説明

無線通信ネットワークシステムの同期方法

【課題】固定無線機間に通信障害が発生しても、基地局と中継局間の同期状態を維持できるようにした無線通信ネットワーク信システムの同期方法を提供する。
【解決手段】移動無線機を移動体の前後に通信可能に配置し、固定無線機の少なくとも1つを同期用基地局とし、移動無線機を含めた他の無線機を同期用パケットの中継局とし、中継局は、電源投入で同期用パケット受信待ちの同期捕捉モードに遷移し、移動無線機を介在しない同期用パケットを受信したときに同期精度が高いことを示す地上同期維持モードに遷移して同期用パケット送信可能となり、移動無線機を介在した同期用パケットを受信したときに地上同期維持モードより同期精度が低いことを示す車上同期維持モードに遷移して同期用パケット送信可能となり、車上同期維持モードの中継局が地上同期維持モードの中継局から同期用パケットを受信したときは地上同期維持モードに遷移する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載した移動無線機と移動体の移動ルートに沿って設置され情報を順次中継して伝達する複数の固定無線機とを備え、これら無線機が時分割多重アクセス方式で通信を行う無線通信ネットワークシステムにおける各無線機間の同期方法に関し、特に、互いに通信可能な固定無線機間で通信障害が発生しても各無線機間の同期状態を維持できるような無線通信ネットワークシステムの同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制御エリア内に情報を送信する基地局と、この基地局と無線で接続される複数の無線局を備える無線通信ネットワークシステムにおいて、時分割多重アクセス方式で情報を送受信するためには、各局が同期している必要がある。その同期方法としては、基地局から送信する同期用パケットを全ての無線局が同時に受信して同期を取る方法や、制御エリア内の全ての局が同時に同期信号(例えばGPS信号)を受信して同期を取る方法が考えられる。しかし、GPS信号を使用する方法は、全ての局に高価なGPS受信機を設置しなければならずコスト高であり、しかも、トンネル内では使用できない。また、同期用パケットを使用する方法は、基地局からの電波が届かない無線局が存在する広い制御エリア、例えば鉄道の列車制御のような1次元的な広がりを持つ制御エリアの無線通信ネットワークシステムでは使用できない。
【0003】
そこで、全ての局に同期信号の受信機を設ける必要がなく、基地局からの電波が届かない無線局が存在するような広い制御エリアでも適用できる同期方法として、特許文献1に記載されたような無線通信ネットワークの同期方法がある。特許文献1に記載された同期方法は、基地局から送信した同期用パケットを、各無線局が順次中継して送信することで、基地局からの電波が届かない無線局も含めて全ての局が同期するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−102063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された同期方法においては、地上の隣合う無線機同士で順次無線通信しながら同期用パケットを中継して行く方法であるため、例えばトンネルに列車が進入し車体でトンネル内の電波の伝搬空間が狭くなって電波が減衰したり、或いは、地上の無線機の各アンテナが列車の車高よりも低い位置にある場合に列車の前方と後方の地上無線機間の電波の伝搬が車体で遮られて電波が受信され難くなったりした場合に、同期用パケットの中継動作が行えず、無線機間の同期状態を維持できなくなる虞れがある。
【0006】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、固定無線機間の通信に支障が発生しても同期情報の中継動作を継続できるようにして、基地局と中継局間の同期状態を維持できるようにした無線通信ネットワークの同期方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、第1の発明の無線通信ネットワークの同期方法は、所定のルートに沿って移動する移動体に搭載した移動無線機と、前記ルートに沿って間隔を設けて複数設置され互いに隣合うもの同士で無線通信して送信元から末端まで中継しながら情報を伝達する複数の固定無線機とを備え、前記移動無線機と固定無線機が通信可能に時間同期されて通信を行う無線通信ネットワークシステムにおいて、前記移動無線機を前記移動体の前部と後部に配置して互いに通信可能とし、固定無線機間に前記移動体が存在するときに、前記固定無線機間の同期情報を、移動体に搭載した前記2つの移動無線機で中継可能な構成としたことを特徴とする。
【0008】
かかる構成では、互いに無線通信可能な固定無線機間の同期情報の中継が移動体によって阻害される可能性があるような状況のときには、移動体の前部と後部の移動無線機のうち送信側の固定無線機に近い側の移動無線機で同期情報を受信して他方の移動無線機へ受信した同期情報を送信し、他方の移動無線機から受信側の固定無線機へ同期情報を送信することにより、同期情報の中継を移動体の2つの移動無線機を利用して中継するようにする。
【0009】
また、第2の発明の無線通信ネットワークの同期方法は、所定のルートに沿って移動する移動体に搭載した移動無線機と、前記ルートに沿って間隔を設けて複数設置され互いに隣合うもの同士で無線通信して送信元から末端まで中継しながら情報を伝達する複数の固定無線機とを備え、前記移動無線機と固定無線機が通信可能に時間同期されて通信を行う無線通信ネットワークシステムにおいて、前記固定無線機の少なくとも1つを同期用パケット送信用の基地局とし、他の固定無線機を、前記基地局から送信された同期用パケットを中継する中継局とし、これら中継局は、電源の投入で同期用パケット受信待ち状態の同期捕捉モードに遷移し、同期捕捉モードに遷移した中継局は、同期用パケットを受信したときに同期維持モードに遷移して予め定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケット送信可能となり、前記同期維持モードの中継局は、同期用パケット受信無しの状態が予め設定した同期情報更新制限時間を越えたときに前記同期捕捉モードに遷移する構成としたことを特徴とする。
【0010】
かかる構成では、少なくとも1つの固定無線機を同期用パケット送信用の基地局とし、基地局から送信された同期用パケットを、他の固定無線機を中継局として中継する。中継局は、電源投入で同期捕捉モードに遷移して同期用パケットの受信を待つ。同期捕捉モードの中継局が、同期用パケットを受信すると、同期維持モードに遷移して同期状態となり同期用パケットの送信が可能となり、予め定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケットを送信する。また、同期維持モードの中継局は、同期用パケット受信無しの状態が予め設定した同期情報更新制限時間を越えたときに同期捕捉モードに遷移するようになる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明の無線通信ネットワークシステムの同期方法によれば、互いに通信可能な2台の移動無線機を移動体の前部と後部に配置し、固定無線機間に移動体が存在するときに、一方の固定無線機が送信する同期情報を移動体の2台の移動無線機で他方の固定無線機へ中継可能な構成としたので、例えばトンネル内や固定無線機のアンテナ高さが移動体より低いような場合等のように、移動体の存在によって固定無線機間の電波伝播が阻害されるような場合でも、移動無線機を利用して基地局から送信した同期情報の中継動作を継続できる。従って、固定無線機間の通信に支障が発生しても同期情報の中継が遮断されることがなく、ネットワークシステム内の無線機の同期外れを防止でき、同期状態を維持することができる。
【0012】
また、第2の発明の無線通信ネットワークシステムの同期方法によれば、同期維持モードの中継局は、同期情報更新制限時間内に同期用パケットが受信することで同期状態を維持できるので、移動体の存在によって固定無線機間の電波伝播が阻害されるような場合も含めて同期用パケットの中継経路の一部に通信障害が発生した場合でも、基地局を複数設ければ、他の基地局からの同期用パケットを受信することで同期状態を維持でき、ネットワークシステム内の無線機の同期外れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る同期方法を適用する無線通信ネットワークシステムの一例を示す概略構成図である。
【図2】同上無線通信ネットワークシステムの通信動作周期のフレーム構成の説明図である。
【図3】第1の発明の同期方法の第1実施形態の動作モードの遷移の説明図である。
【図4】第1実施形態の同期方法による車上無線局と地上無線局の動作モード遷移状態の具体例の説明図である。
【図5】第1の発明の基地局の動作モードの遷移の説明図である。
【図6】第2の発明の同期方法の一実施形態の動作モードの遷移の説明図である。
【図7】第2の発明の基地局の動作モードの遷移の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る無線通信ネットワークシステムの同期方法を適用する無線通信ネットワークシステムの一例を示す概略構成図である。
図1において、無線通信ネットワークシステムは、移動体である列車1に搭載された2台の列車無線機VRS1、VRS2と、複数の沿線無線機WRS1〜WRS7と、を備えて構成される。
【0015】
前記列車無線機VRS1、VRS2は、列車1の前部と後部に配置され、列車1に搭載した車上装置(図示せず)に接続されると共に互いに通信可能であり、例えば有線通信可能に有線ケーブルで接続されており、移動しながら前記複数の沿線無線機WRS1〜WRS7との間で各種情報を無線通信するもので、移動無線機に相当する。ここでは、列車無線機VRS1が列車後部に配置され、列車無線機VRS2が列車前部に配置されているものとする。尚、列車無線機VRS1、VRS2間の通信は、有線に限らず無線でもよい。
【0016】
前記沿線無線機WRS1〜WRS7は、列車無線機VRS1、VRS2と各種情報を送受信するもので、列車1の移動ルートである鉄道線路に沿って間隔を置いて複数個設置され、互いに隣合うもの同士で無線通信して情報を中継しながら伝達する伝播型の無線機である。ここで、沿線無線機WRS1〜WRS7が固定無線機に相当する。これら固定無線機の間隔は、例えば2つ先の無線機まで電波が到達するような間隔で配置する。尚、沿線無線機の台数は7台に限るものではなく、無線通信ネットワークシステムの制御エリアの大きさに応じて適切な台数に設定されるものである。
【0017】
かかる構成の無線通信ネットワークシステムの通信制御方式は、例えば時分割多重アクセス(TDMA)方式とし、送信元の無線機から末端の無線機まで中間の無線機で情報を中継しながら情報を伝達する。この無線通信ネットワークシステムは、図2に示す1つのフレームを1周期として通信動作を周期的に行い、各無線機は、1フレームにおいて、予め設定情報により割当てられた所定のタイムスロット(以下、TSとする)の時のみ、送信動作又は受信動作が可能なように制御される。そして、この通信ネットワーク内の全ての無線機の動作は、フレーム内に設けた後述の同期TSブロックにおいて同期がとられる。
【0018】
前記フレームの構成を簡単に説明する。
1フレームは、複数、例えば10個のウインドウW0〜W9(図2ではwindowで示す)に分割し、各ウインドウW0〜W9は複数のタイムスロットブロック(以下、TSブロックとする)、例えば、列車無線機VRS1、VRS2と通信対象の沿線無線機WRS間の測距を行うための測距TSブロック、列車無線機VRS1、VRS2が送信元になるVRS送信TSブロック、各無線機の送受信動作の同期をとるための同期TSブロック、沿線無線機WRS1〜WRS7が送信元となるWRS送信TSブロック、及び、列車無線機VRS1、VRS2からの情報送信により中継動作を行うためのVRS中継用TSブロックに分割して構成する。更に、各TSブロックはそれぞれ所定数のTSで構成する。前記VRS中継用TSブロックを設けたことにより、互いに無線通信可能な沿線無線機WRS間の情報伝達を列車無線機VRS1、VRS2を介して中継可能にしている。
【0019】
次に、第1の発明の同期方法の第1実施形態について説明する。
本実施形態の同期方法は、列車により地上の互いに隣合う無線機間の電波伝搬に支障が生じた場合を想定して、列車の前後部に搭載した2つの列車無線機を利用して同期情報として例えば同期用パケットを中継して各無線機の同期状態を維持する構成である。
【0020】
本実施形態では、各沿線無線機WRSのうちの例えば2つを、同期用パケットの送信元となる同期用パケット送信用の基地局とし、2つの列車無線機VRS1、VRS2を含めて他の無線機を、基地局から送信された同期用パケットを中継する中継局とする。基地局は、基準時刻信号、例えばGPS信号を受信するためのGPS受信機を備え、GPS信号の受信により基地局同士は互いに同期している。各基地局は、GPS信号を受信すると、内蔵のタイマの計時に基づいて自身の送信割当期間に同期用パケットを送信する。同期用パケットには、例えば、送信元の無線機種別情報(地上無線機か車上無線機)、送信時刻情報、現在のタイムスロット情報、動作モード(後述の同期捕捉モード、地上同期維持モード、車上同期維持モード等)情報等が同期用情報として含まれている。各中継局は、基地局から送信された同期用パケットを受信し、その同期用パケット内の情報に基づいてパケットの採否を判断し、採用した場合に同期状態となり、同期用パケットの同期情報を更新して自身の送信割当期間に同期用パケットを送信することにより、同期用パケットの中継を行う。
【0021】
図3は、本実施形態における中継局としての無線局の電源立ち上げからの動作モードの遷移を示し、本実施形態の同期動作について図3を参照しながら説明する。尚、図3中の地上無線局は、地上に設置された基地局以外の各無線機を示し、車上無線局は列車無線機を示すものとする。
【0022】
無線局は、電源の投入で、立ち上げから同期捕捉モードに遷移する。同期捕捉モードは、基地局から直接到達する又は無線局によって中継伝送される同期用パケットの受信待ちの状態である。同期捕捉モードの無線局が、同期用パケットを受信するとその同期情報に基づいて採用と判断し、受信した同期用パケットが、(イ)地上同期維持モードの地上無線局からの同期用パケットであれば地上同期維持モードに遷移すると共に、内蔵タイマをリセットして同期捕捉する。即ち、この時点で、当該無線局は同期状態になる。ここで、地上同期維持モードとは、列車無線機を介在せずに中継された同期用パケットを受信したときの動作モードであり、同期精度が高い動作モードであることを示している。
【0023】
地上同期維持モードに遷移した無線局は、リセットされて計時を開始した内蔵タイマの計時に基づき定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケットを送信する。地上同期維持モードの無線局は、前記タイマの計時が予め定めた同期情報更新制限時間としての同期情報更新タイムアウト時間を経過するまでに地上同期維持モードの地上無線局から再び同期用パケットを受信して採用すると、地上同期維持モードを維持する。一方、タイマの計時が同期情報更新タイムアウト時間を経過するまでに地上同期維持モードの地上無線局からの同期用パケットを受信できない場合には、同期情報更新タイムアウトと判断して同期精度が地上同期維持モードより低い車上同期維持モードに遷移する。
【0024】
また、同期捕捉モードの無線局が、(ロ)車上同期維持モードの地上無線局から同期用パケットを受信して採用した場合、(ハ)車上無線局から同期用パケットを受信して採用した場合、又は、(ニ)車上無線局間の通信で他の車上無線局から同期パケットを受信して採用した場合には、車上同期維持モードに遷移すると共に、内蔵タイマをリセットして同期捕捉する。この時点で、当該無線局は同期状態になる。ここで、車上同期維持モードとは、列車無線機を介在して中継された同期用パケットを受信したときの動作モードであり、前述の地上同期維持モードに比べて同期精度が低い動作モードであることを示している。これは、地上の無線局だけで中継する場合に比べて動きのある列車無線機が介在するので、多少の同期ずれが生じる可能性があるためである。
【0025】
車上同期維持モードに遷移した無線局は、リセットされ計時を開始した内蔵タイマの計時に基づき定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケットを送信して同期用パケットを中継する。車上同期維持モードの無線局は、タイマの計時が予め定めた同期情報更新タイムアウト時間を経過するまでに地上同期維持モードの地上無線局から同期用パケットを受信して採用すると、車上同期維持モードより同期精度の高い地上同期維持モードに遷移して前述の地上同期維持モード時の動作となる。一方、前述の(ロ)〜(ニ)の場合には車上同期維持モードを維持する。また、タイマの計時が同期情報更新タイムアウト時間を経過するまでに同期用パケットを受信できない場合には、同期情報更新タイムアウトと判断して同期捕捉モードに遷移する。
【0026】
図4に、列車により地上の互いに隣合う無線機間の電波伝搬に支障が生じる場合を想定した本実施形態の同期方法による同期捕捉・同期維持のための車上無線局及び地上無線局の動作モード遷移状態を具体的に示し、その動作を説明する。
【0027】
地上無線局群Aは、基地局1からの同期用パケットの受信により、地上無線局群Cは基地局2からの同期用パケットの受信により、図3で示したようにそれぞれ同期捕捉モードから地上同期維持モードに遷移する。ここで、列車1と列車2に挟まれた地上無線局群Bには、地上無線局群Aと地上無線局群Cからの電波は到達しないものとする。車上無線局1Fは、地上無線局群Aからの同期用パケットを受信でき、地上無線局群Aは、基地局1からの車上無線局を介さない同期用パケットが中継されるので、車上無線局1Fは、地上同期維持モードの無線局から同期用パケットを受信することとなり、地上同期維持モードになっている(図3の(イ)の場合である)。車上無線局1Fと車上無線局1Bは、互いに通信可能であるように例えば有線で接続されており、車上無線局1Bは車上無線局1Fからの同期用パケットを受信できるので、車上無線局1Bは車上同期維持モードになっている(図3の(ニ)の場合である)。車上無線局1Bからの同期用パケットを受信する地上無線局群Bの各無線局も、車上同期維持モードになっている(図3の(ハ)の場合である)いる。基地局2からの同期用パケットの受信により、地上無線局群C、列車2の車上無線局2B,2F、車上無線局2Fからの同期用パケットを受信する地上無線局群Bの各無線局も、同様である。
【0028】
このようにして、本実施形態の同期方法によれば、列車の前後部に搭載した2つの列車無線機を利用して同期用パケットを中継できるので、列車により地上の互いに隣合う無線機間の電波伝搬に支障が生じても、各無線機の同期状態を維持できる。また、地上同期維持モードの無線局は、同期情報更新タイムアウト時間内で同期用パケットを受信できない場合に、同期捕捉モードではなく、車上同期維持モードに遷移して継続して送受信動作を継続することで、多少同期精度は劣るが無線通信ネットワークシステム全体として健全性を確保できる。更に、各無線局は、列車無線機を介在して中継された同期用パケットか列車無線機を介在せずに地上の無線機だけで中継された同期用パケットかを認識でき、自身の現状の同期精度を把握しつつ無線通信ネットワークシステムを維持できる。尚、基地局を複数設ければ、無線局の故障等で一方の基地局からの同期用パケットの中継伝送に支障が生じても、他方の基地局から同期用パケットを伝送できるので、同期を維持することができる。
【0029】
ところで、中継局である各無線局を基地局に同期させる場合、基地局自体の時間基準にも誤差が含まれることを考慮すると、無線局は出来るだけ最新の同期用パケットによって同期捕捉・同期維持することが同期の精度確保上で望ましい。この観点では、基地局方向から伝送される同期用パケットを同期のために用いることが望ましい。
【0030】
第1の発明の同期方法の第2実施形態は、基地局方向から伝送される同期用パケットを優先して同期に用いるようにするものである。
本実施形態では、基地局方向から伝送される同期用パケットを優先的に採用するための判断情報としてクロックレベルを同期用パケットの同期情報の1つとして付加する。前記クロックレベルは、受信した同期用パケットが基地局から伝搬するまでに経由した無線局の台数を表すものである。そして、基地局のクロックレベルを0とする。それ以外の無線局のクロックレベルは、図3の立ち上げ、同期捕捉モードでは、基地局から伝搬するまでに経由すると想定される最大無線局数よりも大きい値とする。例えば、ネットワークシステムにおいて同期させる全無線局数より大きな数値とすればよい。そして、地上同期維持モード又は車上同期維持モードの中継局は、同期用パケットを受信したとき、当該同期用パケット内に含まれているクロックレベル情報と自身が記憶保持しているクロックレベル情報とを比較し、自身のクロックレベルの値の方が大きいときに同期用パケット受信と判定し、その同期用パケットのクロックレベルの値に1を加算して自身のクロックレベル情報として記憶保持するようにする。
【0031】
かかる第2実施形態の動作を具体的に説明する。
例えば、同期捕捉モードの無線局が、基地局から直接同期用パケットを受信したとすると、無線局は、受信した同期用パケットに含まれるクロックレベル情報と自身の保持するクロックレベル情報を比較する。この場合、基地局から直接同期用パケットに含まれるクロックレベル情報の値は「0」であり、同期用パケットを受信した無線局の保持するクロックレベル情報の値は0より大きい。従って、同期用パケットを受信した無線局は、基地局方向から受信した同期用パケットであると判定して採用すると共に、「0」に「1」を加算して自身のクロックレベル情報として保持する。同期用パケットの受信により地上同期維持モードに遷移した無線局が同期用パケットを送信する際には、自身が保持するクロックレベル値「1」を、送信する同期用パケットのクロックレベル情報として付加して送信する。このようにして、地上同期維持モード及び車上同期維持モードの無線局は、自身のクロックレベルより小さい値のクロックレベル情報を持つ同期用パケットを受信する毎に、受信したクロックレベル値に「1」を加算して自身のクロックレベル値として保持する。
【0032】
かかる構成によれば、各無線局のクロックレベルは基地局方向から順次大きな値を取るようになるので、基地局と反対側の無線局からの同期用パケットを受信してもそれを採用せず、基地局方向からの同期用パケットを優先して採用できるようになる。
【0033】
第1の発明の同期方法の第3実施形態について説明する。
同期用パケットは、基地局の同期用パケットの送信周期(例えば1秒)で受信されるが、基地局方向からの同期用パケットが受信できなくなった場合、他の経路から同期用パケットが受信されてもそのクロックレベル値が小さいとその同期用パケットを採用できず、同期情報更新タイムアウト(例えば1分)により同期捕捉モードに遷移してしまい、別の基地局方向からの同期用パケットの受信を待つようになり、同期精度の悪化や同期外れが起こる虞れがある。
【0034】
第3実施形態の同期方法は、基地局方向からの同期用パケットが受信できなくなった場合でも、同期情報更新タイムアウト時間内に他の経路から受信される同期用パケットが採用できるようにするものである。このため、第3実施形態では、同期情報更新タイムアウト時間よりも短く同期用パケットの送信周期より長い適当な周期で、自身の保持するクロックレベルを例えば1ずつ増加するようにする。
【0035】
かかる構成では、基地局側の中継経路に支障を生じて基地局方向からの同期用パケットが受信できなくなった場合、自身のクロックレベルが徐々に増加するので、同期用パケットが受信できなくなった無線局のクロックレベルが、同期情報更新タイムアウト時間内に他の経路(例えば他方の基地局側の経路)からの同期用パケットに含まれるクロックレベル値を上回れば、他の経路からの同期用パケットを採用できるので、同期捕捉モードに遷移することなく、同期維持モードを維持できるようになる。
【0036】
第1の発明の同期方法の第4実施形態について説明する。
第3実施形態は、一方の基地局側の中継経路に支障を生じた場合でも同期維持モードを維持することは可能であるが、同期用パケットが受信できなくなった無線局のクロックレベル値が、他の経路からの同期用パケットに含まれるクロックレベルよりも上回るまでに時間を要し、同期情報更新タイムアウトに至る場合もある。
【0037】
第4実施形態は、中継経路に支障を生じた場合でも、より速やかに同期維持を可能にするものである。
第4実施形態では、クロックレベル情報の代わりに、マスタタイム情報を同期用パケットの同期情報の1つとして付加する。マスタタイムは、基地局が同期用パケットを送信したときの時刻、即ち、基地局の同期用パケット送信時刻を表し、基地局が定める時刻情報で複数の基地局間で一致するもので、基地局が受信する基準時刻情報、例えば、GPS信号の時刻情報を用いればよい。
【0038】
かかる構成では、地上同期維持モード又は車上同期維持モードにおいて、無線局が同期用パケットを受信したとき、当該同期用パケットに含まれているマスタタイム情報と自身が記憶保持しているマスタタイム情報とを比較する。比較結果が、自身のマスタタイム情
の方が新しいときには受信した同期用パケットを採用し、受信した同期用パケットのマスタタイム情報を自身のマスタタイム情報として保持する。
【0039】
第4実施形態によれば、例えば2つの基地局から受信される同期用パケットのうち、出来るだけ最新の同期用パケットを採用することになる。また、2つの基地局の一方の中継経路に支障を生じた場合でも、自身のマスタタイム情報より新しいマスタタイム情報を含む同期用パケットを他の基地局方向から受信した時点で、同期維持モードを維持することになる。これにより、クロックレベル値を増加させる第3実施形態の同期方法よりも、速やかに最新の同期用パケットを採用できるようになる。
【0040】
第1の発明の第5実施形態について説明する。
第5実施形態の同期方法は、クロックレベル情報とマスタタイム情報を併用するようにしたものである。第5実施形態は、同期用パケットにマスタタイム情報及びクロックレベル情報を含めるようにする。そして、第5実施形態では、下記の(1)、(2)のいずれかの条件を満たした場合に、受信した同期用パケットを採用する。
(1)受信した同期用パケットに含まれるマスタタイム情報が自身の保持するマスタタイム情報より新しい場合。
(2)受信した同期用パケットに含まれるマスタタイム情報が自身の保持するマスタタイム情報と等しく、かつ、受信した同期用パケットに含まれるクロックレベル値が自身の保持するクロックレベル値より小さい場合。
【0041】
本実施形態の同期方法によれば、例えば2つの基地局から受信される同期用パケットのうち、最新の同期用パケットを採用することができ、しかも、基地局方向からの同期用パケットを優先して採用できるようになる。
【0042】
上述した各実施形態における基地局は、GPS信号の受信機の故障等により基準時刻情報が受信できない場合には中継局として動作する。
図5に、基地局の電源立ち上げからの動作モードの遷移を示し、その動作について説明する。
【0043】
基地局は、電源の投入で、立ち上げから基準時刻信号捕捉モードに遷移する。基準時刻信号捕捉モードでは、基準時刻信号としてのGPS信号の受信を、予め定めた基準時刻信号受信制限時間としての基準時刻信号受信タイムアウト時間が経過するまで待つ。基準時刻信号捕捉モードの基地局が、基準時刻信号受信タイムアウト時間内にGPS信号を受信すると(図中の(イ))、地上同期維持モードより同期精度の高いことを示す基地局同期維持モードに遷移する。基地局同期維持モードに遷移した基地局は、内蔵タイマの計時に基づいて自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケットを送信する。基地局同期維持モードの基地局は、前記基準時刻信号受信タイムアウト時間を経過するまでに再びGPS信号を受信すると、内蔵タイマをリセットして基地局同期維持モードを維持する。一方、内蔵タイマの計時に基づいて基準時刻信号受信タイムアウト時間内にGPS信号が受信されない場合には、基準時刻信号受信タイムアウトと判断して同期捕捉モードに遷移する。
【0044】
また、基準時刻信号捕捉モードにおいて、基準時刻信号受信タイムアウト時間内にGPS信号の受信がなかった場合にも、同期捕捉モードに遷移する。同期捕捉モードに遷移した基地局は、図3に示す中継局としての無線局と同じ動作となり、同期用パケットの中継動作を行う。尚、図3中の(イ)〜(ニ)は図5中では(ロ)〜(ホ)として示してある。ただし、同期捕捉モードのときに、GPS信号を受信した場合には基地局同期維持モードに遷移し、基地局として復帰する。また、同期捕捉モードから同期用パケットの中継を行う無線局として地上同期維持モードに遷移した後、GPS信号を受信した場合も、基地局同期維持モードに遷移し、基地局として復帰する。また、中継局の無線局として車上同期維持モードにある場合に、同期情報更新タイムアウト時間内に同期パケットを受信できない場合には、基準時刻信号捕捉モードに遷移する。
【0045】
かかる基地局の構成によれば、基準時刻信号の受信部に故障があった場合でも、中継局としては動作することが可能となり、無線ネットワークシステム全体としては1台でも基地局として動作する無線局が存在すればよく、無線ネットワークシステム全体としての健全性を高めることができる。
【0046】
次に、上述した無線通信ネットワークシステムに適用する第2の発明の同期方法の一実施形態について説明する。
第2の発明の同期方法は、地上の固定無線機の一部に通信障害が生じて一方の基地局からの同期用パケットが受信できなくなった場合に、他の基地局からの同期用パケットを受信することで同期状態を維持できるようにしたものである。
【0047】
本実施形態は、固定無線機(各沿線無線機WRS)のうちの少なくとも2つを、同期用パケットの送信元となる同期用パケット送信用の基地局とし、他の固定無線機を、基地局から送信された同期用パケットを中継する中継局とする。各基地局及び中継局の構成は、上述した第1の発明の第1実施形態で説明した構成と同じあるので、ここでは説明を省略する。
【0048】
図6に、本実施形態における中継局としての無線局の電源立ち上げからの動作モードの遷移を示し、その同期動作について図6を参照しながら説明する。
【0049】
無線局は、電源の投入で、立ち上げから同期捕捉モードに遷移する。同期捕捉モードは、基地局から直接到達する又は無線局によって中継伝送される同期用パケットの受信待ちの状態である。同期捕捉モードの無線局が、同期用パケットを受信するとその同期情報に基づいて採用と判断すると、同期維持モードに遷移すると共に、内蔵タイマをリセットして同期捕捉する。即ち、この時点で、当該無線局は同期状態になる。
【0050】
同期維持モードに遷移した無線局は、リセットされて計時を開始した内蔵タイマの計時に基づき定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケットを送信する。同期維持モードの無線局は、前記タイマの計時が予め定めた同期情報更新制限時間としての同期情報更新タイムアウト時間を経過するまでに再び同期用パケットを受信して採用すると、同期維持モードを維持する。一方、タイマの計時が同期情報更新タイムアウト時間を経過するまでに同期用パケットを受信できない場合には、同期情報更新タイムアウトと判断して同期捕捉モードに遷移する。
【0051】
本実施形態の同期方法によれば、同期維持モードの無線局は、同期情報更新タイムアウト時間内に同期用パケットを受信して採用できれば、同期用パケットの中継経路に関係なくその同期用パケットを採用して同期状態を維持できる。従って、基地局を2つ設けて同期用パケットを送信するようにすれば、固定無線機の一部に通信障害が生じた場合でも、同期外れ等を起こすことなく同期状態を維持できるようになる。
【0052】
また、本実施形態の基地局も、基準時刻情報が受信できない場合に中継局として動作する構成であり、図7に、そのような基地局の電源立ち上げからの動作モードの遷移を示し、その動作について説明する。
【0053】
基地局は、電源の投入で、立ち上げから基準時刻信号捕捉モードに遷移する。基準時刻信号捕捉モードでは、基準時刻信号としてのGPS信号の受信を、予め定めた基準時刻信号受信制限時間としての基準時刻信号受信タイムアウト時間が経過するまで待つ。基準時刻信号捕捉モードの基地局が、基準時刻信号受信タイムアウト時間内にGPS信号を受信すると(図中の(イ))、前述した地上同期維持モードより同期精度の高いことを示す基地局同期維持モードに遷移する。基地局同期維持モードに遷移した基地局は、内蔵タイマの計時に基づいて自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケットを送信する。基地局同期維持モードの基地局は、前記基準時刻信号受信タイムアウト時間を経過するまでに再びGPS信号を受信すると、内蔵タイマをリセットして基地局同期維持モードを維持する。一方、内蔵タイマの計時に基づいて基準時刻信号受信タイムアウト時間内にGPS信号が受信されない場合には、基準時刻信号受信タイムアウトと判断して同期捕捉モードに遷移する。
【0054】
また、基準時刻信号捕捉モードにおいて、基準時刻信号受信タイムアウト時間内にGPS信号の受信がなかった場合にも、同期捕捉モードに遷移する。同期捕捉モードに遷移した基地局は、図6に示す中継局としての無線局と同じ動作となり、同期用パケットの中継動作を行う。尚、図6中の(イ)は図7中では(ロ)として示してある。ただし、同期捕捉モードのときに、GPS信号を受信した場合には基地局同期維持モードに遷移し、基地局として復帰する。また、同期捕捉モードから同期用パケットの中継を行う無線局として同期維持モードに遷移した後、GPS信号を受信した場合も、基地局同期維持モードに遷移し、基地局として復帰する。また、同期維持モードにある場合に、同期情報更新タイムアウト時間内に同期パケットを受信できない場合には、基準時刻信号捕捉モードに遷移する。
【0055】
かかる基地局の構成によれば、基準時刻信号の受信部に故障があった場合でも、中継局としては動作することが可能となり、無線ネットワークシステム全体としては1台でも基地局として動作する無線局が存在すればよく、無線ネットワークシステム全体としての健全性を高めることができる。
【0056】
尚、図6に示す第2の発明の同期方法の実施形態に、第1の発明の第2実施形態のように同期用パケットにクロックレベル情報を付加する構成、第3実施形態のように同期情報更新タイムアウト時間よりも短く同期用パケットの送信周期より長い適当な周期で、自身の保持するクロックレベルを1ずつ増加する構成、第4実施形態のように同期用パケットにクマスタタイム情報を付加する構成、第5実施形態のようにクロックレベル情報とマスタタイム情報を付加して併用する構成を、それぞれ適用することで、同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
また、上述の各実施形態では、基準時刻情報としてGPS信号を利用する例で説明したが、これに限らず、例えば、電波時計等の極めて精度の高い基準信号発生装置をネットワークシステム内に設け、ここから基準時刻信号を取出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 列車
WRS1〜WRS7 沿線無線機
VRS1、VRS2 列車無線機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のルートに沿って移動する移動体に搭載した移動無線機と、前記ルートに沿って間隔を設けて複数設置され互いに隣合うもの同士で無線通信して送信元から末端まで中継しながら情報を伝達する複数の固定無線機とを備え、前記移動無線機と固定無線機が通信可能に時間同期されて通信を行う無線通信ネットワークシステムにおいて、
前記移動無線機を前記移動体の前部と後部に配置して互いに通信可能とし、固定無線機間に前記移動体が存在するときに、前記固定無線機間の同期情報を、移動体に搭載した前記2つの移動無線機で中継可能な構成としたことを特徴とする無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項2】
前記固定無線機の少なくとも1つを前記同期情報として同期用パケットを送信する基地局とし、他の固定無線機及び前記2つの移動無線機を、前記基地局から送信された前記同期用パケットを中継する中継局とし、これら中継局は、前記移動無線機を介在せずに中継された同期用パケットが周期的に受信されて採用している間は、前記移動無線機を介在して中継された同期用パケットを採用しない請求項1に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項3】
前記中継局は、電源の投入で同期用パケット受信待ち状態の同期捕捉モードに遷移して、移動無線機を介在せずに中継された同期用パケットを受信したときに同期精度が高いことを示す地上同期維持モードに遷移して予め定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケット送信可能となり、移動無線機を介在して中継された同期用パケットを受信したときに前記地上同期維持モードより同期精度が低いことを示す車上同期維持モードに遷移して予め定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケット送信可能となり、車上同期維持モードの中継局が地上同期維持モードの中継局から同期用パケットを受信したときは地上同期維持モードに遷移する請求項2に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項4】
前記地上同期維持モード又は車上同期維持モードの中継局は、同期用パケットを受信したとき、当該同期用パケット内に含まれている基地局の同期用パケット送信時刻を示すマスタタイム情報と自身が記憶保持しているマスタタイム情報とを比較し、自身のマスタタイム情報の方が新しいときに同期用パケット受信と判定し、その同期用パケットのマスタタイム情報を自身のマスタタイム情報として記憶保持する請求項3に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項5】
前記地上同期維持モード又は車上同期維持モードの中継局は、同期用パケットを受信したとき、当該同期用パケット内に含まれている基地局から受信されるまでに経由した中継局の数を表すクロックレベル情報と自身が記憶保持しているクロックレベル情報とを比較し、自身のクロックレベルの値の方が小さいときに同期用パケット受信と判定し、その同期用パケットのクロックレベルの値に1を加算して自身のクロックレベル情報として記憶保持する一方、前記基地局は、同期用パケットの送信元を表すクロックレベル情報が予め記憶され、前記同期捕捉モードの中継局は、基地局から受信されるまでに経由することが想定される最大中継局数よりも大きな値がクロックレベル情報として予め記憶される請求項3又は4に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項6】
前記地上同期維持モード又は車上同期維持モードの中継局は、同期用パケットを受信したとき、当該同期用パケット内に含まれている基地局の同期用パケット送信時刻を示すマスタタイム情報及び基地局から受信されるまでに経由した中継局の数を表すクロックレベル情報と自身が記憶保持しているマスタタイム情報及びクロックレベル情報とをそれぞれ比較し、受信した同期用パケットのマスタタイム情報の方が新しいとき又はマスタタイム情報が同じ場合には自身のクロックレベルの値の方が小さいときに、同期用パケット受信と判定し、その同期用パケットのマスタタイム情報を自身のマスタタイム情報として記憶保持すると共に、その同期用パケットのクロックレベルの値に1を加算して自身のクロックレベル情報として記憶保持する一方、前記基地局は、同期用パケットの送信元を表すクロックレベル情報が予め記憶され、前記同期捕捉モードの中継局は、基地局から受信されるまでに経由することが想定される最大中継局数よりも大きな値がクロックレベル情報として予め記憶される請求項3に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項7】
前記車上同期維持モードの中継局は、同期用パケット受信無しの状態が予め設定した同期情報更新制限時間を越えたときに前記同期捕捉モードに遷移する構成とした請求項3〜6のいずれか1つに記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項8】
前記車上同期維持モードの中継局は、同期捕捉モードに遷移するまでの間、同期用パケットを受信するまで前記同期情報更新制限時間より短い周期で前記クロックレベルの値を一定値ずつ増加する請求項5〜7のいずれか1つに記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項9】
前記基地局は、予め設定した基準時刻信号受信制限時間内に基準時刻信号を受信すると、基地局として同期用パケット送信可能となり,前記基準時刻信号受信制限時間内に基準時刻信号の受信がないときは前記中継局として動作する請求項2〜8のいずれか1つに記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項10】
前記基地局は、電源の投入で基準時刻信号受信待ち状態の基準時刻信号捕捉モードに遷移して、前記基準時刻信号受信制限時間内に基準時刻信号を受信すると、前記地上同期維持モードより同期精度が高いことを示す基地局同期維持モードに遷移して予め定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケット送信可能となり、前記基準時刻信号捕捉モード又は前記基地局同期維持モードの基地局は、前記基準時刻信号受信制限時間内に基準時刻信号の受信がないときは前記同期捕捉モードに遷移し、同期捕捉モードの基地局は、前記地上同期維持モードの中継局から同期用パケットを受信したときに地上同期維持モードに遷移し、車上同期維持モードの中継局から同期用パケットを受信したときに車上同期維持モードに遷移し、前記地上同期維持モードの基地局は、前記基準時刻信号を受信したときに前記基地局同期維持モードに遷移する一方、予め設定した同期情報更新制限時間内に同期用パケットを受信しないときは前記車上同期維持モードに遷移し、車上同期維持モードの基地局は、前記同期情報更新制限時間内に同期用パケットを受信しないときは前記基準時刻信号捕捉モードに遷移する請求項9に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項11】
所定のルートに沿って移動する移動体に搭載した移動無線機と、前記ルートに沿って間隔を設けて複数設置され互いに隣合うもの同士で無線通信して送信元から末端まで中継しながら情報を伝達する複数の固定無線機とを備え、前記移動無線機と固定無線機が通信可能に時間同期されて通信を行う無線通信ネットワークシステムにおいて、
前記固定無線機の少なくとも1つを同期情報として同期用パケットを送信する基地局とし、他の固定無線機を、前記基地局から送信された前記同期用パケットを中継する中継局とし、これら中継局は、電源の投入で同期用パケット受信待ち状態の同期捕捉モードに遷移し、同期捕捉モードに遷移した中継局は、同期用パケットを受信したときに同期維持モードに遷移して予め定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケット送信可能となり、前記同期維持モードの中継局は、同期用パケット受信無しの状態が予め設定した同期情報更新制限時間を越えたときに前記同期捕捉モードに遷移する構成としたことを特徴とする無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項12】
前記同期維持モードの中継局は、同期用パケットを受信したとき、当該同期用パケット内に含まれている基地局の同期用パケット送信時刻を示すマスタタイム情報と自身が記憶保持しているマスタタイム情報とを比較し、自身のマスタタイム情報の方が新しいときに同期用パケット受信と判定し、その同期用パケットのマスタタイム情報を自身のマスタタイム情報として記憶保持する請求項11に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項13】
前記同期維持モードの中継局は、同期用パケットを受信したとき、当該同期用パケット内に含まれている基地局から受信されるまでに経由した中継局の数を表すクロックレベル情報と自身が記憶保持しているクロックレベル情報とを比較し、自身のクロックレベルの値の方が小さいときに同期用パケット受信と判定し、その同期用パケットのクロックレベルの値に1を加算して自身のクロックレベル情報として記憶保持する一方、前記基地局は、同期用パケットの送信元を表すクロックレベル情報が予め記憶され、前記同期捕捉モードの中継局は、基地局から受信されるまでに経由することが想定される最大中継局数よりも大きな値がクロックレベル情報として予め記憶される請求項11又は12に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項14】
前記同期維持モードの中継局は、同期用パケットを受信したとき、当該同期用パケット内に含まれている基地局の同期用パケット送信時刻を示すマスタタイム情報及び基地局から受信されるまでに経由した中継局の数を表すクロックレベル情報と自身が記憶保持しているマスタタイム情報及びクロックレベル情報とをそれぞれ比較し、受信した同期用パケットのマスタタイム情報の方が新しいとき又はマスタタイム情報が同じ場合には自身のクロックレベルの値の方が小さいときに、同期用パケット受信と判定し、その同期用パケットのマスタタイム情報を自身のマスタタイム情報として記憶保持すると共に、その同期用パケットのクロックレベルの値に1を加算して自身のクロックレベル情報として記憶保持する一方、前記基地局は、同期用パケットの送信元を表すクロックレベル情報が予め記憶され、前記同期捕捉モードの中継局は、基地局から受信されるまでに経由することが想定される最大中継局数よりも大きな値がクロックレベル情報として予め記憶される請求項11に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項15】
前記同期維持モードの中継局は、同期捕捉モードに遷移するまでの間、同期用パケットを受信するまで前記同期情報更新制限時間より短い周期で前記クロックレベルの値を一定値ずつ増加する請求項13又は14に記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項16】
前記基地局は、電源の投入で基準時刻信号受信待ち状態の基準時刻信号捕捉モードに遷移して、予め設定した基準時刻信号受信制限時間内に基準時刻信号を受信すると、前記同期維持モードより同期精度が高いことを示す基地局同期維持モードに遷移して予め定められた自身の同期用パケット送信割当期間に同期用パケット送信可能となり、前記基準時刻信号捕捉モード又は前記基地局同期維持モードの基地局は、前記基準時刻信号受信制限時間内に基準時刻信号の受信がないときは前記同期捕捉モードに遷移し、同期捕捉モードの基地局は、同期用パケットを受信したときに前記同期維持モードに遷移し、、前記同期維持モードの基地局は、前記基準時刻信号を受信したときに前記基地局同期維持モードに遷移する一方、予め設定した同期情報更新制限時間内に同期用パケットを受信しないときは前記基準時刻信号捕捉モードに遷移する請求項11〜15のいずれか1つに記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。
【請求項17】
前記固定無線機の少なくとも2つを同期用パケット送信用の基地局とする請求項11〜16のいずれか1つに記載の無線通信ネットワークシステムの同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78073(P2013−78073A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218180(P2011−218180)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】