説明

無線通信システム

【課題】 視覚障害者が容易に且つ安全に横断歩道を渡り通行することができる無線通信システムを提供することである。
【解決手段】 本発明の無線通信システムは、自機から通信可能範囲内にある携帯電話端末を検索し、交通信号機の状態情報を送信する機能を備えた交通信号機と、前記状態情報を解析しユーザーに音声通知を行う携帯電話端末とから成ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は無線通信システムに関し、詳しくは視覚障害者が安全に横断歩道を通行することができるようにした無線通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、横断歩道には交通信号機が設けられ、歩行者が安全に通行することができるようにされている。
【0003】ところが、視覚障害者などの交通弱者に対しては、通常の交通信号機ではその状態を認識することができず、通行に大変不便である。
【0004】そこで、最近では、横断歩道の交通信号機に「押しボタン」が設けられ、この「押しボタン」が押された場合には、たとえば、交通信号機の状態と連動して音楽が流れ、視覚障害者であっても信号機の状態を認識することができるように工夫されたシステムが提供されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の「押しボタン」を用いたシステムの場合、視覚障害者が、その横断歩道の交通信号機の近傍に設けられた「押しボタン」を探し出し、その位置まで行かなければ「押しボタン」を押すことができず、この行為は視覚障害者にとっては大変困難なことである。
【0006】本発明は上記の点にかんがみてなされたもので、視覚障害者が容易に且つ安全に横断歩道を渡り通行することができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の無線通信システムは上記の目的を達成するために、自機から通信可能範囲内にある携帯電話端末を検索し、交通信号機の状態情報を送信する機能を備えた交通信号機と、前記状態情報を解析しユーザーに音声通知を行う携帯電話端末とから成ることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0009】本発明は、近距離にある端末どうしの通信を実現するブルートゥース(Bluetooth)機能に着目し、このブルートゥース機能を装備した携帯電話端末および交通信号機を用いて、交通弱者が安全に交通信号機のある横断歩道を通行できるシステムを提供するものである。
【0010】横断歩道に設置された交通信号機は、ブルートゥース接続範囲内にある携帯電話端末と接続を行い、交通信号機の状態情報を送信する。
【0011】この状態情報を受信した携帯電話端末は、横断可能状態(=信号機が青色)であると判断した場合は音声によりユーザーにその旨を通知し、ユーザーに横断の意思がある場合は誘導を行う。
【0012】また、横断不可能状態(=信号機が赤色)であると判断した場合は、優先的に交通信号機を通行可能状態(=青色)に変更する要請を交通信号機に対して送信する。その後、横断可能状態(=青色)に変更されたという通知を受信した携帯電話端末は、音声によりユーザーにその旨を通知し、誘導を行う。
【0013】このとき、ユーザーの横断が終了するまでは携帯電話装置内に横断歩道および交通信号機の識別を行うためのID番号を保存し、同一横断歩道内での重複誘導の防止・他の横断歩道との識別を図る。
【0014】また、誘導中に信号機が横断不可能状態(=赤色)変更した場合は割り込み処理を行い、即座にユーザーに信号が変更した旨を伝える。
【0015】図1は、本発明の一実施の形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0016】図1に示すように、本実施の形態による無線通信システムは、携帯電話端末1と交通信号機10とを有して構成される。
【0017】図1において、携帯電話端末1は、命令の制御を行う制御部2と、音声の制御を行う音声部3と、最近使用した信号機ID番号や横断歩道ID番号および交通信号機用認証キーの保存を行うメモリ4と、ブルートゥース通信の制御を行うBT通信部5と、他の端末とのブルートゥース接続認証を行うBT認証部6と、ユーザーからのキー操作を制御する操作部7とを有して構成される。
【0018】また、交通信号機10は、信号の状態制御を行う制御部11と、交通信号機10の状態を検知する検知部12と、ブルートゥース通信可能な携帯電話端末を検出するBT検出部13と、ブルートゥース通信の制御を行うBT通信部14と、携帯電話端末とのブルートゥース接続認証を行うBT認証部15と、自交通信号機に対応する横断歩道ID番号および交通信号機用認証キーを保持しておくメモリ16とを有して構成される。
【0019】次に、図1、図2、図3を参照して、本実施の形態の動作について詳細に説明する。
【0020】まず、携帯電話端末1の初期設定について説明する。
【0021】携帯電話端末1は、自携帯電話端末機に交通信号機10との通信確立用のブルートゥース認証キー(交通信号機用認証キー)を保持しておく。また、携帯電話端末1の電源ON時には、ブルートゥースパワーをONにし、交通信号機10からの接続要求を受け付ける状態としておく。初期電源投入時には、メモリ7内に保持する横断歩道ID番号および信号機ID番号の保存領域はNULLに初期化しておく。
【0022】次に、交通信号機の初期設定について図2を元に説明する。
【0023】図2は、交通信号機の初期設定について説明する図である。
【0024】図2では、2つの横断歩道20および21があり、横断歩道20の両端には交通信号機10aおよび10bが設けられ、横断歩道21の両端には交通信号機10cおよび10dが設けられている場合について説明する。
【0025】交通信号機10aのメモリ16には、信号機ID番号として交通信号機10aを示す“A”が保持され、横断歩道ID番号として横断歩道20を示す“α”が保持される。
【0026】交通信号機10bのメモリ16には、信号機ID番号として交通信号機10bを示す“B”が保持され、横断歩道ID番号として横断歩道20を示す“α”が保持される。
【0027】交通信号機10cのメモリ16には、信号機ID番号として交通信号機10cを示す“C”が保持され、横断歩道ID番号として横断歩道21を示す“β”が保持される。
【0028】交通信号機10dのメモリ16には、信号機ID番号として交通信号機10dを示す“D”が保持され、横断歩道ID番号として横断歩道21を示す“β”が保持される。
【0029】また、交通信号機10a〜10dのそれぞれは、常にブルートゥースパワーをONにした状態となっている。
【0030】次に、交通信号機10が携帯電話端末1に交通信号情報を送信する動作について説明を行う。
【0031】図3は、本実施の形態の動作の流れを示す図である。
【0032】交通信号機10内のBT検出部13では、定期的にブルートゥース通信可能範囲内にある携帯電話端末1の検出を行う。このとき、ブルートゥース通信は複数の携帯電話端末1を検索し、複数の携帯電話端末1と同時に接続することが可能である。
【0033】BT通信部12は、検出された携帯電話端末1のBT通信部5に対して接続要求を行う。
【0034】接続要求を受けたBT通信部5では、接続先が交通信号機10であることを識別すると、交通信号機10のBT通信部14に対して認証要求を行う。認証要求を受けたBT通信部14ではBT認証部15に対して認証命令を通知する。
【0035】BT認証部15は、交通信号認証キーを携帯電話端末1のBT認証部6に対して送信し、BT認証部6は予めメモリ4に保存されていた交通信号認証キーを用いて自動的に認証を行う。
【0036】認証終了後、BT認証部6は交通信号機10のBT通信部14に対して接続許可を通知する。
【0037】接続許可を受けたBT通信部14は、メモリ16内に保持している『信号機ID番号』および『横断歩道ID番号』を携帯電話端末1のBT通信部5に送信する。BT通信部5はそのID番号を制御部2に伝える。以下では、交通信号機10が、図2に示した交通信号機10aである場合について説明する。したがって、ここでは『信号機ID番号』は“A”であり、『横断歩道ID番号』は“α”である。
【0038】横断歩道ID番号Aを受信した携帯電話端末1の制御部2は、メモリ4内のID番号保存領域に保存されている『信号機ID番号』および『横断歩道ID番号』と比較し、以下の処理を行う。
【0039】まず、受信した『横断歩道ID番号』とメモリ4内の『横断歩道ID番号』とが異なる場合には、ユーザーが新たな横断歩道に近づいたとみなし、以下に説明する(A−8)以降の処理を行う。
【0040】また、受信した『横断歩道ID番号』とメモリ4内の『横断歩道ID番号』とが同一であり、受信した『信号機ID番号』とメモリ4内の『信号機ID番号』とが異なる場合には、ユーザーが横断歩道を渡ってきて渡り終えようとしているとみなし、以下に説明する(B−8)以降の処理を行う。
【0041】また、受信した『横断歩道ID番号』とメモリ4内の『横断歩道ID番号』とが同一であり、受信した『信号機ID番号』とメモリ4内の『信号機ID番号』とが同一の場合には、既にユーザーから「横断しない」意思を受け取った「同一交通信号機」だとみなし、以下に説明する(C−8)の処理を行う。
【0042】ここで、(A−8)以降の処理について説明する。
【0043】上述のように、この処理は、新たな横断歩道の場合の処理である。
【0044】まず、(A−8)において、メモリ4内の『横断歩道ID番号』と異なる『横断歩道ID番号』を受信した制御部2では、メモリ4内のID番号保存領域に受信した『横断歩道ID番号』および『信号機ID番号』の値を上書きする。
【0045】次に、(A−9)において、制御部2は、BT通信部5を介し、交通信号機10のBT通信部14に対して信号状態情報を要求する。
【0046】(A−10)において、信号状態情報の要求を受けたBT通信部14は、検知部12により現在の交通信号状態を検知し、その状態情報を携帯電話端末1のBT通信部5に送信する。
【0047】(A−11)において、状態情報を受信したBT通信部5は制御部2に情報を伝え、制御部2は、それが「通行可能状態」を表す信号だと判断すると(A−12)以降の処理を行う。「通行不可能状態」を表す信号だと判断すると(A−11−1)以降の処理を行う。
【0048】ここで、横断不可能状態である場合の追加処理について説明する。
【0049】(A−11−1)において、通行不可能状態を表す信号だと判断すると、携帯電話端末1の音声部3を使用してユーザーに「通行不可能であること」を音声で知らせる。
【0050】また、(A−11−2)において、BT通信部5に対して信号変更要請を送信する命令を行う。BT通信部5は交通信号機10のBT通信部14に交通信号の変更要請を送信し、BT通信部14はそれを制御部11に伝える。
【0051】(A−11−3)において、制御部11では、交通信号の変更処理を行う。
【0052】(A−11−4)において、交通信号機10の検知部12は、交通信号が通行可能な状態に変更されたことを検知すると、携帯電話端末1のBT通信部5に交通信号装置の状態情報を送信する。BT通信部5はその情報を制御部2に伝える。
【0053】(A−12)において、状態情報を受信した携帯電話端末1のBT通信部5は制御部2に情報を伝え、制御部2は、それが通行可能状態を表す信号だと判断すると、音声部3を使用してユーザーに「通行可能であること」および「横断の意思確認」を音声で知らせる。
【0054】(A−13)において、音声により通知を受けたユーザーは、操作部7により「横断する」・「しない」の意思を通知する。操作部7は制御部2に対してその結果を伝える。
【0055】(A−14)において、「横断する」意思を通知された制御部2は、音声部3を介してユーザーに横断するよう指示を出す。ユーザーがブルートゥース通信可能領域を越えるとブルートゥース通信は切断され、再びブルートゥース通信の接続要求を待つ。
【0056】(A−15)において、「横断しない」意思を通知された制御部2は、ユーザーに通信を切断する旨を通知。ブルートゥース通信を切断し、再びブルートゥース通信の接続要求を待つ。
【0057】(A−16)において、以上(A−12)〜(A−15)の処理中であっても、交通信号機10の検知部12は、交通信号が通行不可能な状態に変更されたことを検知すると、携帯電話端末1のBT通信部5に交通信号装置の状態変更の割り込み通知を行う。BT通信部5はその情報を制御部2に伝え、(A−11−1)の処理を行うこととする。
【0058】次に、(B−8)以降の処理について説明する。
【0059】(B−8)において、受信した『横断歩道ID番号』とメモリ4内の『横断歩道ID番号』とが同一であり、受信した『信号機ID番号』とメモリ4内の『信号機ID番号』とが異なる場合には、携帯電話端末1の制御部2は、横断歩道の通行が終わったとみなし、音声部3を使用してユーザーに通行完了であることを音声で知らせる。
【0060】その後、(B−9)において、メモリ7内の横断歩道ID番号/信号機ID番号保存領域をNULLに初期化し、ブルートゥース通信を切断する。
【0061】次に、(C−8)の処理について説明する。
【0062】(C−8)において、受信した『横断歩道ID番号』とメモリ4内の『横断歩道ID番号』とが同一であり、受信した『信号機ID番号』とメモリ4内の『信号機ID番号』とが同一の場合には、携帯電話端末1の制御部2は、既にユーザーから「横断しない」意思を受信済みの交通信号機だとみなし、ブルートゥース通信を確立しない。
【0063】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、近距離にある端末と通信が可能なブルートゥース機能を装備した携帯電話端末および交通信号機を用いて、交通信号機のある横断歩道を交通弱者が安全に通行できる無線通信システムを提供することができる。
【0064】交通信号機は、近隣にある携帯電話端末を検索し、自交通信号機の存在を携帯電話端末に対して通知する。これにより、通知を受けた携帯電話端末はユーザーに信号機の存在を音声通知することが可能となる。
【0065】携帯電話端末は、近隣にある交通信号機から信号機の状態を受信・解析することにより、ユーザーに信号機の状態(横断可・不可)を音声通知することが可能となる。
【0066】交通信号機が「赤」で通行不可能であった場合は優先的に「青」に変更する要求を送信し、押しボタンを押さずとも信号を変更させることが可能となる。
【0067】横断が完了するまで当該横断歩道および交通信号機のID番号を携帯電話端末内に保存することにより、近くにある他の横断歩道との識別を行うことが可能となる。また、横断中に再度通知を行う等の紛らわしい誘導を避けることが可能となる。
【0068】横断が完了するまで当該横断歩道および交通信号機のID番号を携帯電話端末内に保存することにより、横断が完了したことをユーザーに通知することが可能となる。
【0069】誘導中に交通信号機が横断不可能状態(=赤色)変更した場合は割り込み処理を行うことにより、即座にユーザーに信号が変更した旨を伝えることが可能となる。
【0070】上記通信を低電波を使用するブルートゥース通信にて行うことにより、医療機器を所有するユーザーの電波障害を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】交通信号機の初期設定について説明する図である。
【図3】本実施の形態の動作の流れを示す図である。
【符号の説明】
1 携帯電話端末
2 制御部
3 音声部
4 メモリ
5 BT通信部
6 BT認証部
7 操作部
10 交通信号機
11 制御部
12 検知部
13 BT検出部
14 BT通信部
15 BT認証部
16 メモリ
20、21 横断歩道
10a、10b、10c、10d 交通信号機

【特許請求の範囲】
【請求項1】 自機から通信可能範囲内にある携帯電話端末を検索し、交通信号機の状態情報を送信する機能を備えた交通信号機と、前記状態情報を解析しユーザーに音声通知を行う携帯電話端末とから成ることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】 自機から通信可能範囲内にある携帯電話端末を検索し、交通信号機の状態情報を送信する機能を備えた交通信号機と、前記状態情報を解析し通行不可能な状態であった場合は前記交通信号機に対して信号変更要請を行う機能を備えた携帯電話端末とから成ることを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】 請求項1に記載の無線通信システムにおける携帯電話端末であって、横断歩道を識別する横断歩道ID番号および交通信号機を識別する信号機ID番号を保持する領域を有し、横断歩道通行時に両ID番号の保存を行い、横断歩道通行完了時に両ID保存領域のクリアを行い、同一横断歩道ID番号且つ異信号機ID番号からの再接続時は横断完了の通知をユーザーに対して行い、異横断歩道ID番号からの接続時は新たに交通信号機の状態をユーザーに対して通知することを特徴とする携帯電話端末。
【請求項4】 請求項1に記載の無線通信システムにおける携帯電話端末であって、ユーザーに横断の意思の有無を問う機能を有し、意思のある場合は誘導を行い、意思の無い場合は通信を切断し、他の交通信号機からの接続要求のみに応答する機能を備えたことを特徴とする携帯電話端末。
【請求項5】 請求項1に記載の無線通信システムにおける交通信号機であって、ユーザーの誘導中に交通信号機が横断不可能状態に変更したことを検知し、携帯電話端末に対し割り込み通知を行うことを特徴とする交通信号機。
【請求項6】 請求項1に記載の無線通信システムにおける携帯電話端末であって、交通信号機からの割り込み通知に対応し、ユーザーに信号状態変更を通知する機能を備えたことを特徴とする携帯電話端末。
【請求項7】 前記交通信号機と前記携帯電話端末との通信手段に、弱電波であるブルートゥース通信を用いたことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項8】 請求項1に記載の無線通信システムにおける携帯電話端末であって、電源ON時にブルートゥースパワーをONにし、交通信号装置からのブルートゥース接続を優先的に許可する機能を備えたことを特徴とする携帯電話端末。
【請求項9】 請求項1に記載の無線通信システムにおける携帯電話端末であって、交通信号機からの通信接続要求を識別し、予め自携帯電話端末内に保存された交通信号機用の共通認証キーにより自動的に認証を行い接続許可を行う機能を備えたことを特徴とする携帯電話端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−352379(P2002−352379A)
【公開日】平成14年12月6日(2002.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−158950(P2001−158950)
【出願日】平成13年5月28日(2001.5.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】