説明

無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法

【課題】無線通信ネットワークが自らの位置情報が未知の第1モードデバイスを含むものであっても、その干渉量並びに干渉の有無を高精度に予測する。
【解決手段】各第1モードデバイス71につき第2モードデバイス72又はコーディネータ61を中心とした位置情報を生成し、一の無線通信ネットワーク6における全ての各第1モードデバイス71、及び各第2モードデバイス72又はコーディネータ61から、他の無線通信ネットワーク6内にあるそれらにに対してそれぞれ位置情報を含むパラメータを互いに送受信することにより、それぞれ干渉量を計算し、計算した干渉量のうち最も大きい値を最大干渉量として特定し、これらの計算サイクルを所定回数nに亘って繰り返し実行した後、最大干渉量の累積確率分布を求め、所定の累積確率における干渉量を当該無線通信ネットワーク間の通信干渉量としてこれに基づいて通信干渉の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自らの位置情報が未知の第1モードデバイスと、自らの位置情報が既知の第2モードデバイスとを含む複数の無線通信ネットワーク間の通信干渉の有無を予測する無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりTV White Space(TVWS)を利用した無線通信ネットワークの標準化が進められており、特に近年においては異なるIEEE802標準がTVWSにおいて共存するための手法の標準化(IEEE802.19規格)も進められている。このため、これら異なるIEEE802標準の通信システムを同じ周波数帯においていかに共存させるかが特に重要になり、特に最近における無線通信機会の飛躍的な増大に伴い、その重要性はより増している。
【0003】
例えば、異なる2つ以上の無線通信方式を同じ周波数帯域において動作させる場合、互いに干渉することなく同一空間内において共存し得る共存方法を確立する必要がある。従来においても、例えば特許文献1、2に示すように、互いの無線通信ネットワークによる相互干渉の影響を無くしてそれぞれの共存を可能とする共存技術が提案されている。
【0004】
また、異なる2つ以上の無線通信システムを同じ周波数帯域において動作させる場合、互いに干渉することなく同一空間内において共存し得る共存方法を確立する必要がある。従来においても、例えば特許文献1に示すように、互いの無線通信ネットワークによる相互干渉の影響を無くしてそれぞれの共存を可能とする共存技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−529549号公報
【特許文献2】米国特許第2010/0008297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、互いの無線通信ネットワークによる相互干渉の影響を除去するためには、先ずその無線通信ネットワーク間の相互干渉の干渉量を正確に特定する必要がある。そして、この特定した干渉量に基づいて、それが互いの通信に影響を及ぼすレベルのものであるか否かを判別する必要がある。そして何れの無線通信ネットワークが干渉を与える側であり、また何れの無線通信ネットワークが干渉を受ける側であるのかを、或いは双方の無線通信ネットワークが互いに干渉を及ぼしあうものであるかを知る必要がある。
【0007】
しかしながら、TVWSにおいては、常時固定され、自らの位置情報が既知であるルータ等で構成される固定デバイス、自らの位置情報が未知の第1モードデバイスと、自らの位置情報が既知の第2モードデバイスの3種類に分類することができる。このうち第1モードデバイスは、自らの位置情報を取得していないため、この第1モードデバイスによる通信が他の無線通信システムに与える干渉を定量的な計算により求めることができない。即ち、TVWSにおいては自らの位置情報が未知の第1モードデバイスの存在により、予め干渉を計算により定量的に予測することが困難であるという問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、無線通信ネットワークが自らの位置情報が未知の第1モードデバイスと、自らの位置情報が既知の第2モードデバイスを含むものであっても、その干渉量並びに干渉の有無を高精度に予測することが可能な無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願第1発明に係る無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法は、自らの位置情報が未知の第1モードデバイスと、自らの位置情報が既知の第2モードデバイス又は固定基地局とを含む複数の無線通信ネットワーク間の通信干渉の有無を予測する無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法において、上記各第1モードデバイスにつき上記第2モードデバイス又は上記固定基地局を中心としたランダムな半径及び角度で示した仮の位置情報を生成する仮位置情報生成ステップと、一の無線通信ネットワークにおける全ての上記各第1モードデバイス、及び上記各第2モードデバイス又は上記固定基地局から、他の無線通信ネットワーク内にある全ての第1モードデバイス、及び第2モードデバイス又は上記固定基地局に対してそれぞれ上記位置情報を含むパラメータを互いに送受信することにより、それぞれ干渉量を計算する干渉量計算ステップと、干渉量計算ステップにおいて計算した干渉量のうち最も大きい値を最大干渉量として特定する最大干渉量特定ステップと、上記仮位置情報生成ステップから最大干渉量特定ステップまでの計算サイクルを所定回数nに亘って繰り返し実行した後、所定回数n個分算出した最大干渉量の累積確率分布を求め、所定の累積確率における干渉量を当該無線通信ネットワーク間の通信干渉量とする干渉量決定ステップと、上記干渉量決定ステップにより決定された通信干渉量が所定の閾値以上である場合に、当該無線通信ネットワーク間で通信干渉が生じたものと判定する通信干渉判定ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
本願第2発明に係る無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法は、自らの位置情報が未知の第1モードデバイスと、自らの位置情報が既知の第2モードデバイス又は固定基地局とを含む複数の無線通信ネットワーク間の通信干渉の有無を予測する無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法において、上記各第1モードデバイスにつき上記第2モードデバイス又は上記固定基地局を中心としたランダムな半径及び角度で示した仮の位置情報を生成する仮位置情報生成ステップと、一の無線通信ネットワークにおける全ての上記各第1モードデバイス、及び上記各第2モードデバイス又は上記固定基地局から、他の無線通信ネットワーク内にある全ての第1モードデバイス、及び第2モードデバイス又は上記固定基地局に対してそれぞれ上記位置情報を含むパラメータを互いに送受信することにより、それぞれ干渉量を計算する干渉量計算ステップと、干渉量計算ステップにおいて計算した干渉量の平均値を平均干渉量として特定する平均干渉量特定ステップと、上記仮位置情報生成ステップから平均干渉量特定ステップまでの計算サイクルを所定回数nに亘って繰り返し実行した後、所定回数n個分算出した平均干渉量の累積確率分布を求め、所定の累積確率における干渉量を当該無線通信ネットワーク間の通信干渉量とする干渉量決定ステップと、上記干渉量決定ステップにより決定された通信干渉量が所定の閾値以上である場合に、当該無線通信ネットワーク間で通信干渉が生じたものと判定する通信干渉判定ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述した構成からなる本発明によれば、無線通信ネットワークが自らの位置情報が未知の第1モードデバイスと、自らの位置情報が既知の第2モードデバイスを含むものであっても、第1モードデバイスの仮位置情報をランダムに生成して、これに基づいて干渉量を求める。但し、この仮位置情報をランダムに生成している関係上、その分誤差が含まれる可能性があるため、かかる処理をn回に亘って繰り返し実行し、そのCDFを介して干渉量を予測することで、その精度向上を図ることを意図したものである。これにより、干渉量並びに干渉の有無を高精度に予測することがとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した無線通信ネットワーク間の通信干渉予測システムの構成図である。
【図2】本発明を適用した無線通信ネットワーク間の通信干渉予測システムにおける一のCDIS下の階層構造の模式図である。
【図3】本発明を適用した通信干渉予測方法のフローチャートである。
【図4】仮位置情報生成ステップによる動作を説明するための図である。
【図5】他の無線通信ネットワークについてもランダムな仮位置情報を求める例を示す図である。
【図6】一の無線通信ネットワークから他の無線通信ネットワークに対して干渉量を計算する例を示す図である。
【図7】他の無線通信ネットワークから一の無線通信ネットワークに対して干渉量を計算する例を示す図である。
【図8】所定のCDFにおける通信干渉量の特定方法について説明するための図である。
【図9】本発明を適用した通信干渉予測方法の他のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明を適用した無線通信ネットワーク間の通信干渉予測システムは、IEEE802.19.1標準が実装され、TV White Space(TVWS)存在する場合においても互いに共存処理を行うことが可能なシステムである。但し、本発明を適用した通信システムは、これに限定されるものではなく、TVWS以外の空間においても、他のいかなるシステム間の通信干渉予測において適用してもよい。
【0015】
本発明を適用した無線通信ネットワーク間の通信干渉予測システム1は、図1に示すように、一つのCDIS(Coexistence Discovery and Information Server)2と、このCDISとの間で情報を送受信可能な複数のCM(Coexistence Manager)3と、これら各CM3との間で情報を送受信可能なCE4(Coexistence Enabler)とを備えている。この図1では、CDIS2との間で情報を送受信可能な2つのCM3a、3bと、このCM3aの管轄に入っており、このCM3aのみと情報を送受信できる2つのCE4a−1、4a−2と、CM3bの管轄に入っており、このCM3bのみと情報を送受信できる1つのCE4bとを備えている場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではない。また、CDIS2は、一つのみ設けられている場合に限定されるものではなく、複数に亘り設けられるものであってもよい。仮に複数のCDIS2が設けられる場合には、互いに同期をとる必要がある。
【0016】
また、この通信干渉予測システム1は、TVWSのデータベース5との間でも情報を送受信可能とされている。具体的には、CDIS2又はCM3が、このデータベース5との間で情報を送受信可能とされている。
【0017】
この本発明を適用した通信干渉予測システム1は、そのシステム外にある複数の無線通信ネットワーク6間において互いに通信干渉が生じているか否かを予測する。CE4は、その通信干渉の予測対象としての無線通信ネットワーク6に実装されている。無線通信ネットワーク6は、当該ネットワークの固定基地局としての役割を担うコーディネータ61と、かかるコーディネータ61との間で無線通信可能な複数のデバイス62を有している。ちなみに、このCE4は、コーディネータ61、デバイス62の何れに実装されていてもよい。
【0018】
以下、本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システム1の各構成要素について詳細に説明をする。
【0019】
CDIS2は、少なくとも無線通信ネットワーク6間における共存処理に関する各種情報が記述され、またCM3が実際に共存処理の制御を行う場合において、自身に格納されている各種有用な情報を提供するサーバーである。また、このCDIS2は、TVWSのデータベース5にアクセスし、そのTVWSにおける通信干渉を検出する上で必要な、使用可能な情報を取得してこれを蓄積する。またCDIS2は、CM3毎にその管轄するCE4を記憶し、またこれらを管理する。
【0020】
CM3は、必要に応じて共存処理に関する意思決定を行う。このCM3は、通信干渉予測に関する各要求コマンド、又は応答コマンドを生成し、これをCDIS2やCE4へ送信する。また、このCM3は、CDIS2やCE4から送信されてきた各要求コマンド、又は応答コマンドを受信して共存に関する各種意思決定を行い、又は処理動作を実行することになる。また、CM3は、CE4自体が通信干渉予測に関する意思決定を行わない場合には、このCE4に代わってその意思決定を代行する場合もある。またCM3はTVWSとの共存処理を行う場合においても、共存制御を自ら実行し、又はこれを補助する役割も担う。ちなみに、このCM3は、それぞれのCE4の管轄が割り当てられている。
【0021】
図2は、本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システム1における階層構造の模式的に示している。この図2によれば、例えばCM3aの管轄としては、CE4a−1、CE4a−2、CE4a−3が割り当てられている。CM3bの管轄としては、CE4b−1、CE4b−2、CE4b−3、CE4b−4が割り当てられている。またCM3cの管轄としては、CE4c−1、CE4c−2、CE4c−3が割り当てられている。例えばCM3aは、自らの管轄内にあるCE4a−1、CE4a−2、CE4a−3がそれぞれどのチャネルを利用しているのか、その通信範囲はどの程度か、どの通信規格か、等といった各種通信情報を基本的に全て把握しようとする。把握した通信情報は、CM3内にある図示しない記憶部に記憶される。また自己の管轄内にあるCE4に関する通信情報が更新された場合には、随時アップデートされる場合もある。
【0022】
ちなみに、ここでいう通信情報は、コーディネータ61の位置情報、デバイス62の位置情報、通信環境(屋外、屋内、都市部、郊外等)に関する情報、アンテナに関する情報、使用する周波数チャネルに関する情報、使用する帯域幅、受信機側の特性(SN比、受信感度等)、送信機側の特性、アンテナの方向等である。ちなみに、この通信情報としては、CM3のIDやネットワークID、サービスエリア、ネットワークの規格や通信方式、各種意思決定の方法等、通信に関するあらゆる情報が含まれる。
【0023】
CE4は、無線通信ネットワーク6におけるコーディネータ61並びにデバイス62間と、CM3との間における通信を中継し、また共存に関する各種処理を実行するイネーブラーである。このCE4は、実際に無線通信ネットワーク6におけるコーディネータ61内に実装され、そのコーディネータ61によって生成され、又はデバイス62から受信した、共存に関する各種要求や応答をCM3へ送信する。また、このCE4は、CM3から送信されてくる、共存に関する各種要求や応答をコーディネータ61やデバイス62へ送る。CE4は、あくまでイネーブラーとしての役割が主たるものであって、送受信する信号を必要に応じて他の規格のものに置き換えたり、送受信する信号を他の信号に変換する処理を担う。即ち、図1におけるCE4とコーディネータ61との間における点線矢印は、何れもイネーブルを意味する。このCE4は、CM3の下に管轄グループに分かれ、一のCE4が2以上のCM3の管轄グループに属することは無い。
【0024】
なお、CE4は、それぞれ無線通信ネットワーク6に実装されることから、CE4の判断は、無線通信ネットワーク6(コーディネータ61、デバイス62を含む)自身の判断を代表しているといえる。
【0025】
TVWSのデータベース5は、ユーザによって既に占有されているチャネルのリストを格納するデータベースである。また、このTVWSのデータベース5は、既に占有されていないチャネルのリストも格納する。
【0026】
デバイス62は、IEEE802標準に基づいてコーディネータ61との間で無線パケット通信を行うことができ、更にはコーディネータ61を介して他のデバイス62との間で無線パケット通信を行うことができる。このデバイス62は、例えば携帯電話、パーソナルコンピュータ(PC)等を初めとしたモバイル端末等である。ちなみに、このデバイス62は、自らの位置情報が未知の第1モードデバイスと、自らの位置情報が既知の第2モードデバイスに更に分類することが可能となる。
【0027】
コーディネータ61も同様に上述したデバイス62と構成を同一とするものであってもよい。このコーディネータ61は、無線通信ネットワーク6内における固定基地局としての役割を担う。また、コーディネータ61にはCE4を装着可能な図示しない装着部が設けられていてもよい。また、このコーディネータ61は、自らの位置情報が既知である。ちなみに、このコーディネータ61の構成が存在しない場合には、第2モードデバイスがこのコーディネータ61としての役割を担うようにしてもよい。
【0028】
ちなみに、この無線通信ネットワーク6内には、当該ネットワーク6内の通信を制御するための通信制御局が別途設けられていてもよい。
【0029】
次に、本発明を適用した無線通信ネットワーク間の通信干渉予測システム1による通信干渉予測方法について説明をする。
【0030】
図3は、通信干渉予測方法のフローチャートを示している。このフローの当初においては、先ず変数kが0と設定されているものとする。先ずステップS11において、第2モードデバイスについて仮位置情報を生成する仮位置情報生成ステップS11を実行する。図4は、仮位置情報生成ステップS11による動作を説明するための図であるが、ここでは、コーディネータ61のうち自らの位置情報が既知の第2モードデバイス72と、コーディネータ61のうち自らの位置情報が未知の第1モードデバイス71に分類して説明をする。ちなみにコーディネータ61も自らの位置情報が既知であることから第2モードデバイス72と同様のカテゴリーの下で説明を行う。
【0031】
このステップS11においては、第2モードデバイス72又はコーディネータ61を中心とした第1モードデバイス71の仮の位置情報(以下、仮位置情報という。)を生成する。この第1モードデバイス71については、仮位置情報を第2モードデバイス72又はコーディネータ61を中心とした半径r及び角度θで表示するものとする。
【0032】
この仮位置情報の生成方法としては、仮に第1モードデバイス71の数が無線通信ネットワーク6c内において第2モードデバイス72等を中心としたランダムな半径r及び角度θを設定し、そのランダムな半径r及び角度θに基づいた位置を、その第1モードデバイス71の仮位置とする。仮に無線通信ネットワーク6c内において第1モードデバイス71が図4に示すように3個存在する場合には、3個分について、ランダムな半径r及び角度θに基づいた仮位置情報を生成する。
【0033】
ちなみに、この仮位置情報の生成は、干渉の有無を予測する双方の無線通信ネットワーク6についてそれぞれ実行する。図5は、無線通信ネットワーク6cについての通信干渉を予測する他の無線通信ネットワーク6dについても同様に第1モードデバイス71についてランダムな仮位置情報を求めた例を示している。他の無線通信ネットワーク6dは、第1モードデバイス71が4個存在する場合において、4つのランダムな仮位置情報が生成されることとなる。
【0034】
次にステップS12に移行し、干渉量計算ステップに入る。このステップS12においては、図6に示すように、一の無線通信ネットワーク6cにおける個々の各第1モードデバイス71a−1〜71a−3並びに第2モードデバイス72b又はコーディネータ61aについて、他の無線通信ネットワーク6d内にある全ての第1モードデバイス71b−1〜71b−4、及び第2モードデバイス72b又は固定基地局61bに対してそれぞれ干渉量を計算する。例えば、一の無線通信ネットワーク6cにおける第1モードデバイス71a−1は、他の無線通信ネットワーク6d内にある第1モードデバイス71b−1との間で通信の干渉量m1を、第1モードデバイス71b−2との間で通信の干渉量m2を、第1モードデバイス71b−3との間で通信の干渉量m4を、第1モードデバイス71b−4との間で通信の干渉量m5を測定する。また、第2モードデバイス72b又は固定基地局61bとの間で干渉量m3を測定する。
【0035】
同様に、一の無線通信ネットワーク6cにおける第1モードデバイス71a−2は、他の無線通信ネットワーク6d内にある第1モードデバイス71b−1との間で通信の干渉量n1を、第1モードデバイス71b−2との間で通信の干渉量n2を、第1モードデバイス71b−3との間で通信の干渉量n4を、第1モードデバイス71b−4との間で通信の干渉量n5を測定する。また、第2モードデバイス72b又は固定基地局61bとの間で干渉量n3を測定する。同様の処理を、残りの第1モードデバイス71a−3並びにコーディネータ61aについて実行する。
【0036】
その結果、一の無線通信ネットワーク6cにおける個々の各第1モードデバイス71a−1〜71a−3並びにコーディネータ61aについて、他の無線通信ネットワーク6d内にある全ての第1モードデバイス71b−1〜71b−4、及び第2モードデバイス72b又は固定基地局61bに対してそれぞれ干渉量が求められる。
【0037】
同様に、このステップS12においては、他の無線通信ネットワーク6dにおける個々の各第1モードデバイス71b−1〜71b−4並びに第2モードデバイス72b又はコーディネータ61bについて、上述した一の無線通信ネットワーク6c内にある全ての第1モードデバイス71a−1〜71a−3、及び第2モードデバイス72a又は固定基地局61aに対してそれぞれ干渉量を計算する。例えば、図7に示すように、無線通信ネットワーク6dにおける第1モードデバイス71b−1は、無線通信ネットワーク6c内にある第1モードデバイス71a−1との間で通信の干渉量p1を、第1モードデバイス71a−2との間で通信の干渉量p4を、第1モードデバイス71a−3との間で通信の干渉量p2を、第2モードデバイス72a又は固定基地局61aとの間で干渉量p3を測定する。
【0038】
同様に、無線通信ネットワーク6dにおける第1モードデバイス71b−4は、他の無線通信ネットワーク6c内にある第1モードデバイス71a−1との間で通信の干渉量q1を、第1モードデバイス71a−2との間で通信の干渉量q4を、第1モードデバイス71b−3との間で通信の干渉量q3を測定する。また、第2モードデバイス72a又は固定基地局61aとの間で干渉量q2を測定する。同様の処理を、残りの第1モードデバイス71b−2、71b−4並びにコーディネータ61bについて実行する。
【0039】
ちなみに、このステップS12における干渉量の計算方法は、従来のいかなる方法に基づいて実行するようにしてもよいが、例えば、各種パラメータを互いに送受信することにより実行するようにしてもよい。パラメータの送受信は、上述したCE4、CM3、CDIS2等を介しつつ実行するようにしてもよい。この送受信すべきパラメータについては、上述した通信情報の何れか1以上を含むようにしてもよい。特にこの通信情報は、位置情報をも含むものであるが、位置情報が未知である第1モードデバイス71についてもステップS11において仮位置情報が生成されているため、これに基づいて干渉量を計算することが可能となる。
【0040】
次にステップS13へ移行し、最大干渉量の特定を行う。これは、上述したステップS12において計算した全てのm1、m2、・・・、n1、n2、・・、p1、p2、・・・q1、q2、・・・の中から最も干渉量の大きいものを最大干渉量として決定する。但し、この方法は、あくまで一の無線通信ネットワーク6cから他の無線通信ネットワーク6dへの干渉量、並びに他の無線通信ネットワーク6dから一の無線通信ネットワーク6cへの干渉量を統合して最大干渉量を特定するものであるが、これに限定されるものではない。
【0041】
例えば、一の無線通信ネットワーク6cから他の無線通信ネットワーク6dへの最大干渉量を、一の無線通信ネットワーク6cにおける個々の各第1モードデバイス71a−1〜71a−3並びに第2モードデバイス72a(コーディネータ61a)から、他の無線通信ネットワーク6d内にある全ての第1モードデバイス71b−1〜71b−4、及び第2モードデバイス72b又は固定基地局61bに対してそれぞれ求めた干渉量の中から最大のもの特定する。次に、他の無線通信ネットワーク6dから一の無線通信ネットワーク6cへの最大干渉量を、他の無線通信ネットワーク6dにおける個々の各第1モードデバイス71b−1〜71b−4並びに第2モードデバイス72b(コーディネータ61b)から、一の無線通信ネットワーク6c内にある全ての第1モードデバイス71a−1〜71a−3、及び第2モードデバイス72a又は固定基地局61aに対してそれぞれ求めた干渉量の中から最大のものを特定する。これにより、一の無線通信ネットワーク6cから他の無線通信ネットワーク6dへの最大干渉量、並びに他の無線通信ネットワーク6dから一の無線通信ネットワーク6cへの最大干渉量をそれぞれ特定することができる。
【0042】
次にステップS14へ移行し、変数kをnと比較する。ここでいうnとは、予めシステム側において任意に設定した計算サイクル実行回数である。仮にnが100であれば、上述したステップS11〜ステップS13までの計算サイクルを100回行うことになる。
【0043】
このステップS14においてk≧nであれば、所定の繰り返し回数が終了したものであると判定してステップS16へ移行する。これに対して、ステップS15においてk<nである場合には、未だ設定した実行回数に到達していないことを意味していることから、ステップS15へ移行し、変数kに1を加算した後再びステップS11へと戻ることになる。ステップS11に戻った場合には、再び仮位置情報を生成して、干渉量を計算していく計算サイクルを繰り返すことになる。
【0044】
またステップS16へ移行した場合には、所定回数n個分算出した最大干渉量の累積確率分布(CDF)を求める。図8は、最大干渉量について求めたCDFの例を示している。干渉量が小さくなるにつれてCDFが高くなることが示されている。ちなみにnはシステム側において自在に設定することができるが、例えばn=100〜200程度とされている。
【0045】
このステップS16においては、所定の累積確率における干渉量を当該無線通信ネットワーク6間の通信干渉量として決定する。図8の例では、CDFが90%である場合における通信干渉量−93.4977dBを当該無線通信ネットワーク6間の通信干渉量として決定した例である。ちなみに、この所定の累積確率は90%である場合に限定されるものではなく、いかなる値であってもよいが、80〜95%の範囲内にあることが望ましく、88〜92%の範囲にあることが最も望ましい。
【0046】
次にステップS17へ移行し、ステップS16において決定した通信干渉量を所定の閾値と比較する。そして、決定した通信干渉量が所定の閾値以上である場合に、当該無線通信ネットワーク間で通信干渉が生じたものと判定する。また、決定した通信干渉量が所定の閾値未満である場合に、当該無線通信ネットワーク間で通信干渉が生じなかったものと判定する。
【0047】
なお、ステップS13において、一の無線通信ネットワーク6cから他の無線通信ネットワーク6dへの最大干渉量、並びに他の無線通信ネットワーク6dから一の無線通信ネットワーク6cへの最大干渉量をそれぞれ特定した場合には、ステップS16、17の処理を通じて、無線通信ネットワーク6cが他の無線通信ネットワーク6dから受ける通信干渉の有無を判定し、またこれとは独立して無線通信ネットワーク6dが他の無線通信ネットワーク6cから受ける通信干渉の有無を判定することを行う。
【0048】
また、単なる通信干渉の判定結果を出力するのみに留まらず、例えば相手側の無線通信ネットワーク6のIDを表示するとともに通信干渉の方向性を表示するようにしてもよい。ここでいう通信干渉の方向性とは、無線通信ネットワーク6cと無線通信ネットワーク6dとが相互に通信干渉を及ぼしあう、又は無線通信ネットワーク6cのみが他の無線通信ネットワーク6dから通信干渉を受ける、又は無線通信ネットワーク6dのみが他の無線通信ネットワーク6cから通信干渉を受ける、の何れかであるかを示すものである。
【0049】
特に一の無線通信ネットワーク6cから他の無線通信ネットワーク6dへの最大干渉量、並びに他の無線通信ネットワーク6dから一の無線通信ネットワーク6cへの最大干渉量をそれぞれ特定した場合には、通信干渉の方向性についても判定して表示することが可能となる。
【0050】
このように、本発明によれば、無線通信ネットワーク6が自らの位置情報が未知の第1モードデバイス71と、自らの位置情報が既知の第2モードデバイス72を含むものであっても、第1モードデバイス71の仮位置情報をランダムに生成して、これに基づいて干渉量を求める。但し、この仮位置情報をランダムに生成している関係上、その分誤差が含まれる可能性があるため、かかる処理をn回に亘って繰り返し実行し、そのCDFを介して干渉量を予測することで、その精度向上を図ることを意図したものである。これにより、干渉量並びに干渉の有無を高精度に予測することが可能となる。
【0051】
特に本発明では、ステップS13においては、最大干渉量の特定を行うことを前提としている。即ち、最悪のケースを想定して、最大干渉量を基準とすることにより、通信干渉自体を確実に防止できることを前提としたものである。しかし、本発明は、ステップS13における最大干渉量の特定に限定されるものではない。このステップS13における最大干渉量の特定の代替として、例えば図9に示すように、平均干渉量特定ステップ(ステップS23)を設けるようにしてもよい。このステップS23では、ステップS12において計算した全てのm1、m2、・・・、n1、n2、・・、p1、p2、・・・q1、q2、・・・からなる干渉量について平均値を求め、これを平均干渉量とするものである。この平均干渉量を特定するステップS23を設ける場合には、ステップS16における処理において、所定回数n個分算出した平均干渉量の累積確率分布(CDF)を求めることとなる。係る方法においても同様にCDFが所定の累積確率にある場合の干渉量を通信干渉量として特定していくこととなる。
【0052】
このように、最大干渉量の特定の代替として平均干渉量を特定するものであっても、同様の作用効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1 無線通信ネットワーク間の通信干渉予測システム
2 CDIS
3 CM
4 CE
5 データベース
6 無線通信ネットワーク
61 コーディネータ
62 デバイス
71 第1モードデバイス
72 第2モードデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自らの位置情報が未知の第1モードデバイスと、自らの位置情報が既知の第2モードデバイス又は固定基地局とを含む複数の無線通信ネットワーク間の通信干渉の有無を予測する無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法において、
上記各第1モードデバイスにつき上記第2モードデバイス又は上記固定基地局を中心としたランダムな半径及び角度で示した仮の位置情報を生成する仮位置情報生成ステップと、
一の無線通信ネットワークにおける全ての上記各第1モードデバイス、及び上記各第2モードデバイス又は上記固定基地局から、他の無線通信ネットワーク内にある全ての第1モードデバイス、及び第2モードデバイス又は上記固定基地局に対してそれぞれ上記位置情報を含むパラメータを互いに送受信することにより、それぞれ干渉量を計算する干渉量計算ステップと、
干渉量計算ステップにおいて計算した干渉量のうち最も大きい値を最大干渉量として特定する最大干渉量特定ステップと、
上記仮位置情報生成ステップから最大干渉量特定ステップまでの計算サイクルを所定回数nに亘って繰り返し実行した後、所定回数n個分算出した最大干渉量の累積確率分布を求め、所定の累積確率における干渉量を当該無線通信ネットワーク間の通信干渉量とする干渉量決定ステップと、
上記干渉量決定ステップにより決定された通信干渉量が所定の閾値以上である場合に、当該無線通信ネットワーク間で通信干渉が生じたものと判定する通信干渉判定ステップとを有すること
を特徴とする無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法。
【請求項2】
自らの位置情報が未知の第1モードデバイスと、自らの位置情報が既知の第2モードデバイス又は固定基地局とを含む複数の無線通信ネットワーク間の通信干渉の有無を予測する無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法において、
上記各第1モードデバイスにつき上記第2モードデバイス又は上記固定基地局を中心としたランダムな半径及び角度で示した仮の位置情報を生成する仮位置情報生成ステップと、
一の無線通信ネットワークにおける全ての上記各第1モードデバイス、及び上記各第2モードデバイス又は上記固定基地局から、他の無線通信ネットワーク内にある全ての第1モードデバイス、及び第2モードデバイス又は上記固定基地局に対してそれぞれ上記位置情報を含むパラメータを互いに送受信することにより、それぞれ干渉量を計算する干渉量計算ステップと、
干渉量計算ステップにおいて計算した干渉量の平均値を平均干渉量として特定する平均干渉量特定ステップと、
上記仮位置情報生成ステップから平均干渉量特定ステップまでの計算サイクルを所定回数nに亘って繰り返し実行した後、所定回数n個分算出した平均干渉量の累積確率分布を求め、所定の累積確率における干渉量を当該無線通信ネットワーク間の通信干渉量とする干渉量決定ステップと、
上記干渉量決定ステップにより決定された通信干渉量が所定の閾値以上である場合に、当該無線通信ネットワーク間で通信干渉が生じたものと判定する通信干渉判定ステップとを有すること
を特徴とする無線通信ネットワーク間の通信干渉予測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−90164(P2013−90164A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229334(P2011−229334)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】