説明

無線通信ルートの安定性評価装置及び安定性評価プログラム、並びに、無線通信ルートの選定装置及び選定プログラム

【課題】将来の設置状況・周辺状況の変化や使用条件の変化への対応力も含めた無線センサネットワークの通信ルートの安定性を評価することを可能とする。
【解決手段】複数の無線センサ端末のうちのデータ収集局として機能する無線センサ端末に対して二つの周波数で試験電波を発信する指令を出力し、複数の無線センサ端末それぞれの周波数別の試験電波の受信電力の測定結果を収集し、無線センサ端末の組み合わせ毎の周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定し、無線センサ端末の組み合わせ毎の周波数別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定し、二つの周波数のどちらについても受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であり且つ周波数別の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下である無線センサ端末の組み合わせを無線通信ルートとして選定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ルートの安定性を評価する技術、並びに、無線通信ルートを選定する技術に関する。さらに詳述すると、本発明は、複数の端末が無線によって通信を行う無線通信システムにおける無線通信ルート毎の安定性を評価する技術、並びに、無線通信ルートの安定性評価に基づいて無線通信ルートを選定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線センサネットワークは、無線機能を有するセンサ端末を複数設置してこれら複数の無線センサ端末が相互に通信の中継を行うなどして無線による通信ネットワークを自律的に構築し、各無線センサ端末によって収集されたセンサ情報(データ)を伝送する仕組みであり、例えば各種設備のセンシング・状態監視や保全技術の省力化・高度化などへの応用が期待されている。
【0003】
無線センサネットワーク技術については、具体的には例えば無線PAN(Personal Area Network の略)に関するIEEE802.15や無線LAN(Local Area Network の略)に関するIEEE801.11の国際規格の整備が進められている。
【0004】
無線センサネットワークは、無線を使うシステムであるため、通信が行われるためには電波が目的の場所まで到達する必要がある。理論的には、送信電力及び送信アンテナの利得並びに受信アンテナの利得及び受信機の感度から自由空間伝搬損失のマージンを計算して通信可能な距離を求めることができる。そこで、算出された通信可能な距離に基づいて定められる範囲内に無線センサ端末を配置すれば、複数の無線センサ端末が相互に通信の中継を行うことができ、理論上は無線による通信ネットワークを構築することができる。
【0005】
しかしながら、実際には、対象地域・施設の状況等の周囲の環境によって通信できる場所とできない場所とが決まってくる。このため、例えば金属構造物が多い場所に無線センサネットワークを構築した場合には、電波の多重反射や遮蔽や外部雑音などの影響によって通信できない区間が発生して全てのセンサ情報(データ)を安定して収集できないことがある。つまり、広い場所に少数の無線センサ端末を設置する場合には、ネットワーク構成をメッシュ状に構成することができず、一つの無線通信ルートに通信が集中することがある。その結果、その無線通信ルートが通信不能になってしまった場合には、複数の無線センサ端末のセンサ情報が収集できなくなる可能性がある。
【0006】
このために各無線センサ端末の間で通信することができるか否かを判定する必要があり、従来は、相手の端末からの試験電波が一定以上のレベル(強度)で受信できたか否かを検査することによって無線センサ端末間での通信の可否の判定を行うようにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−341648号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
無線センサ端末間での通信の可否の従来の判定方法では、利用が予定されている特定の無線周波数についての、検査の一時期における結果に基づいて無線センサ端末間(即ち、無線通信ルート)の通信の可否を判定しているに過ぎない。
【0009】
しかしながら、無線センサ端末間の通信成功率は受信電力に大きく依存し、そして受信電力は位置によって変化し、電波の複雑な多重反射や遮蔽や外部雑音などの影響によって場合によっては1〔cm〕程度の位置の違いで大きく変化することがある。このような場合には、無線センサ端末を設置した初期の時点では通信が可能であっても、その後に送信端末,受信端末,反射物の何れかの位置が僅かでも変化すれば通信不能になる虞がある。具体的には、無線センサ端末が設置されている各種機器の動作時の振動や強風などによる傾きの他にも気温による機器の膨張によっても通信状態が変化することが考えられ、受信電力が日周期で変動する例も報告されている(尾造宏之:電波伝搬特性に基づく無線センサネットワーク構築の基礎検討−変電所構内での微弱無線およびIEEE802.15.4の電波伝搬特性−,電力中央研究所研究報告 R05007,2006年5月)。
【0010】
このため、従来の判定方法は、検査の一時期における通信の可否を判定することはできても、将来の通信の可能性(言い換えると、潜在的な脆弱性)を判定することはできないという問題があり、将来の安定性の低い無線通信ルートであっても通信可能であると判定してしまうので信頼性が高いとは言い難い。
【0011】
そこで、本発明は、将来の設置状況・周辺状況の変化や使用条件の変化への対応力も含めた無線センサネットワークの通信ルートの安定性を評価することができる無線通信ルートの安定性評価装置及び安定性評価プログラムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、将来の設置状況・周辺状況の変化や使用条件の変化への対応力も含めた無線センサネットワークの通信ルートの安定性評価に基づいて無線通信ルートの選定をすることができる無線通信ルートの選定装置及び選定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の無線通信ルートの安定性評価装置は、二つの無線センサ端末に対して順次に二つの周波数で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する手段と、二つの無線センサ端末それぞれの二つの周波数別の試験電波の受信電力の測定結果を収集する手段と、二つの無線センサ端末間の二つの周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する手段と、二つの無線センサ端末間の二つの周波数別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する手段と、二つの周波数のどちらについても受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であり且つ二つの周波数別の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下である場合には二つの無線センサ端末間の通信状態は安定していると評価する手段とを有するようにしている。
【0013】
また、請求項2記載の無線通信ルートの安定性評価プログラムは、二つの無線センサ端末間の通信状態を評価する処理を行わせるためのプログラムであって、二つの無線センサ端末に対して順次に二つの周波数で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する処理と、二つの無線センサ端末それぞれの二つの周波数別の試験電波の受信電力の測定結果を収集する処理と、二つの無線センサ端末間の二つの周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する処理と、二つの無線センサ端末間の二つの周波数別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する処理と、二つの周波数のどちらについても受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であり且つ二つの周波数別の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下である場合には二つの無線センサ端末間の通信状態は安定していると評価する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
【0014】
これらの無線通信ルートの安定性評価装置及び安定性評価プログラムによると、下記に説明する原理によって将来の設置状況・周辺状況の変化や使用条件の変化への対応力も含めた無線センサネットワークの通信ルートの安定性を評価することができる。
【0015】
ここでは、直接波と金属反射波1波との2波干渉モデルによって受信電力(受信強度)の変動の特性を検討する。具体的には、無線センサ端末間を結ぶ直線から金属面までの距離をx〔m〕とし、無線センサ端末間の距離をz〔m〕、距離z=1〔m〕での直接波の受信電力を1〔mW〕とすると、受信電力のレベルは数式1で表される。
【数1】

ただし、 Pr:受信レベル〔dBm〕,
r:受信電力〔mW〕,
r:反射波の伝搬長〔m〕,
φ:直接波と反射波との位相差〔radian〕,
f:無線の周波数〔Hz〕,
c:真空中の光の速さ〔m/s〕 をそれぞれ表す。
【0016】
数式1−2の第3項が直接波と反射波との干渉による変動を表し、直接波と反射波との位相差φが(2n+1)π(ただし、nは整数)のときに受信レベルのディップ(窪み)が生じる。
【0017】
また、z>>xのとき、数式1−4は近似的に数式2のように表される。
(数2) φ=πf/c(4x2/z)
【0018】
すなわち、直接波と反射波との位相差φは、無線センサ端末間の距離z,無線センサ端末間を結ぶ直線から金属面までの距離x,無線の周波数fに依存することが分かる。そして、これらの変化Δz,Δx,Δfに対する位相差φの変化Δφは数式3の関係になるので、Δφはその時のφと各々の変数の変化率とで決まることになる。
(数3) Δφ/φ=−Δz/z=2Δx/x=Δf/f
【0019】
数式3からは、z>>xの地点ではz方向よりもx方向の方が移動による位相差φの変化Δφが大きく、受信レベルPrの変化が急峻になると考えられる。一方で、位相差φの変化によって受信レベルPrが大きく変化する場所は、位相差φ=(2n+1)π且つ直接波と干渉波との強度差が小さい地点である。すなわち、例えばx方向の移動のみによって受信レベルPrの変化が決定づけられると単純化することはできず、一方で、位相差φ=(2n+1)π且つ直接波と干渉波との強度差が小さい地点ではz,x,fのうちの何れが変化しても受信レベルPrが大きく変化することになる。
【0020】
f1=2440〔MHz〕,f2=2460〔MHz〕,x=2〔m〕,z=1〔m〕での直接波受信レベルを-30〔dBm〕として数式1に従って計算した例を図4に示す。図4(A)から、金属反射では受信レベルが場所によって急激に減衰する所があり(大地反射や遮蔽による減衰とは異なる)、この付近では場所を移動すれば受信レベルが大きく変動することが確認され、すなわち不安定な場所であるがこのことは実際に移動させないと分からない。一方で、図4(B)から、周波数を変えれば場所を実際に移動させなくても大きく変動することが確認される。
【0021】
以上より、無線センサ端末の位置の微動による受信レベルの変動が大きい地点では電波の周波数の微動による受信レベルの変動も大きい。すなわち、無線センサ端末の位置の微動によって受信レベルが変動してしまう場所は電波の周波数の微動によっても受信レベルが変動するので、二つの周波数チャネル間の受信レベルの差に基づいて通信状態が不安定な通信ルートを予測して無線通信ルートの評価に反映することにより、安定性の高い無線通信ルートを選定することができる。具体的には、電波の周波数を変化させたときに受信レベルが大きく変動する通信ルートは潜在的に脆弱であると言えるので、当該通信ルートを排除することによって安定性の高い無線通信ルートのみを選定することができる。
【0022】
したがって、本発明の無線通信ルートの安定性評価装置及び安定性評価プログラム無線センサ端末での周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルに加えて周波数別の試験電波の受信レベルの差を用いて無線センサ端末間の通信状態を評価するようにしているので、受信レベルの高低に加えて通信状態の安定性を考慮した無線通信ルートの評価が行われる。
【0023】
また、請求項3記載の無線通信ルートの選定装置は、複数の無線センサ端末に対して順次に二つの周波数で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する手段と、複数の無線センサ端末それぞれの二つの周波数別の試験電波の受信電力の測定結果を収集する手段と、無線センサ端末の組み合わせ毎の二つの周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する手段と、無線センサ端末の組み合わせ毎の二つの周波数別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する手段と、二つの周波数のどちらについても受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であり且つ二つの周波数別の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下である無線センサ端末の組み合わせを無線通信ルートとして選定する手段とを有するを備えるようにしている。
【0024】
また、請求項4記載の無線通信ルートの選定プログラムは、複数の無線センサ端末によって無線センサネットワークを構築するための通信ルートを選定する処理を行わせるためのプログラムであって、複数の無線センサ端末に対して順次に二つの周波数で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する処理と、複数の無線センサ端末それぞれの二つの周波数別の試験電波の受信電力の測定結果を収集する処理と、無線センサ端末の組み合わせ毎の二つの周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する処理と、無線センサ端末の組み合わせ毎の二つの周波数別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する処理と、二つの周波数のどちらについても受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であり且つ二つの周波数別の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下である無線センサ端末の組み合わせを無線通信ルートとして選定する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
【0025】
したがって、これらの無線通信ルートの選定装置及び選定プログラムによると、無線センサ端末での周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルに加えて周波数別の試験電波の受信レベルの差を用いて無線センサ端末間の通信状態を評価して無線通信ルートを選定するようにしているので、受信レベルの高低に加えて通信状態の安定性を考慮した無線通信ルートの選定が行われる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の無線通信ルートの安定性評価装置及び安定性評価プログラムによれば、受信レベルの高低に加えて通信状態の安定性を考慮した無線通信ルートの評価を行うこと、すなわち、将来の設置状況・周辺状況の変化や使用条件の変化への対応力も含めた無線通信ルートの評価を行うことができるので、特定の周波数では受信レベルがたとえ高いとしてもその通信状態が実は不安定なものであって潜在的には脆弱な無線通信ルートを検知することができ、無線通信ルートの評価の信頼性の向上を図ることが可能になる。
【0027】
また、本発明の無線通信ルートの選定装置及び選定プログラムによれば、受信レベルの高低に加えて通信状態の安定性を考慮した無線通信ルートの選定を行うこと、すなわち、将来の設置状況・周辺状況の変化や使用条件の変化への対応力も含めた無線通信ルートの選定を行うことができるので、特定の周波数では受信レベルがたとえ高いとしてもその通信状態が実は不安定なものであって潜在的には脆弱な無線通信ルートを排除することができ、無線通信ルートの選定の信頼性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の無線通信ルートの安定性評価を用いた無線通信ルートの選定プログラムの実施形態の一例を説明するフローチャートである。
【図2】実施形態の無線通信ルートの安定性評価を用いた無線通信ルートの選定をプログラムを用いて実施する場合の無線通信ルートの選定装置の機能ブロック図である。
【図3】実施形態の無線通信ルートの選定の仕方を説明する図である。
【図4】2波干渉モデルによる受信電力(受信強度)の変動の特性の計算例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0030】
図1から図4に、本発明の無線通信ルートの安定性評価装置及び安定性評価プログラムを用いた(言い換えると、一部として含む)無線通信ルートの選定装置及び選定プログラムの実施形態の一例を示す。
【0031】
本発明では、無線センサネットワークを展開する対象地域・施設に複数の無線センサ端末が予め設置される(S0)。
【0032】
本発明では、電波の周波数チャネルの切り替え機能を有する無線センサ端末が用いられる。本実施形態では、六つの無線センサ端末1A,1B,…,1Fが設置されると共に、無線センサ端末1Aがデータ収集局として設定されて無線通信ルートの選定装置10に接続されている場合を例に挙げて説明する。
【0033】
本発明では、また、試験電波の二つの周波数f1,f2の値が予め設定される。なお、試験電波の周波数f1,f2の値は、特定の値に限定されるものではなく、実使用で予定されている周波数帯に対応させて適当な周波数が設定される。具体的には例えば、実使用で予定されている周波数帯が、2.4GHz帯(例えばIEEE802.15.4,IEEE802.11b等)であれば2440〔MHz〕と2460〔MHz〕とすることが考えられ、950MHz帯(例えばIEEE802.15.4d等)であれば951.0〔MHz〕と957.4〔MHz〕とすることが考えられる。
【0034】
そして、無線通信ルートの選定装置は、複数の無線センサ端末1A,1B,…,1Fのうちのデータ収集局として機能する無線センサ端末1Aを介して複数の無線センサ端末1A,1B,…,1Fに対して順次に二つの周波数f1,f2で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する手段(11b,11c)と、複数の無線センサ端末1A,1B,…,1Fそれぞれの二つの周波数f1・f2別の試験電波の受信電力の測定結果を収集する手段(11d)と、無線センサ端末1A,1B,…,1Fの組み合わせ毎の二つの周波数f1・f2別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する手段(11f)と、無線センサ端末1A,1B,…,1Fの組み合わせ毎の二つの周波数f1・f2別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する手段(11g)と、二つの周波数f1,f2のどちらについても受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であり且つ二つの周波数f1・f2別の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下である無線センサ端末1A,1B,…,1Fの組み合わせを無線通信ルートとして選定する手段(11h)とを有する。
【0035】
上記の無線通信ルートの安定性評価装置及び無線通信ルートの選定装置は、無線通信ルートの安定性評価プログラムを一部として含む無線通信ルートの選定プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、無線通信ルートの選定プログラムをコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。
【0036】
無線通信ルートの選定プログラム17を実行するための本実施形態の無線通信ルートの選定装置10の全体構成を図2に示す。この無線通信ルートの選定装置10は、制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14及びメモリ15を備え相互にバス等の信号回線により接続されている。また、無線通信ルートの選定装置10には無線センサ端末1Aがバス等の信号回線により接続されており、その信号回線を介して相互にデータや制御指令等の信号の送受信(即ち出入力)が行われる。
【0037】
制御部11は記憶部12に記憶されている無線通信ルートの選定プログラム17によって無線通信ルートの選定装置10全体の制御並びに無線通信ルートの安定性評価及び選定に係る演算を行うものであり、例えばCPU(即ち中央演算処理装置)である。記憶部12は少なくともデータやプログラムを記憶可能な記憶手段であり、例えばハードディスクである。メモリ15は制御部11が各種の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
【0038】
入力部13は少なくとも作業者の命令を制御部11に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。
【0039】
表示部14は制御部11の制御によって文字や図形等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
【0040】
そして、無線通信ルートの選定プログラム17を実行することによって無線通信ルートの選定装置10の制御部11には、受信電力の測定のための試験電波発信のカウントCの値を制御する手段としてのカウント部11aと、複数の無線センサ端末1A,1B,…,1Fのうちのデータ収集局として機能する無線センサ端末1Aを介して複数の無線センサ端末1A,1B,…,1Fに対して順次に二つの周波数f1,f2で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する処理を行う手段としての周波数設定部11b及び試験電波発信指令部11cと、複数の無線センサ端末1A,1B,…,1Fそれぞれの二つの周波数f1・f2別の試験電波の受信電力の測定結果を収集する処理を行う手段としての受信電力収集部11dと、受信電力の測定のための試験電波発信のカウントCの値が既定の値であるか否かを判定する手段としてのカウント比較部11eと、無線センサ端末1A,1B,…,1Fの組み合わせ毎の二つの周波数f1・f2別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する処理を行う手段としての受信レベル判定部11fと、無線センサ端末1A,1B,…,1Fの組み合わせ毎の二つの周波数f1・f2別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する処理を行う手段としての受信レベル差判定部11gと、二つの周波数f1,f2のどちらについても受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であり且つ二つの周波数f1・f2別の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下である無線センサ端末1A,1B,…,1Fの組み合わせを無線通信ルートとして選定する処理を行う手段としての通信ルート選定部11hとが構成される。
【0041】
本実施形態では、無線通信ルートの選定プログラム17が実行されると、まず、初期値として受信電力の測定のための試験電波発信のカウントC=0に設定され、メモリ15に記憶される(S0)。
【0042】
本実施形態では、また、周波数f1が試験電波発信のカウントC=1に対応する試験電波の周波数として設定されると共に周波数f2が試験電波発信のカウントC=2に対応する試験電波の周波数として設定されて無線通信ルートの選定プログラム17(以下、単にプログラム17と表記する)に規定される。
【0043】
そして、本発明が実行され、制御部11のカウント部11aは、受信電力の測定のための試験電波発信のカウントCの値をメモリ15から読み込み、当該Cに1を加える(S1)。そして、カウント部11aは、試験電波発信のカウントCの値をメモリ15に記憶させる。
【0044】
次に、制御部11の周波数設定部11bは、受信電力の測定のために発信する試験電波の周波数を設定する(S2)。周波数は例えば電波法で定められた周波数チャネルのチャネル番号でも良い。
【0045】
具体的には、周波数設定部11bは、試験電波発信のカウントCの値に対応づけられた試験電波の周波数(C=1のときはf1,C=2のときはf2)の値をプログラム17から読み込む。
【0046】
そして、周波数設定部11bは、受信電力の測定のための通信チャネルをプログラム17から読み込んだ周波数f1(若しくはf2)とする指令をデータ収集局として機能する無線センサ端末1Aに対して出力する。更に、無線センサ端末1Aから各無線センサ端末1B,…,1Fへ通信チャネルを周波数f1(若しくはf2)に設定するよう指令する。なお、指令の伝達は、例えばフラッディングを用いて行う。すなわち、無線センサ端末1Aがデータを含む電波を無指向に発信し、当該電波を受信した他の無線センサ端末1B,…,1Fは前記データを無指向に1回だけ発信する。
【0047】
次に、制御部11の試験電波発信指令部11cは、データ収集局として機能する無線センサ端末を介して各無線センサ端末に対して順次に試験電波の発信及び受信を指令する(S3)。
【0048】
本実施形態では、試験電波発信指令部11cは、試験電波を発信及び受信する指令をデータ収集局として機能する無線センサ端末1Aを介して各無線センサ端末に対して出力する。そして、本発明では、無線センサ端末1A,1B,…,1Fの全ての組み合わせ(以下、無線センサ端末1の組み合わせと表記する)毎の受信電力が測定される。
【0049】
具体的には、まず、無線センサ端末1Aに対して試験電波の送信が指令され、無線センサ端末1B〜1Fに対して試験電波の受信が指令される。そして、無線センサ端末1Aが試験電波(パケット)をフラッディングし、無線センサ端末1B〜1Fは当該試験電波を受信すると共に発信元の端末番号と対応づけて受信電力を全て記憶する。なお、受信電力は、各無線センサ端末が有するメモリに記憶される。
【0050】
次に、無線センサ端末1Bに対して試験電波の送信が指令され、無線センサ端末1A,1C〜1Fに対して試験電波の受信が指令される。そして、無線センサ端末1Bが試験電波をフラッディングし、無線センサ端末1A,1C〜1Fは当該試験電波を受信すると共に発信元の端末番号と対応づけて受信電力を全て記憶する。
【0051】
次に、無線センサ端末1Cに対して試験電波の送信が指令され、無線センサ端末1A,1B,1D〜1Fに対して試験電波の受信が指令される。そして、無線センサ端末1Cが試験電波をフラッディングし、無線センサ端末1A,1B,1D〜1Fは当該試験電波を受信すると共に発信元の端末番号と対応づけて受信電力を全て記憶する。
【0052】
同様に、無線センサ端末1Dが試験電波をフラッディングして他の無線センサ端末が当該試験電波を受信すると共に発信元の端末番号と対応づけて受信電力を全て記憶し、無線センサ端末1Eが試験電波をフラッディングして他の無線センサ端末が当該試験電波を受信すると共に発信元の端末番号と対応づけて受信電力を全て記憶し、さらに、無線センサ端末1Fが試験電波をフラッディングして他の無線センサ端末が当該試験電波を受信すると共に発信元の端末番号と対応づけて受信電力を全て記憶する。
【0053】
以上のように全ての無線センサ端末が1度は試験電波を発信することにより、全ての無線センサ端末間の双方向の受信電力が測定され、無線センサ端末1の組み合わせ毎の受信電力が測定される。
【0054】
次に、制御部11の受信電力収集部11dは、各無線センサ端末の試験電波の受信電力の測定結果を収集する(S4)。
【0055】
具体的には、受信電力収集部11dは試験電波の受信電力の測定結果の返信指令を各無線センサ端末1B,…,1Fに対して発信する指令をータ収集局として機能する無線センサ端末1Aに対して出力し、指令が入力された無線センサ端末1Aは受信電力の測定結果を返信する指令を各無線センサ端末1B,…,1Fに対して発信する。
【0056】
そして、各無線センサ端末1B,…,1Fは、S3の処理の際にメモリに記憶しておいた、他の無線センサ端末からフラッディングされた試験電波の受信電力を無線センサ端末1Aに伝送する。そして、無線センサ端末1Aは伝送された受信電力のデータをメモリ1Aaに記憶する。
【0057】
そして、受信電力収集部11dは、各無線センサ端末1B,…,1Fから無線センサ端末1Aに返信された試験電波の受信電力の測定結果、及び、無線センサ端末1A自身の試験電波の受信電力の測定結果を、無線センサ端末1Aのメモリ1Aaから読み込む。なお、各無線センサ端末1B,…,1Fから返信された測定結果は、無線センサ端末1Aのメモリ1Aaに記憶させることなく直接読み込むようにしても良い。
【0058】
さらに、受信電力収集部11dは、無線センサ端末のメモリ1Aaから読み込んだ受信電力の測定結果をメモリ15に記憶させる。これにより、試験電波の周波数f1,f2の場合の、無線センサ端末1の組み合わせ毎の受信電力の測定結果がメモリ15に蓄積される(なお、受信不能の場合には欠測となるので、受信不能であった無線センサ端末の組み合わせについてはデータは存在しない)。ここで、例えば無線センサ端末1A−1B間については端末1Aによる受信電力と端末1Bによる受信電力とが(すなわち、方向別の受信電力が)あるところ、無線センサ端末1A−1B間の受信電力としては、端末1Aと端末1Bとのどちらか一方のみの受信電力を用いるようにしても良いし、両方の受信電力の平均を用いるようにしても良い。
【0059】
次に、制御部11のカウント比較部11eは、受信電力の測定のための試験電波発信のカウントCが2であるか否かを判断する(S5)。
【0060】
具体的には、カウント比較部11eは、S1の処理においてメモリ15に記憶された試験電波発信のカウントCの値が2であるか否かを判断する。
【0061】
そして、C≠2(実際には、C=1)の場合には(S5:No)、制御部11は処理ステップをS1に戻し、S1以降の処理が繰り返される。
【0062】
一方、C=2の場合には(S5:Yes)、制御部11は処理ステップをS6に進める。なお、このときには、メモリ15には、試験電波の周波数f1・f2別の、無線センサ端末1の組み合わせ毎の受信電力の測定結果が蓄積されている(受信不能の場合にはデータなし)。
【0063】
そして、制御部11の受信レベル判定部11fは、無線センサ端末の組み合わせ毎の試験電波の周波数別の受信電力の受信レベルを判定する(S6)。
【0064】
本実施形態では、受信レベルを、無線センサ端末間の受信レベルとして最低限必要とされるレベル以上であるか否かと、さらに、受信レベルが十分に高いか否かとを組み合わせた三つのレベルに分類する。
【0065】
まず、無線センサ端末間の受信レベルとして最低限必要とされるレベル以上であるか否かについては、受信レベル最低閾値を設定してこれを用いて判定する。受信レベル最低閾値は、特定の値に限定されるものではなく、無線センサネットワークによって伝送される情報の重要性や無線センサネットワークを展開する対象地域・施設の状況なども踏まえ、受信可能ではあるけれども十分に良好な通信状態であるとは言えない程度を基準として適当な値が設定される。例えば、図4に示す例であれば、図4(A)を参考にして、受信レベル最低閾値を-95〔dB〕程度に設定することが考えられる。なお、受信レベル最低閾値を特定の値として設定する代わりに、受信レベルに関係なく受信可能か不能かを基準として設定するようにしても良い。
【0066】
また、無線センサ端末間の受信レベルが十分に高いか否かについては、受信レベル良好閾値を設定してこれを用いて判定する。受信レベル良好閾値は、特定の値に限定されるものではなく、無線センサネットワークによって伝送される情報の重要性や無線センサネットワークを展開する対象地域・施設の状況なども踏まえ、無線センサ端末間の通信状態が非常に良好であると言える程度を基準として適当な値が設定される。例えば、図4に示す例であれば、図4(A)を参考にして、受信レベル良好閾値を-75〔dB〕程度に設定することが考えられる。なお、本実施形態では、受信レベル最低閾値及び受信レベル良好閾値はプログラム17に規定される。
【0067】
そして、受信レベル判定部11fは、プログラム17に規定されている受信レベル最低閾値及び受信レベル良好閾値を読み込んでメモリ15に記憶させると共に、S4の処理においてメモリ15に記憶された試験電波の周波数f1・f2別の無線センサ端末1の組み合わせ毎の受信電力の測定結果のそれぞれについて、受信レベル最低閾値以上であるか否か、当該閾値以上である場合には更に受信レベル良好閾値以上であるか否かを判断する。
【0068】
そして、受信レベル判定部11fは、無線センサ端末1の組み合わせ毎に、周波数f1・f2別の受信電力の測定結果が、1)受信レベル最低閾値未満,2)受信レベル最低閾値以上且つ受信レベル良好閾値未満,3)受信レベル良好閾値以上のうちの何れであるかであるか(即ち、受信レベルの不足・低い・高いの区別。なお、受信不能の場合にはデータなし)をメモリ15に記憶させる。
【0069】
本実施形態の無線センサ端末1A,1B,…,1F(配置は想定)に対するS6の処理結果の例を図3(A)に示す。図3では、受信電力の測定結果が、受信不能若しくは受信レベル最低閾値未満(即ち受信レベル不足)は線なし,受信レベル最低閾値以上且つ受信レベル良好閾値未満(即ち受信レベル低い)は破線,受信レベル良好閾値以上(即ち受信レベル高い)は実線で表している。そして、無線センサ端末1の組み合わせ毎に、周波数f1と周波数f2との別に一本の線で表しているので、最大で二本の線が記されている。
【0070】
次に、制御部11の受信レベル差判定部11gは、無線センサ端末の組み合わせ毎の試験電波の周波数別の受信レベルの差を判定する(S7)。
【0071】
電波の周波数別の受信レベルの差(絶対値)が大きい場合には、無線センサ端末の位置の微動によって受信電力が大きく変動して将来通信不能になる可能性が高い。このため、本発明においては、電波の周波数別の受信レベルの差を無線通信ルートの安定性の評価指標の一つとして用いる。
【0072】
無線センサ端末間の通信状態が安定的であるか否か(言い換えると、電波の周波数別の受信レベルの差が小さいか否か)については、受信レベル差閾値を設定してこれを用いて判定する。受信レベル差閾値は、特定の値に限定されるものではなく、無線センサネットワークによって伝送される情報の重要性や無線センサネットワークを展開する対象地域・施設の状況なども踏まえ、受信レベルの差が小さく通信状態が比較的安定していると言える程度を基準として適当な値が設定される。例えば、図4に示す例であれば、図4(B)を参考にして、受信レベル差閾値を10〔dB〕程度に設定することが考えられる。なお、本実施形態では、受信レベル差閾値はプログラム17に規定される。
【0073】
ここで、受信レベル差閾値の設定の際に、測定された受信レベルと受信限界の閾値との差(言い換えると、あと何デジベル低下しても受信可能であるかという裕度)である受信マージンを考慮するようにしても良い。具体的には、受信マージンが大きい場合には受信レベル差閾値を大きめにしたり、受信マージンが小さい場合には受信レベル差閾値を小さめにしたりすることが考えられる。
【0074】
また、アンテナの利得には一般に周波数特性があるので、アンテナ利得の周波数特性を事前に測定しておき、S6及びS7の処理において受信利得・送信利得を考慮して現実の受信電力を校正したものを用いる。
【0075】
そして、受信レベル差判定部11gは、プログラム17に規定されている受信レベル差閾値を読み込んでメモリ15に記憶させると共に、S4の処理においてメモリ15に記憶された試験電波の周波数f1・f2別の無線センサ端末1の組み合わせ毎の受信電力の測定結果を用い、無線センサ端末1の組み合わせ毎に、周波数f1の場合の受信レベルと周波数f2の場合の受信レベルとの差(絶対値)を算出して当該差が受信レベル差閾値以下であるか否か(即ち、通信状態の安定・不安定の区別)をメモリ15に記憶させる。なお、受信不能の場合であって受信電力のデータがない場合には受信レベルを受信レベル最低閾値より十分低い適当な値に設定して受信レベルの差を算出する。
【0076】
次に、制御部11の通信ルート選定部11hは、無線センサネットワークを構築するための通信ルートを選定する(S8)。
【0077】
具体的には、通信ルート選定部11hは、S6の処理においてメモリ15に記憶された無線センサ端末1の組み合わせ毎の周波数f1・f2別受信レベルの不足・低い・高いの区別を読み込むと共にS7の処理においてメモリ15に記憶された無線センサ端末1の組み合わせ毎の通信状態の安定・不安定の区別を読み込む。
【0078】
そして、通信ルート選定部11hは、無線センサ端末1の組み合わせ毎に、「周波数f1の受信レベルが低い若しくは高い」且つ「周波数f2の受信レベルが低い若しくは高い」且つ「通信状態が安定」である場合に無線通信ルートとして選定してその結果をメモリ15に記憶させる。
【0079】
本実施形態の無線センサ端末1A,1B,…,1Fに対するS8の処理結果の例を図3(B)に示す。図3では、無線通信ルートとして選定された無線センサ端末間のみ、受信レベルを表す実線・破線を表示している。
【0080】
S6の処理結果を示す図3(A)も参照すると、例えば、無線センサ端末1A−1B間は周波数f1とf2とのどちらについても受信レベルが高く且つ通信状態が安定しているので通信ルートとして選定されている。また、無線センサ端末1A−1E間は周波数f1とf2とのどちらについても受信レベルは低いけれども通信状態が安定しているので通信ルートとして選定されている。
【0081】
また、無線センサ端末1A−1C間は周波数f1とf2とのどちらについても受信レベルが低い以上を確保しているけれども通信状態が不安定なので通信ルートとして選定されていない。すなわち、本発明においては、一方の周波数で受信レベルが高く他方の周波数で受信レベルが低い端末間よりも、両方の周波数で受信レベルが低い端末間の方が優先されて選定される場合がある。また、無線センサ端末1A−1D間は一方の周波数で受信不能であるので通信ルートとして選定されていない。
【0082】
そして、無線センサネットワークとしての実際の通信ルートとしては、無線センサ端末1の組み合わせ毎に上述の処理によって選定されたルート群から例えば中継数の少ないルートが採用される。具体的には、図3(B)に示す例では、無線センサ端末1Fから1Aへの通信の際には、無線センサ端末1F→1C→1B→1Aではなく、無線センサ端末1F→1B→1Aが採用される。ただし、実際の通信ルートとして他のルートが採用されても良く、無線センサネットワークの構築としての実際の通信ルートの採用はどのような考え方によるものであっても構わない。
【0083】
そして、制御部11は、必要に応じてS6,S7,S8の処理結果を例えば表示部14に表示したり処理結果のデータファイルとして記憶部12に記憶させたりしたうえで処理を終了する(END)。
【0084】
なお、本発明を適用した結果、無線通信ルートが選定されないために対象地域・施設全体に亘る無線センサネットワークを構築することができない場合や2ルート以上を確保できない場合には、例えば各種閾値の設定を変えたり、無線センサ端末1A,1B,…,1Fの位置を変えたりし、所要の無線通信ルートが確保できるまで本発明の処理を繰り返して行うようにしても良い。
【0085】
以上のように構成された本発明の無線通信ルートの安定性評価装置及び安定性評価プログラムによれば、受信レベルの高低に加えて通信状態の安定性を考慮した無線通信ルートの評価を行うこと、すなわち、将来の設置状況・周辺状況の変化や使用条件の変化への対応力も含めた無線通信ルートの評価を行うことができるので、特定の周波数では受信レベルがたとえ高いとしてもその通信状態が実は不安定なものであって潜在的には脆弱な無線通信ルートを検知することができ、無線通信ルートの評価の信頼性の向上を図ることが可能になる。
【0086】
また、本発明の無線通信ルートの選定装置及び選定プログラムによれば、受信レベルの高低に加えて通信状態の安定性を考慮した無線通信ルートの選定を行うこと、すなわち、将来の設置状況・周辺状況の変化や使用条件の変化への対応力も含めた無線通信ルートの選定を行うことができるので、特定の周波数では受信レベルがたとえ高いとしてもその通信状態が実は不安定なものであって潜在的には脆弱な無線通信ルートを排除することができ、無線通信ルートの選定の信頼性の向上を図ることが可能になる
【0087】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、無線センサネットワークを展開する対象地域・施設に六つの無線センサ端末1A,1B,…,1Fが設置される場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、無線センサ端末の数は二個以上であればいくつの場合であっても本発明を適用することができる。
【0088】
そして、無線通信ルートの選定(言い換えると、無線センサネットワークとしての通信ルート網の構築)をする必要はなく特定の無線センサ端末間の無線通信ルートの通信状態を単に評価したい場合には、二つの無線センサ端末を対象としてS0からS7までの処理を行い、「周波数f1の受信レベルが低い若しくは高い」且つ「周波数f2の受信レベルが低い若しくは高い」且つ「通信状態が安定」であればこれら二つの無線センサ端末間の通信状態は安定していると判断するようにすれば良い。
【0089】
また、本実施形態では、各無線センサ端末での受信電力を測定するためにフラッディングを用いるようにしているが、受信電力の測定方法はこれに限られるものではなく、各無線センサ端末での受信電力が測定できる方法であればどのような方法でも良い。
【0090】
また、本実施形態では、受信電力の受信レベルの判定(S6)において、受信レベル最低閾値及び受信レベル良好閾値を設定して受信レベルを三つに分類するようにしているが、受信レベルを三つに分類することは本発明の必須の要件ではない。すなわち、受信レベル最低閾値のみを設定して無線センサ端末間の受信レベルとして最低限必要とされるレベル以上であるか否かのみを判定すると共に当該判定結果も踏まえて無線通信ルートの選定(S8)を行うことによって本発明は成立する。
【符号の説明】
【0091】
1A 無線センサ端末(データ収集局)
10 無線通信ルートの選定装置
11 制御部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 メモリ
17 無線通信ルートの選定プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの無線センサ端末に対して順次に二つの周波数で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する手段と、前記二つの無線センサ端末それぞれの前記二つの周波数別の前記試験電波の受信電力の測定結果を収集する手段と、前記二つの無線センサ端末間の前記二つの周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する手段と、前記二つの無線センサ端末間の前記二つの周波数別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する手段と、前記二つの周波数のどちらについても前記受信電力の受信レベルが前記受信レベル最低閾値以上であり且つ前記二つの周波数別の受信レベルの差が前記受信レベル差閾値以下である場合には前記二つの無線センサ端末間の通信状態は安定していると評価する手段とを有することを特徴とする無線通信ルートの安定性評価装置。
【請求項2】
二つの無線センサ端末間の通信状態を評価する処理を行わせるためのプログラムであって、前記二つの無線センサ端末に対して順次に二つの周波数で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する処理と、前記二つの無線センサ端末それぞれの前記二つの周波数別の前記試験電波の受信電力の測定結果を収集する処理と、前記二つの無線センサ端末間の前記二つの周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する処理と、前記二つの無線センサ端末間の前記二つの周波数別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する処理と、前記二つの周波数のどちらについても前記受信電力の受信レベルが前記受信レベル最低閾値以上であり且つ前記二つの周波数別の受信レベルの差が前記受信レベル差閾値以下である場合には前記二つの無線センサ端末間の通信状態は安定していると評価する処理とをコンピュータに行わせることを特徴とする無線通信ルートの安定性評価プログラム。
【請求項3】
複数の無線センサ端末に対して順次に二つの周波数で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する手段と、前記複数の無線センサ端末それぞれの前記二つの周波数別の前記試験電波の受信電力の測定結果を収集する手段と、前記無線センサ端末の組み合わせ毎の前記二つの周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する手段と、前記無線センサ端末の組み合わせ毎の前記二つの周波数別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する手段と、前記二つの周波数のどちらについても前記受信電力の受信レベルが前記受信レベル最低閾値以上であり且つ前記二つの周波数別の受信レベルの差が前記受信レベル差閾値以下である前記無線センサ端末の組み合わせを無線通信ルートとして選定する手段とを有することを特徴とする無線通信ルートの選定装置。
【請求項4】
複数の無線センサ端末によって無線センサネットワークを構築するための通信ルートを選定する処理を行わせるためのプログラムであって、前記複数の無線センサ端末に対して順次に二つの周波数で試験電波を発信する指令と当該試験電波を受信する指令とを出力する処理と、前記複数の無線センサ端末それぞれの前記二つの周波数別の前記試験電波の受信電力の測定結果を収集する処理と、前記無線センサ端末の組み合わせ毎の前記二つの周波数別の試験電波の受信電力の受信レベルが受信レベル最低閾値以上であるか否かを判定する処理と、前記無線センサ端末の組み合わせ毎の前記二つの周波数別の試験電波の受信レベルの差が受信レベル差閾値以下であるか否かを判定する処理と、前記二つの周波数のどちらについても前記受信電力の受信レベルが前記受信レベル最低閾値以上であり且つ前記二つの周波数別の受信レベルの差が前記受信レベル差閾値以下である前記無線センサ端末の組み合わせを無線通信ルートとして選定する処理とをコンピュータに行わせることを特徴とする無線通信ルートの選定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−244174(P2011−244174A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114031(P2010−114031)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】