説明

無線通信システム及びコンピュータプログラム

【課題】LCXケーブルを用いた無線通信システムにおいて、セキュリティ性を重視したモードとモビリティ性を重視したモードとを適宜切り替えるための構成を提供すること。
【解決手段】一実施形態に係る無線通信システムは、電波を送受信するアンテナとして機能する漏洩同軸ケーブルと、この漏洩同軸ケーブルに電波を放射させる基地局と、第1のモードおよびこの第1のモードよりも前記漏洩同軸ケーブルから放射される電波によって形成される通信エリアを狭める第2のモードとを切り替える指示を入力する入力手段と、この入力手段によって入力された指示に応じて前記通信エリアを調整する調整手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、LCXケーブル(Leaky Coaxial Cable:漏洩同軸ケーブル)を用いた無線通信システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCXケーブルを用いた無線通信システムが各種の分野で普及しつつある。
LCXケーブルは、同軸ケーブルの外部導体部分にスロットと呼ばれる多数の小孔が設けられたものであり、上記スロットが送受信用のアンテナとして機能するため、ケーブル全体がある放射方向を持つ一つのアンテナとなる。
【0003】
LCXケーブルは、当該ケーブルの近傍において、当該ケーブルの長手方向に沿い通信エリアが形成されるとの特徴を有する。この特徴を活用し、LCXケーブルを用いた無線通信システムは、LCXケーブルから比較的離れた場所からの通信内容の傍聴を防ぎ(セキュリティ性)、かつ通信エリア内ではクライアント端末の自由な配置・移動を許す(モビリティ性)、という二律背反する要素を実現しようとするユニークなシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−236745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような特徴を十分活かすためには、LCXケーブルに接続するアクセスポイントの送信出力を適切なレベルに調整する必要がある。
【0006】
従来の送信出力の調整は手動で行われているため手間がかかり、セキュリティ性を重視した通信エリアで通信を行うモードと、モビリティ性を重視した通信エリアで通信を行うモードとを、無線通信システムの使用状況等に応じて適宜に切り替えることが困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、LCXケーブルを用いた無線通信システムにおいて、セキュリティ性を重視したモードと、モビリティ性を重視したモードとを適宜切り替えるための構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る無線通信システムは、電波を送受信するアンテナとして機能する漏洩同軸ケーブルと、この漏洩同軸ケーブルに電波を放射させる基地局と、第1のモードおよびこの第1のモードよりも前記漏洩同軸ケーブルから放射される電波によって形成される通信エリアを狭める第2のモードとを切り替える指示を入力する入力手段と、この入力手段によって入力された指示に応じて前記通信エリアを調整する調整手段と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】LCXケーブルを用いた無線通信システムの基本的な構成を示す模式図。
【図2】同システムのLCXケーブルを説明するための図。
【図3】同システムの使用態様の一例を示す図。
【図4】同システムの制御構成を示すブロック図。
【図5】同システムが備えるアクセスポイントの動作を説明するためのフローチャート。
【図6】同システムが備えるアクセスポイントの動作を説明するためのフローチャート。
【図7】同システムが備えるアクセスポイントの動作を説明するためのフローチャート。
【図8】同システムにおける動作モードの切り替えに関するクライアント端末及びユーザの動作を説明するためのフローチャート。
【図9】同システムにおけるセキュリティ動作モードへの移行中の報知例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
先ず、本実施形態における特徴的な構成の説明に先立ち、LCXケーブルを用いた無線通信システムの基本的な構成について述べる。
【0011】
図1は、LCXケーブルを用いた無線通信システムの概略構成を示す模式図である。
【0012】
この無線通信システムは、基地局であるアクセスポイント(AP)1と、アプローチケーブル2と、LCXケーブル3と、終端器4とを備える。この無線通信システムは、例えばラップトップPCやPDAなどのクライアント(CL)端末5間の通信や、クライアント端末5とインターネット等のネットワークに接続された機器との通信を仲介する。
【0013】
アクセスポイント1は、送信データを変調した高周波の送信信号をLCXケーブル3に供給するとともに、LCXケーブル3からの出力信号を復調して受信データを生成する。
【0014】
アプローチケーブル2の一端はアクセスポイント1に、他端はLCXケーブル3に、それぞれ図示せぬコネクタを介して接続されている。
【0015】
終端器4は、LCXケーブル3の端部における信号の反射を防止するものであり、LCXケーブル3のアプローチケーブル2が接続されていない側の一端に図示せぬコネクタを介して接続されている。
【0016】
LCXケーブル3は、図2に示すように、中心部分に設けられた断面円形状の例えば銅線である中心導体30、中心導体30の外側を被覆する例えばポリエチレンである絶縁体31、絶縁体31の外側を被覆する例えばパイプ状に加工されたアルミニウムである外部導体32、及び外部導体32の外側を被覆する例えば黒色ポリエチレンであるシース33を有する。
【0017】
外部導体32には、所定形状のスロット32aが多数設けられている。なお、図1においては、本来シース33の下方に隠れるスロット32aを、その数を省略して模式的に示している(図4においても同様)。各スロット32aは、当該無線通信システムにて使用する電波の波長に合せて配置間隔が調整された開放孔であり、それぞれのスロット32aがクライアント端末5との間で電波を送受信するアンテナとして機能する。その結果、LCXケーブル3全体がアレイアンテナのように動作して、LCXケーブル3の長手方向に沿って、LCXケーブル3からの距離が略一様の通信エリアが形成される。
【0018】
なお、電波の送受信方向は、上記スロット32aの形状や間隔に応じてLCXケーブル3に対し所定量だけ傾く。図1においては、電波の送受信方向(図中の矢印)がアプローチケーブル2とLCXケーブル3との接続点(給電点)側に角度θ(0<θ<90)だけ傾いた、いわゆる“バックファイヤ”の例を示している。
【0019】
このような構成の無線通信システムは、例えば図3に示すようにオフィスや会議室の大型テーブルや複数のデスクの集合体(いわゆる“島”)に配置して使用することができる。図示した例では長さが10m程度のLCXケーブル3をテーブル6の中心に沿って配置し、その通信エリアAをテーブル6全体を覆う大きさ(半径1〜2m程度)になるよう調整した場合を示している。このように使用した場合、テーブル6上に置かれたラップトップタイプのPCや椅子7に座った者が手持で操作するタブレット端末等のクライアント端末5は、当該無線通信システムを介した他のクライアント端末5との無線通信やインターネットへの接続が可能となる。
図3に示した他にも、当該無線通信システムは、種々の態様にて使用することができる。
【0020】
次に、本実施形態における無線通信システムの具体的な構成ついて説明する。
[制御構成]
図4は、当該無線通信システムの制御構成を示すブロック図である。
アクセスポイント1は、制御の中枢として機能するCPU(Central Processing Unit)10を備える。このCPU10には、アドレスバスやデータバス等のバスラインを介して、メモリ11、通信I/F(Interface)12、無線I/F13、入力部14、発光部15、スピーカ部16等が接続されている。
【0021】
メモリ11は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)にて構成され、CPU10が実行するコンピュータプログラム等の固定的データを記憶するとともに、処理に応じて各種の作業用記憶領域を形成する。
【0022】
通信I/F12には例えばLANケーブルが接続される。通信I/F12は、当該LANケーブルを介した通信により、当該無線通信システムを各種サーバやインターネット等に接続する。
【0023】
無線I/F13には上記アプローチケーブル2の一端が接続される。無線I/F13は、送信データを変調して高周波の送信信号を生成し、生成した送信信号を図示せぬPAにて増幅した後にLCXケーブル3に供給するとともに、LCXケーブル3からの出力信号を復調して受信データを生成する。
【0024】
さらに、無線I/F13は、上記PAによる信号増幅の目標値を変更することにより、送信出力(送信電力)を調整する機能を備える。LCXケーブル3の周囲には、この送信出力に応じた通信エリアが形成される。
【0025】
入力部14は、各種の操作釦によって構成されている。この入力部14の操作によって、当該無線通信システムの動作モードを、モビリティ性を重視したモビリティ動作モード(第1のモード)と、セキュリティ性を重視したセキュリティ動作モード(第2のモード)との間で切り替えることができる。
【0026】
上記モビリティ動作モードは、LCXケーブル3の通信エリアを可能な限り広くして、当該無線通信システムのモビリティ性を高めるモードである。
一方、上記セキュリティ動作モードは、LCXケーブル3の通信エリアをモビリティ動作モードでの動作時よりも狭め、当該無線通信システムのセキュリティ性を高めるモードである。
【0027】
発光部15は、例えばLEDにて構成される。スピーカ部16は、音声やビープ音を発する。
【0028】
また、CPU10には、アクセスポイント1に設けられたI/Oポートを介して発光部17が接続されている。発光部17は、長尺な棒状部材に例えばLEDを所定間隔で取り付けたものであり、LCXケーブル3の近傍に、LCXケーブル3の長手方向に沿って配置される。
【0029】
発光部15、スピーカ部16、及び発光部17は、動作モードをモビリティ動作モードとセキュリティ動作モードとを切り替える際に、モードが移行中である旨を報知するインジケータとして機能する。
【0030】
[動作]
次に、本実施形態に係る無線通信システムの動作を、図5〜図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
アクセスポイント1への電源供給が開始されるなどして当該無線通信システムが起動されると、アクセスポイント1のCPU10がメモリ11に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、図5〜図7のフローチャートに示す処理の流れで動作する。
【0031】
すなわち、先ずCPU10は、動作モードをモビリティ動作モードに設定し、同モードで動作する(ステップS101)。より具体的には、CPU10は、無線I/F13の送信出力を例えばメモリ11に記憶されたデフォルト値Pd(高出力)に設定する。
【0032】
さらに、ステップS101の処理において、CPU10は、図6のフローチャートに示す副次処理を実行する。すなわち、CPU10は、無線I/F13を介してLCXケーブル3に特定のチャンネル(CH)のビーコンを送信させる(ステップS201)。このビーコンは、モビリティ動作モードでの通信エリア、すなわち送信出力Pdにおける通信エリア内に到達する。なおこの時点において、SSID(Service Set IDentifier)およびWEP(Wired Equivalent Privacy)は、アクセスポイント1及び各クライアント端末5に相互に設定済みであるとする。
【0033】
上記ビーコンを受信したクライアント端末5は、自身のMACアドレスを含むシステム参加通知を、LCXケーブル3を介した無線通信によってアクセスポイント1に返信する。
【0034】
ビーコンを送信した後、CPU10は、各クライアント端末5からのシステム参加通知を無線I/F13に受信させつつ(ステップS202)、各クライアント端末5の当該無線通信システムへの参加終了を待つ(ステップS203のNO)。
【0035】
ステップS202の処理において、無線I/F13がシステム参加通知を受信すると、CPU10は、当該通知に含まれるMACアドレスをメモリ11に記憶する。また、ステップS203の処理においては、例えばビーコンの送信を開始した後、所定時間が経過したことを以ってクライアント端末5の参加が終了したと判定する。
【0036】
クライアント端末5の参加が終了したと判定したとき(ステップS203のYES)、CPU10は、システムに参加するクライアント端末5、すなわち上記システム参加通知を返信したクライアント端末5の一覧を作成し、メモリ11に記憶する(ステップS204)。この一覧は、例えばステップS202の処理にてメモリ11に記憶されたMACアドレスをリスト化したものである。
一覧を作成した後、CPU10は、図5のフローチャートに示す処理に戻る。
【0037】
ステップS101の処理の後、CPU10は、モビリティ動作モードにて動作しつつ、セキュリティ動作モードへの移行指示を待つ(ステップS102のNO)。このような指示は、例えば入力部14の操作によって入力される。あるいは、当該無線通信システムに参加しているクライアント端末5を操作することによって、当該指示が当該クライアント端末5からLCXケーブル3を介した無線通信によりアクセスポイント1に送信されてもよい。
【0038】
セキュリティ動作モードへの移行指示が入力されると(ステップS102のYES)、CPU10は、モードが移行中である旨を報知すべく、前述のインジケータをオンする(ステップS103)。具体的には、CPU10は、発光部15の点灯あるいは点滅、スピーカ16部からモード移行中である旨の音声の出力、発光部17の点灯あるいは点滅、又は、通信エリア内に所在するクライアント端末5への通知のうちのいずれか1つ、又はいずれか複数の組み合せによって、セキュリティ動作モードへ移行中である旨を報知する。上記クライアント端末5への通知においては、例えばLCXケーブル3を介した無線通信により、ステップS204にて作成した一覧にMACアドレスが含まれる各クライアント端末5に対してモード移行中である旨を知らせる。そして、例えば図9に示すように、これら各クライアント端末5の表示部50にセキュリティ動作モードへの移行中を報知するメッセージが記述されたポップアップ51を表示させる。
【0039】
続いて、CPU10は、各クライアント端末5との通信を試みる(ステップS104)。具体的には、図7のフローチャートに示す副次処理を実行する。
すなわち、CPU10は、ステップS204にて作成してメモリ11に記憶した一覧に含まれる各MACアドレスで示されるクライアント端末5に対し、PING(Packet Internet Groper)による確認処理を行う(ステップS301)。この確認処理では、上記一覧に含まれるMACアドレスで示されるクライアント端末5に対し、LCXケーブル3を介した無線通信により所定の質問データを送信する。クライアント端末5は、この質問データを受信すると、自身の無線I/Fが備えるRSSI(Received Signal Strength Indication)測定ユニットによりLCXケーブル3から受信した電波のRSSI値を測定し、少なくとも測定したRSSI値を含む返信データを生成し、この返信データをLCXケーブル3を介した無線通信によりアクセスポイント1に送信する。
【0040】
ステップS302の処理の後、CPU10は、質問データを送信したクライアント端末5からの応答の有無と、応答がなされている場合にはその返信データに含まれるRSSI値とを、メモリ11に記憶する(ステップS302)。
【0041】
このようなステップS301,S302の処理を、ステップS204にて作成してメモリ11に記憶した一覧に含まれる各MACアドレスに対して実行する(ステップS303のNO)。その結果、メモリ11には、上記一覧にMACアドレスが含まれる各クライアント端末5についての応答の有無と、応答があったクライアント端末5からの返信データに含まれるRSSI値とが記憶される。通常、モード移行の当初においては、上記一覧にMACアドレスが含まれる全てのクライアント端末5からの応答が得られる。
【0042】
上記一覧に含まれる全てのMACアドレスに対してステップS302,S303の処理が完了すると(ステップS303のYES)、CPU10は、図5のフローチャートに示す処理に戻る。
【0043】
ステップS104の処理の後、CPU10は、直前のステップS302の処理にてメモリ11に記憶した応答の有無を参照し、上記一覧にMACアドレスが含まれる全てのクライアント端末5から応答が得られているか否かを判定する(ステップS105)。ただし、セキュリティ動作モードへの移行が指示された後、最初に行われるステップS105の処理においては、1つでも応答が得られていないクライアント端末5がある場合、エラー扱いとしてもよい。
【0044】
全てのクライアント端末5から応答が得られている場合(ステップS105のYES)、CPU10は、無線I/F13の送信出力を所定量Ph(Ph<Pd)だけ低下させる(ステップS106)。このPhを極力小さくすることで、より細かく通信エリアを調整できるようになる。
【0045】
なお、ステップS105の処理において、直前のステップS302の処理にてメモリ11に記憶した各クライアント端末5のRSSI値に予め定められた閾値よりも低いものが存在する場合には、そのクライアント端末5からの応答が得られていないとみなしてもよい。上記のような閾値は、正常な通信が行えるRSSI値の範囲と、正常な通信が期待できないRSSI値の範囲とを隔てる値となるように、実験的、経験的、ないしは理論的に定めればよい。
【0046】
ステップS106の処理の後、ステップS104の処理に戻り、ステップS301〜S303,S105の処理を再度実行し、それでもなお全てのクライアント端末5から応答が得られている場合には(ステップS105のYES)、さらに無線I/F13の送信出力を所定量Phだけ低下させる(ステップS106)。
【0047】
このようにステップS104(S301〜S303)、S105、S106の処理が繰り返されると、LCXケーブル3の通信エリアが狭まっていくので、やがて上記一覧にMACアドレスが含まれるクライアント端末5のうちのいずれかから応答が得られなくなる(ステップS105のNO)。
【0048】
この場合、CPU10は、前述のインジケータをオフし(ステップS107)、無線I/F13の送信出力をPhだけ増加させる(ステップS108)。すなわち、直前のステップS106の処理にて低下させる前の状態に無線I/F13の送信出力を戻す。この送信出力においては、上記一覧にMACアドレスが含まれるクライアント端末5の全てがLCXケーブル3の通信エリアに含まれることになる。
【0049】
さらに、CPU10は、上記一覧にMACアドレスが含まれる各クライアント端末5に対して、LCXケーブル3を介した無線通信によりセキュリティ動作モードへの移行完了を通知する(ステップS109)。
【0050】
セキュリティ動作モードへの移行が完了した後、CPU10は、セキュリティ動作モードでの無線通信をクライアント端末5との間で行いつつ、モビリティ動作モードへの移行指示を待つ(ステップS110のNO)。このような指示は、モビリティ動作モードからセキュリティ動作モードへの移行の場合と同様に、入力部14の操作やクライアント端末5の操作によって入力される。
【0051】
モビリティ動作モードへの移行指示が入力されると(ステップS110のYES)、CPU10は、上記一覧にMACアドレスが含まれる各クライアント端末5に対して、LCXケーブル3を介した無線通信により、モビリティ動作モードに移行する旨を通知する(ステップS111)。その後、ステップS101の処理に戻り、無線I/F13の送信出力をデフォルト値であるPdに上昇させて、モビリティ動作モードでの無線通信を行いつつセキュリティ動作モードへの移行指示を待つ(ステップS102のNO)。
【0052】
以上説明したような動作をアクセスポイント1が行う間、クライアント端末5及びクライアント端末5のユーザが行う動作の一例につき、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
ユーザは、クライアント端末5に電源を投入するなどしてクライアント端末5を通常起動し、各種アプリケーション等を利用した通常の動作を行う(ステップS401)。この通常動作において、アクセスポイント1がステップS201の処理で送信するビーコンを受信すると、クライアント端末5は、自身のMACアドレスを含むシステム参加通知を、LCXケーブル3を介した無線通信によってアクセスポイント1に返信する。
【0054】
その後、当該クライアント端末5のユーザや他の者がセキュリティ動作モードへの移行をアクセスポイント1に指示したとき、ユーザはインジケータがオンされたことを確認して(ステップS402のYES)、セキュリティ動作モードでの通信エリアの最外端としたい位置(離隔最大距離)にいずれかのクライアント端末5を配置し、当該クライアント端末5よりもLCXケーブル3側に他のクライアント端末5を配置する(ステップS403)。LCXケーブル3の通信エリアは、終端器4側の端部向けて狭くなるので、終端器4側の端部付近でこのような作業を行えばよい。なお、この例では少なくともモビリティ動作モードでの通信エリアの最外端よりもLCXケーブル3側に、上記離隔最大距離を定めるものとする。
【0055】
その後、クライアント端末5は、アクセスポイント1からの動作モード移行に関する通知を待つ(ステップS404のNO)。ステップS109の処理にてアクセスポイント1から送信される通知をクライアント端末5が受信すると、クライアント端末5は、自身の表示部にセキュリティ動作モードへの移行完了を示すメッセージを表示する(ステップS405)。このメッセージは、例えばクライアント端末5の操作部に対し所定の操作がなされた際に消去される。
【0056】
ステップS404にて受信した通知はセキュリティ動作モードへの移行通知であるので(ステップS406のYES)、クライアント端末5は、再びアクセスポイント1からの動作モードの通知を待つ(ステップS404のNO)。この状態で、クライアント端末5は、セキュリティ動作モードでの無線通信を行う。
【0057】
当該クライアント端末5のユーザや他の者がモビリティ動作モードへの移行をアクセスポイント1に指示し、ステップS111の処理にてアクセスポイント1から送信される通知をクライアント端末5が受信すると(ステップS404のYES)、クライアント端末5は、自身の表示部にモビリティ動作モードへの移行を示すメッセージを表示する(ステップS405)。
【0058】
この場合、ステップS404にて受信した通知はモビリティ動作モードへの移行通知であるので(ステップS406のNO)、ステップS402に戻ってインジケータがオンされるのをユーザが再び待つことになる。なお、この状態において、クライアント端末5はモビリティ動作モードでの無線通信を行うことになる。
【0059】
このように、本実施形態に係る無線通信システムにおいては、モビリティ動作モードと、セキュリティ動作モードとをユーザが適宜に選択し、無線通信システムの通信エリアを変更することができる。
【0060】
また、図5〜図7のフローチャートに示した流れの処理が行われれば、モビリティ動作モードからセキュリティ動作モードへ移行する場合に、モビリティ動作モードで当該無線通信システムに参加していたクライアント端末5が変更後の通信エリアから外れることはない。
【0061】
また、モビリティ動作モードからセキュリティ動作モードへ移行する際には、インジケータによってその旨が報知される。したがって、ユーザにモード移行に要する準備を促すことができる。
【0062】
これらの他にも、本実施形態に係る構成からは、種々の好適な効果が得られる。
【0063】
[変形例]
上記各実施形態に開示された構成は、実施段階において各構成要素を適宜変形して具体化できる。
【0064】
例えば、上記実施形態では動作モードの切り替えに係る処理(ステップS101〜S111,S201〜S204,S301〜S303)がアクセスポイント1にて実行されるとした。しかしながら、これらの処理の少なくとも一部を、アクセスポイント1に接続された他の機器やクライアント端末5等の、無線通信システムに含まれる他のコンピュータに実行させてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、CPU10がメモリ11に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、動作モードの切り替えに係る処理を実現するとした。しかしながら、これに限らず上記コンピュータプログラムを所定のネットワークからアクセスポイント1にダウンロードしてもよいし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものをアクセスポイント1にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROMやUSBメモリ等を利用でき、かつアクセスポイント1に内蔵あるいは接続されたデバイスが読み取り可能な記録媒体であれば、その形態はどのようなものであってもよい。また、このように予めインストールやダウンロードにより得る機能は、アクセスポイント1内部のオペレーティングシステム等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
A…通信エリア、1…アクセスポイント、2…アプローチケーブル、3…LCXケーブル、4…終端器、5…クライアント端末、10…CPU、11…メモリ、14…入力部、15,17…発光部、16…スピーカ部、50…表示部、51…ポップアップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信するアンテナとして機能する漏洩同軸ケーブルと、
この漏洩同軸ケーブルに電波を放射させる基地局と、
第1のモードと、この第1のモードよりも前記漏洩同軸ケーブルから放射される電波によって形成される通信エリアを狭める第2のモードとを切り替える指示を入力する入力手段と、
この入力手段によって入力された指示に応じて前記通信エリアを調整する調整手段と、
を備えていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記調整手段は、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える指示が入力されたとき、前記基地局から前記漏洩同軸ケーブルに供給する送信電力を低下させて前記通信エリアを狭め、前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える指示が入力されたとき、前記基地局から前記漏洩同軸ケーブルに供給する送信電力を上昇させて前記通信エリアを広げることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記調整手段は、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える指示が入力されたとき、前記第1のモードでの前記通信エリア内に所在する無線通信端末が前記第2のモードへの移行後も前記通信エリアから外れないように、前記通信エリアを狭めることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1のモードから前記第2のモードへの移行時に、モードを移行中である旨を報知する報知手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記報知手段は、前記基地局に設けられた発光部の発光、スピーカからの音声出力、前記漏洩同軸ケーブルに沿って配置された発光部の発光、又は、前記通信エリア内に所在する無線通信端末への通知、のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか複数の組み合せによって、モードを移行中である旨を報知することを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
電波を送受信するアンテナとして機能する漏洩同軸ケーブルと、この漏洩同軸ケーブルに電波を放射させる基地局とを備える無線通信システムにおいて、前記漏洩同軸ケーブルから放射される電波によって形成される通信エリアを調整するコンピュータプログラムであって、
前記無線通信システムに含まれるコンピュータに、
第1のモードからこの第1のモードよりも前記通信エリアを狭める第2のモードに切り替える指示が入力されたとき、前記基地局から前記漏洩同軸ケーブルに供給する送信電力を低下させて前記通信エリアを狭める機能と、
前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える指示が入力されたとき、前記基地局から前記漏洩同軸ケーブルに供給する送信電力を上昇させて前記通信エリアを広げる機能と、
を実現させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−31069(P2013−31069A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166741(P2011−166741)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】