無線通信処理を示したタイムチャート
【図15】図14に続く無線通信処理を示したフローチャート
【図16】振動停止検知を契機に双方向無線回線を確立する本発明による無線通信処理を示したタイムチャート
【図17】図16に続く無線通信処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は本発明による無線通信システムを適用した生産設備の一例を示した説明図である。図1において、生産設備は制御部16、駆動部18、搬送機構20及び工程順に従って搬送機構20に対し順番に配置されたステーション22a〜22cで構成されている。
【0039】
制御部16は駆動部18を制御し、駆動部18は搬送機構20の作動により被駆動部となるワーク24をステーション22a側からステーション22b,ステーション22cの順に搬送し、各ステーションで必要な作業を行わせる。
【0040】
制御部16は駆動部18に対し制御開始信号を出力し、搬送機構20によりワーク24をステーション22aの停止位置マーカ26aで定まる所定位置に移動した後、駆動部18に制御終了信号を出力して停止させる。
【0041】
停止位置マーカ26aで定まる位置に停止したワーク24は、ステーション22aにおいて必要な組立作業などが行われる。組立作業が終了すると、制御部16はワーク24を次のステーション22bに設けた停止位置マーカ26bで定まる位置に、駆動部18に対する制御に基づく搬送機構20の作動で移動し、ステーション22bにおいて必要な組立作業などを行う。最終的にワーク24は、ステーション22cの停止位置マーカ26cで定まる位置に移動され、ステーション22cによる組立作業を行って一連の作業工程を終了する。
【0042】
このような生産設備に対し、本発明による無線通信システムとして、固定側となる制御部18側に親機10が設置されて信号線接続され、一方、移動側となるワーク24に子機12が設置されている。またワーク24には、停止位置マーカ26a〜26cへの到達を検知する停止位置センサ14と、移動側となるワーク24の振動を検知して振動検知信号を出力する振動センサ15が設けられ、子機12に入力接続している。
【0043】
停止位置センサ14としては機械的なセンサスイッチ、光学的な光検出スイッチなど適宜のセンサを用いることができる。振動センサ15としては例えば万歩計(R)などに使用している鋼球の機械的な動きを検知するセンサや加速度を検知するセンサ等を用いる。
【0044】
親機10は無線送受信部を備え、また子機12も同様に無線送受信部を備えている。制御部16は制御を開始する場合、駆動部18に制御信号を出力し、搬送機構20を作動してワーク24の移動を開始させる。
【0045】
ワーク24が搬送機構20により移動を開始すると、移動開始で発生するワーク24の振動を振動センサ15の振動検知信号から子機12が検知し、親機10との間に周波数の異なる上り無線回線と下り無線回線からなる双方向無線回線を確立し、制御中、確立した双方向無線回線を維持する。
【0046】
双方向無線回線の確立中にワーク24に設けている停止位置センサ14で例えば停止位置マーカ26aを検出すると、子機12から上り無線回線を介して親機10に停止位置検知電文を送信する。停止位置検知電文を受信した親機10は、制御部16に対し停止位置検出信号を出力し、これにより制御部16は駆動部18に制御終了信号を出力し、搬送機構20を停止して、ワーク24を検知した停止位置マーカ26aに対応した位置に停止させる。勿論、下り無線回線と上り無線回線の確立中にあっては、親機10と子機12の間で必要に応じて適宜の信号送受信ができる。
【0047】
親機10は双方向無線回線の確立から所定時間経過すると子機12に対し通信終了電文を送信し、これによって制御中に確立されていた双方向無線回線が解除されて待機状態に戻るようになる。
【0048】
図2は図1に示した親機と子機の機能構成の実施形態を例示したブロック図である。図2において、親機10はマイクロプロセッサなどを用いた親機制御部28、送信部30、受信部32、アンテナ34、メモリ35、操作部36、表示部38、入出力部40及び外部からの商用電源が常時供給された電源部42で構成されている。
【0049】
一方、子機12はマイクロプロセッサなどを用いた子機制御部44、受信部46、送信部48、アンテナ50、メモリ51、操作部52、表示部54及び電池電源部56で構成され、子機制御部44に対しては停止位置センサ14と振動センサ15が入力接続されている。
【0050】
親機10に設けた送信部30と受信部32、及び子機12に設けた受信部46と送信部48は、日本国内の場合には例えば特定小電力無線局に準拠した構成を備える。
【0051】
本実施形態にあっては、親機10の送信部30は下り周波数f1=315MHzの下り電波を送信し、子機の受信部46は親機10から送信した下り周波数f1=315MHzの下り電波を受信する。これが下り無線回線となる。
【0052】
一方、子機12の送信部48は上り周波数f2=429MHzの電波を送信し、親機10の受信部32は子機12が送信した上り周波数f2=429MHzの電波を受信し、これが上り無線回線となる。
【0053】
このように親機10から子機12に対する下り無線回線の周波数を315MHzとし、子機12から親機10に対する上り無線回線の周波数を429MHzと異なった周波数とすることで、親機10と子機12との間で同時に送受信を行っても混信が起きないようにしている。
【0054】
親機10は、待機状態で送信部30の送信を停止しており、受信部32は連続受信となっている。これに対し子機12は、待機状態で送信部48の送信を停止しており、受信部46は電池電源56による電池消耗を抑制するため間欠受信を行っている。
【0055】
親機制御部28に対しては、入出力部40を介して、図1に示した制御部16との間で信号を入出力できるようにしている。
【0056】
子機12の子機制御部44にはワーク24に設けた振動センサ15が入力接続されており、ワーク24の移動開始に伴う振動を振動センサ15の振動検知信号から検知すると、まず親機10との間に上り無線回線と上り無線回線を確立するための動作を開始する。
【0057】
即ち子機制御部44は、ワーク24の振動検知を判別すると、受信部46の間欠受信を連続受信に切替えると共に、送信部48を動作して429MHzの上り電波の送信を開始する。また子機制御部44は表示部54に設けた送信LEDをオンし、親機10との間における上り無線回線の確立による通信可能状態を表示すると共に所定のタイムアウト時間を設定した回線確立タイマをスタートする。
【0058】
子機12からの429MHzの上り電波は親機10の受信部32により受信され、これによって子機12の送信部48と親機10の受信部32との間に429MHzの上り電波を送受信する上り無線回線が確立される。
【0059】
また親機制御部28は子機12からの429MHzの上り電波の受信を検知すると、送信部30を動作して子機12に対し315MHzの下り電波の送信を開始し、続いて315MHzの下り電波に乗せて通信開始電文を送信し、更に所定のタイムアウト時間を設定した通信管理タイマをスタートする。通信管理タイマをタイムアウト時間は、制御部16による制御開始から制御終了までの時間に所定の余裕時間を加えた時間が設定される。
【0060】
また親機制御部28は受信部32で子機12が送信した429MHzの上り電波受信を検知した場合、表示部38に設けた受信LEDをオンし、子機12との間における上り無線回線の確立による通信可能状態を表示する。
【0061】
子機12の受信部46は間欠受信から連続受信に切り替わっており、親機10からの315MHzの下り電波を受信すると、親機10の送信部30と子機12の受信部46との間に315MHzの下り電波を送受信する下り無線回線が確立される。この状態で子機制御部44は親機10から送信された通信開始電文の受信を検知すると、親機10との間に双方向無線回線が確立されたことを認識し、必要とする検知電文の送信待機状態となる。
【0062】
子機制御部44は、親機10との間の双方向無線回線の確立後にあっては、親機10からの315MHzの上り電波の受信を継続しており、315MHzの下り電波受信が所定の電波遮断許容時間を越えて断たれた場合、通信障害を検知して待機常態に移行する。
【0063】
親機制御部28は、子機12との間の双方向無線回線の確立後にあっては、子機12からの429MHzの上り電波の受信を継続しており、429MHzの上り電波受信が所定の電波遮断許容時間を越えて断たれた場合は通信障害を検知し、入出力部40を介して制御部16に通信障害信号を出力して待機状態に移行し、これを受けて制御部16は制御停止などの必要な通信障害対応制御を行うことになる。
【0064】
親機10と子機12の間の双方向無線回線の確立後、子機制御部44は停止位置センサ14からの検知信号を読み込んでおり、例えば停止位置センサ14から図1に示した停止位置マーカ26aの検知信号が得られると、停止位置検知電文を作成し、送信部48から429MHzの上り電波に乗せて停止位置検知電文を親機10に送信する。
【0065】
子機12からの停止位置検知電文を受信した親機制御部28は、入出力部40を介して制御部16に停止位置検知信号を出力し、これを受けて制御部16は搬送停止などの制御動作を行う。
【0066】
所定の制御動作が終了すると、親機制御部28で通信管理タイマのタイムアウトが検知され、これに基づき親機制御部28は通信終了電文を生成し、送信部30から315MHzの下り電波に乗せて子機12に送信する。親機10からの通信終了電文を受信した子機12の子機制御部44は、受信部46を連続受信から間欠受信に切り替えると共に、送信部48による429MHzの上り電波送信を停止し、待機状態に移行する。
【0067】
親機10の親機制御部28は、子機12からの429MHzの上り電波受信が断たれると、通信終了を検知し、送信部30による315MHzの下り電波送信を停止し、待機状態に移行する。
【0068】
親機10に設けた操作部36及び子機12に設けた操作部52は、315MHzの下り無線回線及び429MHzの上り無線回線で使用するチャネル周波数選択を初期設定として行う。
【0069】
また親機10及び子機12のそれぞれには予めアドレスが割り当てられており、例えば操作部36に設けているディップスイッチなどにより、それぞれのアドレスを設定することができる。親機10及び子機12のアドレス設定は操作部36のディップスイッチによらず、メモリ35,51のそれぞれにシリアル番号などをアドレスとして予め記憶しても良い。
【0070】
親機10と子機12の間で送受信される電文には、送信元アドレス、送信先アドレス、データまたはコマンド、チェックコードを含んでいる。このためメモリ35、51は送信先となる親機10又は子機12の送信先アドレスを記憶してあり、送信電文に含ませている。また親機制御部28及び子機制御部44は、受信電文に含まれる送信先アドレスを自己アドレスと比較して一致した場合に、有効な電文受信を検知して、電文データもしくはコマンドに基づく処理を行うことになる。
【0071】
また親機10の送信部30及び子機12の送信部48による電文の送信動作は、所定時間に亘り同じ電文データを複数回繰り返して送信する送信動作を行い、必要に応じて送信先からのACK電文(確認応答電文)を受信し、万一、ACK電文を受信しない場合には再送動作を予め定めたリトライ回数分、繰り返すことになる。
【0072】
更に親機10にあっては、所定周期ごとに子機12に対し定期通報電文を送信している。親機10からの定期通報電文を受信した子機12は、そのときの子機の状態を応答する。即ち子機12は電池電源56の電圧低下によるローバッテリ障害や各部の障害監視をバックグラウンドで実行しており、障害を検知すると障害結果をメモリ51に保持しており、親機10から定期通報電文を受信した際に、障害を検知していれば、応答電文に障害情報を入れて送信する。
【0073】
これを受けて親機10は障害を電文から検知した場合、定期異常通報を認識して入出力部40から制御部16に定期通報異常信号を出力して、必要な対応措置を行わせることになる。特に子機12は電池電源56で動作しており、電池電圧の低下に伴うローバッテリ障害が定期通報異常として検知された場合には、オペレータに対し子機12の電池交換を促すアラーム出力などを行うことになる。
【0074】
図3及び図4は本発明の無線通信システムにおける無線通信処理を示したタイムチャートである。図3において、親機10はステップS1で待機状態にあり、待機状態にあっては315MHzの下り電波の送信を停止すると共に429MHzの上り電波を連続受信している。また子機12はステップS101で待機状態にあり、この待機状態にあっては、429MHzの上り電波の送信は停止し、315MHzの下り電波の受信は間欠受信としている。
【0075】
このような親機10及び子機12の待機状態で、図1に示したワーク24が制御開始に伴い搬送機構20の駆動で移動を開始したとすると、ワーク24に設けている振動センサ15がステップS201で移動開始に伴う振動を検知して子機12に出力する。
【0076】
子機12は振動センサ15の振動検知信号からの振動検知に基づきステップS102で間欠受信を連続受信に切替え、ステップS103で429MHzの上り電波を送信し、ステップS104で送信LEDをオンして回線確立表示を行い、ステップS105で回線確立タイマをスタートする。回線確立タイマのタイムアウト時間は、親機10との間で双方向無線回線の確立に必要な所定時間が設定されている。
【0077】
親機10はステップS2で子機12からの429MHzの上り電波を受信すると、ステップS3で通信管理タイマをスタートする。続いて親機10はステップS3で315MHzの下り電波を送信し、ステップS5で受信LEDをオンする。これにより親機側で回線確立表示を行う。続いてステップS6で315MHzの下り電波に乗せて通信開始電文を子機12に送信する。
【0078】
子機12はステップS106で親機10からの通信開始電文を受信すると、停止位置センサ14による停止位置検知待ちとなる。なお、子機18は親機10からの下り電波の受信を検知するとステップS105でスタートした回線確立タイマをリセット停止する。
【0079】
このように親機10と子機12の間に下り無線回線と上り無線回線からなる双方向無線回線が確立された状態でワークが所定の停止位置に達すると、停止位置センサ14がステップS301で停止位置を検知して検知信号を子機12に出力し、これを受けて子機12はステップS107で停止位置検知電文を親機10に送信する。
【0080】
続いて図4に示すように、親機10はステップS7で子機12からの停止位置検知電文を受信すると、停止位置検知信号を制御部16に出力し、制御部16は停止位置検知信号に基づく処理を行い、例えばワーク24の搬送を停止する。
【0081】
親機10はステップS9で通信管理タイマのタイムアウトを検知すると、ステップS10で通信終了電文を子機12に送信する。子機12はステップS108で通信終了電文を受信すると、ステップS109で429MHzの上り電波の送信を停止し、ステップS110で連続受信を間欠受信に切り替えて待機状態に移行する。
【0082】
親機10はステップS11で子機12からの上り電波の受信停止を検知すると、ステップS12で待機状態に移行する。
【0083】
図5は親機と子機の間の回線確立時に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャートである。図5において、子機12はステップS101で待機状態にあり、振動センサ15がステップS201でワーク24の移動に伴う振動を検知すると、子機12は振動センサ15の振動検知信号による振動検知に基づきステップS102で間欠受信を連続受信に切替え、続いてステップS103で429MHzの上り電波を送信し、ステップS104で送信LEDをオンし、ステップS105で回線確立タイマをスタートする。
【0084】
しかしながら、親機10との間に通信障害60が発生し、親機10側で子機12から送信した429MHzの上り電波が受信できなかったとする。この場合に親機10はステップS1の待機状態を継続しており、315MHzの下り電波の送信は行われない。
【0085】
このため子機12ではステップS105でスタートした回線確立タイマが315MHzの下り電波が断たれていることでステップS111でタイムアウトし、ステップS112で待機状態に戻る。
【0086】
ここで、子機12がステップS112で待機状態に戻った場合、ワーク24の移動に伴う振動が振動センサ15で検知されていれば、再びステップS102からの処理が繰り返され、通信障害は一時的なことが多いため、このとき親機10に対する通信障害が解消されていれば図3及び図4に示した正常処理を行うことができる。
【0087】
図6は回線確立時に他の通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャートである。図6にあっては、振動センサ15の振動検知に基づく子機12のステップS103における上り無線回線の確立は成功している。
【0088】
しかしながら、親機10がステップS4で下り電波を送信した場合に通信障害62が発生し、またステップS6で通信開始電文を送信した場合にも通信障害64が発生し、子機12側で下り電波及び通信開始電文の受信ができなかったとする。このため子機12は下り電波が断たれたことを検知してステップS114で受信タイマをスタートし、受信タイマに設定している所定の電波遮断許容時間を経過してステップS115でタイムアウトすると、ステップS116で待機状態に移行する。
【0089】
また親機10にあっては、子機12がステップS116で待機状態に戻ることで上り電波の受信が遮断されてステップS13で受信タイマをスタートする。受信タイマには所定の電波遮断許容時間がタイムアウト時間として設定されており、ステップS14で受信タイマがタイムアウトし、ステップS15で親機10も待機状態に戻る。
【0090】
ここで、子機12がステップS116で待機状態に戻った場合、ワーク24の移動に伴う振動が振動センサ15で検知されていれば、再びステップS102からの処理が繰り返され、通信障害は一時的なことが多いため、この時、親機10に対する通信障害が解消されていれば図3及び図4に示した正常処理を行うことができる。
【0091】
図7及び図8は、双方向無線回線の確立に成功したが、その後に通信障害が発生した場合の処理を示したタイムチャートである。図7において、子機12のステップS101〜S106の処理、および親機10のステップS1〜S6の処理は図3に示したと同じであり、両者の間に315MHzの下り無線回線と429MHzの上り無線回線からなる双方向無線回線が確立されており、停止位置センサ14によるワーク24の停止位置検知を待っている。
【0092】
この状態で停止位置センサ14がステップS301で停止位置検知を行ったとすると、子機12はステップS107で停止位置検知電文を送信するが、この電文送信につき通信障害66が発生したとする。
【0093】
この通信障害66の発生により、親機10は子機12からの429MHzの上り電波受信が断たれることで図8のステップS16で所定の電波遮断許容時間をタイムアウト時間に設定した受信タイマをスタートし、スタートした受信タイマがステップS17でタイムアウトするとステップS18に進み、通信障害信号を制御部16に出力し、ステップS19で315MHzの下り電波の送信を停止した待機状態に移行する。親機10からの通信障害検知信号を受けた制御部16は、必要な通信障害処理を実行する。
【0094】
一方、子機12にあっては、親機10がステップS19で待機状態に戻ることで下り電波の受信が断たれ、このため子機12は下り電波が断たれたことを検知してステップS118で受信タイマをスタートし、受信タイマに設定している所定の電波遮断許容時間を経過してステップS119でタイムアウトすると、ステップS120で待機状態に移行する。
【0095】
図9は図2の子機12の制御処理の実施形態を示したフローチャートである。図9において、子機12の電池電源を投入すると、ステップS1001で初期化及び自己診断、更には各種の設定を行い、自己診断の結果、エラーがなければステップS1002の待機状態に進み、待機状態にあっては429MHzの上り電波の送信は停止とし、315MHzの下り電波の受信は間欠受信としている。
【0096】
続いてステップS1003で振動センサ15による振動検知の有無を判別しており、振動検知を判別するとステップS1004に進み、315MHzの下り電波の間欠受信を連続受信に切り替え、429MHzの上り電波を送信した後、ステップS1005で送信LEDをオンして無線回線の確立を表示し、更に回線確立タイマをスタートする。
【0097】
続いてステップ1006で親機10からの通信開始電文の受信の有無を検知しており、通信開始電文の受信を検知しない場合はステップS1007に進み、下り電波の通信障害の有無を検知している。即ち、下り電波の受信停止が検知された場合に、所定の許容電波遮断時間を設定した受信タイマをスタートし、受信タイマがタイムアウトした場合に下り電波遮断による通信障害を検知し、ステップS1002の待機状態に戻る。
【0098】
ステップS1006で通信開始電文の受信が検知された場合はステップS1008に進み、停止位置センサ14による停止位置検知の有無を判別している。停止位置検知を判別しない場合はステップS1009に進み、ステップS1007と同様に、下り電波の通信障害の有無を検知している。
【0099】
ステップS1008で停止位置検知が判別されるとステップS1010に進み、親機10に対し停止位置検知電文を送信する。続いてステップS1011で親機10からの通信終了電文の受信の有無を検知しており、通信終了電文の受信を検知しない場合はステップS1012に進み、ステップS1007と同様に、下り電波の通信障害の有無を検知している。
【0100】
ステップS1011で通信終了電文の受信を検知するとステップS1013に進んで上り電波の送信を停止し、ステップ1002の待機状態に戻る。
【0101】
図10は図2の親機10の制御処理の実施形態を示したフローチャートである。図10において、親機処理は、電源投入に伴いステップS2001で初期化及び自己診断、更には各種の設定処理を行い、自己診断により異常がなければステップS2002の待機状態に移行し、315MHzの下り電波送信は停止し、429MHzの上り電波の受信は連続受信としている。
【0102】
続いてステップS2003で子機12からの上り電波の受信を検知すると、ステップS2004に進み、315MHzの下り電波の送信を開始し、同時に通信開始電文を下り電波に乗せて送信する。続いてステップS2005で通信管理タイマをスタートし、ステップS2006で受信LEDをオンする。
【0103】
続いてステップS2007で子機12からの停止位置検知電文の受信の有無を検知しており、電文を検知しない場合には、ステップS2008で上り電波の通信障害の有無を検知しており、下り電波の受信停止が検知された場合に、所定の許容電波遮断時間を設定した受信タイマをスタートし、受信タイマがタイムアウトした場合に下り電波遮断による通信障害を検知し、ステップS2002の待機状態に戻る。
【0104】
ステップS2007で停止位置検知電文の受信を検知するとステップS2009に進み、停止位置検知信号を制御部16に出力する。続いてステップS2010で、ステップS2005でスタートした通信管理タイマのタイムアウトの有無を検知しており、タイムアウトを検知しない場合はステップS2011に進み、ステップS2008と同様、上り電波の通信障害の有無を検知している。
【0105】
ステップS2010で通信管理タイマのタイムアウトが検知されるとステップS2012に進み、子機12に対し通信終了電文を送信し、ステップS2013で子機12の待機状態への移行に伴う上り電波の受信停止を検知するとステップS2002の待機状態に戻る。
【0106】
図11は本発明による無線通信システムを適用した生産設備の他の例を示した説明図である。図11において、生産設備は監視制御装置100、生産ライン102及び保管部104で構成されている。生産ライン102は所定の生産物106を移動しながらラインに沿って配置された機器及び作業員による作業を通じて完成品となり、保管部104に送り込まれて保管される。
【0107】
このような生産設備にあっては、生産ライン102での作業中及び作業完了して保管部104に送り込まれた時に、生産物106における特定のパラメータ、例えば内部温度上昇などを監視し、異常な内部温度上昇が見られた場合に、不良品としての対応を必要とする場合がある。
【0108】
そこで本発明の無線通信システムにあっては、生産ライン102の監視制御装置100側に親機10を配置し、生産物106に子機12を配置すると共に生産物106の状態を検知する状態センサとして例えば生産物106の内部温度を測定する温度センサ108及び生産物の移動を検出する図2と同様の振動センサ15を設けて子機12に入力接続している。
【0109】
親機10及び子機12の詳細は図2の実施形態と基本的に同じであるが、子機12に状態センサとして生産物の内部温度を検知する温度センサ108を入力接続している点で相違し、これに伴い子機制御部44は温度センサ108による検出温度が所定の閾値温度を超えたことを判別した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始し、これによって親機12との間に双方向無線回線を確立し、親機10から通信開始電文を受信した場合、温度センサ108の温度検知信号に基づく温度検知電文を応答電文として親機10に送信する。また、振動センサ15による生産物106がライン上を移動した場合の子機12の間欠受信から連続受信への切替える制御を行い、親機10へ状態情報を送信するが、この制御は図3と同様になる。
【0110】
なお、子機12は親機10に送信する電文中に、振動センサ15の情報を使用し、生産物106が生産ライン102上で移動中なのか、保管部104で保管中なのかを送信することができる。
【0111】
図11の無線通信システムにおける親機と子機の間の無線通信処理は図3及び図4に示したタイムチャートと基本的に同じになる。即ち、子機12は待機状態で温度センサ108からの温度検知信号による検知温度が所定の閾値温度を超えたことを判別すると、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始し、これによって親機10との間に双方向無線回線が確立する。
【0112】
このように双方向無線回線が確立されると、子機12は親機10から通信開始電文を送ってくることから、子機12は温度センサ108の温度検知信号に基づき温度検知電文を生成して親機10に送信し、親機10から監視制御装置100に温度検知信号を出力する。監視制御装置100は親機10から出力された温度検知信号による検知温度を監視しており、異常警報を出力して内部温度が上昇した生産物の存在を報知する。そして、異常警報した生産物が移動中の場合は生産ラインを停止して除去し、保管中の場合は保管部104から不良品として除去するといった対応措置を行わせる。
【0113】
なお、子機12側で双方向無線回線を確立するための閾値温度と、親機10で生産物の異常を判別するための閾値温度は、同じ閾値温度であっても良いし、後者に対し前者を低い閾値温度に設定し、異常を判定する閾値温度に達する前に双方向無線回線を確立して生産物の検知温度を制御部側に送り、制御部側で生産物の異常の有無を判定するようにしても良い。
【0114】
このような生産中及び生産完了後に生産物の状態を監視する具体的例としては、例えばリチウム電池の生産ラインがある。リチウム電池の生産ラインでは、電池本体に電解液を投入後、電池本体の温度上昇や電圧の状態を確認する必要があり、各パラメータに異常がある場合は別工程で対応する必要があることから、このようなリチウム電池のパラメータ監視に図11に示したように本発明による無線通信システムが適用できる。
【0115】
そこで電池本体に電解液を投入した後に、子機12に入力接続した温度センサや電圧センサにより温度や電圧を検知し、所定時間の間に温度が所定の閾値を超えた場合や電圧が規定値に達しないような場合に、子機10側の動作で親機10との間に双方向無線回線を確立して温度検知電文や電圧検知電文を親機10に送信して監視制御装置10に出力し、異常を判断した場合は電解液を交換するなどの修復作業を行い、修復できない場合は不良品として取り除く。
【0116】
また生産ラインにおける生産物の状態を監視する他の例としては、電気部品を実装した機器等の生産物をエポキシ樹脂で封印する生産ラインがある。生産物にエポキシ樹脂を充填した場合、エポキシ樹脂の硬化が順調に行なわれていることを監視する必要がある。このようなエポキシ樹脂の硬化の判断は、反応温度や硬度の測定値をパラメータとして扱う。
【0117】
そこでエポキシ樹脂で封印した生産物に、状態センサとして温度センサや硬度センサを設けて子機12に入力接続し、所定時間を経過しても反応温度や硬度が閾値に達しないような場合に、子機10側の動作で親機10との間に双方向無線回線を確立して温度検知電文や硬度検知電文を親機10に送信して監視制御装置100に出力し、エポキシ樹脂の硬化が順調に行なわれているか否か監視し、異常を判断した場合はエポキシ樹脂を再充填するなど修復作業を行い、修復できない場合は不良品として取り除く。
【0118】
図12は本発明による無線通信システムを適用した生産設備の他の例を平面的に示した説明図である。図12において、生産設備は監視制御装置200、生産ライン202、分岐部204、分岐生産ライン206,208で構成されている。生産ライン202は所定の生産物210を移動しながらラインに沿って配置された機器及び作業員による作業を通じて組み上げられて例えば半完成品となり、分岐部204に送り込まれ、生産物210の状態に応じて分岐ライン206,208のいずれかに分岐され、分岐ライン206,208に沿って配置された機器及び作業員による作業を通じて完成品となる。
【0119】
監視制御装置200は、生産ライン202による半完成品としての生産物210の状態、例えば内部温度を監視し、内部温度が正常であれば分岐部204を制御して分岐生産ライン206に生産物210を分岐して完成品に至る工程を行い、一方、内部温度に異常があれば、分岐生産ライン208に分岐し、内部温度の異常を解消する工程を経て完成品とし、もし内部温度の異常が解消されなければ不良品として取り除く。
【0120】
このような生産設備にあっては、生産ライン202において生産物210における特定のパラメータ、例えば内部温度などを監視する必要がある。
【0121】
そこで本発明の無線通信システムにあっては、分岐部204の分岐制御を行う監視制御装置200側に親機10を配置し、生産ライン202を移動する生産物210に子機12を配置すると共に生産物210の状態を検知する状態センサとして例えば生産物210の内部温度を測定する温度センサ212を設けて子機12に入力接続している。
【0122】
親機10及び子機12の詳細は図2の実施形態と基本的に同じであるが、子機12に状態センサとして生産物210の内部温度を検知する温度センサ212を入力接続している点で相違し、これに伴い子機制御部44は温度センサ212による検出温度が所定の閾値温度を超えたことを判別した場合、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始し、これによって親機12との間に双方向無線回線が確立し、親機10から通信開始電文を受信した場合、温度センサ212の温度検知信号に基づく温度検知電文を応答電文として親機10に送信する。
【0123】
図12の無線通信システムにおける親機と子機の間の無線通信処理も図3及び図4に示したタイムチャートと基本的に同じになる。即ち、子機12は待機状態で温度センサ108からの温度検知信号による検知温度が所定の閾値温度を超えたことを判別すると、間欠受信を連続受信に切替えると共に上り電波の送信を開始し、これによって親機12との間に双方向無線回線が確立する。
【0124】
このように双方向無線回線が確立されると、親機10は子機12に通信開始電文を送ってくることから、子機12は温度センサ212の温度検知信号に基づき温度検知電文を生成して親機10に応答電文として送信し、親機10から監視制御装置200に温度検知信号を出力する。監視制御装置200は親機10から出力された温度検知信号による検知温度を監視しており、例えば所定の閾値温度以下であれば正常と判断し、分岐部204の制御で生産物210を分岐生産ライン206に分岐し、一方、所定の閾値温度を越える温度上昇を判別した場合は温度異常と判断し、生産物210を分岐生産ライン208に分岐する。
【0125】
生産中に監視する他の項目としては生産物210の重量でもよく、重量がその生産工程段階における規定重量範囲にあれば分岐生産ライン206に分岐して完成品に至る工程を行い、一方、重量がその工程段階での規定重量範囲から外れていれば、組み立て異常として、分岐生産ライン208に分岐して不良品として取り除く。
【0126】
このような生産の途中段階で生産物の状態を監視し、生産物の状態に応じてその後の生産工程を変更する生産設備の具体的な例としては、前述したリチウム電池の生産ラインがある。リチウム電池の生産ラインでは、電池本体に電解液を投入後、電池本体の温度上昇や電圧の状態を確認する必要があり、各パラメータに異常がある場合は別工程で対応する必要がある。
【0127】
そこで生産ライン202で電池本体に電解液を投入した後に、子機12に入力接続した温度センサや電圧センサにより温度や電圧を検知し、温度が所定の閾値を超えた場合や電圧が規定値に達しないような場合に、子機10側の動作で親機10との間に双方向無線回線を確立して温度検知電文や電圧検知電文を親機10に送信して監視制御装置10に出力し、正常であれば分岐生産ライン206に分岐して完成品とし、異常な場合は電界液の交換や電極の入れ替え等といった修復工程をもつ分岐生産ライン208に分岐する。
【0128】
また図12の生産ラインにおける生産物の状態を監視して分岐する他の例としては、前述した電気部品を実装した機器等の生産物をエポキシ樹脂で封印する生産ラインにも適用できる。
【0129】
即ち、生産ライン202において生産物にエポキシ樹脂を充填した場合、エポキシ樹脂の硬化が順調に行なわれていることを監視するため、生産物に温度センサや硬度センサを設けて子機12に入力接続し、所定時間を経過しても反応温度や硬度が閾値に達しないような場合に、子機10側の動作で親機10との間に双方向無線回線を確立して温度検知電文や硬度検知電文を親機10に送信して監視制御装置10に出力し、エポキシ樹脂の硬化が順調に行なわれているか否か監視し、正常であれば分岐生産ライン206に分岐して完成品とし、異常であれば分岐生産ライン208に分岐してエポキシ樹脂の再充填等を行って修復し、修復不可の場合は不良品として取り除く。
【0130】
また図12に示した生産物の状態を検知して生産ラインを分岐する生産設備としては、同一生産ラインで機種の異なる製品を混在させて生産する生産設備や小規模多品種のフレキシブル生産設備があり、このような生産設備で特定の機種に固有な工程について分岐生産ラインを設けて分岐したりバイパスさせるような場合、制御装置側に親機10を配置し、生産品に機種情報等の状態センサ付きの子機12を設けることで、必要なタイミングで親機10と子機12の間に双方向無線回線を確立して生産物の機種や温度など状態検知電文を送信して生産物の分岐制御等を行う。この通信の確立タイミングは子機12に設けた図2と同様の振動センサ15を設けて、移動を検知した際に機種情報やそのほかの監視情報を親機側に通信して生産ラインの分岐を行うことができる。
【0131】
図13は本発明の無線通信システムを野生動物の観察に適用した実施形態の概略を示した説明図である。
【0132】
図13において、子機12は振動センサを内蔵しており、観察対象とする例えばクマなどの野生動物300に装着され、電池電源で動作する。野性動物300に対する子機12の装着には例えば首バンドを使用する。
【0133】
親機10は子機12を装着した野生動物の行動予測エリア付近に設置される。親機10の電源は電池、太陽電池、商用電源など適宜の電源が設置環境に応じて使用できる。また親機10は観察者が携帯したり、車両に搭載して移動しても良い。
【0134】
親機10は例えばネットワーク302を介して観察装置304に接続され、観測装置304は親機10から送信された野生動物の活動検知データを収集して記憶管理し、また必要に応じて時間軸に対する行動パターンを生成する。活動検知データとしては、緯度経度や高度で示す現在の位置情報、移動履歴、移動時間、停止時間、体温などの情報であり、観測する情報にあわせてセンサを備える。ネットワーク302としては携帯端末用の無線ネットワークでも良いし、適宜の有線ネットワークでも良い。
【0135】
親機10及び子機12の詳細は図2の実施形態と基本的に同じであるが、双方向無線回線で使用する周波数として野生動物の監視に適した周波数を選択し、また、子機10に対するセンサとしては振動センサ15のみを設けている。
【0136】
親機10及び子機12は、例えば送信電力1mW低下の特定小電力無線局(免許不要)または簡易無線局(免許必要)に準拠した構成を備える。
【0137】
特定小電力無線局に準拠する場合、図2と同様に、親機10は下り周波数f1=315MHzの電波を送信し、子機10は親機10から送信した下り周波数f1=315MHzの電波を受信する。これが下り無線回線となる。一方、子機12は上り周波数f2=429MHzの電波を送信し、親機10は子機12が送信した上り周波数f2=429MHzの電波を受信し、これが上り無線回線となる。なお、下り周波数f1=315MHzと上り周波数f2=429MHzの電波は所謂400MHz帯と呼ばれる。
【0138】
また簡易無線局に準拠する場合、親機10は下り周波数f1=154.45MHzの電波を送信し、子機12は親機10から送信した下り周波数f1=154.25MHzの電波を受信する。これが下り無線回線となる。一方、子機12は上り周波数f2=154.61MHzの電波を送信し、親機10は子機12が送信した上り周波数f2=154.61MHzの電波を受信し、これが上り無線回線となる。なお、下り周波数f1=154.25MHzと上り周波数f2=154.61MHzの電波は所謂150MHz帯と呼ばれる。
【0139】
観察対象とする野生動物300が生息する場所は山間地が多く、樹木や地形により電波が妨げられ、各種の検証試験結果から150MHz帯が望ましいとされており、送信電力1mWにより約500〜1000mの通信可能距離が確保可能である。一方、400MHz帯も使用可能であるが、150MHz帯に比べ通信可能距離が数百メートル以内と短めになることが報告されている。このため行動範囲の狭い野生動物については400MHz帯とし、行動範囲の広い野生動物については150MHz帯とするといった使い分けが望ましい。
【0140】
また1台の親機10では野生動物の行動範囲をカバーできないことから、複数台の親機10を分散配置するようにしても良いし、下り周波数f1の電波と上り周波数f2の電波をそれぞれ送受信する中継器を設置するようにしても良い。
【0141】
図14及び図15は、図13の野生動物の観察に適用した本発明による無線通信システムの無線通信処理を示したタイムチャートである。図14において、親機10はステップS1で待機状態にあり、待機状態にあっては下り電波の送信を停止すると共に上り電波を連続受信している。また野生動物100に設けた子機12はステップS101で待機状態にあり、この待機状態にあっては、上り電波の送信は停止し、下り電波の受信は間欠受信としている。なお、親機10は必要に応じて子機側に状態監視の問い合わせ電文を送信し、これを受けた子機12は現在の位置情報、行動履歴や電池残量などの子機側の情報を連絡する。子機12は電池駆動なので受信部を間欠駆動することで電池消耗を抑えている。
【0142】
このような親機10及び子機12の待機状態で、野生動物300が活動していると、野生動物300の動きに応じて振動センサ15がステップS201で振動を検知して子機12に出力し、子機12はステップS102で間欠受信を連続受信に切替え、ステップS103で上り電波を送信し、ステップS104で送信LEDをオンして回線確立表示を行い、ステップS105で回線確立タイマをスタートする。
【0143】
親機10はステップS2で子機12からの上り電波を受信すると、ステップS3で通信管理タイマをスタートする。続いて親機10はステップS4で下り電波を送信し、ステップS5で受信LEDをオンする。これにより親機側で回線確立表示を行う。続いてステップS6で下り電波に乗せて通信開始電文を子機12に送信する。
【0144】
子機12はステップS106で親機10からの通信開始電文を受信すると、ステップS202の振動センサ15による振動検知に基づきステップS121で野生動物300の活動を示す活動検知電文を生成して親機10に送信する。続いて図15に示すように、親機10はステップS19で子機12からの活動検知電文を受信すると、観察装置304に活動検知データを時刻情報と共に送信して記憶させる。
【0145】
親機10はステップS9で通信管理タイマのタイムアウトを検知すると、ステップS10で通信終了電文を子機12に送信する。子機12はステップS108で通信終了電文を受信すると、ステップS109で上り電波の送信を停止し、ステップS110で連続受信を間欠受信に切り替えて待機状態に移行する。親機10はステップS11で子機12からの上り電波の受信停止を検知すると、ステップS12で下り電波の送信停止に切り替えて待機状態に移行する。
【0146】
図16及び図17は、図13の野生動物の観察に適用した本発明による無線通信システムの無線通信処理の他の実施形態を示したタイムチャートであり、野生動物に設けた振動センサの振動検知信号から所定時間を越える振動停止を検知した場合に、子機と親機の間に双方向無線回線を確立して必要な電文を送受信するようにしたことを特徴とする。
【0147】
図16において、親機10はステップS1で待機状態にあり、また野生動物300に設けた子機12はステップS101で待機状態にあり、この待機状態にあっては、上り電波の送信は停止し、下り電波の受信は間欠受信としている。
【0148】
このような親機10及び子機12の待機状態で、野生動物300が活動を休止していたとすると、子機12はステップS122で例えば数日といった所定期間にわたる振動停止を検知した場合、子機12のステップS102〜S106の処理及び親機10のステップS2〜S6の処理となる図3に示したと同じ処理を通じて双方向無線回線を確立する。
【0149】
続いて子機12はステップS106で親機10からの通信開始電文の受信を検知すると、ステップS123で活動停止電文を生成して親機10に送信する。親機10は図17のステップS21で子機12からの活動停止検知電文を受信し、ステップS22で活動停止検知データを時刻情報と共に観察装置104に送信し、例えば野生動物300が冬眠に入ったことを認識処理する。
【0150】
続いて親機10はステップS9〜S12の処理、また子機12はステップS108〜S110の処理を通じて待機状態に戻るが、子機12にあっては、野生動物300が活動を停止して冬眠に入ったことから、ステップS124で待機状態における下り電波を受信する間欠受信の周期を拡大し、冬眠中における子機の消費電力を低減して電池寿命を延ばすようにする。
【0151】
勿論、ステップS124で間欠受信周期を拡大した後の待機状態で図12に示したように、野生動物が冬眠から覚めて活動を開始することで振動検知され、これに基づき子機12と親機10の間に無線通信回線が確立されて信号送受信が行われると、元の間欠受信周期に戻す。
【0152】
また、子機12に備えた緯度経度などの位置情報センサで位置を検出して、所定期間位置に変化がなかったら、通常の睡眠あるいは冬眠中であると判断して間欠受信周期を拡大するようにしても良い。
【0153】
なお本発明の無線通信システムの適用は生産設備や野生動物監視に限定されず、固定側と移動側の配置又は装置をもつ適宜の対象に適用することができる。
【0154】
また親機と子機の間で双方向無線回線を確立した状態で送受信される信号は、子機側からのセンサによる検知信号以外に、必要に応じて適宜の信号を送受信することができる。
【0155】
また上記の実施形態にあっては、子機からの上り電波を親機で受信して下り電波を送信することにより双方向無線回線を確立した後に、親機から通信開始電文を子機に送信し、子機で通信開始電文を受信してセンサによる停止位置検知や振動検知に基づく応答電文を送信しているが、親機から通信開始電文を送信せず、子機で下り電波の受信を検知したら、センサによる停止位置検知や振動検知に基づく応答電文を送信するようにしても良い。
【0156】
また上記の実施形態にあっては、親機と子機を1台ずつ設けた場合を例にとっているが、複数の生産物や野生動物の状態を監視または観察する場合には、親機から送信する下り電波と子機から送信する上り電波について複数の周波数チャンネルを準備し、親機と子機のペア毎に割当てる周波数分割多重方式とすれば良い。この場合、親機側については親機制御部を共通とし、送信回路と受信回路を複数の周波数チャンネル分設けるような構成とし、1台の親機に対し複数台の子機を対応させることができる。
【0157】
また本実施形態の無線通信システムにあっては、親機と子機との間に周波数の異なる下り無線回線と上り無線回線(双方向無線回線)を確立して、子機に入力接続しているセンサによる検知信号をリアルタイムで親機側に送って外部に出力するようにしているが、センサで検知してから無線回線を介して子機から親機に送り、更に外部の機器に出力されるまでには、所定の伝送時間が必要になることから、この伝送時間の遅れを考慮した制御処理を行うことが必要であり、同時に伝送遅れがあっても十分に対応できる制御に本実施形態の無線通信システムを適用することが必要となる。
【0158】
また図14〜図17に示した野生動物の観察に利用した本発明による無線通信システムの処理は、図1に示した生産設備にも適用できる。即ち移動側となるワーク24に子機12と振動センサ15を設け、ワーク24の移動に伴う振動検知で子機12と親機10の間に双方向無線回線を確立して必要な信号を送受信し、また生産作業が終了した場合に振動停止を検知して子機12と親機10の間に双方向無線回線を確立して必要な信号を送受信すれば良い。
【0159】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0160】
10:親機
12:子機
14:停止位置センサ
15:振動センサ
16:制御部
18:駆動部
20:搬送機構
22a〜22c:ステーション
24:ワーク(移動側)
26a〜26c:停止位置マーカ
28:親機制御部
30,48:送信部
32,46:受信部
34,50:アンテナ
36,52:操作部
38,54:表示部
40:入出力部
42:電源部
44:子機制御部
56:電池電源
300:野生動物
304:観察装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側に配置されて無線送受信部を備えた親機と、移動側に配置されて電池電源で動作する無線送受信部を備えた子機とを設け、前記親機と子機との間に下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して前記移動側の状態を通信する無線通信システムに於いて、
前記移動側の状態を検知して前記子機に状態検知信号を出力する状態センサを設け、
前記下り電波と上り電波を異なる周波数に設定し、
前記親機は待機状態で前記上り電波を連続受信しており、
前記子機は待機状態で前記下り電波を間欠受信しており、
前記子機は前記待機状態で前記状態センサの状態検知信号から所定の状態を検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波に前記状態センサの検知情報を乗せて前記親機に送信し、
前記親機は前記子機からの前記上り電波の受信を検知した場合、前記下り無線回線を確立することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、
前記親機は前記下り電波の送信を開始して前記下り無線回線を確立した後に、前記下り電波に乗せて通信開始電文を前記子機に送信し、
前記子機は前記親機からの通信開始電文の受信を検知した場合、所定の応答電文を前記上り電波に乗せて前記親機に送信し、
前記親機は前記子機からの応答電文の受信を検知した場合、前記応答電文を処理することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項2記載の無線通信システムに於いて、前記子機は、前記応答電文として前記状態センサの状態検知信号に基づく状態検知電文または他のセンサの検知信号に基づく所定の検知電文を送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、前記子機及び/又は親機に無線回線の確立を表示する表示部を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、前記親機は前記上り無線回線の確立中に所定時間のあいだ前記上り電波の受信が断たれた場合に、待機状態に移行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、前記子機は前記上り電波の送信開始から所定時間を経過しても前記親機から下り電波を受信しない場合、前記待機状態に移行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、前記状態センサは、前記移動側の振動を検知して前記子機に振動検知信号を出力する振動センサであり、
前記子機は前記待機状態で前記振動センサの振動検知信号から振動を検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波の送信を開始することを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項7記載の無線通信システムに於いて、
前記子機は前記待機状態で前記振動センサの振動検知信号から所定時間を超える振動停止検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波の送信を開始して前記上り無線回線を確立することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
固定側に配置され、移動側に配置された電池電源で動作する子機との間で下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して前記移動側の状態を通信する親機に於いて、
前記下り電波と上り電波を異なる周波数に設定して前記子機との間で送受信を行う送受信部と、
待機状態で上り電波を連続受信しており、前記子機が前記移動側の状態変化を検知して前記子機から前記上り電波の受信を検知した場合、前記下り電波の送信を開始して前記下り無線回線を確立し、前記子機からの前記状態変化を乗せた上り電波を受信して処理する親機制御部と、
を設けたことを特徴とする親機。
【請求項10】
請求項9記載の親機に於いて、前記親機制御部は、前記下り電波の送信を開始して前記下り無線回線を確立した後に、前記下り電波に乗せて通信開始電文を前記子機に送信し、前記子機からの応答電文の受信を検知した場合に、前記応答電文を処理してすることを特徴とする親機。
【請求項11】
請求項10記載の親機に於いて、前記親機制御部は、前記下り電波の送信開始から所定時間を経過しても前記子機から上り電波を受信しない場合、外部に通信障害信号を出力して前記待機状態に移行することを特徴とする親機。
【請求項12】
請求項9記載の親機に於いて、前記親機制御は、前記上り無線回線の確立中に所定時間のあいだ前記上り電波の受信が断たれた場合、前記待機状態に移行することを特徴とする親機。
【請求項13】
移動側に配置され、固定側に配置された親機との間で下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して通信する電池電源で動作する子機に於いて、
前記移動側に配置され、前記移動側の状態を検知して状態検知信号を出力する状態センサと、
前記下り電波と上り電波を異なる周波数に設定して前記親機との間で送受信を行う送受信部と、
待機状態で前記下り電波を間欠受信しており、前記待機状態で前記状態センサの状態検知信号から所定の状態を検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えて前記下り無線回線を確立すると共に前記上り電波の送信を開始して前記上り無線回線を確立して前記状態センサの検知情報を送信する子機制御部と、
を設けたことを特徴とする子機。
【請求項14】
請求項13記載の子機に於いて、前記子機制御部は、前記上り電波の送信を開始して前記下り無線回線を確立した後に、前記親機からの通信開始電文の受信を検知した場合、所定の応答電文を前記上り電波に乗せて前記親機に送信することを特徴とする子機。
【請求項15】
請求項14記載の子機に於いて、前記子機制御部は、前記応答電文として前記状態センサの状態検知信号に基づく状態検知電文または他のセンサの検知信号に基づく所定の検知電文を送信することを特徴とする子機。
【請求項16】
請求項13記載の子機に於いて、
前記状態センサは、前記移動側の振動を検知して前記子機に振動検知信号を出力する振動センサであり、
前記子機制御部は、前記待機状態で前記振動センサの振動検知信号から振動を検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波の送信を開始して前記上り無線回線を確立することを特徴とする子機。
【請求項17】
請求項16記載の子機に於いて、
前記子機制御部は、前記待機状態で前記振動センサの振動検知信号から所定時間を越える振動停止検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波の送信を開始して前記上り無線回線を確立することを特徴とする子機。
【請求項1】
固定側に配置されて無線送受信部を備えた親機と、移動側に配置されて電池電源で動作する無線送受信部を備えた子機とを設け、前記親機と子機との間に下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して前記移動側の状態を通信する無線通信システムに於いて、
前記移動側の状態を検知して前記子機に状態検知信号を出力する状態センサを設け、
前記下り電波と上り電波を異なる周波数に設定し、
前記親機は待機状態で前記上り電波を連続受信しており、
前記子機は待機状態で前記下り電波を間欠受信しており、
前記子機は前記待機状態で前記状態センサの状態検知信号から所定の状態を検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波に前記状態センサの検知情報を乗せて前記親機に送信し、
前記親機は前記子機からの前記上り電波の受信を検知した場合、前記下り無線回線を確立することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、
前記親機は前記下り電波の送信を開始して前記下り無線回線を確立した後に、前記下り電波に乗せて通信開始電文を前記子機に送信し、
前記子機は前記親機からの通信開始電文の受信を検知した場合、所定の応答電文を前記上り電波に乗せて前記親機に送信し、
前記親機は前記子機からの応答電文の受信を検知した場合、前記応答電文を処理することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項2記載の無線通信システムに於いて、前記子機は、前記応答電文として前記状態センサの状態検知信号に基づく状態検知電文または他のセンサの検知信号に基づく所定の検知電文を送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、前記子機及び/又は親機に無線回線の確立を表示する表示部を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、前記親機は前記上り無線回線の確立中に所定時間のあいだ前記上り電波の受信が断たれた場合に、待機状態に移行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、前記子機は前記上り電波の送信開始から所定時間を経過しても前記親機から下り電波を受信しない場合、前記待機状態に移行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項1記載の無線通信システムに於いて、前記状態センサは、前記移動側の振動を検知して前記子機に振動検知信号を出力する振動センサであり、
前記子機は前記待機状態で前記振動センサの振動検知信号から振動を検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波の送信を開始することを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項7記載の無線通信システムに於いて、
前記子機は前記待機状態で前記振動センサの振動検知信号から所定時間を超える振動停止検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波の送信を開始して前記上り無線回線を確立することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
固定側に配置され、移動側に配置された電池電源で動作する子機との間で下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して前記移動側の状態を通信する親機に於いて、
前記下り電波と上り電波を異なる周波数に設定して前記子機との間で送受信を行う送受信部と、
待機状態で上り電波を連続受信しており、前記子機が前記移動側の状態変化を検知して前記子機から前記上り電波の受信を検知した場合、前記下り電波の送信を開始して前記下り無線回線を確立し、前記子機からの前記状態変化を乗せた上り電波を受信して処理する親機制御部と、
を設けたことを特徴とする親機。
【請求項10】
請求項9記載の親機に於いて、前記親機制御部は、前記下り電波の送信を開始して前記下り無線回線を確立した後に、前記下り電波に乗せて通信開始電文を前記子機に送信し、前記子機からの応答電文の受信を検知した場合に、前記応答電文を処理してすることを特徴とする親機。
【請求項11】
請求項10記載の親機に於いて、前記親機制御部は、前記下り電波の送信開始から所定時間を経過しても前記子機から上り電波を受信しない場合、外部に通信障害信号を出力して前記待機状態に移行することを特徴とする親機。
【請求項12】
請求項9記載の親機に於いて、前記親機制御は、前記上り無線回線の確立中に所定時間のあいだ前記上り電波の受信が断たれた場合、前記待機状態に移行することを特徴とする親機。
【請求項13】
移動側に配置され、固定側に配置された親機との間で下り電波の送受信による下り無線回線と上り電波の送受信による上り無線回線からなる双方向無線回線を確立して通信する電池電源で動作する子機に於いて、
前記移動側に配置され、前記移動側の状態を検知して状態検知信号を出力する状態センサと、
前記下り電波と上り電波を異なる周波数に設定して前記親機との間で送受信を行う送受信部と、
待機状態で前記下り電波を間欠受信しており、前記待機状態で前記状態センサの状態検知信号から所定の状態を検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えて前記下り無線回線を確立すると共に前記上り電波の送信を開始して前記上り無線回線を確立して前記状態センサの検知情報を送信する子機制御部と、
を設けたことを特徴とする子機。
【請求項14】
請求項13記載の子機に於いて、前記子機制御部は、前記上り電波の送信を開始して前記下り無線回線を確立した後に、前記親機からの通信開始電文の受信を検知した場合、所定の応答電文を前記上り電波に乗せて前記親機に送信することを特徴とする子機。
【請求項15】
請求項14記載の子機に於いて、前記子機制御部は、前記応答電文として前記状態センサの状態検知信号に基づく状態検知電文または他のセンサの検知信号に基づく所定の検知電文を送信することを特徴とする子機。
【請求項16】
請求項13記載の子機に於いて、
前記状態センサは、前記移動側の振動を検知して前記子機に振動検知信号を出力する振動センサであり、
前記子機制御部は、前記待機状態で前記振動センサの振動検知信号から振動を検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波の送信を開始して前記上り無線回線を確立することを特徴とする子機。
【請求項17】
請求項16記載の子機に於いて、
前記子機制御部は、前記待機状態で前記振動センサの振動検知信号から所定時間を越える振動停止検知した場合、前記間欠受信を連続受信に切替えると共に前記上り電波の送信を開始して前記上り無線回線を確立することを特徴とする子機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−205055(P2012−205055A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67428(P2011−67428)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】
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