説明

無線通信システム

【課題】移動体122と、第1の受信装置121と、第2の受信装置と、監視制御装置を有する無線通信システムで、有効な表示を行う。
【解決手段】移動体は、当該移動体の位置の情報を検出し、信号を無線送信し、少なくとも検出された位置の情報を含む送信側条件を特定する情報を無線送信する。第1の受信装置は、前記信号を受信し、受信信号の受信レベルを検出する。第2の受信装置は、前記情報を受信する。監視制御装置は、前記情報に基づいて前記受信信号に関して予想される受信レベルを取得し、検出された受信レベルの情報と予想される受信レベルの情報を表示するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、移動体から基地局へ信号を無線通信する無線通信システムに関し、特に、有効な表示を行うことができ、具体的には、実際の受信電界強度と予想される受信電界強度との比較を可能とすることができる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン放送の放送用素材をテレビ局本社へ伝送する方法として、素材(例えば、映像や音声)の無線伝送がある。近年、その伝送方式は、テレビジョン放送のデジタル化にあわせてアナログ伝送からデジタル伝送へ移行しつつあるため、デジタル無線伝送における技術向上は重要な課題となっている。
このようなデジタル無線伝送では、一般に、FPU(Field Pick−up Unit)を用いた基地局などとの間の無線伝送を含むマイクロ受信基地局システムが利用されている。
【0003】
このようなマイクロ受信基地局システムとしては、例えば、図4に示されるようなものを用いることができる。なお、図4は後述する実施例で参照されるものであり、ここでは、参考として紹介したが、本発明を不要に限定する意図は無い。
【0004】
FPUを用いた基地局などの受信装置では、FPUを用いた移動体の送信装置から伝送されるマイクロ波を回転受信アンテナにより受信する。このとき、受信装置から出力されるマイクロ波の受信電界強度(受信電界レベル)を遠隔監視制御装置においてレベルメータや数値として表示することが行われる。
【0005】
図3には、従来例に係る遠隔監視制御装置における表示内容の一例を示してある。
本例では、遠隔監視制御装置の表示板(親局表示板)301に、地図画面部311や、受信電界メータ表示部312が表示される。
地図画面部311では、上方から地上を見た二次元の地図がノースアップ等で表示され、その地図上に、受信を行う基地局(受信基地局)321の位置にそのマークが表示され、送信を行う移動体(例えば、ヘリコプター)322の位置にそのマークが表示される。
受信電界メータ表示部312では、受信電界強度がレベルメータと数値(例えば、「−50dBm」)で表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−171209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図3に示されるような従来例に係る遠隔監視制御装置における表示内容では、移動体322から伝送されるマイクロ波を回転受信アンテナにより受信したレベルの表示を行っているだけで、例えば、移動体322などのように不規則な場所からのマイクロ波の伝送に対して、実際の受信電界強度と予想される受信電界強度との差が分からず、更に、予想される受信電界強度が基地局などからどの辺りであるのかが分からない状況であった。
【0008】
このように、従来では、移動体322などのように不規則な場所からのマイクロ波の伝送に対して、実際の受信電界強度と予想される受信電界強度との差を判定する場合には、図3に示されるような情報のみを表示する表示形式では予想される受信電界強度の判断が困難であった。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、有効な表示を行うことができ、具体的には、実際の受信電界強度と予想される受信電界強度との比較を可能とすることができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、移動体と、第1の受信装置と、第2の受信装置と、監視制御装置を有する無線通信システムであって、次のような構成とした。
すなわち、前記移動体では、位置情報検出手段が、当該移動体の位置の情報を検出する。第1の送信手段が、信号を無線により送信する。第2の送信手段が、少なくとも前記位置情報検出手段により検出された位置の情報を含む前記第1の送信手段の送信に関する条件を特定する情報を無線により送信する。
前記第1の受信装置では、第1の受信手段が、前記移動体の前記第1の送信手段により無線により送信された信号を受信する。受信レベル検出手段が、前記第1の受信手段により受信された信号の受信レベルを検出する。
前記第2の受信装置では、第2の受信手段が、前記移動体の前記第2の送信手段により無線により送信された情報を受信する。
前記監視制御装置では、予想受信レベル取得手段が、前記第2の受信装置の前記第2の受信手段により受信された情報に基づいて前記第1の受信装置の前記第1の受信手段により受信される信号の受信レベルに関して予想される受信レベルを取得する。表示制御手段が、前記第1の受信装置の前記受信レベル検出手段により検出された受信レベルの情報と前記予想受信レベル取得手段により取得された予想される受信レベルの情報を表示するように制御する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明に係る無線通信システムによると、有効な表示を行うことができ、具体的には、実際の受信電界強度と予想される受信電界強度との比較を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る遠隔監視制御装置における表示内容の一例を示す図である。
【図2】移動体による素材や送信側条件を特定する情報の無線通信の様子の一例を示す図である。
【図3】従来例に係る遠隔監視制御装置における表示内容の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係るマイクロ受信基地局システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
(以下、システム全体の構成例の説明)
図4には、本発明の一実施例に係る無線通信システムであるマイクロ受信基地局システムの構成例を示してある。
本例のマイクロ受信基地局システムの系統では、送信点1(送信点A)と、基地局2と、本社3と、送信点4(送信点B)が存在する。
送信点1には、送信部11と、アンテナ12を備えている。
基地局2には、回転受信アンテナ21と、受信部22と、送信部23と、固定アンテナ24と、被制御端局25と、変復調部26を備えている。
本社3には、固定アンテナ31と、受信部32と、回転受信アンテナ33と、受信部34と、復号部35と、情報生成部36と、情報編集部37と、変復調部38と、制御端局39と、操作端末40と、ネットワーク61と、ネットワーク62を備えている。
送信点2には、送信部51と、アンテナ52を備えている。
また、本例では、基地局2の変復調部26と本社3の変復調部38とを通信可能に接続するネットワーク71を備えている。
【0013】
本例のマイクロ受信基地局システムにおいて行われる動作の一例を示す。
本例では、送信点1及び送信点4から本社3へ素材を伝送する場合を示す。
本社3から遠距離にある送信点1(送信点A)からの素材は、基地局2を通して、本社3へ無線伝送される。まず、送信点1にある送信部11は、素材を無線伝送可能なマイクロ波信号へ変換して、アンテナ12からその電波を送信する。
ここで、送信部11は、SDI(Serial Digital Interface)信号をFPUでの伝送に用いられる固定長のパケット形式のフレームフォーマットであるTS(Transport Stream)信号に符号化し、それを中間周波信号へ変調した後に、マイクロ波帯へ周波数変換してアンテナ12へ伝送する機能を有する。
【0014】
送信点1から送信された電波は、基地局2内の回転受信アンテナ21の装置により受信されて、受信部22へ送られる。
ここで、受信部22は、マイクロ波帯の信号を中間周波信号へ周波数変換して、前記TS信号へ復調し、SDI信号へ復号する機能を有する。但し、基地局2内の受信部22においては、最小限、信号劣化の無い前記TS信号へ変換するまでの機能があればよい。
【0015】
このTS信号は、受信部22から送信部23へ送られて、固定アンテナ24から電波で送信される。
ここで、前記した受信部22と同様に、基地局2内の送信部23は、最小限、TS信号をマイクロ波帯の信号へ変換する機能があればよい。
基地局2から送信された電波は、本社3の固定アンテナ31により受信され、受信部32及び復号部35によってSDI信号へ復号されて、本線へ送られる。
【0016】
また、本社3から近距離にある送信点4(送信点B)からの素材は、送信部51を通ってアンテナ52から送信され、直接、本社3の回転受信アンテナ33の装置により受信され、そして、受信部34及び復号部35によって復号されて、本線へ送られる。
【0017】
このようなシステムを用いた無線伝送では、基地局2において送信点1からの電波を如何に効率よく受信することができるかが重要となってくる。つまり、送信点1の位置によって、基地局2内の受信アンテナ21は方向を変えられねばならない。このため、マイクロ受信基地局システムでは、受信アンテナ21として、本社3からの遠隔制御により回転することが可能な回転架台を有するもの(回転受信アンテナ)が用いられている。
また、同様に、本社3においても、送信点4に対して、回転受信アンテナ33が用いられている。
【0018】
回転受信アンテナ21の制御監視方法について説明する。
本社3内で、操作端末40よりネットワーク61へ送信された制御パケットは、制御端局39により受信されて、シリアル信号へ変換される。このシリアル信号は、更に、変復調部38において、例えばアナログ信号へ変調されて、ネットワーク71を介して基地局2へ向けて送信される。
なお、ネットワーク61に複数の操作端末や複数の制御端局をつなげて、それぞれの機器の識別情報(ID)によって送信相手や受信相手を特定して送受信を行うことも可能である。
【0019】
変復調部38から送信されたアナログ信号は、基地局2内の変復調部26により受信されて、シリアル信号へ復調された後に、被制御端局25へ送信される。
被制御端局25は、変復調部26から受信した信号(制御信号)を解読して、その解読結果に基づいて、回転受信アンテナ21の装置に対して制御を行う。
【0020】
また、回転受信アンテナ21の装置における角度などの情報(監視情報)は、監視信号として、被制御端局25へ送られる。
被制御端局25は、その監視情報をシリアル信号として変復調部26へ送信する。
変復調部26は、被制御端局25から受信したシリアル信号を例えばアナログ信号へ変調して、ネットワーク71を介して本社3に向けて送信する。
【0021】
本社3内の変復調部38は、基地局2の変復調部26から受信したアナログ信号をシリアル信号へ復調して、制御端局39へ送信する。
制御端局39は、変復調部38から受信したシリアル信号を解読して、その解読結果に基づいて、監視パケットをネットワーク61へ送信する。
操作端末40は、ネットワーク61を介してその監視パケットを受信して、当該端末上に情報として表示する。
【0022】
以上のようにして、基地局2内の回転受信アンテナ21の装置の制御監視が可能である。
また、本例のマイクロ受信基地局システムでは、前記した回転受信アンテナ21の装置に対する制御監視と同様に、基地局2に設置された受信部22や送信部23における受信レベルや送信レベル、送受信チャンネル(周波数帯)、変調方式、送信出力、復号方式、また例えば、信号切替器(例えば、複数の信号の入力がある場合に1つを選択するように切り替える機器)の接点選択、信号多重・分離装置(例えば、複数の信号の入力がある場合に多重する装置及びそれを分離する装置)における信号入力・出力選択などについても、操作端末40と制御端局39と被制御端局25と被制御監視装置(制御監視の対象となる装置)における一連の信号伝達によって制御監視することが可能である。
【0023】
また、送信点4からの素材伝送のように、本社3へ直接的に送信する場合には、操作端末40と制御端局39と被制御監視装置(制御監視の対象となる装置)という信号伝達経路を用いて、本社3に存在する回転受信アンテナ33の装置や受信部34などの装置に対して制御監視することが可能である。
【0024】
ここで、重要となってくるのが、受信アンテナ方向調整の材料となる方調支援データの情報である。
基地局2を通る伝送の場合には、この情報は、基地局2内の受信部22から被制御端局25、本社3の制御端局39を通して操作端末40へ送られる監視情報にあるか、又は、基地局2において受信部22が回転受信アンテナ21の装置から受信信号を受けてTS信号へ変換して送信する際に当該TS信号に多重する方調支援データの中にある。
【0025】
方調支援データは、それが多重されたTS信号が送信部23を通って固定アンテナ24、31の固定回線を通って本社3の受信部32において再びTS信号へ戻されて送信された後に、情報生成部36において当該送信されてきた当該TS信号から分離される。この分離された方調支援データは、情報編集部37において操作者(ユーザ)にとって分かりやすい形に編集されて、ネットワーク62を通して操作端末40へ送信され、そして、当該端末の画面上に表示される。
【0026】
また、本社3へ直接伝送される場合における方調支援データについては、信号を受信する受信部34から制御端局39を通して操作端末40へ送られる監視情報により当該端末の画面上に表示されるか、又は、受信部34によりTS信号に多重された方調支援データを情報生成部36により分離して、情報編集部37により編集した後に、操作端末40へ送信することによって、当該端末の画面上に表示される。
【0027】
以上のようにして、本社3にいる操作者は、操作端末40を用いて、受信部22、34における受信状態の情報を見ながら、回転受信アンテナ21、33の装置や受信部22、34を制御して、送信点1、4に対するアンテナ方向や受信設定を調整する。
【0028】
このように、各装置を制御する操作者は、端末画面上に表示される情報から現在の受信状態を判断する必要があるため、その材料となる方調支援データはマイクロ受信基地局システムにとって必要不可欠な情報である。
また、これまでのアナログ無線伝送と違って、デジタル伝送状態については、受信電界レベル以外にも複数の状態パラメータが存在する。現在の方調支援データに含まれる情報としては、例えば、受信部22、34における受信周波数や変調方式などの伝送パラメータを含んだTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)情報、受信レベル、余裕度(Margin Degree)、BER(Bit Error Rate)、遅延プロファイル、コンスタレーションなどがあるが、伝送状態の評価を行うための情報としては1つの指標のみでは不十分であるため、通常は複数の指標を用いて総合的に評価することが多い。
(以上、システム全体の構成例の説明)
【実施例】
【0029】
本例の技術は、一例として、図4に示されるようなシステムに適用することが可能である。
送信点1や送信点4としては、本例では、移動体であるヘリコプターが用いられ、移動体の他の例として、中継車等の車や、船などが用いられてもよい。
本例では、基地局2の回転受信アンテナ21や、本社3の回転受信アンテナ33について、受信レベルに関する情報(本例では、実際の受信レベルと予想レベル)を表示する。
【0030】
本例では、送信点1から基地局2への無線通信や、送信点4から本社3への無線通信では、素材(例えば、映像や音声)の通信が行われるとともに、送信点1、4における送信側条件を特定する情報の通信が行われる。送信点1、4における送信側条件を特定する情報は、予め設定された任意の経路を通って、遠隔監視制御装置(本例では、その中の操作端末40)へ伝送される。
なお、これら2つ(素材と、送信側条件を特定する情報)の通信は、例えば、それぞれ異なる送信機や受信機を用いて行われ、他の構成例として、同一の送信機や受信機を用いて行われてもよい。また、これら2つの通信機能のそれぞれは、例えば、一方向の通信機能が用いられてもよく或いは双方向の通信機能が用いられてもよく、一例として、素材については一方向の通信機能が用いられ、送信側条件を特定する情報については互いに制御監視等の情報を通信する双方向の通信機能が用いられる。
【0031】
本例では、遠隔監視制御装置は、基地局2の被制御端局25及び変復調部26と、ネットワーク71と、本社3の変復調部38及び制御端局39及びネットワーク61及び操作端末40から構成されている。
また、本例では、本社3の操作端末40は、表示装置を有しており、その表示装置の画面に、基地局2の回転受信アンテナ21や本社3の回転受信アンテナ33について、受信レベルに関する情報(本例では、受信レベルと予想レベル)を表示する。
【0032】
次に、本例の特徴について、更に詳しく説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る遠隔監視制御装置における表示内容の一例を示してある。
本例では、遠隔監視制御装置の表示板(親局表示板)101に、地図画面部111や、受信電界メータ表示部112が表示される。
地図画面部111では、上方から地上を見た二次元の地図がノースアップ等で表示され、その地図上に、受信を行う基地局(受信基地局)121の位置にそのマークが表示され、送信を行う移動体(本例では、ヘリコプター)122の位置にそのマークが表示され、移動体122から受信基地局121への無線通信について予想される受信電界レベル123が例えば数値(例えば、「−52dBm」)で表示される。
受信電界メータ表示部112では、受信電界強度がレベルメータと数値(例えば、「−50dBm」)で表示される。
【0033】
ここで、本例では、移動体122は図4に示される送信点1に相当し、受信基地局121は図4に示される基地局2に相当する。
また、本例では、移動体122と受信基地局121との無線通信に関する表示内容の例を示したが、他の例として、図4に示される送信点4(移動体の他の例)と本社3(基地局の代わりに相当するもの)との無線通信に関する表示内容についても、同様に表示することができる。
また、図1に示される表示内容は、本例では、リアルタイムに(例えば、所定の時間間隔毎のタイミングで)更新することが可能である。
また、受信電界メータ表示部112のレベルの情報は実際に検出されたものであり、予想される受信電界レベル123の情報は予め設定された数式などを用いて送信側条件や受信側条件に基づいて演算されたものである。
【0034】
また、本例では、二次元の地図を用いたが、他の構成例として、三次元の地図が用いられてもよい。
また、本例では、地図画面部111の中心の位置に受信側を示すマークを表示する配置を示したが、必ずしも受信側の位置が中心に表示されなくてもよく、他の種々な配置の表示が用いられてもよい。
【0035】
図2には、移動体201による素材や送信側条件を特定する情報の伝送(本例では、無線通信)の様子の一例を示してある。
本例では、移動体(本例では、ヘリコプター)201は、素材を含む信号をマイクロ波により無線送信するとともに、その信号を無線送信するときの条件(送信側条件)を特定する情報を含む連絡無線データを無線送信する。
【0036】
受信基地局202は、移動体201から無線送信された素材を含む信号を受信し、その受信信号の受信電界レベルを検出して、検出した受信電界レベルを特定する情報を遠隔監視制御装置204へ送信する。
無線機203は、移動体201から無線送信された連絡無線データを受信して、それを遠隔監視制御装置204へ送信する。
【0037】
遠隔監視制御装置204は、受信基地局202から受信された情報に基づいて受信電界レベルを検出し、また、送信側条件(例えば、送信側条件の中で固定的なもの)を特定する情報や受信側条件を特定する情報をメモリに記憶しており、この情報と無線機203から受信された連絡無線データに含まれる送信側条件(例えば、送信側条件の中で変動するもの)を特定する情報に基づいて、予想される受信電界レベルを算出し、そして、例えば図1に示されるように、表示画面(親局表示板)に、実際の受信電界レベルと予想される受信電界レベルを表示する。
【0038】
ここで、図4のシステムの例では、移動体201は送信点1に相当し、受信基地局202は基地局2に相当し、無線機203は基地局2に備えられてもよく或いは他のところに備えられてもよく、遠隔監視制御装置204は主に本社3の操作端末40に対応する。
また、本例では、送信点1から基地局2への無線通信について例を示したが、他の例として、送信点4から本社3への無線通信の場合には、移動体201は送信点4に相当し、受信基地局202の代わりに本社3となり、無線機203は本社3或いは他のところに備えられ、遠隔監視制御装置204は主に本社3の操作端末40に対応する。
【0039】
送信側条件及び受信側条件について説明する。
本例では、送信側条件として、送信アンテナ利得、送信周波数、送信電力、送信側損失、移動体位置情報(送信側である移動体201の緯度、経度、高度)がある。
本例では、受信側条件として、受信アンテナ利得、受信側損失、受信側位置情報(受信側である基地局202(或いは、本社)の緯度、経度、高度)がある。
【0040】
送信アンテナ利得は、送信側のアンテナの利得である。
送信周波数は、送信側である移動体201から受信側である基地局202(或いは、本社)への無線送信で使用される周波数である。
送信電力は、送信側からの送信電力(本例では、送信側損失を受ける前の元の電力)であり、例えば、アンテナに対して供給する電力である。
送信側損失は、送信側で送信信号に発生する損失であり、例えば、アンテナでの損失や、他の回路での損失が含まれる。
移動体位置情報は、送信側である移動体201の位置の情報である。
【0041】
受信アンテナ利得は、受信側のアンテナの利得である。
受信側損失は、受信側で受信信号に発生する損失であり、例えば、アンテナでの損失や、他の回路での損失が含まれる。
受信側位置情報は、受信側である基地局202(或いは、本社)の位置の情報である。
【0042】
ここで、送信側条件のうちの移動体位置情報は、移動体201が移動してその位置が変化すると変化するため、移動体201において当該移動体201の位置(本例では、緯度、経度、高度)の情報を検出して、送信側条件として遠隔監視制御装置204へ通知する。移動体201は、当該移動体201の位置の情報を検出する装置として、例えば、GPS(Global Positioning System)の受信機などを有している。
【0043】
また、移動体位置情報以外の送信側条件である送信アンテナ利得、送信周波数、送信電力、送信側損失については、変化するものについては移動体201において検出して送信側条件として遠隔監視制御装置204へ通知し、また、固定的な値であるものについては、例えば、遠隔監視制御装置204に予め設定して記憶しておいて、この場合、送信側である移動体201から無線機203を介して遠隔監視制御装置204へ通知(送信)しなくてよい(又は、通知しても構わない)。
また、受信側条件である受信アンテナ利得、受信側損失、受信側位置情報は、例えば、固定的な値であり、遠隔監視制御装置204に予め設定して記憶しておき、また、他の構成例として、変化するものがある場合には、それについて、基地局202(或いは、本社)や遠隔監視制御装置204などで検出する。
本例では、移動体位置情報はリアルタイムに変化し、送信側条件の他の項目及び受信側条件の全ての項目は不変であるとし、移動体201は少なくとも移動体位置情報を遠隔監視制御装置204へ通知する。
【0044】
遠隔監視制御装置204(本例では、主に、その中の操作端末40)では、送信側条件と受信側条件と予め設定された所定の数式に基づいて、受信側である基地局202(或いは、本社)における受信電界レベルに関して予想される受信電界レベルを算出する。具体的には、移動体位置情報と受信側位置情報に基づいて送信側の位置と受信側の位置との間の距離を算出し、この距離と送信周波数に基づいて自由空間損失を算出し、そして、この自由空間損失、送信アンテナ利得、送信電力、送信側損失、受信アンテナ利得、受信側損失に基づいて、予想される受信電界レベルを算出する。
【0045】
ここで、受信側における予想される受信電界レベルとしては、実際に検出される受信電界レベルと比較が可能なものとされ、例えば、受信電界レベルを検出するところにおける予想の値が用いられ、具体例として、受信側の損失を加味した受信機端であって、受信高周波部の入力電界レベルが用いられる。
【0046】
遠隔監視制御装置204(本例では、主に、その中の操作端末40)に設けられる警告機能について説明する。
本例の遠隔監視制御装置204は、実際の受信電界レベルと予想される受信電界レベルとの差が所定の閾値より大きい(又は、所定の閾値以上である)と判定した場合には、その旨を操作者に対して警告する機能を有している。
警告の態様としては、種々な態様が用いられてもよく、例えば、表示の色を用いることができ、具体例として、図1に示されるような表示を行うときに、通常時(警告時ではないとき)には黒地に緑の文字で表示し、異常時(警告時)には赤地に白い文字で表示する。他の態様例として、文字又は画像の表示や音などを用いて警告が行われてもよい。
【0047】
以上のように、本例では、基地局(或いは、本社)に対する遠隔監視制御装置において、移動体の送信側条件などに基づいて、移動体から基地局(或いは、本社)の回転受信アンテナにより受信される信号の受信電界レベルを予想し、地図上に、受信側(例えば、基地局(或いは、本社)の回転受信アンテナ)を中心にして、その中心の位置や、移動体の位置や、実際の受信電界レベルや、予想される受信電界レベルを表示する。
【0048】
従って、本例の遠隔監視制御装置では、実際に検出された受信電界レベルを表示するばかりでなく、送信側条件及び受信側条件を元に予想される受信電界レベルを求めて、求められた予想される受信電界レベルを表示することにより、操作者(運用者)が視覚的、直感的に受信状況を把握(認識)や判断等することができ、例えば、実際の受信電界レベルと予想される受信電界レベルとの差を判断して、受信状況の良否を判別することができる。また、他の構成例として、受信状況の良否の判定を遠隔監視制御装置により自動的に行って、受信状況が悪いとき(否のとき)に警告を発することもできる。
【0049】
このように、本例の遠隔監視制御装置では、送信側である移動体から受信側への無線通信について、リアルタイムに変化する移動体の位置を把握し、実際の受信電界レベルを検出し、送信側条件や受信側条件から予想される受信電界レベルを算出し、これらの情報を例えば一画面で表示する。操作者は、例えば、実際の受信電界レベルが予想される受信電界レベルより大幅に低い場合には、送信側である移動体と受信側との間にビル、山、木等の障害物があると判断することができ、移動体に対してその緯度や経度を変える指示や或いはその高度を変える(例えば、高くする)指示を与えることができる。操作者は、例えば、図1に示されるような地図画面部111の表示内容を見ることにより、障害物の存在を把握することが可能であり、無線通信が障害物を回避するように、移動体の位置を誘導する指示を与えることができる。
【0050】
(以下、構成例の説明)
一構成例として、移動体201と、第1の受信装置(本例では、受信基地局202の装置、或いは本社の装置)と、第2の受信装置(本例では、無線機203の装置)と、監視制御装置(本例では、遠隔監視制御装置204)を有する無線通信システム(本例では、マイクロ受信基地局システム)であって、次のような構成とした。
すなわち、前記移動体では、位置情報検出手段の機能が、当該移動体の位置の情報を検出する。第1の送信手段の機能が、信号(本例では、素材の信号)を無線により送信する。第2の送信手段の機能が、(少なくとも前記位置情報検出手段の機能により検出された位置の情報を含む)前記第1の送信手段の送信に関する条件(本例では、送信側条件)を特定する情報を無線により送信する。
前記第1の受信装置では、第1の受信手段の機能(本例では、回転受信アンテナを用いた受信機能)が、前記移動体の前記第1の送信手段の機能により無線により送信された信号を受信する。受信レベル検出手段の機能が、前記第1の受信手段の機能により受信された信号の受信レベルを検出する。
前記第2の受信装置では、第2の受信手段の機能が、前記移動体の前記第2の送信手段の機能により無線により送信された情報を受信する。
前記監視制御装置では、予想受信レベル取得手段の機能が、前記第2の受信装置の前記第2の受信手段の機能により受信された情報に基づいて、前記第1の受信装置の前記第1の受信手段の機能により受信される信号の受信レベルに関して、予想される受信レベルを取得(例えば、演算)する。表示制御手段の機能が、前記第1の受信装置の前記受信レベル検出手段の機能により検出された受信レベルの情報と前記予想受信レベル取得手段の機能により取得された予想される受信レベルの情報を表示するように制御する。
【0051】
従って、有効な表示を行うことができ、具体的には、実際の受信電界強度と予想される受信電界強度との比較を可能とすることができる。
ここで、移動体や、第1の受信装置や、第2の受信装置や、監視制御装置としては、それぞれ、種々なものが用いられてもよい。
また、移動体と第1の受信装置との間で通信される信号としては、必ずしも放送用の素材の信号に限られず、種々な情報の信号が用いられてもよい。
【0052】
また、送信に関する条件としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、変化せずに固定的なものについては予め監視制御装置に記憶されてもよい。
また、レベルとしては、種々な単位の値が用いられてもよい。
また、予想される受信レベルの取得の仕方(例えば、演算の仕方)としては、種々なものが用いられてもよい。
また、表示の内容としては、種々な態様が用いられてもよい。
また、表示制御手段の機能により表示を行う表示装置としては、例えば、監視制御装置に備えられてもよく、或いは、他のところに備えられてもよい。
【0053】
一構成例として、前記監視制御装置は、(少なくとも前記第1の受信装置の前記第1の受信手段の機能の受信に関する条件(本例では、受信側条件)を特定する情報を含む)前記第1の送信装置の前記第1の送信手段の機能と前記第1の受信装置の前記第1の受信手段の機能との間の通信に関する条件(通信条件)を特定する情報を記憶する条件情報記憶手段の機能を備えた。
前記予想受信レベル取得手段の機能は、前記第2の受信装置の前記第2の受信手段の機能により受信された情報と前記条件情報記憶手段の機能により記憶された情報に基づいて、前記第1の受信装置の前記第1の受信手段の機能により受信される信号の受信レベルに関して、予想される受信レベルを取得する。
【0054】
ここで、受信に関する条件としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、変化せずに固定的なものについては予め監視制御装置に記憶される。
また、通信に関する条件としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、受信に関する条件ばかりでなく、送信に関する条件の中で変化せずに固定的なものが含まれてもよい。
【0055】
一構成例として、前記監視制御装置の前記表示制御手段の機能は、更に、前記移動体の位置と前記第1の受信装置の位置との関係を示す情報を表示するように制御する(例えば、図1を参照。)。
従って、移動体(例えば、移動体122)の位置と第1の受信装置(例えば、受信基地局121など)の位置との関係を視覚的に提供することができ、ユーザに対して有効な表示を行うことができる。また、例えば、更に、地図などが表示されてもよく、この場合、移動体と第1の受信装置との間の通信の環境を視覚的に提供することができる。
【0056】
一構成例として、前記監視制御装置は、前記第1の受信装置の前記受信レベル検出手段の機能により検出された受信レベルの値と前記予想受信レベル取得手段の機能により取得された予想される受信レベルの値との差が所定の閾値を超える場合(又は、所定の閾値以上となる場合)に所定の警告を示す出力を行う警告手段を備えた。
【0057】
従って、実際の受信レベルの値と予想される受信レベルの値とが大幅に異なるような場合に警告を発することができ、その旨をユーザに報知することができる。
ここで、閾値としては、種々な値が用いられてもよい。
また、所定の警告を示す出力としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、表示の色を変えた出力や、文字や画像の出力や、或いは、音の出力などを用いることができる。
(以上、構成例の説明)
【0058】
(実施例のまとめ)
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1、4・・送信点、 2・・基地局、 3・・本社、 11、23、51・・送信部、 12、52・・アンテナ、 21、33・・回転受信アンテナ、 22、32、34・・受信部、 24、31・・固定アンテナ、 25・・被制御端局、 26、38・・変復調部、 35・・復号部、 36・・情報生成部、 37・・情報編集部、 39・・制御端局、 40・・操作端末、 61、62、71・・ネットワーク、
101、301・・親局表示板、 111、311・・地図画面部、 112、312・・受信電界メータ表示部、 121、202、321・・受信基地局、 122、201、322・・移動体、 123・・予想される受信電界レベル、 203・・無線機、 204・・遠隔監視制御装置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、第1の受信装置と、第2の受信装置と、監視制御装置を有する無線通信システムであって、
前記移動体は、当該移動体の位置の情報を検出する位置情報検出手段と、信号を無線により送信する第1の送信手段と、少なくとも前記位置情報検出手段により検出された位置の情報を含む前記第1の送信手段の送信に関する条件を特定する情報を無線により送信する第2の送信手段と、を備え、
前記第1の受信装置は、前記移動体の前記第1の送信手段により無線により送信された信号を受信する第1の受信手段と、前記第1の受信手段により受信された信号の受信レベルを検出する受信レベル検出手段と、を備え、
前記第2の受信装置は、前記移動体の前記第2の送信手段により無線により送信された情報を受信する第2の受信手段を備え、
前記監視制御装置は、前記第2の受信装置の前記第2の受信手段により受信された情報に基づいて前記第1の受信装置の前記第1の受信手段により受信される信号の受信レベルに関して予想される受信レベルを取得する予想受信レベル取得手段と、前記第1の受信装置の前記受信レベル検出手段により検出された受信レベルの情報と前記予想受信レベル取得手段により取得された予想される受信レベルの情報を表示するように制御する表示制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−205023(P2012−205023A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66874(P2011−66874)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】