説明

無線通信システム

【課題】PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができ、かつ、通話チャネルとしての周波数利用効率を高めることができる新しいデジタルコードレス電話機の無線通信システムを得ることを目的とする。
【解決手段】本発明は、デジタルコードレス電話機に割り当てられた周波数帯域、および、PHSに割り当てられた周波数帯域を受信し、当該受信した信号の受信電界強度を測定して出力し、一定時間連続して受信された信号の受信電界強度の出力を監視し、所定の閾値以上の受信電界強度が現れる時間幅および頻度を計測することにより、PHSの固定局から発信される信号による干渉があるか否かを判別し、干渉があると判別された場合に、当該干渉を避けるように使用する周波数帯域およびスロットタイミングを設定し、周波数帯域およびスロットタイミングにより通信データを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルコードレス電話機に応用可能な無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では、デジタルコードレス電話機が利用可能な周波数帯域として、図1に示すように、1893.5MHz〜1906.1MHzが割り当てられている。また、上記周波数帯域に隣接する周波数帯域は、公衆型のPHS(以下「公衆PHS」という。)によって利用されている。ここで、公衆PHSとは、屋外でPHS基地局と接続して移動体通信として利用する形態のことである。また、自営型のPHS(以下「自営PHS」という。)とは、PHS方式のコードレス電話機の親機と子機との間で移動体通信として利用する形態のことである。
【0003】
ここで、現在、1893.5MHz〜1906.1MHzの上記周波数帯域は、PHS方式のみが使用している。PHS方式では、5ms周期の1フレームに8スロット(アップリンク用に4スロット、ダウンリンク用に4スロット)を含んで構成されるTDMA(時分割多元接続:Time Division Multiple Access)/TDD(時分割複信:Time Division Duplex)方式を採用している。通常、1スロットペアを制御チャネルとして割り当て、3スロットペアを通話チャネルとして割り当てている。
【0004】
また、PHS方式では、制御信号は基地局から間欠的に送信される。具体的には、公衆PHSの基地局は120ms周期(24フレーム周期)で定期的に制御信号を送信する。
【0005】
また、自営PHSでは、固定局は125ms以上、300ms以下の間隔を隔てかつ5ms刻みの任意の時間位置で、間欠的に制御信号を送信する。このように自営PHSでは、公衆PHS同様に1フレームは5ms周期であるが、自営PHSの固定局は必ずしも等間隔で制御信号を送信するのではなく、あるタイミングで制御信号を送信すると、次の送信は125ms後、または125msに5msの倍数を足したタイミングで制御信号を送信する。
【0006】
また、PHS方式の制御チャネルの周波数は、図1に示すように、公衆PHSでは、2012年6月以降、事業者毎に1906.650MHz、1907.150MHz、1907.750MHzのうちいずれかの周波数が固定的に割り当てられ、自営PHSでは、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数が固定的に割り当てられる。
【0007】
また、PHS方式の通話チャネルは、制御チャネル上での要求/応答で割り当てられ、例えば、自営PHSでは、図1に示すように、全40周波数が確保される。
【0008】
そこで、将来、1893.5MHz〜1906.1MHzの上記周波数帯域を利用するシステムとして、図1に示すように、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)規格に準拠したデジタルコードレス電話機システム(以下、DECTシステムと呼称する)を追加することが検討されている。
【0009】
新しい方式として導入が検討されているDECT方式では、10ms周期の1フレームに24スロット(アップリンク用に12スロット、ダウンリンク用に12スロット)を含んで構成されるTDMA/TDD方式を採用している。また、最低1スロットの制御チャネルスロットを備えており、制御チャネルも通話チャネルも10msのフレーム周期で送受信される。また、各々の周波数/スロット位置は任意であり、周波数は、図1に示すように、全5周波数で検討されている。
【0010】
しかし、公衆PHSの制御信号(PHS基地局とPHS端末間の通話を制御するために当該PHS基地局と当該PHS端末間で送受信される信号)は、図1に示すように、1906.1MHzに近接する周波数チャネルに移動することが検討されているため、DECTシステムが使用する電波の高調波成分が当該制御信号と干渉するおそれがあり、DECTシステムの追加に際しては、DECTシステムと公衆PHSとの共存が問題となる。
【0011】
したがって、DECTシステムがPHS基地局とPHS端末間の通話を妨害することを低減させるためには、DECTシステムが使用する電波の高調波成分をPHS基地局とPHS端末間で送受信される制御信号に干渉させないことが特に重要である。
【0012】
ここで、従来の干渉防止技術の一例として、以下の(特許文献1〜5)が存在する。
【0013】
例えば、(特許文献1)の技術では、周波数帯が近接する二つの無線システムにおいて干渉が発生する可能性がある場合に、干渉が発生しているかどうかを検出し、使用周波数を干渉の影響が小さいと推定される周波数範囲に制限している。
【0014】
また、(特許文献2)の技術では、近隣で他のデジタルコードレス電話機装置が通話中の場合、この電話装置の送受信のタイミングを検出し、このタイミングと干渉しないスロット位置にて送受信を行っている。
【0015】
また、(特許文献3)の技術では、自己占有スロット位置と他機占有スロット位置とが重なった際、先頭の空きビーコンスロット位置に、自己占有スロット位置を変更している。
【0016】
また、(特許文献4)の技術では、利用可能なアクセススロットを用いて情報ブロックを送信機から受信機に送信し、この情報ブロックが受信機において衝突なく適切に受信された場合、他の情報ブロックについても送信している。
【0017】
また、(特許文献5)の技術では、予め非同期干渉回避用の予備チャネルを用意して通信信号とともに移動機に対して通知しておき、非同期干渉を検出したときに、予備チャネルへ切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−353878号公報
【特許文献2】特開平4−286431号公報
【特許文献3】特開2007−243749号公報
【特許文献4】特開2001−169331号公報
【特許文献5】特開平7−67169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記従来技術(例えば、特許文献1〜5など)によれば、DECTシステムの通信効率を向上させるためには、当該制御信号の送信タイミングの予測を正確に行う必要があるが、前述のようにPHSの制御信号は5ms毎または5msの倍数の間隔をおいて送信されるので、DECT端末において受信部で検知された信号がPHS制御信号であるか判別が難しいという問題点があった。
【0020】
また、上記従来技術においては、近くに自システムと同期が取れていない他のDECT端末が存在する場合、この他のDECTシステムの端末も10ms毎に制御信号を送信しており、この送信タイミングが5msの倍数であるため、PHSの制御信号とDECTの制御信号の判別が難しいという問題点があった。
【0021】
具体的には、電波干渉には、制御チャネルへの妨害と通話チャネルへの妨害の2種類が考えられ、特にPHSとDECTを同一周波数帯域で混在利用する場合には、有害な電波干渉を抑制する仕組みが必要となる。
【0022】
制御チャネルについては、PHS方式は通話チャネルの割り当て、着信の報知に利用しており、制御チャネルの通信が妨害された場合には、システムが停止するような重大な問題が発生してしまう。さらに、PHSの制御チャネルは、図1に示すように、予め周波数が固定的に決められていることから、制御チャネルの周波数に継続的な妨害があっても、その回避のために周波数を変更できないという問題点があった。
【0023】
また、通話チャネルについては、PHSとDECTでは使用する電波の帯域幅や変復調方式、伝送速度が異なり、同じ方式同士であれば効率的な干渉回避が可能であるが、異なる方式では電波の有無しか判断できず、同じ周波数で電波を発しないことが最善の干渉回避方法となってしまい、周波数資源の利用効率が悪くなってしまうという問題点があった。特に占有帯域幅の違いから、図1に示すように、DECTはPHSの6倍の周波数を占有するため、DECTが1個の周波数を使えばPHSは6個の周波数が使用不可能になり、逆にPHSが1個の周波数を使うとDECTはPHSの6倍の周波数が使用不能になってしまう。さらに、デジタルコードレス電話機に割り当てられた周波数のすぐ近くには、図1に示すように、公衆PHSの制御チャネル用の周波数が割り当てられており、PHSやDECT電波の不要発射の強度によっては、公衆PHSの運用を阻害してしまう可能性もあった。
【0024】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、隣接するPHSの制御チャネルまたは通話チャネルによる干渉の有無を判別し、PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができ、かつ、通話チャネルとしての周波数利用効率を高めることができる新しいデジタルコードレス電話機の無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述した課題を解決し、上述した目的を達成するためには、本発明は、無線端末と、その基地局とから成り、前記無線端末と前記基地局との間で、PHSの周波数帯域と重複する周波数帯域にて時分割多重された複数のタイムスロットをフレームとした無線信号を送受信する無線通信システムであって、前記無線端末、若しくは、前記基地局の少なくとも何れか一方は、前記無線通信システムに割り当てられた周波数帯域の信号を受信する受信部と、受信した前記信号から自営PHS固定局の制御チャネルによる干渉であるか否かを判別する判別手段と、前記判別手段にて前記自営PHS固定局の制御チャネルによる干渉があった場合に、当該自営PHSの制御チャネルが使用する周波数帯域と重複する周波数帯域の全てのタイムスロットを使用不可とする制御手段と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、PHSの制御信号とDECTの制御信号を判別し、既存のPHSの通話への妨害を低減可能であって、PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができ、かつ、通話チャネルとしての周波数利用効率を高めることができる新しいデジタルコードレス電話機の無線通信システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】PHS制御信号とDECTスプリアスの帯域の一例を示す図
【図2】本無線通信装置の全体構成の一例を示すブロック図
【図3】公衆PHS基地局との干渉の一例を示す図
【図4】自営PHS固定局との干渉の一例を示す図
【図5】他のDECT親機との干渉の一例を示す図
【図6】周波数スロットテーブルの一例を示す図
【図7】本無線通信装置の処理の一例を示すフローチャート
【図8】本無線通信装置の処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1の発明の無線通信装置は、時分割多重された複数のタイムスロットをフレームとして基地局と通信を行うデジタルコードレス電話機に割り当てられた周波数帯域、および、PHSに割り当てられた周波数帯域を受信し、当該受信した信号の受信電界強度を測定して出力する受信部と、前記受信部により一定時間連続して受信された前記信号の前記受信電界強度の出力を監視し、所定の閾値以上の前記受信電界強度が現れる時間幅および頻度を計測することにより、前記PHSの固定局から発信される前記信号による干渉があるか否かを判別する干渉種別判別手段と、前記干渉種別判別手段によりPHSの固定局から発信される信号による干渉があると判別された場合に、当該干渉を避けるように前記デジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミングを設定する通信スロット設定手段と、前記通信スロット設定手段により割り当てられた前記周波数帯域および前記スロットタイミングにより通信データを送信する送信部とを備えたことを特徴としたものである。この構成により、周波数や時間タイミングで通信チャネルを棲み分け、利用周波数帯域をPHSと共用しても、PHSとの間で電波干渉を引き起こさないようにできるので、PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができ、かつ、通話チャネルとしての周波数利用効率を高めることができるという作用を有する。
【0029】
第2の発明の無線通信装置は、前記の発明の無線通信装置において、前記干渉種別判別手段は、所定の閾値以上の受信電界強度が現れた信号の周波数と、当該信号が受信されたタイムスロットに対応するスロット番号とを監視し、少なくとも300ms以上の期間で監視する中で1スロットまたは2スロット分の時間幅で前記信号が検出され、かつ、その後ほぼ同じ受信電界強度の信号が120ms以上の周期で現れるか、若しくは、少なくとも1回現れた場合は、PHSの制御チャネルによる干渉があると判別することを特徴としたものである。この構成により、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号の周波数とスロット番号とフレーム番号とを監視することにより、所定の閾値以上の受信電界強度が現れる時間幅および頻度を計測することができ、PHSの制御チャネルによる干渉があるか否かを判別することができるという作用を有する。
【0030】
第3の発明の無線通信装置は、前記の発明の無線通信装置において、前記干渉種別判別手段は、前記所定の閾値以上の受信電界強度が現れた信号の周波数と、当該信号が受信されたタイムスロットに対応するスロット番号とを監視し、少なくとも300ms以上の期間で監視する中で1スロットまたは2スロット分の時間幅で前記信号が検出され、かつ、その後ほぼ同じ受信電界強度の信号が5ms周期の頻度で現れる場合はPHSの通話チャネルによる干渉があると判別することを特徴としたものである。この構成により、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号の周波数とスロット番号とフレーム番号とを監視することにより、所定の閾値以上の受信電界強度が現れる時間幅および頻度を計測することができ、PHSの通話チャネルによる干渉があるか否かを判別することができるという作用を有する。
【0031】
第4の発明の無線通信装置は、前記の発明の無線通信装置において、前記通信スロット設定手段は、前記干渉種別判別手段によりPHSの制御チャネルによる干渉があると判別された場合であって、前記受信部により受信された当該PHSの制御チャネルの周波数帯域が自営PHSの制御チャネルを含む周波数帯域である場合、当該自営PHSの制御チャネルの周波数帯域に対応するデジタルコードレス電話機の周波数帯域の全てのタイムスロットを使用不可とするように設定することを特徴としたものである。この構成により、自営PHSの制御チャネルと干渉しない利用可能な周波数帯域およびスロットタイミングを設定することができるという作用を有する。
【0032】
第5の発明の無線通信装置は、前記の発明の無線通信装置において、前記通信スロット設定手段は、前記干渉種別判別手段によりPHSの通話チャネルによる干渉があると判別された場合、当該自営PHSの制御チャネルの周波数帯域に対応するデジタルコードレス電話機の周波数帯域の全てのタイムスロットを使用不可とするように設定することを特徴としたものである。この構成により、PHSの通話チャネルと干渉しない利用可能な周波数帯域およびスロットタイミングを設定することができるという作用を有する。
【0033】
第6の発明の無線通信装置は、前記の発明の無線通信装置において、前記干渉種別判別手段によりPHSの制御チャネルまたは通話チャネルによる干渉があると判別された場合、前記通信スロット設定手段により設定されたデジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミングを前記送信部に出力することにより、他のデジタルコードレス電話機の無線通信装置へ通知するように制御する制御部をさらに備えたことを特徴としたものである。この構成により、例えば、親機であれば登録中の子機に対して、子機であれば登録された親機に対して、PHSの制御チャネルまたは通話チャネルと干渉しない利用可能な周波数帯域およびスロットタイミングを、予め送信部を介してこれから通信を行う他のデジタルコードレス電話機の無線通信装置へ通知することができるという作用を有する。
【0034】
第7の発明の無線通信方法は、デジタルコードレス電話機の無線通信装置において実行される無線通信方法であって、時分割多重された複数のタイムスロットをフレームとして基地局と通信を行うデジタルコードレス電話機に割り当てられた周波数帯域、および、PHSに割り当てられた周波数帯域を受信し、当該受信した信号の受信電界強度を測定して出力する受信ステップと、前記受信ステップにて一定時間受信された信号の受信電界強度の出力を監視し、所定の閾値以上の受信電界強度が現れる時間幅および頻度を計測することによりPHSの固定局から発信される信号による干渉があるか否かを判別する干渉種別判別ステップと、前記干渉種別判別ステップにてPHSの前記固定局から発信される信号による干渉があると判別された場合に、当該干渉を避けるように前記デジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミングを設定する通信スロット設定ステップと、前記通信スロット設定ステップにて割り当てられた前記周波数帯域および前記スロットタイミングにより通信データを送信する送信ステップと、を含むことを特徴としたものである。この構成により、周波数や時間タイミングで通信チャネルを棲み分け、利用周波数帯域をPHSと共用しても、PHSとの間で電波干渉を引き起こさないようにできるので、PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができ、かつ、通話チャネルとしての周波数利用効率を高めることができるという作用を有する。
【0035】
以下、本発明にかかるデジタルコードレス電話機の無線通信装置および無線通信方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
[1.無線通信装置の構成]
まず、本無線通信装置の構成について、再度図1、および、図2から図6を参照して説明する。図2は、本無線通信装置の全体構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0036】
図2において、符号100は無線通信装置であり、符号101は受信部であり、符号102は干渉種別判別手段であり、符号103は通信スロット設定手段であり、符号104は周波数スロットテーブルであり、符号105は制御部であり、符号106は送信部である。
【0037】
図2において、受信部101は、時分割多重された複数のタイムスロットをフレームとして基地局と通信を行うデジタルコードレス電話機に割り当てられた周波数帯域、および、PHSに割り当てられた周波数帯域を受信し、当該受信した信号の受信電界強度を測定して出力する手段である。
【0038】
ここで、デジタルコードレス電話機は、DECT方式であり、デジタルコードレス電話機に割り当てられた周波数帯域とは、図1に示すように、1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域を意味する。また、PHS(例えば、自営PHS、公衆PHSなど)に割り当てられた周波数帯域とは、図1に示すように、1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域の他、1906.1MHzに近接する高調波成分を含む周波数帯域を意味する。PHSの基地局(固定局)が制御信号を送信するのに使用する周波数は、公衆PHSの場合、2012年6月以降は事業者毎に1906.65MHz、1907.15MHz、1907.75MHzのいずれかが固定的に割り当てられる。また自営PHSの場合、制御信号を送信するのに使用する周波数は1898.45MHz、1900.25MHzのいずれかが割り当てられる。
【0039】
図2に戻り、干渉種別判別手段102は、起動時または随時(例えば、通信を開始する前や通信開始を待ち受けている状態のときに)、受信部101により一定時間連続して受信された信号の受信電界強度の出力を監視し、所定の閾値以上の受信電界強度が現れる時間幅および頻度を計測することにより、PHSの固定局から発信される信号による干渉があるか否かを判別する手段である。
【0040】
具体的には、干渉種別判別手段102は、周波数およびタイムスロットを切り替えながら所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号を監視する。所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号が検知された場合に、当該信号の周波数と、当該信号を検知したタイムスロットに対応するスロット番号と、そのときのフレームに対応するフレーム番号とを監視し、それら周波数、スロット番号、フレーム番号をメモリに記録する。少なくとも300ms以上の期間で監視し、例えば、1スロットまたは2スロット分の時間幅で信号が検出され、かつ、その後ほぼ同じ受信電界強度の信号が5ms周期の頻度で現れる場合は、PHSの通話チャネルによる干渉があると判別する。また、その後ほぼ同じ受信電界強度の信号が120ms以上の周期の頻度で現れるか、若しくは、1回のみの頻度で現れた場合は、PHSの制御チャネルによる干渉があると判別する。
【0041】
ここで、通話チャネルとは、制御チャネル上で制御信号の要求/応答により割り当てられる通話に用いるチャネルを意味する。また、制御チャネルとは、基地局と端末間の通話を制御するために当該基地局と当該端末間で制御信号を送受信する際に用いるチャネルを意味する。
【0042】
以下、図3から図5を参照し、干渉種別判別手段102により判別される、公衆PHS基地局との干渉、自営PHS固定局との干渉、および、他のDECT親機との干渉の一例について説明する。図3は、公衆PHS基地局との干渉の一例を示す図である。図4は、自営PHS固定局との干渉の一例を示す図である。図5は、他のDECT親機との干渉の一例を示す図である。
【0043】
図3に示すように、干渉種別判別手段102は、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号の周波数と、当該信号が受信されたタイムスロットに対応するスロット番号(例えば、S4、S5など)と、フレームに対応するフレーム番号(例えば、1フレーム、2フレームなど)を監視し、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号が検知された場合は当該信号の周波数、スロット番号、フレーム番号をメモリに記録する。受信周波数を公衆PHS基地局が制御信号送信に使用する周波数(例えば、1906.65MHz)を含む図1に示す周波数F8に設定したときに、1スロットまたは2スロット分の時間幅(例えば、S4に対応する1スロット分、または、S4とS5に対応する2スロット分の時間幅)で所定の閾値以上の受信電界強度の信号が検出され、その後ほぼ120msの周期でほぼ同じ受信電界強度の信号が定期的に検出された場合は、近くに公衆PHS基地局が存在する可能性が高い。図3に示すように、DECTのフレーム周期はPHSのフレーム周期の整数倍であるから、公衆PHS基地局がフレーム周期の整数倍(5ms×24=120ms)で送信する制御信号は同期/非同期に関わらずDECTの常に同じ位置関係のタイムスロットで検出される。
【0044】
PHS端末は公衆PHS基地局が発する制御信号を受信しなければならないが、近くにDECT親機および子機があるとDECT親機−子機間の通信信号のスプリアス成分がPHS端末の受信に干渉を与える可能性がある。当該DECT親機が前記頻度で現れる信号を図1に示す周波数F8で検知した場合は、当該DECT親機−子機間の通信信号のスプリアス成分がPHS制御信号に干渉を与えると判別する。
【0045】
また、図4に示すように自営PHS固定局との干渉を検知する場合も、干渉種別判別手段102は、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号の周波数と、当該信号が受信されたタイムスロットに対応するスロット番号(例えば、S4、S16など)と、フレームに対応するフレーム番号(例えば、1フレーム、2フレームなど)とを監視し、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号が検知された場合は当該信号の周波数、スロット番号、フレーム番号をメモリに記録する。受信周波数を自営PHS固定局が制御信号送信に使用する周波数(例えば、図1に示すように、1898.45MHzを含む周波数F3または1900.25MHzを含む周波数F4)に設定したときに、1スロットまたは2スロット分の時間幅(例えば、S4に対応する1スロット分、または、S4とS5に対応する2スロット分の時間幅)で所定の閾値以上の受信電界強度の信号が検出され、当該信号が検出されてから125ms以上の間隔であってかつ5ms刻みの任意の時間位置(125ms後、130ms後、または、125msに5msの倍数を足したタイミング)のいずれかで最初の信号とほぼ同レベルの受信電界強度の信号が検出された場合は、近くに自営PHSの固定局が存在する可能性が高い。当該DECT親機が前記頻度で現れる信号を図1に示す周波数F3またはF4で検知した場合は、当該DECT親機−子機間の通信信号が自営PHS制御信号に干渉を与えると判別する。
【0046】
図5は他のDECT親機との干渉を検知する場合を示す。この場合も干渉種別判別手段102は、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号の周波数と、当該信号が受信されたタイムスロットに対応するスロット番号(例えば、S5など)と、フレームに対応するフレーム番号(例えば、1フレーム、2フレームなど)とを監視し、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号が検知された場合は当該信号の周波数、スロット番号、フレーム番号をメモリに記録する。図5(a)に示すように、300ms間監視を続ける中で、あるとき1スロットまたは2スロット分の時間幅(例えば、図5(a)に示すS5に対応する1スロット分の時間幅)で信号が検出され、その後10ms周期(例えば、S5→S5の10ms周期)の頻度で毎回ほぼ同じ受信電界強度の信号が検知される場合に当該信号がDECTの制御信号であると推定され、他のDECT端末の通信チャネルによる干渉があると判別する。
【0047】
他のDECT端末との間で、周期が僅かに異なっている場合でも、図5(b)に示すように信号の監視を続ける中で、あるとき1スロットまたは2スロット分の時間幅(例えば、S4とS5に対応する2スロット分の時間幅)で信号が検出され、その後ほぼ10ms周期の頻度(次のフレームのS5)で毎回ほぼ同じ受信電界強度の信号が検知される場合に当該信号がDECTの制御信号であると推定され、他のDECT端末の通信チャネルによる干渉があると判別する。
【0048】
このように、他のDECTの親機が送信するDECTの信号は、周期一致/周期不一致に関わらず、DECTの常にほぼ同じ位置関係のタイムスロットに影響を与える。なお、DECTの通信チャネルの干渉については、同じDECT方式同士であれば、使用する電波の帯域幅や変復調方式、伝送速度が同じであるため、種々の効率的な干渉回避が可能である。
【0049】
図2に戻り、本デジタルコードレス電話機の通信スロット設定手段103は、干渉種別判別手段102によりPHSの固定局から発信される信号による干渉があると判別された場合に、デジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミングを設定する手段である。
【0050】
具体的にはスロット設定手段103は、干渉種別判別手段102により公衆PHSの制御チャネルによる干渉があると判別された場合、公衆PHSの制御信号と推測される信号が現れたスロット番号(例えば、図3に示すように、S4とS5)、および、当該スロット番号から2.5ms、5ms、または、7.5ms離れたスロット番号(例えば、図3に示すように、+6スロット目のS10とS11、+12スロット目のS16とS17、または、+18スロット目のS22とS23)のタイムスロットを使用不可とする。このように使用する周波数は変えず(すなわち、1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域内)、使用するスロットタイミングを使用不可としたスロット以外(例えば、図3に示すように、スロットS1〜S3、S6〜S9、S12〜S15、S18〜S21、S24など)に設定する。
【0051】
また通信スロット設定手段103は、干渉種別判別手段102により自営PHSの制御チャネルによる干渉があると判別された場合、図4に示すように、自営PHSの制御チャネルの周波数帯域に対応するデジタルコードレス電話機の周波数帯域の全てのタイムスロット(すなわち、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数の全タイムスロットS1〜S24)を使用不可とする。すなわち、この場合にデジタルコードレス電話機の通信に利用する周波数帯域およびスロットタイミングとして、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数を除く1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域内の周波数の全スロットS1〜S24を設定する。
【0052】
また、通信スロット設定手段103は、干渉種別判別手段102によりPHSの通話チャネルによる干渉があると判別された場合、図4に示すように、自営PHSの制御チャネルの周波数に対応するデジタルコードレス電話機の周波数帯域の全てのタイムスロット(すなわち、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数の全タイムスロットS1〜S24)を使用不可とするように、デジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミング(すなわち、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数を除く1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域内の周波数の全スロットS1〜S24)を設定する。
【0053】
また、周波数スロットテーブル104は、通信スロット設定手段103により設定されたデジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミングを示す設定内容を記録する手段である。
【0054】
ここで、図6を参照し、周波数スロットテーブル104の一例について説明する。図6に示すように、周波数スロットテーブル104は、モニタ周波数毎に、フレーム番号(例えば、300msの一定時間計測する場合、DECTでは1フレーム10msであるため、フレーム番号は1〜30となる)と、スロット番号(例えば、DECTでは1フレームに24個のタイムスロットを含むので、スロット番号はS1〜24となる)とを対応付けて記憶装置に記憶されている。また、周波数スロットテーブル104は、干渉種別判別手段102が、受信部101により一定時間連続して受信された信号の受信電界強度の出力を監視し、所定の閾値以上の受信電界強度が現れる時間幅および頻度を計測する際にも用いられる。
【0055】
図2に戻り、制御部105は、無線通信装置100の全体を制御する手段であり、また、干渉種別判別手段102によりPHSの制御チャネルまたは通話チャネルによる干渉があると判別された場合、通信スロット設定手段103により設定されたデジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミング(すなわち、周波数スロットテーブル104に記録された設定内容)を送信部106に出力することにより、他のデジタルコードレス電話機の無線通信装置へ通知するように制御する手段である。
【0056】
また、送信部106は、通信スロット設定手段103により割り当てられた周波数帯域およびスロットタイミングにより通信データを送信する手段である。
【0057】
以上で、本無線通信装置の全体構成の一例の説明を終える。
[2.無線通信装置の処理]
次に、このように構成された本実施の形態における無線通信装置における処理の一例について、以下に、再度図1、図6、図7および図8を参照して詳細に説明する。図7および図8は、本無線通信装置の処理に一例を示すフローチャートであり、図7において前半の処理を示し、図8において後半の処理を示している。
【0058】
図7に示すように、まず、受信部101は、起動時または随時(例えば、通信を開始する前や通信開始を待ち受けている状態のときに)、干渉があるか否かを判別する処理を実行するため、受信周波数を図1に示す周波数チャネルF1〜F8に設定する(ステップSA−1)。
【0059】
ここで、図1に示すように、DECTのため割り当てられた周波数には、1895.616MHzを中心とした周波数チャネルF1、1897.344MHzを中心とした周波数チャネルF2、1899.072MHzを中心とした周波数チャネルF3、1900.800MHzを中心とした周波数チャネルF4、1902.528MHzを中心とした周波数チャネルF5がある。また図1では、DECTでこれら周波数を使用した場合にスプリアスが生じ得る周波数チャネルとして、F5の中心周波数1902.528MHzから1.728MHzの間隔毎に中心を持つ複数の周波数チャネルをF6、F7、F8と定義している。判別対象の周波数は、通信に使用する周波数チャネルF1〜F5の他に、スプリアスが生じ得る周波数チャネルF6、F7、F8を加えた範囲とする。なお、自営PHSの制御信号が1898.450MHzで発信されている場合は周波数チャネルF3をモニタしたときに受信可能であり、1900.250MHzで発信されている場合は周波数チャネルF4をモニタしたときに受信可能である。また公衆PHSの制御信号が1906.65MHzで発信されている場合は周波数チャネルF8をモニタしたときに受信可能である。
【0060】
そして、制御部105は、モニタ時間(例えば、300ms以上の一定時間)を設定し(ステップSA−2)、図6に示すような周波数スロットテーブル104内のフレーム番号とスロット番号を初期化する(ステップSA−3)。
【0061】
そして、受信部101は、ステップSA−1において設定されたモニタ周波数で、ステップSA−2において設定されたモニタ時間の間、指定されたスロット(例えば、S1〜24の全スロットのうちのスロットS1)を用いて信号を受信し、当該受信した信号の受信電界強度を測定して出力する(ステップSA−4)。
【0062】
そして、干渉種別判別手段102は、ステップSA−4において出力された受信電界強度を所定の閾値以上であるか否かを判定し(ステップSA−5)、ステップSA−4において指定されたスロット(例えば、スロットS1)にて所定の閾値以上の受信電界強度の信号が検出された場合(ステップSA−5:Yes)、ステップSA−3において初期化された周波数スロットテーブル104に、所定の閾値以上の受信電界強度が現れたフレーム番号およびスロット番号を、モニタ周波数毎に記録する(ステップSA−6)。一方、所定の閾値以上の受信電界強度の信号が検出されなかった場合(ステップSA−5:No)、ステップSA−7の処理へ進む。
【0063】
そして、制御部105は、受信部101にて、全スロット(例えば、S1〜24の全スロット)にて受信が終了したか否かを判定し(ステップSA−7)、全スロットにて受信が終了していないと判定された場合(ステップSA−7:No)、スロット番号を更新(例えば、スロットS1からスロットS2へ更新)し(ステップSA−8)、ステップSA−4の処理に戻る。一方、全スロットにて受信が終了したと判定された場合(例えば、スロットS24にて受信が終了した場合)(ステップSA−7:Yes)、ステップSA−9の処理へ進む。
【0064】
そして、制御部105は、受信部101にて、モニタ時間が終了したか否か(例えば、300ms以上の一定時間が経過したか否か)を判定し(ステップSA−9)、モニタ時間が終了していないと判定された場合(ステップSA−9:No)、フレーム番号を更新(例えば、1フレームから2フレームへ更新)し(ステップSA−10)、ステップSA−4の処理に戻る。一方、モニタ時間が終了したと判定された場合(ステップSA−9:Yes)、図8のステップSA−11の処理へ進む。
【0065】
このように、制御部105は、受信部101にて、電波妨害を検知するため、受信周波数チャネルをDECTシステムの使用帯域内(すなわち、1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域内)の周波数チャネル、または、使用帯域から外れた周波数帯上(すなわち、1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域の他、1906.1MHzに近接する高調波成分を含む周波数帯域上)の周波数チャネルの中で電波妨害の可能性がある周波数(例えば、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数や、1906.650MHz、1907.150MHz、1907.750MHzのうちいずれかの周波数)を含む値に設定するとともに受信動作をさせ、同じ周波数チャネルで少なくとも300msの一定時間、自身のDECTシステムの全スロットを使って当該周波数チャネルでの受信動作を実施する。そして、干渉種別判別手段102は、受信部102にて所定の閾値以上の受信電界強度の信号が検知されたフレーム番号とスロットの番号をモニタ周波数毎に周波数スロットテーブル104に記録する。例えば、干渉種別判別手段102は、あるスロット(例えば、最初のスロット)で信号を検知した場合は当該スロットからほぼ5ms毎の時間位置で隣り合う二つのスロットのいずれかで信号が検知できるか否かを判別して信号が検知できたスロットの番号を記録する。
【0066】
すなわち、受信部101は、時分割多重された複数のタイムスロットをフレームとして基地局と通信を行うデジタルコードレス電話機に割り当てられた周波数帯域(すなわち、1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域)、および、PHSに割り当てられた周波数帯域(すなわち、1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域の他、1906.1MHzに近接する高調波成分を含む周波数帯域)を受信し、当該受信した信号の受信電界強度を測定して出力する。そして、干渉種別判別手段102は、起動時または随時(例えば、通信を開始する前や通信開始を待ち受けている状態のときに)、受信部101により一定時間連続して受信された信号の受信電界強度の出力を監視し、所定の閾値以上の受信電界強度が現れる時間幅および頻度を計測する。
【0067】
続いて、図8に示すように、干渉種別判別手段102は、ステップSA−6において周波数スロットテーブル104に記録された、所定の閾値以上の受信電界強度の信号が検知されたフレーム番号とスロットの番号のチェックを開始する(ステップSA−11)。すなわち、干渉種別判別手段102は、図7のステップSA−1〜ステップSA−10において計測され周波数スロットテーブル104に記録された、所定の閾値以上の受信電界強度が現れる時間幅および頻度に基づいて、PHSの固定局から発信される信号による干渉があるか否かの判別を開始する。
【0068】
まず、干渉種別判別手段102は、PHS通話チャネルによる干渉があるか否かを判別する(ステップSA−12)。
【0069】
具体的には、ステップSA−12において、干渉種別判別手段102は、ステップSA−6において周波数スロットテーブル104に記録された、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号の周波数と、タイムスロットに対応するスロット番号(例えば、S4、S16など)と、フレームに対応するフレーム番号(例えば、1フレーム、2フレームなど)と、を監視し、少なくとも300ms以上の一定時間が経過した時点で、1スロットまたは2スロット分の時間幅(例えば、S4に対応する1スロット分、または、S4およびS5に対応する2スロット分の時間幅)で信号が検出され、かつ、その後ほぼ同じ受信電界強度の信号が5ms周期(例えば、S4→S16→S4の5ms周期)の頻度で現れる場合は、PHSの通話チャネルによる干渉があると判別する。
【0070】
ここで、ステップSA−12において、干渉種別判別手段102は、ステップSA−6において周波数スロットテーブル104に記録された、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号の周波数と、タイムスロットに対応するスロット番号(例えば、S5、S6など)と、フレームに対応するフレーム番号(例えば、1フレーム、2フレームなど)と、を監視し、少なくとも300ms以上の一定時間が経過した時点で、1スロットまたは2スロット分の時間幅(例えば、S5に対応する1スロット分、または、S4およびS5に対応する2スロット分の時間幅)で信号が検出され、かつ、その後ほぼ同じ受信電界強度の信号が10ms周期(例えば、S5→S5の10ms周期)の頻度で現れる場合は、DECTの通信チャネルによる干渉があると判別してもよい。
【0071】
そして、干渉種別判別手段102は、ステップSA−12においてPHS通話チャネルによる干渉がないと判別された場合(ステップSA−12:No)、次に、PHS制御チャネルによる干渉があるか否かを判別する(ステップSA−13)。
【0072】
具体的には、ステップSA−13において、干渉種別判別手段102は、ステップSA−6において周波数スロットテーブル104に記録された、所定の閾値以上の受信電界強度を持った信号の周波数と、タイムスロットに対応するスロット番号(例えば、S4、S16など)と、フレームに対応するフレーム番号(例えば、1フレーム、2フレームなど)と、を監視し、少なくとも300ms以上の一定時間が経過した時点で、1スロットまたは2スロット分の時間幅(例えば、S4に対応する1スロット分、または、S4およびS5に対応する2スロット分の時間幅)で信号が検出され、かつ、その後ほぼ同じ受信電界強度の信号が120ms以上の周期(例えば、公衆PHSは120ms周期、自営PHSは125ms〜300msの間隔で5ms刻みの任意周期)の頻度で現れるか、若しくは、1回のみ(例えば、300msの間に、240ms経過した時点で1回のみ)の頻度で現れた場合は、PHSの制御チャネルによる干渉があると判別する。
【0073】
一方、ステップSA−12においてPHS通話チャネルによる干渉があると判別された場合(ステップSA−12:Yes)、ステップSA−15の処理へ進む。
【0074】
そして、干渉種別判別手段102は、ステップSA−13においてPHS制御チャネルによる干渉があると判別された場合(ステップSA−13:Yes)、さらに、受信部101により受信された当該PHSの制御チャネルの周波数帯域が、自営PHSの制御チャネルを含む周波数帯域(すなわち、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数を含む周波数帯域)であるか、公衆PHSの制御チャネルを含む周波数帯域(すなわち、1906.650MHz、1907.150MHz、1907.750MHzのうちいずれかの周波数を含む周波数帯域)であるかを判定することにより、PHS制御チャネルのうち自営PHSの制御チャネルによる干渉か、または、公衆PHSの制御チャネルによる干渉かを判別する(ステップSA−14)。
【0075】
一方、ステップSA−13においてPHS制御チャネルによる干渉がないと判別された場合(例えば、DECTの通信チャネルによる干渉である場合)(ステップSA−13:No)、ステップSA−17の処理へ進む。なお、DECTの通信チャネルの干渉については、同じDECT方式同士であれば、使用する電波の帯域幅や変復調方式、伝送速度が同じであるため、種々の効率的な干渉回避が可能である。
【0076】
このように、干渉種別判別手段102は、周波数スロットテーブル104に記録された結果に基づいて、10ms毎の周期で毎回ほぼ同じ電界強度の信号が検知されかつ当該信号が検知された10ms周期の中間に位置するスロットでは同程度の電界強度の信号が検知されない場合に、DECTの制御信号であると判定する。また、干渉種別判別手段102は、最初に信号を検知したスロットから125ms経過しない間に同程度の電界強度の信号が検知されず、かつ、最初に信号を検知したスロットから125ms以上経過した時間位置のスロットで同程度の電界強度の信号が検知された場合であって、当該信号が検知された周波数チャネルがDECTシステムの使用帯域内であれば、当該信号が自営PHSの制御信号であると判定する。また、干渉種別判別手段102は、5ms間隔毎に隣り合う二つのスロットのいずれかで毎回ほぼ同程度の電界強度の信号が検知された場合であって、当該信号が検知された周波数チャネルがDECTシステムの使用帯域外であれば、公衆PHSの制御信号であると判定する。
【0077】
続いて、以下のステップSA−14〜ステップSA−16において、通信スロット設定手段103は、ステップSA−12およびステップSA−13において干渉種別判別手段102によりPHSの固定局から発信される信号による干渉があると判別された場合に(ステップSA−12:Yes、かつ、ステップSA−13:Yes)、当該干渉を避けるようにデジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミングを設定する。ここで、通信スロット設定手段103により設定されたデジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミングを示す設定内容は、周波数スロットテーブル104に記録される。
【0078】
具体的には、通信スロット設定手段103は、ステップSA−13において干渉種別判別手段102によりPHSの制御チャネルによる干渉があると判別された場合であって(ステップSA−13:Yes)、受信部101により受信された当該PHSの制御チャネルの周波数帯域が自営PHSの制御チャネルを含む周波数帯域(すなわち、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数を含む周波数帯域)である場合(ステップSA−14:自営)、当該自営PHSの制御チャネルの周波数帯域に対応するデジタルコードレス電話機の周波数帯域の全てのタイムスロット(すなわち、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数の全タイムスロットS1〜S24)を使用不可とするように、具体的には、通信スロット設定手段103は、ステップSA−13において干渉種別判別手段102によりPHSの制御チャネルによる干渉があると判別された場合であって(ステップSA−13:Yes)、そのときに受信部101により受信された信号の周波数が自営PHSの制御信号に使用する周波数(1898.450MHz、1900.250MHzの周波数)を含む周波数帯域すなわちF3またはF4である場合(ステップSA−14:自営)、当該自営PHS制御信号周波数に対応するデジタルコードレス電話機の周波数帯域F3およびF4の全てのタイムスロット(S1〜S24)を使用不可とするように、デジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミングを設定する。すなわち周波数帯域F3およびF4を除く各周波数帯域(F1,F2,F5)の全スロットS1〜S24)を使用するように設定する(ステップSA−15)。その後、ステップSA−17の処理へ進む。
【0079】
ここで、ステップSA−15において、通信スロット設定手段103は、ステップSA−12において干渉種別判別手段102によりPHS通話チャネルによる干渉があると判別された場合(ステップSA−12:Yes)も同様に、当該自営PHSの制御チャネルの周波数帯域に対応するデジタルコードレス電話機の周波数帯域の全てのタイムスロット(すなわち、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数の全タイムスロットS1〜S24)を使用不可とするように、デジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミング(すなわち、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数を除く1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域内の周波数の全スロットS1〜S24)を設定する。その後、ステップSA−17の処理へ進む。
【0080】
そして、通信スロット設定手段103は、ステップSA−13において干渉種別判別手段102によりPHSの制御チャネルによる干渉があると判別された場合であって(ステップSA−13:Yes)、そのときに受信された信号の周波数が公衆PHS基地局の制御信号に使用する周波数(例えば、1906.65MHz)を含む周波数帯域F8である場合(ステップSA−14:公衆)、当該公衆PHSの制御チャネルの周波数帯域に対応する該デジタルコードレス電話機で使用する全周波数帯域において、該信号が現れたスロット番号(例えば、S4とS5)、および、当該スロット番号から2.5ms、5ms、または、7.5ms離れたスロット番号(例えば、+6スロット目のS10とS11、+12スロット目のS16とS17、または、+18スロット目のS22とS23)のタイムスロットを使用不可とするように、デジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミング(例えば、1893.5MHz〜1906.1MHzの周波数帯域内の周波数のスロットS1〜S3、S6〜S9、S12〜S15、S18〜S21、S24など)を設定する(ステップSA−16)。その後、ステップSA−17の処理へ進む。
【0081】
このように、通信スロット設定手段103は、DECTシステムの使用帯域内の周波数チャネルで自営PHSの制御信号が検出された場合、複数の周波数チャネルのうち、当該制御信号が検出された周波数チャネルを不使用にするように、周波数スロットテーブル104に記録する。また、通信スロット設定手段103は、DECTシステムの使用帯域外の周波数チャネルで公衆PHSの制御信号が検出された場合、DECTシステムのスロットの中で当該制御信号が検出されたスロットを不使用にするように、周波数スロットテーブル104に記録する。
【0082】
続いて、制御部105は、受信部101にて、全周波数について上述の処理が終了したか否かを判定し(ステップSA−17)、全周波数について終了していないと判定された場合(ステップSA−17:No)、図7に戻り、モニタ周波数の更新し(ステップSA−18)、ステップSA−2の処理に戻る。一方、全周波数について終了したと判定された場合(ステップSA−19:Yes)、図8のステップSA−19の処理へ進む。
【0083】
そして、制御部105は、干渉種別判別手段102によりPHSの制御チャネルまたは通話チャネルによる干渉があると判別された場合(ステップSA−12:Yes、または、ステップSA−13:Yes)、ステップSA−14〜ステップSA−16において通信スロット設定手段103により設定されたデジタルコードレス電話機が使用する周波数帯域およびスロットタイミング(すなわち、周波数スロットテーブル104に記録された設定内容)を送信部106に出力することにより、他のデジタルコードレス電話機の無線通信装置へ通知するように制御する(ステップSA−19)。
【0084】
上述の処理により、送信部106は、通信スロット設定手段103によりデジタルコードレス電話機に割り当てられた周波数帯域およびスロットタイミングにより通信データを送信することができる。
【0085】
以上で、実施の形態における無線通信装置における処理の一例の説明を終える。
[3.本実施の形態のまとめ]
以上、本実施の形態の構成や処理などについて詳細に説明したが、本実施の形態によれば、本無線通信装置100は、起動時または随時(例えば、通信を開始する前や通信開始を待ち受けている状態のときに)、電波妨害の検知処理を行う干渉種別判別手段102により自営PHSまたは公衆PHSの制御信号を的確に判定し、データの送信に用いる複数の周波数チャネルおよびタイムスロットの中で当該制御信号に対応する周波数チャネルおよびタイムスロットを不使用とすることでPHSシステムの制御信号との衝突を回避することができ、PHSシステムとの共存を可能にすることができる。例えば、本無線通信装置をDECT方式のデジタルコードレス電話機にて実施した場合、周囲にPHS方式のデジタルコードレス電話機が存在しても、DECT方式の電話機が発信PHSの制御信号に対して電波干渉を引き起こさないようにできる。
【0086】
また、本実施の形態によれば、本無線通信装置100は、干渉種別判別手段102により、干渉源の種別を自営PHSの制御チャネル、公衆PHSの制御チャネル、PHSの通信チャネル、DECTの通信チャネルのいずれかを判定でき、さらに、通信スロット設定手段103と周波数スロットテーブル104により、干渉源種別に応じた周波数とスロットの使用制限を行って、周波数や時間タイミングで通信チャネルを棲み分けることができるため、利用周波数帯域をPHSと共用しても、PHSとの間で電波干渉を引き起こすことのない無線通信装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明にかかるデジタルコードレス電話機の無線通信システムは、無線通信分野など産業上の様々な分野において有用であり、特に、PHSシステムとDECTシステム間の干渉回避に適している。
【符号の説明】
【0088】
100 無線通信装置
101 受信部
102 干渉種別判別手段
103 通信スロット設定手段
104 周波数スロットテーブル
105 制御部
106 送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末と、その基地局とから成り、前記無線端末と前記基地局との間で、PHSの周波数帯域と重複する周波数帯域にて時分割多重された複数のタイムスロットをフレームとした無線信号を送受信する無線通信システムであって、
前記無線端末、若しくは、前記基地局の少なくとも何れか一方は、
前記無線通信システムに割り当てられた周波数帯域の信号を受信する受信部と、
受信した前記信号から自営PHS固定局の制御チャネルによる干渉であるか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段にて前記自営PHS固定局の制御チャネルによる干渉があった場合に、当該自営PHSの制御チャネルが使用する周波数帯域と重複する周波数帯域の全てのタイムスロットを使用不可とする制御手段と、
を具備することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記判別手段は、
前記自営PHS固定局の制御チャネルが使用する周波数帯域と重複する周波数帯域にて所定の閾値以上の受信電界強度が現れた信号を監視し、当該信号が受信されたタイムスロットに対応するスロット番号を監視し、少なくとも300ms以上の期間で監視する中で1スロットまたは2スロット分の時間幅で前記信号が検出され、かつ、その後ほぼ同じ受信電界強度の信号が120ms以上の周期で現れるか、若しくは、少なくとも1回現れた場合は、前記自営PHS固定局の制御チャネルによる干渉があると判別すること、
を特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局は、前記自営PHS固定局の制御チャネルによる干渉があった場合に、前記自営PHS固定局の制御チャネルが使用する周波数帯域の全てのタイムスロットが使用不可であること示す情報を送信すること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記基地局は、当該無線通信装置が使用可能な周波数帯域とタイムスロット情報を送信すること、
を特徴とする請求項1から請求項3の何れか一つに記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線端末はコードレス電話の子機であって、前記基地局はコードレス電話機の親機である、
請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線端末と前記基地局間の使用する無線方式は、PHSの周波数帯域と重複した周波数帯域を使用したDECT方式に準拠した無線方式であること、
を特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−59134(P2013−59134A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−287876(P2012−287876)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2012−242970(P2012−242970)の分割
【原出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】