説明

無線通信システム

【課題】無線通信システムで、親局から複数の子局へ通報(選択呼出)する機能に関し、親局での効果的・高機能な通報(操作や制御処理)を実現する。
【解決手段】本システムでは、親局(10)の装置(2)は、親局から扱者Uの操作等に基づき、番号で示す選択呼出先となる対象の子局へ報知情報を無線送信する選択呼出機能を有し、対象の子局を識別するための第1の識別情報と、日時に応じた対象の子局を識別するための第2の識別情報と、を関係付ける第1テーブル(T1)情報を登録する手段と、扱者Uの操作等に基づき、対象の子局を選択指定する第1の識別情報を入力し、入力された第1の識別情報を、第1テーブル(T1)情報と、現在日時情報とを参照し、現在日時に応じて関係付けられる第2の識別情報へ自動的に変換し、上記第2の識別情報を用いて選択呼出を実行する手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センター局装置(以下「センター局」「親局」ともいう)と端末局装置(以下「端末局」「子局」ともいう)とが無線により通信する無線通信システムに関し、特に、親局から複数の子局へ同報を行う同報無線システム、及びセンター局での制御処理や操作方式などに関する。
【背景技術】
【0002】
[同報無線システム] 一般的な同報無線システムでは、センター局(親局)から複数の端末局(子局)へ報知情報(通報情報)を単一方向で無線送信(同報)し、各子局では親局から受信(着信)した情報を例えばスピーカで報知(拡声出力)する。
【0003】
[市町村デジタル同報システム] 同報無線システムの例として、非特許文献1などに、市町村デジタル同報システムについて記載されている。市町村デジタル同報システムは、市町村などの防災に関し、災害時の緊急情報や平常時の行政情報などを住民に周知することができる。市町村デジタル同報システムは、行政機関・市町村役場などに設置されるセンター局(親局)と、所定の場所(行政管轄地区の屋外や集会所や学校などの施設内など)に設置される端末局、及び一般家庭などに配備される戸別受信機(移動可能)、等の複数の子局とを有する。市町村デジタル同報システムは、複数の子局への同報、端末局との同時通話(送受信)、文字や画像の伝送・表示などの機能を備える。親局から複数の子局へ災害関連情報などの報知情報を無線送信(同報)し、各子局では親局から受信(着信)した情報を例えばスピーカで報知(拡声出力)する。
【0004】
[選択呼出機能] また、同報無線システムに付随して具備される選択呼出機能がある。選択呼出機能は、親局から報知情報を選択呼出先の特定の子局へ送信し(同報無線回線を利用して特定の子局のみで着信させる)、当該特定の子局で情報を報知させる機能である。この機能は、例えば特定の地域の子局のみへ通報させる場合や、逆に特定の地域の子局のみへ通報させない場合などにおける手段として有効利用される。
【0005】
上記選択呼出機能の構成例としては、親局の操作卓などの装置に、扱者が呼出したい子局を番号で選択する操作を可能とする操作部、及び当該番号で選択呼出を実行する制御部などを具備し、子局の装置には、上記親局からの選択呼出信号を受信し判断し着信する処理などを行う制御部を具備する。例えば親局で扱者(人)の操作により通報を行う場合、対象(選択呼出先)の子局を番号(個々の子局を識別する個別番号や子局のグループを識別するグループ番号などの識別情報)で選択指定する入力操作(例えばボタン押下)が行われる。その後続いて、扱者が呼出操作(選択呼出操作)を開始すると、親局から対象の子局との間で同報無線回線を利用して、上記指定の番号に応じた選択呼出信号が送信(伝送)される。当該信号を受信した子局は、当該信号(信号に含まれる番号の情報)が自局宛てかを判断し、自局宛ての場合は、当該信号(対応する報知情報)の着信処理を行い、自局で報知情報を出力する。
【0006】
[遠隔制御機能] また、同報無線システムに付随して具備される遠隔制御機能がある。遠隔制御機能は、親局から離れた場所(遠隔局)からでも扱者(人)による通報などの操作を可能にする機能である。遠隔局の装置から親局の装置へ通信し、親局の装置(機能)を遠隔制御する。この機能は、例えば行政機関の宿直室や出先機関・消防署などに設置される遠隔局から災害関連情報などを送信して通報させる等の手段として有効利用される。
【0007】
上記遠隔制御機能の構成例としては、遠隔局の装置に、扱者が選択呼出の対象の子局を選択する操作を可能とする操作部などを具備し、親局の操作卓などの装置に、遠隔局の装置により制御される被遠隔制御部(遠隔制御連動部)を内蔵する。例えば遠隔局の装置で扱者の操作により通報(特に選択呼出)を行う際、対象(選択呼出先)の子局を番号等で指定入力する操作が行われる。その後続いて、扱者が呼出操作を開始すると、遠隔局の装置から対応する制御信号及び報知情報などが有線回線または無線回線を利用して親局の装置へ送信(伝送)され、連動により、当該信号を受信した親局の装置から、複数の子局との間で同報無線回線を利用して、上記番号等に応じた選択呼出信号が送信される。以後同様に、対象の子局で当該信号を受信、判断、着信し、上記遠隔局からの報知情報が出力される。
【0008】
[他システム連動機能] また、同報無線システムに付随して具備される他システム連動機能がある。他システム連動機能は、同報無線システム以外の外部のシステム(他システム)との連動により、他システムからの情報の受信に応じて子局への通報などを可能とする機能である。この機能は、例えば他システムから出力される災害関連情報などの報知情報(例えば地震情報など)を受信して自動的に複数の子局へ通報する等の手段として有効利用される。他システムとしては、例えば、全国瞬時警報システム(J-ALERT:非特許文献2)などがある。全国瞬時警報システムは、通信衛星と市町村などの同報無線システムを利用して総務省消防庁から緊急情報・災害関連情報などを全国市町村などの住民へ瞬時に伝達(配信)する。他システムの出力する情報としては、気象関連情報や有事関連情報、特に地震速報・津波警報などがある。例えば総務省消防庁から配信される情報では、当該配信情報の種類の識別情報、対象地域の識別情報などが一緒に送信される。これにより他システム連動が可能になる。
【0009】
上記他システム連動機能の構成例としては、親局の装置(例えば他システム連動用のインタフェース装置)などに、他システムからの情報(起動信号や報知情報など)を受信し起動処理などを行う他システム連動部(機能)を具備する。他システムの装置と親局の装置とが有線回線または無線回線を利用して接続され上記情報(信号)が伝送される。他システムからの情報との連動による通報(特に選択呼出)を行う場合、親局(他システム連動機能)は、他システムからの情報(信号)の受信に応じて起動し、他システムからの情報(ないしそれに基づく情報)を通報する対象(選択呼出先)の子局を番号等で判断し、当該番号等で選択呼出を開始する。以後同様に、親局の装置と子局の装置との間で同報無線回線を利用して選択呼出信号等が送信され、子局で当該信号を受信、判断、着信し、上記他システムからの情報(ないしそれに基づく情報)が出力される。
【0010】
上記無線通信システムに関する先行技術例としては、特開2006−325265号公報(特許文献1)などがある。特許文献1では、無線通信システム(同報無線システム)において、センター局から端末局へ文字メッセージ(加工の制御情報を含む形式)を送信し、端末局は、受信した文字メッセージを加工して、音声による報知を行う。これにより端末局での効果的な通報を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−325265号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「市町村デジタル同報システム」、ARIB STD−T86、社団法人電波産業会、<URL:http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/1-STD-T86v3_0.pdf>
【非特許文献2】「J-ALERT概要」、総務省消防庁、<URL:http://www.fdma.go.jp/html/intro/form/pdf/kokuminhogo_unyou/kokuminhogo_unyou_main/J-ALERT_gaiyou.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のようなデジタル同報無線システム(無線通信システム)では、例えばセンター局(親局)から扱者により選択呼出機能を利用して特定の端末局(子局)への通報を行う場合、当該通報(例えば呼出の開始やマイクで話す等)に先立ち、扱者が親局の操作卓を操作し、当該通報情報(報知情報)を着信・報知させたい対象(選択呼出先)となる特定の子局を、前述の番号(識別情報)を用いて指定入力する操作をする。この番号は、個別番号(個々の子局を識別するために予め登録されている番号)、またはグループ番号(子局のグループを識別するために予め登録されている番号)である。
【0014】
ここで、上記対象(選択呼出先)の子局が通報ごとに殆ど変化しないのであれば問題無い(例えば扱者は同じ操作で通報ができる)。しかしながら、対象の子局が通報ごとに変化するのであれば、それに対応して、扱者の操作の負担やわかりにくさの問題が生じる。
【0015】
例えば地域や時間帯(日時)に応じて上記通報の対象の子局を変更する場合(例えば特定の子局への通報に関して時間帯ごとに対象になったりならなかったりする)、その都度、選択呼出先の変更が必要になる。例えば扱者により親局の操作卓を操作して通報する際、時間帯の判断に応じて対象の子局の番号を確認(判断)して当該番号を指定入力する操作が必要になる。この場合、扱者の負担が大きく間違いもしやすい。特にデジタル同報無線システムが最も活用される緊急災害時などには、必ずしも手馴れた扱者が操作するとは限らず、操作が難しくなる。
【0016】
また、従来システムでは、扱者の操作によらない自動的な選択呼出の機能(例えば内部的な設定情報に基づいて自動的に選択呼出を実行する機能)を実現する場合にも問題があり、上記のような選択呼出先の変更に対応した自動的な選択呼出の機能は実現されていない。
【0017】
また、上述のようなデジタル同報無線システム(無線通信システム)において、例えば他システムからの連動でセンター局(親局)を介して端末局(子局)へ通報(特に選択呼出)を行う場合、他システムと親局とのインタフェース(他システム連動機能)が、前記遠隔制御機能と同様に、選択呼出機能を実現可能なほど多機能な通信が可能な構成であれば問題無い。しかしながら、従来殆どの場合、上記インタフェースは、通信可能な情報が限定され(例えば数点の信号の受け渡ししかできない)、選択呼出機能を実現可能なほど多機能な通信は不可能である。
【0018】
この場合、親局の装置には、他システムが出力する情報に応じた情報を着信・報知させたい対象(選択呼出先)となる子局の番号などを予め指定して登録(固定的な設定)しておく必要がある。ここで前述同様に、対象の子局が通報ごとに(例えば時間帯などに応じて)変化する場合には問題が生じる。即ち、予め登録されている固定的な設定情報では対処(連動)ができず、当該設定情報(選択呼出の番号など)を変更する必要などが生じる。
【0019】
上記親局に予め登録(設定)されている情報(番号など)を変更する場合、そのためには、人が親局へ赴き、登録されている情報を変更する操作が必要になる。当該変更の都度、該当番号の削除や関連情報の修正が必要であり、また変更を取り消して元に戻すのであれば再度当該番号の追加登録が必要になる。即ち管理コストが増加する。また場合(システム構成)によっては更に、上記変更する対象の端末局の設置場所へ人が赴き、当該端末局での番号の登録を変更するといった必要が生じる。対象の子局が多数になれば上記手間・コストは膨大になってしまう。したがって、上記変更(その要求)に対して即座に対応することは実質的に不可能である。
【0020】
以上を鑑み、本発明の主な目的は、上記無線通信システム(同報無線システム)などにおいて、センター局(親局)から複数の端末局(子局)への通報(選択呼出)をより効果的に行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明のうち代表的な形態は、センター局(親局)と複数の端末局(子局)が無線で通信する無線通信システム、等であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0022】
(1)本形態の無線通信システムでは、親局の装置は、親局から、扱者の操作または内部または外部からの指示に基づき、識別情報(個別番号、グループ番号など)で示す選択呼出先となる対象の子局へ報知情報を無線送信する、選択呼出機能を有し、対象の子局を識別するための第1の識別情報と、日時に応じた対象の子局を識別するための第2の識別情報と、を関係付ける第1テーブル情報を登録する第1登録手段と、扱者の操作または内部または外部からの指示に基づき、対象の子局を選択指定する第1の識別情報を入力し、入力された第1の識別情報を、第1テーブル情報と、現在日時情報とを参照し、現在日時に応じて関係付けられる第2の識別情報へ自動的に変換し、上記第2の識別情報を用いて選択呼出を実行する第1制御手段と、を有する。
【0023】
(2)また、親局の装置は、外部の他システムの装置から通信で受信する情報に応じて選択呼出機能に連動し、当該他システムからの情報または当該情報に基づき生成した情報を、選択呼出先となる対象の子局へ送信する、他システム連動機能を有し、他システムからの情報の内容や種別を表す情報と、選択呼出機能の制御内容を指定する情報と、を関係付ける第2テーブル情報を登録する第2登録手段と、他システムからの情報に対し、第2テーブル情報を参照し、当該他システムからの情報の内容や種別に応じた選択呼出機能の制御内容を決定する第2制御手段と、を有する。選択呼出機能の制御内容は、第1制御手段により第1の識別情報を第2の識別情報へ変換して選択呼出を実行する制御内容と、すべての子局へ通報する通常の制御内容と、の少なくとも2種類を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のうち代表的な形態によれば、上記無線通信システム(同報無線システム)などにおいて、センター局(親局)から複数の端末局(子局)への通報(選択呼出)を日時や内容に応じてより効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態のシステム(無線通信システム)の全体の構成を示す図である。
【図2】本実施の形態のシステムでのセンター局に備える機能の構成例を示す図である。
【図3】本実施の形態のシステムでの選択呼出機能を用いた第1制御の内容その1(選択呼出番号の自動変換処理等)を説明するための図である。
【図4】本実施の形態のシステムでの選択呼出機能を用いた第1制御の内容その2(端末局の選択呼出例等)を説明するための図である。
【図5】本実施の形態のシステムでの他システム連動機能及び選択呼出機能を用いた第2制御の内容(他システム情報解析及び制御切替処理等)を説明するための図である。
【図6】本実施の形態のシステムでのグループ構成及び第1制御の別例を説明するための図である。
【図7】従来例のシステムでの制御(選択呼出)の内容を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。本実施の形態のシステムは、図1,図2等に示す構成において、図3,図4に示す選択呼出機能を用いた第1制御(選択呼出番号の自動変換)と、図5に示す他システム連動機能及び選択呼出機能を用いた第2制御(他システム情報解析及び制御切替処理等)とを行う機能を備える。
【0027】
本実施の形態では、無線通信システムとして、前述の市町村デジタル同報システムに適用した場合を示す。特に、センター局での扱者による手動操作により通報(選択呼出)及び対応する制御処理を行う場合と、他システム(例えば前述の全国瞬時警報システム)との連動により自動的に通報(選択呼出)及び対応する制御処理を行う場合との両方の場合(各機能)に応じた構成について示す。
【0028】
本システムは、例えば、センター局側の行政機関(あるいは連動する場合の他システム)から端末局(子局)側の住民などに対して、災害時などに災害関連情報などの報知情報を通報する等の用途で用いられる。センター局(親局)から同報無線回線を利用して通報(同報)する報知情報を、各地域などに設置された複数の端末局及び家庭の戸別受信機などを含む子局で受信し、選択呼出先の特定の子局で着信して出力する。具体例として、60MHz帯(54〜70MHz)における市町村デジタル防災無線通信方式である、TDMA−TDD方式による防災行政用のデジタル同報無線システムにおいて、同報無線回線を利用して、上記親局−子局間で、通話の音声情報や他の符号情報(画像や文字メッセージ等を含む)による通報(情報伝送)を行う。
【0029】
また端末局がそれぞれの地域など(位置)に固定的に設置される固定系の通信システムに適用されるものとするが、これに限らず、端末局が携帯電話のように移動可能な通信システムにも適用可能である。なお一般的な呼称に従い、センター局(親局)から端末局(子局)への通信の方向を下りと称し、逆の通信の方向を上りと称する。本実施の形態では、端末局との無線回線では、下り・上りの両方向で通信(送受信)可能となっており、戸別受信機との無線回線では、下りの単方向で通信(送信)可能となっている。本実施の形態の制御では、主に下り方向の通信を使用するが、上り方向を利用して関連処理などを行うようにしてもよい。
【0030】
[従来例]
図7は、本実施の形態との比較のために、従来例のシステムにおける制御例を示す。符号はわかりやすいように本実施の形態の構成(図1等)と共通で示すが、機能的には異なる。右側に示すように、複数の端末局A〜F等は、それぞれ個別番号K(K00A〜K00F等)が登録されており、またそれぞれグループ番号Gが登録されている。個別番号K00A〜K00F等はそれぞれ個別の端末局A〜Fを示す。また例えばG001のグループは端末局A〜Fを含んで成り、G101のグループは端末局A〜Dから成り、G201のグループは端末局A,Bから成る。
【0031】
例えばセンター局10の操作卓2で扱者Uにより通報の選択呼出先となる子局の番号を選択して入力する。例えば701のように、当該入力がグループ番号G001であるとする。これにより、選択呼出として、基地局装置1から、同報無線回線を用いて、グループ番号G001を格納した通報開始指示電文702(PCHパケット)が送信される。703は、その電文702の選択呼出先であるG001に該当する範囲を示し、当該範囲の子局で着信され報知される。
【0032】
また別例として、入力(701)が例えば個別番号K00Fである場合は、個別番号K00Fを格納した電文704が送信され、K00Fに該当する端末局F(705)で着信され報知される。
【0033】
従来例のシステムでは、選択呼出の際、例えば扱者Uが操作卓2で1つのボタンを押す操作により、このボタンに対応付けられる番号で選択呼出先の子局を指定できる。即ち基本的には簡単な操作で選択呼出が可能となっている。しかし、特定の地域や日時などに応じて選択呼出先の子局を変更したい場合を考えると、操作するボタン等が変わり、変更内容を確認しなければならないため、扱者Uの負担が大きくなってしまう。あるいは番号に関する登録(設定)を変更する必要が生じ、手間・コストがかかる。
【0034】
[システム構成]
図1は、本実施の形態の無線通信システム(デジタル同報無線システム)の構成を示している。本システム全体は、センター局10と、複数(n)の端末局20(20−1〜n)と、複数(m)の戸別受信機30(30−1〜m)と、遠隔局70と、他システム80とを有する。数n,mは任意である。なお図1の本システム全体は、主となるシステム(センター局10)にとって外部の独立したシステムである他システム80を含めて図示している。
【0035】
センター局10と端末局20との間の無線回線(上り・下り)として、例えば端末局20−1との間の無線回線a1(対応する無線範囲d1)や端末局20−nとの間の無線回線a2(対応する無線範囲d2)を図示している。また、センター局10と戸別受信機30との間の無線回線(下り)として、例えば戸別受信機30−1との間の無線回線a3を図示している。以下主に、子局として端末局20へ通報する場合について説明するが、戸別受信機30へ通報する場合についても同様に実現できる。
【0036】
なお本実施の形態では、センター局10(親局)に対して複数の子局(20,30)が直接的に無線回線(a1等)を介して接続される構成を示しているが、これに限らず、例えば親局−子局の間に中継局を設け、中継局を介して同様に通信する構成としてもよい。
【0037】
センター局10は、基地局装置(基地局無線送受信装置)1と、操作卓(操作卓装置)2と、文字伝送装置3と、インタフェース装置(他システム連動インタフェース装置)4とを有する。センター局10は、例えば市町村役場などに設置される。
【0038】
基地局装置1は、制御部11、無線部12、アンテナ13を有し、子局(20,30)との間で無線通信(無線送受信処理)を行う。この処理は、選択呼出信号、及び報知情報の送信などを含む。基地局装置1は、操作卓2と接続され、制御部11と操作卓2内部の制御部とが連携する。なお、基地局装置1と操作卓2とを一体的に実装してもよい。
【0039】
操作卓2は、人(扱者U)により操作され各種の指令などを受け付ける操作部と、基地局装置1を制御する機能、遠隔局70や他システム80と連動する機能などを含む制御部とを備える。これにより、センター局10の制御(選択呼出機能の制御を含む)の操作が可能である。操作部としては、入力装置(キーボード、ボタン、マイク等)、出力装置(ディスプレイ、スピーカ等)、及びそれらを制御するインタフェース処理部などの公知要素を含む。制御部としては、プロセッサ、メモリ、通信インタフェースなどの公知要素を含む。
【0040】
文字伝送装置3は、人(扱者U)により操作され、報知の対象となる文字メッセージ等の情報の入力を受け付け、表示し、当該入力に応じて当該情報の伝送処理を起動する。文字伝送装置3は、操作卓2や基地局装置1と接続され連携する。文字伝送装置3は、操作卓2に一体的に実装されてもよい。
【0041】
インタフェース装置4は、他システム80(他システム装置81)と通信回線(本実施の形態では通信衛星、無線)を介して接続され、操作卓2と接続され、他システム連動機能の処理を行う。なお遠隔局70との遠隔制御機能に関しても同様に所定のインタフェース装置で実装してもよい。
【0042】
複数(n)の各端末局20(20−1〜n)は、端末局本体装置6と、接続ボックス5と、スピーカ(トランペットスピーカ)7と、文字表示装置8とを有する。各端末局20は、それぞれ対応する地域などの所定の位置に固定で設置されており、それぞれ番号(K,G)が予め登録されている。
【0043】
端末局本体装置6は、制御部61、無線部62、アンテナ63を有し、親局との間で無線通信(無線送受信処理)を行う。この処理は、選択呼出信号の受信、判断、着信、報知情報の出力などを含む。端末局本体装置6には、接続ボックス5を介して、スピーカ7や文字表示装置8が接続される。
【0044】
接続ボックス5は、端末局本体装置6と他の構成部(7,8)とを接続するインタフェース部である。スピーカ7は、周囲の人に対して音声情報(報知情報)を拡声出力する。文字表示装置8は、周囲の人に対して文字情報等(報知情報)を表示する。
【0045】
複数(m)の各戸別受信機30(30−1〜m)は、無線受信機能(選択呼出信号の受信、判断、着信、報知情報の出力などを含む)の他、周囲の人に対して音声情報を出力するスピーカ31と、文字情報等を表示する文字表示部32と、を備える。各戸別受信機30は、それぞれ戸別(世帯毎)に設置されており、携帯して移動可能であり、それぞれ番号が予め登録されている。
【0046】
遠隔局70は、センター局10を外部から遠隔で制御する遠隔制御機能を構成する。遠隔局70は、遠隔制御装置71を有し、遠隔制御装置71は、通信回線(有線または無線)を介して、センター局10の操作卓2などに接続され、通信する。遠隔局70は、例えば行政機関の宿直室や出先機関・消防署などに設置される。
【0047】
他システム80は、センター局10を含む対象に対して情報を出力(配信)する。他システム80は、他システム情報を出力する他システム装置81を有する。センター局10のインタフェース装置4(他システム連動機能)は、通信回線を介して他システム装置81と接続される。
【0048】
図1の本システムは、以下に示す(背景技術でも簡単に説明した)各機能、即ち、選択呼出機能、遠隔制御機能、他システム連動機能などを実装している。以下まず基本的な機能構成を説明し、詳細構成(自動番号変換など)については後述する。
【0049】
[選択呼出機能]
選択呼出機能は、センター局10から報知情報を選択呼出先の特定の子局(端末局20,戸別受信機30)のみへ送信し(同報を利用して特定の子局のみで着信させることで実現する)、当該特定の端末局で報知情報を出力させる機能である。この機能は、例えば特定の地域のみへ情報を通報させる必要がある場合や、特定の地域のみへ情報を通報させたくない場合などの手段として有効利用される。
【0050】
選択呼出機能の構成例として、センター局10の操作卓2に、扱者Uが選択呼出したい対象の子局(20,30)を選択する操作を可能とする操作部及び対応する制御処理を実行する制御部を実装し、子局(20,30)の装置(例えば端末局本体装置6の制御部61)には、上記選択呼出信号を受信、判断、着信する処理などを行う制御部を具備する。
【0051】
選択呼出の際には、センター局10で、例えば扱者Uが操作卓2(操作部)を操作し、対象の子局(20,30)を番号(個別番号Kやグループ番号Gなどの識別情報)によって選択指定する入力操作(例えば1ボタン押下)をする。その後続いて、扱者Uが呼出操作(選択呼出操作)を開始する(例えば1ボタン押下)。すると、センター局10の基地局装置1から、対象の子局(20,30)との間で、同報無線回線を利用して、上記番号に応じた選択呼出信号が送信(伝送)される。当該信号を受信した子局(例えば端末局20の端末局本体装置6)は、当該信号(当該信号に含まれる番号)が自局宛てかを判断し、自局宛ての場合は、当該信号(対応する報知情報)の着信処理を行い、自局で報知情報を出力する。
【0052】
[遠隔制御機能]
遠隔制御機能は、センター局10から離れた場所(遠隔局70)からでも扱者U(人)による通報などの操作を可能にする機能である。遠隔局70の装置71から、センター局10の装置(例えば操作卓2)へ制御信号を送信する等して通信し、センター局10の装置の機能を遠隔制御する。
【0053】
遠隔制御機能の構成例としては、遠隔局70の遠隔制御装置71に、操作卓2と同様に、扱者U(人)が選択呼出する対象の子局を選択する操作を可能とする操作部などを実装する。またセンター局10の操作卓2には、遠隔制御装置71により制御される被遠隔制御部(遠隔制御連動部)を実装する。遠隔局70で例えば扱者Uの操作により通報(特に選択呼出)を行う際、遠隔制御装置71にて、報知情報を送信したい対象(選択呼出先)の子局(20,30)を識別する番号等を指定入力する(操作のユーザインタフェースは例えば操作卓2と同様である)。その後続いて、扱者Uが呼出操作を開始すると、遠隔局70の遠隔制御装置71から、対応する制御信号及び報知情報などがセンター局10の装置(操作卓2、遠隔制御連動部)へ送信(伝送)される。当該信号・情報を受信したセンター局10の装置(操作卓2、遠隔制御連動部)は、基地局装置1に連携し、基地局装置1から、対象の複数の子局(20,30)との間で同報無線回線を利用して、上記対象の番号に応じた選択呼出信号を送信(伝送)する。以後同様に、当該信号を受信した子局は、当該信号が自局宛てかを判断し、自局宛ての場合は、着信処理の後、上記遠隔局70からの報知情報を出力する。
【0054】
[他システム連動機能]
他システム連動機能は、外部の他システム80との連動により、他システム80からの情報(「他システム情報」)に応じた通報(特に他システム情報の受信(入力)に応じて即時的・自動的に連動する選択呼出)などを可能とする機能である。この機能は、例えば他システム80から出力される災害関連情報などの報知情報(例えば地震速報など)を受信して自動的に複数の端末局20(子局)へ通報する手段として有効利用される。本実施の形態では、他システム80として、前述の全国瞬時警報システムとする。他システム80の出力する情報として例えば地震情報(後述、図5)を有する。この他システム情報(地震情報)は、例えば、当該配信情報の種類の識別情報、対象地域の識別情報などを伴う。これにより他システム連動が可能になる。
【0055】
他システム連動機能の構成例として、センター局10のインタフェース装置4に、他システム80からの情報(起動信号や報知情報など)を受信し起動処理などを行う他システム連動部を実装する。他システム80からの情報に連動した通報(特に選択呼出)を行う際、センター局10のインタフェース装置4(他システム連動機能)は、他システム80からの情報(起動信号)の受信に応じて起動し、他システム情報を解析し、他システム情報(報知情報ないしそれに基づき生成した情報)を送信する対象(選択呼出先)の子局(20,30)を識別する番号を判断し、基地局装置1から、対象の子局に対し選択呼出を実行する。そして前述同様に、センター局10と子局との間で同報無線回線を利用して選択呼出信号等を送信(伝送)し、子局で当該信号を受信、判断、着信し、他システム情報(報知情報ないしそれに基づき生成した情報)を出力する。
【0056】
[センター局]
図2に、本実施の形態のシステム(センター局10)における上記機能の構成例を示す。特に、センター局10の装置である操作卓2及びインタフェース装置4に上記各機能を実装した例である。各機能(対応する処理部)は、例えば操作卓2に備えるプロセッサ,メモリ,通信インタフェース等のハードウェア・回路等を用いてプログラム処理などで実現できる。なお操作卓2での実装に限らず、基地局装置1での実装や、基地局装置1と操作卓2の連携で実現してもよい。
【0057】
操作卓2の機能として、登録部51、選択呼出部(第1制御部)52、遠隔制御連動部53、他システム連動部54、操作部55、及び第1テーブル(第1制御用管理情報)T1、等を有する。インタフェース装置4の機能として、他システム連動部41、及び第2テーブル(第2制御用管理情報)T2等を有し、他システム連動部41は、受信部91、及び第2制御部92を含む。
【0058】
操作部55では、選択呼出部52に対する選択呼出の指示を含む各種の指示の入力や、選択呼出番号の選択入力などが可能である。登録部51は、設定者による操作卓2(操作部55)の操作入力に応じて、第1テーブルT1(具体例は図3)や、第2テーブルT2(具体例は図5)等に対する情報の登録及び更新(設定)の処理を行う。第1テーブルT1の設定では、選択呼出機能(第1制御)に関する対象の子局(20,30)を識別する番号(第1の番号情報、第2の番号情報)及び時間帯などを登録する。番号は、個別番号Kやグループ番号Gを用いることができる。登録は、例えば、設定者が操作卓2のディスプレイ画面に表示される第1テーブルT1等の情報を見ながら、対象の番号や時間帯の追加・削除・変更などが可能であり、設定された状態のテーブル情報がメモリ等に保存される。また登録部51では、管理対象となるすべての子局(20,30)に関する番号(K,G)などの情報を一括して管理し表示可能としてもよい。同様に第2テーブルT2に対する情報の設定を可能とするが、第2テーブルT2用の登録部を分けて実装してもよい。
【0059】
選択呼出部(第1制御部)52は、通報の際の対象(選択呼出先)の番号の判断・変換を含む、選択呼出機能の第1制御の処理を行う。選択呼出部52は、扱者Uの操作または内部または外部(70,80)から、選択呼出の指示を受けた場合、第1テーブルT1情報と、現在日時(図示しない時計機能を利用する)を参照し、対象(選択呼出先)の番号を必要に応じて自動的に変換して決定する。決定後、操作卓2から基地局装置1へ連携し、基地局装置1から対象の子局へ選択呼出を実行させる。
【0060】
遠隔制御連動部53は、遠隔局70の遠隔制御装置71からの制御信号等を受信して起動し、遠隔制御装置71からの情報に従って選択呼出などの制御処理を行う。例えば遠隔制御連動部53から選択呼出部52へ連携し、上記同様に操作卓2から基地局装置1へ連携し、選択呼出を実行させる。
【0061】
操作卓2の他システム連動部54は、インタフェース装置4の他システム連動部41と連携して、他システム連動機能の処理を行う。他システム連動部41は、受信部91により、他システム80の装置81からの情報(他システム情報、起動信号や報知情報など)を受信して起動する。そして、第2制御部92により、入力の他システム情報と、第2テーブルT2情報とを参照し、他システム情報の内容に応じて連動する制御処理のための情報処理(図5、第2制御)を行い、他システム連動部54へ指示などを送信する。そして、当該指示などに従い、他システム連動部54は、選択呼出部52に制御処理内容などを指示し、前述同様に選択呼出部52により処理を行わせる。
【0062】
[第1制御:選択呼出処理(1)]
次に、図3,図4を用いて、選択呼出機能(第1制御)の処理例を説明する。図3において、選択呼出機能の指示入力から選択呼出信号の送信までの処理例について示す。センター局10の選択呼出部52は、扱者Uによる操作卓2の操作(番号選択入力など)、または内部または外部(70,80)からの指示に応じて、自動的に、対象(選択呼出先)の子局(20,30)の番号を決定し、当該番号で通報(選択呼出)を実行する。
【0063】
第1テーブルT1設定済みの状態で、例えば扱者Uにより操作卓2で対象の番号が選択入力される。当該選択入力番号(第1の番号)が例えばグループ番号G001であるとする(301)。上記第1の番号の入力(301)に対し、選択呼出部52は、第1テーブルT1、及び現在日時を参照し、選択呼出先となる変換後の番号(第2の番号)を決定する。
【0064】
図3の第1テーブルT1(変換テーブル)は、番号(グループ番号Gや個別番号K)ごとに、時間帯(t1,t2,t3等)によって、選択呼出先とする番号を自動的に変換し決定するための関係付けの情報が設定されている。選択呼出部52は、図3の例のように、第1テーブルT1で、第1の項目(列)である通常時t1の該当番号を参照する。例えば311の行はt1の値がグループ番号G001である。この通常時t0の番号を基本として、現在日時(時間帯)に応じて、当該第1の番号を第2の番号へ変換し、変換後の番号(第2の番号)を選択呼出先とする。
【0065】
現在日時が通常時t0に該当する場合は、変換の必要無く、そのまま入力の第1の番号(例:G001)を出力する。通常時t0は、他の項目t1〜t3等以外の時間帯に相当する(例:6時〜19時)。現在日時が通常時t0に該当せず、他の時間帯(t1,t2,t3等のいずれか)に該当する場合は、入力の第1の番号(例:G001)を該当の時間帯の番号へ変換し、変換後の番号を出力する。入力の第1の番号、例えばG001は、出力の第2の番号として、例えば時間帯t1(例:19時〜21時)に該当する場合はG101となり、時間帯t2(例:21時〜24時)に該当する場合はG201となり、時間帯t3(例:0時〜6時)に該当する場合はG201となる。
【0066】
例えば現在日時(例:20時35分)がT1のt1(19時〜21時)に該当する場合、311の行のように、t0の第1の番号(G001)は、t1に格納されている第2の番号(G101)へ変換される。選択呼出部52は、変換後の番号(G101)(302)を用いて、基地局装置1と連携して前述の選択呼出処理を実行する。また例えば現在日時がt2,t3に該当する場合は、別の番号(G201)に変換されることになる。
【0067】
なお本例では時分で判定しているが、年月週曜日などの他の種類の情報でも同様に判定可能である。
【0068】
上記対象の番号を決定した後、基地局装置1から図1の無線回線(同報)を用いて選択呼出を実行する際、例として図3に示す通報開始指示電文300を用いる。この電文300として、例えば前述の市町村デジタル同報システム(非特許文献1)におけるPCH(Paging Channel:一括呼出チャネル)のパケットを用いる。電文300の子局識別番号の欄に、対象(選択呼出先)の番号(例:G101)を乗せて対象の子局(X)へ向けて送信する。なおPCHは同報用の片方向チャネルであり、1つのPCHパケット内に複数の子局識別番号が指定可能となっており、また子局識別番号として0を指定すれば全局への同報が可能となっている。
【0069】
[第1制御:選択呼出処理(2)]
続いて、図4において、選択呼出機能の選択呼出信号(図3の電文300)の送信から子局での出力までの処理例について示す。図4で、410は、図7と同様に、グループ番号G001で識別される、端末局A〜F等を含む範囲(グループ)を示す。
【0070】
例1は、図3と同様に、入力番号(301)がG001であり、第1テーブルT1(図3、311)から現在時刻が時間帯t1に該当し、変換後の番号(302)がG101になった場合である。選択呼出先の番号がG101のとき、401に示すように、PCHパケットで子局識別番号欄にG101が格納されて送信される。411は、401のPCHパケットのグループ番号G101に該当する通報先(X)の範囲である端末局A〜Dのグループを示す。
【0071】
例2は、別例として、入力番号(303)がG001で、T1(図3、311)から現在時刻が時間帯t2に該当し、変換後の番号(304)がG201になった場合である。選択呼出先の番号がG201のとき、402に示すように、PCHパケットで子局識別番号欄にG201が格納されて送信される。412は、402のPCHパケットのグループ番号G201に該当する通報先(X)の範囲である端末局A,Bのグループを示す。G201は、G101よりも更に狭い範囲になる。
【0072】
例3は、別例として、入力番号(305)が個別番号K00Fであり、T1(図3、321)から現在時刻が時間帯t2に該当し、変換後の番号(306)に相当する値がNG(「通報しない」)になった場合である。NGのときは、選択呼出の非対象とし、403に示すように、通常時には送信するPCHパケットを送信しないようにする。即ち個別番号K00Fに該当する通報先(X)である端末局Fへ報知はされない。
【0073】
上述のように、第1制御では、第1テーブルT1の設定に応じて、入力の第1の番号から、時間帯に応じた自動的な変換により、出力の第2の番号が得られ、制御内容(通報先)を変えることができる。扱者U(または外部)は、通報の際に当該変換を意識する必要無く、操作も従来と同様で容易であり間違いも低減できる。例えば通常の時間帯では通常放送として変換無しの番号(例:G001)で通報され、夜間〜早朝などの時間帯では、夜間放送として、別の番号(例:G101,G201)により、例えば通常よりも狭い範囲の子局へ通報される。あるいは、通常通報するところを通報しないようにできる。特定の時間帯では放送を避けたい地域や子局に対して放送しないようにできる。第1テーブルT1の内容は、例えば子局側の要望に応じて設定可能である。また本システムの設定及び利用にあたり、既存の登録番号が存在する場合は、それをそのまま使用可能であり、例えば既存の登録番号を第1テーブルT1の第1項目(t0)の情報とし、他の項目t1等を必要に応じて設定すればよい。
【0074】
[番号・グループ(1)]
本実施の形態では、図4等のように、各子局(20,30)を識別する情報(番号、コード等)として、特に、個別番号Kだけでなくグループ番号Gを用いる。個別番号Kは、個々の子局を識別する番号であり、グループ番号Gは、1つ以上の子局から成るグループを識別する番号である。なお個別番号Kとグループ番号Gの一方のみ使用してもよいし、両方使用してもよい。なお説明上、各番号には記号G,Kを付けて“G001”等のように示しているが、実際の値は一意に識別可能であれば“1”等の簡単な値でよい。
【0075】
グループ番号Gに対応させるグループは、例えば地域の区分などに応じて設定可能である。図4の例では、複数のグループ(G001,G101,G201等)は、大中小の区分で包含関係になっている。G001(410)は大区分、G101(411)は中区分、G201(412)は小区分である。この場合、時間帯に応じて選択呼出先を狭めたり拡げたりすることができる。
【0076】
[番号・グループ(2)]
図6は、番号、グループ、及び第1制御に関する別例を示す。例えば端末局A〜Hを有し、これらが、グループ番号G001〜G003で示す3つのグループに分割されている(例えばそれぞれの地区に対応する)。これら3つのグループは、包含関係にならずに分離された構成である。例えばG003のグループ(地区)の端末局E〜Hを対象に通報(選択呼出)を行う際、グループ番号G003を入力(選択)すると、図6の第1テーブルT1の設定に基づいて、601の行に示すように、通常時t0には端末局E〜Hが選択呼出されるが、例えば時間帯t3(0時〜6時)に該当する場合、グループ番号G003はt3の値への変換により、NG(「通報しない」)になり、当該グループ(端末局E〜H)への選択呼出が行われない。
【0077】
また別例として、602の行に示すように、t0以外の例えばt3等の値で{K00E,K00G,K00H}といったように、グループのうち、通報の対象にしない端末局(例えばF)を除く、対象の端末局(例えばE,G,H)の個別番号Kを指定しておく。この場合、入力のグループ番号G003は、t3該当時には{K00E,K00G,K00H}に変換され、非対象の端末局Fに対しては選択呼出が行われない。また上記で逆に非対象の端末局(例えばF)の個別番号Kのみ指定しておき、同様に制御する形としてもよい。
【0078】
[第2制御:他システム連動処理]
次に、図5を用いて、本システムにおける他システム連動機能(第2制御)の処理例について説明する。第2制御として、他システム連動機能により、図2の第2テーブルT2を用いて、他システム80から受信した情報(電文)の内容や種別等の判断・解析に応じて、他システム連動時の通報(前述の第1制御)の制御内容を自動的に切り替え等で決定し、当該制御内容に応じた選択呼出先の番号により通報(前述の第1制御)を実行する。
【0079】
センター局10のインタフェース装置4(他システム連動部41の受信部91)は、他システム80の装置81からの情報(電文)を受信処理する。そして、他システム連動部41の第2制御部92は、第2テーブルT2情報を参照し、受信電文の内容の判断・解析処理を行い、それに応じてその後の制御処理内容を決定し、操作卓2や基地局装置1などの処理に連携する。第2テーブルT2では、他システム情報の内容と、本システムの制御内容とを関係付ける情報が設定されている。
【0080】
他システム80からの情報(他システム情報)(501)が例えば地震情報であるとする。他システム情報(501)の種別が1であり地震情報であることを示す。地震情報の内容例として、例えば震度A、震源地B、対象地域C、等を含む。対象地域は報知の対象となる地域を示す。なお他システム情報(例えば地震情報)をそのまま子局への報知情報とする場合と、他システム情報をもとに加工・生成した情報(例えば地区毎の避難勧告情報)を子局への報知情報とする場合があり、いずれも可能である。加工・生成する場合は例えばインタフェース装置4や操作卓2などでその処理を行う。
【0081】
図5では、第2のテーブルT2の第1の例であるT2−a、及び第2の例であるT2−bを示している。まず第1の例として第2テーブルT2−aでは、他システム情報(501)が地震情報である場合に対応した設定例を示す。項目(a)は震度、項目(b)は緊急度、項目(c)は制御内容、項目(d)は番号を示す。各項目値は登録部51を用いて設定可能である。
【0082】
(a)震度は、例えば既存の気象庁震度階級(0〜7)やその区分範囲などで定義する。(b)緊急度は、(a)震度に応じて定義される緊急度を示す。(b)緊急度は例えば{高,中,低}といったように複数のレベル(値)を持たせる。少なくとも{高,低}の2値を持たせる。例えば震度3以下では“低”、震度4〜5強では“中”、震度6弱以上は“高”、等とする。
【0083】
なお震度をそのまま緊急度と捉え、項目(b)の設定を省略して(a)震度と(c)制御とを直接関係付けてもよいし、他システム情報に緊急度に相当/類似する情報を含むのであればそれを使用してもよい。また震度以外の指標についても同様に緊急度を定義できる。
【0084】
(c)制御内容は、少なくともON/OFFの2値を持たせる。ONの場合は前述の第1制御を実行することを示し、OFFの場合は第1制御を実行せず、従来の通常の制御(例えばすべての子局への同報など)を実行することを示す。更に、第1制御に対応した前述の第1テーブルT1について、設定内容が異なる複数(例:T1−1,T1−2,……)を用意(設定)しておき、項目(c)の値でこれらから1つを指定してもよい。この指定がある場合は指定の第1テーブルT1で第1制御を実行させる。
【0085】
(d)番号は、必須項目ではないが、従来の制御と同様に、他システム情報による通報先の子局を関係付ける(指定する)場合に使用する。例えば他システム情報の対象地域情報に対応した番号を設定してもよい。
【0086】
第2制御部92は、501の例のような地震情報を解析し、そのうち例えば震度を参照し、第2テーブルT2−aの項目(a)の震度と比較する。例えば501内の震度Aは、511の行に該当する。この項目(a)の震度Aは、項目(b)の緊急度“低”に関係付けられ、そして、項目(b)の緊急度“低”は、項目(c)の制御内容として例えば“ON:T1−1”に関係付けられる。
【0087】
この場合、インタフェース装置4(他システム連動部41)は、操作卓2(他システム連動部54)へ、他システム情報(501)の対象地域情報(例:対象地域C)ないしそれに応じた番号情報(例えばグループ番号G001とする)と共に、項目(d)のONに応じて第1制御を実行するように指示し、かつ第1テーブルT1−1を用いるように指示する。指示を受けた操作卓2の他システム連動部54は、選択呼出部(第1制御部)52へ連携し、上記番号情報(G001)及びT1−1を用いて第1制御を実行する。即ち選択呼出部52は、上記番号情報(G001)及びT1−1(例えば図3のT1と同様の設定)を参照し、前述同様に(図3等)、時間帯に応じた自動的な番号の変換を含む選択呼出を実行する。
【0088】
別例としてT2−aで512の行に該当する場合(震度“B”,緊急度“中”,制御“ON:T1−2”等)、第1テーブルT1−2を用いて第1制御が実行される。別例としてT2−aで513の行に該当する場合(震度“C”,緊急度“高”,制御“OFF”等)、第1テーブルT1を用いずに従来の通常の制御が実行される。
【0089】
上記T2−aを用いた第2制御では、他システム情報(例:地震情報)の内容(例:震度)に関する緊急度の把握に応じて、制御内容を切り替え、選択呼出先・通報有無の変更などを実現できる。図示しないが複数の第1テーブルT1(T1−1,T1−2等)で特定の詳細な設定が可能であり、その切り替えにより柔軟な制御が実現できる。例えば地震情報の場合や震度が高くない場合だけ通報先を制限したり変更したりするといった利用が可能である。
【0090】
次に図5の第2の例の第2テーブルT2−bでは、第1の例(T2−a)の他システム情報(電文)が地震情報である場合に限らずに、各種の電文の内容・種別に応じた連動の制御を可能とする例を示す。項目(a)は電文種別、項目(b)は属性値、項目(c)は制御内容、項目(d)は番号を示す。
【0091】
項目(a)の電文種別は、他システム情報の電文の種別を示す。例えば種別1は前述の地震情報、種別2は津波情報、等である。項目(b)の属性値は、必須項目ではないが、当該(a)電文種別に応じて電文の中に記述されている属性値(詳細項目情報)を示す。例えば地震情報の電文であれば震度などの値が記述されている。この属性値に応じて(c)の制御内容を関係付ける場合に使用する。項目(c)の制御は、前述同様に、項目(a),(b)に対して関係付ける制御内容を示す。項目(d)の番号も同様である。
【0092】
上記T2−bを用いた第2制御では、例えば地震情報(種別1)の場合は第1制御をONとして第1テーブルT1−1で対処し、津波情報(種別2)の場合は第1制御をONとして第1テーブルT1−2で対処し、他の情報の場合は第1制御をOFFとして従来通り対処する。
【0093】
上述のように、第2制御では、第2テーブルT2の設定に応じて、入力の他システム情報の内容に応じて制御内容を切り替え、自動的に第1制御(時間帯に応じた自動的な番号変換による選択呼出など)等へ連動することができ、柔軟な対処を実現できる。
【0094】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態のシステムでは、センター局10(親局)から複数の子局(20,30)へ通報(選択呼出)する際、親局での効果的・高機能な通報の操作や制御処理(前述の第1制御、第2制御)を実現することができる。詳しくは、(1)親局での扱者U(特に不慣れな扱者)の操作を容易化(わかりやすいユーザインタフェースの提供)して負担を減らし、即座に容易に選択呼出などを可能とする。(2)そのための親局等での情報(番号等)の登録(設定)等の手間・コストも低減できる。(3)他システム80や遠隔局70との柔軟で即時的な連動を含めた、自動的な選択呼出などの制御処理を実現する。(4)時間帯(日時)や地域などに応じた柔軟な選択呼出先の変更(その要求)に対処できる。
【0095】
本システムでは、扱者Uが選択呼出の操作をする場合に、従来システムの操作と同様に例えば1つの番号ボタンの押下で可能であり、現在日時などを判断して番号を選択するといった負担が少ない。また、第1テーブルT1等を用いて、詳細な設定が可能であり、時間帯に応じて通報先の範囲や通報有無を変える等、子局側の都合や要求を反映した柔軟な制御が実現できる。また、センター局10及び子局での既存の登録番号の基本的な設定を変更する必要無く、時間帯に応じた選択呼出等の効果を実現できる。
【0096】
また、従来は他システム連動機能が不十分であり、時間帯に応じた通報先の自動的な変更などは実現されていなかったが、本システムでは、他システム連動機能で他システム80からの情報に応じて通報する際に、時間帯に応じた通報先の自動的な変更などが可能である。
【0097】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、デジタル同報システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1…基地局装置(基地局無線送受信装置)、2…操作卓(操作卓装置)、3…文字伝送装置、4…インタフェース装置、5…接続ボックス、6…端末局本体装置、7…スピーカ、8…文字表示装置、10…センター局(センター局装置)、11…制御部、12…無線部、13…アンテナ、20…端末局(端末局装置)、30…戸別受信機、31…スピーカ、32…文字表示部、41…他システム連動部、51…登録部、52…選択呼出部、53…遠隔制御連動部、54…他システム連動部、55…操作部、61…制御部、62…無線部、63…アンテナ、70…遠隔局、71…遠隔制御装置、80…他システム、81…他システム装置、91…受信部、92…解析部、T1…第1テーブル、T2…第2テーブル、U…扱者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局と複数の子局が無線で接続され親局から送信された情報を子局が受信して出力する無線通信システムであって、
前記親局の装置は、
前記親局から、扱者の操作または内部または外部からの指示に基づき、識別情報で示す選択呼出先となる対象の子局へ報知情報を無線送信する、選択呼出機能を有し、
前記対象の子局を識別するための第1の識別情報と、日時に応じた対象の子局を識別するための第2の識別情報と、を関係付ける第1テーブル情報を登録する第1登録手段と、
前記扱者の操作または内部または外部からの指示に基づき、前記対象の子局を選択指定する第1の識別情報を入力し、入力された第1の識別情報を、前記第1テーブル情報と、現在日時情報とを参照し、現在日時に応じて関係付けられる第2の識別情報へ自動的に変換し、上記第2の識別情報を用いて選択呼出を実行する第1制御手段と、を有すること、を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
前記親局の装置は、
外部の他システムの装置から通信で受信する情報に応じて前記選択呼出機能に連動し、当該他システムからの情報または当該情報に基づき生成した情報を、前記選択呼出先となる対象の子局へ送信する、他システム連動機能を有し、
前記他システムからの情報の内容や種別を表す情報と、前記選択呼出機能の制御内容を指定する情報と、を関係付ける第2テーブル情報を登録する第2登録手段と、
前記他システムからの情報に対し、前記第2テーブル情報を参照し、当該他システムからの情報の内容や種別に応じた前記選択呼出機能の制御内容を決定する第2制御手段と、を有し、
前記選択呼出機能の制御内容は、前記第1制御手段により前記第1の識別情報を前記第2の識別情報へ変換して選択呼出を実行する制御内容と、すべての子局へ通報する通常の制御内容と、の少なくとも2種類を有すること、を特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
扱者の操作に基づき前記親局の装置を通信で遠隔から制御する遠隔局の装置を有し、
前記親局の装置は、
前記遠隔局の装置から受信する前記遠隔の制御のための信号に応じて前記選択呼出機能に連動し、当該遠隔局からの報知情報を前記選択呼出先となる対象の子局へ送信する、遠隔制御連動機能を有し、
上記連動の際、前記選択呼出機能の前記第1制御手段は、前記遠隔局から受信した信号に基づく第1の識別情報を、前記第1テーブル情報と、現在日時情報とを参照し、現在日時に応じて関係付けられる第2の識別情報へ自動的に変換し、上記第2の識別情報を用いて選択呼出を実行すること、を特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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