説明

無線通信システムの質問器

【課題】周囲環境の変化にリアルタイムに対応して相殺波による十分な相殺を行い、高い受信感度を維持する。
【解決手段】無線タグTへアクセスするための搬送波を無線タグTへ送信可能な送信部32と、この送信部32からの送信信号に応じて無線タグTからの送信信号を受信可能な受信部33と、この信号受信時に、送信部32からの送信信号に基づき生じうる不要波を相殺するための相殺波を発生するキャンセル回路200と、この相殺波により相殺された受信部32の受信信号強度を検出するRSSI回路48と、送信部32から変調波を出力し無線タグTへ送信するのに先立ち、搬送波を出力して送信部32から送信し、RSSI回路48での検出結果に応じてキャンセル回路200より発生する相殺波の位相P及び振幅Aを変化させ、最適値を設定するように各キャンセル回路200等を制御する制御回路4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係わり、例えば、外部と情報の無線通信が可能な無線タグに対し情報の読み取り又は書き込みを行う無線タグ通信システムの質問器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
応答器としての小型の無線タグに対し、質問器としてのリーダ/ライタより非接触で問い合わせの送信及び返答の受信を行うことで、無線タグの情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio
Frequency Identification)システムが知られている。
【0003】
例えばラベル状の無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の無線タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナとを備えている。質問器としてのリーダ/ライタの送信アンテナより応答器としての無線タグに対し送信波の送信を行うと、無線タグ回路素子はその送信波の電波のもつエネルギを利用して返答の送信を行う。すなわちリーダ/ライタが電波を送信するとほぼ同時に返信された無線タグからの電波をリーダ/ライタの受信アンテナが受信する。このとき、リーダ/ライタ内における送信アンテナ及び受信アンテナの間の電波の減衰量(送受信分離度)は有限であるので、必然的に送信波が受信アンテナから受信系により受信され混入するので干渉信号となって無線タグからの返信信号の受信に妨害を与えることとなる。
【0004】
この点を解決するために、従来、上記送信波送信時に受信系に混入干渉する不要波を相殺(補償)するための相殺波(補償信号)を作成し、さらにこの作成した相殺波を不要波と合成する手法が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、送信系から分波した信号を可変移相器及び可変減衰器で位相及び振幅を調整して相殺波を作成し、これを合波器で受信系に合成することにより不要波を相殺している。相殺波の設定の際には、応答器からの反射応答のない状態で質問器から送信信号を送信し、この状態で受信系に混入する信号と相殺波との合成信号のレベルが最小となるように、可変移相器及び可変減衰器を手動にて操作して調整する。また、経年劣化によって不要波の態様が変化した場合には、例えば1年ごとの手動による定期調整等によって対応するようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−122429号公報(段落番号0030〜0038、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなRFIDシステムは、応答器である無線タグが汚れている場合や見えない位置にある場合であっても、質問器であるリーダ/ライタ側より無線タグ回路素子に対してアクセス(情報の読み取り/書き込み)が可能であるため、商品管理、流通管理、検査工程、さらには物や人の動きの探索・探知等の様々な分野において大いに実用化が進められている。
【0007】
しかしながら、このようなRFIDシステムの各種分野への盛んな導入への状況に鑑みた場合、上記従来技術では、以下の問題が存在する。すなわち、例えば物流倉庫にて物品の検索のために用いる場合、他の人物が通りかかったり、あるいは金属物の有無や動きがあると、質問器と応答器との間の無線通信状況に大きな影響を与える。すなわちRFIDシステムの導入が各種分野やへの導入が進むほど、上記のような周囲環境の変化による通信状況への影響が大きくなって不要波の発生挙動も大きく変化する。
【0008】
上記従来技術では、手動によって相殺波の設定をいったん最適化した後、不要波の態様が変化した場合に、例えば1年ごとの手動による調整等でしか対応することができない。このため、上記のような周囲環境の変化にリアルタイムに対応し、相殺波による十分な相殺を行って高い受信感度を維持することが困難である。
【0009】
本発明の目的は、周囲環境の変化にリアルタイムに対応して相殺波による十分な相殺を行い、高い受信感度を維持することができる無線通信システムの質問器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明は、応答器へアクセスするための搬送波を発生させる搬送波発生手段と、この搬送波発生手段から発生された搬送波を変調し変調後の搬送波とする搬送波変調手段と、を備え、前記搬送波発生手段又は前記搬送波変調手段からの搬送波を出力する搬送波出力手段と、この搬送波出力手段から出力された前記搬送波を前記応答器へ送信可能な送信手段と、この送信手段からの送信信号に応じて前記応答器からの送信信号を受信可能な受信手段と、この受信手段での信号受信時に、前記送信手段からの送信信号に基づき生じうる不要波を相殺するための相殺波を発生する相殺波発生手段と、この相殺波発生手段からの前記相殺波により相殺された前記受信手段の受信信号強度を検出する信号強度検出手段と、前記搬送波出力手段から前記搬送波変調手段で変調した送信波を出力して前記送信手段から送信するのに先立ち、前記搬送波出力手段から前記搬送波発生手段の搬送波を出力して前記送信手段から送信し、前記信号強度検出手段での検出結果に応じて前記相殺波発生手段より発生する前記相殺波の位相及び振幅を変化させ、最適値を設定するように、前記搬送波発生手段、前記送信手段、及び前記相殺波発生手段を制御する相殺波制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本願第1発明においては、応答器と本通信を開始する前に、相殺波制御手段が搬送波発生手段、前記送信手段、及び前記相殺波発生手段を制御することによって、搬送波出力手段から搬送波発生手段の搬送波(変調がされていないもの)が出力されて送信手段から送信される。このときの送信手段からの送信信号に基づき受信手段にて所定の受信信号成分が発生しうるが、これを相殺波発生手段で発生させた相殺波により相殺する。この相殺した受信信号強度は信号強度検出手段で検出され、その検出結果に応じて、相殺波発生手段での相殺波の位相及び振幅が変化し、受信信号強度がもっとも小さくなるような最適値に設定される。
【0012】
以上のように、質問器と応答器とが本通信を開始する前に、その都度、必ず自動的に相殺波発生手段の相殺波の位相と振幅とが最適値となるように調整され設定されるので、例えば1年ごと等に手動にて定期調整を行う程度の従来技術と異なり、周囲環境変化にもリアルタイムに対応し十分に不要波の相殺を行うことができる。この結果、高い受信感度を維持でき、本通信開始後に応答器からの受信信号(応答信号)をより明瞭に取得することができる。
【0013】
第2の発明は、上記第1発明において、前記相殺波制御手段は、前記信号強度検出手段での検出値を小さくするように、前記相殺波発生手段による前記相殺波の位相及び振幅を変化させ、最適値を設定することを特徴とする。
【0014】
信号強度検出手段の検出結果に応じ、相殺波発生手段での相殺波の位相及び振幅が、受信信号強度が極力小さくなるような最適値に設定され、環境変化にリアルタイムに対応して不要波の相殺を十分に行うことができる。
【0015】
第3の発明は、上記第2発明において、前記相殺波制御手段は、前記相殺波の位相及び振幅を一対とし、それらの値を比較的大きな第1の範囲内で比較的大きな第1の間隔で変化させて各対における前記信号強度検出手段での検出値を順次取得し、前記第1の範囲内における前記一対の位相及び振幅の一次最適値を探索する第1探索手段と、前記一対の位相及び振幅を、前記一次最適値近傍の比較的小さな第2の範囲内で比較的小さな第2の間隔で変化させ各対における前記信号強度検出手段での検出値を順次取得して、前記第2の範囲内における最終的な最適値を探索し、これを設定値として選択する第2探索手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
第1探索手段でまず大まかに第1の範囲で一次最適値を探索した後、第2探索手段でさらに精密に第2の範囲で最終的な最適値を探索することにより、最初から精密な最適値を探索する場合に比べ、短時間で能率よく、少ない演算処理負担で、相殺波の位相及び振幅の最終最適値を取得することができる。
【0017】
第4の発明は、上記第1乃至3のいずれか1項発明において、前記相殺波制御手段は、前記信号強度検出手段での検出結果に応じて、前記相殺波発生手段における前記相殺波の位相及び振幅のうち少なくとも一方について既に設定された前記設定値を変更するかどうかを判定する第1判定手段を備えることを特徴とする。
【0018】
前述のようにして本通信の開始前に相殺波の位相及び振幅を最適値に設定して通信を行った後、第1判定手段がその位相又は振幅の設定値を変更すべきかどうかを判定することにより、一旦設定した位相又は振幅の値をその後も随時環境の変化等に応じて修正していくことができる。
【0019】
第5の発明は、上記第4発明において、前記第1判定手段は、前記一対の位相及び振幅に関する最適値が設定された後にそれに対応して設定された、前記受信信号強度に関する第1のしきい値と、前記信号強度検出手段での検出値とを比較し、その検出値が前記第1のしきい値より大きくなるかどうかを判定することを特徴とする。
【0020】
受信信号強度が第1のしきい値より大きくなると、第1判定手段によって少なくとも相殺波の位相又は振幅のいずれかの設定値を変更すべきと判定され、これによって当初設定した位相又は振幅の値をその後も随時環境の変化等に応じて修正していくことができる。
【0021】
第6の発明は、上記第5発明において、前記相殺波制御手段は、前記第1判定手段で判定が行われる前に、前記相殺波発生手段における前記相殺波の位相及び振幅のうち少なくとも一方について既に設定された前記設定値を変更するかどうかを判定する第2判定手段を備えることを特徴とする。
【0022】
前述のようにして本通信の開始前に相殺波の位相及び振幅を最適値に設定して通信を行った後、第2判定手段がその位相又は振幅の設定値を変更すべきかどうかを判定することにより、一旦設定した位相又は振幅の値をその後も随時環境の変化等に応じて修正していくことができる。
【0023】
特に第1判定手段による判定の前に第2判定手段を設ける2段判定の構成とすることにより、第2判定手段では大きく根本的に設定し直す(本通信前に行った当初の設定と同程度の再設定)必要があるかどうかを判定し、この判定が満たされなかった場合に第1判定手段で上記ほどではないにしても設定の微調整が必要であるかどうかを判定するといった役割分担を図ることが可能となる。このような位相や振幅の設定値にどの程度の手直しが必要かに応じて修正要否の判定及びその修正手順を分けることにより、短時間で能率よく、少ない演算処理負担で、相殺波の位相及び振幅の設定値の修正を行うことができる。
【0024】
第7の発明は、上記第6発明において、前記第2判定手段は、前記一対の位相及び振幅に関する最適値が設定された後にそれに対応して設定された、前記受信信号強度に関する前記第1のしきい値より大きな第2のしきい値と、前記信号強度検出手段での検出値とを比較し、その検出値が前記第2のしきい値より大きくなるかどうかを判定することを特徴とする。
【0025】
受信信号強度が(第1のしきい値よりも大きな)第2のしきい値より大きくなると、第2判定手段によって相殺波の位相及び振幅の両方の設定値を変更すべきと判定され、これによって当初設定した位相及び振幅の値をその後も随時環境の変化等に応じて修正していくことができる。
【0026】
第8の発明は、上記第4発明乃至第7発明のいずれか1つにおいて、前記第1判定手段での判定が満たされたときに、前記位相及び前記振幅のうち少なくとも一方を設定変更するように、前記相殺波発生手段を制御する信号を出力する制御信号出力手段を備えることを特徴とする。
【0027】
第1判定手段の判定に応じて少なくとも相殺波の位相又は振幅のいずれかの設定値を変更することにより、当初設定した位相又は振幅の値をその後も随時環境の変化等に応じて微調整することができる。
【0028】
第9の発明は、上記第8発明において、前記第1判定手段は、前記信号強度検出手段での検出結果に応じて、前記相殺波発生手段における前記相殺波の位相を設定変更するかどうかを判定し、前記制御信号出力手段は、前記第1判定手段での判定が満たされたときに、前記位相を設定変更するように、前記相殺波発生手段を制御する信号を出力することを特徴とする。
【0029】
第1判定手段の判定に応じて位相の設定値を変更することにより、当初設定した位相の値をその後も随時環境の変化等に応じて微調整することができる。
【0030】
第10の発明は、上記第9発明において、前記第1判定手段での判定が満たされ、前記制御信号出力手段からの信号により前記相殺波発生手段の前記位相及び前記振幅のうち少なくとも一方が設定変更された後、前記信号強度検出手段での検出結果に応じて、前記相殺波発生手段における前記相殺波の位相及び振幅の前記設定値を再度変更するかどうかを判定する第3判定手段を備えることを特徴とする。
【0031】
前述のようにして本通信の開始前に相殺波の位相及び振幅を最適値に設定して通信を行った後、第1判定手段の判定に応じてその位相及び振幅の少なくとも一方を設定変更し微調整した後でも、さらに第3判定手段がその位相又は振幅の設定値を再度変更すべきかどうかを判定することにより、環境が大きく変動する等により上記微調整では十分でなかった場合等にも対応し、確実に修正を行うことができる。
【0032】
第11発明は、上記第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記相殺波制御手段による前記制御動作を行った直後に前記送信波を前記送信手段から前記応答器へ送信し、その送信された送信波に応じて前記応答器より送信された返答信号を前記受信手段で受信するように、前記送信手段及び前記受信手段を制御する送受信制御手段とを有することを特徴とする。
【0033】
相殺波制御手段の制御動作を行ってすぐ送信波送信及び返答信号受信を行うので、相殺波制御手段による相殺波の最適化の効果を低減させることなく最大限生かしながら応答器との通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、質問器と応答器とが本通信を開始する前に、その都度、必ず自動的に相殺波発生手段の相殺波の位相と振幅とが最適値となるように調整され設定されるので、周囲環境変化にもリアルタイムに対応し十分に不要波の相殺を行うことができる。この結果、高い受信感度を維持でき、本通信開始後に応答器からの受信信号をより明瞭に取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1は、本実施形態による質問器を備えた無線通信システムの全体概略を表すシステム構成図である。
【0037】
図1において、この無線タグ通信システムSは、本実施形態による質問器100と、これに対応する応答器としての無線タグTとから構成される。
【0038】
無線タグTは、アンテナ151とIC回路部150とを備えた無線タグ回路素子Toを有している。
【0039】
質問器100は、無線タグ回路素子Toの上記アンテナ151との間で無線通信により信号の授受を行う、アンテナ1と、このアンテナ1を介し上記無線タグ回路素子ToのIC回路部150へアクセスする(読み取り又は書き込みを行う)ための高周波回路2と、無線タグ回路素子Toから読み出された信号を処理するための信号処理回路3と、制御回路4とを有する。
【0040】
制御回路4は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。
【0041】
図2は、上記無線タグTに備えられた無線タグ回路素子Toの機能的構成の一例を表すブロック図である。
【0042】
図2において、無線タグ回路素子Toは、上記質問器100側の上記アンテナ1とUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行う上記アンテナ151(タグ側アンテナ)と、このアンテナ151に接続された上記IC回路部150とを有している。
【0043】
IC回路部150は、アンテナ151により受信された搬送波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された搬送波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記アンテナ151により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部155と、上記アンテナ151に接続された変復調部156と、上記整流部152、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0044】
変復調部156は、アンテナ151により受信された上記質問器100のアンテナ1からの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部157からの返信信号に基づき、アンテナ1より受信された搬送波を反射変調する。
【0045】
制御部157は、上記変復調部156により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、上記変復調部156により返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0046】
図3は、上記質問器100に備えられた高周波回路2の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【0047】
図3において、高周波回路2は、アンテナ1より無線タグ回路素子Toに対して信号を送信する送信部(搬送波出力手段)32と、アンテナ1により受信された無線タグ回路素子Toからの反射波を入力する受信部33と、送信部32及び受信部33とアンテナ1とを一方向的に接続する、すなわち送信部32からの信号をアンテナ1に伝送すると同時に、アンテナ1で受信した信号を受信部33に伝送する(例えばサーキュレーダ等からなる、以下同様)送受分離器34と、受信部33での信号受信時に、送信部33からの送信信号に基づき生じうる不要波(回り込み信号)を相殺するためのキャンセル信号(相殺波)を発生するキャンセル回路(相殺波発生手段)200とから構成される。
【0048】
キャンセル回路200は、上記送信部32から分配されて供給された搬送波に基づき上記相殺波であるキャンセル信号を生成するためにその振幅及び位相をそれぞれ制御するキャンセル信号振幅調整部201及びキャンセル信号位相調整部202と、これらキャンセル信号振幅調整部201及びキャンセル信号位相調整部202により生成されたキャンセル信号とアンテナ1で受信した信号とを合成する合波器203とを備えている。
【0049】
送信部32は、無線タグ回路素子ToのIC回路部150の無線タグ情報にアクセスする(読み取り/書き込みを行う)ための搬送波を発生させる搬送波発生手段としての水晶振動子35、PLL(Phase
Locked Loop)36、及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)37と、上記制御回路4から供給される信号に基づいて上記発生させられた搬送波を変調(この例では制御回路4からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調)する送信側乗算回路38(搬送波変調手段;但し振幅変調の場合は増幅率可変アンプ等を用いてもよい)と、この送信側乗算回路38により変調された変調波を、制御回路4からの「TX_PWR」信号によって増幅率を決定し増幅する可変送信アンプ39とを備えている。この搬送波は、望ましくは950MHz近傍あるいは2.45GHz近傍とされ、上記送信側乗算回路38により変調され可変送信アンプ39で増幅された変調波は、送信手段としての送受分離器34及びアンテナ1を介し無線タグ回路素子ToのIC回路部150に供給される。
【0050】
受信部33は、前記合波器203によって合波されたアンテナ1の受信信号とキャンセル信号との合波信号と上記送信部32で発生させられた搬送波とを掛け合わせ、ホモダイン検波を行う受信側第1乗算回路40と、その受信側第1乗算回路40の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第1バンドパスフィルタ41と、この第1バンドパスフィルタ41の出力を増幅して第1リミッタ42に供給する受信側第1アンプ43と、前記合波器203によって合波されたアンテナ1の受信信号とキャンセル信号との合波信号と上記送信部32で発生された後に位相が90°遅延された搬送波とを掛け合わせ、ホモダイン検波を行う受信側第2乗算回路44と、その受信側第2乗算回路44の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第2バンドパスフィルタ45と、この第2バンドパスフィルタ45の出力を入力するとともに増幅して第2リミッタ46に供給する受信側第2アンプ47とを備えている。そして、上記第1リミッタ42から出力される信号「RXS−I」及び第2リミッタ46から出力される信号「RXS−Q」は、上記信号処理回路3に入力されて処理される。
【0051】
また、前記合波器203によって合波されたアンテナ1の受信信号とキャンセル信号との合波信号は、RSSI回路(Received Signal Strength Indicator;信号強度検出手段)48にも入力され、それらの信号の強度(受信信号強度)を示す信号「RSSI」が信号処理回路3に入力されるようになっている。このようにして、本実施形態の質問器100では、I−Q直交復調によって無線タグ回路素子Toからの反射波の復調が行われる。
【0052】
信号処理回路3は、上述した高周波回路受信部33からの受信信号等を入力した後所定の演算処理を行い、これに応じて変調制御信号を上記送信部32の送信側乗算回路38へ出力する。
【0053】
制御回路4は、上記RSSI回路48からの上記RSSI信号(上記合波器203からの出力信号に対応)に基づく上記信号処理回路3の演算処理結果に応じ、キャンセル回路200のキャンセル信号振幅制御部201及びキャンセル信号位相制御部202へ振幅制御信号及び位相制御信号等を出力する。なお、この制御回路4は、例えば入出力インターフェイス(図示せず)を介し例えば通信回線に接続され、この通信回線に接続された図示しないルートサーバ、他の端末、汎用コンピュータ、及び情報サーバ等との間で情報のやりとりが可能なように構成してもよい。
【0054】
本実施形態の最大の特徴は、質問器100が無線タグ回路素子Toと無線タグ情報の送受信を行うのに先立ち無線タグ回路素子Toからの反射波の受信がない状態で送信部32から搬送波を出力してアンテナ1より送信し、このときの上記RSSI信号を入力した信号処理回路3からの信号に応じて制御回路4がキャンセル信号振幅制御部201及びキャンセル信号位相制御部202への上記振幅制御信号及び位相制御信号を制御して、最も不要波をキャンセルできるような位相および振幅であるキャンセル信号(相殺波)の最適値を設定することにある。以下、その内容を詳細に説明する。
【0055】
前述したように送信部32よりアンテナ1を介し送信される送信波がアンテナ1より受信部33で受信されることで生じる不要波を相殺(キャンセル)するためには、その不要波と同一の位相で振幅が逆の相殺波を発生すればよい。したがって、キャンセル回路200で生成する相殺波の振幅A及び位相Pの両方において、不要波と合致(マッチング)することが必要となる。
【0056】
図4は、本発明における上記相殺波の振幅A及び位相Pのマッチング手法を概念的に説明するための説明図である。図4は、横軸を振幅Aの値、縦軸を位相Pの値にとってP−A線図として表したものであり、上記不要波を相殺できる最適な相殺波の振幅A及び位相Pの値は、このP−A線図上の一点で表されることになる。本発明では、その一点(最適点)を探索して検知するために、図4に示すように、振幅Aの所定範囲(Astart〜Aend)内に所定間隔(△A1)でかつまた位相Pの所定範囲(Pstart〜Pend)内に所定間隔(△P1)で多数のモニターポイントを設定し、各ポイントにおいて順次RSSI回路48からで受信信号強度を測定し、その値が最も小さくなる点を最適点として同定する。
【0057】
特に、本実施形態では、まず図4に示すように振幅の一次探索範囲(Astart〜Aend)及び位相の一次探索範囲(Pstart〜Pend)を比較的大きくとるとともに振幅の一次モニター間隔(△A1)及び位相の一次モニター間隔(△P1)も大きくとって比較的おおざっぱに探索を行い、これらの点の中における最適点(一次最適点;振幅Abest1、位相Pbest1)を一次的に同定する(=ラフマッチング)。
【0058】
その後、図5に示すように、そのおおざっぱに求めた一次最適点近傍において、振幅の二次探索範囲(Astart〜Aend)及び位相の二次探索範囲(Pstart〜Pend)を新たに小さく設定するとともに振幅の二次モニター間隔(△Amin)及び位相の二次モニター間隔(△Pmin)も小さく設定して精密な探索を行い、これらの点の中より最適点(最終最適点;振幅Abest2、位相Pbest2)を最終的に同定する(=ファインマッチング)ようになっている。
【0059】
なお、図5に示した例では、振幅二次探索範囲は、振幅の一次最適値Abest1より振幅一次モニター間隔の前後半分(=△A1/2)の領域とし、位相二次探索範囲は、位相の一次最適値Pbest1より位相一次モニター間隔の前後半分(=△P1/2)の領域とした場合を示しているが、必ずしもこれに限られるものではない。要は、一次最適点を含み一次探索範囲よりも狭い範囲において、一次モニター間隔よりも狭いモニター間隔で精密なマッチングを行える設定であれば足りる。
【0060】
図6は、上記のようなキャンセル信号生成を実現するために、制御回路4が実行する制御手順を表すフローチャートである。
【0061】
図6において、まずステップS10で、制御開始にあたり、例えば各種パラメータのリセット等、質問器100全体に係わる初期化を行う。
【0062】
次に、ステップS100で、無線タグ回路素子Toからの反射信号の受信がない状態で高周波回路2の送信部32よりアンテナ1を介して搬送波の送信を行いつつ、このとき受信部33で受信されRSSI回路48で検出された受信信号強度を信号処理回路3を介して入力する。そして、その受信信号強度の大きさ(不要波の大きさ)が小さくなるように、上記キャンセル回路200のキャンセル信号振幅制御部201及びキャンセル信号位相制御部202へ振幅制御信号及び位相制御信号を出力してキャンセル回路200から発生するキャンセル信号(相殺波)の振幅・位相の調整を行う。なおこのキャンセル回路200での調整は、前述したラフマッチングの後、ファインマッチングを行うことによって能率良く行う。
【0063】
その後、ステップS20で、上記キャンセル回路200の調整を行った後のRSSI回路48での受信信号強度の最終値を、これ以降のキャンセル信号制御におけるしきい値として設定し、適宜の箇所(例えばRAM等の記憶手段)に記憶する。
【0064】
その後、ステップS30に移り、RSSI回路48での現在の受信信号強度が、上記ステップS20で設定したしきい値+所定の余裕値(=α%;αは例えば数%〜20%程度)以下であるかどうかを判定する。
【0065】
ステップS30の判定が満たされた場合、現状でキャンセル信号(相殺波)による不要波の相殺は適切に行われているとみなされてステップS40に移る。
【0066】
ステップS30の判定が満たされなかった場合は、ステップS200に移り、キャンセル信号(相殺波)が不要波の相殺に適切な状態からやや外れた状態となっているとみなされ、ステップS200に移ってキャンセル回路200の微調整を行う。すなわち、再度、反射波の受信がない状態で送信部32よりアンテナ1を介して搬送波の送信を行いつつ、RSSI回路48で検出された受信信号強度の大きさが小さくなるようにキャンセル信号位相制御部202へ位相制御信号を出力し、キャンセル回路200から発生するキャンセル信号(相殺波)の位相の調整を行う。その後、ステップS60に移り、上記ステップS30と同様、RSSI回路48での現在の受信信号強度が上記しきい値+所定の余裕値(=α%;このαはステップS30とは別の値としても良い)以下であるかどうかを判定する。このステップS60の判定が満たされなかった場合、上記のようなキャンセル回路200の微調整では足りず、再度キャンセル回路200の調整のし直し(再調整)が必要とみなされ、ステップS100に戻って同様の手順を繰り返す。ステップS60の判定が満たされた場合、上記キャンセル回路200の微調整によってキャンセル信号による不要波の相殺が適切な状態に復帰したとみなされ、ステップS40に移る。
【0067】
ステップS40では、上記のように適切に設定された相殺波の設定のもと、応答器(無線タグT)の無線タグ回路素子Toへのアクセス(通信)を行い、IC回路部150からの無線タグ情報の読みとり(又はIC回路部150へ無線タグ情報の書き込み)を行う。
【0068】
ステップS40が終了したら、ステップS50に移り、他の応答器(無線タグT)とさらに通信を行うかどうかを判定する。他の無線タグTと通信を行わない場合は判定が満たされてこのフローを終了し、他の無線タグTと通信を行う場合は、ステップS30に戻って同様の手順を繰り返す。
【0069】
図7は、図6におけるステップS100(キャンセル回路の調整手順)の詳細制御手順を表すフローチャートである。
【0070】
図7において、まずステップS110で、例えば上記受信側第1アンプ43及び第2アンプ47に制御信号を出力し、それらより出力される合成信号のゲインを調整する。
【0071】
次に、ステップS120で、キャンセル回路200で生成する相殺波の振幅A及び位相P両方のラフマッチングを行う。すなわち図4を用いて前述したように、振幅・位相の一次探索範囲及び一次モニター間隔をそれぞれ大きくとって上記振幅制御信号及び位相制御信号によって順次キャンセル信号(相殺波)の振幅・位相を変化させ、比較的おおざっぱに探索を行い、それらの中でRSSI回路48による受信信号強度が最小となる振幅・位相の値(一次最適点)を同定する。
【0072】
その後、ステップS140で、キャンセル回路200で生成する相殺波の振幅A及び位相P両方のファインマッチングを行う。すなわち図5を用いて前述したように、上記ラフマッチングの結果に基づき、振幅・位相の二次探索範囲及び二次モニター間隔をそれぞれ比較的小さくして上記振幅制御信号及び位相制御信号によって順次キャンセル信号(相殺波)の振幅・位相を変化させ、精密な探索を行い、それらの中でRSSI回路48による受信信号強度が最小となる振幅・位相の値(最終最適点)を同定する。
【0073】
その後、ステップS160に移り、上記ステップS140で同定した最終的な振幅、位相の最適値(前述の振幅Abest2、位相Pbest2)をそのままキャンセル回路200における最終最適値とするように、キャンセル信号振幅制御部201及びキャンセル信号位相制御部202へ振幅制御信号及び位相制御信号を出力する。
【0074】
そして、ステップS170において、上記ステップS110と同様、例えば再び上記受信側第1アンプ43及び第2アンプ47に制御信号を出力し、それらより出力される合成信号のゲインを調整し、このフローを終了する。
【0075】
図8は、図7におけるステップS120(キャンセル回路のラフマッチング)のさらに詳細な制御手順を表すフローチャートである。
【0076】
図8において、まずステップS121において、後に演算処理判断上必要となる受信信号強度最小値RSSImin1を、適宜の初期値(例えば十分に大きな所定の値)に設定する。
【0077】
その後、ステップS122で、振幅Aの上記一次探索範囲の開始値Astart=Amin、終了値Aend=Amax、上記一次モニター間隔△A=△A1に設定し、位相Pの上記一次探索範囲の開始値Pstart=Pmin、終了値Pend=Pmax、上記一次モニター間隔△P=△P1に設定する。なお、上記Amin、Amax、△A1、Pmin、Pmax、△P1は、例えば予め定められた適宜の所定値である(その都度可変に設定してもよい)。
【0078】
そして、ステップS123で、キャンセル回路200で生成するキャンセル信号の振幅A=Astartとする振幅制御信号をキャンセル信号振幅制御部201へ出力するとともに、位相P=Pstartとする位相制御信号をキャンセル信号位相制御部202へ出力する。
【0079】
その後、ステップS124に移り、現在のRSSI回路48での受信信号強度RSSIcur1を測定し、ステップS125でその測定値が受信信号強度最小値RSSImin1より小さいかどうかを判定する。
【0080】
ステップS125の判定が満たされる場合は、少なくとも現在までのモニター結果の中では振幅・位相に関する最適値となることから、ステップS126に移り、このときの振幅の値Aがラフマッチングによる振幅一次最適値Abest1に設定されるとともに、このときの位相の値Pがラフマッチングによる位相一次最適値Pbest1に設定され、さらにその結果である現在の受信信号強度RSSIcur1が新たな受信信号強度最小値RSSImin1として設定され、ステップS127に移る。
【0081】
ステップS125の判定が満たされない場合は、現在までのモニター結果の中で振幅・位相に関する最適値が他にあることから、ステップS126を経ることなく、直接ステップS127に移る。
【0082】
ステップS127では、位相Pの値が、一次探索範囲の終了値Pendになったかどうかを判定する。判定が満たされない場合、ステップS128に移って位相Pの値にモニター間隔△Pを加え、ステップS124に戻って同様の手順を繰り返す。ステップS127の判定が満たされた場合、ステップS129に移る。ステップS129では、振幅Aの値が、一次探索範囲の終了値Aendになったかどうかを判定する。判定が満たされない場合、ステップS130に移って振幅Aの値にモニター間隔△Aを加え、ステップS131で位相Pの値を一次探索範囲開始値Pstartに戻した後にステップS124に戻って同様の手順を繰り返す。
【0083】
以上により、まずある振幅Aの値において、P=PendになるまでステップS124→ステップS125→(ステップS126)→ステップS127→ステップS128→ステップS125→…と繰り返し、同一振幅Aのままで位相Pの値のみ開始値Pstartから△P刻みで増加させながらPendまで増大していく(前述の図4において、あるAの値の列の最下点から、図4中上方に向かって1つずつ格子を移動させていくことに相当する)。P=PendとなったらステップS127→ステップS129→ステップS130でAの値を△Aだけ加え、ステップS131を経てステップS124に戻る。これによって△Aだけ増加した振幅Aの値において、改めて上記同様P=PendになるまでステップS124→ステップS125→(ステップS126)→ステップS127→ステップS128→ステップS124→…と繰り返し、位相Pの値のみ開始値Pstartから△P刻みで増加させながらPendまで増大していく(図4において前述の列より1つ右側にずれたAの値の列の最下点から上方に向かって1つずつ格子を移動させていくことに相当する)。このような手順をA=Aendとなるまで繰り返すことにより、最終的に振幅AについてAstart〜Aendの一次探索範囲のすべてのモニター値、位相PについてPstart〜Pendの一次探索範囲のすべてのモニター値において、その都度その時点での受信信号強度RSSIcur1の値が測定され、その測定値がそれまでの最小値RSSImin1と比較される。それまでの値より小さければそのときの受信信号強度が最小値RSSImin1として上書き更新され、またそのときの振幅の値A及び振幅の値Pが振幅最適値Abest1及び位相最適値Pbest1としてそれぞれ上書き更新され、おおざっぱな一次探索としてのラフマッチングが実行される。
【0084】
図9は、図7におけるステップS140(キャンセル回路のファインマッチング)のさらに詳細な制御手順を表すフローチャートである。
【0085】
図9において、まずステップS141において、後に演算処理判断上必要となる受信信号強度最小値RSSImin2を、適宜の初期値(例えば十分に大きな所定の値)に設定する。
【0086】
その後、ステップS142で、振幅Aの上記二次探索範囲の開始値を、上記ラフマッチングにおける振幅最適値Abest1及び一次モニター間隔△A1を用いて、Astart=Abest1−△A1/2、終了値Aend=Abest1+△A1/2、上記二次モニター間隔△A=△Amin(例えばシステム上可能な限りの最小単位)に設定し、振幅Pの上記二次探索範囲の開始値を、上記ラフマッチングにおける位相最適値Pbest1及び一次モニター間隔△P1を用いて、Pstart=Pbest1−△P1/2、終了値Pend=Pbest1+△P1/2、上記二次モニター間隔△P=△Pmin(例えばシステム上可能な限りの最小単位)に設定する。
【0087】
そして、ステップS143で、上記図8のステップS123と同様、キャンセル信号の振幅A=Astartとする振幅制御信号をキャンセル信号振幅制御部201へ出力するとともに、位相P=Pstartとする位相制御信号をキャンセル信号位相制御部202へ出力する。
【0088】
その後、ステップS144に移り、現在のRSSI回路48での受信信号強度RSSIcur2を測定し、ステップS145でその測定値が受信信号強度最小値RSSImin2より小さいかどうかを判定する。
【0089】
ステップS145の判定が満たされる場合は、少なくとも現在までの(ファインマッチングの)モニター結果の中では振幅・位相に関する最適値となることから、ステップS146に移り、このときの振幅の値Aがファインマッチングによる振幅二次最適値Abest2に設定されるとともに、このときの位相の値Pがファインマッチングによる位相二次最適値Pbest2に設定され、さらにその結果である現在の受信信号強度RSSIcur2が新たな受信信号強度最小値RSSImin2として設定され、ステップS147に移る。
【0090】
ステップS145の判定が満たされない場合は、現在までの(ファインマッチングの)モニター結果の中で振幅・位相に関する最適値が他にあることから、ステップS146を経ることなく、直接ステップS147に移る。
【0091】
ステップS147では、位相Pの値が、二次探索範囲の終了値Pendになったかどうかを判定する。判定が満たされない場合、ステップS148に移って位相Pの値にモニター間隔△Pを加え、ステップS144に戻って同様の手順を繰り返す。ステップS147の判定が満たされた場合、ステップS149に移る。ステップS149では、振幅Aの値が、二次探索範囲の終了値Aendになったかどうかを判定する。判定が満たされない場合、ステップS150に移って振幅Aの値にモニター間隔△Aを加え、ステップS151で位相Pの値を二次探索範囲開始値Pstartに戻した後にステップS144に戻って同様の手順を繰り返す。
【0092】
以上により、上記ラフマッチングでおおざっぱに同定した一次最適値Abest1,Pbest1の近傍において、まずある振幅Aの値において、P=PendになるまでステップS144→ステップS145→(ステップS146)→ステップS147→ステップS148→ステップS144→…と繰り返し、同一振幅Aのままで位相Pの値のみ開始値Pstartから△P刻みで増加させながらPendまで増大していく(前述の図5において、あるAの値の列の最下点から、図5中上方に向かって1つずつ格子を移動させていくことに相当する)。P=PendとなったらステップS147→ステップS149→ステップS150でAの値を△Aだけ加え、ステップS151を経てステップS144に戻る。これによって△Aだけ増加した振幅Aの値において、改めて上記同様P=PendになるまでステップS144→ステップS145→(ステップS146)→ステップS147→ステップS148→ステップS144→…と繰り返し、位相Pの値のみ開始値Pstartから△P刻みで増加させながらPendまで増大していく(図5において前述の列より1つ右側にずれたAの値の列の最下点から上方に向かって1つずつ格子を移動させていくことに相当する)。このような手順をA=Aendとなるまで繰り返すことにより、最終的に振幅AについてAstart〜Aendの二次探索範囲のすべてのモニター値、位相PについてPstart〜Pendの二次探索範囲のすべてのモニター値において、その都度その時点での受信信号強度RSSIcur2の値が測定され、その測定値がそれまでの最小値RSSImin2と比較される。それまでの値より小さければそのときの受信信号強度が最小値RSSImin2として上書き更新され、またそのときの振幅の値A及び振幅の値Pが振幅最適値Abest2及び位相最適値Pbest2としてそれぞれ上書き更新され、最終的な探索としてのファインマッチングが実行される。
【0093】
図10は、図6におけるステップS200(キャンセル回路の微調整)の詳細な制御手順を表すフローチャートである。このキャンセル回路の微調整は、上記図9に示したファインマッチングの手順と比較的類似しており、キャンセル信号の位相のみについて、比較的小さい微調整用探索範囲を比較的小さいモニター間隔で探索を行うものである。
【0094】
図10において、まずステップS210において、現在のRSSI回路48での受信信号強度RSSIcur3を測定する。
【0095】
次に、ステップS220において、後に演算処理判断上必要となる受信信号強度最小値RSSImin3を、適宜の初期値(例えば十分に大きな所定の値)に設定する。
【0096】
その後、ステップS230で、位相Pの上記微調整用探索範囲を、現在の振幅値Pcurと上記ラフマッチングにおける一次位相モニター間隔△P1を用いて、開始値Pstart=Pcur−△P1/2、終了値Pend=Pcur+△P1/2、上記微調整用モニター間隔△P=△Pmin(例えばシステム上可能な限りの最小単位、但しファインマッチングのときと異なる値に設定してもよい)に設定する。
【0097】
そして、ステップS240で、キャンセル信号の位相P=Pstartとする位相制御信号をキャンセル信号位相制御部202へ出力する。
【0098】
その後、ステップS250に移り、現在のRSSI回路48での受信信号強度RSSIcur3を測定し、ステップS260でその測定値が受信信号強度最小値RSSImin3より小さいかどうかを判定する。
【0099】
ステップS260の判定が満たされる場合は、ステップS270に移り、このときの位相の値Pが微調整後の位相最適値Pbest3に設定され、さらにその結果である現在の受信信号強度RSSIcur3が新たな受信信号強度最小値RSSImin3として設定され、ステップS280に移る。
【0100】
ステップS260の判定が満たされない場合は、ステップS270を経ることなく、直接ステップS280に移る。
【0101】
ステップS280では、位相Pの値が、微調整用探索範囲の終了値Pendになったかどうかを判定する。判定が満たされた場合、このフローを終了する。判定が満たされない場合、ステップS290に移って位相Pの値にモニター間隔△Pを加え、ステップS250に戻って同様の手順を繰り返す。
【0102】
以上により、現在の位相値Pcurの近傍において、P=PendになるまでステップS250→ステップS260→(ステップS270)→ステップS280→ステップS290→ステップS250→…と繰り返し、同一振幅Aのままで位相Pの値のみ開始値Pstartから△P刻みで増加させながらPendまで増大していく。このれにより、最終的に位相PについてPstart〜Pendの微調整用探索範囲のすべてのモニター値において、その都度その時点での受信信号強度RSSIcur3の値が測定され、その測定値がそれまでの最小値RSSImin3と比較される。それまでの値より小さければそのときの受信信号強度が最小値RSSImin3として上書き更新され、またそのときの位相の値Pが位相最適値Pbest3としてそれぞれ上書き更新され、キャンセル回路200の微調整が実行される。なお、以上では微調整時にキャンセル回路200の位相Pのみの調整を行ったが、これに限られず、振幅Aのみの調整を行ってもよいし、位相Pと振幅Aの両方の調整を行ってもよい。いずれにしても、位相P又は振幅Aの少なくとも一方については、前述したキャンセル回路200の調整時のラフマッチング時よりは小さい探索範囲でかつ小さいモニター間隔で調整を行うようにすることが好ましい。
【0103】
図11は、以上のような制御の結果実現されるRSSI回路48の検出受信信号強度の挙動の一例を表す図である。横軸に時間を、縦軸に受信信号強度をとって表している。
【0104】
図11において、当初の受信信号強度の値から、最初にキャンセル回路の調整が行われる(図6のステップS100参照)ことによっていったん受信信号強度は大幅に低減する(図示の(ア))。その後、周囲環境の変化等によって受信信号強度値が変動し、しきい値を前述のα%以上超えるようになると(図示の(イ))、キャンセル回路の微調整(図6のステップS200参照)が行われ、これによって受信信号強度の値は再びしきい値より小さい値に復帰する(図示の(ウ))。その後再び受信信号強度値が変動し、しきい値を大きく超えるようになると(図示の(エ))上記同様にキャンセル回路の微調整が行われるが、これによっても受信信号強度値が上記しきい値+α%以下にならないと(図示の(オ))、最初と同様のキャンセル回路の調整(図6のステップS100)が行われ、これによって受信信号強度の値はしきい値より小さい値に復帰する(図示の(カ))。
【0105】
以上において、制御回路4が、各請求項記載の、搬送波出力手段から搬送波変調手段で変調した送信波を出力して送信手段から送信するのに先立ち、搬送波出力手段から搬送波発生手段の搬送波を出力して送信手段から送信し、信号強度検出手段での検出結果に応じて相殺波発生手段より発生する相殺波の位相及び振幅を変化させ、最適値を設定するように、搬送波発生手段、送信手段、及び相殺波発生手段を制御する相殺波制御手段を構成する。
【0106】
また、制御回路4の実行する図8に示すフロー(ラフマッチング)の手順が、 相殺波の位相及び振幅を一対とし、それらの値を比較的大きな第1の範囲(一次探索範囲)内で比較的大きな第1の間隔(一次モニター間隔)で変化させて各対における信号強度検出手段での検出値を順次取得し、第1の範囲内における一対の位相及び振幅の一次最適値を探索する第1探索手段に相当し、図9に示すフロー(ファインマッチング手順)が、一対の位相及び振幅を、一次最適値近傍の比較的小さな第2の範囲(二次探索範囲)内で比較的小さな第2の間隔(二次モニター間隔)で変化させ各対における信号強度検出手段での検出値を順次取得して、第2の範囲内における最終的な最適値を探索し、これを設定値として選択する第2探索手段に相当する。
【0107】
また制御回路4の実行する制御手順のうち、図6に示すステップS30が、信号強度検出手段での検出結果に応じて、相殺波発生手段における相殺波の位相及び振幅のうち少なくとも一方について既に設定された設定値を変更するかどうかを判定する第1判定手段を構成し、このステップS30で判定に用いるしきい値+α%の値が、一対の位相及び振幅に関する最適値が設定された後にそれに対応して設定された、受信信号強度に関する第1のしきい値に相当する。
【0108】
さらに、制御回路4の実行する図10に示すフロー(キャンセル回路微調整)の手順が、第1判定手段での判定が満たされたときに、位相及び振幅のうち少なくとも一方を設定変更するように、相殺波発生手段を制御する信号を出力する制御信号出力手段に相当する。
【0109】
また、制御回路4の実行する図6に示すフローのステップS60が、第1判定手段での判定が満たされ、制御信号出力手段からの信号により相殺波発生手段の位相及び振幅のうち少なくとも一方が設定変更された後、信号強度検出手段での検出結果に応じて、相殺波発生手段における相殺波の位相及び振幅の設定値を再度変更するかどうかを判定する第3判定手段に相当する。またステップS40が、相殺波制御手段による制御動作を行った直後に送信波を送信手段から応答器へ送信し、その送信された送信波に応じて応答器より送信された返答信号を受信手段で受信するように、送信手段及び受信手段を制御する送受信制御手段に相当する。
【0110】
以上のように構成した本実施形態の質問器100においては、図6のフローのステップS40において無線タグTと本通信を開始する前に、ステップS100にてキャンセル回路200の調整が行われ、高周波回路2の送信部32から搬送波(変調をしないもの)が出力されアンテナ1から送信される。このときの送信信号に基づき不要波が生じて高周波回路2の受信部33にて所定の受信信号強度が発生しうるが、これをキャンセル回路200で発生させた相殺波により相殺する。この相殺した受信信号強度はRSSI回路48で検出され、その検出結果に応じて制御回路4がキャンセル回路200のキャンセル信号振幅制御部201及びキャンセル信号位相制御部202に制御信号を出力して相殺波の位相及び振幅を変化させ、受信信号強度が極力小さくなるような最適値に設定される。
【0111】
以上のように、質問器100と無線タグTとが本通信を開始する前に、その都度、必ず自動的にキャンセル回路200の相殺波の位相と振幅とが最適値となるように調整され設定されるので、例えば1年ごと等に手動にて定期調整を行う程度の従来技術と異なり、周囲環境変化にもリアルタイムに対応し十分に不要波の相殺を行うことができる。この結果、高い受信感度を維持できるので、図6のフローのステップS40において無線タグTと本通信を開始した後に、無線タグTからの受信信号(応答信号)をより明瞭に取得することができる。特に、図6のステップS100でキャンセル回路200の調整を行ってすぐステップS40で本通信(送信波送信及び返答信号受信)を行うので、制御回路4による相殺波の最適化の効果を低減させることなく最大限生かしながら無線タグTとの通信を行うことができる。
【0112】
また上記キャンセル回路200の調整にあっては、前述のラフマッチングでまず大まかに一次探索範囲で位相P及び振幅Aの一次最適値Pbest1,Abest1を探索した後、ファインマッチングでさらに精密に二次探索範囲で最終的な最適値Pbest2,Abest2を探索することにより、最初から精密な最適値を探索する場合に比べ、短時間で能率よく、少ない演算処理負担で、相殺波の位相P及び振幅Aの最終最適値を取得することができる。
【0113】
さらに上記のようにキャンセル回路200を調整した後であっても、受信信号強度が上記しきい値+α%より大きくなると、図6のステップS30で少なくとも相殺波の位相P又は振幅Aのいずれかの設定値を変更すべきと判定され、ステップS200で少なくとも相殺波の位相P又は振幅Aのいずれか(前述の例では位相Pのみ)の設定値を変更する。これにより、当初設定した位相P(又は振幅A)の値をその後も随時環境の変化等に応じて微調整することができる。さらに、このようにして微調整を行った後であっても、ステップS60で位相P(又は振幅A)の設定値を再度変更すべきかどうかを判定するので、環境が大きく変動する等により上記微調整では十分でなかった場合等にも対応し、確実に修正を行うことができる。
【0114】
なお、上記実施形態においては、図6において説明したように、しきい値を1つ設定し、キャンセル回路200の調整後にこのしきい値+α%を超えた場合にはキャンセル回路200の微調整を行うようにしたが、これに限られない。以下、しきい値を2つ設定し、それとの比較に応じてキャンセル回路200の微調整及び再調整を行う変形例を図12及び図13により説明する。上記実施形態と同等の部分及び制御手順には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0115】
図12は、本変形例において制御回路4が実行する制御手順を表すフローチャートであり、前述の図6に対応する図である。
【0116】
図12では、まずステップS10及びステップS100で、上記図6と同様の質問器100全体の初期化及びキャンセル回路200の調整を行った後、新たに設けたステップS300に移る。
【0117】
ステップS300では、RSSI回路48での現在の受信信号強度を測定し、その+x%を第1しきい値、+y%を第2しきい値に設定する(x,yはそれぞれ例えば数%〜20%程度の値で、x<y)以下であるかどうかを判定する。
【0118】
その後、ステップS310で、RSSI回路48での現在の受信信号強度が、上記ステップS300で設定した第2しきい値以下であるかどうかを判定する。
【0119】
ステップS310の判定が満たされなかった場合は、比較的大きい第2しきい値より受信信号強度が大きくなっていることから、再度キャンセル回路200の調整のし直し(再調整)が必要とみなされ、ステップS100に戻って同様の手順を繰り返す。ステップS310の判定が満たされた場合、次のステップS320に移る。
【0120】
ステップS320では、RSSI回路48での現在の受信信号強度が、上記ステップS300で設定した第1しきい値以下であるかどうかを判定する。
【0121】
ステップS320の判定が満たされなかった場合は、上記図6と同様のステップS200に移り、キャンセル信号(相殺波)が不要波の相殺に適切な状態からやや外れた状態となっているとみなされ、キャンセル回路200の微調整を行った後、ステップS40に移る。
【0122】
ステップS320の判定が満たされた場合、現状でキャンセル信号(相殺波)による不要波の相殺は適切に行われているとみなされてステップS200を経ることなくステップS40に移る。
【0123】
ステップS40及びステップS50は、上記図6と同様であり、上記のように適切に設定された相殺波の設定のもと、応答器(無線タグT)の無線タグ回路素子Toへのアクセス(通信)を行った後、他の応答器(無線タグT)とさらに通信を行うかどうかを判定する。他の無線タグTと通信を行わない場合は判定が満たされてこのフローを終了し、他の無線タグTと通信を行う場合は、ステップS310に戻って同様の手順を繰り返す。
【0124】
図13は、上記のような制御の結果実現されるRSSI回路48の検出受信信号強度の挙動の一例を表す図であり、上記実施形態の図11に対応する図である。
【0125】
図13において、当初の受信信号強度の値から、最初にキャンセル回路の調整が行われる(図12のステップS100参照)ことによっていったん受信信号強度は大幅に低減する(図示の(ア))。その後、周囲環境の変化等によって受信信号強度値が変動し、第1のしきい値を超えるようになると(図示の(イ′))、キャンセル回路の微調整(図12のステップS320→ステップS200参照)が行われ、これによって受信信号強度の値は再びしきい値より小さい値に復帰する(図示の(ウ))。その後再び受信信号強度値が変動し、第1のしきい値さらには第2のしきい値を超えるようになると(図示の(エ′))最初と同様のキャンセル回路の調整(図12のステップS100)が行われ、これによって受信信号強度の値はしきい値より小さい値に復帰するとともに、そのときの受信信号強度の値に応じて、第1及び第2のしきい値の値も再設定更新される(図示の(カ′))。
【0126】
以上において、制御回路4が実行する図12に示すフローのステップS320が、各請求項記載の、信号強度検出手段での検出結果に応じて、相殺波発生手段における相殺波の位相及び振幅のうち少なくとも一方について既に設定された設定値を変更するかどうかを判定する第1判定手段に相当し、ステップS310が、第1判定手段で判定が行われる前に、相殺波発生手段における相殺波の位相及び振幅のうち少なくとも一方について既に設定された設定値を変更するかどうかを判定する第2判定手段に相当する。
【0127】
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0128】
またこれに加え、キャンセル回路200の微調整を行うかどうかを判定するステップS320の前に、キャンセル回路200の調整(再調整)を行うかどうかを判定するステップS310を設ける2段判定の構成としていることにより、ステップS310では大きく根本的に設定し直す(本通信前に行った当初の設定と同程度の再設定)必要があるかどうかを判定し、この判定が満たされなかった場合にステップS320で上記ほどではないにしても設定の微調整が必要であるかどうかを判定するといった役割分担を図ることが可能となる。このような位相Pや振幅Aの設定値にどの程度の手直しが必要かに応じて修正要否の判定及びその修正手順を分けることにより、短時間で能率よく、少ない演算処理負担で、相殺波の位相及び振幅の設定値の修正を行うことができる。
【0129】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の一実施形態による質問器を備えた無線通信システムの全体概略を表すシステム構成図である。
【図2】図1に示した無線タグに備えられた無線タグ回路素子の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図3】質問器に備えられた高周波回路の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図4】本発明における相殺波の振幅及び位相のマッチング手法(ラフマッチング)を概念的に説明するための説明図である。
【図5】本発明における相殺波の振幅及び位相のマッチング手法(ファインマッチング)を概念的に説明するための説明図である
【図6】図1に示した制御回路が実行する制御手順を表すフローチャートである。
【図7】図6におけるステップS100の詳細制御手順を表すフローチャートである。
【図8】図7におけるステップS120のさらに詳細な制御手順を表すフローチャートである。
【図9】図7におけるステップS140のさらに詳細な制御手順を表すフローチャートである。
【図10】図6におけるステップS200の詳細な制御手順を表すフローチャートである。
【図11】RSSI回路の検出受信信号強度の挙動の一例を表す図である。
【図12】しきい値を2つ設定し、それとの比較に応じてキャンセル回路の微調整及び再調整を行う変形例において制御回路が実行する制御手順を表すフローチャートである。
【図13】RSSI回路の検出受信信号強度の挙動の一例を表す図である。
【符号の説明】
【0131】
1 アンテナ(送信手段、受信手段)
4 制御回路(相殺波制御手段)
32 送信部(搬送波出力手段)
33 受信部
34 送受分離器(送信手段、受信手段)
35 水晶振動子(搬送波発生手段)
36 PLL(搬送波発生手段)
37 VCO(搬送波発生手段)
38 送信側乗算回路(搬送波変調手段)
48 RSSI回路(信号強度検出手段)
100 質問器
200 キャンセル回路(相殺波発生手段)
S 無線通信システム
T 無線タグ(応答器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応答器へアクセスするための搬送波を発生させる搬送波発生手段と、この搬送波発生手段から発生された搬送波を変調し変調後の搬送波とする搬送波変調手段と、を備え、前記搬送波発生手段又は前記搬送波変調手段からの搬送波を出力する搬送波出力手段と、
この搬送波出力手段から出力された前記搬送波を前記応答器へ送信可能な送信手段と、
この送信手段からの送信信号に応じて前記応答器からの送信信号を受信可能な受信手段と、
この受信手段での信号受信時に、前記送信手段からの送信信号に基づき生じうる不要波を相殺するための相殺波を発生する相殺波発生手段と、
この相殺波発生手段からの前記相殺波により相殺された前記受信手段の受信信号強度を検出する信号強度検出手段と、
前記搬送波出力手段から前記搬送波変調手段で変調した送信波を出力して前記送信手段から送信するのに先立ち、前記搬送波出力手段から前記搬送波発生手段の搬送波を出力して前記送信手段から送信し、前記信号強度検出手段での検出結果に応じて前記相殺波発生手段より発生する前記相殺波の位相及び振幅を変化させ、最適値を設定するように、前記搬送波発生手段、前記送信手段、及び前記相殺波発生手段を制御する相殺波制御手段とを有することを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムの質問器において、
前記相殺波制御手段は、前記信号強度検出手段での検出値を小さくするように、前記相殺波発生手段による前記相殺波の位相及び振幅を変化させ、最適値を設定することを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項3】
請求項2記載の無線通信システムの質問器において、
前記相殺波制御手段は、
前記相殺波の位相及び振幅を一対とし、それらの値を比較的大きな第1の範囲内で比較的大きな第1の間隔で変化させて各対における前記信号強度検出手段での検出値を順次取得し、前記第1の範囲内における前記一対の位相及び振幅の一次最適値を探索する第1探索手段と、
前記一対の位相及び振幅を、前記一次最適値近傍の比較的小さな第2の範囲内で比較的小さな第2の間隔で変化させ各対における前記信号強度検出手段での検出値を順次取得して、前記第2の範囲内における最終的な最適値を探索し、これを設定値として選択する第2探索手段とを備えることを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の無線通信システムの質問器において、
前記相殺波制御手段は、
前記信号強度検出手段での検出結果に応じて、前記相殺波発生手段における前記相殺波の位相及び振幅のうち少なくとも一方について既に設定された前記設定値を変更するかどうかを判定する第1判定手段を備えることを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項5】
請求項4記載の無線通信システムの質問器において、
前記第1判定手段は、前記一対の位相及び振幅に関する最適値が設定された後にそれに対応して設定された、前記受信信号強度に関する第1のしきい値と、前記信号強度検出手段での検出値とを比較し、その検出値が前記第1のしきい値より大きくなるかどうかを判定することを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項6】
請求項5記載の無線通信システムの質問器において、
前記相殺波制御手段は、
前記第1判定手段で判定が行われる前に、前記相殺波発生手段における前記相殺波の位相及び振幅のうち少なくとも一方について既に設定された前記設定値を変更するかどうかを判定する第2判定手段を備えることを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項7】
請求項6記載の無線通信システムの質問器において、
前記第2判定手段は、前記一対の位相及び振幅に関する最適値が設定された後にそれに対応して設定された、前記受信信号強度に関する前記第1のしきい値より大きな第2のしきい値と、前記信号強度検出手段での検出値とを比較し、その検出値が前記第2のしきい値より大きくなるかどうかを判定することを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1項記載の無線通信システムの質問器において、
前記第1判定手段での判定が満たされたときに、前記位相及び前記振幅のうち少なくとも一方を設定変更するように、前記相殺波発生手段を制御する信号を出力する制御信号出力手段を備えることを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項9】
請求項8記載の無線通信システムの質問器において、
前記第1判定手段は、前記信号強度検出手段での検出結果に応じて、前記相殺波発生手段における前記相殺波の位相を設定変更するかどうかを判定し、
前記制御信号出力手段は、前記第1判定手段での判定が満たされたときに、前記位相を設定変更するように、前記相殺波発生手段を制御する信号を出力することを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項10】
請求項9記載の無線通信システムの質問器において、
前記第1判定手段での判定が満たされ、前記制御信号出力手段からの信号により前記相殺波発生手段の前記位相及び前記振幅のうち少なくとも一方が設定変更された後、前記信号強度検出手段での検出結果に応じて、前記相殺波発生手段における前記相殺波の位相及び振幅の前記設定値を再度変更するかどうかを判定する第3判定手段を備えることを特徴とする無線通信システムの質問器。
【請求項11】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の無線通信システムの質問器において、
前記相殺波制御手段による前記制御動作を行った直後に前記送信波を前記送信手段から前記応答器へ送信し、その送信された送信波に応じて前記応答器より送信された返答信号を前記受信手段で受信するように、前記送信手段及び前記受信手段を制御する送受信制御手段とを有することを特徴とする無線通信システムの質問器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−14072(P2006−14072A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190098(P2004−190098)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】