説明

無線通信システム

【課題】周波数f1、f2のいずれかの周波数が妨害を受け通信できなくなったとしても、統制局側で移動局の運行状況を監視できるようにし、不用意に列車を緊急停止させるフェイルセーフ機能が動作しないようにすること。
【解決手段】基地局の構成を第1の送信部と、第2の送信部と、前記無線装置から送信されてきた移動局の運行状況データを受信する第1の受信部と、第2の受信部とし、無線装置の構成を、移動局の車両の前方及び後方に無線装置を備え、車両の前方の無線装置の構成を、前記基地局の第1の送信機から送信されたデータを受信する受信機と、前記基地局の第1の送信機と同一の周波数で送信する送信機とし、車両の後方の無線装置は、前記基地局の第2の送信機から送信されたデータを受信する受信機と、前記基地局の第2の送信機と同一の周波数で送信する送信機とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統制局と基地局と移動局とを有する無線通信システムに関し、特に基地局と移動局間のデータ伝送方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、無線通信システムにおける基地局と移動局(例えば、列車等)に設置されている無線装置では、運行中の運行情報などのデータ伝送を行っており、このデータを基に基地局に接続されている統制局で移動局の監視等を行っている。
【0003】
従来の無線通信システムは、図8に示すような無線システムである。
この図においては、列車無線システムを例としており、統制局8−1と、複数の基地局8−21〜2nと、線路を移動する列車8−3(移動局)とから構成されている。
統制局11と各基地局8−21〜2nとの間は有線回線で接続され、各基地局8−21〜2nと列車との間は、無線回線で接続されている。
統制局8−1は、基地局8−21〜2nを介して列車との通信を行う。即ち、各基地局は、統制局8−1からの指示に従い、列車と無線通信を行う。このような無線通信システムにおいて、統制局8−1は列車と常時運行情報データの送受信を行うことで運行状態等を監視することができるようになっている。
【0004】
次に、図9〜図10を参照して基地局及び列車内に設置されている無線装置の構成について説明する。
図9は基地局8−21〜2nの構成を示した図である。基地局8−21〜2nは、列車内に設置されている無線装置へ電波を送受信するためのアンテナ9−1と、アンテナ9−1から列車側へ周波数f1の電波を送信するための送信機9−21、9−22と、送信の切替を行う切替部9−4と、列車側から送信される周波数f2の電波を受信するための受信機9−3と、運行情報等のデータを制御しているデータ制御部9−5を備えている。図9において、送信機を2つ備えているのは、1つの送信機が故障した場合でも別の送信機で基地局運用を行えるようにするためである。
【0005】
図10は列車内の各車両に設置されている無線装置8−3の構成を示した図である。列車の各車両には図10に示すように無線装置8−3が車両の前後に1つずつ備えられており、有線等で互いに接続されている。無線装置8−3は、互いに故障等が発生していないかを常時監視している。無線装置8−3の構成は、基地局8−21〜2nからの電波を送受信するアンテナ10−1と、アンテナから基地局側へ周波数f2の電波を送信するための送信機10−2と、基地局8−21〜2nから送信された周波数f1の電波を受信する受信機10−3と、送信、受信を切り替える切替部10−4と、無線装置8−3を制御する制御部10−5とから構成されている。
【0006】
次に、従来の列車無線通信システムのシーケンスを図面を参照して説明する。
図11は従来の列車無線システムのシーケンスを示した図である。シーケンス図の説明は、列車の車両が2車両の場合である。
まず、統制局8−1は基地局8−21〜2nへ運行状況要求を出すと、基地局8−21〜2nは列車の1車両目の無線装置に周波数f1でポーリング信号を送信する。1車両目の無線装置8−3は周波数f1のポーリング信号を受信すると、1車両目の無線装置8−3は周波数f2のポーリング応答信号を送信する。基地局8−21〜2nは列車の1車両目の無線装置8−3から周波数f2のポーリング応答信号を受信すると、列車の2車両目の無線装置8−3へ周波数f1のポーリング信号を送信し、2車両の無線装置8−3がポーリング信号を受信すると、2車両目の無線装置8−3から周波数f2のポーリング応答信号を送信する。基地局8−21〜2nは、2車両目の無線装置8−3から周波数f2のポーリング応答信号を受信すると、1車両目、2車両目のポーリング応答信号に含まれる運行情報データを纏めて統制局8−1へ送信する。
図11では、列車の車両が2車両の場合の説明をしたが、列車の車両がn車両の場合は同様のシーケンスでn回の処理をする。
【0007】
上記図8〜図11で説明したように、従来の列車無線システムでは、基地局からの送信の周波数をf1とし、列車内に設置されている無線装置からの送信の周波数をf2として基地局と無線装置間で常時データの送受信を行い、その結果を統制局側で管理することで列車の運行状況を監視していた。
【0008】
従来の列車用の無線通信システムとして、例えば特許文献1がある。
【0009】
【特許文献1】特開2005−236877
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のような列車無線通信システムでは、基地局から列車内の無線装置へ送信する際にはf1を使用し、列車内の無線装置から基地局へ送信する際にはf2を使用して通信を行っているため、列車が線路を走行中に列車無線通信システムで使用している周波数と同様の周波数帯域(f1、f2)で通信を行っている無線機等が線路の近くに存在すると、該無線機の電波により基地局と列車内に設置されている無線装置の通信が妨害を受け、運行情報データの送受信ができなくなってしまうという問題があった。
また、他の無線機により妨害を受けなくても、列車がビル影等を走行中に基地局との通信ができなくなった場合等も上記同様の問題があった。
このため、列車無線通信システムでは、上記のような問題が発生すると、統制局側で列車の管理ができなくなってしまうため、列車に設置されているフェイルセーフ機能が作動し、列車が正常に走行していたとしても、緊急停止等の処置がとられ、列車の運行に支障をきたしていた。
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、周波数f1、f2のいずれかの周波数が妨害を受け通信できなくなったとしても、統制局側で移動局の運行状況を監視できるようにし、不用意に列車を緊急停止させるフェイルセーフ機能が動作しないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
統制局と、基地局と、移動局に設置されている無線装置を含む無線通信システムであって、前記基地局は、運行情報のデータを前記無線装置へ第1の周波数で送信する第1の送信部と、第2の周波数で送信する第2の送信部と、前記無線装置から第1の周波数で送信されてきた移動局の運行情報のデータを受信する第1の受信部と、第2の周波数で送信されてきた第2の受信部とを備え、前記移動局は移動局の前方及び後方に無線装置を備え、前記移動局の前方の無線装置は、前記基地局の第1の送信機から第1の周波数で送信されたデータを受信する受信機と、前記基地局の第1の送信機と同じ第1の周波数で移動局の運行情報のデータを送信する送信機とを備え、前記移動局の後方の無線装置は、前記基地局の第2の送信機から第2の周波数で送信されたデータを受信する受信機と、前記基地局の第2の送信機と同じ第2の周波数で移動局の運行情報のデータを送信する送信機とを備えたことを特徴とする構成にすることにより、片方の周波数が妨害されて通信できなくなってしまっても、もう片方の周波数により通信することができる。
【0013】
また、統制局と、基地局と、移動局に設置されている無線装置を含む無線通信システムであって、前記基地局は、運行情報のデータを前記無線装置へ第1の周波数で送信する第1の送信部と、第2の周波数で送信する第2の送信部と、前記無線装置から第1の周波数で送信されてきた移動局の運行情報のデータを受信する第1の受信部と、第の2周波数で送信されてきた第2の受信部とを備え、前記無線装置は、前記基地局から第1の周波数で送信されたデータを受信するとともに第1の周波数が妨害されていないかを検出する第1の受信機と、前記基地局から第2の周波数で送信されたデータを受信するとともに第2の周波数が妨害されていないかを検出する第2の受信機と、第1の周波数又は第2の周波数のいずれかの周波数で移動局の運行情報のデータを前記基地局に送信する送信機と、前記受信機において第1の周波数が妨害されていると検出された場合に、前記送信機の送信の周波数を第2の周波数に設定し、第2の周波数が妨害されていると検出された場合に、前記送信機の送信の周波数を第2の周波数に設定する制御部とを備えたことを特徴とする構成にすることにより、片方の周波数が妨害されて通信できなくなってしまっても、もう片方の周波数により通信することができる。。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、実施例1では、各車両に設置されている前方又は後方のいずれかの無線装置が周波数f1又はf2の周波数を使用して、基地局と通信を行うことができるようになっているため、例えば、周波数f1の信号が妨害を受けたとしても周波数f2では通信ができるようになっている。このため、各車両の前方後方に設置されている無線装置は、一方の無線装置が妨害を受けてももう一方の無線装置で通信ができることから、妨害を受けて基地局と列車間での通信ができなくなるといった問題は解決され、不用意にフェイルセーフ機能が動作し、列車を緊急停止させることもなくなる効果がある。
また、基地局から周波数f1及びf2で送信されるポーリング信号は同じデータのポーリング信号であることから、車両の前方の無線装置が妨害されて基地局との通信ができなくなったとしても、後方の無線装置で通信を行うことができ、後方の無線装置は前方の基地局装置と有線で接続されていることから、基地局から送信されてきたポーリング信号に含まれる統制局の運行情報データを共有することができる効果がある。
本発明によると、実施例2では、列車内に設置されている無線装置が妨害されている周波数がないかを常時監視し、妨害されている周波数があれば、無線装置の送信機の送信周波数を妨害されていない周波数に設定してポーリング応答信号を送信することから、基地局との通信が妨害されたとしても、妨害されていない周波数によって通信できる。このため、妨害を受けて基地局と列車間での通信ができなくなるといった問題は解決され、不用意にフェイルセーフ機能が動作し、列車を緊急停止させることもなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施例1)
本発明の実施例1について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る列車無線通信システムの構成例を示す。
本図1の列車無線通信システムは、統制局1−1と、複数の基地局1−21〜2nと、線路を移動する列車1−3(移動局)とから構成されている。
統制局1−1と各基地局1−21〜2nとの間は有線回線で接続され、各基地局1−21〜2nと列車1−3との間は、無線回線で接続されている。
統制局1−1は、基地局1−21〜2nを介して列車1−3との通信を行う。即ち、各基地局1−21〜2nは、統制局1−1からの指示に従い、列車1−3と無線通信を行う。このような無線通信システムにおいて、統制局1−1は列車1−3と常時運行情報の送受信を行うことで運行状態等を監視することができるようになっている。
【0016】
次に、図2〜図3を参照して基地局及び列車内に設置されている無線装置の構成につ
いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る列車無線通信システムにおける基地局1−21〜2
nの構成を示す図である。
基地局11−21〜2nは、列車内に設置されている無線装置1−3へ電波を送受信するためのアンテナ2−1と、アンテナ2−1から列車側へ周波数f1の電波を送信するための送信機2−21と周波数f2の電波を送信するための送信機2−22と、送信周波数f1及びf2を切替える切替部2−41と、列車側から送信される周波数f1の電波を受信するための受信機2−31と周波数f2の電波を受信するための受信機2−32と、受信周波数f1及びf2を切替える切替部2−42と、共用器2−5と、運行情報等のデータを制御しているデータ制御部2−6を備えている。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態に係る列車無線システムにおける列車内に設置されている
無線装置1−3の構成を示す図である。列車1−3の各車両には図3に示すように無線装
置1−3が各車両の前後に1つずつ備えられており、有線等で互いに接続されている。無線装置は、互いに故障等が発生していないかを常時監視している。
無線装置1−3の構成は、基地局1−21〜2nからの電波を送受信するアンテナ3−
1と、アンテナ3−1から基地局側へ電波を送信するための送信機3−2と、基地局1−21〜2nから送信された電波を受信する受信機3−3と、送信、受信を切替える切替部3−4と、無線装置を制御する制御部3−5を備えている。
本実施例1の無線装置は、上記したように、1車両の前後に1つずつ備えられており、車両の前方に備えられている無線装置1−3の送受信周波数はf1、車両の後方に備えられている無線装置1−3の送受信周波数はf2で通信を行うようになっている。
【0018】
次に、本実施例の列車無線通信システムのシーケンスを図面を参照して説明する。図4は、列車無線通信システムのシーケンスを示した図である。シーケンス図の説明は、列車の車両が2車両の場合で説明する。
まず、統制局1−1は基地局1−21〜2nへ運行状況要求を出すと、基地局1−21〜2nは列車の1車両目の前方に設置された無線装置1−3に、周波数f1でポーリング信号を送信する。1車両目の前方に設置された無線装置1−3は周波数f1のポーリング信号を受信すると、1車両目の前方に設置された無線装置1−3は周波数f1のポーリング応答信号を送信する。基地局1−21〜2nは列車の1車両目の前方に設置された無線装置1−3から周波数f1のポーリング応答信号を受信すると、1車両目の後方の無線装置1−3へ周波数f2で1車両目の前方の無線装置1−3へ送信したデータと同じデータのポーリング信号を送信する。1車両目の後方の無線装置1−3がポーリング信号を受信すると、1車両目の後方の無線装置1−3から周波数f2のポーリング応答信号を送信する。基地局1−21〜2nは、1車両目の前方後方に設置されている無線装置1−3へのポーリングが終了すると、2車両目についても、1車両目と同様のシーケンスでポーリング信号を送信する処理を行う。
基地局1−21〜2nは、2車両目の無線装置1−3から周波数f2のポーリング応答を受信すると、1車両目、2車両目のポーリング応答信号に含まれる列車運行情報データを纏めて統制局1−1へ送信する。
図4では、列車の車両が2車両の場合の説明をしたが、列車の車両がn車両の場合は同様のシーケンスでn回の処理をする。
【0019】
次に、ポーリング信号、ポーリング応答信号に含まれるデータについて、図5を参照して説明する。
図5(a)は、基地局1−21〜2nから送信するポーリング信号の構成と、図5(b)は、列車内に設置されている無線装置1−3から送信するポーリング応答信号の構成を示した図である。
図5(a)に示すように、基地局1−21〜2nから送信するポーリング信号は、統制局運行情報データと緊急用データとその他のデータから構成される。統制局運行情報データとは、統制局側で時刻表などを基に管理されている各列車の運行番号、該運行番号の走行している線路情報、運行時刻情報、列車内に設置されている無線装置のID情報などのデータである。
また、緊急用データとは、ある線路で事故等が発生した場合に、該線路を走行している列車等に対して緊急停止の情報を入れるためのデータであり、緊急停止等のデータを入れる必要がない場合には、予め定められた固定のデータとして設定されている。その他のデータは、データに冗長性を持たせるためのデータである。特にその他のデータは、必要がなければデータとして入れる必要はない。
【0020】
図5(a)で説明したように、基地局1−21〜2nから列車内に設置されている無線装置1−3へ送信するポーリング信号は、統制局運行情報データ、緊急用データ、その他のデータで構成されている。このデータは、CRC(巡回冗長検査、Cyclic Redundancy Check)等の誤り検出用のデータと共に、列車内に設置されている無線装置1−3へポーリング信号として送信され、無線装置1−3ではこのポーリング信号を受信すると、自無線装置1−3へ送信されてきたポーリング信号であるか否かを無線装置1−3のID情報から判断を行い、自無線装置1−3へ送信されてきたポーリング信号であると判断した場合には、CRCの誤り検出を行い、この結果を基に、基地局1−21〜2nから送信されてきたデータが正常に受信できているかを判断する。もし正常に受信できていない場合には、基地局1−21〜2nとの通信に異常があると判断し、フェイルセーフ機能が動作し、列車の緊急停止等の処置がとられる。異常の判断は、1回又は所定の回数(複数回)通信に異常があると判断した場合には異常と判断するようにすることができる。
【0021】
次に、図5(b)は、列車内に設置されている無線装置1−3から基地局1−21〜2nへ送信するポーリング応答信号の構成を示した図である。
図5(b)に示すように、無線装置1−3から送信するポーリング信号は、列車運行情報データと緊急用データとその他のデータから構成される。列車運行情報データとは、現在列車が走行している位置情報、時刻情報、無線装置1−3のID情報、車両に設置されている自無線装置1−3の動作状態(正常、異常、故障など)や車両に設置されているもう一方の無線装置1−3の動作状態のデータである。
また、緊急用データとは、列車が脱線等の事故を起こした場合や、列車の運転手が列車のハンドルをある一定時間放していた場合(デットマン)に、列車が緊急停止をしたことを統制局1−1へ知らせるためのデータである。その他のデータは、データに冗長性を持たせるためのデータである。特にその他のデータは、必要がなければデータとして入れる必要はない。
【0022】
図5(b)で説明したように、列車内に設置されている無線装置1−3から基地局1−21〜2nへ送信するポーリング応答信号は、列車運行情報データ、緊急用データ、その他のデータで構成されている。このデータは、CRC(巡回冗長検査、Cyclic Redundancy Check)等の誤り検出用のデータと共に、基地局1−21〜2nへポーリング応答信号として送信され、基地局1−21〜2nではこのポーリング信号を受信すると、ポーリング信号を送信した無線装置1−3のID情報からのポーリング応答信号であるか否かを無線装置1−3のID情報から判断を行い、基地局1−21〜2nへ送信されてきたポーリング応答信号であると判断した場合には、CRCの誤り検出を行い、この結果を基に、無線装置1−3から送信されてきたデータが正常に受信できているかを判断する。もし正常に受信できていない場合には、無線装置との通信に異常があると判断し、該無線装置1−3が設置されている列車の緊急停止等を行う。異常の判断は、1回又は所定の回数(複数回)通信に異常があると判断した場合には異常と判断するようにすることができる。
また、無線装置1−3から緊急用データが送信されてきた場合には、統制局側で、当該無線装置1−3が設置されている列車と同じ線路を走行中の列車などに緊急停止等を行うようにポーリング信号を送信する。
【0023】
以上説明したように、実施例1では、このような構成とすることで、各車両に設置されている前方又は後方のいずれかの無線装置1−3が周波数f1又はf2の周波数を使用して、基地局1−21〜2nと通信を行うことができるようになっているため、例えば、周波数f1の信号が妨害を受けたとしても周波数f2では通信ができるようになっている。このため、各車両の前方後方に設置されている無線装置1−3は、一方の無線装置1−3が妨害を受けてももう一方の無線装置1−3で通信ができることから、妨害を受けて基地局1−21〜2nと列車間での通信ができなくなるといった問題は解決され、不用意にフェイルセーフ機能が動作し、列車を緊急停止させることもなくなる。
また、基地局1−21〜2nから周波数f1及びf2で送信されるポーリング信号は同じデータのポーリング信号であることから、車両の前方の無線装置1−3が妨害されて基地局との通信ができなくなったとしても、後方の無線装置1−3で通信を行うことができ、後方の無線装置1−3は前方の基地局装置1−3と有線で接続されていることから、基地局1−21〜2nから送信されてきたポーリング信号に含まれる統制局1−1の運行情報データを共有することができる。
【0024】
(実施例2)
本発明の実施例2について図面を参照して説明する。
本実施例2の列車無線通信システムの構成及び基地局1−21〜2nの構成、ポーリング信号とポーリング応答信号の構成は、実施例1の図1、図2、図5と同様の構成であるため説明は割愛する。
本実施例2の特徴部分である列車内に設置されている無線装置1−3の構成を図6を参照して説明する。
図6に示している無線装置1−3の構成は、基地局1−21〜2nから送信される電波を受信するアンテナ6−1と、送受信を切替える切替部6−4と、周波数f1又は周波数f2のいずれかで送信を行う送信部6−2と、アンテナで受信した信号を分配する分配器6−6と、分配器6−6で分配された信号の受信処理を行う受信部6−31、6−32と、無線装置1−3各部の制御を行う制御部6−5とを備えた構成としている。
【0025】
図6に示している無線装置1−3は、実施例1と同様に列車の各車両の前方、後方に設
置されており、各車両の無線装置1−3は、有線等で互いに接続されている。無線装置1
−3は、互いに故障等が発生していないかを常時監視している。
本実施例2では、図6に示したように、受信信号は分配器6−6で分配され周波数f1の受信部6−31と周波数f2の受信部6−32で、周波数f1、f2のいずれかが妨害を受けていないかを常に監視している。仮に、周波数f1が妨害されていると無線装置1−3が判断した場合には、無線装置1−3は周波数f1で基地局1−21〜2nと通信ができないと判断し、基地局1−21〜2nへポーリング応答信号を送信する際には、妨害を受けていない周波数f2を選択し送信するように制御部6−5によって制御される。
ここで、周波数f1、f2のいずれかが妨害されていると判断方法としては、基地局1−21〜2nから統制局運行情報のデータが受信できない場合などに、妨害波を受信していると判断し、妨害されていない周波数に送信部6−2の送信周波数を設定するようにする。
【0026】
次に、実施例2の列車無線通信システムのシーケンスを図面を参照して説明する。図7は、列車無線通信システムのシーケンスを示した図である。シーケンス図の説明は、列車の車両が2車両の場合で説明する。
実施例2では、統制局1−1から基地局1−21〜2nへ運行状況要求信号が送信されると、基地局1−21〜2nは周波数f1、f2のポーリング信号を1車両目に設置されている無線装置1−3へ順次送信する。このポーリング信号f1、f2に含まれるデータは同じものである。
次に、列車内に設置されている無線装置1−3は、ポーリング信号f1、f2のいずれかの信号が妨害されていないかを判断する。無線装置1−3は、基地局1−21〜2nから送信されたポーリング信号f1、f2いずれも妨害されていないと判断されると、周波数f1のポーリング応答信号を基地局1−21〜2nへ送信する。また、無線装置1−3は、基地局1−21〜2nから送信されたポーリング信号f1が妨害されていると判断すると、妨害されていない周波数f2に無線装置1−3の送信機6−2に送信周波数を設定し、基地局1−21〜2nへポーリング応答信号を送信する。
次に、1車両目の無線装置1−3からポーリング応答信号を受信すると、2車両目の無線装置1−3へポーリング信号f1、f2を送信する。2車両目の無線装置1−3も1車両目の送信装置1−3と同様に、基地局1−3から送信されたポーリング信号f1、f2のいずれかが妨害を受けているかいないか判断し、基地局1−21〜2nへ設定された周波数でポーリング応答信号を送信する。基地局1−21〜2nは、1車両目、2車両目のポーリング応答信号に含まれる列車運行情報データを纏めて統制局1−1へ送信する。
図7では、列車の車両が2車両の場合の説明をしたが、列車の車両がn車両の場合は同様のシーケンスでn回の処理をする。
【0027】
以上のように、実施例2では、列車内に設置されている無線装置1−3が妨害されている周波数がないかを常時監視し、妨害されている周波数があれば、無線装置1−3の送信機の送信周波数を妨害されていない周波数に設定してポーリング応答信号を送信することから、基地局1−21〜2nとの通信が妨害されたとしても、妨害されていない周波数によって通信できる。このため、妨害を受けて基地局1−21〜2nと列車間での通信ができなくなるといった問題は解決され、不用意にフェイルセーフ機能が動作し、列車を緊急停止させることもなくなる。
また、1車両毎に設置されている前方後方の無線装置1−3間で、妨害されている周波数がある場合には、互いの無線装置1−3間で妨害されている周波数を通知し合い、妨害されていない周波数に無線装置1−3の送信周波数を設定するようにすることもできる。無線装置1−3が周波数f1、f2のいずれかが妨害されていると判断した場合には、その妨害されている周波数の情報を基地局側へ送信するような構成とするようにしてもよい。このような構成とすることで、統制局側でも妨害されている周波数を知ることができ、基地局から送信する際にも妨害されている周波数では送信を行わないような制御をすることもできる。
また、周波数の妨害がなくなった場合には、基地局へ妨害されていないことを通知するようにして、通常の通信に戻るようにしてもよい。
【0028】
ここで、本発明に係る無線通信システムや統制局や基地局や移動局の構成としては、必
ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々な装置やシステムとして提供することも可能である。 また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
【0029】
また、本発明に係る無線通信システムや統制局や基地局や移動局において行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。 また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施1、2の形態に係る列車無線通信システムの構成図を示す。
【図2】本発明の実施1、2の形態に係る基地局の構成図を示す。
【図3】本発明の実施1の形態に係る列車内に設置される無線装置の構成図を示す。
【図4】本発明の実施1の形態に係る基地局と無線装置のシーケンス図を示す。
【図5】本発明の実施1、2の形態に係るポーリング信号、ポーリング応答信号の構造の一例を示し、(a)に基地局から送信するポーリング信号の構成を、(b)に無線装置から送信するポーリング応答信号の構成を示す。
【図6】本発明の実施2の形態に係る列車内に設置される無線装置の構成図を示す。
【図7】本発明の実施2の形態に係る基地局と無線装置のシーケンス図を示す。
【図8】従来の列車無線通信システムの構成図を示す。
【図9】従来の基地局の構成図を示す。
【図10】従来の列車内に設置される無線装置の構成図を示す。
【図11】従来の基地局と無線装置のシーケンス図を示す。
【符号の説明】
【0031】
1−1:統制局、
1−21〜2n:基地局、
1−3:列車内に設置されている無線装置、
2−1:基地局のアンテナ
2−21:基地局の送信機(f1)
2−22:基地局の送信機(f2)
2−31:基地局の受信機(f1)
2−32:基地局の受信機(f2)
2−41、2−42:基地局の切替部
2−5:基地局の共用器
2−6:基地局のデータ制御部
3−1:無線装置のアンテナ
3−2:無線装置の送信機
3−3:無線装置の受信機
3−4:無線装置の切替部
3−5:無線装置の制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
統制局と、基地局と、移動局に設置されている無線装置を含む無線通信システムであって、
前記基地局は、運行情報のデータを前記無線装置へ第1の周波数で送信する第1の送信部と、第2の周波数で送信する第2の送信部と、前記無線装置から第1の周波数で送信されてきた移動局の運行情報のデータを受信する第1の受信部と、第2の周波数で送信されてきた第2の受信部とを備え、
前記移動局は移動局の前方及び後方に無線装置を備え、
前記移動局の前方の無線装置は、前記基地局の第1の送信機から第1の周波数で送信されたデータを受信する受信機と、前記基地局の第1の送信機と同じ第1の周波数で移動局の運行情報のデータを送信する送信機とを備え、
前記移動局の後方の無線装置は、前記基地局の第2の送信機から第2の周波数で送信されたデータを受信する受信機と、前記基地局の第2の送信機と同じ第2の周波数で移動局の運行情報のデータを送信する送信機とを備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
統制局と、基地局と、移動局に設置されている無線装置を含む無線通信システムであって、
前記基地局は、運行情報のデータを前記無線装置へ第1の周波数で送信する第1の送信部と、第2の周波数で送信する第2の送信部と、前記無線装置から第1の周波数で送信されてきた移動局の運行情報のデータを受信する第1の受信部と、第の2周波数で送信されてきた第2の受信部とを備え、
前記無線装置は、前記基地局から第1の周波数で送信されたデータを受信するとともに第1の周波数が妨害されていないかを検出する第1の受信機と、前記基地局から第2の周波数で送信されたデータを受信するとともに第2の周波数が妨害されていないかを検出する第2の受信機と、第1の周波数又は第2の周波数のいずれかの周波数で移動局の運行情報のデータを前記基地局に送信する送信機と、前記受信機において第1の周波数が妨害されていると検出された場合に、前記送信機の送信の周波数を第2の周波数に設定し、第2の周波数が妨害されていると検出された場合に、前記送信機の送信の周波数を第2の周波数に設定する制御部とを備えたことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−103872(P2008−103872A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283403(P2006−283403)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】