説明

無線通信システム

【課題】RFIDタグとの間で通信を行うための複数台のリーダライタを互いに近接した状態で配置する場合であっても、各リーダライタ間での電波干渉に起因した通信障害の発生を、良好な通信品質を確保した状態で抑止可能にすること。
【解決手段】システムコントローラは、複数のリーダライタに対して、無変調信号より成るデフォルト出力レベルのテスト信号の送信動作を順次指令し(S2)、リーダライタからテスト信号が送信された状態時に、他のリーダライタにおいて測定したテスト信号の受信レベルを収集し(S3)、収集した受信レベルの中に予め設定された非干渉レベルを超えたものがあった場合に(S4:YES)、テスト信号の送信源となったリーダライタの送信レベルを、当該リーダライタとその通信エリア内に進入したRFIDタグとの間の通信に必要な最小送信レベルを下回らない範囲で低下させる(S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグとの間で電波を媒体とした通信を行う複数台のリーダライタを互いに近接した状態で配置して成る無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、UHF帯の信号を利用するRFIDタグとの間で通信を行うための無線通信システム(RFIDシステム)においては、自身の通信エリア内に任意のタイミングで進入してくるRFIDタグとの間で通信を行うための複数台のリーダライタを、互いに近接した状態で配置したレイアウトで使用される場合がある。ところが、この種の無線通信システムでは、使用周波数帯が非常に狭い帯域に制限されるという事情があるため、複数台のリーダライタが上記のようなレイアウトとされた状態において、各リーダライタが同時に通信を開始した場合には、それらリーダライタ間での電波干渉に起因した通信障害を発生する可能性がある。このため、従来では、各リーダライタの通信時期を1台ずつ重ならないようにずらすという時分割制御を行うことにより、リーダライタ間での電波干渉を防止することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−361915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
RFIDタグとの通信を行う無線通信システムでは、送信信号に対して振幅変位(ASK)などを利用したデジタル変調をかける構成とされるのが一般的であるが、その変調時には、送信信号の中心周波数の周りに不要側波帯が形成されるという事情がある。このため、従来のような時分割制御を行ったとしても、上記不要側波帯の信号成分によってリーダライタ間での電波干渉が発生し、これが通信障害の原因になることが避けられないという問題点があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、RFIDタグとの間で通信を行うための複数台のリーダライタを互いに近接した状態で配置する場合であっても、各リーダライタ間での電波干渉に起因した通信障害の発生を、良好な通信品質を確保した状態で効果的に抑止可能になる無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の手段によれば、システムコントローラ側に備えられた送信指令手段から、複数のリーダライタに備えられたテスト信号送信手段に対して、テスト信号の送信動作を行うように順次指令される。すると、上記テスト信号送信手段が、RFIDタグとの通信エリアへ向けて予め設定された送信レベルのテスト信号(電波を媒体とした信号)を送信する動作を順次実行するようになる。このようにして所定のリーダライタからテスト信号が出力された各場合には、これ以外のリーダライタに備えられた受信レベル測定手段が、テスト信号の受信レベルを測定するようになる。
【0006】
上記のようにリーダライタからテスト信号が送信された各状態時には、システムコントローラに備えられたモニタ手段が、他のリーダライタにおける受信レベル測定手段において測定された受信レベルを、当該リーダライタに備えられた受信レベル通知手段を通じて収集するようになる。また、このようにモニタ手段が収集した受信レベルの中に予め設定された非干渉レベルを超えたものがあったときには、システムコントローラに備えられた送信レベル指令手段が、そのときのテスト信号の送信源となったリーダライタに備えられた送信レベル変更手段に対して、当該リーダライタとその通信エリア内に進入したRFIDタグとの間の通信に必要な最小送信レベルを下回らない範囲で送信レベルを低下させる指令を発するようになり、これに応じて、当該リーダライタの送信レベルが、より低いレベルに設定されることになる。
【0007】
つまり、各リーダライタから個別にテスト信号を送信させたときに、他のリーダライタの中に当該テスト信号の受信レベルが非干渉レベルを超えたリーダライタが存在した場合には、そのテスト信号の送信源となったリーダライタの送信レベルが、RFIDタグとの間の通信に必要な最小送信レベルを下回らない範囲で低下されるものであり、この結果、複数台のリーダライタを互いに近接した状態で配置する場合であっても、各リーダライタ間での電波干渉に起因した通信障害の発生を、良好な通信品質を確保した状態で効果的に抑止可能になるものである。
【0008】
請求項2記載の手段によれば、リーダライタにおいて前述のようなテスト信号の送信が行われた状態時に、システムコントローラ側のモニタ手段が収集した受信レベルが予め設定された非干渉レベル未満であった場合には、当該システムコントローラに備えられた送信レベル指令手段から、前記テスト信号の送信源となったリーダライタに備えられた前記送信レベル変更手段に対して、その送信レベルを上昇させるように指令するようになり、これに応じて、当該リーダライタの送信レベルが、より高いレベルに設定されることになる。また、システムコントローラは、上記のような送信レベルの上昇指令を発した後には、前述した送信指令手段、モニタ手段及び送信レベル指令手段に設定された動作(テスト信号送信手段に対して、テスト信号の送信動作を行うように順次指令する動作、リーダライタ側で測定された受信レベルを収集する動作、収集した受信レベルが予め設定された非干渉レベルを超えた状態にあった場合に、テスト信号の送信源となったリーダライタの送信レベルを低下させる動作)を再実行するようになる。従って、リーダライタの送信レベルがより高いレベルに設定されたことにより、テスト信号の受信レベルが非干渉レベルを超えるリーダライタが出現した場合には、当該テスト信号の送信源となったリーダライタの送信レベルが、RFIDタグとの間の通信に必要な最小送信レベルを下回らない範囲で低下されるようになる。
【0009】
この結果、テスト信号の受信レベルが非干渉レベルより低い場合、つまり、各リーダライタ間での電波干渉に起因した通信障害が発生する恐れがない場合には、リーダライタの送信レベルが、通信障害を発生しないレベルまで引き上げられることになるから、RFIDタグとの間の通信品質の向上を図り得るようになる。
【0010】
請求項3記載の手段によれば、システムコントローラに設定された学習機能により、複数台のリーダライタに対して、RFIDタグとの通信頻度順に優先順位が付与される。また、システムコントローラに備えられた送信レベル指令手段は、請求項2記載の手段で述べたような指令動作、つまり、リーダライタに対して送信レベルを上昇させるように指令する動作を、前記優先順位が高いものから順に実行するようになる。この結果、通信頻度が高いリーダライタの送信レベルが、通信障害を発生しないレベルまで優先的に引き上げられることになるから、無線通信システム全体の信頼性を高める上で有益になる。
【0011】
請求項4記載の手段によれば、上記請求項3記載の手段のように、リーダライタに対して送信レベルを上昇させるように指令する動作を優先順位が高いものから順に実行する場合において、当該優先順位が所定順位以下のリーダライタについては、その送信レベルが維持若しくは低下されるようになるから、そのリーダライタから優先順位が高いリーダライタに対する電波干渉の影響を抑制する方向に機能することになり、無線通信システム全体の信頼性を高める上で有益になる。
【0012】
請求項5記載の手段によれば、システムコントローラ側からの指令によりリーダライタの送信レベルを低下させたにも拘らず、モニタ手段が収集したリーダライタでの測定受信レベルが非干渉レベルを超えた状態にあった場合には、システムコントローラに備えられた送信タイミング指示手段が、送信側のリーダライタ及びこれと電波干渉を生ずる可能性がある他のリーダライタの送信動作の実施タイミングを時分割制御するようになる。この結果、送信レベルを下げるだけではリーダライタ間の電波干渉を回避できない場合でも、上記のような時分割制御により電波干渉の発生を極力抑制できるようになる。
【0013】
請求項6記載の手段によれば、テスト信号の送信源となったリーダライタの特定を、そのテスト信号に含まれる識別コードに基づいて確実に行い得るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をRFIDタグシステムに適用した一実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本実施例によるRFIDシステムの基本構成が模式的に示されている。この図1において、ベルトコンベヤ1は、RFIDタグ(図2に符号2を付して示す)が取り付けられた物品(図示せず)を図中矢印A方向へ搬送するためのもので、そのベルトコンベヤ1の例えば両側には、所定範囲の通信エリア(ベルトコンベヤ1上のRFIDタグ2と通信可能なエリア)を備えた複数のリーダライタ3が互いに近接した状態で配置されている。尚、図1には、6台のリーダライタ3を設けた例が示されており、ここでは、説明の便宜上、各リーダライタ3に対して通し番号「1」〜「6」を付した状態を図示している。
【0015】
システムコントローラ4は、各リーダライタ3と間での通信を、通信線5を介して実行する構成となっている。尚、システムコントローラ4には、複数台のリーダライタ3におけるRFIDタグとの通信頻度を管理すると共に、各リーダライタ3に対して、上記通信頻度順に優先順位を付与するという通信頻度学習機能が設定されている。また、システムコントローラ4及びリーダライタ3間の通信は、有線方式による手段に限らず、無線LANなどの無線方式による手段を利用する構成としても良い。
【0016】
図2には、リーダライタ3の電気的構成が機能ブロックの組み合わせにより示されている。この図2において、リーダライタ3は、その制御要素として、例えばワンチップマイコンにより構成された制御部6(テスト信号送信手段、受信レベル通知手段、送信レベル変更手段に相当)を備えた構成となっており、この制御部6と前記通信線5との間には、システムコントローラ4との通信を行うための通信インタフェース7が接続されている。
【0017】
制御部6から出力される送信データが入力される符号化部8は、入力された送信データを符号化して変調部9に与える。この変調部9は、発振器10から出力される所定周波数(例えばUHF帯の周波数)のキャリア信号と、符号化部8から出力される符号化信号(変調信号)とを乗算することでASK変調した被変調信号を可変利得増幅器11へ出力する。尚、発振器10の発振動作は制御部6によって制御される。
【0018】
可変利得増幅器11は、その増幅率が制御部6からの指令に応じて変更される構成となっており、変調部9からの被変調信号を増幅した信号を、電力増幅器11a及び高周波スイッチとしての例えばサーキュレータ12を介してアンテナ13へ出力する。これにより、制御部6から出力される送信データに応じたデータ信号が、可変利得増幅器11及び電力増幅器11aの増幅率に応じた所定の出力電力の電波信号としてアンテナ13から送信され、このように送信されるデータ信号を、リーダライタ3による通信エリア内に存在するRFIDタグ2が受信することになる。尚、図示しないが、実際には、可変利得増幅器11の前段または後段に送信部フィルタを挿入することが行われる。
【0019】
アンテナ13による受信信号(RFIDタグ2からの信号)は、サーキュレータ12から増幅器14に与えられる構成となっており、ここで増幅された受信信号が復調部15に与えられて復調される(但し、増幅器14は必要に応じて設ければ良い)。この復調部15で復調された信号波形は、二値化処理部16において二値化された後に、復号化部17において復号化され、このように復号化された受信信号が制御部6に与えられる。尚、図示しないが、実際には、増幅器14の前段に受信部フィルタを挿入することが行われる。
【0020】
受信レベル測定部18(受信レベル測定手段に相当)は、増幅器14で増幅された受信信号に基づいて、アンテナ13により受信レベルを測定する構成となっており、この受信レベル測定部18による測定結果は、二値化処理部19において二値化データとされた後に制御部6に与えられる。
【0021】
上記リーダライタ3において、制御部6は、アンテナ13を通じたデータ信号の送信動作をシステムコントローラ4からの指令に基づいて実行すると共に、RFIDタグ2から受信した信号を所定形式のデータ信号に変換してシステムコントローラ4へ送信する動作を実行する構成とされたものであるが、本実施例では、以下のような動作も実行する構成となっている。
【0022】
即ち、制御部6は、システムコントローラ4から後述するようなタイミングでテスト信号送信指令が与えられたときに、無変調波信号より成るテスト信号をアンテナ13から送信させるための動作を例えば1秒以下の比較的短い時間だけ実行する構成となっている。つまり、制御部6は、変調部9に対して変調信号を与えない状態(符号化部8に送信データを与えない状態)で、発振器10の発振動作を所定時間だけ実行するものであり、これにより、アンテナ13からテスト信号が送信されることになる。尚、テスト信号の送信レベルは、その送信時点で設定されている電波信号出力レベル(可変利得増幅器11の増幅率に依存)により決まるものである。
【0023】
また、制御部6にあっては、他のリーダライタ3から送信されるテスト信号をアンテナ13により受信したときに、受信レベル測定部18により測定した受信レベル(二値化処理部19において二値化されたデータ)を一時的に記憶し、その記憶受信レベル(テスト信号の受信レベル測定結果)をシステムコントローラ4へ通知する構成となっている。
【0024】
さらに、制御部6にあっては、システムコントローラ4から後述するようなタイミングで送信レベル変更指令が与えられたときに、可変利得増幅器11の増幅率を当該送信レベル変更指令に応じた値に変更することにより、アンテナ13からの電波信号出力レベルを指令されたレベルに変更する構成となっている。
【0025】
さて、図示しないが、上記システムコントローラ4は、本発明でいう送信指令手段、モニタ手段、送信レベル指令手段、送信タイミング指示手段の機能を実現するための制御回路(図示せず)を備えた構成となっている。図3のフローチャートには、当該制御回路による制御内容のうち本発明の要旨に関係した部分が示されており、以下これについて説明する。尚、図3中では、リーダライタを「R/W」と表記している。
【0026】
即ち、このフローチャートは、各リーダライタ3からの信号送信レベル(アンテナ13からの送信信号の出力レベル)を決定するために、例えばシステムの立ち上げ直後に実行される送信レベル設定ルーチンの内容を示すものであり、このルーチンでは、最初に、整数型の変数nをリーダライタ3の設置台数(本実施例の場合は「6」)に設定する(ステップS1)。
【0027】
この後には、通し番号がn番目のリーダライタ3に対して、テスト信号送信指令を出力することにより、当該リーダライタ3から前述したテスト信号(無変調波信号)を短時間だけ送信させる(ステップS2)。尚、このときのテスト信号の送信レベルは、デフォルト出力レベル、つまりリーダライタ3に初期値として予め設定されている電波信号出力レベルとなるものである。
【0028】
次いで、上記テスト信号の送信源以外のリーダライタ3群から、テスト信号の受信レベル測定結果を収集し(ステップS3)、予め設定された非干渉レベルを超えた状態の測定結果があるか否かを判断する(ステップS4)。尚、上記非干渉レベルは、例えば、リーダライタ3において電波干渉に起因した通信障害が発生する可能性がある受信レベルに設定される。
【0029】
ステップS4で「YES」と判断した場合(テスト信号の送信源以外のリーダライタ3の少なくとも1台で、テスト信号の受信レベル測定結果が非干渉レベルを超えた場合)には、通し番号がn番目のリーダライタ3(テスト信号の送信源)に対して、送信レベル変更指令を送信することにより、当該リーダライタ3の送信レベル(電波信号出力レベル)を、予め設定された最小送信レベル(リーダライタ3とその通信エリア内に進入したRFIDタグ2との間の通信に必要なレベル)未満とならないレベルに低下させる(ステップS5)。つまり、このステップS5の実行に応じて、送信レベル変更指令の送信先となったリーダライタ3の送信レベルが新たなレベルに設定されることになる。
【0030】
この後には、所定のバッファメモリにn(つまり、送信レベルの変更設定が行なわれたリーダライタ3の通し番号)を記憶するステップS6、変数nを「1」だけデクリメントするステップS7を順次実行する。また、前記ステップS4で「NO」と判断した場合(テスト信号の受信レベル測定結果が非干渉レベルを超えたリーダライタ3が存在しなかった場合)には、ステップS5及びS6をジャンプしてステップS7を実行する。
【0031】
上記ステップS7の実行後には、変数nが「0」であるか否かを判断し(ステップS8)、「NO」の場合にはステップS2以降の処理を再実行する。これにより、6台のリーダライタ3からテスト信号を送信する動作が順番に行われると共に、このような送信動作が行われた各期間においてテスト信号の受信レベル測定結果が非干渉レベルを超えたリーダライタ3が存在した場合には、テスト信号の送信源となったリーダライタ3の送信レベルが、予め設定された最小送信レベル未満とならないレベルに低下されることになる。また、このように送信レベルが変更されたリーダライタ(以下、監視対象リーダライタと呼ぶ)3については、その通し番号がバッファメモリに記憶されることになる。
【0032】
ステップS8で「YES」と判断した場合、つまり、6台のリーダライタ3の全部においてデフォルト出力レベルのテスト信号の送信動作が終了した場合には、バッファメモリに通し番号が記憶されているか否かを判断する(ステップS9)。
【0033】
バッファメモリに通し番号が記憶されていなかった場合(監視対象リーダライタ3が存在しない場合)には、そのまま送信レベル設定ルーチンを終了するが、通し番号が記憶されていた場合(監視対象リーダライタ3が存在する場合)には、その監視対象リーダライタ3のうち、例えば通し番号が最も若いリーダライタ3に対して、テスト信号送信指令を出力することにより、当該リーダライタ3からテスト信号(無変調波信号)を短時間だけ送信させる(ステップS10)。尚、このときのテスト信号の送信レベルは、前記ステップS5の実行に応じて新たに設定されたレベルとなるものである。
【0034】
次いで、上記テスト信号の送信源以外のリーダライタ3群から、テスト信号の受信レベル測定結果を収集し(ステップS11)、非干渉レベル(リーダライタ3において電波干渉に起因した通信障害が発生する可能性がある受信レベル)を超えた状態の測定結果があるか否かを判断する(ステップS12)。
【0035】
ステップS12で「YES」と判断した場合(テスト信号の送信源以外のリーダライタ3の少なくとも1台で、テスト信号の受信レベル測定結果が非干渉レベルを超えた場合)には、テスト信号の送信源となった監視対象リーダライタ3を時分割制御候補として登録する(ステップS13)。
【0036】
次いで、バッファメモリに記憶された通し番号のうち、テスト信号の送信が済んだ監視対象リーダライタ3の通し番号を消去し(ステップS14)、バッファメモリが初期状態(通し番号が記憶されていない状態)にあるか否かを判断する(ステップS15)。このステップS15で「NO」と判断した場合にはステップS10以降の処理を再実行し、「YES」と判断した場合には、そのまま送信レベル設定ルーチンを終了する。
【0037】
これにより、監視対象リーダライタ3が1台のみであったときには、その監視対象リーダライタ3からテスト信号を送信する動作が行われると共に、このような送信動作が行われた期間においてテスト信号の受信レベル測定結果が非干渉レベルを超えたリーダライタ3が存在した場合には、上記監視対象リーダライタ3が時分割制御候補として登録されることになる。また、監視対象リーダライタ3が複数台あったときには、それらの監視対象リーダライタ3について上記のようなテスト信号の送信動作が順番に行われると共に、このような送信動作が行われた各期間においてテスト信号の受信レベル測定結果が非干渉レベルを超えたリーダライタ3が存在した場合には、そのときのテスト信号の送信源となった監視対象リーダライタ3が時分割制御候補として登録されることになる。
【0038】
要するに、上記のような送信レベル設定ルーチンが実行される結果、各リーダライタ3から個別にテスト信号を送信する動作が順次行われ、このような送信動作が行われたときに、テスト信号の受信レベルが非干渉レベルを超えたリーダライタ3が存在した場合には、当該テスト信号の送信源となった監視対象リーダライタ3の送信レベルが、RFIDタグ2との間の通信に必要な最小送信レベルを下回らない範囲で低下されるものであり、この結果、複数台のリーダライタ3を互いに近接した状態で配置する場合であっても、各リーダライタ3間での電波干渉に起因した通信障害の発生を、良好な通信品質を確保した状態で効果的に抑止可能になるものである。
【0039】
一方、システムコントローラ4に備えられた図示しない制御回路は、上記送信レベル設定ルーチンの実行に応じて時分割制御候補として登録された監視対象リーダライタ3、つまり、上述のように送信レベルを低下させたにも拘らず、他のリーダライタ3での測定受信レベルが非干渉レベルを超えた状態となるリーダライタ3については、その送信動作の実施タイミングと、当該リーダライタ3と電波干渉を生ずる可能性がある他のリーダライタ3(測定受信レベルが非干渉レベルを超えたもの)での送信動作の実施タイミングを時分割制御する構成となっている。
【0040】
これにより、システムコントローラ4の制御回路側からの指令によりリーダライタ3の送信レベルを低下させたにも拘らず、他のリーダライタ3での測定受信レベルが非干渉レベルを超えた状態にあった場合には、当該制御回路が、送信側の監視対象リーダライタ3及びこれと電波干渉を生ずる可能性がある他のリーダライタ3の送信動作の実施タイミングを時分割制御するようになる。この結果、送信レベルを下げるだけではリーダライタ3間の電波干渉を回避できない場合でも、上記のような時分割制御により電波干渉の発生を極力抑制できるようになる。
【0041】
さらに、図3に示した送信レベル設定ルーチンには記載されていないが、システムコントローラ4に備えられた図示しない制御回路は、リーダライタ3でテスト信号の送信を実行させた状態時に、そのテスト信号の送信源以外のリーダライタ3群から収集した受信レベル測定結果が前記非干渉レベル未満であった場合に、テスト信号の送信源となったリーダライタ3の制御部6に対して、その送信レベルを上昇させるように指令する構成となっている。また、当該図示しない制御回路は、このように制御部6に対して送信レベルの上昇指令を発した後に、その指令の送信先となったリーダライタ3を監視対象とし、この監視対象リーダライタ3の制御部6に対してテスト信号の送信動作を行うように指令する動作(監視対象リーダライタ3が複数台あった場合には、テスト信号の送信動作を行うように順次指令する)、
テスト信号が送信された状態時に、他のリーダライタ3群で測定された受信レベルを収集する動作、収集した受信レベルの中に予め設定された非干渉レベルを超えたものがあった場合に、テスト信号の送信源となった監視対象リーダライタ3の送信レベルを低下させる動作を再実行するようになる。
【0042】
従って、監視対象リーダライタ3の送信レベルがより高いレベルに設定されたことにより、その監視対象リーダライタ3からのテスト信号の受信レベルが非干渉レベルを超えるリーダライタ3が出現した場合には、監視対象リーダライタ3の送信レベルが、RFIDタグ2との間の通信に必要な最小送信レベルを下回らない範囲で低下されるようになる。
【0043】
このような構成によれば、リーダライタ3においてテスト信号の送信が行われた状態時に、システムコントローラ4側で収集した受信レベルが予め設定された非干渉レベル未満であった場合には、テスト信号の送信源となったリーダライタ3の送信レベルが極力高められることになる。要するに、リーダライタ3でのテスト信号の受信レベルが非干渉レベルより低い場合、つまり、各リーダライタ3間での電波干渉に起因した通信障害が発生する可能性が低い場合には、リーダライタ3の送信レベルが、通信障害を発生しないレベルまで引き上げられることになるから、RFIDタグ2との間の通信品質の向上を図り得るようになる。
【0044】
尚、上記のようにリーダライタ3の送信レベルを上げる制御を実行する構成とする場合、システムコントローラ4側に設定された通信頻度学習機能、つまり、複数台のリーダライタ3に対して、RFIDタグ2との通信頻度順に優先順位を付与するという学習機能を利用し、そのシステムコントローラ4に備えられた前記図示しない制御回路に対して、リーダライタ3に備えられた制御部6に対して送信レベルを上昇させるように指令する動作を、上記のように付与された優先順位が高いものから順に実行する構成としても良い。
【0045】
このような構成によれば、通信頻度が高いリーダライタ3の送信レベルが、通信障害を発生しないレベルまで優先的に引き上げられることになるから、無線通信システム全体の信頼性を高める上で有益になる。
【0046】
また、システムコントローラ4に備えられた図示しない制御回路は、上記のようにリーダライタ3に対して送信レベルを上昇させるように指令する動作を優先順位が高いものから順に実行する場合に、優先順位が所定順位以下のリーダライタ3については、そのリーダライタ3に備えられた制御部6に対して送信レベルを維持若しくは低下させるように指令する動作を実行する構成としても良いものである。
【0047】
この構成によれば、優先順位が所定順位以下のリーダライタ3から優先順位が高いリーダライタ3に対する電波干渉の影響を抑制する方向に機能することになり、結果的に、無線通信システム全体の信頼性を高める上で有益になる。
【0048】
(その他の実施の形態)
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば以下に述べるような変形或いは拡大が可能である。
リーダライタ3に備えられた制御部6を、当該リーダライタ3に固有の識別コードを含むテスト信号を送信すると共に、受信レベル測定部18が測定したテスト信号の受信レベルをシステムコントローラ4へ通知する際に当該テスト信号中の識別コードも同時に通知する構成とした上で、システムコントローラ4に備えられた図示しない制御回路を、テスト信号の送信源となったリーダライタ3の特定を当該テスト信号中の識別コードに基づいて実行する構成としても良い。このような構成によれば、テスト信号の送信源となったリーダライタ3の特定を、そのテスト信号に含まれる識別コードに基づいて確実に行い得るようになる。
テスト信号の送信動作を各リーダライタ3の通し番号順に行う構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、システムコントローラ4側の通信頻度学習機能により設定された優先順位に応じた順序で行う構成としても良いなど、その順序は適宜に設定できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例を示すRFIDシステムの基本構成図
【図2】リーダライタの電気的構成を示す機能ブロック図
【図3】システムコントローラ側の制御内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0050】
2はRFIDタグ、3はリーダライタ、4はシステムコントローラ、6は制御部(テスト信号送信手段、受信レベル通知手段、送信レベル変更手段)、18は受信レベル測定部(受信レベル測定手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに近接した状態で配置され、自身の通信エリア内に任意のタイミングで進入してくるRFIDタグとの間で電波を媒体とした通信を行う複数台のリーダライタと、
これら複数のリーダライタの動作を制御するシステムコントローラと、
を備えた無線通信システムにおいて、
前記リーダライタは、
前記通信エリアへ向けて予め設定された送信レベルのテスト信号を送信可能なテスト信号送信手段と、
他のリーダライタから送信されるテスト信号を受信し、その受信レベルを測定する受信レベル測定手段と、
この受信レベル測定手段が測定した受信レベルを前記システムコントローラへ通知する受信レベル通知手段と、
自身の送信レベルを前記システムコントローラからの指令に応じて変更可能な送信レベル変更手段と、
を備え、
前記システムコントローラは、
前記複数のリーダライタに対して、それらに備えられた前記テスト信号送信手段による前記テスト信号の送信動作を順次指令する送信指令手段と、
前記リーダライタから前記テスト信号が送信された状態時に、他のリーダライタにおいて前記受信レベル測定手段により測定した受信レベルを、当該リーダライタに備えられた前記受信レベル通知手段を通じて収集するモニタ手段と、
このモニタ手段が収集した受信レベルが予め設定された非干渉レベルを超えた状態にあった場合に、前記テスト信号の送信源となったリーダライタに備えられた前記送信レベル変更手段に対して、当該リーダライタとその通信エリア内に進入した前記RFIDタグとの間の通信に必要な最小送信レベルを下回らない範囲で送信レベルを低下させるように指令する送信レベル指令手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記システムコントローラに備えられた前記送信レベル指令手段は、前記リーダライタで前記テスト信号の送信が行われた状態時に、前記モニタ手段が収集した受信レベルが予め設定された非干渉レベル未満であった場合に、前記テスト信号の送信源となったリーダライタに備えられた前記送信レベル変更手段に対して、その送信レベルを上昇させるように指令する構成とされ、
前記システムコントローラは、前記送信レベル変更手段に対して送信レベルの上昇指令を発した後に、前記送信指令手段、モニタ手段及び送信レベル指令手段に設定された動作を再実行することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
請求項2記載の無線通信システムにおいて、
前記システムコントローラには、前記複数台のリーダライタに対して、前記RFIDタグとの通信頻度順に優先順位を付与する学習機能が設定され、
そのシステムコントローラに備えられた前記送信レベル指令手段は、前記リーダライタに備えられた前記送信レベル変更手段に対して送信レベルを上昇させるように指令する動作を、前記優先順位が高いものから順に実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項3記載の無線通信システムにおいて、
前記システムコントローラに備えられた前記送信レベル指令手段は、前記優先順位が所定順位以下のリーダライタについては、そのリーダライタに備えられた前記送信レベル変更手段に対して送信レベルを維持若しくは低下させるように指令する動作を実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
前記システムコントローラには、前記送信レベル指令手段からの指令によりリーダライタの送信レベルを低下させたにも拘らず、前記モニタ手段が収集したリーダライタでの測定受信レベルが予め設定された非干渉レベルを超えた状態にあった場合に、送信側のリーダライタ及びこれと電波干渉を生ずる可能性がある他のリーダライタの送信動作の実施タイミングを時分割制御する送信タイミング指示手段が設けられることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記リーダライタに備えられた前記テスト信号送信手段は、当該リーダライタに固有の識別コードを含むテスト信号を送信するように構成され、
前記リーダライタに備えられた前記受信レベル通知手段は、前記受信レベル測定手段が測定したテスト信号の受信レベルを前記システムコントローラへ通知する際に当該テスト信号中の前記識別コードも同時に通知するように構成され、
前記システムコントローラに備えられた前記送信レベル指令手段は、テスト信号の送信源となったリーダライタの特定を前記受信レベル通知手段から通知された前記識別コードに基づいて実行することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−124321(P2007−124321A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314437(P2005−314437)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】