説明

無線通信システム

【課題】電波干渉源などから発せられる妨害電波を考慮し、全てのノードで良好な通信が得られる通信チャネルを共通の通信チャネルとして常に使用できるようにする。
【解決手段】マスタノードMSおよび各スレーブノードSL(SL1,SL2,SL3)において複数の通信チャネルの候補毎に周辺の妨害電波の影響度を測定する。この妨害電波の影響度をマスタノードMSで集約し、通信チャネルの候補の中から全体として最も妨害電波の影響度が小さいと推測される通信チャネルの候補を選択し、その選択した通信チャネルの候補を各ノードで共通に使用する通信チャネルとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メッシュネットワーク構造の無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信を利用して、環境計測・監視・制御などを行うシステムが増加している。この環境計測・監視・制御などを行う無線通信システムでは、対象エリアが比較的広い、又は、対象エリア内に無線通信の障害物が多々存在する場合が多い。このような場合、対象エリアをカバーするためには、受信器と送信器の設置位置や電波状況等の環境により直接通信できなくても、他のデバイスを中継して通信を行うことができる無線通信ネットワークを利用することが有利である。
【0003】
この種の無線通信ネットワークとして、ジグビー(Zigbee(登録商標))プロトコルを利用した無線通信ネットワーク(例えば、特許文献1、2参照)など、メッシュネットワークが提案されている。このメッシュネットワークは、マスタノードとスレーブノードとの間の無線通信を直接通信圏内にある他のスレーブノードを中継して行うもので、1つの通信経路がマルチパスフェージングの影響を受けて通信不能に陥ったとしても、他の通信経路を探索して通信を継続することができる技術である。なお、マルチパスフェージングとは、複数の通信電波反射経路の間に発生する位相差により受信電波が打ち消され、受信ができなくなる現象をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−5928号公報
【特許文献2】特開2006−42370号公報
【特許文献3】特開2006−229778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したメッシュネットワークでは、所定の通信周波数帯を通信チャネルとして定め、この通信チャネルを使用してマスタノードとスレーブノードとの間の無線通信を行う。この場合、メッシュネットワークの通信エリアに電波干渉源が存在すると、その電波干渉源によって通信が妨害され、正しい送受信が行えなくなることがある。
【0006】
このような電波干渉源の存在を想定し、使用する通信チャネルの候補として複数の通信チャネル(通信周波数帯)を用意しておき、正しい送受信が行えなくなった場合、その複数の通信チャネルの候補から良好な通信チャネルを選択し、その選択した通信チャネルを新たな通信チャネルとして切り替えて使用することが考えられる。しかしながら、メッシュネットワークにおける各ノードが受ける妨害電波の周波数は必ずしも同一とは限らない。したがって、現在使用している通信チャネルを別の通信チャネルに切り替えたとしても、切替先の別の通信チャネルで、必ずしも全てのノードで良好な通信が得られるとは限らない。
【0007】
なお、特許文献3に、無線通信ネットワークにおいて通信チャネルの変更設定を容易にする技術が示されている。この特許文献3では、他の無線通信システムと同一の周波数帯域を共用する無線通信システムにおいて、自無線通信システムの周波数利用状況および他の無線通信システムの周波数利用状況を収集する情報収集手段を設け、自無線通信システムの周波数利用状況および他の無線通信システムの周波数利用状況に基づいて、周波数帯域内で、自無線通信システムに属する無線基地局および無線移動局への干渉の影響が所定値以下となるように、利用することが可能な無線周波数キャリアおよび通信チャネルを決定するようにしている。
【0008】
しかしながら、この特許文献3に示された技術は、同一周波数帯域を共用する無線通信システム間の通信チャネルの割り当てに関するもので、情報収集手段は両方の無線通信システムの周波数利用状況について情報収集することができるが、電波干渉源などから発せられる妨害電波の影響については何も考慮されていない。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電波干渉源などから発せられる妨害電波を考慮し、全てのノードで良好な通信が得られる通信チャネルを常に決定することが可能な無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために本発明は、マスタノードとスレーブノードとの間で他のスレーブノードを中継ポイントとして無線通信を行う無線通信システムにおいて、マスタノードおよび各スレーブノードに、使用する通信チャネルの候補として複数の通信チャネルを記憶する通信チャネル記憶手段と、この通信チャネル記憶手段が記憶する通信チャネルの候補毎にその通信チャネルを使用して無線通信を行う場合の周辺の妨害電波の影響度を測定する妨害電波影響度測定手段とを設け、マスタノードに、さらに、自己の妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度および各スレーブノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度に基づいて、システム全体として最も妨害電波の影響度が小さいと推測される通信チャネルの候補をマスタノードおよび各スレーブノードで共通に使用する通信チャネルとして決定する通信チャネル決定手段を設けたものである。
【0011】
この発明において、複数の通信チャネルの候補を通信チャネルch1〜chnとした場合、マスタノードは、通信チャネルの候補ch1〜chnの各々についてその通信チャネルを使用して無線通信を行う場合の周辺の妨害電波の影響度を測定する。また、各スレーブノードは、通信チャネルの候補ch1〜chnの各々についてその通信チャネルを使用して無線通信を行う場合の周辺の妨害電波の影響度を測定する。そして、マスタノードは、自己が測定した通信チャネルの候補ch1〜chnの妨害電波の影響度と各スレーブノードが測定した通信チャネルの候補ch1〜chnの妨害電波の影響度に基づいて、システム全体として最も妨害電波の影響度が小さいと推測される通信チャネルの候補chxを共通に使用する通信チャネルとして決定する。
【0012】
例えば、本発明では、マスタノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度および各スレーブノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度を通信チャネルの候補毎に積算し、その通信チャネルの候補毎の積算値に基づいて共通に使用する通信チャネルを決定する。
【0013】
また、別の例として、本発明では、マスタノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度および各スレーブノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度に各ノード毎に定められた重み付けを施し、この重み付けが施された妨害電波の影響度を通信チャネルの候補毎に積算し、その通信チャネルの候補毎の積算値に基づいて共通に使用する通信チャネルを決定する。
【0014】
本発明において、測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度に各ノード毎に定められた重み付けを施す場合、通信トラフィック量を各ノードで検出し、通信トラフィック量が多くなるほど重くなるように重みを定めるようにしたり、各ノードのマスタノードからの通信経路上の位置に応じ、マスタノードからの中継回数が少ないほど重くなるように重みを定めるようにしたりするなどの方法が考えられる。
【0015】
また、本発明において、測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度に致命的な影響度が含まれていた場合、その致命的な影響度が生じた通信チャネルの候補を共通に使用する通信チャネルを決定する際の対象から除外するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各ノードにおいて通信チャネルの候補毎にその通信チャネルを使用して無線通信を行う場合の周辺の妨害電波の影響度を測定し、この測定した各ノードの通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度をマスタノードで集約し、システム全体として最も妨害電波の影響度が小さいと推測される通信チャネルの候補を各ノードで共通に使用する通信チャネルとして決定するようにしたので、電波干渉源などから発せられる妨害電波を考慮し、全てのノードで良好な通信が得られる通信チャネルを共通の通信チャネルとして常に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る無線通信システムの一実施の形態の概略を示す構成図である。
【図2】この無線通信システムにおけるスレーブノードの機能ブロック図である。
【図3】この無線通信システムにおけるマスタノードの機能ブロック図である。
【図4】マスタノードの通信チャネル決定部で集約される各ノードからの通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度を例示する図(第1例)である。
【図5】マスタノードの通信チャネル決定部で集約される各ノードからの通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度を例示する図(第2例)である。
【図6】マスタノードの通信チャネル決定部で集約されされた各ノードからの通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度(重み付け前/重み付け後)を例示する図(第3例)である。
【図7】通信トラフィック量の多いものに大きな重みを自動で設定するようにした場合のスレーブノードの機能ブロック図である。
【図8】通信トラフィック量の多いものに大きな重みを自動で設定するようにした場合のマスタノードの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係る無線通信システムの一実施の形態の概略を示す構成図である。同図において、MSは最上位に位置するマスタノード、SLはマスタノードMSの下位に位置するスレーブノードであり、このマスタノードMSとスレーブノードSLによってメッシュネットワークが構成されている。
【0019】
なお、スレーブノードSLはメッシュネットワーク中に多数存在するが、この例では説明を簡単とするために、スレーブノードSLとしてSL1,SL2,SL3の3つを示している。また、図1において、AR0はマスタノードMSの通信エリア、AR1はスレーブノードSL1の通信エリア、AR2はスレーブノードSL2の通信エリア、AR3はスレーブノードSL3の通信エリアであり、D1〜D3はこのメッシュネットワーク中に存在する電波干渉源である。
【0020】
マスタノードMSおよびスレーブノードSLは、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、本実施の形態特有の機能として妨害電波影響度測定機能を有している。また、マスタノードMSは、本実施の形態特有の機能として、上述した妨害電波影響度測定機能に加え、マスタノードMSおよびスレーブノードSLで共通に使用する通信チャネルを決定する通信チャネル決定機能を有している。
【0021】
図2にスレーブノードSLの機能ブロック図を示す。スレーブノードSLは、使用する通信チャネルの候補として複数の通信チャネルを記憶する通信チャネル記憶部1−1と、この通信チャネル記憶部1−1が記憶する通信チャネルの候補毎にその通信チャネルを使用して無線通信を行う場合の周辺の妨害電波の影響度を測定する妨害電波影響度測定部1−2と、スレーブノードSLで使用する通信チャネルを切り替える通信チャネル切替部1−3とを備えている。
【0022】
本実施の形態において、通信チャネル記憶部1−1は、通信チャネルの候補として5つの通信チャネルch(ch1〜ch5)を記憶している。また、妨害電波影響度測定部1−2は、スレーブノードSLの周辺の妨害電波の通信チャネルの候補ch毎の電波強度を測定し、この測定した電波強度を4段階で評価し、その評価結果を妨害電波の影響度とする。この例では、妨害電波の影響度を「0」〜「3」の4段階で表し、「0」は妨害電波の影響がないことを示し、「1」は妨害電波の影響が「小」であることを示し、「2」は妨害電波の影響が「中」であることを示し、「3」は妨害電波の影響が「大」であることを示すものとする。この妨害電波影響度測定部1−2によって測定された通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度はマスタノードMSに送られる。
【0023】
通信チャネル切替部1−3は、マスタノードMSから送られてくる後述する切替指令S1に基づいて、通信チャネル記憶部1−1に記憶されている通信チャネルの候補ch1〜ch5からその切替指令S1によって指示される通信チャネルを選択し、その選択した通信チャネルを新たな通信チャネルとして切り替える。なお、この実施の形態において、スレーブノードSLでの現在の通信チャネルは1chとされているものとする。
【0024】
図3にマスタノードMSの機能ブロック図を示す。マスタノードMSは、使用する通信チャネルの候補として複数の通信チャネルを記憶する通信チャネル記憶部2−1と、この通信チャネル記憶部2−1が記憶する通信チャネルの候補毎にその通信チャネルを使用して無線通信を行う場合の周辺の妨害電波の影響度を測定する妨害電波影響度測定部2−2と、マスタノードMSおよびスレーブノードSLで使用する共通の通信チャネルを決定する通信チャネル決定部2−3と、マスタノードMSで使用する通信チャネルを切り替える通信チャネル切替部2−4とを備えている。
【0025】
本実施の形態において、通信チャネル記憶部2−1は、スレーブノードSLの通信チャネル記憶部1−1と同じく、通信チャネルの候補として5つの通信チャネルch(ch1〜ch5)を記憶している。また、妨害電波影響度測定部2−2は、マスタノードMSの周辺の妨害電波の通信チャネルの候補ch毎の電波強度を測定し、この測定した電波強度を4段階で評価し、その評価結果を妨害電波の影響度とする。この場合も、スレーブノードSLにおける妨害電波影響度測定部1−2と同様、妨害電波の影響度を「0」〜「3」の4段階で表す。この妨害電波影響度測定部2−2によって測定された通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度は通信チャネル決定部2−3に送られる。
【0026】
通信チャネル決定部2−3は、マスタノードMSの妨害電波影響度測定部2−2で測定された通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度および各スレーブノードSLの妨害電波影響度測定部1−2から送られてくる通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度に基づいて、システム全体として最も妨害電波の影響度が小さいと推測される通信チャネルの候補をマスタノードMSおよび各スレーブノードSLで共通に使用する通信チャネルとして決定する。そして、この決定した通信チャネルへの切替指令を生成し、この生成した切替指令をS1としてスレーブノードSLの通信チャネル切替部1−3およびマスタノードMS内の通信チャネル切替部2−4へ送る。
【0027】
通信チャネル切替部2−4は、通信チャネル決定部2−3から送られてくる切替指令S1に基づいて、通信チャネル記憶部2−1に記憶されている通信チャネルの候補ch1〜ch5からその切替指令S1によって指示される通信チャネルを選択し、その選択した通信チャネルを新たな通信チャネルとして切り替える。なお、この実施の形態において、マスタノードMSにおける現在の通信チャネルは1chとされているものとする。
【0028】
〔通信チャネルの決定:第1例(妨害電波の影響が無い通信チャネルを共通に使用する通信チャネルとして決定する)〕
マスタノードMSの通信チャネル決定部2−3での通信チャネルの決定方式としては種々考えられる。先ず、第1例として、妨害電波の影響が無い通信チャネルを共通に使用する通信チャネルとして決定する方式を説明する。
【0029】
図4に通信チャネル決定部2−3で集約される各ノードからの通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度を例示する。なお、図4において、マスタノードMSは#0、スレーブノードSL1は#1、スレーブノードSL2は#2、スレーブノードSL3は#3として、その識別子を示している。
【0030】
この第1例において、通信チャネル決定部2−3は、マスタノードMSで測定された通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度および各スレーブノードSL(SL1,SL2,SL3)で測定された通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度を通信チャネルの候補ch毎に積算し、その積算値(合計)が0である通信チャネルの候補を共通に使用する通信チャネルとして決定する。この例では、通信チャネルの候補ch2とch4の積算値が0であるので、通信チャネルの候補ch2とch4を妨害電波の影響が無い通信チャネルと判断する。そして、通信チャネルch2とch4のうちどちらか一方を共通に使用する通信チャネルとして決定する。
【0031】
ここで、通信チャネル決定部2−3は、例えば通信チャネルch2を共通に使用する通信チャネルとして決定すると、通信チャネルch2への切替指令S1をマスタノードMSの通信チャネル切替部2−4およびスレーブノードSL1,SL2,SL3の通信チャネル切替部1−3へ送る。これにより、マスタノードMSにおいて、使用する通信チャネルが現在の通信チャネルch1から新しい通信チャネルch2へと切り替えられる。また、スレーブノードSL1,SL2,SL3において、使用する通信チャネルが現在の通信チャネルch1から新しい通信チャネルch2へと切り替えられる。
【0032】
〔通信チャネルの決定:第2例(妨害電波の影響が最も小さい通信チャネルを共通に使用する通信チャネルとして決定する)〕
次に、第2例として、妨害電波の影響が最も小さい通信チャネルを共通に使用する通信チャネルとして決定する方式を説明する。図5に通信チャネル決定部2−3で集約される各ノードからの通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度を例示する。
【0033】
この第2例において、通信チャネル決定部2−3は、マスタノードMSで測定された通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度および各スレーブノードSL(SL1,SL2,SL3)で測定された通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度を通信チャネルの候補ch毎に積算し、その積算値(合計)が最も小さい通信チャネルの候補を共通に使用する通信チャネルとして決定する。この例では、通信チャネルの候補ch5の積算値が1であり、最も小さいので、通信チャネルch5を共通に使用する通信チャネルとして決定する。
【0034】
そして、通信チャネル決定部2−3は、通信チャネルch5への切替指令S1をマスタノードMSの通信チャネル切替部2−4およびスレーブノードSL1,SL2,SL3の通信チャネル切替部1−3へ送る。これにより、マスタノードMSにおいて、使用する通信チャネルが現在の通信チャネルch1から新しい通信チャネルch5へと切り替えられる。また、スレーブノードSL1,SL2,SL3において、使用する通信チャネルが現在の通信チャネルch1から新しい通信チャネルch5へと切り替えられる。
【0035】
〔通信チャネルの決定:第3例(ノード毎に重み付けを施して共通に使用する通信チャネルを決定する)〕
次に、第3例として、ノード毎に重み付けを施して共通に使用する通信チャネルを決定する方式を説明する。この第3例では、図6に示すように、各ノードに重みを定める。この例では、マスタノードMS(#1)に重み「1」を定め、スレーブノードSL1(#1)に重み「3」を定め、スレーブノードSL2(#2)に重み「2」を定め、スレーブノードSL3(#3)に重み「5」を定めている。
【0036】
この第3例において、通信チャネル決定部2−3は、マスタノードMSで測定された通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度および各スレーブノードSL(SL1,SL2,SL3)で測定された通信チャネルの候補ch毎の妨害電波の影響度に各ノード毎に定められた重み付けを施す(重み×影響度)。図6において、各通信チャネルの候補chのノード毎の影響度を示す欄において、左欄は重み付けを施す前の値を示し、右欄は重み付けを施した後の値を示している。
【0037】
通信チャネル決定部2−3は、この重み付けが施された妨害電波の影響度を通信チャネルの候補ch毎に積算し、その積算値(合計)が最も小さい通信チャネルの候補を共通に使用する通信チャネルとして決定する。この例では、通信チャネルの候補ch5の積算値が2であり、最も小さいので、通信チャネルch5を通信チャネルとして決定する。
【0038】
そして、通信チャネル決定部2−3は、通信チャネルch5への切替指令S1をマスタノードMSの通信チャネル切替部2−4およびスレーブノードSL1,SL2,SL3の通信チャネル切替部1−3へ送る。これにより、マスタノードMSにおいて、使用する通信チャネルが現在の通信チャネルch1から新しい通信チャネルch5へと切り替えられる。また、スレーブノードSL1,SL2,SL3において、使用する通信チャネルが現在の通信チャネルch1から新しい通信チャネルch5へと切り替えられる。
【0039】
なお、この第3例では、ノード毎に重み付けを施すが、その際の重みを定める方法として、(1)設定ツールにより手動で人が重みを設定する方法、(2)通信トラフィック量を各ノードで算出し、その通信トラフィック量の多いものに大きな重みを自動で設定する方法、(3)マスタノードからの中継回数の少ないものに大きな重みを機械的(手動/自動)に設定する方法、(4)ルート上で要となるノードに大きな重みを設定するなどの方法が考えられる。
【0040】
上述した(2)の方法では、通信トラフィックの高いノードはネットワーク上重要なノードであるから、重みを大きくして、このノードの通信状態の良好な通信チャネルが共通に使用する通信チャネルとして選択され易くする。また、上述した(3)の方法では、マスタノードからの中継回数により、すなわちマスタノードからの通信経路上の位置により、そのノードがネットワーク上でマスタノードに近いか否かを判断する。中継回数が少ないものは、マスタノードにネットワーク上で近いと判断し、重みを大きくする。マスタノードにネットワーク上で近いノードは、そのノードを経由してマスタノードからの通信を受ける子ノードが多いので、そのノードで通信不具合が生じるとそのノードから先の子ノードも影響を受けてしまう。このため、そのノードの重みを重くすることで、そのノードでの妨害電波の影響度の高い通信チャネルが共通に使用する通信チャネルとして選ばれないようにする。
【0041】
なお、通信トラフィック量の多いものに大きな重みを自動で設定する場合、図7に示すように、各スレーブノードSLに自己の通信トラフィック量を検出する通信トラフィック量検出部1−4を設け、この通信トラフィック量検出部1−4によって検出される通信トラフィック量をマスタノードMSの通信チャネル決定部2−3へ送るようにする。また、図8に示すように、マスタノードMSに自己の通信トラフィック量を検出する通信トラフィック量検出部2−5を設け、この通信トラフィック量検出部2−5で検出される通信トラフィック量を通信チャネル決定部2−3へ送るようにする。そして、マスタノードMSの通信チャネル決定部2−3において、通信トラフィック量が多くなるほど重くなるように各ノードに対する重みを自動で設定するようにする。
【0042】
上述した実施の形態では、妨害電波の影響度を「0」〜「3」の4段階で表し、「0」は妨害電波の影響がないことを示し、「1」は妨害電波の影響が「小」であることを示し、「2」は妨害電波の影響が「中」であることを示し、「3」は妨害電波の影響が「大」であることを示すものとしたが、通信不能であるレベルの妨害電波の影響度を致命的な影響度として定めるようにしてもよい。この場合、マスタモードMSにおける通信チャネル決定部2−3では、各ノードから通信チャネルの候補ch毎に送れてくる妨害電波の影響度に致命的な影響度が含まれていた場合、その致命的な影響度が生じた通信チャネルの候補を通信チャネルを決定する際の対象から除外するようにする。これにより、1台でも通信不能となるノードが発生する虞のある通信チャネルが共通に使用する通信チャネルとして選ばれることを防ぐことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の無線通信システムは、通信幹線を無線化したメッシュネットワーク構造の中規模、大規模の監視制御システムなど様々な分野で利用することが可能である。具体的には、VAV(可変風量調節)による居室内空調システムへの適用などが考えられる。
【符号の説明】
【0044】
MS…マスタノード、SL(SL1,SL2,SL3)…スレーブノード、AR0〜AR3…通信エリア、D1〜D3…電波干渉源、1−1…通信チャネル記憶部、1−2…妨害電波影響度測定部、1−3…通信チャネル切替部、1−4…通信トラフィック量検出部、2−1…通信チャネル記憶部、2−2…妨害電波影響度測定部、2−3…通信チャネル決定部、2−4…通信チャネル切替部、2−5…通信トラフィック量検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタノードとスレーブノードとの間で他のスレーブノードを中継ポイントとして無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記マスタノードおよび前記各スレーブノードは、
使用する通信チャネルの候補として複数の通信チャネルを記憶する通信チャネル記憶手段と、
この通信チャネル記憶手段が記憶する通信チャネルの候補毎にその通信チャネルを使用して無線通信を行う場合の周辺の妨害電波の影響度を測定する妨害電波影響度測定手段とを備え、
前記マスタノードは、さらに、
自己の前記妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度および前記各スレーブノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度に基づいて、システム全体として最も妨害電波の影響度が小さいと推測される通信チャネルの候補を前記マスタノードおよび前記各スレーブノードで共通に使用する通信チャネルとして決定する通信チャネル決定手段
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載された無線通信システムにおいて、
前記通信チャネル決定手段は、
前記マスタノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度および前記各スレーブノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度を通信チャネルの候補毎に積算し、その通信チャネルの候補毎の積算値に基づいて前記共通に使用する通信チャネルを決定する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載された無線通信システムにおいて、
前記通信チャネル決定手段は、
前記マスタノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度および前記各スレーブノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度に各ノード毎に定められた重み付けを施し、この重み付けが施された妨害電波の影響度を通信チャネルの候補毎に積算し、その通信チャネルの候補毎の積算値に基づいて前記共通に使用する通信チャネルを決定する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載された無線通信システムにおいて、
前記マスタノードおよび前記各スレーブノードは、
自己の通信トラフィック量を検出する通信トラフィック量検出手段を備え、
前記マスタノードは、
自己の前記通信トラフィック量検出手段によって検出された通信トラフィック量および前記各スレーブノードの通信トラフィック量検出手段によって検出された通信トラフィック量に基づいて前記通信チャネル決定手段で使用する各ノード毎の重みを定める重み決定手段
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項3に記載された無線通信システムにおいて、
前記通信チャネル決定手段において各ノード毎に定められる重みは、そのノードの前記マスタノードからの通信経路上の位置に応じて定められている
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載された無線通信システムにおいて、
前記通信チャネル決定手段は、
前記マスタノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度および前記各スレーブノードの妨害電波影響度測定手段によって測定された通信チャネルの候補毎の妨害電波の影響度に致命的な影響度が含まれていた場合、その致命的な影響度が生じた通信チャネルの候補を前記共通に使用する通信チャネルを決定する際の対象から除外する
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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