説明

無線通信機、送信電力決定方法、プログラム、および送信電力算出装置

【課題】基地局が存在しない車車間通信において、それぞれの車両の無線通信機が送信する電波が、隠れ端末として他の車両の無線通信機の通信に与える影響を少なくすることができる車車間通信システムを提供する。
【解決手段】車車間通信システムが備える無線通信機20は、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出し、車両密度を乗じて干渉端末台数Ncを算出し、2台の端末がランダムにデータを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出し、干渉端末台数Ncと衝突確率Rpを掛け合わせて隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを求め、パケット衝突確率Rが予め定められた許容パケット衝突確率以下となる送信電力を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機または無線通信機の送信電力の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代ITS(Intelligent Transport Systems)における車車間通信では、車の位置情報を無線で同報通信して、各車両が互いの位置情報を認識することにより、交差点での衝突回避を行う等のサービスが検討されている。
【0003】
また、無線通信を行う場合、隠れ端末問題の回避策が重要となる。隠れ端末問題の回避策としては、1対1の通信に関してはRTS(Request to Send)/CTS(Clear to Send)方式が有効である。しかし、不特定の複数車両間での同報通信を必要とする上記の車車間通信においては、RTS/CTS方式を採用することはできない。なぜなら、送信先が不特定の複数の車両であるので、どの車両からの応答をもって通信可能かの判断ができないからである。
【0004】
また、下記の特許文献1には、AP(アクセス・ポイント:基地局)が、移動端末における干渉レベル情報を当該移動端末から入手することによって隠れ端末(移動端末の雑音源となる干渉対象端末)の影響を推定し、送信電力を制御することによって、隠れ端末問題の解決を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−258719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の技術は、セルラー・システムにおけるAP(基地局)と移動端末の関係において成立する対策であり、次世代ITSのようにAPを介さない車車間通信を前提とした無線通信環境には、上記特許文献1に記載の技術を適用することができない。なぜなら、上記特許文献1に記載の技術は、特定の移動体端末とAP間の通信品質のみに着目した技術だからである。
【0007】
次世代ITSにおける車車間通信では、それぞれの車両の通信装置は対等な立場にあり、ある装置の送信電力を高めるとその装置が隠れ端末として、他の通信装置の通信に悪影響を及ぼす場合がある。そのため、次世代ITSにおける車車間通信では、上記特許文献1に記載の技術では、複数の車両が存在する地域全体の隠れ端末問題の対策とはならない。
【0008】
すなわち、上記特許文献1に記載の技術では、隠れ端末によるパケット衝突確率を考慮した無線装置の送信電力の計算方法が確立されておらず、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)制御が働かない隠れ端末からの送信パケットとの干渉により、通信パケットにパケット誤りが発生する。
【0009】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、基地局が存在しない車車間通信において、それぞれの車両の無線通信機が送信する電波が、隠れ端末として他の車両の無線通信機の通信に与える影響を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、車両に搭載され、他の車両に搭載されている他の無線通信機と無線通信する無線通信機であって、
受信感度Pr、希望波対妨害波比β、車両密度ρ、通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、ヘッダ長Th、周波数f、および許容パケット衝突確率Rthの各パラメータの入力を受け付ける入力情報受付手段と、
前記入力情報受付手段が受け付けた各パラメータを保持する入力情報保持手段と、
前記入力情報保持手段が保持している受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを用いて、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出する領域算出手段と、
前記入力情報保持手段が保持している車両密度ρおよび前記領域算出手段によって算出された面積Sを用いて、隠れ端末の台数Ncを算出する隠れ端末台数算出手段と、
前記入力情報保持手段が保持している通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを用いて、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出する通信パケット衝突確率算出手段と、
前記隠れ端末台数算出手段によって算出された隠れ端末の台数Ncと、前記パケット衝突確率算出手段によって算出されたパケット衝突確率Rpとを用いて、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出する隠れ端末衝突確率算出手段と、
前記隠れ端末衝突確率算出手段によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、前記入力情報保持手段が保持している許容パケット衝突確率Rth以下となる送信電力Ptを決定する送信電力決定手段と、
前記送信電力決定手段によって決定された送信電力でパケットを無線送信する送信手段と
を備えることを特徴とする無線通信機を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基地局が存在しない車車間通信において、それぞれの車両の無線通信機が送信する電波が、隠れ端末として他の車両の無線通信機の通信に与える影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る車車間通信システム10の構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】それぞれの車両11に搭載される無線通信機20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】車両密度ρの計算例を示す図である。
【図4】隠れ端末の計算モデルを説明するための概念図である。
【図5】隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rの計算例を示す図である。
【図6】隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rの計算例を示す図である。
【図7】無線通信機20の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】無線通信機20のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図9】送信電力算出装置40の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図10】送信電力算出装置40のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る車車間通信システム10の構成の一例を示すシステム構成図である。車車間通信システム10は、無線通信機20が搭載された複数の車両11を有する。
【0015】
それぞれの車両11に搭載されている無線通信機20は、例えば無線LANの技術を基にしたIEEE802.11pとして標準化作業が進められている方式に従い、自車の位置情報や自車両周辺の交通情報等を、他の無線通信機20へ無線送信する。その際、各無線通信機20は、他の無線通信機20の通信に隠れ端末として与える悪影響を低く抑えることができる電力レベルでそれらの情報を無線送信する。
【0016】
図2は、それぞれの車両11に搭載される無線通信機20の機能構成の一例を示すブロック図である。無線通信機20は、入力情報受付部200、入力情報保持部201、第1の衝突確率算出部202、領域算出部203、隠れ端末台数算出部204、第2の衝突確率算出部205、送信電力決定部206、無線通信部207、受信データ処理部208、および送信データ処理部209を備える。
【0017】
無線通信部207は、送信データ処理部209によって生成された送信データに基づいて電波を変調し、変調した電波を、送信電力決定部206によって決定された送信電力で、アンテナ210を介して他の無線通信機20へ送信する。また、無線通信部207は、アンテナ210を介して受信した電波を復調して受信データを復元し、復元した受信データを受信データ処理部208へ送る。
【0018】
入力情報受付部200は、無線通信機20のユーザ等から入力情報を受け付け、受け付けた入力情報を入力情報保持部201に保持させる。本実施形態において、入力情報受付部200が受け付ける入力情報には、受信感度Pr、希望波対妨害波比β、車両密度ρ、通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、ヘッダ長Th、周波数f、および許容パケット衝突確率Rthが含まれる。
【0019】
ここで、受信感度Prとは、例えば、無線通信機20が所望の通信品質を得るための最低受信電力(dBm)である。また、希望波対妨害波比βとは、例えばD/U(Desired to Undesired Signal ratio)(dB)である。また、通信データ量Bとは、例えば1パケットに含まれているペイロードのビットの数である。また、通信速度rとは、例えば単位時間当たりに送信されるビット数(bps)である。また、フレーム長Tfとは、通信を行う一定の周期(秒)である。また、ヘッダ長Thとは、1パケットに含まれているヘッダの伝送時間(秒)である。
【0020】
ここで、1パケットの伝送時間Tpは、ヘッダ長Th、通信データ量B、および通信速度rを用いて、例えば下記の計算式(1)により表わされる。

【0021】
また、周波数fとは、無線通信機20が送信する電波の周波数(例えば5.8GHz等)である。また、許容パケット衝突確率Rthとは、車車間通信システム10として許容されるパケット衝突確率であり、本実施形態では例えば5%である。各無線通信機20が送信電力を上げると、パケット衝突確率が上昇するが、本実施形態における各無線通信機20は、パケット衝突確率が当該Rth以下を満たすことができる範囲で、送信電力を決定する。
【0022】
また、車両密度ρ(台/km2)は、車間距離W(m)、路線数X(本)、道路間隔Y(m)、および寄与率Z(%)を用いて、例えば下記の計算式(2)により算出される。

【0023】
本実施形態では、車両密度ρ(台/km2)として、図3に示すように、アーバン(U)、サブアーバン(SU)、およびルーラル(L)の3種類を一例として想定する。なお、車両密度ρ(台/km2)の算出方法は上記計算式(2)に限られず、無線通信機20の使用地域の特性に応じて適宜最適化されることが好ましい。
【0024】
領域算出部203は、受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを入力情報保持部201から読み出し、読み出したこれらのデータを用いて、光速をc(km/s)、送信電力をPt(dBm)として、例えば下記の計算式(3)により、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積S(km2)を算出する。

【0025】
ここで、例えば図4に示すように、P点に位置する無線通信機20が通信可能な最遠の無線通信機20までの距離をL1と定義すると、P点に位置する無線通信機20から送信された電波が、自由空間において受信可能な最低レベルの電力まで減衰する減衰量αは、光速c(km/s)、送信電力Pt(dBm)、受信感度Pr、および周波数fを用いて、例えば下記の計算式(4)のように、距離L1(km)の関数として表わすことができる。

【0026】
上記計算式(4)を変形すると、下記の計算式(5)が得られる。

【0027】
また、例えば図4に示すように、P点に位置する無線通信機20が他の無線通信機20と通信を行っている場合に、隠れ端末の影響によりパケット誤りが生じる最遠の隠れ端末までの距離をL2(km)と定義すると、当該距離L2は、光速c(km/s)、送信電力Pt(dBm)、受信感度Pr、周波数f、および希望波対妨害波比βを用いて、例えば下記の計算式(6)のように表わすことができる。

【0028】
また、例えば図4の斜線で示した領域30が、隠れ端末が存在する可能性のある領域であるため、当該領域の面積S(km2)は、例えば下記の計算式(7)により算出される。

【0029】
当該計算式(7)に、上記計算式(5)のL1と、上記計算式(6)のL2とを代入すると、上記計算式(3)を得ることができる。
【0030】
隠れ端末台数算出部204は、車両密度ρを入力情報保持部201から読み出し、読み出した車両密度ρと、領域算出部203によって算出された面積Sとを用いて、例えば下記の計算式(8)により、隠れ端末の台数Ncを算出する。

【0031】
第1の衝突確率算出部202は、通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを入力情報保持部201から読み出し、読み出したこれらのデータを用いて、前述の計算式(1)および下記の計算式(9)により、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出する。

【0032】
第2の衝突確率算出部205は、隠れ端末台数算出部204によって算出された隠れ端末の台数Ncと、第1の衝突確率算出部202によって算出されたパケット衝突確率Rpとを用いて、例えば下記の計算式(10)により、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出する。

【0033】
送信電力決定部206は、許容パケット衝突確率Rthを入力情報保持部201から読み出し、第2の衝突確率算出部205によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、入力情報保持部201から読み出した許容パケット衝突確率Rth以下となるように、例えば下記の計算式(11)を満たす送信電力Ptを決定する。


【0034】
なお、送信電力決定部206は、より広い範囲に位置する車両11の無線通信機20に情報を伝達する等の観点から、例えば上記計算式(11)を満たす送信電力Ptの中で最大の電力を送信電力Ptとして決定することが好ましい。
【0035】
図5および6は、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rの計算例を示す図である。図5および6に示した計算例では、受信感度Pr、希望波対妨害波比β、通信データ量B、フレーム長Tf、ヘッダ長Th、および周波数fを固定値とし、通信速度r、送信電力Pt、および車両密度ρのいくつかの組合せについて、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが算出されている。
【0036】
図5および6に示した計算例において、通信速度rとして、54Mbps、12Mbps、および6Mbpsの3通り、送信電力Ptとして、0dBm、10dBm、20dBm、および30dBmの4通り、車両密度ρとして、267(台/km2)(アーバン)、120(台/km2)(サブアーバン)、50(台/km2)(ルーラル)の3通りの値を用いている。
【0037】
また、図5および6に示した計算例では、希望波対妨害波比βを6(dB)、通信データ量Bを1000(ビット)、フレーム長Tfを100(ミリ秒)、ヘッダ長Thを24(μ秒)、周波数fを5.8(GHz)に固定している。また、受信感度Prについては、通信速度rに依存することから、通信速度rが54Mbpsの場合に−74dBm、通信速度rが12Mbpsの場合に−80dBm、通信速度rが6Mbpsの場合に−89dBmに固定している。
【0038】
図5および6における、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rにおいて、アーバン(U)、サブアーバン(SU)、およびルーラル(L)のいずれの車両密度ρにおいても、許容パケット衝突確率Rth(図5および6の例では5%)以下となる通信速度rと送信電力Ptの組み合わせについては、図5および6の表の右端の欄に○を付して示している。
【0039】
図5および6の計算結果から分かるように、通信速度rが54Mbpsであれば、送信電力Ptを0(dBm)または10(dBm)とすることで、アーバン(U)、サブアーバン(SU)、およびルーラル(L)のいずれの車両密度ρにおいても、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが許容パケット衝突確率Rthを下回る通信品質で通信することができる。また、通信速度rが12Mbpsであれば、送信電力Ptを0(dBm)とすることで、アーバン(U)、サブアーバン(SU)、およびルーラル(L)のいずれの車両密度ρにおいても、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが許容パケット衝突確率Rthを下回る通信品質で通信することができる。このような送信電力Ptは、前述の計算式(11)を満たしている。
【0040】
このように、無線通信機20は、前述の計算式(11)を満たす送信電力Ptを決定することにより、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが許容パケット衝突確率Rth以下となる通信を実現することができる。
【0041】
図7は、無線通信機20の動作の一例を示すフローチャートである。例えば、入力情報保持部201内の入力情報が更新される等の所定のタイミングで、無線通信機20は、本フローチャートに示す動作を開始する。
【0042】
まず、領域算出部203は、受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを入力情報保持部201から読み出し、読み出したこれらのデータを用いて、前述の計算式(3)により、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出する(S100)。
【0043】
次に、隠れ端末台数算出部204は、車両密度ρを入力情報保持部201から読み出し、読み出した車両密度ρと、ステップS100において算出された面積Sとを用いて、前述の計算式(8)により、隠れ端末の台数Ncを算出する(S101)。
【0044】
次に、第1の衝突確率算出部202は、通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを入力情報保持部201から読み出し、読み出したこれらのデータを用いて、前述の計算式(9)により、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出する(S102)。
【0045】
次に、第2の衝突確率算出部205は、ステップS101において算出された隠れ端末の台数Ncと、ステップS102において算出されたパケット衝突確率Rpとを用いて、前述の計算式(10)により、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出する(S103)。
【0046】
次に、送信電力決定部206は、許容パケット衝突確率Rthを入力情報保持部201から読み出し、第2の衝突確率算出部205によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、入力情報保持部201から読み出した許容パケット衝突確率Rth以下となるように、前述の計算式(11)を満たす送信電力Ptを決定する(S104)。
【0047】
そして、無線通信部207は、ステップ104において決定された送信電力Ptで電波の送信を開始する(S105)。
【0048】
図8は、無線通信機20のハードウェア構成の一例を示す図である。無線通信機20は、CPU(Central Processing Unit)21、RAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、無線機24、および入力インターフェイス(I/F)25を備える。
【0049】
CPU21は、ROM23に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM23は、例えば書換可能なフラッシュROMであり、無線通信機20の起動時にCPU21によって実行されるプログラムや、無線通信機20のハードウェアに依存するブートプログラム等を格納する。
【0050】
無線機24は、アンテナ210を介して他の無線通信機20から電波を受信して復調し、当該電波に含まれていたデータを再生してCPU21へ送る。また、無線機24は、CPU21が生成したデータに基づいて電波を変調し、変調した電波を、CPU21から指示された送信電力でアンテナ210を介して他の無線通信機20へ送信する。入力インターフェイス25は、外部からデータを取得し、取得したデータをCPU21へ送る。
【0051】
無線通信機20のCPU21は、RAM22上にロードされたプログラムを実行することにより、入力情報受付部200、第1の衝突確率算出部202、領域算出部203、隠れ端末台数算出部204、第2の衝突確率算出部205、送信電力決定部206、無線通信部207、受信データ処理部208、および送信データ処理部209の各機能を実現する。また、ROM23には、入力情報保持部201内のデータが格納される。
【0052】
無線通信機20のCPU21は、これらのプログラムを入力インターフェイス25を介して外部から取得してROM23内に格納し、ROM23から読み取って実行するが、他の例として、無線通信等によりこれらのプログラムを他の装置から取得してもよい。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0054】
上記説明から明らかなように、本実施形態の車車間通信システム10によれば、基地局が存在しない車車間通信において、それぞれの車両11の無線通信機20が送信する電波が、隠れ端末として他の車両11の無線通信機20の通信に与える影響を少なくすることができ、より品質の高い無線データ通信を実現することができる。
【0055】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0056】
例えば、上記した実施形態において、領域算出部203は、例示した計算式(3)を用いて隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出し、隠れ端末台数算出部204は、例示した計算式(8)を用いて隠れ端末の台数Ncを算出し、第1の衝突確率算出部202は、例示した計算式(9)を用いて2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出し、第2の衝突確率算出部205は、例示した計算式(10)を用いて隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出し、送信電力決定部206は、例示した計算式(11)を用いて送信電力Ptを決定するが、本発明はこれに限られず、それぞれの機能部が他の計算式を用いてそれぞれの値を算出または決定するようにしてもよい。自由空間損失以外の他の式としては、建物密度を考慮した(奥村・秦)式やアンテナ高さを考慮した式などが挙げられる。
【0057】
また、上記した実施形態において、入力情報受付部200は、ユーザから入力情報を受け付けて入力情報保持部201に保持させたが、本発明はこれに限られない。例えば、各種センサから無線通信機20の場所や周囲の電波状況等の情報を収集し、収集したこれらの情報を用いて入力情報の一部または全部を生成する入力情報生成装置を車両11内に設け、入力情報受付部200は、当該入力情報生成装置によって生成された入力情報を受け付けて入力情報保持部201に保持させるようにしてもよい。そして、第1の衝突確率算出部202、領域算出部203、隠れ端末台数算出部204、第2の衝突確率算出部205、および送信電力決定部206は、入力情報保持部201内の入力情報が更新される都度、各処理を実行して送信電力を決定するようにしてもよい。
【0058】
また、入力情報保持部201内には、それぞれの入力情報として複数の値を予め用意し、第1の衝突確率算出部202、領域算出部203、隠れ端末台数算出部204、第2の衝突確率算出部205、および送信電力決定部206は、各種センサからの入力信号に応じて、それぞれの入力情報としてどの値を用いるかを随時決定し、決定した値を用いてその都度送信電力を決定するようにしてもよい。例えば、地図上の領域毎に車両密度ρを予め対応付けておき、GPS信号に基づいて車両11が位置する領域の車両密度ρを用いるようにしてもよい。
【0059】
また、上記した実施形態では、隠れ端末として他の車両11の無線通信機20の通信に与える影響を少なくすることができる送信電力を各車両11に搭載された無線通信機20が計算して決定したが、本発明はこれに限られない。例えば、隠れ端末として他の車両11の無線通信機20の通信に与える影響を少なくすることができる送信電力を算出する装置と、当該装置によって算出された送信電力で電波を送信する無線通信機20とを別々に構成してもよい。
【0060】
隠れ端末として他の車両11の無線通信機20の通信に与える影響を少なくすることができる送信電力を算出する装置としては、例えば図9に示すように、入力情報受付部200、入力情報保持部201、第1の衝突確率算出部202、領域算出部203、隠れ端末台数算出部204、第2の衝突確率算出部205、および送信電力決定部206を備える送信電力算出装置40が考えられる。
【0061】
図9に示す送信電力算出装置40が備える各機能部は、下記に説明する点を除いて、図2において同一の符号が付された機能部と同様の機能を有するため、説明を省略する。入力情報受付部200は、キーボードやマウス等の入力装置を介して、入力情報を受け付け、受け付けた入力情報を入力情報保持部201に保持させる。
【0062】
送信電力決定部206は、許容パケット衝突確率Rthを入力情報保持部201から読み出し、第2の衝突確率算出部205によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、入力情報保持部201から読み出した許容パケット衝突確率Rth以下となるように、前述の計算式(11)を満たす送信電力Ptを決定し、決定した送信電力Ptを示す情報を、モニタやプリンタ等の出力装置に出力する。
【0063】
図9に例示した送信電力算出装置40は、ユーザが、受信感度Pr、希望波対妨害波比β、車両密度ρ等の入力情報を、様々な値に変更しながら、最適な送信電力Ptを決めるためのシミュレータとして利用することができる。そして、無線通信機20は、当該送信電力算出装置40によって算出された送信電力で電波を送信する。この場合、無線通信機20には、入力情報受付部200、入力情報保持部201、第1の衝突確率算出部202、領域算出部203、隠れ端末台数算出部204、第2の衝突確率算出部205、および送信電力決定部206が設けられる必要はなく、送信電力算出装置40によって算出された送信電力を記憶するメモリを無線通信機20内に設け、無線通信部207は、当該メモリに記憶されている送信電力で電波を送信するように構成されてもよい。
【0064】
このような送信電力算出装置40は、例えば図10に示すようなハードウェアにより構成される。送信電力算出装置40は、CPU41、RAM42、ROM43、HDD44、入力インターフェイス45、出力インターフェイス46、およびメディアインターフェイス47を備える。
【0065】
CPU41は、ROM43またはHDD44に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM43は、送信電力算出装置40の起動時にCPU41によって実行されるブートプログラムや、送信電力算出装置40のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0066】
HDD44は、CPU41によって実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を格納する。CPU41は、入力インターフェイス45を介してキーボードやマウス等の入力装置を制御し、入力インターフェイス45を介して入力装置からデータを取得する。また、CPU41は、出力インターフェイス46を介してディスプレイやプリンタ等の出力装置を制御し、生成したデータを、出力インターフェイス46を介して出力装置へ出力する。
【0067】
メディアインターフェイス47は、記録媒体48に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM42を介してCPU41に提供する。CPU41は、当該プログラムを、メディアインターフェイス47を介して記録媒体48からRAM42上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体48は、例えばDVD(Digital Versatile Disk)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0068】
送信電力算出装置40のCPU41は、RAM42上にロードされたプログラムを実行することにより、入力情報受付部200、第1の衝突確率算出部202、領域算出部203、隠れ端末台数算出部204、第2の衝突確率算出部205、および送信電力決定部206の各機能を実現する。また、ROM43またはHDD44には、入力情報保持部201内のデータが格納される。
【0069】
送信電力算出装置40のCPU41は、これらのプログラムを、記録媒体48から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から、通信回線を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10・・・車車間通信システム、11・・・車両、20・・・無線通信機、200・・・入力情報受付部、201・・・入力情報保持部、202・・・第1の衝突確率算出部、203・・・領域算出部、204・・・隠れ端末台数算出部、205・・・第2の衝突確率算出部、206・・・送信電力決定部、207・・・無線通信部、208・・・受信データ処理部、209・・・送信データ処理部、210・・・アンテナ、30・・・領域、40・・・送信電力算出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、他の車両に搭載されている他の無線通信機と無線通信する無線通信機であって、
受信感度Pr、希望波対妨害波比β、車両密度ρ、通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、ヘッダ長Th、周波数f、および許容パケット衝突確率Rthの各パラメータの入力を受け付ける入力情報受付手段と、
前記入力情報受付手段が受け付けた各パラメータを保持する入力情報保持手段と、
前記入力情報保持手段が保持している受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを用いて、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出する領域算出手段と、
前記入力情報保持手段が保持している車両密度ρおよび前記領域算出手段によって算出された面積Sを用いて、隠れ端末の台数Ncを算出する隠れ端末台数算出手段と、
前記入力情報保持手段が保持している通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを用いて、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出する通信パケット衝突確率算出手段と、
前記隠れ端末台数算出手段によって算出された隠れ端末の台数Ncと、前記パケット衝突確率算出手段によって算出されたパケット衝突確率Rpとを用いて、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出する隠れ端末衝突確率算出手段と、
前記隠れ端末衝突確率算出手段によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、前記入力情報保持手段が保持している許容パケット衝突確率Rth以下となる送信電力Ptを決定する送信電力決定手段と、
前記送信電力決定手段によって決定された送信電力でパケットを無線送信する送信手段と
を備えることを特徴とする無線通信機。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信機であって、
前記領域算出手段は、
光速をc、送信電力をPtとし、前記入力情報保持手段が保持している受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを用いて、下記の計算式(1)により、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出し、

前記隠れ端末台数算出手段は、
前記入力情報保持手段が保持している車両密度ρおよび前記領域算出手段によって算出された面積Sを用いて、下記の計算式(2)により、隠れ端末の台数Ncを算出し、

前記通信パケット衝突確率算出手段は、
前記入力情報保持手段が保持している通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを用いて、下記の計算式(3)により、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出し、

前記隠れ端末衝突確率算出手段は、
前記隠れ端末台数算出手段によって算出された隠れ端末の台数Ncと、前記パケット衝突確率算出手段によって算出されたパケット衝突確率Rpとを用いて、下記の計算式(4)により、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出し、

前記送信電力決定手段は、
前記隠れ端末衝突確率算出手段によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、前記入力情報保持手段が保持している許容パケット衝突確率Rth以下となる下記の計算式(5)を満たす送信電力Ptを決定することを特徴とする無線通信機。

【請求項3】
請求項2に記載の無線通信機であって、
前記送信電力決定手段は、
前記計算式(5)を満たす送信電力の中で、最大の送信電力を、前記送信手段がパケットを無線送信する送信電力として決定することを特徴とする無線通信機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信機が設けられた車両を複数備えることを特徴とする車車間通信システム。
【請求項5】
車両に搭載され、他の車両に搭載されている他の無線通信機と無線通信する無線通信機の送信電力を算出する送信電力算出装置における送信電力決定方法であって、
前記送信電力算出装置が、
受信感度Pr、希望波対妨害波比β、車両密度ρ、通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、ヘッダ長Th、周波数f、および許容パケット衝突確率Rthの各パラメータの入力を受け付け、受け付けた各パラメータを入力情報保持手段に保持させる入力情報受付ステップと、
前記入力情報保持手段が保持している受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを用いて、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出する領域算出ステップと、
前記入力情報保持手段が保持している車両密度ρおよび前記領域算出ステップにおいて算出した面積Sを用いて、隠れ端末の台数Ncを算出する隠れ端末台数算出ステップと、
前記入力情報保持手段が保持している通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを用いて、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出する通信パケット衝突確率算出ステップと、
前記隠れ端末台数算出ステップにおいて算出した隠れ端末の台数Ncと、前記パケット衝突確率算出ステップにおいて算出したパケット衝突確率Rpとを用いて、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出する隠れ端末衝突確率算出ステップと、
前記隠れ端末衝突確率算出ステップにおいて算出した隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、前記入力情報保持手段が保持している許容パケット衝突確率Rth以下となる送信電力Ptを決定する送信電力決定ステップと、
前記送信電力決定ステップにおいて決定した送信電力を示す情報を出力する出力ステップと
を実行することを特徴とする送信電力決定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の送信電力決定方法であって、
前記送信電力算出装置は、
前記領域算出ステップにおいて、光速をc、送信電力をPtとし、前記入力情報保持手段が保持している受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを用いて、下記の計算式(1)により、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出し、

前記隠れ端末台数算出ステップにおいて、前記入力情報保持手段が保持している車両密度ρおよび前記領域算出ステップにおいて算出した面積Sを用いて、下記の計算式(2)により、隠れ端末の台数Ncを算出し、

前記通信パケット衝突確率算出ステップにおいて、前記入力情報保持手段が保持している通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを用いて、下記の計算式(3)により、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出し、

前記隠れ端末衝突確率算出ステップにおいて、前記隠れ端末台数算出ステップにおいて算出した隠れ端末の台数Ncと、前記パケット衝突確率算出ステップにおいて算出したパケット衝突確率Rpとを用いて、下記の計算式(4)により、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出し、

前記送信電力決定ステップにおいて、前記隠れ端末衝突確率算出ステップにおいて算出した隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、前記入力情報保持手段が保持している許容パケット衝突確率Rth以下となる下記の計算式(5)を満たす送信電力Ptを決定することを特徴とする送信電力決定方法。

【請求項7】
コンピュータを、車両に搭載され、他の車両に搭載されている他の無線通信機と無線通信する無線通信機の送信電力を算出する送信電力算出装置として動作させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
受信感度Pr、希望波対妨害波比β、車両密度ρ、通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、ヘッダ長Th、周波数f、および許容パケット衝突確率Rthの各パラメータの入力を受け付け、受け付けた各パラメータをデータベースに保持させる入力情報受付機能と、
前記データベースが保持している受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを用いて、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出する領域算出機能と、
前記データベースが保持している車両密度ρおよび前記領域算出機能によって算出された面積Sを用いて、隠れ端末の台数Ncを算出する隠れ端末台数算出機能と、
前記データベースが保持している通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを用いて、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出する通信パケット衝突確率算出機能と、
前記隠れ端末台数算出機能によって算出された隠れ端末の台数Ncと、前記パケット衝突確率算出機能によって算出されたパケット衝突確率Rpとを用いて、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出する隠れ端末衝突確率算出機能と、
前記隠れ端末衝突確率算出機能によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、前記入力情報保持手段が保持している許容パケット衝突確率Rth以下となる送信電力Ptを決定する送信電力決定機能と、
前記送信電力決定機能によって決定された送信電力を示す情報を出力する出力機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムであって、
前記領域算出機能は、
前記光速をc、送信電力をPtとし、前記データベースが保持している受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを用いて、下記の計算式(1)により、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出し、

前記隠れ端末台数算出機能は、
前記データベースが保持している車両密度ρおよび前記領域算出機能によって算出された面積Sを用いて、下記の計算式(2)により、隠れ端末の台数Ncを算出し、

前記通信パケット衝突確率算出機能は、
前記データベースが保持している通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを用いて、下記の計算式(3)により、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出し、

前記隠れ端末衝突確率算出機能は、
前記隠れ端末台数算出機能によって算出された隠れ端末の台数Ncと、前記パケット衝突確率算出機能によって算出されたパケット衝突確率Rpとを用いて、下記の計算式(4)により、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出し、

前記送信電力決定機能は、
前記隠れ端末衝突確率算出機能によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、前記入力情報保持手段が保持している許容パケット衝突確率Rth以下となる下記の計算式(5)を満たす送信電力Ptを決定することを特徴とするプログラム。

【請求項9】
車両に搭載され、他の車両に搭載されている他の無線通信機と無線通信する無線通信機の送信電力を算出する送信電力算出装置であって、
受信感度Pr、希望波対妨害波比β、車両密度ρ、通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、ヘッダ長Th、周波数f、および許容パケット衝突確率Rthの各パラメータの入力を受け付ける入力情報受付手段と、
前記入力情報受付手段が受け付けた各パラメータを保持する入力情報保持手段と、
前記入力情報保持手段が保持している受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを用いて、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出する領域算出手段と、
前記入力情報保持手段が保持している車両密度ρおよび前記領域算出手段によって算出された面積Sを用いて、隠れ端末の台数Ncを算出する隠れ端末台数算出手段と、
前記入力情報保持手段が保持している通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを用いて、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出する通信パケット衝突確率算出手段と、
前記隠れ端末台数算出手段によって算出された隠れ端末の台数Ncと、前記パケット衝突確率算出手段によって算出されたパケット衝突確率Rpとを用いて、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出する隠れ端末衝突確率算出手段と、
前記隠れ端末衝突確率算出手段によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、前記入力情報保持手段が保持している許容パケット衝突確率Rth以下となる送信電力Ptを決定する送信電力決定手段と
前記送信電力決定手段によって決定された送信電力を示す情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする送信電力算出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の送信電力算出装置であって、
前記領域算出手段は、
光速をc、送信電力をPtとし、前記入力情報保持手段が保持している受信感度Pr、希望波対妨害波比β、および周波数fを用いて、下記の計算式(1)により、隠れ端末が存在する可能性のある領域の面積Sを算出し、

前記隠れ端末台数算出手段は、
前記入力情報保持手段が保持している車両密度ρおよび前記領域算出手段によって算出された面積Sを用いて、下記の計算式(2)により、隠れ端末の台数Ncを算出し、

前記通信パケット衝突確率算出手段は、
前記入力情報保持手段が保持している通信データ量B、通信速度r、フレーム長Tf、およびヘッダ長Thを用いて、下記の計算式(3)により、2台の無線通信機がランダムにパケットを送信した場合のパケット衝突確率Rpを算出し、

前記隠れ端末衝突確率算出手段は、
前記隠れ端末台数算出手段によって算出された隠れ端末の台数Ncと、前記パケット衝突確率算出手段によって算出されたパケット衝突確率Rpとを用いて、下記の計算式(4)により、隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rを算出し、

前記送信電力決定手段は、
前記隠れ端末衝突確率算出手段によって算出された隠れ端末に起因するパケット衝突確率Rが、前記入力情報保持手段が保持している許容パケット衝突確率Rth以下となる下記の計算式(5)を満たす送信電力Ptを決定することを特徴とする送信電力算出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−186758(P2012−186758A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50117(P2011−50117)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】