説明

無線通信回路

【課題】 収容空間の削減およびアンテナの形状変化に伴うアンテナ特性の低下を防止できる無線通信回路を提供すること。
【解決手段】 可とう性基板110と、可とう性基板110上に形成されたアンテナ120と、可とう性基板110上に形成された無線通信用回路の一部または全部であって、アンテナ120に接続されアンテナ120の形状変化に伴うアンテナ特性の低下を防止できる高周波回路130とを備え、高周波回路130が、アンテナの構成および特性のうちの1つ以上を制御するアンテナ制御回路、入力側と出力側からみたインピーダンスの整合を行う整合回路、信号雑音比を高くするように受信信号を増幅する増幅器等によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信回路に関し、特に、通信機能を有する携帯端末装置に用いられる無線通信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信携帯端末等の通信機能を有する携帯端末装置は、小型化、多機能化等の要求によって部品を収容するスペースが狭くなってきている。就ずく、アンテナが収容される空間の比率は大きくない。近年、所謂フレキシブル基板と称される可とう性を有する基板上にアンテナを形成する技術が開発され、このアンテナを用いることによってアンテナを収容する空間を削減できるようになった。具体的には、可とう性基板を薄くできること等の理由により、収容空間を削減できるようになった。
【0003】
上記構成は、部品としてのアンテナをフレキシブル基板上に設けたものと見ることができる。ここで、アンテナに接続されるフィルタ、受信回路、送信回路等の通信用回路は、通常、アンテナと別個のメイン回路基板上に形成され、フレキシブル基板上のアンテナと接続される。具体的には、2つの基板上の端子を相互にハンダ付けして接続する方法、表面実装型コネクタを形成しこれを介して接続する方法等がとられる。
【0004】
一方、アンテナと通信回路とを別々の基板に形成せず、同一の基板上に形成する無線通信回路も知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の技術では、電波法への抵触の防止および利用者の利便性の向上を目的として、メイン回路基板上に通信用回路と共にチップアンテナが形成されている。図5は、特許文献1に記載された従来の無線通信回路の構成を模式的に示す構成図である。特許文献1に記載された無線通信回路では、チップアンテナを使用することによって装置の小型化が図られている。また、アンテナと通信用回路とを同一基板上に形成することによって、利便性を向上させている。
【特許文献1】特開2005−064829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の可とう性基板上にアンテナを設けた構成では、アンテナ特性上に狭帯域化、不整合の増大、損失の増大等が新たに発生し、アンテナ特性の低下を招くという問題があった。また、チップアンテナをメイン回路基板上に形成するものでは、回路基板の厚さの低減が不十分なため、省スペース化の実行が図れなかった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、収容空間の削減およびアンテナの形状変化に伴うアンテナ特性の低下を防止できる無線通信回路を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の態様は、可とう性基板と、前記可とう性基板上に形成されたアンテナと、前記可とう性基板上に形成され、前記アンテナに接続され前記アンテナの形状変化に伴うアンテナ特性の低下を防止できる高周波回路とを備えることを特徴とする無線通信回路である。
【0008】
本発明に係る第2の態様は、第1の態様において、前記アンテナが、複数のアンテナエレメントによって構成され、少なくとも1つのアンテナエレメントが前記高周波回路の接地導体に電気的に短絡していることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第3の態様は、第1の態様において、前記高周波回路が、アンテナの構成および特性のうちの1つ以上を制御するアンテナ制御回路を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第4の態様は、第1の態様において、前記高周波回路が、入力側と出力側からみたインピーダンスの整合を行う整合回路を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る第5の態様は、第1の態様において、前記高周波回路が、信号雑音比を高くするように受信信号を増幅する増幅器を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る第6の態様は、第1の態様において、前記高周波回路が、接続される外部の回路を切り替える切替スイッチを出力段に有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る第7の態様は、第1の態様において、前記高周波回路が、前記アンテナを介して送受信を行う送信回路および受信回路と、前記アンテナ側に接続される回路を前記送信回路と前記受信回路との間で切り替えて接続する切替スイッチとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンテナの形状変化に伴うアンテナ特性の低下を防止できる高周波回路をアンテナと共に可とう性基板上に設けたため、収容空間の削減およびアンテナの形状変化に伴うアンテナ特性の低下を防止できる無線通信回路をできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の態様の無線通信回路の構成を示す斜視図である。図1において、無線通信回路100は、可とう性を有する回路基板(以下、単に可とう性回路基板という。)110と、アンテナ120と、アンテナ120に接続される高周波回路130を備え、アンテナ120および高周波回路130が可とう性回路基板110上に形成された構成を有する。ここで、可とう性回路基板110上に、無線通信に用いられる全ての高周波回路が形成される必要はなく、アンテナと直接接続されない高周波回路は、別個の回路基板上に構成されるのでもよい。そして、上記の別個の回路基板は、可とう性基板であることを要しない。
【0016】
可とう性基板110として、例えば、ポリイミド、PET(PolyEthylene Terephthalate)等の薄くても破断し難い樹脂からなる所謂フレキシブル基板(FPC(Flexible Printed Circuit)基板)と称されるものを用いることは、1mm以下の曲率半径で折り曲げる等の変形が自在かつ容易であるため好ましい。また、多層構造を有する部材を用いて可とう性基板110を構成するのでもよい。さらに、アンテナ120等を形成した後に、数十ミクロン以下の厚さの可とう性を有するフィルムでアンテナ120等を覆い保護する構成になっているのでもよい。
【0017】
図1(b)に、可とう性基板110を直線Fの位置で折り曲げたときの様子を示す。図1(b)に示すように回路基板を変形可能にすることによって、高周波回路130の図示しない地板に対してアンテナ120の相対配置を調節できる。これによって、無線通信回路100を形成後にアンテナ特性を調節できるため好ましい。可とう性基板110として、例えば数十〜数百μmの厚さのものを用いるのでもよい。
【0018】
アンテナ120は、1つ、又は複数のアンテナエレメントによって構成される、例えばダイポールアンテナ、モノポールアンテナ等の線状アンテナ、逆Fアンテナ、平板上アンテナ等とすることができる。アンテナ120が複数のアンテナエレメントで構成される場合、少なくとも1つのアンテナエレメントが高周波回路130の接地導体に電気的に短絡するようにアンテナ120が構成されるのでもよい。このように構成することによって、共振周波数の調節等のアンテナ特性の調節の自由度が増加させることができる。
【0019】
アンテナ120は、例えば、エッチング法、スパッタリング法、印刷法等を用いて可とう性基板110上に形成される。ここで、アンテナ120と高周波回路130の配線部分とを同一の工程で形成することは、工程数の削減が図れ、好ましい。なお、可とう性基板110上に予め形成された導電性材料の一部を、切り取る方法、くり抜く方法等の方法を用いてアンテナ120を形成するのでもよい。また、アンテナ120を形成した後にメッキ法を用いて導電部材上にさらに金属を形成するのでもよい。アンテナ120は、電気伝導率が高く延性の優れた、例えば、銅、銀、金等の金属を用いて形成される。ただし、要求される電気伝導度等の電気的特性、延性等の機械的性質に応じて、その他の金属または合金を用いるのでもよい。
【0020】
高周波回路130は、無線通信を行う回路の一部又は全部の回路であり、アンテナ120に直接接続される回路を含み、例えば受信信号中のノイズを除去するためのフィルタを有する。図2は、可とう性基板110上に形成される高周波回路130の一構成例を示す図である。図2(a)は、可とう性基板110上に形成される高周波回路130の一般的な構成を示す図である。図2(a)において、アンテナ120は、所定の回路ブロック131〜131(ここで、nは自然数)が接続され、アンテナ制御回路132によってアンテナ構成等の制御が行われる。
【0021】
可とう性基板110上に形成されるものの例を図2(b)〜(d)に示す。図2(b)に示す例では、回路ブロック131として、整合回路、増幅器等がアンテナ120に接続される。ここで、整合回路は、入力側と出力側からみたインピーダンスの整合を行うであり、増幅器は、通信周波数帯での信号雑音比を高くするように受信信号を増幅する回路であり、所謂ローノイズアンプ(Low Noise Amplifier)等によって構成される。このように、アンテナ120に整合回路、増幅器等が直接接続されることによって、インピーダンス不整合の低減および受信信号の増幅が可能になり、可とう性基板110を折り曲げて携帯端末装置に収納する際のアンテナ特性の低下を補償することができる。
【0022】
図2(c)に示す例では、アンテナ120の構成、特性等を制御するアンテナ制御回路132がアンテナ120に接続され、アンテナの給電点には給電線となる導体の金属線又はリボン等が接続される。アンテナの構成および特性をアンテナ制御回路132によって制御することによって、アンテナ特性等の制御等が可能になり、可とう性基板110を折り曲げて携帯端末装置に収納する際のアンテナ特性の低下を補償することができる。また、これによって通信周波数帯の切り替えを行うことも可能となる。
【0023】
図2(d)に示す例では、図2(a)における回路ブロック131〜131として、整合回路133、増幅器134および切替スイッチ135が可とう性基板110上に形成される。ここで、切替スイッチ135は、接続される図示しない外部の回路を切り替えるようになっている。ここで、切替スイッチ135は、具体的には、可とう性基板110と別個の基板上に受信回路および送信回路等が形成されている場合、受信時に受信回路を接続し、送信時に送信回路を接続するように切り替えるようになっているのでもよい。切替スイッチ135は、例えば、スイッチング素子等を用いて構成され、図示しない制御手段からの制御により、上記の切り替えを行う。
【0024】
なお、上記の構成に加え、可とう性基板110上に、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ等からなるフィルタが付加されて形成され、フィルタが直接又は間接にアンテナ120に接続されるのでもよい。ここで、フィルタは、送受信周波数帯の電気信号を通過させる帯域フィルタ等が用いられるが、切替スイッチ135に接続される回路の構成に応じて高周波フィルタ等のその他の特性を有するフィルタでもよい。
【0025】
図3は、可とう性基板上にさらに送受信回路が形成された一般的な構成を示す図である。図3には、整合回路、増幅器等からなる回路ブロック131〜131、アンテナ制御回路132および切替スイッチ135に加え、受信回路141と送信回路142とが高周波回路130として可とう性基板110上に形成される例が示されている。ただし、図2(b)〜(d)に示すように、回路131〜131、132が可とう性基板110上に全て形成される必要はなく、少なくとも一部の回路が形成されていればよい。
【0026】
このように構成することによって、可とう性基板110を折り曲げて携帯端末装置に収納する際のアンテナ特性を補償し向上させることができる。また、アンテナ120から送受信回路141、142までの伝送路上に、高周波特性に影響を及ぼし易いハンダ接続部、コネクタ接続部等の高周波伝送路上の不連続部分を除去でき、反射損失を低減できるので、さらに優れた高周波特性を得ることができると共に、ハンダ接続、コネクタ接続等の工程を必要としない簡易な製造工程にすることができる。
【0027】
ここで、受信回路141と送信回路142とは、相互に分離して形成され、異なる電源から電力が供給される。送信回路142は受信回路141に比較して消費電力が大きく、受信の際に送信回路142に供給する電力を停止することによって消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0028】
図4は、本発明の実施の態様の無線通信回路を搭載した携帯端末装置200の回路構成を示す概念図である。携帯端末装置200は、無線通信回路100と、第1の回路201と、第2の回路202と、筐体203とを備えるように構成される。ここで、第1の回路201は、例えば、機械的強度の強い回路基板上に形成され、可とう性回路基板110上に全ての無線通信用の高周波回路が形成されない場合に、残りの無線通信用の高周波回路が形成される。
【0029】
また、第1の回路201には、さらに、LCD(Liquid Crystal Display)制御用回路、電池、電源回路等が配置されるのでもよい。さらに、無線通信回路100と第1の回路201とは、一部又は全部の対向する端面が接続され、所謂R−F(Rigid-Flexible)基板を構成するのでもよい。このように構成することによって、無線通信回路100と第1の回路201とを接続する配線の電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0030】
また、第2の回路202は、通常、第1の回路201と同様に機械的強度の強い回路基板上に形成される。第2の回路202として、例えば、撮像手段を制御駆動し画像処理する回路が配置されるのでもよいが、この回路に代えてまたは付加してメモリ等の他の回路を形成するのでもよい。また、第2の回路202がノイズ発生源となるデジタル回路である場合、無線通信回路100と第2の回路202に電力を供給する第1の回路201を無線通信回路100と第2の回路202との間に挟んで、第2の回路202を無線通信回路100から離すように構成するのでもよい。
【0031】
図4に示す構成において、アンテナ120が形成された部分の一部又は全部は、例えば、無線通信回路100と筐体203との間の隙間に挿入されるようになっている。無線通信回路100をこのように構成することよって、アンテナ120を収容するための一定以上の大きさの空間を携帯端末装置200に設けずに済み、装置の小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の無線通信回路は、収容空間の削減およびアンテナの形状変化に伴うアンテナ特性の低下を防止できるという効果を有し、通信機能を有する携帯端末装置に用いられる無線通信回路等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の実施の態様の無線通信回路の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、可とう性基板上に形成される高周波回路の一構成例を示す図である。
【図3】図3は、可とう性基板上に送受信回路を含む構成の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の態様の無線通信回路を搭載した携帯端末装置の回路構成の概念図である。
【図5】図5は、従来の無線通信回路の一構成例を模式的に示す構成図である。
【符号の説明】
【0034】
1 従来の無線通信回路
11 接続端子
12 送信回路
13 パターンアンテナ
14 基板
15 シールドカバー
100 無線通信回路
110 可とう性回路基板
120 アンテナ
130 高周波回路
1311〜n 回路ブロック
132 アンテナ制御回路
133 整合回路
134 増幅器
135 切替スイッチ
141 受信回路
142 送信回路
200 携帯端末装置
201、202 回路
203 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可とう性基板と、
前記可とう性基板上に形成されたアンテナと、
前記可とう性基板上に形成され、前記アンテナに接続され前記アンテナの形状変化に伴うアンテナ特性の低下を防止できる高周波回路とを備えることを特徴とする無線通信回路。
【請求項2】
前記アンテナが、複数のアンテナエレメントによって構成され、少なくとも1つのアンテナエレメントが前記高周波回路の接地導体に電気的に短絡していることを特徴とする請求項1に記載の無線通信回路。
【請求項3】
前記高周波回路が、アンテナの構成および特性のうちの1つ以上を制御するアンテナ制御回路を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信回路。
【請求項4】
前記高周波回路が、入力側と出力側からみたインピーダンスの整合を行う整合回路を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信回路。
【請求項5】
前記高周波回路が、信号雑音比を高くするように受信信号を増幅する増幅器を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信回路。
【請求項6】
前記高周波回路が、接続される外部の回路を切り替える切替スイッチを出力段に有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信回路。
【請求項7】
前記高周波回路が、前記アンテナを介して送受信を行う送信回路および受信回路と、前記アンテナ側に接続される回路を前記送信回路と前記受信回路との間で切り替えて接続する切替スイッチとを有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−235215(P2007−235215A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50741(P2006−50741)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】