説明

無線通信システム

【課題】基地局装置101と通信するための周波数で送受信する第1の無線部111と、移動局装置103と通信するための周波数で送受信する第2の無線部112を有する中継局装置102で、一斉通信の後追い通信を行う。
【解決手段】中継局装置102は、第2の無線部112により移動局装置103に対して一斉通信信号(図1では、TCH(音声データ))を送信している間に、第1の無線部111に設けられた送信部(TX)によって移動局装置103が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号(図1では、UI信号(直接通信無線チャネル指定、直接通信単信呼設定))を定期的に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける中継に関し、特に、一斉通信の後追い通信を行う中継局装置や中継局における一斉通信後追い通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、都道府県・市町村デジタル移動通信システム(例えば、ARIB STD−T79、 社団法人電波産業会 参照。)は、一自治体(都道府県又は市町村)を基本単位として、統制局設備、基地局設備、固定局設備及び移動局設備で構成され、統制局−移動局(又は固定局)間、或いは基地局経由又は直接的に移動局(又は固定局)−移動局(又は固定局)間で通信が行われる。
【0003】
図3には、このようなデジタル無線システムの一例を示してある。
本例のデジタル無線システムには、統制局装置1と、複数の移動局装置2a〜2e、3a〜3cが備えられている。移動局装置としては、例えば、車載用の移動局装置2a〜2eや、携帯用の移動局装置3a〜3cがある。
統制局装置1は、基地局装置の機能を構成する制御装置11、無線装置12、送信アンテナ13、受信アンテナ14を備え、また、統制台や内線電話等A1〜An(nは1以上の整数)を備えている。
基地局装置により移動局装置2a〜2e、3a〜3cとの間で無線通信する範囲である基地ゾーン21が形成される。
【0004】
本例のデジタル無線システムでは、基地局装置から移動局装置2a〜2e、3a〜3cへの下り通信では周波数帯f1が使用されており、移動局装置2a〜2e、3a〜3cから基地局装置への上り通信では周波数帯f2が使用されており、移動局装置2a〜2e、3a〜3c同士の移動局間直接通信では周波数帯f3が使用されている。
ここで、一般に、基地局装置に割り当てられる制御チャネルは各基地局装置毎に対して1つであり、また、直接通信の制御チャネルは全国で同じ1つだけであり、通信エリアが重ならなければ通信可能である。なお、これに限られず、他の種々な構成が用いられてもよい。
【0005】
また、上記のようなデジタル無線システムでは、中継端末局装置が備えられる場合がある。
ここで、中継端末局装置とは、基地局装置のサービスエリア(基地ゾーン21)内の不感地やサービスエリア外の地域等を一時的又は恒久的にカバーするために無線中継を行う局のことを言う。
中継端末局装置としては、基地局通信用キャリアを別の基地局通信用キャリアに中継する「基地中継端末局装置」と、基地局通信用キャリアと移動局間直接通信用キャリアとを相互に中継する「直接中継端末局装置」がある。
【0006】
図4には、自動中継システムの一例を示してある。本例の自動中継システムは、図3に示されるようなデジタル無線システムに適用することが可能である。
本例の自動中継システムには、統制局装置(基地局装置の機能を含む構成例)31、複数の直接中継端末局装置32、33、固定局装置34、複数の移動局装置35a〜35d、36a〜36cが備えられている。
統制局装置31は、統制台やFAXやデータ伝送装置やサーバー等41、内線電話機や公衆電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)と接続された構内交換機(PBX:Private Branch Exchange)42、イントラネット43、これらと接続された回線制御装置44、基地局装置を構成する制御装置45や無線装置46やアンテナ47を備えている。
【0007】
基地局装置により移動局装置35a〜35d、36a〜36cとの間で無線通信する範囲である基地ゾーン51が形成される。
また、各直接中継端末局装置32、33により移動局装置35a〜35d、36a〜36cとの間で無線通信する範囲である中継端末ゾーン52、53が形成される。
【0008】
本明細書において、以下では、特に明記しない限り、中継局装置とは直接中継端末局装置のことを示すとする。
中継局装置は、「基地局装置と中継局装置と移動局装置」という間の通信を行うために、基地局装置との通信用の送受信を行う無線部(基地用無線部)と、直接通信用の送受信を行う無線部(直接用無線部)といった2組を備えている。
【0009】
図5には、中継局装置102の構成例を示してあり、基地局装置101や移動局装置103も示してある。
本例の中継局装置102は、基地局装置101との間で基地局波の無線信号(例えば、図3に示される周波数帯f1、f2の信号)を送受信する基地用無線部111と、移動局装置103との間で直接波の無線信号(例えば、図3に示される周波数帯f3の信号)を送受信する直接用無線部112を備えている。
基地用無線部111や直接用無線部112は、それぞれ、送信部(TX)や、受信部(RX)や、アンテナを有している。
本例の中継局装置102は、基地波の送受信周波数を設定した基地用無線部111と、直接波の送受信周波数を設定した直接用無線部112を外部インタフェースにより接続して構成されている。
【0010】
中継局装置102では、基地用無線部111により基地局装置101から無線受信した信号を直接用無線部112により移動局装置103に対して無線送信する中継処理や、直接用無線部112により移動局装置103から無線受信した信号を基地用無線部111により基地局装置101に対して無線送信する中継処理を行う。
【0011】
図6には、各無線部(移動局装置103)の構成例を示してある。
本例の無線部は、無線通信を行うための処理部として、送受信アンテナ121、高周波部122、送受信周波数を設定するシンセサイザ123、変調部(送信)124、復調部(受信)125を備えており、また、DSP(Digital Signal Processor)126、無線機の動作を制御するMPU(Micro Processor Unit)127、マイク131やスピーカ132を制御する音声制御部128、LCD(Liquid Crystal Display)133の表示やキー134の取り込み等を行う操作表示部129、外部接続のための外部インタフェース部130などから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−119339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、一斉通信は、統制台等から発信されて(基地局装置を経由して)複数の対象の移動局装置に対して一斉に情報を伝達する単信の通信方式である。
具体的には、基地局装置の制御用チャネル(例えば、CAC:Common Access Channel)により、一斉通信を行う通信用チャネル(例えば、USC:User Specific Channel)を特定する情報(例えば、周波数、スロット番号)を知らせる信号が送信される。その信号を受信した移動局装置は、指定された通信用チャネルの周波数及びスロットにおいて、音声/データ信号の受信を行う。
【0014】
一斉通信では、通話開始後も定期的に制御用チャネルにおいて、一斉通信を行っている通信用チャネルの情報を知らせる信号(後追い信号)が送信され、これにより、通話開始時に信号を受信し損なった移動局装置を通信用チャネルへ遷移させている。この理由は、一斉通信は非常に重要な情報を通知することから、より多くの移動局装置を通信用チャネルに遷移させる必要があるためである。
【0015】
図7には、基地局一斉通信の処理の流れの一例を示してある。
基地局装置101からCACによりUI信号(グループ通信呼出及びグループ通信呼設定のための信号)が無線送信される(処理T11)。移動局装置103−1は、このUI信号をCACにより受信したことに応じて、CACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移して、基地局装置101からUSCにより無線送信される音声データ(TCH:Traffic Channel)をUSCにより受信する(処理T12)。一方、移動局装置103−2では、基地局装置101からのUI信号が未受信であった。
その後、後追い信号として、定期的に、基地局装置101からCACによりUI信号が無線送信される(処理T13)。移動局装置103−2では、このUI信号を受信したことに応じて、CACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移して、基地局装置101からUSCにより無線送信される音声データ(TCH)をUSCにより受信する(処理T14)。
【0016】
次に、移動局直接通信でグループ通信を行う場合には、発信元の移動局装置は、制御用チャネル(例えば、CAC)により通信用チャネル(例えば、USC)への遷移信号を送信した後に、当該発信元の移動局自体も通信用チャネルでの送受待受状態へ遷移する。ここで、移動局装置では無線部が1組であるため、制御用チャネルで後追い信号を送信することができない。このため、発信直後の信号(遷移信号)を受信し損ねた移動局装置はグループ通信に参加することができない。
【0017】
図8には、直接グループ通信の処理の流れの一例を示してある。
移動局装置103−1からCACによりUI信号(直接通信無線チャネル指定、直接通信単信呼設定のための信号)が無線送信され(処理T21)、当該移動局装置103−1はCACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移する。
移動局装置103−2は、このUI信号をCACにより受信したことに応じて、CACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移して、移動局装置103−1からUSCにより無線送信される音声データ(TCH)をUSCにより受信する(処理T22)。一方、移動局装置103−3では、移動局装置103−1からのUI信号が未受信であった。この場合、後追い信号が送信されないため、最初のUI信号(遷移信号)を受信し損ねた移動局装置103−3は、グループ通信に参加することができない。
【0018】
次に、中継局装置を使用したシステムで一斉通信を行う場合には、中継局装置と移動局装置との間は直接通信であるため、中継局ゾーン傘下の移動局装置に対して後追い信号を送信することができない。このため、中継局ゾーン傘下の移動局装置は最初の信号を受信し損ねると一斉通信に参加することができないという問題が発生する。
【0019】
図9には、中継一斉通信(後追いなし)の処理の流れの一例を示してある。
基地局装置101からCACによりUI信号(グループ通信呼出、グループ通信呼設定のための信号)が無線送信される(処理T31)。
中継局装置102では、このUI信号が基地用無線部111のCACにより受信されたことに応じて、直接用無線部112のCACによりUI信号(直接通信無線チャネル指定、直接通信単信呼設定のための信号)が無線送信され(処理T32)、基地用無線部111がCACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移されるとともに、直接用無線部112がCACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移される。
その後、中継局装置102では、基地局装置101からUSCにより無線送信される音声データ(TCH)が(処理T33)、基地用無線部111のUSC及び直接用無線部112のUSCにより中継されて(処理T34)、対応する音声データ(TCH)がUSCにより無線送信される(処理T35)。
【0020】
移動局装置103−1は、中継局装置102からのUI信号をCACにより受信したことに応じて、CACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移して、その後、中継局装置102からの音声データ(TCH)をUSCにより受信する。一方、移動局装置103−2では、中継局装置102からの初期信号であるUI信号が未受信であり、その後に後追い信号がないため、通信に参加することができない。
【0021】
以上のように、従来、防災無線システムなどでは、一斉通信を受信するためのチャネル切り替え指示信号(上述の例では、UI信号)を受信し損ねた端末装置をフォローするために、一斉通信を行った後に基地局装置から後追い通知と呼ばれる信号(後追い信号)を定期的に移動局装置に対して送信していた。
しかしながら、中継局装置や直接通信を行っていた移動局装置では、自身が音声通知を受信するために、一斉通信を行う旨のチャネル切り替え指示信号を受信すると、自身と通信している移動局装置に対して一斉通信を受信するためのチャネルへの切り替えを行う旨を通知した後に、自身も一斉通信受信用の通信チャネルでの送受待受状態へ移行してしまうことから、後追い通知を行うことができなかった。このため、最初の一斉通信情報(上述の例では、UI信号)を受信できなかった移動局装置では、その後も一斉通信を受信することができないままとなってしまうという問題があった。
【0022】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、後追い通知を行うことにより、一斉通信を受信することができない移動局装置を減らすことができる中継局装置及び中継局における一斉通信後追い通知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するため、本発明では、基地局装置と通信するための周波数で送受信する第1の無線部と、移動局装置と通信するための周波数で送受信する第2の無線部を有する中継局装置において、次のような構成とした。
すなわち、当該中継局装置は、前記第2の無線部により前記移動局装置に対して一斉通信信号を送信している間に、前記第1の無線部に設けられた送信部によって前記移動局装置が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信する。
【0024】
従って、移動局装置が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信して、後追い通知を行うことにより、一斉通信を受信することができない移動局装置を減らすことができる。
【0025】
ここで、基地局装置と通信するための周波数や、移動局装置と通信するための周波数としては、それぞれ、例えば、制御用のチャネルの周波数と通信用のチャネルの周波数があり、更に、送信用と受信用とで異なる周波数が用いられる場合には送信用の周波数と受信用の周波数がある。
また、一斉通信信号や、切り替え信号としては、それぞれ、種々なものが用いられてもよい。
また、定期的に送信する時間間隔としては、種々な間隔が用いられてもよい。
【0026】
本発明に係る中継局装置では、一構成例として、次のような構成とした。
すなわち、前記第1の無線部は、送信機能を有する送信部と、受信機能を有する受信部を設けて構成されている。前記第2の無線部は、送信機能を有する送信部と、受信機能を有する受信部を設けて構成されている。
一斉通信が開始される前においては、前記第1の無線部の送信部及び受信部と、前記第2の無線部の送信部及び受信部は、それぞれ、制御用のチャネルでの送受待受状態にある。
そして、一斉通信が開始される場合には、前記第1の無線部の受信部は前記基地局装置からの受信に対応した通信用のチャネルでの受信待受状態へ遷移され、前記第2の無線部の送信部及び受信部は前記移動局装置との送受信に対応した通信用のチャネルでの送受待受状態へ遷移され、前記第1の無線部の送信部は前記移動局装置への送信に対応した制御用のチャネルでの送信状態へ遷移され、当該第1の無線部の送信部により前記移動局装置が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信する。
【0027】
従って、一斉通信が開始される場合に、第1の無線部の受信部、第2の無線部の送信部及び受信部をそれぞれ通信用のチャネルでの待受状態へ遷移させ、第1の無線部の送信部を移動局装置への送信に対応した制御用のチャネルでの送信状態へ遷移させて、当該第1の無線部の送信部により移動局装置が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信して、後追い通知を行うことにより、一斉通信を受信することができない移動局装置を減らすことができる。
【0028】
本発明では、基地局と通信するための周波数で送受信する第1の無線部と、移動局と通信するための周波数で送受信する第2の無線部を有する中継局における一斉通信後追い通知方法において、次のような処理を行う。
すなわち、前記第2の無線部により前記移動局に対して一斉通信信号を送信している間に、前記第1の無線部に設けられた送信部によって前記移動局が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信する。
従って、移動局が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信して、後追い通知を行うことにより、一斉通信を受信することができない移動局を減らすことができる。
【0029】
また、本発明は、無線通信システムとしても把握できる。
すなわち、基地局装置と、移動局装置と、前記基地局装置と通信するための周波数で送受信する第1の無線部と、前記移動局装置と通信するための周波数で送受信する第2の無線部を有する中継局装置と、を備えた無線通信システムであって、前記中継局装置は、前記第2の無線部により前記移動局装置に対して一斉通信信号を送信している間に、前記第1の無線部に設けられた送信部によって前記移動局装置が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信する。
【0030】
また、上記の無線通信システムにおいて、前記第1の無線部は、送信機能を有する送信部と、受信機能を有する受信部を設けて構成されており、前記第2の無線部は、送信機能を有する送信部と、受信機能を有する受信部を設けて構成されており、一斉通信が開始される前においては、前記第1の無線部の送信部及び受信部と、前記第2の無線部の送信部及び受信部は、それぞれ、制御用のチャネルでの送受待受状態にあり、一斉通信が開始される場合には、前記第1の無線部の受信部は前記基地局装置からの受信に対応した通信用のチャネルでの受信待受状態へ遷移され、前記第2の無線部の送信部及び受信部は前記移動局装置との送受信に対応した通信用のチャネルでの送受待受状態へ遷移され、前記第1の無線部の送信部は前記移動局装置への送信に対応した制御用のチャネルでの送信状態へ遷移され、当該第1の無線部の送信部により前記移動局装置が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信する。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によると、中継局装置から、移動局装置が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信して、後追い通知を行うことにより、一斉通信を受信することができない移動局装置を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例に係る中継一斉通信(後追いあり)の処理の流れの一例を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る中継一斉通信(後追いあり)の制御処理の手順の一例を示す図である。
【図3】デジタル無線システムの一例を示す図である。
【図4】自動中継システムの一例を示す図である。
【図5】中継局装置等の一例を示す図である。
【図6】無線部の構成例を示す図である。
【図7】基地局一斉通信の処理の流れの一例を示す図である。
【図8】直接グループ通信の処理の流れの一例を示す図である。
【図9】中継一斉通信(後追いなし)の処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
本発明の一実施例に係る中継局装置(直接中継端末局装置)は、例えば、図3(及び図6)に示されるのと同様なデジタル無線システムに設けられ、図4に示されるのと同様な自動中継システムで用いられ、図5に示されるのと同様な概略的な構成を有している。
【0034】
本例の中継局装置により行われる動作について説明する。
なお、説明の便宜上から、図5に示される符号を用いて、基地局装置101、中継局装置102、移動局装置103(103−1、103−2)、中継局装置102の基地用無線部111、中継局装置102の直接用無線部112、と表す。
ここで、本例では、基地用無線部111のアンテナとしては、基地局装置101と無線通信するための指向性アンテナが用いられるのが好ましいが、例えば、干渉などの支障がなければ、無指向性のアンテナが用いられてもよい。同様に、直接用無線部112のアンテナとしては、移動局装置103との通信が可能であれば、種々なものが用いられてもよい。
【0035】
本例の中継局装置102は、送受信が可能な基地局波用の無線部111と、送受信が可能な直接波用の無線部112を装備している。基地局波用の無線部111には送受信とも基地局波の周波数が設定され、直接波用の無線部112には送受信とも直接波の周波数が設定される。
複信個別通信の中継では常時送受信を行っているため、両無線部111、112の送受信とも基地/直接の設定のままである。しかしながら、一斉通信等のグループ通信では、単信通信であるため、中継局装置102の基地局波用の送信無線部(TX)又は直接波用の送信無線部(TX)のいずれかでは送信を行っていない。
【0036】
例えば、統制局装置からの一斉通信では、中継局装置102の基地局波用の受信無線部(RX)が受信した音声を直接波用の送信無線部(TX)が送信している。つまり、中継局装置102の基地局波用の送信無線部(TX)は、この間、使用されていない。
そこで、本例では、一斉通信が始まって直接波用の無線部112が通信用チャネル(USC)での送受待受状態に変わった後に、中継局装置102の基地局波用の送信無線部(TX)を直接波の制御用チャネル(CAC)の周波数に設定して後追い信号を送信する。これにより、中継局ゾーン傘下の移動局装置103に対して後追い信号を送信することが可能となる。
【0037】
図1には、中継一斉通信(後追いあり)の処理の流れの一例を示してある。
基地局装置101からCACによりUI信号(グループ通信呼出、グループ通信呼設定のための信号)が無線送信される(処理T1)。
中継局装置102では、このUI信号が基地用無線部111の受信部(RX)のCACにより受信されたことに応じて、直接用無線部112の送信部(TX)のCACによりUI信号(直接通信無線チャネル指定、直接通信単信呼設定のための信号)が無線送信され(処理T2)、基地用無線部111の受信部(RX)がCACでの受信待受状態からUSCでの受信待受状態へ遷移され、基地用無線部111の送信部(TX)が基地局波用のCACでの送信待受状態から直接波用のCACでの送信待受状態へ遷移され、直接用無線部112の受信部(RX)及び送信部(TX)がCACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移される。
【0038】
その後、中継局装置102では、基地局装置101からUSCにより無線送信される音声データ(TCH)が(処理T3)、基地用無線部111の受信部(RX)のUSC及び直接用無線部112の送信部(TX)のUSCにより中継されて(処理T4)、対応する音声データ(TCH)がUSCにより無線送信される(処理T5)。
【0039】
移動局装置103−1は、中継局装置102からのUI信号を受信部(RX)のCACにより受信したことに応じて、受信部(RX)及び送信部(TX)がCACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移して、その後、中継局装置102からの音声データ(TCH)を受信部(RX)のUSCにより受信する。一方、移動局装置103−2では、最初は、中継局装置102からの初期信号であるUI信号が未受信である。
【0040】
ここで、本例では、中継局装置102は、前記した状態遷移の後に、定期的に、基地用無線部111の送信部(TX)の直接波用CACにより、後追い信号としてUI信号(直接通信無線チャネル指定、直接通信単信呼設定のための信号)を無線送信する(処理T6)。
これにより、最初のUI信号を受信し損なった移動局装置103−2においても、中継局装置102からの後追い信号であるUI信号を受信部(RX)のCACにより受信することができ、これに応じて、受信部(RX)及び送信部(TX)がCACでの送受待受状態からUSCでの送受待受状態へ遷移して、その後、中継局装置102の直接用無線部112の送信部(TX)のUSCからの音声データ(TCH)を受信部(RX)のUSCにより受信することができる(処理T7)。このように、最初のUI信号を受信し損なった移動局装置103−2においても、後追い信号の受信によって、通信に参加することができる。
【0041】
図2には、本例の中継一斉通信(後追いあり)の制御処理の手順の一例を示してある。
中継局装置102が起動されると(ステップS1)、基地用無線部111の受信部(RX)に、基地局波用の制御用チャネル(CAC)の受信周波数が設定され(ステップS2)、基地用無線部111の送信部(TX)に、基地局波用の制御用チャネル(CAC)の送信周波数が設定され(ステップS3)、また、直接用無線部112の受信部(RX)に、直接波用の制御用チャネル(CAC)の受信周波数が設定され(ステップS4)、直接用無線部112の送信部(TX)に、直接波用の制御用チャネル(CAC)の送信周波数が設定される(ステップS5)。
【0042】
一斉通信が開始されると(ステップS11)、中継局装置102では、基地用無線部111の受信部(RX)により一斉通信制御コマンド(本例では、UI信号)を受信し(ステップS12)、基地用無線部111の受信部(RX)に基地局波用の通信用チャネル(USC)の受信周波数が設定されて、一斉通信音声データ(本例では、TCH)の受信が開始される(ステップS13)。
また、中継局装置102では、直接用無線部102の送信部(TX)により一斉通信制御コマンド(本例では、UI信号)を無線送信し(ステップS14)、直接用無線部102の送信部(TX)に直接波用の通信用チャネル(USC)の送信周波数が設定されて、一斉通信音声データ(本例では、TCH)の送信が開始される(ステップS15)。
【0043】
また、中継局装置102では、基地局用無線部111の送信部(TX)に直接波用の制御用チャネル(CAC)の送信周波数が設定されて、後追い通知を行うために、一斉通信制御コマンド(本例では、UI信号)の送信が開始されて(ステップS16)、このような後追い通知が定期的に行われる。
【0044】
ここで、基地用無線部111の送信部(TX)、受信部(RX)や、直接用無線部112の送信部(TX)、受信部(RX)のそれぞれに設定される周波数を切り替える(設定される周波数の状態を遷移させる)タイミングとしては、種々なタイミングが用いられてもよい。例えば、基地用無線部111の送信部(TX)については、直接波用の制御用チャネル(CAC)へ周波数を切り替えるだけで送信を行わなければ(及び、他に支障がなければ)切り替えのタイミングはいつでもよく、一例として、直接用無線部112の送信部(TX)が音声データ(TCH)を流し始めたことを契機として、基地用無線部111の送信部(TX)により直接波用の制御用チャネル(CAC)の信号を流し始めるように切り替えるような制御を行うことができる。
【0045】
以上のように、本例の中継局装置102における一斉通信後追い通知方法では、直接中継端末局において一斉通信の後追い通信を行うことにより、例えば、中継局ゾーン傘下の移動局装置103をより多く一斉通信に参加させることができ、高品質なサービスを提供することができる。
【0046】
なお、本例の中継局装置102では、基地局装置101と通信するための周波数で送受信する第1の無線部として基地用無線部111の送信部(TX)及び受信部(RX)が設けられており、移動局装置103と通信するための周波数で送受信する第2の無線部として直接用無線部112の送信部(TX)及び受信部(RX)が設けられている。また、本例では、一斉通信信号として例えば移動局装置103のユーザに対して連絡や報知などを行うための音声データ(TCH)の信号が用いられており、移動局装置103が一斉通信用のチャネル(本例では、直接波用のUSC)に切り替えるための切り替え信号としてUI信号(直接通信無線チャネル指定、直接通信単信呼設定のための信号)が用いられている。
【0047】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1、31・・統制局装置、 11・・制御装置、 12・・無線装置、 13・・送信アンテナ、 14・・受信アンテナ、 21・・基地ゾーン、 A1〜An・・統制台や内線電話等、 2a〜2e、3a〜3c、35a〜35d、36a〜36c、103、103−1〜103−3・・移動局装置、 32、33・・直接中継端末局装置、 34・・固定局装置、 101・・基地局装置、 102・・中継局装置、 111・・基地用無線部、 112・・直接用無線部、 121・・送受信アンテナ、 122・・高周波部、 123・・シンセサイザ、 124・・変調部、 125・・復調部、 126・・DSP、 127・・MPU、 128・・音声制御部、 129・・操作表示部、 130・・外部インタフェース部、 131・・マイク、 132・・スピーカ、 133・・LCD、 144・・キー、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と、移動局装置と、前記基地局装置と通信するための周波数で送受信する第1の無線部と、前記移動局装置と通信するための周波数で送受信する第2の無線部を有する中継局装置と、を備えた無線通信システムであって、
前記中継局装置は、前記第2の無線部により前記移動局装置に対して一斉通信信号を送信している間に、前記第1の無線部に設けられた送信部によって前記移動局装置が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の無線部は、送信機能を有する送信部と、受信機能を有する受信部を設けて構成されており、
前記第2の無線部は、送信機能を有する送信部と、受信機能を有する受信部を設けて構成されており、
一斉通信が開始される前においては、前記第1の無線部の送信部及び受信部と、前記第2の無線部の送信部及び受信部は、それぞれ、制御用のチャネルでの送受待受状態にあり、
一斉通信が開始される場合には、前記第1の無線部の受信部は前記基地局装置からの受信に対応した通信用のチャネルでの受信待受状態へ遷移され、前記第2の無線部の送信部及び受信部は前記移動局装置との送受信に対応した通信用のチャネルでの送受待受状態へ遷移され、前記第1の無線部の送信部は前記移動局装置への送信に対応した制御用のチャネルでの送信状態へ遷移され、当該第1の無線部の送信部により前記移動局装置が一斉通信用のチャネルに切り替えるための切り替え信号を定期的に送信する、
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−55710(P2013−55710A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−276063(P2012−276063)
【出願日】平成24年12月18日(2012.12.18)
【分割の表示】特願2008−185496(P2008−185496)の分割
【原出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】