説明

無線通信デバイス付き物品

【課題】無線通信デバイスを一度剥がしてしまうと再生が極めて困難で、開封されたことを容易に判定可能とすること。
【解決手段】無線信号を処理する無線IC素子20と、無線IC素子20に結合されたループ状導体12と、ループ状導体12に接続された結合導体13とからなる無線通信デバイス10と、平面状導体2,3を有する物品本体と、を備えた無線通信デバイス付き物品。結合導体13は平面状導体2,3に非可逆性接着剤15を介して容量結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信デバイス、特にRFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線通信デバイスを取り付けた、食品包装箱などの物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の情報管理システムとして、リーダライタと、物品に付されたRFIDタグ(無線通信デバイスとも称する)とを非接触方式で通信し、所定の情報を伝達するRFIDシステムが実用化されている。
【0003】
一方、機密性を要する貴重品の収容容器や食品の包装箱など、悪意でいったん開封された後に元に戻されると困る物品に適用するように、特許文献1には、開封するとアンテナ部が切断され通信不能となる開封確認用のRFIDタグが記載されている。このRFIDタグでは、RFIDシステムでの管理対象となる容器の封緘部にアンテナ部を貼り付け、一度剥がされるとアンテナ部が切断されることによりリーダライタとの通信が不能となることを利用し、中身の入れ替えや収容製品の改ざんを防止しようとしている。
【0004】
しかしながら、切断されたアンテナ部を導電材で接続することにより、通信性能を回復させることは比較的容易であるため、こうした悪質な行為に対してまで十分な効果が得られるか、疑問である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−129291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、無線通信デバイスを一度剥がしてしまうと再生が極めて困難で、開封されたことを容易に判定できる無線通信デバイス付き物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である無線通信デバイス付き物品は、
無線信号を処理する無線IC素子と、該無線IC素子に結合されたループ状導体と、該ループ状導体に接続された結合導体とからなる無線通信デバイスと、
平面状導体を有する物品本体と、
を備え、
前記結合導体は前記平面状導体に非可逆性接着剤を介して結合されていること、
を特徴とする。
【0008】
前記非可逆性接着剤は、正規に接着した状態では無線通信デバイスの結合導体と物品本体の平面状導体とを容量結合あるいは電気的に導通状態で結合させている。この状態で、無線通信デバイスはリーダライタと正常に通信を行うことができる。この非可逆性接着剤は一度剥がされると、仮に再接着したとしても、容量や電気的な導通状態が元に戻ることはないという非可逆性を有している。よって、無線通信デバイスとリーダライタとの通信が不能になる、あるいは、通信性能が低下する。通信の不能あるいは性能が低下した場合には、物品本体が開封されたと判定してよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線通信デバイスを一度剥がしてしまうと再生が極めて困難で、開封されたことを容易に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例である無線通信デバイス付き物品を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】非可逆性接着剤による接着状態と剥離状態を模式的に示す説明図である。
【図4】第1実施例である無線通信デバイス付き物品の通信状態を示すブロック図であり、(A)は正常時、(B)は異常時を示す。
【図5】第2実施例である無線通信デバイス付き物品を示す斜視図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】第3実施例である無線通信デバイス付き物品を示す斜視図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【図9】第4実施例である無線通信デバイス付き物品を示す斜視図である。
【図10】図9のD−D断面図である。
【図11】第5実施例である無線通信デバイス付き物品を示す斜視図である。
【図12】第5実施例である無線通信デバイス付き物品を閉じた状態で示す部分断面図である。
【図13】第6実施例である無線通信デバイス付き物品を示す断面図であり、(A)は正常な接着時、(B)は再接着時を示す。
【図14】第6実施例である無線通信デバイス付き物品の通信状態を示すブロック図であり、(A)は正常時、(B)は異常時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る無線通信デバイス付き物品の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施例、図1〜図4参照)
第1実施例である無線通信デバイス付き物品1Aは、図1に示すように、食品包装缶であって、それぞれ金属薄板からなる箱形状の容器部2と蓋部3とで構成されている。無線通信デバイス10は、樹脂フィルム11の表面にループ状導体12と平面状の結合導体13を設け、ループ状導体12の一端(第1給電部12a’)及び他端(第2給電部12b’)に無線IC素子20が結合されている。ループ状導体12は二つの整合線路12a,12bを備え、それぞれの整合線路12a,12bの基部は結合導体13に接続され、端部がそれぞれ第1給電部12a’、第2給電部12b’とされている。即ち、整合線路12a,12bと結合導体13の一辺部分13aとでループ状導体12が形成されている。
【0013】
無線IC素子20は、RF信号を処理するもので、信号処理回路やメモリ回路などを有しており、半導体集積回路チップとして構成されている。無線IC素子20としては、ベアチップであってもよく、パッケージICとして構成されていてもよい。無線IC素子20と第1及び第2給電部12a’,12b’との結合は半田バンプなどによる電気的な直接結合(DC接続)であるが、電磁界結合であってもよい。また、無線IC素子20は半導体集積回路チップを整合回路や共振回路を有する給電回路基板に搭載されたものであってもよい。
【0014】
前記無線通信デバイス10は、容器部2に蓋部3を被せた状態で、容器部2と蓋部3との合わせ目に結合導体13が両者に跨るように、非可逆性接着剤15を介して接着されている。つまり、ループ状導体12を形成した部位が包装缶の表面から起立するように折り曲げた状態で結合導体13を形成した部位が包装缶に貼り付けられている。そして、図2に示すように、結合導体13は基材としての樹脂フィルム11及び非可逆性接着剤15を介して容器部2及び蓋部3と容量結合することになる。
【0015】
本無線通信デバイス10の等価回路は、図4(A)に示すように、無線IC素子20がループ状導体12を介して結合導体13と電気的に導通状態にあり、結合導体13は容量Cを介して容器部2及び蓋部3と結合されている。無線IC素子20から所定の高周波信号が第1及び第2給電部12a’,12b’に伝達されると、ループ状導体12に電流が発生して第1及び第2給電部12a’,12b’に電位差が生じる。この電位差が結合導体13に伝達され、さらに容量Cを介して容器部2及び蓋部3に伝達され、容器部2及び蓋部3から高周波空気中に伝播される。このように、給電部12a’,12b’から供給される信号の特性(例えば、広帯域な周波数特性)をそのまま容器部2及び蓋部3から外部に放射する。容器部2及び蓋部3が外部からの高周波を受信した場合には、同様に、ループ状導体12に電流が誘起され、第1及び第2給電部12a’,12b’から無線IC素子20に電力が供給される。即ち、容器部2及び蓋部3が無線通信デバイス10の放射導体として機能し、無線IC素子20とリーダライタ30とが交信可能となる。また、ループ状導体12は無線IC素子20と放射導体(容器部2及び蓋部3)とのインピーダンスのマッチングを図っている。
【0016】
ところで、非可逆性接着剤15は、接着時においては図3(A)に示すように、密な状態で接着機能を果たし、容量Cを形成している。しかし、非可逆性接着剤15は、一度剥離されると、けば立った状態となり、図3(B)に示すように、多数の空隙15a(空気層)が生じ、仮に再接着したとしても、これらの空隙15aが消滅することはない。つまり、再接着した場合、空隙15aが介在することで容量C’に変化してしまい、図4(B)に示すように、リーダライタ30との通信が不能になる、あるいは、通信性能が低下する。通信の不能あるいは性能が低下した場合には、物品が開封されたと判定する。
【0017】
なお、無線通信デバイス付き物品1Aとして、本第1実施例では食品包装缶を例示したが、収容品は食品に限らず、開封されていることが不正常である種々の収容品、例えば、電子データを格納した記憶媒体の収容容器などに幅広く適用することができる。また、物品全体が金属導体で構成されている必要はなく、容器の封緘部分に金属導体が設けられていれば、該金属導体に無線通信デバイス10を貼着しておけばよい。
【0018】
(第2実施例、図5及び図6参照)
第2実施例である無線通信デバイス付き物品1Bは、図5に示すように、容器部2に蓋部3を被せてテープ4によって封緘されており、該テープ4の表面に無線通信デバイス10を非可逆性接着剤15を介して接着したものである。他の構成は前記第1実施例と同様である。
【0019】
本第2実施例において、無線通信デバイス10の結合導体13は基材としての樹脂フィルム11、非可逆性接着剤15及びテープ4を介して容器部2及び蓋部3と容量結合している(図6参照)。無線通信デバイス10とリーダライタ30との交信状態は前記第1実施例で説明したとおりであり、テープ4を剥がすと非可逆性接着剤15も剥がされ、容量が変化してしまい、リーダライタ30との通信が不能になる、あるいは、通信性能が低下する。また、テープ4の粘着層は非可逆性接着剤で構成されている。無線通信デバイス10がテープ4ごと剥がされて再度粘着された場合であっても、開封の事実を検知できる。
【0020】
(第3実施例、図7及び図8参照)
第3実施例である無線通信デバイス付き物品1Cは、図7に示すように、無線通信デバイス10の結合導体13部分を封緘用テープ4の下半分、即ち、容器部2の上縁部に対向させて非可逆性接着剤15を介して接着し、さらに、結合導体13上にテープ4の巻終わり端部4’(図8参照)を重ねて接着したものである。テープ4の粘着力は非可逆性接着剤15の粘着力よりも大きい。
【0021】
本第3実施例において、無線通信デバイス10の結合導体13は基材としての樹脂フィルム11、非可逆性接着剤15及びテープ4を介して容器部2と容量結合しており(図8参照)、容器部2が放射導体として機能する。無線通信デバイス10とリーダライタ30との交信状態は前記第1実施例で説明したとおりであり、テープ4を剥がすと非可逆性接着剤15も剥がされ、容量が変化してしまい、リーダライタ30との通信が不能になる、あるいは、通信性能が低下する。
【0022】
(第4実施例、図9及び図10参照)
第4実施例である無線通信デバイス付き物品1Dは、図9に示すように、結合導体13を容器部2と蓋部3との間に非可逆性接着剤15を介して接着したものである。結合導体13は、容器部2とは基材である樹脂フィルム11及び非可逆性接着剤15を介して容量結合し、かつ、蓋部3とは非可逆性接着剤15を介して容量結合している(図10参照)。無線通信デバイス10とリーダライタ30との交信状態は前記第1実施例で説明したとおりであり、蓋部3を容器部2から外すと非可逆性接着剤15も剥がされ、容量が変化してしまい、リーダライタ30との通信が不能になる、あるいは、通信性能が低下する。
【0023】
(第5実施例、図11及び図12参照)
第5実施例である無線通信デバイス付き物品1Eは、図11に示すように、封筒に適用したもので、本体部分5の表紙の糊付け部分にメタライズ層7(斜線を付した部分)が形成されており、蓋部6の裏面側に接着剤16(図12参照)を介して無線通信デバイス10が貼着され、かつ、結合導体13を形成した部位に非可逆性接着剤15が貼着されている。
【0024】
蓋部6を本体部分5に接着したとき、図12に示すように、結合導体13は非可逆性接着剤15を介してメタライズ層7と容量結合し、メタライズ層7が放射導体として機能する。無線通信デバイス10とリーダライタ30との交信状態は前記第1実施例で説明したとおりであり、開封すると、即ち、蓋部6を剥がすと、非可逆性接着剤15も剥がされ、容量が変化してしまい、リーダライタ30との通信が不能になる、あるいは、通信性能が低下する。
【0025】
なお、メタライズ層7は本体部5の表紙の裏面側に形成されていてもよい。この場合、結合導体13は非可逆性接着剤15及び本体部5の表紙を介してメタライズ層7と容量結合する。
【0026】
(第6実施例、図13及び図14参照)
第6実施例である無線通信デバイス付き物品1Fは、図13(A)に示すように、金属製ケース25に無線通信デバイス10の結合導体13を異方性導電接着剤17を介して接着したものである。異方性導電接着剤17は周知のように多数の導電粒子17aを混合したものである。結合導体13は異方性導電接着剤17を介して金属製ケース25と電気的な導通状態にあり(図14(A)参照)、無線IC素子20からの高周波信号はループ状導体12を介して結合導体13に流れ、さらに異方性導電接着剤17を介して金属製ケース25に流れて空気中に伝搬される。金属製ケース25が外部からの高周波を受信した場合は前記とは逆の経路で無線IC素子20に電力が供給される。即ち、金属製ケース25が無線通信デバイス10の放射導体として機能し、無線IC素子20とリーダライタ30とが通信可能になる。
【0027】
ところで、前記異方性導電接着剤17はいったん剥がされると、接着性が消滅又は減少してしまい、図13(B)に示すように、別の接着剤18を介在させなければ再接着できない。この場合、図14(B)に示すように、接着剤18による抵抗成分Rが発生し、無線IC素子20と金属製ケース25との結合が低下することにより、リーダライタ30との通信が不能になる、あるいは、通信性能が低下する。このように異方性導電接着剤17は非可逆性接着剤として機能し、通信の不能あるいは性能が低下した場合には、金属製ケース25が開封されたと判定する。
【0028】
(他の実施例)
なお、本発明に係る無線通信デバイス付き金属物品は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明は、無線通信デバイス付き金属物品に有用であり、特に、無線通信デバイスを一度剥がしてしまうと再生が極めて困難で、開封されたことを容易に判定できる点で優れている。
【符号の説明】
【0030】
1A〜1F…無線通信デバイス付き物品
2…金属製容器部
3…金属製蓋部
4…封緘テープ
7…メタライズ層
10…無線通信デバイス
11…樹脂フィルム
12…ループ状導体
13…結合導体
15…非可逆性接着剤
17…異方性導電接着剤
20…無線IC素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を処理する無線IC素子と、該無線IC素子に結合されたループ状導体と、該ループ状導体に接続された結合導体とからなる無線通信デバイスと、
平面状導体を有する物品本体と、
を備え、
前記結合導体は前記平面状導体に非可逆性接着剤を介して結合されていること、
を特徴とする無線通信デバイス付き物品。
【請求項2】
前記ループ状導体及び前記結合導体はフィルム上に形成されていること、を特徴とする請求項1に記載の無線通信デバイス付き物品。
【請求項3】
前記結合導体と前記平面状導体とは前記非可逆性接着剤を介して容量結合しており、
前記非可逆性接着剤は剥がされた後は容量が変化してしまうものであること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信デバイス付き物品。
【請求項4】
前記非可逆性接着剤は剥がした後は空隙を内部に生じる材料からなること、を特徴とする請求項3に記載の無線通信デバイス付き物品。
【請求項5】
前記結合導体と前記平面状導体とは前記非可逆性接着剤を介して電気的な導通状態で結合しており、
前記非可逆性接着剤は剥がされた後は接着性が消滅又は減少してしまうものであること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信デバイス付き物品。
【請求項6】
前記非可逆性接着剤は異方性導電接着剤であること、を特徴とする請求項5に記載の無線通信デバイス付き物品。
【請求項7】
前記物品本体は箱状の容器部と蓋部とからなり、
前記無線通信デバイスは、前記容器部に前記蓋部を被せた状態で、容器部と蓋部とに跨って前記非可逆性接着剤で接着されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の無線通信デバイス付き物品。
【請求項8】
前記物品本体は箱状の容器部と蓋部とからなり、容器部に蓋部を被せてテープによって封緘されており、
前記無線通信デバイスは前記テープに前記非可逆性接着剤を介して接着されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の無線通信デバイス付き物品。
【請求項9】
前記物品本体は箱状の容器部と蓋部とからなり、
前記無線通信デバイスは前記結合導体が容器部と蓋部との間に前記非可逆性接着剤を介して接着されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の無線通信デバイス付き物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−20469(P2013−20469A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153590(P2011−153590)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】