説明

無線通信システム

【課題】無線リンク確立後にIP通信を迅速に開始する。
【解決手段】無線通信システム1が、第1通信規約に従って動作可能な第1無線通信ネットワーク10と、第2通信規約に従って動作可能な第2無線通信ネットワーク20と、第1通信規約および第2通信規約に従って動作可能な移動局30とを備える。移動局30は、第1基地局100および第2基地局200と無線通信する移動局通信部と、垂直ハンドオーバを実行する移動局制御部とを備える。第2基地局200は、使用可能IPアドレスを記憶する基地局記憶部と、使用可能IPアドレスの全部または一部を示す第1MACフレームFB,FPRを生成する基地局制御部と、第1MACフレームFB,FPRを送信する基地局通信部とを備える。垂直ハンドオーバの過程において移動局通信部が第1MACフレームFB,FPRを受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話(2G、3G等)、無線LAN(Local Area Network)、無線MAN(Metropolitan Area Network)、PHS(Personal Handyphone System)等の様々な無線通信システムが普及している。無線通信システムにおいては、時刻や移動局の位置等に応じて通信環境が大きく変動するため、移動局は、通信環境に応じて適切な接続先を選択しハンドオーバを実行する必要がある。無線通信システム間でのシームレスなハンドオーバを実現するために、メディア独立ハンドオーバ(Media Independent Handover、MIH)が提案されている(非特許文献1)。メディア独立ハンドオーバは、垂直ハンドオーバまたはシステム間ハンドオーバとも称される。
【0003】
特許文献1には、垂直ハンドオーバを実行する際、新しい無線リンク(レイヤ2レベルのアソシエーション)を確立するために無線レベルハンドオーバをトリガし、新しい無線リンクを使用してインターネットプロトコル接続(レイヤ3接続)を確立する(すなわち、DHCPサーバ(Dynamic Host Configuration Protocol Server)からIPアドレス(Internet Protocol Address)を取得する)ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−502433号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE 802.21, Media Independent Handover(MIH)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DHCPサーバからIPアドレスを取得する際には、(1)端末からのDHCP Discoverメッセージのブロードキャスト、(2)サーバからのDHCP Offerメッセージによる候補IPアドレスの提示、(3)端末からのDHCP RequestメッセージによるIPアドレスの使用要求、(4)サーバからのDHCP Ackメッセージの送信、というステップを経るため、数10ミリ秒から数10秒の時間が必要である。特許文献1の技術によれば、無線リンク確立の完了後にハンドオーバ先ネットワーク内のDHCPサーバが移動局にIPアドレスを割り当てるから、無線リンク確立直後には移動局とハンドオーバ先ネットワークとの間でのIP通信(レイヤ3通信)を行うことができず、垂直ハンドオーバ前後でIP通信が中断する可能性がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、無線リンク確立後にIP通信を迅速に開始することが可能な無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線通信システムは、第1通信規約に従って動作可能な第1無線通信ネットワークと、前記第1通信規約とは異なる第2通信規約に従って動作可能な第2無線通信ネットワークと、前記第1通信規約および前記第2通信規約に従って動作可能な移動局と
を備える無線通信システムであって、前記移動局は、前記第1無線通信ネットワークに含まれる第1基地局および前記第2無線通信ネットワークに含まれる第2基地局と無線通信する移動局通信部と、前記第1基地局から前記第2基地局への垂直ハンドオーバを実行する移動局制御部とを備え、前記第2基地局は、前記第2基地局に対して垂直ハンドオーバしてくる前記移動局にとって使用可能な1以上の使用可能IP(Internet Protocol)アドレスを記憶する基地局記憶部と、前記使用可能IPアドレスの全部または一部を示す第1MAC(Media Access Control)フレームを生成する基地局制御部と、前記第1MACフレームを無線で送信する基地局通信部とを備え、垂直ハンドオーバを実行する前または垂直ハンドオーバの過程において、前記移動局通信部が前記第1MACフレームを受信し、前記移動局制御部が前記第1MACフレームに示された前記使用可能IPアドレスを選択して、選択した使用希望IPアドレスを示す第2MACフレームを生成し、前記移動局通信部が前記第2MACフレームを前記第2基地局に送信する。
【0009】
本発明によれば、第1MACフレームが使用可能IPアドレスを含むので、移動局と第2基地局とが無線リンクを確立する前に、移動局が第2基地局(第2無線通信ネットワーク)にて使用するIPアドレスを取得することができる。したがって、無線リンクが確立された直後からIP通信(レイヤ3通信)を開始することが可能である。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記第2基地局の前記基地局制御部は、前記基地局通信部に受信された前記第2MACフレームが示す前記使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定し、前記使用希望IPアドレスが使用可能でない場合、前記移動局にとって使用可能な別のIPアドレスを示す新たな第1MACフレームを前記基地局制御部が生成し、前記新たな第1MACフレームを前記基地局通信部が前記移動局に送信し、前記移動局通信部が前記新たな第1MACフレームを受信し、前記移動局制御部が前記新たな第1MACフレームに示された前記使用可能な別のIPアドレスを選択して、選択した前記使用可能な別のIPアドレスを示す第2MACフレームを生成し、前記移動局通信部が前記第2MACフレームを前記第2基地局に送信する。
【0011】
以上の構成によれば、第2MACフレームが示す使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定し、使用希望IPアドレスが使用可能でない場合、新たな使用可能IPアドレスを示す新たな第1MACフレームを移動局に送信するので、無線リンク確立後に再度のIPアドレス取得が必要となることが防止される。したがって、無線リンク確立後の迅速なIP通信開始がより確実に実現される。また、第2無線通信ネットワークにおけるIPアドレスの重複が防止されるので、第2無線通信ネットワークにおけるIP通信が安定化する。
【0012】
本発明の好適な態様において、前記第2無線通信ネットワークは複数の前記第2基地局を備え、無線通信システムは、各前記第2基地局の位置情報および識別情報を取得する管理サーバ通信部と、前記位置情報および前記識別情報を記憶する管理サーバ記憶部とを含む管理サーバをさらに備え、前記移動局通信部は、前記移動局自身の現在地情報を前記管理サーバに送信し、前記管理サーバは、受信した前記現在地情報と各前記第2基地局の前記位置情報とに基づいて、前記移動局と無線通信可能な範囲に各前記第2基地局が存在するか否かを判定する管理サーバ判定部をさらに備え、前記管理サーバ通信部は、前記無線通信可能な範囲に存在する前記第2基地局の前記識別情報を前記移動局へ送信し、前記移動局制御部は、前記移動局受信部が受信した前記識別情報により特定される前記第2基地局のうちから垂直ハンドオーバ先を選択し、選択した第2基地局に対して前記第1MACフレームの送信を要求する送信要求MACフレームを生成し、前記移動局通信部は、前記送信要求MACフレームを送信し、前記基地局制御部は、前記基地局通信部に受信された前記送信要求MACフレームに応答して、前記移動局に対する前記第1MACフレームを生成する。
【0013】
以上の構成によれば、移動局と無線通信可能な範囲に存在する第2基地局の識別情報が移動局に送信されるので、移動局が垂直ハンドオーバ候補の第2基地局を認識することができる。そのため、第2基地局が第1MACフレームをブロードキャストする必要がなくなるので、セキュリティをより向上させることが可能である。
【0014】
本発明の好適な態様において、前記管理サーバ記憶部は、前記第2無線通信ネットワークの各前記第2基地局の通信品質情報を記憶し、前記管理サーバ通信部は、前記無線通信可能な範囲に存在する前記第2基地局の前記通信品質情報を前記移動局へ送信し、前記移動局制御部は、前記通信品質情報に基づいて垂直ハンドオーバ先の第2基地局を選択する。
以上の構成によれば、垂直ハンドオーバ後に実現される通信品質に応じて第2基地局を選択するので、垂直ハンドオーバ後の通信品質をより高めることが可能である。
【0015】
本発明の好適な態様において、前記管理サーバ記憶部は、前記第2無線通信ネットワークの各前記第2基地局の認証方式および暗号化鍵を記憶し、前記管理サーバ通信部は、前記無線通信可能な範囲に存在する前記第2基地局の前記認証方式および前記暗号化鍵を前記移動局へ送信し、前記移動局制御部は、前記移動局通信部に受信された前記認証方式および前記暗号化鍵に基づいて前記第2基地局との認証を実行する。
以上の構成によれば、移動局が接続する可能性のあるネットワークの認証方式および暗号化鍵を記憶しておかなくてもよいから構成が簡易となる。さらに、認証方式および暗号化鍵が現在接続中のネットワークを介して移動局に送信されるから、現在接続中のネットワークのセキュリティが保たれている限り安全に認証方式および暗号化鍵が送信される。
【0016】
本発明の好適な態様において、前記第1MACフレームおよび前記第2MACフレームの各々は、通信相手の発見、通信相手の認証、または通信相手とのアソシエーションのために送信されるマネジメントフレームのいずれかである。
以上の構成によれば、IP層(レイヤ3)での通信が行われる前に第2基地局から移動 局へ送信されるマネジメントフレームに使用可能IPアドレスが搭載される。
【0017】
本発明に係る基地局は、自局に対して垂直ハンドオーバしてくる移動局にとって使用可能な1以上の使用可能IPアドレスを記憶する記憶部と、前記使用可能IPアドレスの全部または一部を示す第1MACフレームを生成する制御部と、前記第1MACフレームを無線で送信する通信部とを備え、垂直ハンドオーバを実行する前または垂直ハンドオーバの過程において前記移動局が受信した前記第1MACフレームに示された前記使用可能IPアドレスから前記移動局が選択した使用希望IPアドレスが搭載され、かつ、前記移動局から送信される第2MACフレームを前記通信部が受信し、受信した前記第2MACフレームに基づいて前記制御部が垂直ハンドオーバを実行する。
【0018】
好ましくは、前記制御部は、前記通信部に受信された前記第2MACフレームが示す前記使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定し、前記使用希望IPアドレスが使用可能でない場合、前記移動局にとって使用可能な別のIPアドレスを示す新たな第1MACフレームを前記制御部が生成し、前記新たな第1MACフレームを前記通信部が前記移動局に送信する。
【0019】
本発明に係るネットワークは、自局に対して垂直ハンドオーバしてくる移動局にとって使用可能な1以上の使用可能IPアドレスを記憶する記憶部と、前記使用可能IPアドレスの全部または一部を示す第1MACフレームを生成する制御部と、前記第1MACフレームを無線で送信する通信部とを備える基地局を備え、垂直ハンドオーバを実行する前または垂直ハンドオーバの過程において前記移動局が受信した前記第1MACフレームに示された前記使用可能IPアドレスから前記移動局が選択した使用希望IPアドレスが搭載され、かつ、前記移動局から送信される第2MACフレームを前記基地局の前記通信部が受信し、受信した前記第2MACフレームに基づいて前記制御部が垂直ハンドオーバを実行する。
【0020】
好ましくは、前記基地局の前記制御部は、前記通信部に受信された前記第2MACフレームが示す前記使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定し、前記使用希望IPアドレスが使用可能でない場合、前記移動局にとって使用可能な別のIPアドレスを示す新たな第1MACフレームを前記制御部が生成し、前記新たな第1MACフレームを前記通信部が前記移動局に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る無線通信システムを示す図である。
【図2】第1実施形態に係る第1基地局を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る第2基地局を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る移動局を示すブロック図である。
【図5】MACフレームのフォーマットを示す図である。
【図6】無線LANのMACフレームのフォーマットを示す図である。
【図7】マネジメントフレームのMACヘッダ部分のフォーマットを示す図である。
【図8】ビーコンフレームのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。
【図9】アソシエーション要求フレームのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。
【図10】アソシエーション応答フレームのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。
【図11】第1実施形態の垂直ハンドオーバの動作を示すシーケンス図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る無線通信システムを示す図である。
【図13】第2実施形態に係る移動局を示すブロック図である。
【図14】第2実施形態に係る管理サーバを示すブロック図である。
【図15】プローブ応答フレームのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。
【図16】第2実施形態の垂直ハンドオーバの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1実施形態
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る無線通信システム1は、移動通信規約(例えば、第2世代携帯電話規格(2G)、第3世代携帯電話規格(3G)、Long Term Evolution(LTE)等)に従って動作可能な移動通信ネットワーク10と、無線LAN通信規約(例えば、IEEE 802.11a、IEEE 802.11b、IEEE 802.11g、またはIEEE 802.11n)に従って動作可能な無線LANネットワーク20と、移動通信規約および無線LAN通信規約に従って動作可能な移動局30とを備える。移動局30は移動通信ネットワーク10または無線LANネットワーク20を介してインターネット400に接続可能である。
【0023】
移動通信ネットワーク10は複数の第1基地局100とゲートウェイ12とを備える。第1基地局100は無線リンクを介して移動局30と無線接続することが可能である。ゲートウェイ12は各第1基地局100の上位(よりインターネット400に近い側)に配置され、第1基地局100とインターネット400とを相互に接続する。ゲートウェイ12はDHCPサーバとしても機能し、移動通信ネットワーク10と接続中の移動局30にIPアドレスを割り当てることが可能である。したがって、移動局30は第1基地局100およびゲートウェイ12を介してインターネット400に接続可能である。なお、第1基地局100の上位かつゲートウェイ12の下位にDHCPサーバの機能を有する交換局を設けることも可能である。
【0024】
無線LANネットワーク20は1つの第2基地局200を備える。第2基地局200は例えば無線LANアクセスポイントであり、DHCPサーバとしても機能することが可能である。第2基地局200は無線リンクを介して移動局30と無線接続することが可能であり、インターネット400と接続することが可能である。すなわち、移動局30は第2基地局200を介してインターネット400に接続可能である。
【0025】
第2基地局200(無線LANネットワーク20)にはネットワーク識別子であるSSID(Service Set Identifier)が割り振られる。移動局30はSSIDによって第2基地局200および無線LANネットワーク20を識別する。
【0026】
移動局30は、移動局30自身の無線通信可能範囲R内に位置する第1基地局100および第2基地局200と無線通信することが可能である。移動局30は、垂直ハンドオーバプロトコル(MIHプロトコル等)に従って、第1基地局100(移動通信ネットワーク10)と第2基地局200(無線LANネットワーク20)との間で垂直ハンドオーバを実行することが可能である。
【0027】
なお、移動局30は、単一の基地局のみと無線通信を行うことも可能であるし、複数の基地局と同時に無線通信を行うことも可能である。例えば、図1に示すように、移動局30の無線通信可能範囲R内に2つの基地局(第1基地局100および第2基地局200)が存在する場合には、これら2つの基地局と同時に無線通信を行うこと(マルチホーミングによる無線通信を行うこと)も可能である。
【0028】
図2に第1基地局100の構成の一例を示す。第1基地局100は、通信部110と、制御部120と、記憶部130と、移動通信インタフェース140とを備える。移動通信インタフェース140にはアンテナ142が接続されている。移動通信インタフェース140およびアンテナ142は移動通信規約に適応されている。通信部110は移動通信インタフェース140およびアンテナ142を介して移動局30と移動通信を実行する。制御部120は、移動局30との移動通信、特に垂直ハンドオーバを制御する。
【0029】
図3に第2基地局200の構成の一例を示す。第2基地局200は、通信部210と、制御部220と、記憶部230と、無線LANインタフェース240とを備える。無線LANインタフェース240にはアンテナ242が接続されている。無線LANインタフェース240およびアンテナ242は無線LAN通信規約に適応されている。通信部210は無線LANインタフェース240およびアンテナ242を介して移動局30と無線通信を実行する。
【0030】
制御部220は、IPアドレス管理部222とMACフレーム生成部224とIPアドレス衝突判定部226とを備える。IPアドレス管理部222は、第2基地局200(無線LANネットワーク20)にて使用されるIPアドレスを管理する。具体的には、IPアドレス管理部222は、無線LANネットワーク20のIPアドレス空間(使用し得るIPアドレスの範囲。例えば192.0.0.0〜192.0.0.255)と無線LANネットワーク20にて既に使用されているIPアドレスとに基づいて使用可能な(すなわち、新たな割当てが可能な)IPアドレスを特定し、記憶部230に記憶する。また、動的IPアドレスのリース期間が経過した場合、IPアドレス管理部222はその動的IPアドレスの割当てを終了し使用可能IPアドレスとして記憶部230に記憶する。MACフレーム生成部224は、無線LAN端末(例えば移動局30)との無線通信に用いるMACフレームFを生成する。MACフレームFは、マネジメントフレームFM、制御フレーム、およびデータフレームに大別される。通信相手の発見、通信相手の認証、または通信相手とのアソシエーションのために送信されるマネジメントフレームFMについての詳細は後述する。IPアドレス衝突判定部226は、移動局30が選択した使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定する(詳細は後述する)。また、制御部220は、移動局30との無線通信、特に第2基地局200への垂直ハンドオーバを制御(実行)する。
【0031】
図4に移動局30の構成の一例を示す。図4に示すように、移動局30は、通信部40と、制御部50と、記憶部60と、移動通信インタフェース70と、無線LANインタフェース80とを備える。移動通信インタフェース70にはアンテナ72が接続され、無線LANインタフェース80にはアンテナ82が接続されている。移動通信インタフェース70およびアンテナ72は移動通信規約に適応されており、無線LANインタフェース80およびアンテナ82は無線LAN通信規約に適応されている。通信部40は、移動通信インタフェース70およびアンテナ72を介して第1基地局100(移動通信ネットワーク10)と無線通信を行い、無線LANインタフェース80およびアンテナ82を介して第2基地局200(無線LANネットワーク20)と無線通信を実行する。
【0032】
制御部50は、ハンドオーバ判定部52と、MACフレーム生成部56と、ハンドオーバ実行部58とを備える。ハンドオーバ判定部52は、通信品質(例えば、信号対干渉比)等の基準に基づいて、移動局30がハンドオーバを実行すべきか否かを判定する。MACフレーム生成部56は、無線LAN基地局(例えば第2基地局200)との無線通信に用いるMACフレームFを生成する。ハンドオーバ実行部58は、垂直ハンドオーバプロトコル(MIHプロトコル等)に従って第1基地局100(移動通信ネットワーク10)と第2基地局200(無線LANネットワーク20)との間で垂直ハンドオーバを実行する。
【0033】
第1基地局100の通信部110および制御部120、第2基地局200の通信部210および制御部220内の各要素、ならびに移動局30の通信部40および制御部50内の各要素は、それぞれの装置(第1基地局100、第2基地局200、移動局30)内の図示しないCPU(Central Processing Unit)がコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。各コンピュータプログラムは、それぞれの装置内にある図示しないROM(Read Only Memory)に記憶される。
また、第1基地局100の記憶部130、第2基地局200の記憶部230、および移動局30の記憶部60は、各種の情報(ハンドオーバ閾値情報等)を記憶する記憶媒体であり、例えばRAM(Random Access Memory)である。
【0034】
第2基地局200と移動局30との間で互いに送受信されるMACフレームFのフォーマットについて以下に詳述する。図5は、一般的なMACフレームFのフォーマットを示す図である。MACフレームFはMAC層のPDU(Protocol Data Unit)であり、MACヘッダ部分とフレームボディ部分とFCS(Frame Check Sequence)部分とを含むビット列である。FCS部分にはMACフレームFの誤り制御信号が格納される。MACフレームFのフレームボディ部分(ペイロード)には送信データが格納される。具体的には、MAC層(レイヤ2)の上位層であるIP層(レイヤ3)のPDUであるIPパケットが格納される。IPパケットはヘッダ部分とデータ部分(ペイロード)とを含む。また、IPパケットのデータ部分にはIP層の上位層であるトランスポート層(レイヤ4)のPDUであるTCPセグメント(又はUDPセグメント。以下同様)が格納される。TCPセグメントはヘッダ部分とデータ部分(ペイロード)とを含む。
【0035】
MACヘッダ部分には、MACフレームFの伝送制御に関与するパラメータが格納される。図6に、IEEE 802.11に規定される無線LANのMACヘッダの基本フォーマットを示す。無線LANのMACヘッダは、フレーム制御、デュレーション/ID、アドレス1、アドレス2、アドレス3、シーケンス制御、アドレス4、およびQoS制御の各フィールドを備える。各アドレスフィールド(アドレス1〜アドレス4)には、用途に応じた任意のアドレス(例えば送信元MACアドレス)が格納されるように規定される。
【0036】
無線LANで用いられるMACフレームFは、前述の通り、マネジメントフレームFM、制御フレーム、およびデータフレームに大別される。このうち、マネジメントフレームFMは以下のフレームを含む(IEEE Computer Society、"IEEE Std 802.11.TM-2007"、IEEE Standard for Information technology、Telecommunications and information exchange between systems、Local and metropolitan area networks、Specific requirements、Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications(2007年6月12日)のSubclause 7.1.3.1.2参照)。
・通信相手の発見(スキャニング)に使用されるビーコンフレームFB、プローブ要求フレームFPQ、およびプローブ応答フレームFPR
・通信相手の認証に使用される認証要求フレームおよび認証応答フレーム
・通信相手とのアソシエーション確立の際に使用されるアソシエーション要求フレームFAQおよびアソシエーション応答フレームFAR
【0037】
図7は、マネジメントフレームFMのMACヘッダ部分のフォーマットの一例を示す図である。マネジメントフレームFMのMACヘッダ部分は、アドレス1として宛先MACアドレスを、アドレス2として送信元MACアドレスを、アドレス3としてBSS(Basic Service Set)IDを含み、アドレス4フィールドおよびQoS制御フィールドを含まない。
【0038】
マネジメントフレームFMは、MAC層の無線通信制御のためのパラメータを示す複数の情報要素IE(Information Element)をフレームボディ部分に含む。従来のマネジメントフレームに含まれる情報要素IEはIEEE Std 802.11.TM-2007のPart 11, Subclause 7.2.3(Management Frames)に規定されている。
【0039】
図8は、本発明にて新たに提案されるビーコンフレームFBのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。本発明に係るビーコンフレームFBは新たな情報要素IEとして使用可能IPアドレスをさらに含む。ビーコンフレームFBは第2基地局200が生成し送信するフレームである。
【0040】
図9は、本発明にて新たに提案されるアソシエーション要求フレームFAQのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。本発明に係るアソシエーション要求フレームFAQは新たな情報要素IEとして使用希望IPアドレスをさらに含む。アソシエーション要求フレームFAQは移動局30が生成し送信するフレームである。
【0041】
図10は、本発明にて新たに提案されるアソシエーション応答フレームFARのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。本発明に係るアソシエーション応答フレームFARは新たな情報要素IEとして使用可能IPアドレスをさらに含む。アソシエーション応答フレームFARは第2基地局200が生成し送信するフレームである。
【0042】
図11は、第1実施形態の垂直ハンドオーバの動作を示すシーケンス図である。垂直ハンドオーバ開始前に移動局30と第1基地局100との間に無線接続が設定(確立)されている状況を想定する。第2基地局200は、記憶部230に記憶された使用可能IPアドレスを搭載したMACフレームF(ビーコンフレームFB)を継続的(例えば1秒に1回)にブロードキャスト送信している。
【0043】
移動局30と第1基地局100との間の通信環境が悪化した、または移動局30が第1基地局100より帯域幅の広い接続先に接続する必要が生じたこと等によりハンドオーバイベントが発生すると、移動局30のハンドオーバ判定部52がハンドオーバトリガを生成して第1基地局100に送信し、垂直ハンドオーバ過程が開始する(ステップS100)。
【0044】
垂直ハンドオーバ過程が開始すると、移動局30(通信部40)は、パッシブスキャンを実行して、無線通信可能範囲R内に位置する第2基地局200(通信部210)が送信するビーコンフレームFBを受信する(ステップS110)。ビーコンフレームFBは、第2基地局200(無線LANネットワーク20)にて使用可能なIPアドレスを示す。
【0045】
ビーコンフレームFBは、第2基地局200のMACフレーム生成部224により生成される。MACフレーム生成部224は、記憶部230に記憶される使用可能IPアドレスを読み出して、その全部または一部を情報要素IEとしてビーコンフレームFBのフレームボディ部分に搭載する。
【0046】
移動局30の制御部50(MACフレーム生成部56)は、受信したビーコンフレームFBが示す使用可能IPアドレスから使用希望IPアドレスを選択し、その使用希望IPアドレスを搭載したアソシエーション要求フレームFAQを生成して通信部40に転送する。通信部40はアソシエーション要求フレームFAQを第2基地局200に送信する(ステップS120)。
【0047】
ステップS120において、MACフレーム生成部56が使用可能IPアドレスから使用希望IPアドレスを選択する方法は任意である。例えば、最も値の小さい使用可能IPアドレスを使用希望IPアドレスとして選択してもよいし、複数の使用可能IPアドレスの中から乱数的に使用希望IPアドレスを選択してもよい。以前に使用したことのあるIPアドレスを優先的に使用希望IPアドレスとして選択してもよい。なお、使用可能IPアドレスが1つのみ示されている場合には、その使用可能IPを使用希望IPアドレスとして選択する。
【0048】
第2基地局200のIPアドレス衝突判定部226は、通信部210に受信されたアソシエーション応答フレームFARが示す使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定する(ステップS130)。具体的には、使用希望IPアドレスが、既に他の移動局30に割り当てられているか予約されている(割り当てられようとしている)場合には、使用不可能であると判定する。以下、ステップS130においてIPアドレスが衝突(重複)していると判定された場合を例示して説明する。ステップS140で、MACフレーム生成部224が、記憶部230を参照して新たな使用可能IPアドレスの全部または一部を搭載したアソシエーション応答フレームFARを生成し、通信部210がそのアソシエーション応答フレームFARを移動局30へ送信する。
【0049】
ビーコンフレームFBはブロードキャストされるので複数の移動局30により受信され得る。そのため、複数の移動局30が第2基地局200の周辺に位置する場合には、同じ使用可能IPアドレスに対して複数の使用希望が発生する場合がある。ステップS130でIPアドレスの衝突判定を実行することにより、同一ネットワーク内でのIPアドレス重複が回避される。
【0050】
移動局30は、ステップS120と同様に、受信したアソシエーション応答フレームFARが示す使用可能IPアドレスから使用希望IPアドレスを選択し、その使用希望IPアドレスを搭載したアソシエーション要求フレームFAQを生成し第2基地局200に送信する(ステップS150)。
【0051】
第2基地局200のIPアドレス衝突判定部226は、ステップS130と同様、通信部210に受信されたアソシエーション要求フレームFAQが示す使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定する(ステップS160)。ステップS160で、IPアドレスが衝突(重複)しておらず使用可能であると判定されると、制御部220は垂直ハンドオーバを実行する(完了させる)。すなわち、第2基地局200によるアソシエーション応答フレームFARの返信および移動局30の認証(authentication)を経て、無線リンク(レイヤ2アソシエーション)の確立が完了する。
【0052】
以上に説明した実施の形態によれば、ビーコンフレームFBが使用可能IPアドレスを含むので、移動局30と第2基地局200とが無線リンクを確立する前に、移動局30が第2基地局200(無線LANネットワーク20)にて使用するIPアドレスを取得することができる。したがって、無線リンクが確立された直後から迅速にIP通信(レイヤ3通信)を開始することが可能である。
【0053】
また、移動局30が使用を希望するIPアドレスが無線LANネットワーク20にて使用可能であるか否かを無線リンク確立前に判定し、使用可能でない場合には再び使用可能IPアドレスを移動局30に送信するので、無線リンク確立後に再度のIPアドレス取得が必要となることが防止される。したがって、無線リンク確立後の迅速なIP通信開始がより確実に実現される。また、無線LANネットワーク20におけるIPアドレスの重複が防止されるので、無線LANネットワーク20におけるIP通信が安定化する。
【0054】
第2実施形態
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各態様において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0055】
図12は、本発明の第2実施形態に係る無線通信システム1を示す概略図である。無線通信システムはさらに管理サーバ500を備える。図12では、管理サーバ500はインターネット400に直接接続されているが、管理サーバ500は任意の箇所に配置され得る。例えば、移動通信ネットワーク10内に配置されてもよく、無線LANネットワーク20内に配置されてもよい。
【0056】
第2実施形態の無線LANネットワーク20は複数の第2基地局200およびDHCPサーバ22を備える。無線LANネットワーク20は1つのアドレス空間を有し、DHCPサーバ22はアドレス空間内で使用されているIPアドレスおよび使用可能IPアドレス(未割当てIPアドレス)を統括的に把握している。各第2基地局200のIPアドレス管理部222はDHCPサーバ20から使用可能IPアドレスを取得して記憶部230に記憶する。
また、各第2基地局200には相異なるBSSID(Basic Service Set Identifier)が割り振られ、無線LANネットワーク20にはESSID(Extended Service Set Identifier)が割り振られる。通信部210は、第2基地局200のBSSIDおよびESSIDのいずれか一方または双方(以下、識別情報と称する場合がある)を無線または有線で送信可能である。通信部210は、記憶部230に記憶される第2基地局200の位置情報(緯度および経度等)を無線または有線で送信可能である。
【0057】
図13は、第2実施形態の移動局30の構成例を示す図である。移動局30の制御部50は、移動局30の現在地情報(緯度および経度等)を取得する現在地情報取得部54をさらに含む。現在地情報取得部54は、例えば図示しないGPS(Global Positioning System)受信機から入力される情報に基づいて現在地情報を取得(算出)してもよいし、通信中の基地局から現在地情報を取得してもよい。
【0058】
図14は、管理サーバ500の構成の一例を示す図である。管理サーバ500は、通信部510と、制御部520と、記憶部530と、ネットワークインタフェース540とを備える。通信部510は、ネットワークインタフェース540を介して、インターネット400に接続しているノードと通信して情報を取得する。例えば、各第2基地局200の位置情報および識別情報を取得したり、移動局30の現在地情報を取得したりすることが可能である。取得された情報は記憶部530に記憶される。制御部520はインターネット400に接続しているノードを制御する要素であり、例えば、移動局30の現在地情報と各第2基地局200の位置情報とに基づいて、移動局30の無線通信可能範囲Rに第2基地局200が存在するか否かを判定することが可能である。
管理サーバ500の通信部510および制御部520は、図示しないCPUがコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。以上のコンピュータプログラムは不図示のROMに記憶される。また、記憶部530は前述の情報を記憶する記憶媒体であり、例えばRAMである。
【0059】
図15は、本発明にて新たに提案されるプローブ応答フレームFPRのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。本発明に係るプローブ応答フレームFPRは新たな情報要素IEとして使用可能IPアドレスをさらに含む。プローブ応答フレームFPRは移動局30が送信するプローブ要求フレームFPQに応答して第2基地局200が生成し送信するフレームである。
【0060】
図16は、第2実施形態の垂直ハンドオーバの動作を示すシーケンス図である。垂直ハンドオーバ開始前に移動局30と第1基地局100との間に無線接続が設定(確立)されている状況を想定する。第2基地局200は、移動局30からのプローブ要求フレームFPQに応じてプローブ応答フレームFPRを送信する。各第2基地局200は、第2基地局200自身の位置情報および識別情報を随時に管理サーバ500に送信し、通信部510に受信された位置情報および識別情報は記憶部530に記憶される。第2基地局200からの情報送信は定期的に行われてもよく、管理サーバ500からの要求に応じて行われてもよい。
【0061】
ハンドオーバイベントが発生すると、移動局30のハンドオーバ判定部52がハンドオーバトリガを生成して第1基地局100に送信し、垂直ハンドオーバ過程が開始する(ステップS200)。垂直ハンドオーバ過程が開始すると、現在地情報取得部54が取得した移動局30の現在地情報を、通信部40管理サーバ500へ送信する(ステップS210)。
【0062】
管理サーバ500の制御部520は、受信した移動局30の現在地情報と各第2基地局200の位置情報とに基づいて、移動局30の無線通信可能範囲Rに第2基地局200が存在するか否かを判定する。すなわち、制御部520は判定部として機能する。通信部510は、無線通信可能範囲Rに存在する第2基地局200の識別情報を移動通信ネットワーク10を介して移動局30に送信する(ステップS220)。
【0063】
移動局30の制御部50(MACフレーム生成部56)は、通信部40が受信した識別情報により特定される第2基地局200のうち、最も信号対干渉比の値が大きい第2基地局200を垂直ハンドオーバ先として選択し(ステップS230)、選択した第2基地局200に対するプローブ要求フレームFPQを生成する。通信部40は、生成されたプローブ要求フレームFPQを第2基地局200へ送信する(ステップS240)。すなわち、第2実施形態の移動局30はアクティブスキャンを実行することが可能である。このプローブ要求フレームFPQはプローブ応答フレームFPRの送信を要求するフレームであり、一般的なプローブ要求フレームFPQと同様にブロードキャストされてもよいし、送信先(ESSIDまたはBSSID)が特定されていてもよい。
【0064】
第2基地局200の通信部210がプローブ要求フレームFPQを受信する。受信されたプローブ要求フレームFPQに応じて、MACフレーム生成部224がプローブ応答フレームFPRを生成する。具体的には、MACフレーム生成部224が記憶部230に記憶された使用可能IPアドレスを読み出して、その全部または一部を情報要素IEとしてプローブ応答フレームFPRのフレームボディ部分に搭載する。通信部210がプローブ応答フレームFPRを移動局30に送信する(ステップS250)。なお、プローブ応答フレームFPRは、第1実施形態のビーコンフレームFBと異なりブロードキャストはされず、1つの移動局30に対して送信される。
【0065】
移動局30の制御部50(MACフレーム生成部56)は、受信したプローブ応答フレームFPRが示す使用可能IPアドレスから使用希望IPアドレスを選択し(ステップS260)、その使用希望IPアドレスを搭載したアソシエーション要求フレームFAQを生成して通信部40に転送する。通信部40はアソシエーション要求フレームFAQを第2基地局200に送信する(ステップS270)。使用可能IPアドレスから使用希望IPアドレスを選択する方法は、第1実施形態と同様に任意である。また、使用可能IPアドレスが1つのみ示されている場合の扱いも同様である。
【0066】
第2基地局200の通信部210にアソシエーション要求フレームFAQが受信されると、制御部220は垂直ハンドオーバを実行する(完了させる)。すなわち、第2基地局200によるアソシエーション応答フレームFARの返信および移動局30の認証(authentication)を経て、無線リンク(レイヤ2アソシエーション)の確立が完了する。
【0067】
以上に説明した実施の形態によれば、プローブ応答フレームFPRが使用可能IPアドレスを含むので、第1実施形態と同様の作用効果が奏される。また、無線接続可能範囲R内に存在する第2基地局200の識別情報が移動局30に送信されるので、移動局30が垂直ハンドオーバ候補の第2基地局200を認識することができる。そのため、第2基地局200がビーコンフレームFBを送信する必要がなくなるので、セキュリティをより向上させることが可能である。さらに、複数の移動局30が同じ使用可能IPアドレスの使用を希望することが抑制されるので、IPアドレス衝突判定が不要になり、構成を簡易にすることができる。
【0068】
変形例
以上の実施の形態は、本発明から逸脱しない範囲において多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0069】
変形例1
第1実施形態の移動局30がアクティブスキャンを実行してもよい。すなわち、移動局30がプローブ要求フレームFPQを送信し、第2基地局200がプローブ要求フレームFPQに応答して、使用可能IPアドレスを示すプローブ応答フレームFPRを生成し送信してもよい。
【0070】
変形例2
第1実施形態と第2実施形態は組み合わせることが可能である。例えば、垂直ハンドオーバトリガの発生後、移動局30がビーコンフレームFBの受信を試み(ステップS110)、所定時間内にビーコンフレームFBが受信できなかった場合、現在地情報を第1基地局100経由で管理サーバ500へ送信して(ステップS210)、移動局30近傍に存在する第2基地局200の識別情報を管理サーバ500から受信し(ステップS220)、識別情報に基づいてプローブ要求フレームFPQを送信してもよい(ステップS230,S240)。
また、第2実施形態の垂直ハンドオーバの動作において、第2基地局200が使用希望IPアドレスを受信した後に、第1実施形態と同様にIPアドレス衝突判定を実行する構成も採用可能である。
【0071】
変形例3
第1実施形態では、垂直ハンドオーバトリガが発生してから移動局30がビーコンフレームFBを受信したが(ステップS110)、垂直ハンドオーバ過程が実行されているか否かに関わらず、ビーコンフレームFBを継続的に受信してもよい。すなわち、移動局30が継続的にパッシブスキャンを実行してもよい。以上の構成によれば、垂直ハンドオーバトリガが発生した時点で使用可能IPアドレスが取得されている状態となり好適である。
【0072】
変形例4
第2基地局200を選択する基準は信号対干渉比に限られない。例えば、オペレータ情報(第2基地局200を運営するキャリアの情報)を選択基準としてもよい。また、管理サーバ500の記憶部530が各第2基地局200から送信された通信品質情報を記憶し、移動局30の無線通信可能範囲Rに存在する第2基地局200の通信品質情報を通信部510が移動局30へ送信し、移動局30の制御部50(MACフレーム生成部56)が通信品質情報に基づいて垂直ハンドオーバ先の第2基地局を選択してもよい。ここで、通信品質情報とは、リンク品質等のサービス品質(QoS、Quality Of Service)であってもよいし、ユーザが体感する品質(QoE、Quality Of Experience)であってもよく、また、これらの組合せであってもよい。
【0073】
変形例5
移動局30が第2基地局200と認証を行う際に必要な情報が管理サーバ500から提供されてもよい。すなわち、管理サーバ500の記憶部530が各第2基地局200の認証方式(WEP,WPA,WPA2,IEEE 802.11i等)および認証方式に対応した暗号化鍵を記憶し、通信部510が無線通信可能範囲Rに存在する第2基地局200の認証方式および暗号化鍵を前記移動局へ送信し、移動局30のハンドオーバ実行部58が通信部40に受信された認証方式および暗号化鍵に基づいて第2基地局200との認証を実行してもよい。
以上の構成によれば、接続する可能性のあるネットワークの認証方式および暗号化鍵を移動局30が記憶しなくてもよいから構成が簡易となる。また、認証方式および暗号化鍵が現在接続中のネットワーク(例えば移動通信ネットワーク10)を介して移動局30に送信されるから、現在接続中のネットワークのセキュリティが保たれている限り安全に認証方式および暗号化鍵が送信されるので好適である。
【0074】
変形例6
以上の実施形態では、移動局30がハンドオーバ判定部52を有したが、第1基地局100がハンドオーバ判定部を有してもよい。この場合、第1基地局100のハンドオーバ判定部がハンドオーバトリガを生成して移動局30に送信することにより垂直ハンドオーバ過程が開始する。すなわち、ハンドオーバ判定部が設けられる箇所は任意である。
【0075】
変形例7
ビーコンフレームFB中の使用可能IPアドレスが送信の度に異なるように、第2基地局200のMACフレーム生成部224がビーコンフレームFBを生成してもよい。以上の構成によれば、複数の移動局30から同一の使用可能IPアドレスの使用希望が送信されることが抑制され得る。
【0076】
変形例8
使用可能IPアドレスが搭載されるMACフレームFは任意のマネジメントフレームである。例えば、認証応答フレームに使用可能IPアドレスが搭載されてもよい。すなわち、無線リンク(レイヤ2アソシエーション)が確立される前に第2基地局200から移動局30に送信されるMACフレームFに、第2基地局200(無線LANネットワーク20)にて使用可能なIPアドレスが搭載されていればよい。
また、使用可能IPアドレスおよび使用希望IPアドレスを示す情報要素IEが配置される箇所はフレームボディ部分の任意の箇所であり、図示された箇所に限定されるものでないことは当然に理解される。
【0077】
変形例9
移動局30が従う通信規約によって各インタフェースおよび各アンテナが適応される通信規約の種類が可変であることは当然である。また、移動局30が従う通信規約の数に応じて無線インタフェース数およびアンテナ数が可変であることも当然である。
【0078】
変形例10
移動局30は、複数の通信規約に従って複数の基地局(ネットワーク)と無線通信可能な任意の装置である。例えば、移動局30は、携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
【0079】
変形例11
各装置(移動局30、第1基地局100、第2基地局200、管理サーバ500)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array),DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1……無線通信システム、10……移動通信ネットワーク、100……基地局、110……通信部、120……制御部、130……記憶部、20……無線LANネットワーク、200……基地局、210……通信部、220……制御部、222……IPアドレス管理部、224……MACフレーム生成部、226……IPアドレス衝突判定部、230……記憶部、30……移動局、40……通信部、50……制御部、52……ハンドオーバ判定部、54……現在地情報取得部、56……MACフレーム生成部、58……ハンドオーバ実行部、60……記憶部、500……管理サーバ、510……通信部、520……制御部、530……記憶部、F……MACフレーム、FAQ……アソシエーション要求フレーム、FAR……アソシエーション応答フレーム、FB……ビーコンフレーム、FM……マネジメントフレーム、FPQ……プローブ要求フレーム、FPR……プローブ応答フレーム、IE……情報要素、R……無線通信可能範囲。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信規約に従って動作可能な第1無線通信ネットワークと、
前記第1通信規約とは異なる第2通信規約に従って動作可能な第2無線通信ネットワークと、
前記第1通信規約および前記第2通信規約に従って動作可能な移動局と
を備える無線通信システムであって、
前記移動局は、
前記第1無線通信ネットワークに含まれる第1基地局および前記第2無線通信ネットワークに含まれる第2基地局と無線通信する移動局通信部と、
前記第1基地局から前記第2基地局への垂直ハンドオーバを実行する移動局制御部とを備え、
前記第2基地局は、
前記第2基地局に対して垂直ハンドオーバしてくる前記移動局にとって使用可能な1以上の使用可能IP(Internet Protocol)アドレスを記憶する基地局記憶部と、
前記使用可能IPアドレスの全部または一部を示す第1MAC(Media Access Control)フレームを生成する基地局制御部と、
前記第1MACフレームを無線で送信する基地局通信部とを備え、
垂直ハンドオーバを実行する前または垂直ハンドオーバの過程において、前記移動局通信部が前記第1MACフレームを受信し、前記移動局制御部が前記第1MACフレームに示された前記使用可能IPアドレスを選択して、選択した使用希望IPアドレスを示す第2MACフレームを生成し、前記移動局通信部が前記第2MACフレームを前記第2基地局に送信する
無線通信システム。
【請求項2】
前記第2基地局の前記基地局制御部は、前記基地局通信部に受信された前記第2MACフレームが示す前記使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定し、
前記使用希望IPアドレスが使用可能でない場合、前記移動局にとって使用可能な別のIPアドレスを示す新たな第1MACフレームを前記基地局制御部が生成し、前記新たな第1MACフレームを前記基地局通信部が前記移動局に送信し、前記移動局通信部が前記新たな第1MACフレームを受信し、前記移動局制御部が前記新たな第1MACフレームに示された前記使用可能な別のIPアドレスを選択して、選択した前記使用可能な別のIPアドレスを示す第2MACフレームを生成し、前記移動局通信部が前記第2MACフレームを前記第2基地局に送信する
請求項1の無線通信システム。
【請求項3】
前記第2無線通信ネットワークは複数の前記第2基地局を備え、
各前記第2基地局の位置情報および識別情報を取得する管理サーバ通信部と、前記位置情報および前記識別情報を記憶する管理サーバ記憶部とを含む管理サーバをさらに備え、
前記移動局通信部は、前記移動局自身の現在地情報を前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバは、受信した前記現在地情報と各前記第2基地局の前記位置情報とに基づいて、前記移動局と無線通信可能な範囲に各前記第2基地局が存在するか否かを判定する管理サーバ判定部をさらに備え、
前記管理サーバ通信部は、前記無線通信可能な範囲に存在する前記第2基地局の前記識別情報を前記移動局へ送信し、
前記移動局制御部は、前記移動局受信部が受信した前記識別情報により特定される前記第2基地局のうちから垂直ハンドオーバ先を選択し、選択した第2基地局に対して前記第1MACフレームの送信を要求する送信要求MACフレームを生成し、
前記移動局通信部は、前記送信要求MACフレームを送信し、
前記基地局制御部は、前記基地局通信部に受信された前記送信要求MACフレームに応答して、前記移動局に対する前記第1MACフレームを生成する
請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記管理サーバ記憶部は、前記第2無線通信ネットワークの各前記第2基地局の通信品質情報を記憶し、
前記管理サーバ通信部は、前記無線通信可能な範囲に存在する前記第2基地局の前記通信品質情報を前記移動局へ送信し、
前記移動局制御部は、前記通信品質情報に基づいて垂直ハンドオーバ先の第2基地局を選択する
請求項3の無線通信システム。
【請求項5】
前記管理サーバ記憶部は、前記第2無線通信ネットワークの各前記第2基地局の認証方式および暗号化鍵を記憶し、
前記管理サーバ通信部は、前記無線通信可能な範囲に存在する前記第2基地局の前記認証方式および前記暗号化鍵を前記移動局へ送信し、
前記移動局制御部は、前記移動局通信部に受信された前記認証方式および前記暗号化鍵に基づいて前記第2基地局との認証を実行する
請求項4の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1MACフレームおよび前記第2MACフレームの各々は、通信相手の発見、通信相手の認証、または通信相手とのアソシエーションのために送信されるマネジメントフレームのいずれかである
請求項5の無線通信システム。
【請求項7】
自局に対して垂直ハンドオーバしてくる移動局にとって使用可能な1以上の使用可能IPアドレスを記憶する記憶部と、
前記使用可能IPアドレスの全部または一部を示す第1MACフレームを生成する制御部と、
前記第1MACフレームを無線で送信する通信部とを備え、
垂直ハンドオーバを実行する前または垂直ハンドオーバの過程において前記移動局が受信した前記第1MACフレームに示された前記使用可能IPアドレスから前記移動局が選択した使用希望IPアドレスが搭載され、かつ、前記移動局から送信される第2MACフレームを前記通信部が受信し、受信した前記第2MACフレームに基づいて前記制御部が垂直ハンドオーバを実行する
基地局。
【請求項8】
前記制御部は、前記通信部に受信された前記第2MACフレームが示す前記使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定し、
前記使用希望IPアドレスが使用可能でない場合、前記移動局にとって使用可能な別のIPアドレスを示す新たな第1MACフレームを前記制御部が生成し、前記新たな第1MACフレームを前記通信部が前記移動局に送信する
請求項7の基地局。
【請求項9】
自局に対して垂直ハンドオーバしてくる移動局にとって使用可能な1以上の使用可能IPアドレスを記憶する記憶部と、
前記使用可能IPアドレスの全部または一部を示す第1MACフレームを生成する制御部と、
前記第1MACフレームを無線で送信する通信部とを備える基地局を備え、
垂直ハンドオーバを実行する前または垂直ハンドオーバの過程において前記移動局が受信した前記第1MACフレームに示された前記使用可能IPアドレスから前記移動局が選択した使用希望IPアドレスが搭載され、かつ、前記移動局から送信される第2MACフレームを前記基地局の前記通信部が受信し、受信した前記第2MACフレームに基づいて前記制御部が垂直ハンドオーバを実行する
ネットワーク。
【請求項10】
前記基地局の前記制御部は、前記通信部に受信された前記第2MACフレームが示す前記使用希望IPアドレスが使用可能であるか否かを判定し、
前記使用希望IPアドレスが使用可能でない場合、前記移動局にとって使用可能な別のIPアドレスを示す新たな第1MACフレームを前記制御部が生成し、前記新たな第1MACフレームを前記通信部が前記移動局に送信する
請求項9のネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−5085(P2013−5085A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132151(P2011−132151)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】