説明

無線通信システム

【課題】ルート探索時の通信トラフィックを少なくする。
【解決手段】送信元ノードN0から通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLでディスカバリパケットPをブロードキャストで送信する。中継ノードでも同様にして、通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLで、ディスカバリパケットPをブロードキャストで転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メッシュネットワーク構造の無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信を利用して、環境計測・監視・制御などを行うシステムが増加している。この環境計測・監視・制御などを行う無線通信システムでは、対象エリアが比較的広い、又は、対象エリア内に無線通信の障害物が多々存在する場合が多い。このような場合、対象エリアをカバーするためには、受信器と送信器の設置位置や電波状況等の環境により直接通信できなくても、他のデバイスを中継して通信を行うことができる無線通信ネットワークを利用することが有利である。
【0003】
この種の無線通信ネットワークとして、ジグビー(Zigbee(登録商標))プロトコルを利用した無線通信ネットワークなど、メッシュネットワークが提案されている。このメッシュネットワークでは、多数の通信ノード(デバイス)をメッシュ状に配置し、通信ノード間の双方向の通信を直接通信圏内にある他の通信ノードを中継して行うもので、1つの通信経路がマルチパスフェージングの影響を受けて通信不能に陥ったとしても、他の通信経路を探索して通信を継続することができる技術である。なお、マルチパスフェージングとは、複数の通信電波反射経路の間に発生する位相差により受信電波が打ち消され、受信ができなくなる現象をいう。
【0004】
ここで、他の通信経路(中継経路)を探索して通信を継続する技術をルート探索と呼ぶが、このルート探索では、送信元ノード(ルート探索送信元ノード)がディスカバリパケットと呼ばれる通信パケット(ルート探索用パケット)をブロードキャストで直接通信圏内の他の通信ノードに送信し、このディスカバリパケットを受信した他の通信ノード(中継ノード)がその間の経路に関する情報(経路情報(自己の識別子や通信品質))をディスカバリパケットに書き込み、この経路情報が書き込まれたディスカバリパケットをブロードキャストで直接通信圏内の他の通信ノードに転送するという動作を順次繰り返すことによって、メッシュネットワーク中の複数の経路を経由するディスカバリパケットを宛先ノード(ルート探索宛先ノード)に最終的に到達させる。宛先ノードは、この到達したディスカバリパケットに書き込まれている経路情報に基づいて、送信元ノードと宛先ノードとの間の最適な中継経路を決定する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−20221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したメッシュネットワークにおけるルート探索では、各ノードがブロードキャストでディスカバリパケットを中継して行くために、通信トラフィックが高くなり、場合によっては輻輳が発生するという問題がある。特に、ネットワーク起動時には各ノードで一斉にルート探索が行われることがあり、そのためネットワークが起動完了するまでにかなりの時間を要することもある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ルート探索時の通信トラフィックを少なくすることができる無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために本発明は、ルート探索送信元デバイスと、ルート探索宛先デバイスと、ルート探索送信元デバイスからルート探索宛先デバイスに宛ててブロードキャストで送信されるルート探索用パケットを中継する複数の中継デバイスとを備え、ルート探索送信元デバイスとルート探索宛先デバイスとの間のルート探索用パケットを用いての通信ルートの確定後、その確定された通信ルートに従って各デバイス間の通信を予め定められている通常送信時の送信電力で行う無線通信システムにおいて、ルート探索送信元デバイスに、ルート探索用パケットを通常送信時の送信電力よりも低い送信電力でブロードキャストで送信する手段を設け、中継デバイスに、ルート探索用パケットを通常送信時の送信電力よりも低い送信電力でブロードキャストで転送する手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ルート探索送信元デバイスが通常送信時の送信電力よりも低い送信電力でルート探索用パケットをブロードキャストで送信し、中継デバイスが通常送信時の送信電力よりも低い送信電力でルート探索用パケットをブロードキャストで転送するので、ルート探索用パケットを受信する中継デバイスが減り、ルート探索時の通信トラフィックが少なくなる。これにより、ルート探索時の輻輳の発生を抑制したり、ネットワークが起動完了するまでの時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る無線通信システムの一実施の形態の概略を示す構成図である。
【図2】この無線通信システムの実施の形態1における送信元ノードでのディスカバリパケットの送信処理を示すフローチャートである。
【図3】この無線通信システムの実施の形態1における中継ノードでのディスカバリパケットの転送処理を示すフローチャートである。
【図4】この無線通信システムの実施の形態1における宛先ノードでのディスカバリパケットの受信処理を示すフローチャートである。
【図5】この無線通信システムの実施の形態2における送信元ノードでのディスカバリパケットの送信処理を示すフローチャートである。
【図6】この無線通信システムの実施の形態2における中継ノードでのディスカバリパケットの転送処理を示すフローチャートである。
【図7】通信ノードを送信元ノードとして機能させた場合の機能ブロック図である。
【図8】通信ノードを中継ノードとして機能させた場合の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施の形態に基づき詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係る無線通信システムの一実施の形態の概略を示す構成図である。同図において、N0〜N4は通信ノードであり、これらの通信ノードN0〜N4によってメッシュネットワークが構成されている。
【0012】
このメッシュネットワークにおいて、通信ノードN0〜N4は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、本実施の形態特有の機能としてルート探索機能を有している。
【0013】
以下、通信ノードN0を送信元ノード(ルート探索送信元ノード)、通信ノードN1を宛先ノード(ルート探索宛先ノード)、通信ノードN2〜N4を中継ノードとして、各通信ノードの機能を交えながらルート探索時の動作について説明する。
【0014】
なお、通信ノードN0〜N4は、ルート探索送信元ノードとしての機能、中継ノードとしての機能、ルート探索宛先ノードとしての機能を全て備えており、上述したルート探索機能とはこれらの機能を合わせた機能のことを言う。
【0015】
また、通信ノードN0〜N4は、上述したルート探索機能を用いての通信ルートの確定後、その確定された通信ルートに従って通信を行う。この場合、各通信ノード間の通信は、予め定められている通常送信時の送信電力で行われる。本実施の形態では、この各通信ノード間の通常送信時の送信電力をPWNとする。
【0016】
〔ディスカバリパケットの送信〕
送信元ノードN0は、ルート探索の開始が指示されると(図2:ステップS101のYES)、送信電力を通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLとする(ステップS102)。
【0017】
そして、この通常送信時よりも低い送信電力PWLで、自己の識別子を経路情報として付して、また通信ノードN1を宛先ノードとして指定して、ディスカバリパケットPを直接通信圏内の他の通信ノードにブロードキャストで送信する(ステップS103)。
【0018】
本実施の形態では、送信元ノードN0からディスカバリパケットPを通常送信時よりも低い送信電力PWLで送信するが、この場合の送信電力PWLは、通常送信時の送信電力PWNでディスカバリパケットPを送信したと仮定した場合の受信側のノードにおける通信品質の判断に際するマージンを見込み、そのマージンの分だけ通常送信時の送信電力PWNを低下させたものである。
【0019】
上述したマージンについて説明する。ルート探索時にディスカバリパケットPを受信できたノードがあったとしても、電波品質には時間変化がつきものであるため、1回だけ受信できたからといって安定的な通信ルートに採用できるかは不明である。そのため、送信電力PWNでディスカバリパケットPを送信する場合、通常は、受信側のノードにおいて、受信電界強度の閾値に一定のマージンを上乗せし、このマージンを上乗せした閾値と受信電界強度とを比較して、受信状態の良否の判定を行うようにする。
【0020】
このように、通常は、受信側のノードにおいて、受信電界強度の閾値に一定のマージンを上乗せするが、本実施の形態では、そのマージンの分だけ通常送信時の送信電力PWNを低下させ、この低下させた送信電力をルート探索時の送信電力PWLとし、受信側のノードでの閾値へのマージンの上乗せは行わない。
【0021】
〔ディスカバリパケットの受信〕
この実施の形態では、通信ノードN2,N3が送信元ノードN0の通常送信時の送信電力PWNでの直接通信圏内にあり、この通信ノードN2,N3のうち通信ノードN2のみが送信元ノードN0の通常送信時よりも低い送信電力PWLでの直接通信圏内にあるものとする。
【0022】
この場合、送信元ノードN0からブロードキャストで送信されるディスカバリパケットPは、通信ノードN2でしか受信されない。すなわち、送信元ノードN0から通常送信時の送信電力PWNでディスカバリパケットPが送信された場合には、通信ノードN2とN3の両方でディスカバリパケットPが受信されるが、送信元ノードN0からは通常通信時よりも低い送信電力PWLでディスカバリパケットPが送信されるので、通信ノードN2でしかディスカバリパケットPは受信されない。
【0023】
通信ノード(中継ノード)N2は、送信元ノードN0からのディスカバリパケットPを受信すると(図3:ステップS201のYES)、ディスカバリパケットPを受信したことを示す応答(ACK)を送信元ノードN0に返送する(ステップS202)。
【0024】
送信元ノードN0は、ディスカバリパケットPの送信後、所定時間内に中継ノードN2からのACKを受信すると(図2:ステップS104のYES)、ディスカバリパケットPの送信処理を終了する。
【0025】
〔ディスカバリパケットの転送〕
中継ノードN2は、送信元ノードN0へのACKの返送後、送信元ノードN0と同様にして、送信電力を通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLとする(ステップS203)。
【0026】
そして、この通常通信時よりも低い送信電力PWLで、自己の識別子と通信品質(ディスカバリパケットPの受信状態)を経路情報として付して、ディスカバリパケットPを直接通信圏内の他の通信ノードにブロードキャストで転送する(ステップS204)。
【0027】
この場合、送信元ノードN0からのディスカバリパケットPは、通常送信時の送信電力PWNで送信したと仮定した場合の受信側のノードにおける通信品質の判断に際するマージンを見込み、そのマージンの分だけ通常送信時の送信電力PWNを低下させた送信電力PWLで送信されてくるので、中継ノードN2でディスカバリパケットPを受信できたこと自体が受信状態が良好であることを示している。
【0028】
〔ディスカバリパケットの受信〕
この実施の形態では、通信ノードN3,N4が中継ノードN2の通常送信時の送信電力PWNでの直接通信圏内にあり、この通信ノードN3,N4のうち通信ノードN3のみが中継ノードN2の通常通信時よりも低い送信電力PWLでの直接通信圏内にあるものとする。
【0029】
この場合、中継ノードN2からブロードキャストで転送されるディスカバリパケットPは、通信ノードN3でしか受信されない。すなわち、中継ノードN2から通常送信時の送信電力PWNでディスカバリパケットPが転送された場合には、通信ノードN3とN4の両方でディスカバリパケットPが受信されるが、中継ノードN2からは通常通信時よりも低い送信電力PWLでディスカバリパケットPが転送されるので、通信ノードN3でしかディスカバリパケットPは受信されない。
【0030】
通信ノード(中継ノード)N3は、中継ノードN2からのディスカバリパケットPを受信すると(図3:ステップS201のYES)、ディスカバリパケットPを受信したことを示す応答(ACK)を中継ノードN2に返送する(ステップS202)。
【0031】
中継ノードN2は、ディスカバリパケットPの転送後、所定時間内に中継ノードN3からのACKを受信すると(ステップS205のYES)、ディスカバリパケットPの転送処理を終了する。
【0032】
〔ディスカバリパケットの転送〕
中継ノードN3は、中継ノードN2へのACKの返送後、中継ノードN2と同様にして、送信電力を通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLとする(ステップS203)。
【0033】
そして、この通常通信時よりも低い送信電力PWLで、自己の識別子と通信品質(ディスカバリパケットPの受信状態)を経路情報として付して、ディスカバリパケットPを直接通信圏内の他の通信ノードにブロードキャストで転送する(ステップS204)。
【0034】
この場合、中継ノードN2からのディスカバリパケットPは、通常送信時の送信電力PWNで送信したと仮定した場合の受信側のノードにおける通信品質の判断に際するマージンを見込み、そのマージンの分だけ通常送信時の送信電力PWNを低下させた送信電力PWLで送信されてくるので、中継ノードN3でディスカバリパケットPを受信できたこと自体が受信状態が良好であることを示している。
【0035】
以下同様にして、他の通信ノードでも、ディスカバリパケットPの中継が行われる。
【0036】
〔宛先ノード〕
宛先ノードN1は、例えば中継ノードN4からのディスカバリパケットPを受信すると(図4:ステップS301のYES)、ディスカバリパケットPを受信したことを示す応答(ACK)を中継ノードN4に返送する(ステップS302)。
【0037】
宛先ノードN1は、中継ノードN4からのディスカバリパケットPと同様にして、他の経路で送られてくるディスカバリパケットPを受信する。そして、全てのディスカバリパケットPの受信を完了すると(ステップS303のYES)、受信した各ディスカバリパケットPに書き込まれている経路情報に基づいて、送信元ノードN0と宛先ノードN1との間の最適な中継経路を決定し(ステップS304)、その決定した最適な中継経路を送信元ノードN0に返送する(ステップS305)。
【0038】
このように、本実施の形態のメッシュネットワークでは、送信元ノードN0が通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLでディスカバリパケットPをブロードキャストで送信し、中継ノードN2,N3,N4が通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLでディスカバリパケットPをブロードキャストで転送するので、ディスカバリパケットPを受信する中継ノードが減り、ルート探索時の通信トラフィックが少なくなる。これにより、ルート探索時の輻輳の発生を抑制したり、ネットワークが起動完了するまでの時間を短縮することができるようになる。
【0039】
〔送信元ノードからのディスカバリパケットの再送信〕
上述の説明では、送信元ノードN0の通常通信時よりも低い送信電力PWLでの直接通信圏内に通信ノードN2のみが位置しているものとしたが、この直接通信圏内に他の通信ノードが全くない場合もある。この場合、送信元ノードN0には、ディスカバリパケットPの送信後、そのディスカバリパケットPを受信したことを示す応答(ACK)が1つも返送されてこない。
【0040】
送信元ノードN0は、ディスカバリパケットPの送信後、ACKが1つも返送されてこなければ(図2:ステップS104のNO)、その時の送信電力PWLを所定量ΔP増大させて(ステップS105、PWL=PWL+ΔP)、ディスカバリパケットPを再送信する(ステップS103)。
【0041】
送信元ノードN0は、このディスカバリパケットPの再送信をACKが返送されてくるまで、送信電力PWLをΔPずつ増大させながら繰り返す。なお、この場合の送信電力PWLの上限は、通常送信時の送信電力PWNを超えないものとする。これにより、送信元ノードN0からのディスカバリパケットPを送信することが可能な通信ノードが全くないという状況を回避することができる。
【0042】
〔中継ノードからのディスカバリパケットの再転送〕
上述の説明では、中継ノードN2の通常通信時よりも低い送信電力PWLでの直接通信圏内に通信ノードN3のみが位置しているものとしたが、この直接通信圏内に他の通信ノードが全くない場合もある。この場合、中継ノードN2には、ディスカバリパケットPの送信後、そのディスカバリパケットPを受信したことを示す応答(ACK)が1つも返送されてこない。
【0043】
中継ノードN2は、ディスカバリパケットPの送信後、ACKが1つも返送されてこなければ(図3:ステップS205のNO)、その時の送信電力PWLを所定量ΔP増大させて(ステップS206、PWL=PWL+ΔP)、ディスカバリパケットPを再転送する(ステップS206)。
【0044】
中継ノードN2は、このディスカバリパケットPの再転送をACKが返送されてくるまで、送信電力PWLをΔPずつ増大させながら繰り返す。なお、この場合の送信電力PWLの上限は、通常送信時の送信電力PWNを超えないものとする。これにより、中継ノードN2からのディスカバリパケットPを転送することが可能な通信ノードが全くないという状況を回避することができる。中継ノードN3,N4でも同様動作が行われる。
【0045】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、例えば、送信元ノードN0からのディスカバリパケットPの送信に対し、複数のACKが返送されてきた場合(ステップS104のYES)、そのままディスカバリパケットPの送信処理が終了される。中継ノードN2でも同様であり、中継ノードN2からディスカバリパケットPの転送に対し、複数のACKが返送されてきた場合(ステップS205のYES)、そのままディスカバリパケットPの転送処理が終了される。この場合、ディスカバリパケットPを受信する中継ノードが増え、ルート探索時の通信トラフィックが多くなる。
【0046】
そこで、実施の形態2では、ディスカバリパケットPを受信する中継ノードの数をできるだけ減らし、ルート探索時の通信トラフィックをより少なくする。図5に実施の形態2における送信元ノードでのディスカバリパケットの送信処理のフローチャートを示す。図6に実施の形態2における中継ノードでのディスカバリパケットの転送処理のフローチャートを示す。
【0047】
〔送信元ノード〕
実施の形態2において、送信元ノードN0は、通常通信時よりも低い送信電力PWLでディスカバリパケットPを送信した後(ステップS403)、所定時間内にACKが返送されてくれば(ステップS404のYES)、その所定時間内に返送されてきたACKの数をチェックする(ステップS405)。
【0048】
ここで、ACKの数が1つであれば(ステップS405のYES)、ディスカバリパケットPの送信処理を終了する。ACKの数が複数であれば(ステップS405のNO)、その時の送信電力PWLを所定量ΔP減少させて(ステップS406、PWL=PWL−ΔP)、ディスカバリパケットPを再送信する(ステップS403)。
【0049】
ディスカバリパケットPの再送信によって、所定時間内に返送されてくるACKの数が1つとなれば(ステップS405のYES)、ディスカバリパケットPの送信処理を終了する。所定時間内に返送されてくるACKの数がまだ複数であれば(ステップS405のNO)、その時の送信電力PWLをさらに所定量ΔP減少させて(ステップS406、PWL=PWL−ΔP)、ディスカバリパケットPを再送信する(ステップS403)。
【0050】
ディスカバリパケットPの再送信によって、ACKが1つも返送されてこなくなった場合には(ステップS404のNO)、前回のACKが複数であったことを確認のうえ(ステップS407のYES)、その時の送信電力PWLを所定量ΔP増大させて(ステップS409、PWL=PWL+ΔP)、ディスカバリパケットPの再送信を行い(ステップS410)、ACKを一番早く返送してきた通信ノードを指定してディスカバリパケットPを送信する(ステップS411)。
【0051】
〔中継ノード〕
実施の形態2において、中継ノードN2は、送信元ノードN0からのディスカバリパケットPを受信すると(ステップS501のYES)、送信元ノードN0にACKを返送する(ステップS502)。そして、所定の待ち時間T1の計時をスタートする(ステップS503)。この待ち時間T1は、送信元ノードN0におけるディスカバリパケットPの送信から再送信までに要する時間をT0とした場合、この時間T0を上回る所定の時間とする。
【0052】
中継ノードN2は、待ち時間T1の計時中に送信元ノードN0から前回と同じディスカバリパケットPを受信すると(ステップS505のYES)、送信元ノードN0にACKを返送し(ステップS502)、待ち時間T1の計時を再スタートする(ステップS503)。
【0053】
中継ノードN2は、送信元ノードN0から前回と同じディスカバリパケットPを受信せずに、待ち時間T1がタイムアップすると(ステップS504のYES)、あるいは待ち時間T1の計時中に自己宛てのディスカバリパケットPを受信すると(ステップS506のYES)、送信電力を通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLとする(ステップS507)。
【0054】
そして、この通常送信時よりも低い送信電力PWLで、自己の識別子と通信品質(ディスカバリパケットPの受信状態)を経路情報として付して、ディスカバリパケットPを直接通信圏内の他の通信ノードにブロードキャストで転送する(ステップS508)。
【0055】
中継ノードN2は、このディスカバリパケットPの転送後、所定時間内にACKが返送されてくれば(ステップS509のYES)、その所定時間内に返送されてきたACKの数をチェックする(ステップS510)。
【0056】
ここで、ACKの数が1つであれば(ステップS510のYES)、ディスカバリパケットPの送信処理を終了する。ACKの数が複数であれば(ステップS510のNO)、その時の送信電力PWLを所定量ΔP減少させて(ステップS406、PWL=PWL−ΔP)、ディスカバリパケットPを再転送する(ステップS508)。
【0057】
ディスカバリパケットPの再転送によって、所定時間内に返送されてくるACKの数が1つとなれば(ステップS510のYES)、ディスカバリパケットPの転送処理を終了する。所定時間内に返送されてくるACKの数がまだ複数であれば(ステップS510のNO)、その時の送信電力PWLをさらに所定量ΔP減少させて(ステップS511、PWL=PWL−ΔP)、ディスカバリパケットPを再転送する(ステップS508)。
【0058】
ディスカバリパケットPの再転送によって、ACKが1つも返送されてこなくなった場合には(ステップS509のNO)、前回のACKが複数であったことを確認のうえ(ステップS512のYES)、その時の送信電力PWLを所定量ΔP増大させて(ステップS514、PWL=PWL+ΔP)、ディスカバリパケットPの再転送を行い(ステップS515)、ACKを一番早く返送してきた通信ノードを指定してディスカバリパケットPを転送する(ステップS516)。
【0059】
〔送信元ノードの機能ブロック〕
図7に通信ノードを送信元ノードとして機能させた場合の機能ブロック図を示す。なお、図7では、中継ノードや宛先ノードと区別するために送信元ノードを符号NAで示す。
【0060】
送信元ノードNAは、ルート探索の開始の指示を受けて、ディスカバリパケットPを通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLで直接通信圏内の他の通信ノードにブロードキャストで送信するディスカバリパケット送信部1と、ディスカバリパケット送信部1からのディスカバリパケットPを受信したことを示す他の通信ノードからの応答(ACK)を受信するACK受信部2と、ディスカバリパケット送信部1からのディスカバリパケットPの送信後、所定時間が経過してもACK受信部2においてACKが1つも受信されない場合、その時の送信電力PWLを所定量ΔP増大させてディスカバリパケット送信部1にディスカバリパケットPの再送信を行わせる第1のディスカバリパケット再送信部3と、ディスカバリパケット送信部1からのディスカバリパケットPの送信後、所定時間が経過する間にACK受信部2においてACKが複数受信された場合、その時の送信電力PWLを所定量ΔP減少させてディスカバリパケット送信部1にディスカバリパケットPの再送信を行わせる第2のディスカバリパケット再送信部4とを備えている。
【0061】
〔中継ノードの機能ブロック〕
図8に通信ノードを中継ノードとして機能させた場合の機能ブロック図を示す。なお、図8では、送信元ノードや宛先ノードと区別するために中継ノードを符号NBで示す。
【0062】
中継ノードNBは、送信元ノードや他の中継ノードからのディスカバリパケットPを受信するディスカバリパケット受信部5と、このディスカバリパケット受信部5が受信したディスカバリパケットPを通常送信時の送信電力PWNよりも低い送信電力PWLで直接通信圏内の他の通信ノードにブロードキャストで転送するディスカバリパケット転送部6と、ディスカバリパケット転送部6からのディスカバリパケットPを受信したことを示す他の通信ノードからの応答(ACK)を受信するACK受信部7と、ディスカバリパケット転送部6からのディスカバリパケットPの転送後、所定時間が経過してもACK受信部7においてACKが1つも受信されない場合、その時の送信電力PWLを所定量ΔP増大させてディスカバリパケット転送部6にディスカバリパケットPの再転送を行わせる第1のディスカバリパケット再転送部8と、ディスカバリパケット転送部6からのディスカバリパケットPの転送後、所定時間が経過する間にACK受信部7においてACKが複数受信された場合、その時の送信電力PWLを所定量ΔP減少させてディスカバリパケット転送部6にディスカバリパケットPの再転送を行わせる第2のディスカバリパケット再転送部9とを備えている。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の無線通信システムは、通信幹線を無線化したメッシュ構造の中規模、大規模の監視制御システムなど様々な分野で利用することが可能である。具体的には、VAV(可変風量調節)による居室内空調システムへの適用などが考えられる。
【符号の説明】
【0064】
N0〜N4…通信ノード、P…ディスカバリパケット、NA…送信元ノード、NB…中継ノード、1…ディスカバリパケット送信部、2…ACK受信部、3…第1のディスカバリパケット再送信部、4…第2のディスカバリパケット再送信部、5…ディスカバリパケット受信部、6…ディスカバリパケット転送部、7…ACK受信部、8…第1のディスカバリパケット再転送部、9…第2のディスカバリパケット再転送部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルート探索送信元デバイスと、ルート探索宛先デバイスと、前記ルート探索送信元デバイスから前記ルート探索宛先デバイスに宛ててブロードキャストで送信されるルート探索用パケットを中継する複数の中継デバイスとを備え、前記ルート探索送信元デバイスと前記ルート探索宛先デバイスとの間の前記ルート探索用パケットを用いての通信ルートの確定後、その確定された通信ルートに従って前記各デバイス間の通信を予め定められている通常送信時の送信電力で行う無線通信システムにおいて、
前記ルート探索送信元デバイスは、
前記ルート探索用パケットを前記通常送信時の送信電力よりも低い送信電力でブロードキャストで送信する手段を備え、
前記中継デバイスは、
前記ルート探索用パケットを前記通常送信時の送信電力よりも低い送信電力でブロードキャストで転送する手段を備える
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載された無線通信システムにおいて、
前記ルート探索送信元デバイスは、
前記ルート探索用パケットの送信後、所定時間が経過してもそのルート探索用パケットを受信したことを示す応答が1つも返送されてこない場合、前記送信電力を増大させて前記ルート探索用パケットを再送信する手段を備え、
前記中継デバイスは、
前記ルート探索用パケットの転送後、所定時間が経過してもそのルート探索用パケットを受信したことを示す応答が1つも返送されてこない場合、前記送信電力を増大させて前記ルート探索用パケットを再転送する手段を備える
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載された無線通信システムにおいて、
前記ルート探索送信元デバイスは、
前記ルート探索用パケットの送信後、そのルート探索用パケットを受信したことを示す応答が複数返送されてきた場合、前記送信電力を減少させて前記ルート探索用パケットを再送信する手段を備え、
前記中継デバイスは、
前記ルート探索用パケットの転送後、そのルート探索用パケットを受信したことを示す応答が複数返送されてきた場合、前記送信電力を減少させて前記ルート探索用パケットを再転送する手段を備える
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−26651(P2013−26651A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156363(P2011−156363)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】