説明

無線通信システム

【課題】無線端末で送信操作をしなくても回線制御装置から動作停止信号を送出するための方式を提供する。
【解決手段】無線通信システム100では、防災センタ110において、回線制御装置1の停止対象記憶部52等に動作制限対象の無線端末4のIDを含む管理情報が登録され管理されている。無線端末4は、電源投入操作がなされたときに、第1の無線チャネル7の電波状況に応じてIDを含む電源オン情報を送信する。防災センタ110では、上記の管理情報と無線端末4から受信したIDに基づいて動作制限する対象か否かを判断する。無線端末4が動作制限対象であると判断した場合に、回線制御装置1は、動作制限信号を第1の無線基地局3を介して無線端末4へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に、SCPC方式により移動局(無線端末)と基地局間で通信を行う無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、基地局と移動局との間で無線により通信することが行われている。通信方式としては各種用いられるが、自治体の防災システムのような公共システムでは、SCPC(Single Channel Per Carrier)方式が用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。更に、SCPC方式には常送方式と非常送方式がある。常送方式を採用した無線基地局(常送無線基地局)では、常時、無線端末装置(例えば、移動局)と通信を行って同期を取っている。一方、非常送方式を採用した無線基地局(非常送無線基地局)では、例えば要求があったときだけ無線端末装置(例えば、移動局)と通信を行って同期を取るといったように、必要なときだけ電波を送信する。
【0003】
ところで、移動局である無線端末装置が紛失や盗難等されたときには、不正な使用を防止するために、センタ局は基地局から移動局へ所定の信号を無線送信して移動局を動作停止状態に設定することが行われている。特に、防災システムのような公共システムにおいては、適正な運用の為に、紛失等した無線端末装置の確実な動作停止が求められている。例えば、基地局は各移動局において通話時に電話番号として使用される呼出情報(ID情報)を指定して動作停止のための指示信号を送信し、各移動局は自装置(当該各移動局)に設定されたID情報を含む指示信号を受信したことに応じて動作停止状態へ移行する。
【0004】
動作停止状態が設定された移動局では、電源がオフからオンにされたときに基地局に対して位置登録の要求を行う機能を除いては、全ての機能が使用不可能となる。そして、移動局の動作停止状態を解除するときには、移動局と所定のパーソナルコンピュータ(PC)とを有線で接続して、PCから当該移動局へ動作許可データを書き込むことにより、移動局の動作停止状態が解除されて使用可能な状態へ移行する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−71703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に採用されているSCPC方式のデジタル無線通信システムでは、無線端末の位置管理をしておらず、無線端末の電源を投入しても位置登録動作などを行っていない。そのため当該無線端末で送信操作をしないかぎり無線端末に動作停止信号を通知できないと言う課題がある。また、SCPC方式のデジタル無線通信システムは、1チャネルの回線で通話と制御とを共用するため、電源オンの動作によって常に動作停止の為の動作を行うことは望ましくなく、動作停止の制御と通話品位の両立に課題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、センタ局と移動局とがSCPC方式により通信を行う無線通信システムであって、前記移動局は、オン操作がなされたときに、基地局波又は移動波の電波状況に応じてIDを含む電源オン情報を送信し、前記センタ局は、動作制限を行う前記移動局のIDを含む管理情報を管理するとともに、前記管理情報と前記移動局から受信したIDに基づいて動作制限するか否かを判断し、動作制限すると判断した場合に、動作制限信号を前記移動局へ送信する。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によると、センタ局と移動局とがSCPC方式により通信を行う無線通信システムにおいて、移動局が動作制限対象となった場合に、移動局に効果的に動作制限を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る、無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る、無線端末の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る、動作停止シーケンスを示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る、動作停止シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る無線通信システム100の構成を示す。この無線通信システム100は、非常送のSCPC方式により通信がなされるシステムであって、例えば、自治体における消防無線システム等の防災システムに利用される。なお、非常送のシステムであることから、無線端末4の位置登録は行われない。
【0013】
図示のように、無線通信システム100は、防災センタ110と第1の無線基地局3と第2の無線基地局8と無線端末4を備えている。なお、ここでは説明の便宜のために無線端末4として1台のみで例示しているが、一般には複数の無線端末4が第1の無線基地局3又は第2の無線基地局8と通信を行う。また、図示では、主に本実施形態に特徴的な機能に着目して構成を示しており、一般的な機能を実現する構成については適宜省略している。
【0014】
第1の無線基地局3は、第1の通信ゾーン6を構成し、無線端末4が在圏している。また、第2の無線基地局8は第2の通信ゾーン10を構成し、ここには無線端末4は在圏していない。
【0015】
防災センタ110は、回線制御装置1と、運用管理装置2とを備える。運用管理装置2は、管理制御部61と、管理監視操作卓62と、停止対象登録部63とを備える。管理制御部61は、運用管理装置2を統括的に制御する。管理監視操作卓62は、指令者の操作を受け付けるとともに、各種の指示や情報を出力する。指令者は、この管理監視操作卓62を用いて、配下の装置(回線制御装置1や第1の無線基地局3、第2の無線基地局8)に各種の指示を送信することができる。さらに、指令者は、配下の装置から受信した各種の情報を表示画面等で確認することができる。停止対象登録部63は、動作制限対象となった無線端末4のIDを記録する。ここでは、IDとして団体コード及び無線端末4に固有の個別番号が記録される。
【0016】
回線制御装置1は、運用管理装置2、第1の無線基地局3及び第2の無線基地局8と例えば有線で接続されており、これらの間の通信を中継し、また、無線回線等に関する各種の制御を行う。ここでは、回線制御装置1は、第1の無線基地局3と第1のアプローチ線5で接続され、第2の無線基地局8と第2のアプローチ線9で接続される。
【0017】
具体的な構成として、回線制御装置1は、回線制御部51と停止対象記憶部52とを備える。回線制御部51は、回線制御装置1の各構成を統括的に制御するとともに、本実施形態で特徴的な処理である動作制限対象の無線端末4に関する処理制御を行う。停止対象記憶部52は、動作制御対象となった無線端末4のIDを停止対象登録部63から取得して記録する。
【0018】
つづいて、図2を参照しながら移動局である無線端末4について説明する。無線端末4は、主制御部21、メモリ22、無線部23、車載インタフェイス24、及びユーザインタフェイス30とを備える。主制御部21は、無線端末4の動作について統括的に制御する。さらに、主制御部21は、動作制限対象特定処理として、電源がオフからオンに操作されたときに、基地局波又は移動波の電波状況に応じて、メモリ22に記録されているIDを送信する。より具体的には、主制御部21は、他の移動局(無線端末や車載機)が第1の無線チャネル7を使用しているか否かを判断し、未使用状態であれば、IDを送信する。詳細な処理については後述する。
【0019】
メモリ22は、各種のデータを記録するとともに、作業領域として機能する。また、メモリ22には、無線端末4の識別情報として、基本番号体系(団体コード及び個別番号)が記録される。無線部23は、アンテナにより第1の無線基地局3や第2の無線基地局8とSCPC方式により送受信を行う。車載インタフェイス24は、図示しない車載装置とのインタフェイスである。なお、ここでは無線端末4が車載無線機である場合を例示したが、無線端末4は、当然に人が所持する携帯無線機であってもよく、この場合、車載インタフェイス24は不要である。
【0020】
ユーザインタフェイス30は、表示部31と、マイク部32と、スピーカ部33と、キー操作部34とを備える。表示部31は、使用者に対して情報を画面に表示する。マイク部32は、使用者などにより発せられる音(音声)を取得する。スピーカ部33は、使用者に対して音(音声)を出力する。キー操作部34は、使用者からのキー操作を受け付ける。
【0021】
つづいて、図3の動作制限(動作停止)シーケンスを参照して、紛失等によって無線端末4の動作制限が必要となった場合の動作について説明する。
【0022】
運用管理装置2において、指令者は管理監視操作卓62を用いて動作停止対象の移動局(無線端末4)のID(基本番号体系:団体コード及び個別番号)を停止対象登録部63に登録する(S101)。登録されたIDに関する情報は、回線制御装置1に送られ停止対象記憶部52に記録される(S102)。
【0023】
無線端末4では、電源が投入されると(S103)、主制御部21は、第1の無線チャネル7(無線回線)が使用されているか否かを判断する(S104)。第1の無線チャネル7が未使用の場合にのみ(S104のY)、つまり、停波又は空線の場合にのみ、同期バース信号(SB0)を送信する。これは、上述の通り、SCPC方式では一つの回線(第1の無線チャネル7)を通話と制御を共用する。その結果、第1の無線チャネル7が他で使用されている場合に、無線端末4が送信を行うと、他の通話をひっ迫(輻輳)させてしまう可能性があるためである。同期バース信号(SB0)には、電源オンの識別情報とメモリ22に記憶されているID(図中「発ID」)が送信者情報として規定回数だけ送信される(S105)。
【0024】
送信された送信者情報は、第1の無線チャネル7、第1のアプローチ線5及び第1の無線基地局3を介して回線制御装置1に通知される(S106)。
【0025】
回線制御装置1では、回線制御部51が通知された個別番号を停止対象記憶部52に記録されている個別番号情報を検索する(S107)。個別番号が登録されていない場合(S107のN)、第1の無線チャネル7を用いた通常の無線通信処理が行われる(S108)。
【0026】
個別番号が登録されている場合(S107のY)、回線制御部51は、管理制御部61に対して動作停止移動局情報として一致したIDを運用管理装置2に通知する(S109)。運用管理装置2では、管理監視操作卓62に警報がIDとともに表示される(S110)。指令者は管理監視操作卓62を操作して表示されたIDに係る無線端末4を動作停止するための操作を行う(S111)。入力された動作停止情報(ID)は、回線制御装置1を介して第1の無線基地局3に通知される(S112)。このとき、停止対象記憶部52及び停止対象登録部63には、運用履歴が記録される。例えば、動作停止情報の送信がなされたことを示すフラグ及び日時の情報、通信した基地局の情報がIDに関連づけてられて記録される。そして、通知を受けた第1の無線基地局3は、動作停止の識別情報と対象IDとが記述された同期バース信号(SB0)を規定回数だけ送信する(S113)。
【0027】
動作停止を通知された無線端末4では、通知内容がメモリ22に書き込まれ、主制御部21は電源のオン/オフ以外の動作を停止する(S114)。動作停止となった無線端末4は、例えば、無線端末4の製造者の工場でのみ、動作停止状態を解除することができる。
【0028】
以上、本実施形態によると、紛失した又は盗難された無線端末4の動作制限を基地局(第1の無線基地局3)からの動作制限波に基づいて効果的に実施することができる。また、停波又は空線の場合にのみ、無線端末4が電源オンにもとづく識別情報を送信することから、他の通信を妨害することが回避できる。特に、基地局が非常送のシステムの場合に、移動局の位置登録がなされないことから、通話品位の確保と動作制限の確実性の確保の両立が実現できる。
【0029】
なお、移動局が車載機の場合、基地局波(基地局3からの電波)と移動波(他の移動局からの電波)とを同時に2波受信できるので、両方の電波の状態(送信中か、停波又は空線か)に応じて、両方とも未使用であることが確認できた場合に電源オン情報を送信する。また、無線端末4は、同時2波受信できないが、受信周波数を切り替えることにより、基地局波と移動波を見ることはできる。したがって、移動局が携帯無線機でも、基地局波と移動波の両方が送信されていないことを確認してから電源オン情報を送信することが好ましい。なお、携帯無線機の場合は基地局波又は移動波の一方だけを確認するようにしてもよい。また、本実施形態では、動作停止削除操作が指令者によってなされたが、当然に、自動的に削除される処理がなされてもよい。
【0030】
<第2の実施形態>
本実施形態では、無線端末4の電源投入時のみでなく定期的に動作停止情報が送信される。無線端末4の電源投入時に、第1の無線チャネル7が使用中等によって、動作制限処理に移行できない場合であっても、無線端末4の動作制限を確実に行うことができる。なお、構成は第1の実施形態と同様の構成で実現できるので、動作について図4の制限(動作停止)シーケンスを参照して説明する。
【0031】
運用管理装置2において、指令者は管理監視操作卓62を用いて動作停止対象の移動局(無線端末4)のID(団体コード及び個別番号)を停止対象登録部63に登録する(S201)。登録されたIDに関する情報は、回線制御装置1に送られ停止対象記憶部52に記録される(S202)。さらに、回線制御装置1から第1の無線基地局3及び第2の無線基地局8に対して、つまり配下の基地局全てに対して動作停止情報(ID)が通知される(S203)。第1の無線基地局3等は、回線(第1の無線チャネル7等)を使用していない場合に、低速付随制御チャネル(SACCH)を用いて動作停止情報を定期的に送信する(S204)。つまり、無線端末4の電源がオン/オフのいずれかにかかわらず、定期的に動作停止対象の無線端末4のID及び停止指令を送信する。なお、低速付随制御チャネルとは、トラヒックチャネルに常時付随し、低速のデータ伝送を行うチャネルである。
【0032】
無線端末4は、電源が投入されると(S205)、動作停止情報を受信し、主制御部21が、メモリ22を参照し、自己の個別情報が動作停止情報に含まれるIDと一致する場合に、無線部23から、その旨を同期バース信号(SB0)にて所定回数送信する(S206)。そして、動作停止処理が完了すると、主制御部21は、高速付随制御チャネル(FACCH)にて、第1の無線基地局3へ動作を制限(停止)した旨の識別情報とメモリ22に記録されている個別番号とが動作停止情報として通知される(S207)。高速付随制御チャネルとは、一時的にトラヒックチャネル又はユーザパケットチャネルをスチールして高速のデータ伝送を行うチャネルである。
【0033】
第1の無線基地局3は、無線端末4から上記の同期バース信号(SB0)又はFACCHによる動作停止情報を受信すると、動作制限された無線端末4の移動局情報として、無線端末4のIDと動作を制限(停止)した旨の識別情報を回線制御装置1に通知する(S208)。さらに、回線制御装置1は、そのIDを動作停止移動局情報として運用管理装置2に通知する(S209)。動作停止移動局情報を通知された運用管理装置2の管理監視操作卓62は、動作完了した旨の表示を行い、指令者に通知する(S210)。
【0034】
運用管理装置2では、指令者によって動作停止削除操作がなされると(S211)、停止対象登録部63に記録されている対象ID(動作停止情報)を削除するとともに、回線制御装置1に通知し停止対象記憶部52に記録されている動作停止情報を削除する(S212)。さらに、回線制御装置1の主制御部21は、第1の無線基地局3や第2の無線基地局8に設定されている動作停止情報を削除するように通知する(S213)。
【0035】
以上、本実施形態によると、定期的に動作停止情報を送信することができるので、無線端末4の電源投入時に動作停止することができない場合であっても、効果的に無線端末4の動作を停止することができる。
【0036】
なお、第1及び第2の実施形態を組み合わせた処理を行う場合、停止対象記憶部52や停止対象登録部63に記録される動作停止対象の無線端末4のIDが共通で管理される。
【0037】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせや処理にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、上記第1の実施形態の図3のステップS104において、無線回線が使用中であると判断した場合、無線端末4は、所定回数又は所定時間、ステップS104の処理を繰り返すように構成してもよいし、未使用と判断するまでステップS104を繰り返してもよい。これによって動作停止すべき無線端末4をより確実に動作停止することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 回線制御装置
2 運用管理装置
3 第1の無線基地局
4 無線端末
5 第1のアプローチ線
6 第1の通信ゾーン
7 第1の無線チャネル
8 第2の無線基地局
9 第2のアプローチ線
10 第2の通信ゾーン
21 主制御部
22 メモリ
23 無線部
24 車載インタフェイス
30 ユーザインタフェイス
31 表示部
32 マイク部
33 スピーカ部
34 キー操作部
51 回線制御部
52 停止対象記憶部
61 管理制御部
62 管理監視操作卓
63 停止対象登録部
100 無線通信システム
110 防災センタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタ局と移動局とがSCPC方式により通信を行う無線通信システムであって、
前記移動局は、オン操作がなされたときに、基地局波又は移動波の電波状況に応じてIDを含む電源オン情報を送信し、
前記センタ局は、動作制限を行う前記移動局のIDを含む管理情報を管理するとともに、前記管理情報と前記移動局から受信したIDに基づいて動作制限するか否かを判断し、動作制限すると判断した場合に、動作制限信号を前記移動局へ送信する
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−70223(P2013−70223A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207172(P2011−207172)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】