説明

無線通信システム、送信機及び通信制御方法

【課題】パイロット信号の相互相関(crosscorelation)を小さくすることが可能であり、かつ送信機及び受信機の少なくとも一方で行う処理の演算量(complexity)を低減できる無線通信システム、送信機及び通信制御方法を提供する。
【解決手段】送信機は、パイロット信号を予め定められた系列長よりも小さい素数を系列長とするZadoff−Chu系列を含む信号を逆離散フーリエ変換することで算出してデータ信号と共に送信する。受信機は、パイロット信号に基づいてデータ信号を復調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、送信機及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Beyond 3G(third generation)の上りリンク無線アクセス方式には、シングルキャリア伝送方式が有力である。シングルキャリ伝送方式については、例えば非特許文献1(Physical Layer Aspects for Evolved UTRA"(3GPP TR25.814 v0.5.0(2005−11),9.1章))に記載されている。この非特許文献1で提案されているシングルキャリア伝送方式の送信機の構成を図2に示し、またその送信機に対応する一般的な受信機の構成を図3に示す。これら図2及び図3を参照して従来の送信機及び受信機の動作の概要を説明する。
【0003】
まず、図2を参照して送信機のデータ処理回路110及びパイロット処理回路120について説明する。
【0004】
データ処理回路110において、DFT(Discrete Fourier Transformation:離散フーリエ変換)(時間領域信号を周波数領域に変換すること)回路111は、データ信号に対して、Ntx_dポイント(point)のDFT演算を実行することで、データ信号を周波数領域信号に変換する。ここで、データ信号は、符号化されたデータシンボルが1ブロックで送信されるデータブロックサイズ(=データ信号の送信フィルタ通過前サブキャリア数=Ntx_d)毎に区切られたものであり、Ntx_dシンボルからなる。
【0005】
ロールオフフィルタ回路112は、周波数領域信号に変換されたデータ信号に対して周波数領域でロールオフフィルタ処理を実行する。サブキャリアマッピング回路113は、ロールオフフィルタ回路112を通過したデータ信号を(各ユーザに指定されている)サブキャリアにマッピングする。なお、各ユーザに指定されていないサブキャリアには"0"が挿入され、合計してNdft_d個のサブキャリアのデータ信号が生成される。
【0006】
IDFT(Inverse Discrete Fourier Transformation:逆離散フーリエ変換)(周波数領域信号を時間領域に変換すること)回路114は、サブキャリアマッピング後のデータ信号(Ndft_dサブキャリアからなる信号)に対してNdft_dポイントのIDFT演算を実行することで、時間領域信号に戻す。
【0007】
サイクリックプレフィックス(Cyclic Prefix)付加回路115は、IDFTのブロック毎にサイクリックプレフィックスを付加する。サイクリックプレフィックスは、受信機における周波数領域等化処理を効果的に実行するために付加される。ここで、サイクリックプレフィックスの付加とは、図1に示すようにブロックの後部をブロックの前部にコピーする処理を指す。
【0008】
次に、パイロット処理回路120について説明する。
【0009】
パイロット処理回路120において、DFT回路121は、1ブロックで送信されるパイロット信号シンボル(シンボル数=パイロット信号の送信フィルタ通過前のサブキャリア数=パイロット系列長=パイロットブロックサイズ=Ntx_p)に対し、Ntx_pポイントのDFT演算を実行し、パイロット信号を周波数領域信号に変換する。
【0010】
このDFT回路121以降の処理は、上記のデータ信号に対する処理と同様である。つまり、ロールオフフィルタ回路122は、周波数領域信号に変換されたパイロット信号に対してロールオフフィルタ処理を実行する。サブキャリアマッピング回路123は、ロールオフフィルタ後のパイロット信号に対してサブキャリアマッピング処理を実行する。IDFT回路124は、サブキャリアマッピング後のパイロット信号(Ndft_pサブキャリアからなる信号)に対してNdft_pポイントのIDFT演算を実行し、時間領域信号に戻す。サイクリックプレフィックス付加回路125は、IDFT演算後の各ブロックにサイクリックプレフィックスを付加する。
【0011】
時分割多重回路130は、サイクリックプレフィックスが付加されたデータ信号及びパイロット信号を時分割多重し、受信機に送信する。なお、非特許文献1では、Ntx_p=Ntx_d/2に設定されている。
【0012】
次に、図3を参照して受信機のデータ処理回路150及びパイロット処理回路160について説明する。
【0013】
受信機において、サイクリックプリフィックス除去、データ・パイロット分離回路140は、受信信号からサイクリックプリフィックスを除去し、時分割多重されていた受信データ部(=受信データ信号)と受信パイロット部(=受信パイロット信号)とを分離する。また、サイクリックプリフィックス除去、データ・パイロット分離回路140は、受信データ部をデータ処理回路150に出力し、受信パイロット部をパイロット処理回路160に出力する。
【0014】
パイロット処理回路160において、DFT回路161は、サイクリックプリフィックス除去、データ・パイロット分離回路140で分離された受信パイロット部に対してNdft_pポイントのDFT演算を実行して周波数領域の受信パイロット信号に変換する。サブキャリアデマッピング回路162は、周波数領域の受信パイロット信号のサブキャリアをデマッピングし、当該ユーザが送信していたサブキャリアのみを取り出す。ロールオフフィルタ回路163は、サブキャリアがデマッピングされた受信パイロット信号にロールオフフィルタ処理を実行する。伝搬路推定回路164はロールオフフィルタ回路163を通過した受信パイロット信号を用いてサブキャリア毎の伝搬路推定を行う。
【0015】
周波数領域等化回路165は、伝搬路推定回路164で得られた伝搬路推定値を用いて、受信パイロット信号に対して周波数領域等化(各サブキャリアに重み係数を掛けて周波数領域の等化を行うこと)処理を行う。IDFT回路166は、周波数領域等化回路165を通過した受信パイロット信号に対してNtx_pポイントのIDFT演算を実行し、時間領域の受信パイロット信号に戻す。振幅推定回路167は、時間領域に戻された受信パイロット信号について振幅推定を行う。この振幅推定値は受信データ信号の復調に用いられる。
【0016】
ここで、時間領域の振幅推定値は、下記(1)式で算出される。
【0017】
【数1】

【0018】
但し、an(n=0,1,・・・,Ntx_p−1)は送信パイロット系列(時間領域)を示し、*は複素共役であることを示し、bn(n=0,1,・・・,Ntx_p−1)は等化後の受信パイロット系列を時間領域に戻した値である。
【0019】
一方、データ処理回路150において、上記のパイロット信号に対する処理同様に、DFT回路151は、サイクリックプリフィックス除去、データ・パイロット分離回路140で分離された受信データ部に対してNdft_dポイントのDFT演算を実行して周波数領域の受信データ信号に変換する。サブキャリアデマッピング回路152は、周波数領域の受信データ信号のサブキャリアをデマッピングし、当該ユーザが送信していたサブキャリアのみを取り出す。ロールオフフィルタ回路153は、サブキャリアがデマッピングされた受信データ信号にロールオフフィルタ処理を実行する。周波数領域等化回路154は、パイロット処理回路160から得られた伝搬路推定値を用いて、ロールオフフィルタ回路153を通過した受信データ信号の各サブキャリアに周波数領域等化処理を実行する。IDFT回路155は、周波数領域等化回路154を通過した受信データ信号にNtx_dポイントのIDFT演算を実行して時間領域の受信データ信号に戻す。復調部156は、時間領域に戻された周波数領域等化処理後の受信データ信号を、パイロット処理回路160から得た振幅推定値を用いて復調する。
【0020】
ここで、上記の無線伝送においては、伝送効率を高めるために多値変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が行われている。多値変調された送信信号には、無線伝搬路において、フェージングと呼ばれる無線伝搬路特有の振幅変動及び位相回転が起きる。
【0021】
したがって、受信機において受信信号を正しく復調、復号するためには、これらの変動(伝搬路推定値や振幅推定値)を正しく推定する必要がある(例えば、特許文献1参照)。なお、上述した周波数領域等化処理及び復調処理には、一般的なものが用いられる。
【0022】
一般に、DFT及びIDFTの演算量は、DFT演算及びIDFT演算のポイント数に依存する。すなわち、ポイント数が2のベキ乗数(2,4,8,…,512,1024,…)の場合は演算量が最も小さくなり、逆にポイント数が素数や大きい素数を含むような数の場合は演算量が大きくなる。したがって、DFT及びIDFTの演算量を考慮して、送信機のIDFT演算及び受信機のDFT演算のポイント数Ndft_d(データ)及びNdft_p(パイロット)は、それぞれ2のベキ乗数に設定されることが望ましい。例えば、非特許文献1では、システム帯域が5MHzの場合、Ndft_d=512(=2の9乗)、Ndft_p=256(2の8乗)に設定されている。ここで、Ndft_p=Ndft_d/2の関係が成り立つことは、パイロット信号のサブキャリア間隔がデータ信号のサブキャリア間隔の2倍であることを意味している。
【0023】
なお、非特許文献1では、パイロット信号のサブキャリア間隔がデータ信号のサブキャリア間隔の2倍であることから、データブロックサイズNtx_d及びパイロットブロックサイズNtx_pが、Ntx_p=Ntx_d/2となるように設定されている。
【0024】
一方、パイロット信号としては、"CAZAC(Constant Amplitude Zero Auto−Correlation)系列"の一つである、Zadoff−Chu系列が注目されている。
【0025】
Zadoff−Chu系列ckは、下記(2)式で表される。
【0026】
【数2】

【0027】
(2)式において、nは0,1,・・・,Ntx_p−1であり、qは任意の整数である。なお、Zadoff−Chu系列については、例えば非特許文献2(K.Fazel and S.Keiser,"Multi−Carrier and Spread Spectrum Systems"(John Wiley and Sons,2003))に詳細に記載されている。
【0028】
"CAZAC系列"とは、時間領域及び周波数領域において振幅が一定(Constant Amplitude)であり、かつ周期的自己相関値が0以外の時間ずれに対して常に0(Zero Auto−Correlation)となる信号系列である。この"CAZAC系列"は、時間領域で振幅が一定であることから、PAPR(Peak to Average Power Ratio:ピーク対平均雑音電力比)を小さくできる。また、"CAZAC系列"は、周波数領域においても振幅が一定であることから、周波数領域における伝搬路推定に適する信号系列である。ここで、PAPRが小さいことは消費電力が少なくなることを意味し、この性質は特に移動通信で好まれる。
【0029】
さらに、"CAZAC系列"は、完全な自己相関特性があることから、受信信号のタイミング検出が容易である利点を備え、Beyond 3Gの上りアクセス方式であるシングルキャリア伝送に適するパイロット系列として注目されている。
【0030】
ところで、この"CAZAC系列"をセルラー環境で用いる場合、相互相関特性も重要となる。すなわち、他セルからの干渉波を抑圧する観点から、相互相関値が小さい系列の組を、隣接セル間のパイロット信号に割り当てることが望ましい。なお、"CAZAC系列"の相互相関特性は、その信号系列に大きく依存する。つまり、系列長に素数や大きな素数を含む場合は、相互相関特性が非常によい(相互相関値が小さい)。逆に、小さい素数のみから構成される合成数(例えば、2や3のベキ乗数)は、相互相関特性が大きく劣化する(相互相関値に大きな値が含まれる)。
【0031】
具体的には、Zadoff−Chu系列の系列長が素数の場合、任意の系列どうしの相互相関値は、常に1/√N(Nは系列長で、今は素数)に保たれる(非特許文献2参照)。したがって、例えば、系列長N=127の場合は、相互相関値が常に1/√127となり、系列長N=128の場合は、相互相関値の最悪値(最大値)が1/√2となる。よって、パイロット信号には、シンボル数Ntx_pとして、素数や大きな素数を含む数が望ましく、2,3,5等の小さい素数のみから構成される合成数は望ましくない。
【0032】
なお、パイロット信号として、上述したZadoff−Chu系列のような特性を備えた信号系列を用い、パイロット信号の相互相関を小さくするために、そのシンボル数として素数や大きな素数を含む数を選択した場合、パイロット信号に必要な送信機で実行するDFTや受信機で実行するIDFTの演算量(complexity)が非常に大きくなるという問題がある。つまり、送信機及び受信機の少なくとも一方で行う処理の演算量(complexity)が増大してしまう。これは、上述したように、一般に、DFT及びIDFTの演算量は、そのポイント数が素数または大きな素数を含む数である場合に、非常に大きくなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2004−260774号公報
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】Physical Layer Aspects for Evolved UTRA"(3GPP TR25.814 v0.5.0(2005−11),9.1章)
【非特許文献2】K.Fazel and S.Keiser,"Multi−Carrier and Spread Spectrum Systems"(John Wiley and Sons,2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明は上述したような背景技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、パイロット信号の相互相関(crosscorelation)を小さくすることが可能であり、かつ送信機及び受信機の少なくとも一方で行う処理の演算量(complexity)を低減できる無線通信システム、送信機及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【0036】
なお、パイロット信号の相互相関(crosscorelation)を小さくすることが可能であり、かつDFT及びIDFTの演算量を小さくすることができる無線通信システム、送信機及び通信制御方法を提供することも本発明の目的の一つである。
【0037】
また、単に送信機または受信機の少なくとも一方で行う処理の演算量を低減する無線通信システム、送信機及び通信制御方法を提供することも本発明の目的の一つである。
【0038】
さらに、単にDFT演算またはIDFT演算の演算量を小さくすることができる無線通信システム、送信機及び通信制御方法を提供することも本発明の目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記目的を達成するため本発明の無線通信システムは、データ信号と、パイロット信号とを送信する送信機と、
前記パイロット信号を基に前記データ信号を復調する受信機と、
を有し、
前記送信機は、前記パイロット信号を、予め定められた系列長よりも小さい素数を系列長とするZadoff−Chu系列を含む信号を逆離散フーリエ変換することにより算出する構成である。
【0040】
また、本発明の送信機は、データ信号と、パイロット信号とを送信する送信回路と、
前記パイロット信号を、予め定められた系列長よりも小さい素数を系列長とするZadoff−Chu系列を含む信号を逆離散フーリエ変換することにより算出する処理回路と、
を有する。
【0041】
また、本発明の通信制御方法は、無線通信システムの送信機における通信制御方法であって、
データ信号と、パイロット信号とを送信し、
前記パイロット信号を、予め定められた系列長よりも小さい素数を系列長とするZadoff−Chu系列を含む信号を逆離散フーリエ変換することにより算出する方法である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、パイロット信号の相互相関(crosscorelation)を小さくすることが可能であり、かつ送信機及び受信機の少なくとも一方で行う処理の演算量(complexity)を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1はサイクリックプレフィックス付加処理を示す模式図である。
【図2】図2は従来の送信機の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は従来の受信機の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は本発明の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図5】図5は図4に示した送信機の第1実施例の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は図4に示した受信機の第1実施例の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は図4に示した送信機の第2実施例の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は図4に示した受信機の第2実施例の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は本発明の無線通信システムの第3実施例で実行するロールオフフィルタ処理を示す模式図である。
【図10】図10は本発明の他の実施例の送信機の構成を示すブロック図である。
【図11】図11は本発明の他の実施例の受信機の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は本発明の他の実施例の送信機の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は本発明の他の実施例の受信機の構成を示すブロック図である。
【図14】図14は本発明の他の実施例の効果を示すグラフである。
【図15】図15は図14に示したグラフのシミュレーションに用いたパラメータを示すテーブル図である。
【図16】図16は本発明の第4実施例の送信機の構成を示すブロック図である。
【図17】図17は本発明の第4実施例の受信機の構成を示すブロック図である。
【図18】図18は本発明の第4実施例におけるパイロットブロックサイズの選択方法の手順を示すフローチャートである。
【図19】図19は第4実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図20】図19に示したグラフのシミュレーションに用いたパラメータを示すテーブル図である。
【図21】図21は本発明の第4実施例におけるデータブロックサイズに対するパイロットブロックサイズの例を示すテーブル図である。
【図22】図22は本発明の第4実施例におけるデータブロックサイズに対するパイロットブロックサイズの例を示すテーブル図である。
【図23】図23は本発明の第5実施例の送信機の構成例を示すブロック図である。
【図24】図24は本発明の第5実施例の受信機の構成例を示すブロック図である。
【図25】図25は本発明の第6実施例におけるZadoff−Chuシーケンス長の選択方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に本発明について図面を用いて説明する。
【0045】
図4は本発明の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【0046】
図4に示すように、本発明の無線通信システムは、送信機101及び受信機102を備えた構成である。
【0047】
本発明の無線通信システムは、従来の技術で必要としていたデータブロックサイズとパイロットブロックサイズとに関する条件、例えば、"Ntx_p=Ntx_d/2"を無くす。そして、データブロックサイズNtx_dには、データ信号に対して送信機で実行するDFT演算及び受信機で実行するIDFT演算による演算量を低減するために、DFT演算またはIDFT演算のポイント数(例えば、Ntx_d=256=2の8乗等)をNtx_dに設定する。
【0048】
また、本発明の無線通信システムでは、パイロットブロックサイズNtx_pに、Zadoff−Chu系列(非特許文献2参照)のような特性を備えた信号系列を用いる。
【0049】
この信号系列には、低い相互相関値を得られるように、素数または大きい素数を含む数を設定する。しかし、データブロックサイズNtx_d及びパイロットブロックサイズNtx_pを設定しただけでは、Ntx_pが素数または大きい素数を含む数であるから、パイロット信号に対して送信機で実行するDFT演算及び受信機で実行するIDFT演算の演算量が増加する問題が残る。これは、Ntx_pが素数または大きい素数を含む数だからである。この問題は、さらに従来の送信機及び受信機で必要であったパイロット信号に対するDFT演算及びIDFT演算を完全になくすことで解決できる。
【0050】
具体的には、以下に記載する方法を採用することで、パイロット信号に対する送信機で実行するDFT演算及び受信機で実行するIDFT演算を無くすことができる。
【0051】
まず、送信機における解決法、つまり送信機におけるパイロット信号のDFT演算を無くす方法について説明する。
【0052】
本発明による無線通信システムでは、パイロット信号のDFT演算後の系列(周波数領域のパイロット系列)を事前に計算しておき、その計算値をメモリ等に格納しておく。これにより送信機におけるパイロット信号に対するDFT演算を実行しなくて済む。このように、周波数領域のパイロット系列を事前に用意することは、パイロット信号が既知系列であるために可能である。
【0053】
また、パイロット信号のDFT演算後の系列を式によって明示的に表せる場合、その式さえメモリ等に格納しておけば、送信機においてパイロット信号のDFT演算を実行する必要がなくなる。例えば、パイロット信号がZadoff−Chu系列の場合、上記(2)式を時間系列とみなすと、その周波数領域の系列は、下記(3)式で表される。
【0054】
【数3】

【0055】
したがって、上記(3)式をメモリ等に格納しておけば、通信時に通知されるパラメータを用いて周波数領域のパイロット系列を(3)式を用いて簡単に計算できる。なお、(3)式において、Ck(n)はZadoff−Chu系列の周波数領域を表現し、ck(n)はZadoff−Chu系列の時間領域を表現している。
【0056】
次に、受信機における解決法、つまり受信機におけるパイロット信号のIDFT演算を無くす方法について説明する。
【0057】
本発明の無線通信システムでは、受信機にも送信機と同様に周波数領域でのパイロット系列を保持するメモリを備えておく。このように周波数領域のパイロット系列を保持するメモリを備えることは、上記のようにパイロット信号が既知系列であるために可能である。さらに、本発明の無線通信システムでは、従来の時間領域で推定していた振幅推定を、周波数領域で実現することで受信機のIDFT演算を完全に無くすことが可能になる。
【0058】
従来の受信機では、復調時に必要な振幅情報を求めるために、受信パイロット信号を周波数領域で伝搬路等化処理した後、IDFT演算を実行して時間領域の信号に戻し、その信号と送信機の時間領域のパイロット系列との相関値を求めている。具体的には、周波数領域での振幅推定値は下記(4)式で算出される。
【0059】
【数4】

【0060】
この値は上記(1)式で得られる時間領域の振幅推定値と全く等しい。
【0061】
本発明の無線通信システムによれば、パイロット系列長Ntx_pに関わらず、送信機で実行するDFT演算または受信機で実行するIDFT演算の少なくとも一方の演算量を低減できる。例えばパイロット系列長Ntx_pとして素数が選択された場合でも、送信機で実行するDFT演算や受信機で実行するIDFT演算の演算量を低減できる。
(第1実施例)
図5に示すように、第1実施例の送信機は、データ処理回路1、パイロット処理回路2及び時分割多重回路3を備えている。
【0062】
データ処理回路1は、不図示のデータ符号化回路、DFT回路11、ロールオフフィルタ回路12、サブキャリアマッピング回路13、IDFT回路14及びサイクリックプレフィックス(Cyclic Prefix)付加回路15を備えている。
【0063】
パイロット処理回路2は、周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリ21、ロールオフフィルタ回路22、サブキャリアマッピング回路23、IDFT回路24及びサイクリックプレフィックス付加回路25を備えている。
【0064】
第1実施例の送信機において、データ処理回路1の構成及び動作は図2に示した従来の送信機のデータ処理回路110と同様である。また、パイロット処理回路2の構成及び動作は、DFT回路121の代わりにメモリ21を設けた以外は、図2に示した従来の送信機のパイロット処理回路120と同様である。
【0065】
つまり、データ処理回路部1において、DFT回路11は、データ信号に対してNtx_dポイント(point)のDFT演算を実行することで、データ信号を周波数領域信号に変換する。ここで、データ信号は、符号化されたデータシンボルが、1ブロックで送信されるデータブロックサイズ(=Ntx_d)毎に区切られたものであり、Ntx_dシンボルからなる。本実施例では、データブロックサイズがロールオフフィルタ回路12を通過する前のサブキャリア数と一致する。
【0066】
ロールオフフィルタ回路12は、周波数領域信号に変換されたデータ信号に対して周波数領域でロールオフフィルタ処理を実行する。サブキャリアマッピング回路13は、ロールオフフィルタ回路12を通過したデータ信号を(各ユーザに指定されている)サブキャリアにマッピングする。なお、各ユーザに指定されていないサブキャリアには"0"が挿入され、合計してNdft_d個のサブキャリア分のデータ信号が生成される。
【0067】
IDFT回路14は、サブキャリアマッピング後のデータ信号(Ndft_d個のサブキャリアからなる信号)に対してNdft_dポイントのIDFT演算を実行することで、時間領域信号に戻す。サイクリックプレフィックス付加回路15は、IDFT演算後の各ブロックにサイクリックプレフィックスを付加する。サイクリックプレフィックスは、受信機における周波数領域等化処理を効果的に実行するために付加される。
【0068】
次に、パイロット処理回路2について説明する。
【0069】
パイロット処理回路2において、メモリ21には周波数領域のパイロット系列が予め格納される。ここで、周波数領域のパイロット系列とは、1ブロックで送信されるパイロット信号のシンボル(シンボル数=系列長=パイロットブロックサイズ=パイロット信号の送信フィルタ通過前のサブキャリア数=Ntx_p)に対し、Ntx_pポイントのDFT演算を実行して周波数領域信号に変換されたパイロット信号である。本実施例では、パイロットブロックサイズがロールオフフィルタ回路22を通過する前のサブキャリア数と一致する。
【0070】
このメモリ21で保持されたパイロット系列に対して、上記のデータ信号に対する処理と同様の処理が実行される。つまり、ロールオフフィルタ回路22は、メモリ21で保持されたパイロット系列にロールオフフィルタ処理を実行する。サブキャリアマッピング回路23は、ロールオフフィルタ後のパイロット系列にサブキャリアマッピング処理を実行する。IDFT回路24は、サブキャリアマッピング後のパイロット系列にNdft_pポイントのIDFT演算を実行し、時間領域のパイロット系列に変換する。サイクリックプレフィックス付加回路25は、時間領域に変換されたパイロット系列にサイクリックプリフィックスの付加処理を実行する。
【0071】
時分割多重回路3は、サイクリックプレフィックスが付加されたデータ信号及びパイロット信号(パイロット系列)を時分割多重し、受信機に送信する。なお、非特許文献1では、Ntx_p=Ntx_d/2に設定されている。
【0072】
図6に示すように、第1実施例の受信機は、サイクリックプレフィックス除去、データ・パイロット分離回路4、データ処理回路5及びパイロット処理回路6を備えている。
【0073】
データ処理回路5は、DFT回路51、サブキャリアデマッピング回路52、ロールオフフィルタ回路部53、周波数領域等化回路4、IDFT回路55及び復調回路56を備えている。また、パイロット処理回路6は、DFT回路61、サブキャリアデマッピング回路62、ロールオフフィルタ回路63、伝搬路推定回路64、周波数領域等化回路65、振幅推定回路(周波数領域)66及び周波数領域でのパイロット系列を保持するメモリ67を備えている。
【0074】
第1実施例の受信機において、データ処理回路5の構成及び動作は図3に示した従来の受信機のデータ処理回路150と同様である。また、パイロット処理回路6の構成及び動作は、IDFT回路166の代わりにメモリ67を設けた以外は、図3に示した従来の受信機のパイロット処理回路160と同様である。
【0075】
つまり、サイクリックプレフィックス除去、データ・パイロット分離回路4は、受信したデータからサイクリックプリフィックスを除去する。また、サイクリックプレフィックス除去、データ・パイロット分離回路4は、時分割多重されていたデータ部とパイロット部とを分離し、データ部(受信データ信号)をデータ処理回路5に出力し、パイロット部(受信パイロット信号)をパイロット処理回路6に出力する。
【0076】
パイロット処理回路6において、DFT回路61は、入力された受信パイロット信号にNdft_pポイントのDFT演算を実行して周波数領域の受信パイロット信号に変換する。サブキャリアデマッピング回路62は、周波数領域に変換された受信パイロット信号のサブキャリアをデマッピングし、当該ユーザが送信していたサブキャリアのみを抽出する。ロールオフフィルタ回路63はサブキャリアがデマッピングされた受信パイロット信号にロールオフフィルタ処理を実行する。伝搬路推定回路64はロールオフフィルタ回路63を通過した受信パイロット信号を用いてサブキャリア毎の伝搬路推定を行う。
【0077】
周波数領域等化回路65は、伝搬路推定回路64で得られた伝搬路推定値を用いて、受信パイロット信号に対する周波数領域等化(各サブキャリアに重み係数を掛けて周波数領域の等化を行うこと)処理を実行する。ここで、メモリ67には、周波数領域のパイロット系列が予め格納されている。周波数領域のパイロット系列とは、1ブロックで送信されるパイロット信号シンボル(シンボル数=系列長=Ntx_p)にNtx_pポイントのDFT演算を実行して周波数領域に変換したものである。振幅推定回路66は、メモリ67に保持された周波数領域のパイロット系列を用いて、受信パイロット信号の周波数領域における振幅推定を行う。さらに、振幅推定回路66はその振幅推定値を、受信データ信号の復調に用いるために、データ処理回路5の復調回路56に出力する。
【0078】
データ処理回路5において、DFT回路51は、入力された受信データ信号にNdft_dポイントのDFT演算を実行し、周波数領域のデータ信号に変換する。サブキャリアデマッピング回路52は、周波数領域に変換した受信データ信号にサブキャリアデマッピング処理を実行する。ロールオフフィルタ回路53は、サブキャリアがデマッピングされた受信データ信号にロールオフフィルタ処理を実行する。
【0079】
周波数領域等化回路54は、パイロット処理回路6から得られた伝搬路推定値を用いて、ロールオフフィルタ回路53を通過した受信データ信号に周波数領域等化処理を実行する。IDFT回路55は、周波数領域等化回路54を通過した受信データ信号にNtx_dポイントのIDFT演算を実行して時間領域の受信データ信号に戻す。復調回路56は、パイロット処理回路6から得られる振幅推定値を用いて、時間領域信号に戻された受信データ信号を復調する。
【0080】
次に、図5及び図6を参照して第1実施例の送信機及び受信機の動作について説明する。なお、以下では図2及び図3に示した従来の送信機及び受信機の動作との違いについてのみ説明する。
【0081】
本実施例では、例えばシステム帯域が5MHzとする。また、本実施例では、データ信号に対して送信機で実行するIDFT演算及び受信機で実行するDFT演算のポイント数Ndft_dと、パイロット信号に対して送信機で実行するIDFT演算及び受信機で実行するDFT演算のポイント数Ndft_pとを、非特許文献1と同様にNdft_d=512、Ndfx_p=256に設定するものとする。
【0082】
さらに、本実施例では、データ信号に対して送信機で実行するDFT演算及び受信機で実行するIDFT演算のポイント数Ntx_d(=データブロックサイズ)を、DFTの演算量の観点から2のベキ乗数、例えばNtx_d=256(=2の7乗)に設定する。さらに、本実施例では、パイロット信号として、上述したZadoff−Chu系列を用いる。パイロットブロックサイズNtx_pは相互相関特性の観点から、素数、例えばデータブロックサイズの半分(=128)に最も近い素数である127に設定する。
【0083】
本実施例の送信機と従来の送信機の違いは、パイロット処理回路2において、メモリ21に周波数領域でのパイロット系列が予め格納され、サブキャリアマッピング回路23がメモリ21に格納された周波数領域でのパイロット系列をサブキャリアマッピングする点である。ここで、従来の送信機は、時間領域で定義されたパイロットシンボルにNtx_pポイントのDFT演算を実行することで周波数領域に変換した後、サブキャリアマッピングを行っている。
【0084】
一方、本実施例の受信機と従来の受信機との違いは、上記(4)式を用いて周波数領域等化処理後の受信パイロット信号と周波数領域における送信パイロット系列との相関値を求めることで、周波数領域で振幅推定を行う点である。また、本実施例の受信機では、周波数領域の振幅推定に用いる周波数領域における送信パイロット系列を保持するためのメモリ67を備えた点で従来の受信機と異なる。ここで、従来の受信機では、(1)式を用いてNtx_pポイントのIDFT演算を実行して時間領域に変換した周波数領域等化処理後の受信パイロット信号と、時間領域のパイロット系列との相関値を求めることで、時間領域で振幅推定を行う。
【0085】
本実施例では、非特許文献1と同様に、データとパイロットのサブキャリア間隔の比が1:2の場合を例にして説明したが(データのサブキャリア間隔=15kHz、パイロット=30kHz)、本発明は、データとパイロットのサブキャリア間隔比がいかなる値であっても適用できる。
【0086】
また、以下の記述は他の実施例についても同様に適用可能である。
【0087】
例えば、データとパイロットのサブキャリア間隔の比が1:1の場合(例えば、データのサブキャリア間隔=パイロットのサブキャリア間隔=15kHz)、データブロックサイズ=256、パイロットブロックサイズ=257(256に最も近い素数)と設定することで、同様の効果が得られる。または、データブロックサイズ=256、パイロットブロックサイズ=251(256以下で最も近い素数)と設定しても同様の効果が得られる。
【0088】
さらに、データとパイロットのサブキャリア間隔の比が2:1の場合(例えば、データのサブキャリア間隔=30kHz、パイロットのサブキャリア間隔=15kHz)、データブロックサイズ=128、パイロットブロックサイズ=257または251等に設定することで、同様の効果が得られる。
【0089】
以下、本実施例における異なるパラメータ設定例を示す。
【0090】
本実施例では、DFTの演算量の観点からデータブロックサイズNtx_dとして2のベキ乗数を選んでいるが、Ntx_dは2のベキ乗数のみに制限されない。DFT演算の演算量が大きくてもよい場合等では、データブロックサイズNtx_dに2のベキ乗数以外を選ぶことも可能である。
【0091】
また、本実施例では、Zadoff−Chu系列の相互相関値の観点からパイロットブロックサイズNtx_pとして素数を選択している(Ntx_p=127の場合、相互相関値が1/√127に抑えられる)が、Ntx_pは素数のみに制限されない。
【0092】
パイロットブロックサイズとして、素数以外の数、例えば大きな素数を含む数を選択しても、上記と同様の効果(相互相関特性の良い環境)が得られる。
【0093】
例えば、要求される相互相関値に応じて、Ntx_p=122(=61×2、61は素数、この時の相互相関値≦1/√61)、Ntx_p=134(=67×2、67は素数、この時の相互相関値≦1/√67)、Ntx_p=124(=31×4、31は素数、この時の相互相関値≦1/√31)等を選択してもよい。さらに、要求される相互相関値によって上記以外の数値をNtx_pとして選択することも可能である。
【0094】
さらに異なるパラメータの設定例として、システム帯域幅が上述した設定例の半分の2.5MHzである場合がある。
【0095】
この場合、データ信号に対して送信機で実行するIDFT演算及び受信機で実行するDFT演算のポイント数Ndft_d、並びにパイロット信号に対して送信機で実行するIDFT演算及び受信機で実行するDFT演算のポイント数Ndft_pは、非特許文献1に記載に従うと、Ndft_d=256、Ndft_p=128(システム帯域が5MHzの場合の半分の値)に設定される。
【0096】
ここでは、データ信号に対して送信機で実行するDFT演算及び受信機で実行するIDFT演算のポイント数Ntx_d(=データブロックサイズ)は、DFTの演算量の観点から2のベキ乗数、例えばNtx_d=128(システム帯域が5MHzの場合の半分の値)に設定する。また、パイロット信号として上述したZadoff−Chu系列を用いる場合、パイロットブロックサイズNtx_pは、相互相関特性の観点から素数を選ぶと、例えばデータブロックサイズの半分(=64)に最も近い素数である61または67に設定してもよい。
【0097】
システム帯域が2.5MHzの場合、このようなパラメータ設定で上記と同様のシステムを実現できる。本実施例では、システム帯域が5MHz及び2.5MHzである場合を例にして説明したが、システム設計に応じてシステム帯域の値を5MHz及び2.5MHz以外の値とすることも可能である。
【0098】
このように、本実施例では、送信機が備えるメモリ21によってサブキャリアマッピングする(周波数領域の)パイロット信号を事前に保持しているため、時間領域のパイロット信号にNtx_pポイントのDFT演算を実行して周波数領域信号に変換する処理、つまり従来の技術では必須であった処理を省略できる。
【0099】
また、本実施例では、受信機が振幅推定を周波数領域で行っているため、周波数領域等化処理後の受信パイロット信号にNtx_pポイントのIDFT演算を実行して時間領域に変換する処理、つまり従来の技術では必須であった処理を省略できる。
【0100】
上記の効果は、送信機及び受信機が備えるパイロット処理回路2,6において、Ntx_pポイントのDFT演算及びIDFT演算が省略可能であることを意味している。すなわち、パイロットブロックサイズとして素数を用いるとDFT演算及びIDFT演算に要する演算量が非常に大きくなるが、本実施例では、それらの演算を省略できる。また、送信機または受信機の少なくとも一方で行う処理の演算量を低減できることも本実施例の効果の一つである。さらに、単にDFT演算またはIDFT演算の少なくとも一方の演算量を小さくできることも本実施例の効果の一つである。
(第2実施例)
図7に示すように、第2実施例の送信機は、周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリ21を、周波数領域でのパイロット系列を表す式(周波数領域の表現式)からパイロット系列を計算する回路26を含むパイロット処理回路2aに置き換えた以外は、図5に示した第1実施例の送信機と同様の構成である。図7では、第1実施例の送信機と同一の構成要素には同一の符号を付与している。また、第1実施例の送信機と同一の構成要素の動作は上述した第1実施例と同様である。
【0101】
図8に示すように、第2実施例の受信機は、周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリ67を備えるパイロット処理回路6を、周波数領域でのパイロット系列を表す式(周波数領域の表現式)からパイロット系列を計算する回路68を含むパイロット処理回路6aに置き換えた以外は、図6に示した第1実施例の受信機と同様の構成である。図8では、第1実施例の受信機と同一の構成要素には同一の符号を付与している。また、第1実施例の受信機と同一の構成要素の動作は上述した第1実施例と同様である。
【0102】
第1実施例では、送信機が備えるメモリ21により、時間領域のパイロット信号をDFT演算した信号系列(周波数領域のパイロット系列)を保持している。
【0103】
第2実施例では、パイロット系列にZadoff−Chu系列のような系列を用いる場合、その周波数領域を式によって完全に表現できる(具体的には、(3)式で表せる)ことに着目し、送信機では、周波数領域でのパイロット系列ではなく、周波数領域の表現式を、その処理を実行する回路を備えることで保持する。
【0104】
本実施例の送信機は、パイロット送信時に(3)式から周波数領域でのパイロット系列を直接計算し、算出した周波数領域のパイロット系列を送信する。
【0105】
同様に、本実施例の受信機は、パイロット処理回路6aにて、周波数領域でのパイロット系列ではなく、周波数領域の表現式((3)式)を保持している。そして、本実施例の受信機は、(3)式から周波数領域でのパイロット系列を直接計算し、算出した周波数領域のパイロット系列を振幅推定に用いる。
【0106】
本実施例では、パイロット信号をDFT演算した系列(周波数領域のパイロット系列)をメモリ21,67で保持するのではなく、周波数領域の表現式のみを保持することで、送信機及び受信機で所要のメモリ容量を低減できる。
【0107】
なお、図7及び図8では、周波数領域の表現式のみを保持しておき、その表現式からパイロット系列を計算する回路26,68を例示している。しかしながら、これらの回路を周波数領域の表現式のみを保持するメモリに置き換えることも可能である。その場合、振幅推定回路66によりメモリに保持された周波数領域の表現式からパイロット系列を計算すればよい。
【0108】
また、本実施例では、送信機及び受信機の両方に周波数領域の表現式からパイロット系列を計算する回路26,68を設けている。しかしながら、送信機または受信機のいずれか一方に周波数領域の表現式からパイロット系列を計算する回路を備え、他方に周波数領域のパイロット系列を保持するメモリを備えていてもよい。
(第3実施例)
第3実施例の無線通信システムは、上述した第1実施例または第2実施例で示した送信機または受信機において、ロールオフフィルタ回路通過後のデータ信号とパイロット信号の送信帯域が等しくなるように、データ部のロールオフ率とパイロット部のロールオフ率とを調整する処理を実行する例である。
【0109】
例えば、パイロット信号のサブキャリア間隔がデータ信号のサブキャリア間隔の2倍である場合(非特許文献1参照)、データ信号及びパイロット信号の送信帯域は、
ロールオフフィルタ回路通過後のデータ信号の送信帯域
=Ntx_d×A×(1+ロールオフ率α)
ロールオフフィルタ回路通過後のパイロット信号の送信帯域
=Ntx_p×2A×(1+ロールオフ率α)
で表される。但し、Aはデータ信号のサブキャリア間隔であり、ロールオフ率αは0≦α≦1の範囲で適当な値に設定される。例えば、上記の非特許文献1では、A=15kHzに設定されている。
【0110】
したがって、従来のように(非特許文献1参照)、データブロックサイズNtx_dとパイロットブロックサイズNtx_pの比を2:1に設定すれば、上記式からロールオフ率αに関わらず、データ信号の送信帯域とパイロット信号の送信帯域とが常に等しくなる。この場合、データ信号の送信に用いる全てのサブキャリアの帯域でパイロット信号が送信されるため、データ信号の送信に用いる全てのサブキャリアの伝搬路推定値が得られる。
【0111】
しかしながら、例えば第1実施例で示したNtx_d=128、Ntx_p=61(システム帯域=2.5MHz)の例では、データ送信帯域とパイロット送信帯域は、
ロールオフフィルタ回路通過後のデータ信号の送信帯域
=128×15×(1+0.22)
=2342.4kHz(=2.3424MHz)
ロールオフフィルタ回路通過後のパイロット信号の送信帯域
=61×30×(1+0.22)
=2232.6kHz(=2.2326MHz)
になり(ロールオフ率α=0.22と設定した場合)、パイロット信号の送信帯域がデータ信号の送信帯域よりも小さくなる。その結果、データ信号の送信に用いるサブキャリアの一部で伝搬路推定値が得られない問題が生じる。
【0112】
そこで、本実施例ではロールオフフィルタ回路通過後のデータ信号の送信帯域(送信に用いるサブキャリア数)とパイロット信号の送信帯域とが等しくなるように、データ信号とパイロット信号を通過させるロールオフフィルタ回路のロールオフ率を独立して設定することで、このような問題を解決する。すなわち、
ロールオフフィルタ回路通過後のデータ信号の送信帯域
=Ntx_d×A×(1+データ信号のロールオフ率)
=パイロットの送信帯域
=Ntx_p×2×A×(1+パイロット信号のロールオフ率)
の関係が成り立つように、データ信号及びパイロット信号のロールオフ率を設定する。
【0113】
上記例では、データ信号のロールオフ率を0.22に設定した場合、パイロット信号のロールオフ率を0.28に設定すれば、データ信号とパイロット信号の送信帯域が2.3424MHzとなり、上記式が成り立つ。すなわち、図9に示すように、データ信号とパイロット信号の送信帯域が等しくなり、データ信号の送信に用いる全ての帯域においてパイロット信号が送信されるため、データ信号の送信に用いる全てのサブキャリアの伝搬路推定値が得られる。
【0114】
このように、本実施例では、ロールオフフィルタ回路通過後のデータ信号及びパイロット信号の送信帯域(送信に用いるサブキャリア数)が等しくなるように、データ信号及びパイロット信号のロールオフ率を設定することで、ロールオフフィルタ回路通過前のパイロット信号の送信帯域がデータ信号の送信帯域よりも小さい場合でも、受信機ではデータ信号の送信に用いている全てのサブキャリアの伝搬路推定値が得られる。
【0115】
なお、本発明は上述した各実施例を単独で適用することも可能であり、組み合わせて適用することも可能である。また、本発明は、送信機が移動局(例えば、UE:User Equipment)であり、受信機が基地局(例えば、Node−B)である上り伝送だけでなく、送信機が基地局であり、受信機が移動局である下り伝送にも適用できる。
【0116】
また、上述した各実施例で示した送信機のデータ処理回路1、送信機のパイロット処理回路2,2a、時分割多重回路3、サイクリックプレフィックス除去、データ・パイロット分離回路4、受信機のデータ処理回路5、受信機のパイロット処理回路6,6a、DFT回路11,51,61、ロールオフフィルタ回路12,22,53,63、サブキャリアマッピング回路13,23、IDFT回路14,24,55、サイクリックプレフィックス付加回路15,25、周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリ21、周波数領域パイロット系列を表す式からパイロット系列を計算する回路26,68、サブキャリアデマッピング回路52,62、周波数領域等化回路54,65、復調回路56、伝搬路推定回路64、振幅推定回路(周波数領域)66及び周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリ67の機能は、各種の論理回路やメモリ等を備えたLSI等のハードウェア回路によって実現してもよく、プログラムにしたがって処理を実行するCPUを備えた処理装置(コンピュータ)によって実現してもよい。各実施例で示した回路の機能を処理装置で実現する場合、処理装置にプログラムを格納するための記録媒体を備え、該プログラムにしたがってCPUにより処理を実行することで、各実施例で示した回路の機能を実現することができる。また、これらハードウェア回路と処理装置の組み合わせによって上述した各実施例で示した回路の機能を実現することも可能である。
【0117】
Zadoff−Chu CAZAC系列(sequence)は、例えば非特許文献3(R1−051062,"On Uplink Pilot in EUTRA SC−FDMA",Texas Instruments.)に記載されているように、シングルキャリア(single−carrier)周波数分割多元接続(Frequency Division Multiple Access:FDMA)に適用される候補となっている。
【0118】
これは、Zadoff−Chu CAZAC系列が、時間領域(time domain)及び周波数領域(frequency domain)双方において、振幅(amplitude)が一定であり、また、完全なゼロ周期的自己相関(perfect zero circular autocorrelation)特性を有するためである。
【0119】
非特許文献3は、干渉波を平均化(interference averaging)するために(干渉波を抑制するために)、異なるZadoff−Chu CAZAC系列を、隣接する複数の基地局(neighboring Node B's)に割り当てることを提案している。また、系列間相関(inter−sequence correlation)を抑制し、一つのセルで使用可能なZadoff−Chu CAZAC系列の数を最大にするために、系列長(sequence length)を素数(prime number)にすべきであると上記非特許文献3に記載されている。同様の記載は、上記非特許文献2(K.Fazel and S.Keiser,"Multi Carrier and Spread Spectrum Systems",John Wiley and Sons,2003.)あるいは非特許文献4(R1−060059,"Considerations on Uplink Pilot Design Using CAZAC",NEC Group)にもある。
【0120】
データブロックサイズ(data block size)及びパイロットブロックサイズ(pilot block size)を決定する際には、いくつかの要素(factor)を考慮する必要がある。この要素とは、つまり、ロールオフファクタ(rolloff factor)、DFTに要する演算量(complexity)及びパイロット系列の相互相関特性(crosscorrelation property of pilot sequences)である。
【0121】
ロールオフファクタαは、周波数効率(spectral efficiency)とピーク対平均雑音電力比(Peak to average power ratio:PAPR)とのトレードオフ関係(tradeoff relationship)から決定される。
【0122】
非特許文献5(R1−050702,"DFT−Spread−OFDM with Pulse Shape Filter in Frequency domain in Evolved UTRA",NTT DoCoMo,etal.)では、αを0.14にすることが推奨されている(W−CDMAではα=0.22である)。
【0123】
この推奨値及びW−CDMAで採用されている値を考慮すると、ロールオフファクタαは0.14〜0.22とするのが最適である。リソースブロックサイズ(resource block size)が5MHz(データの占有サブキャリア(occupied subcarriers)の数=300、パイロットの占有サブキャリア数=150)の場合、α=0.14〜0.22とすると、データブロックサイズは245〜260(=300/(1+α))付近の値となり、パイロットブロックサイズは122〜130(=150/(1+α))付近の値となる。
【0124】
したがって、Zadoff−Chu CAZAC系列間の相互相関特性の観点から、素数である"127"がパイロットブロックサイズとして最適な値となり、データブロックサイズはパイロットブロックサイズの2倍の長さにセットされる(すなわち、データブロックサイズ=254(=127×2))。
【0125】
しかし、図10及び図11に示す送信機及び受信機の構成から分かるように、このパラメータセッティングは、素数ポイントのDFT演算を必要とし、演算量(computational complexity)が増大してしまう。
【0126】
ここでは、素数ポイントのDFT/IDFTを完全に取り除いた送信機/受信機について説明する。
【0127】
まず、パイロット処理(pilot processing)のための素数ポイントDFT演算は無くすことができる。これは、パイロット系列が予め決定された(predetermined)系列だからである。しかし、この状況において、(例えば、パイロット系列のセルリユース(cell reuse of pilot sequence)のために)多数の系列が送信機/受信機(例えば、User equipment:UE)で保持されていなければならない場合、送信機/受信機(例えば、UE)は大きなメモリを必要とする可能性がある。しかし、この問題は解決可能である。例えば、パイロット系列としてZadoff−Chu CAZAC系列を使用する場合、下記(5)式の周波数領域表現(frequency expression)が、下記(6)式のようにクローズドフォームで与えられるからである。
【0128】
【数5】

【0129】
【数6】

【0130】
全てのパイロット系列自体を保持する代わりに(6)式を用いることにより、送信機/受信機(例えばUE)内で必要とされるメモリを小さくすることができる。
【0131】
次に、データ処理(data processing)については、送信機受信機からDFT/IDFT演算を無くすことはできない。したがって、演算量(complexity)を低減するためには、データブロックサイズ:パイロットブロックサイズ=2:1という制限を緩和する必要がある。すなわち、データブロックサイズとして2のべき乗(power−of−2)、若しくは小さな基数(素数)のみからなる数(number composed of only small radixes)を選ぶべきである。この場合、DFT/IDFT演算の演算量(complexity)の観点から、2のべき乗である256が最適なデータブロックサイズとなる。
【0132】
ここで、Zadoff−Chu CAZAC系列の相互相関特性(crosscorrelation property)の観点から、パイロットブロックサイズは127のままにする。
【0133】
図12及び図13に示す送信機及び受信機の構成からわかるように、このようなパラメータセッティングにおいては、良好な相互相関特性を有する素数長のZadoff−Chu CAZAC系列を使用するにも関わらず、送信機/受信機において、素数ポイントのDFT/IDFT演算が必要ない。
【0134】
同様に、リソースブロックが1.25MHzの場合、データブロックサイズ=64、パイロットブロックサイズ=31が最適値となる。
【0135】
上記値を採用した場合、パイロットの送信帯域(bandwidth used for pilot transmission)はデータ送信帯域(bandwidth used for data transmission)よりも若干小さくなる。したがって、サブキャリア全体のうちの一部については伝搬路推定値(channel estimation)を得ることができない。しかし、図14に示すグラフから分かるように、この問題はパフォーマンスにほとんど影響しない(例えば、3GPP TS45.005 V5.4.0(2002−06)参照)。加えて、ロールオフファクタを調整することによって、両方の帯域を同じサイズにセットすることができる。これにより、パイロット送信帯域はデータ送信帯域と等しくなる。なお、図14は、図15に示すテーブルに記載したパラメータを用いて求めた、ブロックサイズの違いによるEb/Noに対するブロックエラーレートの関係を示している。
【0136】
以上のように、Zadoff−Chu CAZC系列をパイロット信号に使用する場合、送信機/受信機における処理の演算量(complexity)及びパイロット信号の相互相関特性(crosscorrelation property of pilot)の観点から、データブロックサイズとパイロットブロックサイズの関係(制限)(例えば、データブロックサイズ:パイロットブロックサイズ=2:1)は、緩和(slightly relaxed)されるべきである。受信機や送信機(例えばUE)の演算量(complexity)を低減するためには、周波数領域におけるパイロット系列の式(expression of pilot sequence in the frequency domain)(例えば、上記(6)式)が有用である。
【0137】
パイロット系列の低相互相関特性を保ちつつ、かつ送受信機における演算量を小さくするためには、CAZAC系列長が素数または大きな素因数を含む数であることが望ましい。加えて、送信側のDFTに入力されるデータシンボル系列の長さは、CAZAC系列の2倍に近い数であり、かつ2のベキ乗数または小さい素因数のみから構成される数であることが望ましい。
【0138】
送信帯域が5MHzの場合、CAZAC系列長として望ましいのは127(127は素数)であり、データシンボル系列長として望ましいのは256(127の2倍=254に近い、2のベキ乗数)である。
(第4実施例)
次に本発明の第4実施例について説明する。
【0139】
第4実施例では、データブロックサイズが12の倍数、パイロットブロックサイズ(Reference signal block size)が6または12の倍数の場合に、通信品質劣化を抑えつつ、相互相関値特性を大きく損なわないように、上記の各実施例におけるパイロットブロックサイズの決定方法について工夫している。
【0140】
図16は本発明の第4実施例の送信機の構成を示すブロック図であり、図17は本発明の第4実施例の受信機の構成を示すブロック図である。
【0141】
第4実施例の送信機及び受信機は、図2及び図3に示した第1実施例の送信機及び受信機の構成において、ロールオフフィルタ12,22,53,63を除去し、パイロットブロックサイズの選択方法を工夫したものである。
【0142】
図16に示すように、第4実施例の送信機は、データ処理回路1aと、パイロット処理回路2bと、時分割多重回路3とを有する。データ処理回路1aは、図示せぬデータ符号化回路と、DFT回路11と、サブキャリアマッピング回路13と、IDFT回路14と、サイクリックプレフィックス付加回路15とを備えている。パイロット処理回路2bは、周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリ21と、サブキャリアマッピング回路23と、IDFT回路24と、サイクリックプレフィックス付加回路25とを備えている。
【0143】
また、図17に示すように、第4実施例の受信機は、サイクリックプレフィックス除去、データ・パイロット分離回路4と、データ処理回路5aと、パイロット処理回路6bとを有する。データ処理回路5aは、DFT回路51と、サブキャリアデマッピング回路52と、周波数領域等化回路4と、IDFT回路55と、復調回路56とを備えている。パイロット処理回路6bは、DFT回路61と、サブキャリアデマッピング回路62と、伝搬路推定回路64と、周波数領域等化回路65と、振幅推定回路(周波数領域)66と、周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリ67とを備えている。
【0144】
なお、第4実施例では、周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリの代わりに、周波数領域パイロット系列を表す式からパイロット系列を計算する回路を設けてもよい。また、第4実施例の送信機及び受信機の動作は、上述した第1実施例の送信機及び受信機の動作と同様であるので、それらの動作の説明については省略する。
【0145】
本実施例では、送信機において、データ信号のデータブロックサイズに応じてパイロット信号のパイロットブロックサイズを設定している。つまり、パイロットブロックサイズを設定する際に、パイロットブロックサイズに直近の素数において、その素数とデータブロックとの差が予め設定された第1の所定値以下となる場合は当該素数を当該パイロットブロックサイズとする。また、その素数とデータブロックとの差が第1の所定値以下とならない場合は、データブロックとの差が第1の所定値以下であり、かつ予め設定された第2の所定値以上の素因数を含む数を当該パイロットブロックサイズとする。
【0146】
第1及び第2の所定値は、構築されたシステムの要求によって決定される。つまり、システムの要求する通信品質に応じて決定される。この場合の通信品質は、ビットエラーレートまたはブロックエラーレートである。したがって、第1及び第2の所定値は、S/N劣化を予め設定された一定値以下に抑えることで通信品質を満たすように決定される。
【0147】
図18は本発明の第4実施例におけるパイロットブロックサイズの選択方法を示すフローチャートである。この図18を参照して本発明の第4実施例によるパイロットブロックサイズの選択方法について説明する。なお、このパイロットブロックサイズの選択方法はコンピュータがプログラムを実行することで実現することができる。以下、このコンピュータをパイロットブロックサイズ選択装置とする。
【0148】
パイロットブロックサイズ選択装置は、データブロックサイズが入力されると(図18ステップS1)、データブロックサイズと等しい帯域を有するパイロットブロックサイズ、またはデータブロックサイズに対応する帯域を有するパイロットブロックサイズ(例えば、データブロックサイズの1/2)を算出し、そのパイロットブロックサイズをNとする(図18ステップS2)。
【0149】
パイロットブロックサイズ選択装置は、パイロットブロックサイズN以下で、パイロットブロックサイズNに最も近い素数Npを算出し(図18ステップS3)、パイロットブロックサイズNと素数Npとの差が予め設定された所定値(ある一定の差)Rdiff以下であるか否かを判定する(N−Np≦Rdiff)(図18ステップS4)。
【0150】
パイロットブロックサイズ選択装置は、パイロットブロックサイズNと素数Npとの差が所定値Rdiff以下であれば、その素数Npをパイロットブロックサイズとする(パイロットブロックサイズ=Np)(図18ステップS5)。また、パイロットブロックサイズ選択装置は、パイロットブロックサイズNと素数Npとの差が所定値Rdiff以下でなければ、N−Np'≦Rdiffを満たし、かつNp'の最大素因数≧ある一定の大きさの素数Pminとなる数Np'を算出し、その数Np'をパイロットブロックサイズとする(図18ステップS6)。
【0151】
パイロットブロックサイズ選択装置は、順次、データブロックサイズ(この場合、12の倍数)が入力される毎に上記の処理を行い、周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリ21,67に保存すべきパイロットブロックサイズの選択が終了すると(図18ステップS7)、処理が終了する。
【0152】
このように、本実施例では、データ信号のデータブロックサイズに応じてパイロット信号のパイロットブロックサイズを選択することで、通信品質劣化を抑えつつ、相互相関値特性を大きく損なわないようにすることができる。
【0153】
図19は第4実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。図19に示すグラフは、パイロットブロックサイズ(Reference ブロックサイズ)として、120,118,116,114,113(113は120以下で120に最も近い素数)を用いた時のブロック誤り率特性を示している。
【0154】
但し、このシミュレーションに用いたパラメータは図20に示す通りである。図20において、パラメータは、Transmission Bandwidth(送信帯域)=3.6MHz(DataCHのサブキャリア数:240)、Channel Estimation(伝搬路推定)=Real(実推定)、Modulation(変調方式)=16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)、sub−frame format(サブフレームフォーマット)=25.814 v7.1.0のFigure 9.1.1−4及びTable 9.1.1−1 '5MHz' case記載のもの、FEC(誤り訂正符号)=Rate 1/2 Turbo encoding(ターボ符号,レート1/2)、Channel model(伝搬路モデル)=TU with 6 paths,type(1)(from 3GPP TS 45.005 V5.4.0 (2002−06))、Doppler rate(ドップラー周波数)=5.56Hz(3km/h@2.0GHz)、Number of receive antennas(受信アンテナ数)=2、TTI duration(TTI長)=0.5ms、Transport Block Size(including CRC)(トランスポートブロックサイズ、CRC含む)=2876bits、Data Multiplexing(データ多重法)=Localized FDM(Frequency Division Multiplex)である。
【0155】
パイロットブロックサイズをデータブロックサイズ(=240)と同じ帯域に対応するサイズとした場合(ここでは、データブロックサイズの1/2=120の場合)のブロック誤り率=10-1を満たすための所要Eb/Noは、図19から約5.7dBである。これに対し、パイロットブロックサイズが118,116,114,113の場合の劣化量は、それぞれ0.05,0.3,0.9,1.5dBとなる(但し、ブロック誤り率=10-1を満たすための所要Eb/Noを比較している)。
【0156】
したがって、本実施例では、パイロットブロックサイズとして素数(113)を選ぶ時と比較し、パイロットブロックサイズ=118(上記のステップS6で選択した数Np')を選ぶことで劣化量を非常に小さく抑えることができ、かつ相互相関値特性も大きく損なうことはない。なお、上記と同様の効果は、パイロットブロックサイズをデータブロックサイズと同じ帯域の周辺の値(上記の例では、240周辺の値)とした場合にも得られる。
【0157】
このように、パイロットブロックサイズとして必ず素数長を選択する場合、非常に大きな特性劣化を受ける場合がある。それを避けるために、上記のように、本実施例ではデータと同じ帯域に対応するパイロットブロックサイズ(データブロックサイズと同じ、またはその1/2)と、それ以下で一番近い素数との間に、上記の所定値Rdiffより大きい差がある場合、ある一定の大きさの素数Pmin以上の素数を素因数に含む数で、差が所定値Rdiff以上となるような数をパイロットブロックサイズとして選択する。
【0158】
図21及び図22は本発明の第4実施例におけるデータブロックサイズに対するパイロットブロックサイズの例を示すテーブル図である。これらの図21及び図22においては、素数でない数が選択されている箇所に下線を付与している。
【0159】
図21は所定値Rdiff=4、ある一定の大きさの素数Pmin=11の場合(Data:Reference=2:1の場合)のデータブロックサイズに対するパイロットブロックサイズの例を示している。この例において、データブロックサイズが12,24,36,48,60,84,96,108,120,144,168,180,204,216,228,264,276,300の場合、それぞれパイロットブロックサイズとして5,11,17,23,29,41,47,53,59,71,83,89,101,107,113,131,137,149の素数が選択される。
【0160】
これに対して、データブロックサイズが72,132,156,192,240,252,288の場合、それぞれパイロットブロックサイズとして一番近い素数との差が5以上となるため、ある一定の大きさの素数Pmin=11以上の素因数を含む33(=11×3),66(=11×6),78(=13×6),95(=19×5),119(=17×7),123(=41×3),143(=13×11)が選択される。
【0161】
図22は所定値Rdiff=3、ある一定の大きさの素数Pmin=11の場合(Data:Reference=1:1の場合)のデータブロックサイズに対するパイロットブロックサイズの例を示している。この例において、データブロックサイズが12,24,48,60,72,84,108,132,168,180,192,228,240,252,264の場合、それぞれパイロットブロックサイズとして11,23,47,59,71,83,107,131,167,179,191,227,239,251,263の素数が選択される。
【0162】
これに対して、データブロックサイズが36,96,120,144,156,204,216,276,288,300の場合、それぞれパイロットブロックサイズとして一番近い素数との差が4以上となるため、33(=11×3),95(=19×5),119(=17×7),143(=13×11),155(=31×5),203(=29×7),215(=13×11),275(=11×25),287(=41×7),299(=13×23)が選択される。
【0163】
これら図21及び図22に示す値は、周波数領域でのパイロット系列を保存するメモリ及び時間領域でのパイロット系列を保存するメモリに格納しても、また周波数領域パイロット系列を表す式からパイロット系列を計算する回路及び時間領域パイロット系列を表す式からパイロット系列を計算する回路で計算してもよい。
【0164】
このように、本実施例では、データブロックサイズが12の倍数、パイロットブロックサイズが6または12の倍数の場合でも、上記のように、パイロットブロックサイズを選択することで、本発明の第1実施例と同様の効果を得ることができる。
(第5実施例)
図23は本発明の第5実施例の送信機の構成例を示すブロック図であり、図24は本発明の第5実施例の受信機の構成例を示すブロック図である。
【0165】
第5実施例の送信機及び受信機の構成例は、図7及び図8に示した従来の送信機及び受信機の構成においてロールオフフィルタを除去し、時間領域でのパイロット系列を保存するメモリを設けたものである。
【0166】
図23に示すように、第5実施例の送信機は、データ処理回路1bと、パイロット処理回路2cと、時分割多重回路3とを有する。データ処理回路1bは、図示せぬデータ符号化回路と、DFT回路11と、サブキャリアマッピング回路13と、IDFT回路14と、サイクリックプレフィックス付加回路15とを備えている。パイロット処理回路2cは、時間領域でのパイロット系列を保存するメモリ21aと、DFT回路27と、サブキャリアマッピング回路23と、IDFT回路24と、サイクリックプレフィックス付加回路25とを備えている。
【0167】
また、図24に示すように、第5実施例の受信機は、サイクリックプレフィックス除去、データ・パイロット分離回路4と、データ処理回路5aと、パイロット処理回路6cとを有する。データ処理回路5aは、DFT回路51と、サブキャリアデマッピング回路52と、周波数領域等化回路4と、IDFT回路55と、復調回路56とを備えている。パイロット処理回路6bは、DFT回路61と、サブキャリアデマッピング回路62と、伝搬路推定回路64と、周波数領域等化回路65と、IDFT回路68と、振幅推定回路69と、時間領域でのパイロット系列を保存するメモリ70とを備えている。
【0168】
なお、第5実施例では、時間領域でのパイロット系列を保存するメモリの代わりに、時間領域パイロット系列を表す式からパイロット系列を計算する回路を設けてもよい。また、第5実施例の送信機及び受信機の動作は、パイロット処理回路2c,6cにDFT回路27,61を有する以外は、第1実施例の送信機及び受信機の動作と同様であるので、それらの動作の説明については省略する。
【0169】
本実施例では、DFTの計算量を少なくする必要がない場合の構成例を示し、DFT後のZadoff−Chu系列は保持していてもよく、保持していなくてもよい。さらに、本実施例では、第4実施例によるパイロットブロックサイズの選択方法と同様の処理にてパイロットブロックサイズを選択しており、DFTの計算量を少なくするという効果以外は、上述した第4実施例と同様の効果がある。
【0170】
本実施例の送信機には、上記のほかに第4実施例で示したパイロットブロックサイズ選択装置を備えることもできる。また、本実施例の送信機には、図21及び図22に示すような、データブロックサイズとパイロットブロックサイズとの対応を表す表を保持するメモリを備えることもできる。さらに、パイロット信号は、リファレンス信号と呼ぶこともできる。
(第6実施例)
次に本発明の第6の実施例について説明する。
【0171】
EUTRAアップリンクのリファレンスシグナルとしては、下記の(7)、(8)式で表されるZadoff−Chu(非特許文献1参照)シーケンスが想定されている。ここで、Lはシーケンス長である。
【0172】
【数7】

【0173】
【数8】

【0174】
リファレンスブロックサイズは、ショートブロックまたはロングブロックとして、6または12の倍数とすることができる。Zadoff−Chuシーケンス長は、リファレンスブロックサイズにフィットするように選ばれる。Zadoff−Chuシーケンス長を選ぶ1つの方法は、リファレンスブロックサイズよりも短い長さ、またはリファレンスブロックサイズと等しい長さを選ぶことである。この場合、それぞれ図25の(a)、(b)に示すように、Zadoff−Chuシーケンスそのもの、またはZadoff−Chuシーケンスに、最初のN(=リファレンスシグナルブロックサイズ−L)シンボルのサイクリックコピーを付加したものが使用される。
【0175】
もう1つの方法は、図25の(c)に示すように、リファレンスブロックサイズよりも長く、トランケート(Truncate)されたZadoff−Chuシーケンス長を選ぶことである(非特許文献6:R1−063057、"EUTRA SC−FDMA Uplink Pilot/Reference Signal Design" Motorola)。
【0176】
使用可能なシーケンスの数を最大にするためには、Zadoff−Chuシーケンス長として素数を選ぶのが好ましい。しかし、必ず素数を選ぶという制限は厳しすぎる。なぜならば、1人のユーザに割り当てられるリソースブロックの数が大きくなった場合、リファレンスブロックサイズとZadoff−Chuシーケンス長との差が大きくなることがあるからである。一例は、リファレンスブロックサイズが120に等しい場合である。120前後の最も近い素数は、それぞれ113及び127である。113の場合、使用可能なシーケンスの数は112であり、クロスコリレーション(cross correlation:相互相関)は1/√113以下である。127の場合、使用可能なシーケンスの数は126であり、クロスコリレーション(相互相関)は1/√127以下である。しかし、リファレンスブロックサイズとZadoff−Chuシーケンス長との差が7になる。この差が大きくなると、図25の(a)の場合はチャネルエスティメーション(Channel Estimation:伝搬路推定精度)が劣化し、図25の(b)及び(c)の場合は、オートコリレーション(Auto−Correlation:自己相関)特性やクロスコリレーション(相互相関)特性が劣化し、またはPAPR(Peak to Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)が増加する。したがって、Zadoff−Chuシーケンス長を決定するためのより良いクライテリア(Criteria:規準)が望まれる。
【0177】
リファレンスブロック長とZadoff−Chuシーケンス長との差を小さくするために、以下のクライテリアを提案する。このクライテリアは、使用可能で、クロスコリレーション(相互相関)特性が良好なリファレンスシーケンスの数を多く保つことができるシーケンス長を選ぶためのものである。
【0178】
オプション1.大きな最大素因数を含む数を選ぶ。
【0179】
オプション2.大きな最大素因数を含み、かつ素因数の数が少ない数を選ぶ。
【0180】
これらのクライテリアを使う根拠は以下の通りである。
【0181】
シーケンスCk(n)とシーケンスCk'(n)との間のクロスコリレーション(相互相関)は、下記の(9)式のように表される。
【0182】
【数9】

【0183】
(k−k')とLとの間の最大公約数(greatest common divisor)gが小さくなると、クロスコリレーション(相互相関)特性がよくなる。
【0184】
ここで、Lの最大素因数をLiとすると、k及びk'がLiよりも小さい場合、gはLiよりも小さくなる。これは、クロスコリレーション(相互相関)が1/√Li以下となるシーケンスの数が増えることを意味する。これが、オプション1の根拠である。しかし、k及びk'がLiよりも小さい場合、素因数の数が増えるにつれて、使用可能なシーケンスの数が減ることに注意されたい。
【0185】
ここで、リファレンスブロックサイズが120の場合を考える。例えば、118(59×2)は素数ではないが、大きな素因数59を含む。この場合、使用可能なシーケンスのk及びk'は、下記の(10)式で示すようになる。
【0186】
k,k'={1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,57,61,・・・,115,117} ・・・(10)
k及びk'は、Lに対して互いに素(relatively prime)である必要があるため、2または59の倍数を除いている。そして、使用可能なコードの数は57となっている。この場合、全てのk及k'が奇数であり、k−k'が常に偶数であるため、全てのシーケンスにおいてクロスコリレーション(相互相関)は1/√59以下となる。
【0187】
この例では、使用可能で、クロスコリレーション(相互相関)特性が良好なシーケンスの数を多く保ちつつ、リファレンスシグナルブロックサイズとZadoff−Chuシーケンス長との差を7から2に減らしている。
【0188】
上記例では、全ての使用可能なシーケンスが、良いクロスコリレーション(相互相関)特性を有する。k及びk'が最大素因数よりも小さい場合、これは常に真である。しかし、最大素因数よりも大きなk及びk'については、常に真ではない。ここで、177(=59×3)について考える。この場合、使用可能なシーケンスのk及びk'は、下記の(11)式で示すようになる。
【0189】
k,k'={1,2,4,5,7,8,10,11,13,14,58,61,62,64,・・・,175,176}・・・(11)
59よりも小さいk及びk'については、k−k'が59に対して互いに素(relatively prime)であるため、クロスコリレーション(相互相関)は1/√59以下となる。59よりも大きいk及びk'については、全てのシーケンスがこの状況を満たすわけではない。例えば、3が使用可能なk及びk'から除かれているため、62はこの状況を満たす。しかし、(61−2)及び(64−5)が59となるため、61及び64は上記の状況を満たさない。
【0190】
様々なリファレンスブロックサイズに対して、クロスコリレーション(相互相関)特性の良い全てのシーケンスを探すことも可能である。しかし、素因数の数が増えると、状況は複雑になる。
【0191】
よりシンプルな方法はクライテリアとしてオプション2を使用することである。少なくとも、最大素因数よりも小さいk及びk'については、良好なクロスコリレーション(相互相関)特性(≦1/√Li)が得られる。さらに、素因数の数が減るにつれて、最大素因数よりも小さく、使用可能なk及びk'の数が増える。
【0192】
第6実施例では、Zadoff−Chuシーケンス長を決定するためのクライテリアを提案した。また、提案したクライテリアが、使用可能で、クロスコリレーション(相互相関)特性が良好なシーケンスの数を多く保ちつつ、リファレンスシグナルブロックサイズとZadoff−Chuシーケンス長との差を小さくすることができることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号と、パイロット信号とを送信する送信機と、
前記パイロット信号を基に前記データ信号を復調する受信機と、
を有し、
前記送信機は、前記パイロット信号を、予め定められた系列長よりも小さい素数を系列長とするZadoff−Chu系列を含む信号を逆離散フーリエ変換することにより算出する無線通信システム。
【請求項2】
前記Zadoff−Chu系列の系列長は、前記予め定められた系列長よりも小さい素数のうち最大の素数とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
データ信号と、パイロット信号とを送信する送信回路と、
前記パイロット信号を、予め定められた系列長よりも小さい素数を系列長とするZadoff−Chu系列を含む信号を逆離散フーリエ変換することにより算出する処理回路と、
を有する送信機。
【請求項4】
前記Zadoff−Chu系列の系列長は、前記予め定められた系列長よりも小さい素数のうち最大の素数とする請求項3記載の送信機。
【請求項5】
無線通信システムの送信機における通信制御方法であって、
データ信号と、パイロット信号とを送信し、
前記パイロット信号を、予め定められた系列長よりも小さい素数を系列長とするZadoff−Chu系列を含む信号を逆離散フーリエ変換することにより算出する通信制御方法。
【請求項6】
前記Zadoff−Chu系列の系列長は、前記予め定められた系列長よりも小さい素数のうち最大の素数とする請求項5記載の通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−21720(P2013−21720A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227860(P2012−227860)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【分割の表示】特願2010−283120(P2010−283120)の分割
【原出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】