説明

無線通信システム

【課題】システム内干渉、システム間干渉、無線LANからの干渉を回避し、高品質な無線通信システムを提供する。
【解決手段】APM401が、特定の周波数帯域を分割したチャネルに順に番号を付与し、当該番号のビットリバース順に選択して周波数グループに分割し、当該周波数グループ毎に小ホッピングテーブルを作成し、当該複数の小ホッピングテーブルを用いてホッピングテーブルを生成し、APが、STAに対してそのホッピングテーブルを参照して周波数ホッピングによるチャネルアクセスを行う無線通信システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に、移動局と基地局との無線通信を、システム内の干渉、システム間の干渉、無線LAN(Local Area Network)システムからの干渉などの影響が少ない周波数チャネルを選択する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
近年、ライセンス不要で利用可能な帯域である2.4GHz帯を用いた無線通信システムの利用が拡大している。
2.4GHz帯は、ISM(Industry-Science-Medical)帯と呼ばれ、IEEE802.11系の無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)などといった無線規格に準拠するシステムの他、様々な産業機器、医療機器にも用いられている。
【0003】
この他にも、2.4GHz帯を用いた無線通信システムのひとつとして、鉄道用信号システムであるCBTC(Communication Based Train Control)システムがある。
鉄道用信号システムは、システムにどのような故障が生じたとしても安全側に制御するフェイルセーフという考えに基づいて構成され、列車の安全な運行を約束する要となるシステムである。
鉄道用信号システムは、鉄道輸送の中で重要な機能を担っていることから、システムの停止による輸送障害が社会に与える影響はきわめて大きい。このため、高信頼性(高稼動率)を保障する無線通信システムが必要である。
【0004】
しかしながら、2.4GHz帯を用いる無線システムにおいて高信頼通信を実現するためには、以下の4つの干渉を特に考慮する必要がある。
第1に、無線LAN(WLAN)等から受ける干渉(被干渉)、第2に、WLAN等の他のシステムへ与える干渉(与干渉)、第3に、複数の基地局(AP)が同じ周波数チャネルを用いることによる干渉(システム内干渉)、第4に、例えば、並行して走る複数の軌道(線路)がある場合など、近接する複数のCBTCシステム間で発生する干渉(システム間干渉)がある。
【0005】
特に第1の被干渉については、近年の無線LANの普及を考えると、多くの干渉が発生すると考えられ、特に対策を行う必要がある。
以上のことから、干渉の多い2.4GHz帯を用いるCBTCシステムにおいて高信頼通信を実現することは容易ではない。
【0006】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2009−225135号公報「列車無線通信システムにおける周波数チャネルの選択方法および車上無線端末」(株式会社日立製作所)[特許文献1]、特開2009−171078号公報「無線通信システム、基地局及び周波数チャネル選択方法」(株式会社日立製作所)[特許文献2]がある。
【0007】
特許文献1には、列車編成の前後に設置された移動局(STA:Station)を用い、列車の軌道に沿って設置された基地局(AP:Access Point)との通信を行うことが記載されている。
STAは、APからのパイロット信号を元にチャネルサーチを行うことで、ハンドオーバーし、シームレスな通信を実現する。
【0008】
APとSTAの間の通信は、2回の繰り返し通信(連送)を行うこととし、これにより時間ダイバーシチを実現している。また、AP毎に異なる周波数チャネルを利用し、さらに、送信を行うごとに周波数チャネルを変更する周波数ホッピングを行うことで、周波数ダイバーシチも実現している。
さらに、同一車両編成のSTAは、同一の列車制御情報を送ることとし、これにより空間ダイバーシチを実現する。以上の、時間、周波数、空間のダイバーシチによって高信頼通信を実現している。
【0009】
特許文献2は、特許文献1に基づき、周波数ホッピングの方法について提案を行ったものである。
特許文献2では、周波数ホッピングに第1と第2のホッピングテーブルを用いる。基本的には第1のホッピングテーブルに従って行われるが、APの集中制御装置であるAPマスタ(APM)から指示された位相に対応する周波数チャネルの回線品質が悪い場合、そのAPは第2のホッピングテーブルに従って利用する周波数チャネルを決定する。これにより、干渉が多く回線品質の悪い周波数チャネルの利用を回避する。
但し、次回の送信時は再び第1のホッピングテーブルを用いることとし、第2のホッピングテーブルを用いるかどうかは改めて回線品質を元に決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−225135号公報
【特許文献2】特開2009−171078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の無線通信振システムでは、特に特許文献2の周波数ホッピング方式では、以下の三つの問題点がある。
[第1の問題点]
第1の問題点として、特許文献2では回線品質が悪い場合に必ず第2の周波数テーブルを用いることとしているが、実際には変更先の周波数チャネルの回線品質が更に悪い可能性があるため、回線品質の良い方を用いるべきである。しかしながら、回線品質の良い相手を選択できないため、回線品質を良好にすることができないという問題点があった。
【0012】
[第2の問題点]
第2の問題点として、特許文献2で例示されているテーブルでは、無線LANへの干渉を十分に考慮していないため、テーブルの変更によって隣接するAP同士が周波数の近いチャネルを使用してしまうケースがあり、与干渉が生じるという問題点があった。
また、この場合には、同時に他の無線LANからの干渉を受ける可能性があり、被干渉が生じるという問題点もあった。
このため、周波数ダイバーシチが十分得られず、反って特性が劣化する可能性がある。従って、周波数チャネルを変更した場合でも、隣接するAPの利用するチャネルが十分離れていることを保障する必要がある。
【0013】
[第3の問題点]
第3の問題点として、特許文献2では、システム間干渉を考慮していないため、複数のCBTCシステムが近接する場合には、システム間干渉が発生する可能性があるという問題点があった。
【0014】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、システム内干渉、システム間干渉、無線LANからの干渉を回避し、高品質な無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の基地局と、基地局の通信エリア内を移動する移動局と、基地局を制御する基地局制御装置とを備える無線通信システムであって、基地局と移動局が、同一の情報を複数回繰り返し送信する連送を行うものであり、基地局が、ホッピングパターンを生成するためのホッピングテーブルを記憶部に記憶し、当該ホッピングテーブルを用いて移動局に対して周波数ホッピングによるチャネルアクセスを行うものであり、基地局制御装置が、特定の周波数帯域を分割したチャネルに順に番号を付与し、当該番号のビットリバース順に選択して周波数グループに分割し、当該周波数グループ毎に小ホッピングテーブルを作成し、当該複数の小ホッピングテーブルを用いてホッピングテーブルを生成し、当該ホッピングテーブルを基地局に送信することを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、無線通信システムが自システムのみで、近接する他のシステムがない場合には、基地局制御装置が、複数の小ホッピングテーブルを連結してホッピングテーブルを生成することを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、無線通信システムが複数近接して存在し、位相が同期している場合には、基地局制御装置が、複数の小ホッピングテーブルを巡回シフトさせて複数のホッピングテーブルを生成し、複数のシステムで異なるホッピングテーブルを用いることを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、無線通信システムが2つ近接して存在し、位相が同期していない場合には、基地局制御装置が、複数の小ホッピングテーブルの中から半数の小ホッピングテーブルを連結して第1のホッピングテーブルを生成し、残り半数のホッピングテーブルを連結して第2のホッピングテーブルを生成し、2つのシステムで異なるホッピングテーブルを用いることを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、無線通信システムが3以上近接して存在し、位相が同期していない場合には、基地局制御装置が、複数の小ホッピングテーブルの中から異なる小ホッピングテーブルを選択して3以上の複数のホッピングテーブルを生成し、3以上の複数のシステムで異なるホッピングテーブルを用いることを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局が、記憶するホッピングテーブルを参照し、回線品質の情報に基づいて周波数チャネルを選択することを特徴とする。
【0021】
本発明は、基地局が周波数ホッピングによるチャネルアクセスを行う無線通信システムで用いられる移動局であって、2つのスロットで同一の情報を2回繰り返して送信する連送によりスロット毎に周波数ホッピングされた信号を受信し、記憶部に記憶するホッピングテーブルに従った周波数チャネルで基地局に自情報を送信するものであり、当該ホッピングテーブルが、特定の周波数帯域を分割したチャネルに順に番号を付与し、当該番号のビットリバース順に選択して周波数グループに分割し、当該周波数グループ毎に小ホッピングテーブルを作成し、当該複数の小ホッピングテーブルを用いて生成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基地局と移動局が、同一の情報を複数回繰り返し送信する連送を行うものであり、基地局が、ホッピングパターンを生成するためのホッピングテーブルを記憶部に記憶し、当該ホッピングテーブルを用いて移動局に対して周波数ホッピングによるチャネルアクセスを行うものであり、基地局制御装置が、特定の周波数帯域を分割したチャネルに順に番号を付与し、当該番号のビットリバース順に選択して周波数グループに分割し、当該周波数グループ毎に小ホッピングテーブルを作成し、当該複数の小ホッピングテーブルを用いてホッピングテーブルを生成し、当該ホッピングテーブルを基地局に送信する無線通信システムとしているので、干渉を回避し、高品質な無線通信を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの概略図である。
【図2】AP及びSTAの無線通信装置の構成ブロック図である。
【図3】CBTCシステムのチャネル割り当てを示す図である。
【図4】CBTCシステムの動作タイミングチャートである。
【図5】ビットリバースマップを示す図である。
【図6】ビットリバース順による周波数グループの分類処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムは、基地局と移動局は、同一の情報を複数回繰り返し送信する連送を行い、基地局が、ホッピングパターンを生成するためのホッピングテーブルを用いて移動局に対して周波数ホッピングによるチャネルアクセスを行い、基地局制御装置が、特定の周波数帯域を分割したチャネルに順に番号を付与し、当該番号のビットリバース順に選択して周波数グループに分割し、当該周波数グループ毎に小ホッピングテーブルを作成し、当該複数の小ホッピングテーブルを用いてホッピングテーブルを生成し、当該ホッピングテーブルを基地局に送信するものであり、システム内干渉、システム間干渉、無線LANからの干渉を回避し、高品質な無線通信を実現できるものである。
【0025】
次に、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの特徴を説明する。
2.4GHz帯に設けられた複数の周波数チャネルを用いるCBTCシステムにおいて、まず、任意の2チャネルが20MHz以上離れるような組み合わせとなるように周波数グループに分割する。
尚、20MHz以上離れる組み合わせにするのは、IEEE802.11系の無線LANの帯域幅を考慮し、グループ内のいずれかのチャネルを選択することで干渉を回避するためである。従って、IEEE802.11系以外の無線システムに注目して干渉回避を行う場合は、該無線システムの帯域幅の分だけ周波数の離れた組み合わせを作成する。
【0026】
そして、周波数グループごとに、以下の4つの特徴を持つ小ホッピングテーブルを作成する。
[第1の特徴]
ホッピングテーブルの各要素には複数のチャネルを割当てられている。
但し、割当てられている複数の周波数チャネルのうち、任意の2チャネルは必ず20MHz以上離れている。尚、20MHz以上離れていることを特徴とするのは、IEEE802.11系の無線LANの帯域幅を考慮し、干渉を回避するためである。従って、IEEE802.11系以外の無線システムに注目して干渉回避を行う場合は、該無線システムの帯域幅を周波数間隔とする。
【0027】
[第2の特徴]
各周波数チャネルは、各ホッピングパターンにつき1回だけ割当てられている。
[第3の特徴]
ホッピングパターンのある位相と次の位相からそれぞれ任意の周波数チャネルを選択した場合、それらの周波数チャネルは必ず20MHz以上離れている。尚、20MHz以上離れていることを特徴とするのは、IEEE802.11系の無線LANの帯域幅を考慮し、干渉を回避するためである。従って、IEEE802.11系以外の無線システムに注目して干渉回避を行う場合は、該無線システムの帯域幅を周波数間隔とする。
【0028】
[第4の特徴]
隣接するAP(基地局)に割当てられるホッピングパターンの任意の位相において、それぞれのパターンから任意の周波数チャネルを選択した場合、必ず20MHz以上離れている。尚、20MHz以上離れていることを特徴とするのは、IEEE802.11系の無線LANの帯域幅を考慮し、干渉を回避するためである。従って、IEEE802.11系以外の無線システムに注目して干渉回避を行う場合は、該無線システムの帯域幅を周波数間隔とする。
【0029】
グループ毎に作られた以上のような特徴を持つ小ホッピングテーブルを位相方向に並べることで、ひとつのホッピングテーブルとする。
このとき、近接する複数のシステムが存在し、これらの位相が同期している場合、全てのシステムが全ての周波数グループを使用することとし、各システム間ではグループ単位で位相を巡回シフトした関係を持つこととする。近接する複数のシステムが存在し、これらの位相が同期していない場合、周波数グループを各システムに等しく分配し、同一の周波数グループを用いないようにする。
【0030】
このようにして作られたホッピングテーブルを基に各APが用いるホッピングパターンを割り当てる。
各APが使用する周波数チャネルは、APM(APマスタ)から指示される位相に従って行われる。各APは、APMに指示された位相に対応する複数の周波数チャネルの中から最も回線品質の良い周波数チャネルを用いる。
【0031】
また、同程度の回線品質であった場合には最も利用履歴の少ない周波数チャネルを用いても良い。
回線品質の判定基準は、ビット誤り率の履歴や、パケット誤り率の履歴や、SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio:信号対干渉雑音電力比)の履歴やキャリアセンスによる瞬時干渉電力などであっても良い。
【0032】
更に、2つのスロットを用いて同一情報の通信を2回繰り返す連送において、1回も通信に成功しなかった場合には、次の連送では、最後の連送で用いた周波数チャネルと最も周波数間隔の大きい周波数チャネルを用いても良い。
あるいは、ある連送において、1回も通信に成功しなかった場合には、次の連送では、最後に使用した周波数チャネルと20MHz以上離れたチャネルを優先して用いても良い。
【0033】
[無線通信システム:図1]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムについて図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの概略図である。
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、図1に示すように、軌道101に沿って設置された基地局(AP:Access Point)201,202,203と、列車102の車上無線局である移動局(STA:Station)301,302と、APの集中制御装置(APM:Access Point Master)401と、列車制御上位システム(指令装置)402と、AP201〜203、APM401、上位システムをつなぐ有線のネットワークであるバックボーンネットワーク(Back-Bone Network)103とを基本的に有している。
尚、本無線通信システムは、CBTCシステムを前提にしている。
【0034】
[無線通信システムの各部]
基地局(AP)201,202,203は、隣接するAPで干渉しないようにするため、異なるチャネルを用いて無線通信を行っている。
例えば、ある特定の時間帯(スロット)では、AP201では、チャネルはCH1を用い、AP202ではCH5を用い、AP203ではCH9を用いてSTA301,302と無線通信を行っている。
また、例えば、別の時間帯(スロット)では、AP201では、チャネルはCH9を用い、AP202ではCH13を用い、AP203ではCH5を用いてSTA301,302と無線通信を行っている。
【0035】
STA301,302は、列車軌道101を列車102に伴って進行方向に移動し、チャネルサーチを行いながらAP201,202,203と順次ハンドオーバーを行うことで、シームレスな無線通信を実現する。
ここで、STAは、列車102の前後に各一台設けられており、それぞれが別の装置となっている。
【0036】
APM401は、AP201,202,203と上位システム402との間でゲートウェイの役割をし、上位システム402から送られてくる列車102の制御情報を、AP201,202,203を介してSTA301,302に伝達し、AP201,202,203を介してSTA301,302から送られてくる列車102の位置情報等を上位システム402に伝達して、上位システム402とSTA301,302との中継の役割をする。
【0037】
また、APM401は、各APの送信タイミングと、周波数ホッピングの位相同期の制御を行うものであり、各AP201、202、203に対して送受信の指示を行い、各AP201、202、203に送受信を行わせる。
【0038】
[AP及びSTA:図2]
本無線通信システムにおけるAP及びSTAの構成について図2を参照しながら説明する。図2は、AP及びSTAの無線通信装置の構成ブロック図である。
AP及びSTAの無線通信装置は、図2に示すように、無線送受信機能を具備しており、アンテナ501と、RF(Radio Frequency)部502と、BB(Base Band)信号処理部503と、MAC(Media Access Control)処理部504と、記憶部505と、主制御部506と、インタフェース部507とを備えている。
【0039】
[無線通信装置の各部]
AP及びSTAの無線通信装置の各部を具体的に説明する。
アンテナ501は、送受信における空間と無線機との間のインタフェース機能を備える。
RF(Radio Frequency)部502は、無線部であり、送信時のベースバンド信号の無線周波数帯への変換処理機能等と、受信時の無線周波数帯からベースバンド信号への変換処理機能等を具備する。
RF部502は、SINR、瞬時干渉電力を測定し、その情報を主制御部506に出力する。
【0040】
BB(ベースバンド)信号処理部503は、送信時のパイロット信号の付加や誤り訂正符号化やベースバンド変調処理機能等と、受信時のパイロット信号の検出による同期処理や誤り訂正復号処理やベースバンド復調機能等を具備する。
尚、BB信号処理部503にSINR、瞬時干渉電力を測定する機能を具備し、RF部502の代わりにSINR、瞬時干渉電力を測定するようにしてもよい。
【0041】
MAC(Media Access Control)処理部504は、送受信に使用する周波数チャネルの決定処理、送受信のタイミングの制御、送信時のパケットへの無線機の識別ID(識別子)の付加処理、受信時の送信元無線機の識別処理等を行う機能を具備する。
記憶部505は、ホッピングテーブルや各周波数チャネルの回線品質の情報を記憶する。回線品質の情報は、主制御部506からSINR、瞬時干渉電力の情報として入力される。
そして、ホッピングテーブルの生成に本実施の形態の特徴がある。
【0042】
主制御部506は、無線機全体を制御する。
特に、主制御部506は、RF部502からSINR、瞬時干渉電力の情報を入力し、記憶部505に回線品質の情報を記憶させ、ホッピングテーブルを参照してRF部502にどのチャネルを用いて無線電波を作るかの指示を出力する。
インタフェース部507は、無線通信すべきデータの入出力処理を行う。
【0043】
[CBTCシステムのチャネル割り当て:図3]
次に、CBTCシステムにおけるチャネル割り当てについて図3を参照しながら説明する。図3は、CBTCシステムのチャネル割り当てを示す図である。
本無線通信システムでは、図3に示すように、2.400GHz〜2.480GHzの範囲を16チャネルに分割し、1周波数チャネルあたり5MHzの帯域を割り当て、周波数の低いチャネルから昇順にCH1、CH2、CH3、CH4、CH5、CH6、CH7、CH8、CH9、CH10、CH11、CH12、CH13、CH14、CH15、CH16とチャネル番号を割り当てることとする。
【0044】
[本無線通信システムの動作:図4]
次に、本無線通信システムの動作について図4を参照しながら説明する。図4は、CBTCシステムの動作タイミングチャートである。図4に上位システム402、AP201、202、STA301、302の通信の動作例を示している。
図4の例では、AP201とSTA302、AP202とSTA301がそれぞれ通信を行っている。
【0045】
[スーパーフレーム]
図4に示すように、APとSTAの間の通信は、スーパーフレームをひとつの単位とする。
スーパーフレームは2つのスロット(スロット1,2)で構成されており、2つのスロットでは同一情報の通信が2回繰り返されている。このような連送によって時間ダイバーシチ効果を得られる。また、スロット毎に、周波数ホッピングを行うため、周波数ダイバーシチ効果も得られる。更に、列車前方のSTA302と列車後方のSTA301は同一の情報をやり取りしており、これにより空間ダイバーシチ効果を得られる。
【0046】
スロット1では、AP201とSTA302との通信に、CH1が割り当てられ、AP202とSTA301との通信に、CH5が割り当てられている。
また、スロット2では、AP201とSTA302との通信に、CH9が割り当てられ、AP202とSTA301との通信に、CH13が割り当てられている。
【0047】
各スロットは、AP送信期間(下り期間)、前方STA送信期間、後方STA送信期間に分割されている。
AP送信期間では、APから64車両編成分の情報(電文)がブロードキャスト形式で順次時分割で送信される。
各STA送信期間では、あらかじめ決められた車両毎の送信タイミングで、各STAが自車両に関する情報の送信を行う。但し、車両毎の送信タイミングは、APM401からの指示によって決定してもかまわない。このような方法によって、APと各STAの通信が互いに干渉を起こすことはない。
【0048】
[周波数ホッピングのホッピングテーブル]
ここからは、周波数ホッピングのホッピングパターンを生成するために用いられるホッピングテーブルの作成例について説明する。
尚、ホッピングテーブルは、APM401で生成してもよいし、上位システム402で生成するようにしてもよい。
そして、生成されたホッピングテーブルは、APに送信され、APの記憶部に記憶される。また、APからSTAにホッピングテーブルを送信して、STAが利用できるようにしてもよい。
【0049】
本無線通信システムにおいては、CH1からCH16の全16チャネルを周波数グループ内の任意の2チャネルが20MHz以上の間隔を有するという条件の下、周波数チャネルを周波数グループに分割し、周波数グループ毎に小ホッピングテーブルを作成し、小ホッピングテーブルを連結することでホッピングテーブルを作成する。
【0050】
[周波数グループの作成手順:図5]
まず、周波数グループの作成手順について説明する。ビットリバースの順に選択し、周波数グループに分割する。具体的には、図5に示す手順によって行う。図5は、ビットリバースマップを示す図である。
ビットリバースによるチャネル番号の設定は、i番目の数字を4ビットの2進数で表し、その4ビットの順番を反転(リバース)し、それを10進数にして「ビットリバース順」を得て、更に+1して「チャネル番号」を得たものである。
【0051】
例えば、i=1の場合、2進数の4ビットは「0001」であり、順番を反転させると「1000」となり、それを10進数にすると「ビットリバース順」が「8」となり、+1して「チャネル番号」が「9」となる。
また、i=2の場合、2進数の4ビットは「0010」であり、順番を反転させると「0100」となり、それを10進数にすると「ビットリバース順」が「4」となり、+1して「チャネル番号」が「5」となる。
以上のようにして、ビットリバースによるチャネル番号が設定される。
【0052】
図5のビットリバースマップに基づいて、i=0〜3,4〜7,8〜11,12〜15の4つのグループに分け、チャネル番号を束にする。
このような手続きによって、g1={1,5,9,13}、g2={2,6,10,14}、g3={3,7,11,15}、g4={4,8,12,16}の4グループに分割される。
【0053】
ビットリバース順では、i番目とi+1番目の差が平均的に最も大きくなる特徴を持っており、なるべく離れた周波数間隔のチャネルグループを作成する上で好適である。
尚、本実施の形態では、20MHz間隔で周波数チャネルを順次選択し、周波数グループを作成しても同様の結果が得られる。
【0054】
[ビットリバース順による周波数グループの分類処理:図6]
次に、上記g1、g2、g3、g4を得るためのビットリバース順による周波数グループの分類処理について図6を参照しながら説明する。図6は、ビットリバース順による周波数グループの分類処理のフローチャートである。
図6に示すように、i=0,j=1を設定する(S1)。ここで、iはビットリバースマップにおける10進数の番数であり、jは周波数グループの番号である。
【0055】
次に、iに対応するチャネル番号をビットリバースマップから読み出し(S2)、j番目のグループgj内の全チャネルと20MHz以上離れているか否かを判定する(S3)。
j内の全チャネルと20MHz以上離れている場合(Yesの場合)には、周波数グループgjに追加する(S4)。
【0056】
そして、iをインクリメント(i=i+1)し(S5)、iが「15」より大きくなったか否か(i>15)を判定する(S6)。i>15となった場合(Yesの場合)、処理を終了し、i≦15の場合(Noの場合)、処理S2に戻る。
【0057】
また、判定処理S3で、gj内の全チャネルと20MHz以上離れていない場合(Noの場合)には、iをインクリメント(i=i+1)し(S7)、iが「15」より大きくなったか否か(i>15)を判定する(S8)。i>15となった場合(Yesの場合)、処理を終了し、i≦15の場合(Noの場合)、処理S2に戻る。
【0058】
[小ホッピングテーブルの作成]
続いて任意の2チャンネルが必ず20MHz以上の間隔を持つことを特徴とする各周波数グループg1、g2、g3、g4に対して、小ホッピングテーブルの作成を行う。
小ホッピングテーブルの作成においては、グループ内の周波数チャネルを昇順に並べ、それをビットリバース順で読み出し、2チャンネルずつ各位相に割り当てる。ビットリバースで読み出すことにより、各位相の周波数間隔が平均的に最も大きくなるように設計できる。
【0059】
このようにして、作成される小ホッピングテーブルは以下の[数1]の通りである。尚、本実施の形態では、ホッピングテーブルを行列によって表記することとし、各行列の各行はホッピングパターンに対応し、各APの並び順に周期的に割り当てられることとする。
また、各列は位相に対応し、上り下りの送受信を行う毎に位相を1つずつ進めることとする。各ホッピングパターンの各位相には複数のチャンネルを割り当てることとし、APとSTAは各時点における位相に対応したチャネルの中から1つを選択して通信を行うこととし、選択基準については後述する。
【0060】
【数1】

【0061】
これらの小ホッピングテーブルは、各行及び各列について同じ周波数チャネルは1つずつしか存在しないことを特徴としている。
また、隣り合う任意の2つのチャネルは必ず20MHz以上離れていることも特徴である。
【0062】
このようにして作られた小ホッピングテーブルG1、G2、G3、G4に基づき、これらを連結することで実際にシステムで用いるホッピングテーブルを作成する。
このため、連送毎に1つのグループを用いることが可能で、同一連送内に限れば、連続する2回の送信は必ず20MHz以上離れたチャネルを使うことができ、無線LANからの干渉に対しても、十分な周波数ダイバーシチを得られる。
【0063】
以下、他のCBTCシステムとの関係に基づき場合分けして、ホッピングテーブルの例を示す。
[(1)近接するシステムがなく、自システムのみの場合]
近接するシステムがなく、自システムのみの場合には、例えば、小ホッピングテーブルG1、G2、G3、G4を用いて下記[数2]のようなホッピングテーブルTを作成すればよい。
【0064】
【数2】

【0065】
ホッピングテーブルTは、各行及び各列について各チャネルが1つずつしか存在しないことを特徴としており、これによって、16チャネルを偏りなく使用できるため、CBTCシステム以外のシステムへの干渉を小さくできる。
【0066】
[(2)2〜4つのCBTCシステムが近接して存在し、これらの位相が同期している場合]
2〜4つのCBTCシステムが近接して存在し、これらの位相が同期している場合には、ホッピングテーブルTを下記[数3]〜[数6]のように各グループ(小ホッピングテーブル)単位で巡回シフトしたホッピングテーブルを定義し、各システムに割り当てる。これにより、最大4つのシステムが干渉を起こすことなく共存できる。
【0067】
システム1のホッピングテーブル:T(1)
【数3】

【0068】
システム2のホッピングテーブル:T(2)
【数4】

【0069】
システム3のホッピングテーブル:T(3)
【数5】

【0070】
システム4のホッピングテーブル:T(4)
【数6】

【0071】
[(3)2つのCBTCシステムが近接して存在し、これらの位相が同期していない場合]
2つのCBTCシステムが近接して存在し、これらの位相が同期していない場合には、小ホッピングテーブルG1〜G4の中から2つずつシステムに割り当て、例えば下記[数7]〜[数8]のようなホッピングテーブルを用いる。
【0072】
具体的には、2つのCBTCシステムに対して、小ホッピングテーブルG1〜G4の中から半数の小ホッピングテールを連結して第1のホッピングテーブルを生成し、残り半数の小ホッピングテーブルを連結して第2のホッピングテーブルを生成し、各システムが異なるホッピングテーブルを用いるようにしたものである。
【0073】
システム1のホッピングテーブル:T(1)
【数7】

【0074】
システム2のホッピングテーブル:T(2)
【数8】

【0075】
[(4)3つまたは4つのCBTCシステムが近接して存在し、これらの位相が同期していない場合]
3つまたは4つのCBTCシステムが近接して存在し、これらの位相が同期していない場合には、各システムにG1〜G4の小ホッピングテーブルを1つずつ割当て、これをそのまま用いる。
システム1のホッピングテーブル: T(1)=G1
システム2のホッピングテーブル: T(2)=G2
システム3のホッピングテーブル: T(3)=G3
システム4のホッピングテーブル: T(4)=G4
【0076】
以上のように、周波数グループを基に作成したホッピングテーブルを用い、各APにホッピングパターンを割り当てる。例えば、ホッピングテーブルとして
T=[G1234]を用いる場合には、1行目をAP201、2行目をAP202、1行目をAP203といったように、軌道に沿って配置されている順にパターンを繰り返し割り当てる。
このようにして割り当てられたホッピングパターンを用いて、APMから巡回的に指示される位相に従って、使用する周波数チャネルを決定する。
【0077】
[周波数チャネルの選択]
以下、各位相に割り当てられた複数の周波数チャネルから1つの周波数チャネルを選択する方法について説明する。
周波数チャネルの選択は、回線品質の情報が得られるAPでホッピングテーブルを参照して行うものであるが、回線品質の情報をAPMに伝送するようにすれば、APMで周波数チャネルの選択をし、選択結果をAPに送信するようにしてもよい。
【0078】
チャネルの選択には、回線品質の良い方を判定し、そのチャネルを用いることとする。また、他システムへの干渉(与干渉)の最小化を目的として16チャネルをなるべく偏りなく使用するため、回線品質が同程度である場合は、これまでの使用回数が少ない方を用いることとする。
【0079】
回線品質の基準としては、ビット誤り率の履歴、パケット誤り率の履歴、SINRの履歴、キャリアセンスによる瞬時干渉電力などを用いても良い。
ビット誤り率の履歴、パケット誤り率の履歴、SINRの履歴は、AP自身の受信結果に基づく情報の他に、STAがAPに位置情報等を送信する際に、受信結果も併せてAPに返送することで、情報を取得することができる。
また、瞬時干渉電力の取得は、APが各スロットで送信を開始する前に、キャリアセンスにより、干渉電力のセンシングを行うことで取得することができる。
【0080】
更に、ある連送で、1回も通信に成功しなかった場合には、次の連送では最後の連送で用いた周波数CHから最も離れた周波数チャネルを用いる。このようにして、通信の連続失敗による、列車制御システムのダウンをできるだけ回避することができる。
【0081】
以上のような周波数ホッピングシステムによって、システム内干渉、システム間干渉、無線LANからの干渉、他システムへの干渉を回避しながら、最大4つのシステムが共存可能な周波数ホッピングを実現できる。
【0082】
[実施の形態の効果]
本無線通信システムによれば、APM401が、特定の周波数帯域を分割したチャネルに順に番号を付与し、当該番号のビットリバース順に選択して周波数グループに分割し、当該周波数グループ毎に小ホッピングテーブルを作成し、当該複数の小ホッピングテーブルを用いてホッピングテーブルを生成し、APが、STAに対してそのホッピングテーブルを参照して周波数ホッピングによるチャネルアクセスを行うようにしているので、システム内干渉、システム間干渉、無線LANからの干渉を回避し、高品質な無線通信を実現できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、システム内干渉、システム間干渉、無線LANからの干渉を回避し、高品質な無線通信システムに好適である。
【符号の説明】
【0084】
101...軌道、 102...列車、 103...バックボーンネットワーク、 201,202,203...基地局(AP)、 301,302...移動局(STA)、 401...集中制御装置(APM)、 402...上位システム(指令装置)、 501...アンテナ、 502...RF部(無線部)、 503...BB(ベースバンド)信号処理部、 504...MAC処理部、 505...記憶部、 506...主制御部、 507...インタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局と、前記基地局の通信エリア内を移動する移動局と、前記基地局を制御する基地局制御装置とを備える無線通信システムであって、
前記基地局と前記移動局は、同一の情報を複数回繰り返し送信する連送を行うものであり、
前記基地局は、ホッピングパターンを生成するためのホッピングテーブルを記憶部に記憶し、当該ホッピングテーブルを用いて前記移動局に対して周波数ホッピングによるチャネルアクセスを行うものであり、
前記基地局制御装置は、特定の周波数帯域を分割したチャネルに順に番号を付与し、当該番号のビットリバース順に選択して周波数グループに分割し、当該周波数グループ毎に小ホッピングテーブルを作成し、当該複数の小ホッピングテーブルを用いてホッピングテーブルを生成し、当該ホッピングテーブルを前記基地局に送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
無線通信システムが自システムのみで、近接する他のシステムがない場合には、
基地局制御装置は、複数の小ホッピングテーブルを連結してホッピングテーブルを生成することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
無線通信システムが複数近接して存在し、位相が同期している場合には、
基地局制御装置は、複数の小ホッピングテーブルを巡回シフトさせて複数のホッピングテーブルを生成し、複数のシステムで異なるホッピングテーブルを用いることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
無線通信システムが2つ近接して存在し、位相が同期していない場合には、
基地局制御装置は、複数の小ホッピングテーブルの中から半数の小ホッピングテーブルを連結して第1のホッピングテーブルを生成し、残り半数のホッピングテーブルを連結して第2のホッピングテーブルを生成し、前記2つのシステムで異なるホッピングテーブルを用いることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
無線通信システムが3以上近接して存在し、位相が同期していない場合には、
基地局制御装置は、複数の小ホッピングテーブルの中から異なる小ホッピングテーブルを選択して前記3以上の複数のホッピングテーブルを生成し、前記3以上の複数のシステムで異なるホッピングテーブルを用いることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項6】
基地局は、記憶するホッピングテーブルを参照し、回線品質の情報に基づいて周波数チャネルを選択することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の無線通信システム。
【請求項7】
基地局が周波数ホッピングによるチャネルアクセスを行う無線通信システムで用いられる移動局であって、
2つのスロットで同一の情報を2回繰り返して送信する連送により前記スロット毎に周波数ホッピングされた信号を受信し、記憶部に記憶するホッピングテーブルに従った周波数チャネルで前記基地局に自情報を送信するものであり、
当該ホッピングテーブルが、特定の周波数帯域を分割したチャネルに順に番号を付与し、当該番号のビットリバース順に選択して周波数グループに分割し、当該周波数グループ毎に小ホッピングテーブルを作成し、当該複数の小ホッピングテーブルを用いて生成されたことを特徴とする移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66101(P2013−66101A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204345(P2011−204345)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】