説明

無線通信機器の試験システムおよび試験方法

【課題】無線通信機器が実際に使用される場所で試験が実際的に行われるような試験環境を提供することができる試験システムを提供する。
【解決手段】無線通信機器1が実際に使用される場所で、記録装置2は、試験対象の無線通信機器1で処理されるべき情報の電波を受信し、当該受信した電波の情報を記録する。試験用装置3は、記録装置2により記録された電波の情報を再生し、試験対象の無線通信機器1に伝達して、この試験対象の無線通信機器1に、受信した電波に基づいて実行する処理機能を働かせて、試験を行なわせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば携帯電話端末などの無線通信機器に搭載される処理機能を試験するための試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話端末の基本的な送受機能の試験は、例えば特許文献1(特開2009−218998号公報)に示されるように、工場内の試験室において、回線シミュレータなどを用いて携帯電話端末に発呼シーケンスおよび着呼シーケンスを実行させることにより実行することができる。しかし、この種の試験装置では、実際の受信環境における複数の基地局からの基地局信号を切り替えたりしながらの送受信の試験はできない。
【0003】
そこで、従来から、携帯電話端末を携帯した作業者が、予め定めた所定の移動経路を移動しながら、実際に通信を行って試験を実行することが行われていた。特に、携帯電話端末の現在位置に基づいて、現在位置周辺地図を表示したり、現在位置周辺施設情報を表示したりするアプリケーションプログラムの処理機能については、現在位置における様々要因や気象条件などに応じた試験が必要になるため、作業者が実際に移動を行いながらアプリケーションを実行して動作確認することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−218998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯電話端末などの無線通信機器の開発が、人件費が安価である海外で、そのアプリケーションプログラムの開発も含めて行われることが多々ある。
【0006】
しかしながら、日本で使用される携帯電話端末(日本仕様の携帯電話端末)に搭載される上記のようなアプリケーションプログラムの動作試験は、日本の携帯電話の通信事業者からの電波が海外では受信できないので、海外で行うことはできない。このため、例えば、日本仕様の携帯電話端末が海外で開発および生産される場合であっても、完成品の最終的な性能試験や完成品に搭載されるアプリケーションプログラムの動作試験は、わざわざ日本に携帯電話端末を持ってきて行う必要がある。
【0007】
逆に、海外で使用される携帯電話端末(海外仕様の携帯電話端末)を日本で生産する場合にも、上記のような試験は、海外の通信事業者からの電波を受信できない日本で行うことはできず、完成品を、使用する海外に持っていって試験を行う必要があった。
【0008】
この発明は、以上の点にかんがみ、携帯電話端末などの無線通信機器があたかも実際に使用される場所で試験が行われているような試験環境を提供することができる試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
試験対象の無線通信機器で処理されるべき情報の電波を受信し、当該受信した電波の情報を記録する記録装置と、
前記記録装置により記録された前記電波の情報を再生し、その再生した電波の情報を、試験用電波として、前記試験対象の無線通信機器に伝達する試験用装置と、
を備えることを特徴とする無線通信機器の試験システムを提供する。
【0010】
また、請求項2の発明は、
電波転送装置と、試験用装置とからなり、
前記電波転送装置は、試験対象の無線通信機器で処理されるべき情報の電波を受信し、当該受信した電波の情報を、前記試験用装置に転送し、
前記試験用装置は、前記電波転送装置から転送されてきた前記電波の情報を、試験用電波として、前記試験対象の無線通信機器に伝達する、
ことを特徴とする無線通信機器の試験システムを提供する。
【0011】
上述の構成の請求項1の発明においては、記録装置は、試験対象の無線通信機器が実際に使用される場所において、当該無線通信機器で処理されるべき情報の電波を受信し、その受信した電波の情報を記録する。
【0012】
そして、試験用装置では、この記録装置で記録された電波の情報を再生し、試験用電波として、試験対象の無線通信機器に伝達する。すると、試験対象の無線通信機器は、受け取った電波の情報を用いて、受信した電波に基づいて実行する処理機能を実行する。したがって、これにより、あたかも、試験対象の無線通信機器が実際に使用される場所で電波を受信したようにして処理機能が実行されて、試験が行われる。
【0013】
また、上述の構成の請求項2の発明においては、電波転送装置は、試験対象の無線通信機器が実際に使用される場所において、当該無線通信機器で処理されるべき情報の電波を受信し、その受信した電波の情報を、試験用装置に転送する。
【0014】
試験用装置は、電波転送装置から転送されてきた電波の情報を、試験用電波として、試験対象の無線通信機器に伝達する。すると、試験対象の無線通信機器は、受け取った電波の情報を用いて、受信した電波に基づいて実行する処理機能を実行する。したがって、これにより、あたかも、試験対象の無線通信機器が実際に使用される場所で電波を受信したようにして処理機能が実行されて、試験が行われる。そして、この請求項2の発明の場合には、電波転送装置で受信した電波の情報を、リアルタイムで試験用装置に転送することができるので、リアルタイムで試験を実行することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、あたかも、試験対象の無線通信機器が実際に使用される場所で電波を受信して、その受信した電波に基づいて当該無線通信機器の処理機能を実行するようにして、試験を行うことができる。
【0016】
したがって、この発明によれば、例えば日本仕様の携帯電話端末などの無線通信機器の開発を、人件費が安価である海外で、そのアプリケーションプログラムも含めて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明による試験システムの第1の実施形態の全体構成例を示す図である。
【図2】この発明の試験システムの実施形態を説明するための図である。
【図3】この発明の試験システムの実施形態を説明するための図である。
【図4】この発明による試験システムの第1の実施形態における記録装置のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【図5】この発明による試験システムの第1の実施形態における試験用装置のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【図6】この発明による試験システムの第1の実施形態における記録装置の処理動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図7】この発明による試験システムの第1の実施形態における試験用装置の処理動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図8】この発明による試験システムの第2の実施形態の全体構成例を示す図である。
【図9】この発明による試験システムの第3の実施形態の全体構成例を示す図である。
【図10】この発明による試験システムの第3の実施形態における電波転送装置のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【図11】この発明による試験システムの第3の実施形態における試験用装置のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【図12】この発明による試験システムの第4の実施形態の全体構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明による無線通信機器の試験システムの幾つかの実施形態を、図を参照しながら説明する。以下に説明する無線通信機器の試験システムの実施形態は、無線通信装置が日本仕様の携帯電話端末であって、人件費が安い海外で、開発および製造して試験までを行う場合である。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による無線通信機器の試験システムの第1の実施形態の全体構成を示す図である。
【0020】
この例の日本仕様の試験対象の携帯電話端末1は、測位用電波(以下、GPS(Global Positioning System)電波という)の受信アンテナ(図示を省略)を備え、受信したGPS電波から自端末の現在位置を測位する機能を備える。また、この実施形態の携帯電話端末1は、受信したGPS電波から測位した自端末の現在位置を、基地局から受信した情報を用いて、より精度良く補正する処理機能も備える。
【0021】
また、この実施形態の携帯電話端末1は、GPS電波を用いる測位については、A−GPS方式を採用しており、基地局を通じてGPS測位のためのアルマナックデータを得るようにしている。
【0022】
さらに、この実施形態の携帯電話端末1は、日本における使用時には、検出した自端末の現在位置情報を、後述するサービスサーバ33に送り、このサービスサーバ33から、前記現在位置情報に関連するサービス情報を取得することができる機能を備えている。携帯電話端末1は、この現在位置情報に関連するサービス情報を取得することができる機能を実現するためのアプリケーションプログラムを搭載している。
【0023】
また、さらに、この実施形態では、携帯電話端末1は、GPS電波のみから測位するのではなく、基地局からの基地局電波をも用いて、より詳細な現在位置の測位を可能にしている。携帯電話端末1は、GPS衛星からの測位用電波が全く受信できない場合には、3個の基地局からの電波を受信して、自端末の位置を知ることができる。
【0024】
この実施形態では、携帯電話端末1が、受信したGPS電波および基地局電波を正しく処理でき、さらに、その処理結果から現在位置情報に関連するサービス情報を取得して所定の処理を行なう機能を実現するためのアプリケーションプログラムが正しく動作するか否かの試験を行うものとする。
【0025】
図1に示すように、この実施形態の試験システムは、試験対象の携帯電話端末1が実際に使用される第1の地域である日本に設けられる記録装置2と、試験対象の携帯電話端末1が開発および製造された海外に設けられる試験用装置3とからなる。ここで、試験対象の携帯電話端末1が開発および製造された海外は、第1の地域である日本での電波を受信することができない第2の地域である。
【0026】
記録装置2は、作業者4がこれを携帯して移動することが可能なものである。この記録装置2は、上述した携帯電話端末1と同一の機能を有する携帯電話端末機能部(電波の受信機能およびアプリケーションプログラムを含む)を有する。また、記録装置2は、携帯電話端末1が電波の送受をすることができる基地局11,12,13,・・・からの基地局電波を受信し、かつ、基地局11,12,13,・・・に電波を送信するアンテナ2Aを備えると共に、GPS衛星21,22,23,24,・・・からのGPS電波を受信するアンテナ2Bを備える。そして、この実施形態では、記録装置2の携帯電話端末機能部は、受信したGPS電波および基地局電波から現在位置の検出機能を備えると共に、サービスサーバ33から受信した情報から所定の情報をデコードして取得する機能も備える。
【0027】
ここで、基地局11,12,13,・・・は、携帯電話網および光インターネット(ブロードバンド回線)を含む通信ネットワーク31に接続されている。この通信ネットワーク31には、位置管理サーバ32が接続され、この位置管理サーバ32にはサービスサーバ33が接続されている。
【0028】
位置管理サーバ32は、中継局などに設けられ、各基地局の番号、各基地局の設置位置の緯度および経度などを管理すると共に、基地局から送られてくる携帯電話端末の端末識別情報や当該携帯電話端末からの電波の受信電界強度の情報から、携帯電話端末の位置を三角測量の手法を用いて算出して管理する機能を備える。また、位置管理サーバ32は、算出した携帯電話端末の位置情報を、当該携帯電話端末に送ったり、さらに、その位置情報から、各携帯電話端末に必要なアルマナックデータを、それぞれの携帯電話端末に送ったりする機能も備える。
【0029】
サービスサーバ33は、通信ネットワーク31および位置管理サーバ32を通じて、携帯電話端末(記録装置2の携帯電話端末機能部)から、位置情報と当該位置情報で示される位置においてユーザが欲する情報の指定情報とを受け取ると、受け取った位置情報に関連して、ユーザが指定した情報を、データベースから検索して、携帯電話端末(記録装置2の携帯電話端末機能部)に提供する。
【0030】
サービスサーバ33は、例えば、携帯電話端末(記録装置2の携帯電話端末機能部)から位置情報と、その位置付近の地図情報の要求を受け取ると、受け取った位置情報で特定される位置を中心とした地図情報を、データベースから検索して生成し、携帯電話端末(記録装置2の携帯電話端末機能部)に提供する。また、ユーザが、携帯電話端末(記録装置2の携帯電話端末機能部)から、位置情報と、レストランなどの飲食店についてのその位置周辺の情報を要求すると、サービスサーバ33は、受け取った位置情報で特定される位置周辺の飲食店情報をデータベースから検索し、地図上にそれらの飲食店を表示したデータを生成して、携帯電話端末(記録装置2の携帯電話端末機能部)に提供する。さらに、サービスサーバ33は、携帯電話端末(記録装置2の携帯電話端末機能部)から位置情報と、その位置付近の気温、湿度、天候などの環境情報の要求を受け取ると、その位置付近の気温、湿度、天候などを、携帯電話端末(記録装置2の携帯電話端末機能部)に提供する。
【0031】
したがって、記録装置2のアンテナ2Aが受信する基地局電波には、位置管理サーバ32から送られてくるアルマナックデータや、サービスサーバ33から送られてくる地図情報やその他のサービス情報が含まれる。
【0032】
記録装置2は、アンテナ2Aおよび2Bで受信した基地局電波およびGPS電波を、受信位置および受信時間の情報に対応させて、例えば半導体メモリやDVDなどの光ディスク、またはハードディスクなどの記録媒体に記録する機能を備える。
【0033】
また、この実施形態では、記録装置2には、パノラマを含む動画および静止画の撮像が可能な撮像装置5が接続されている。作業者4が、この撮像装置5を用いて動画撮影および静止画像の撮影をすると、撮像装置5から撮像画像信号が記録装置2に供給される。記録装置2は、その撮像画像信号を、位置情報および時間情報と対応させることにより、その位置およびその時点における受信電波と対応させて記録媒体に記録する。なお、この実施形態の以下の説明では、撮像装置5では、動画撮影を行い、その動画画像情報が撮像画像情報として記録装置2に供給されるものとする。
【0034】
また、この実施形態では、記録装置2は、位置情報を含む要求をすることによりサービスサーバ33から送られてくる基地局電波やGPS電波の受信環境の情報をデコードして、当該位置における気温、湿度、天気の情報を得、それら気温、湿度、天気の情報を、前述と同様にして位置情報および時間情報と対応させることにより、その位置およびその時点における受信電波と対応させて記録媒体に記録する。
【0035】
そして、この実施形態では、作業者4に記録装置2および撮像装置5を携帯してもらって、予め定められた所定の移動経路を移動しながら、GPS電波および基地局電波の受信および前述した記録装置による情報記録を行うようにする。
【0036】
このため、この実施形態では、日本において予めシミュレーションしたい場所を選定し、その場所において移動経路を設定する。例えば、図2に示すように、シミュレーションしたい場所の地図をディスプレイに表示し、このディスプレイに表示された地図画像上で、記録装置2を移動させる移動経路を、図2において太線で示すように設定する。また、この移動経路上において、移動を一旦停止させて、サービスサーバ33にアクセスしてサービスを受ける位置を指定入力する。
【0037】
図2において、Stは移動経路のスタート地点、Edは移動経路の終了地点であり、T1〜T8のそれぞれは、移動を一旦停止させて、サービスサーバ33にアクセスしてサービスを受けるアクセス実行地点を示している。
【0038】
なお、図2において丸印で示したのは、基地局が設置されている位置である。この図2に示すように、移動経路を作業者4が記録装置2を携帯して移動するとき、複数個の基地局からの基地局電波を受信すると共にGPS衛星電波を受信し、移動につれて、各基地局との距離が変化するので受信可能となる基地局が変化してゆくと共に、受信可能となるGPS衛星も変化してゆく。また、実際上は、移動につれて、高いビルの間に入ったり、見晴らしが利く場所にいたり、など電波の受信環境は変化するものとなる。
【0039】
このように設定した移動経路および停止してサービスサーバ33にアクセスすべき位置を表わした地図を作業者4に渡し、当該作業者4に、その移動経路を、記録装置2および撮像装置5を携帯して移動してもらうように依頼する。そして、作業者4に、その移動中においては、撮像装置5で動画撮影をしてもらうと共に、記録装置2の携帯電話端末機能部により、設定された停止位置において、サービスサーバ33へのアクセス操作をしてもらうように依頼する。
【0040】
記録装置2は、移動経路を移動中に受信したGPS電波および基地局電波を、時間情報と、記録装置2で受信した電波から検出した位置情報とに対応させて、記録媒体に記録すると共に、撮像された動画情報および前述した気温、湿度、天候などの環境情報を、併せて記録する。この場合、記録装置2は、スタート地点Stを出発した時間を起点時間として順次に時間情報を終了地点Edまで記録すると共に、記録した各時間情報の位置を記録する。そして、記録装置2は、記録した各位置における受信電波および画像情報や環境情報を、記録媒体に記録する。
【0041】
そして、この実施形態は、以上のようにして日本において記録装置2により記録媒体8に記録した記録情報は、海外の試験用装置3に伝達する。その伝達の方法としては、リムーバルな記録媒体8に記録情報を書き込み、その記録媒体8を日本から海外に郵送で送る方法を用いても良いし、記録情報を暗号化や圧縮したファイル情報とし、そのファイル情報をインターネットなどの通信回線を通じて日本から海外に送る方法を用いても良い。
【0042】
海外においては、試験用装置3および試験対象の携帯電話端末1は、試験環境室内に置かれる。この試験環境室は、例えば地下室など、電波が受信できない環境の空間である。この実施形態では、携帯電話端末1は、試験用装置3に対して、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブル6を通じて接続される。また、この実施形態では、試験用装置3には、撮像画像や環境情報を表示するためのモニター表示装置7が接続されている。
【0043】
日本から前記記録情報が記録媒体で送られてくる場合には、試験用装置3には、その記録媒体が装填される。そして、試験用装置3は、装填された記録媒体から、記録されている時間情報にしたがって順次に記録情報を読み出して再生する。また、前記記録情報が日本からファイル情報としてインターネットを通じて伝送されてくる場合には、試験用装置3は、そのファイル情報をハードディスク装置などの記憶部に一時保存する。そして、試験用装置3は、この記憶部から、記録されている時間情報に従って順次に記録情報を読み出して再生する。
【0044】
そして、試験用装置3は、記録情報の再生信号のうちのGPS電波および基地局電波の情報は、USBケーブル6を通じて試験対象の携帯電話端末1に供給し、記録情報の再生信号のうちの撮像画像情報は、モニター表示装置7に供給する。また、試験用装置3は、再生信号のうちの環境情報および位置情報は、モニター表示装置7の表示画面に表示する情報に変換して、当該表示情報をモニター表示装置7に供給する。
【0045】
したがって、試験の実行者は、地図上の記録装置2の現在位置を参照しながら、その位置の撮像画像を観視することができ、さらに、携帯電話端末1の画面に表示された地図画像などを比較参照することができる。
【0046】
この実施形態の携帯電話端末1は、試験モードにおいては、USB端子を通じて送られてくる電波の情報を、アンテナを通じて受信した基地局電波およびGPS電波の情報として受信して、アンテナを通じて受信した電波と同様の処理を実行するように構成されている。
【0047】
以下の説明においては、試験対象の携帯電話端末1の処理機能の例として、例えば、現在位置を検出して、その現在位置を中心とした周辺地図を表示すると共に、その地図上に現在位置を表示する機能を想定する。試験に際しては、携帯電話端末1では、そのアプリケーションプログラムを起動させておく。
【0048】
携帯電話端末1は、試験用装置3から受け取ったGPS電波および基地局電波の情報から、当該電波の受信位置を検出する処理を行う。また、携帯電話端末1は、受け取った基地局電波に含まれる位置管理サーバ32からのアルマナック情報を抽出してそれを記憶保持する。これにより、携帯電話端末1は、あたかも、海外において、現地の基地局から必要なアルマナック情報を取得したように動作する。携帯電話端末1は、受け取ったGPS電波のうちから、記憶しているアルマナック情報を基に、受信可能なGPS衛星を検知し、そのGPS衛星からの電波を優先して取り込んで、位置検出処理に用いる。
【0049】
さらに、携帯電話端末1は、受け取った基地局電波に含まれるサービスサーバ33からの地図情報やその他のサービス情報を、起動させたアプリケーションプログラムにより処理をして、地図を再現したり、その他のサービス情報に対応する表示情報を生成したりするようにする。
【0050】
この場合に、携帯電話端末1における基地局電波やGPS電波の処理機能が正常に動作し、起動させたアプリケーションプログラムも正しく動作すれば、携帯電話端末1のディスプレイ画面には、所期の地図やその他のサービス情報が表示される。
【0051】
このとき、モニター表示装置7には、例えば図3に示すように、再生された各時間および位置における撮像画像41が表示されると共に、当該時間および位置が表示される。さらに、試験用装置3は、再生された環境情報をデコードして得た天候、温度、湿度などの情報も、表示情報に変換してモニター表示装置7に供給して、その画面に表示させる。
【0052】
試験の実行者(海外のオペレータ)は、このモニター表示装置7の表示画像と、携帯電話端末1の表示画像とを比較することにより、携帯電話端末1の前記アプリケーションプログラムを含む処理機能が正しく動作しているか否かをチェックすることができる。
【0053】
なお、モニター表示装置7の表示画面を分割し、あるいは、モニター表示装置を2個設け、一方に、図3に示した撮像画像を表示すると共に、他方に、図2に示した日本において記録装置2が移動する移動経路を含む地図を表示するように、試験用装置3からモニター表示装置7に供給する表示信号を生成するようにすることもできる。
【0054】
すなわち、この実施形態では、試験用装置3は、図2に示した日本において記録装置2が移動する移動経路を含む地図情報を備えており、その地図表示上に、記録情報から再生した時間情報および位置情報に基づく記録装置2の現在位置を表わした表示情報を生成して、モニター表示装置7に供給するようにする。
【0055】
これにより、海外の試験の実行者(オペレータ)は、地図上の記録装置2の現在位置を参照しながら、その位置の撮像画像を観視することができ、さらに、携帯電話端末1の画面に表示された地図画像などを比較参照することができる。
【0056】
[記録装置2のハードウエア構成例]
図4は、この記録装置2の構成例を示すブロック図である。この実施形態の記録装置2は、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成される制御部101に、システムバス100を通じて、基地局通信部102、GPS電波受信部103、携帯電話端末機能部104、撮像信号受信部105、時計部106、記録信号生成部107、記録処理部108、操作入力部109、表示部110、のそれぞれが接続されて構成されている。
【0057】
基地局通信部102は、アンテナ2Aにより基地局から基地局電波を受信して、その受信電波の情報を携帯電話端末機能部104に転送すると共に、記録信号生成部107に転送する。また、基地局通信部102は、携帯電話端末機能部104からの送信情報を受けて、アンテナ2Aから基地局に送信電波を送る。
【0058】
GPS電波受信部103は、アンテナ2BによりGPS衛星からのGPS電波を受信し、その受信電波の情報を携帯電話端末機能部104に転送すると共に、記録信号生成部107に転送する。
【0059】
携帯電話端末機能部104は、試験対象の携帯電話端末1とほぼ同一の機能を備える。携帯電話端末機能部104は、基地局電波に含まれる位置管理サーバからのアルマナック情報を抽出して、記憶部に保持する機能を備える。そして、携帯電話端末機能部104は、当該保持したアルマナック情報を用いて、GPS電波受信部103で受信したGPS電波から、その位置において受信可能なGPS衛星からのGPS電波を優先して抽出して処理するようにする。
【0060】
そして、携帯電話端末機能部104は、受信したGPS電波から位置検出処理を実行し、サービスサーバ33に対して検出した位置情報を送ると共に、地図や環境情報、その他のサービス情報の取得要求をする機能を備える。また、携帯電話端末機能部104は、検出した位置情報を記録信号生成部107に転送する。さらに、携帯電話端末機能部104は、サービスサーバ33から送られてきた情報から、各位置における天候、気温、湿度などの環境情報を抽出し、当該抽出した環境情報を記録信号生成部107に転送する機能を有する。
【0061】
撮像信号受信部105は、撮像装置5からの撮像信号を受信して、記録信号生成部107に転送する。
【0062】
時計部106は、現在時刻情報を生成して、記録信号生成部107に送る。
【0063】
記録信号生成部107は、基地局通信部102で受信した基地局電波、GPS電波受信部103で受信したGPS電波、撮像信号受信部105で受信した撮像画像情報、携帯電話端末機能部104から転送されてくる位置情報および環境情報、のそれぞれを、再生時に互いに分離して再生することができるようにした態様の記録信号を生成する。記録信号生成部107は、生成した記録信号を記録処理部108に供給する。
【0064】
記録処理部108は、記録信号生成部107からの記録信号を記録媒体に記録する。この例では、記録処理部108には、例えばカード型メモリや光ディスクなどのリムーバル記録媒体8が装填され、記録処理部108は、このリムーバル記録媒体8に記録信号生成部107からの記録信号を記録する処理を実行する。
【0065】
操作入力部109は、記録処理の開始や停止を指示したり、携帯電話端末機能部104におけるサービスサーバ33へのアクセスを指示したりするためのものである。
【0066】
表示部110は、作業者が操作入力部109による操作を行うために必要な情報を表示する。
【0067】
[試験用装置3のハードウエア構成例]
図5は、試験用装置3のハードウエア構成例を示すブロック図である。この実施形態の試験用装置3は、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成される制御部201に、システムバス200を通じて、再生処理部202、試験対象機器用供給信号生成部203、モニター表示装置用供給信号生成部204、地図情報メモリ205、USBインターフェース206、モニター表示装置インターフェース207、操作入力部208、のそれぞれが接続されて構成されている。
【0068】
USBインターフェース206は、USBケーブル6を通じて携帯電話端末1に接続されている。また、モニター表示装置インターフェース207は、接続ケーブルを通じてモニター表示装置7に接続されている。
【0069】
再生処理部202は、この例では、記録信号が記録されている記録媒体8´から順次に記録信号を読み出して再生し、その再生信号を試験対象機器用供給信号生成部203およびモニター表示装置用供給信号生成部204に供給する。この記録媒体8´は、記録装置2で記録情報が記録された記録媒体8そのものであっても良いし、この記録媒体8から記録情報がコピーされた記録媒体であっても良い。また、インターネットを通じて記録情報ファイルとして伝送されてきた記録情報が記録された記録媒体であっても良い。
【0070】
試験対象機器用供給信号生成部203は、再生処理部202から受け取った再生信号から、基地局電波およびGPS電波の情報を抽出し、その抽出した基地局電波およびGPS電波の情報を、再生信号から得た時間情報を基準にして順次にUSBインターフェース205を通じて試験対象機器である携帯電話端末1に供給する。
【0071】
モニター表示装置用供給信号生成部204は、再生処理部202から受け取った再生信号から、撮像画像情報および環境情報を抽出する。そして、その抽出した撮像画像情報を、再生信号から得た時間情報を基準にして、順次にインターフェース206を通じてモニター表示装置7に供給すると共に、抽出した環境情報を表示情報に変換して、再生信号から得た時間情報を基準にして、順次にインターフェース206を通じてモニター表示装置7に供給する。
【0072】
地図情報メモリ205には、この例では、試験のために作業者が記録装置2を携帯して移動する地域の地図情報が記憶されている。そして、モニター表示装置用供給信号生成部204は、この地図情報メモリ205から前記地図情報を取得する。また、モニター表示装置用供給信号生成部204は、再生処理部202から受け取った再生信号から各時間における位置情報(記録装置の位置情報)を抽出する。そして、地図情報メモリ205から取得した地図情報に対して、前記抽出した位置情報に対応する地図上位置において現在位置マークを重畳する。そして、モニター表示装置用供給信号生成部204は、現在位置マークを重畳した地図情報をモニター表示装置7に供給する。
【0073】
この場合、モニター表示装置7は、画面が2分割されて、その一方に、撮像画像(動画)が表示され、他方に、現在位置マークが重畳された地図情報が表示される。モニター表示装置7には、再生時間の経過と共に、移動経路の撮像画像が表示されると共に、地図上の現在位置マークが移動経路に沿って移動する地図画像が表示される。
【0074】
操作入力部208は、オペレータが再生処理の開始や停止を指示するためのものである。
【0075】
[記録装置2における処理動作の例]
次に、記録装置2の記録処理時における処理動作例を、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0076】
すなわち、先ず、制御部101は、作業者により操作入力部109を通じて記録スタート指示が入力されるのを監視する(ステップS1)。このステップS1で、記録スタート指示が入力されたと判別したときには、制御部101は、動画撮影状態である撮像装置5からの撮像画像情報の取り込みを開始する(ステップS2)。
【0077】
次に、制御部101は、時計部106からの時間情報を記録信号生成部107に供給して、その時間情報を保持させる(ステップS3)。次いで、制御部101は、記録信号生成部107に指示して当該時点で受信している基地局電波およびGPS電波を記録のために保持させるようにする(ステップS4)。
【0078】
そして、携帯電話端末機能部104は、制御部101の指示に基づき、受信した基地局電波およびGPS電波を用いた現在位置の検出処理を行い、検出した現在位置の位置情報を記録信号生成部107に供給する。また、携帯電話端末機能部104は、受信した基地局電波から、位置管理サーバからのアルマナック情報を抽出して保持する処理や、サービスサーバからの環境情報などのサービス情報を抽出する処理を行なう(ステップS5)。携帯電話端末機能104は、抽出した環境情報は、記録信号生成部107に供給する。
【0079】
次に、制御部101は、記録処理部108に、記録信号生成部107からの記録信号の記録を実行するように指示する。記録処理部108は、この指示に応じて、ステップS3で保持した時間情報に対応付けて、基地局電波およびGPS電波、携帯電話端末機能部104で検出された現在位置の情報、携帯電話端末機能部104で抽出された環境情報を、記録媒体に記録する(ステップS6)。なお、撮像装置5からの撮像画像情報(動画情報)は、記録処理部108により、連続的に記録されるものである。
【0080】
次に、制御部101は、操作入力部109を通じて作業者により記録停止指示入力がなされたか否か判別し(ステップS7)、記録停止指示入力がなされていないと判別したときには、ステップS3に戻って、このステップS3以降の処理を繰り返す。また、ステップS7で、記録停止指示入力がなされたと判別したときには、制御部101は、撮像画像情報取り込みを停止し(ステップS8)、この記録処理ルーチンを終了する。
【0081】
[試験用装置3における処理動作の例]
次に、試験用装置3の記録信号の再生処理時における処理動作例を、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0082】
試験用装置3の制御部201は、オペレータにより操作入力部208を通じて再生スタート指示が入力されるのを監視する(ステップS11)。このステップS11で、再生スタート指示が入力されたと判別したときには、制御部101は、記録媒体からの記録情報の再生を開始する(ステップS12)。
【0083】
モニター表示装置用供給信号生成部204は、制御部201からの制御指示に基づき、再生された撮像画像情報をモニター表示装置7に送ると共に、記録装置2の移動経路を含む地図上に記録装置2のその再生時点での位置を表示し、さらに、環境情報を併せて表示する表示情報を生成して、モニター表示装置7に送る(ステップS13)。
【0084】
そして、試験対象機器用供給信号生成部203は、制御部201からの制御指示に基づき、再生された基地局電波およびGPS電波の情報を、試験対象の携帯電話端末1に送る(ステップS14)。
【0085】
そして、制御部201は、操作入力部208を通じて作業者により再生停止指示入力がなされたか否か判別し(ステップS15)、記録停止指示入力がなされていないと判別したときには、ステップS13に戻って、このステップS13以降の処理を繰り返す。また、ステップS15で、再生停止指示入力がなされたと判別したときには、制御部201は、記録情報の再生を停止し(ステップS16)、この再生処理ルーチンを終了する。
【0086】
以上の再生処理により、携帯電話端末1には、日本で受信された基地局電波およびGPS電波が、前述した日本での移動経路に沿った移動に応じて、順次に供給される。そして、所定の位置で停止してサービスサーバへのアクセスを行った結果得られる基地局電波も受信する。携帯電話端末1は、これらの電波を、その処理機能を用いて処理を実行する。そして、その処理結果を、表示画面に表示するなどする。
【0087】
なお、携帯電話端末1でのGPS電波の処理に際し使用するアルマナック情報は、再生された基地局電波の情報から抽出して記憶部に保持して使用する。つまり、携帯電話端末1は、海外において、あたかも日本に存在しているように基地局電波からアルマナック情報を取得することができる。
【0088】
以上のようにして、試験用装置3における記録信号の再生により、電波の情報が再生されて携帯電話端末1に供給され、その電波の携帯電話端末1での処理の実行結果を評価することにより、海外のオペレータは、当該携帯電話端末1の処理機能が正しく動作しているか否かの試験を行うことができる。すなわち、日本仕様の携帯電話端末1の試験を、海外で実行することが可能となる。
【0089】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例である。第1の実施形態では、試験用装置3から試験対象の携帯電話端末1への基地局電波およびGPS電波の情報の伝達は、USBケーブルを用いて行うようにした。これに対して、この第2の実施形態では、試験対象の携帯電話端末1には、再生された電波の情報が、電波に戻されて送信される。
【0090】
図8は、この第2の実施形態の試験システムの全体構成を示す図であり、図1に示した第1の実施形態の試験システムと同一部分には同一参照符号を付してある。すなわち、第2の実施形態の試験システムにおいては、日本側に設けられる記録装置2および撮像装置5などからなる構成は、第1の実施形態と全く同様である。
【0091】
これに対して、海外においては、この第2の実施形態においては、試験用装置3とモニター表示装置7と試験対象の携帯電話端末1とに加えて、電波発生装置9を設ける。そして、試験用装置3からの再生された基地局電波およびGPS電波の情報は、例えば接続ケーブルを通じて電波発生装置9に供給される。
【0092】
電波発生装置9は、基地局電波発生部91と、GPS電波発生部92とを備える。基地局電波発生部91は、試験用装置3からの基地局電波の情報を受けて、当該基地局電波の情報を、実際の基地局が送信するのと同じ電波に再変換し、当該再変換した基地局電波を、アンテナ9Aを通じて携帯電話端末1に送信する。また、GPS電波発生部92は、試験用装置3からのGPS電波の情報を受けて、当該GPS電波の情報を、実際のGPS衛星が送信するのと同じ電波に再変換し、当該再変換した基地局電波を、アンテナ9Bを通じて携帯電話端末1に送信する。
【0093】
携帯電話端末1は、この電波発生装置9からの基地局電波と、GPS電波とを受信して、所定の処理を実行する。これにより、第1の実施形態と同様にして、携帯電話端末1の試験が行われる。
【0094】
この第2の実施形態においては、試験対象の携帯電話端末1は再生された電波の情報を、電波として受信することができるので、第1の実施形態のように、試験モードにおいてUSBケーブルを通じて送られてくる電波の情報をアンテナを通じて受け取った電波と同様に処理する機能を携帯電話端末1に設ける必要はない。
【0095】
[第3の実施形態]
上述の第1および第2の実施形態では、海外で製造された日本仕様の携帯電話端末1の海外での試験のために、日本で記録装置2により基地局電波およびGPS電波を記録し、その記録情報を、海外の携帯電話端末1に伝達するようにしている。この場合に、日本での基地局電波やGPS電波の記録は予め定められた固定的なスケジュールで実行される。すなわち、作業者が所定の位置で停止して、サービスサーバ33にアクセスする操作を作業者が行う場合、予め定めた一義的な状態でその操作を実行することになる。
【0096】
このため、海外において、後の時点において試験を実行するオペレータが、前記サービスサーバ33へのアクセスを行う位置を変更したかったり、記録装置2のアンテナ2A,2Bの当該地点における向きを変えて実行してもらいたかったり、ビルの陰あるいはビルとビルの間の位置などにおいて実行してもらいたかったり、したとしても、記録の後であるので、その要望を反映することは不可能である。このため、第1および第2の実施形態では、携帯電話端末1の試験としては、初期的条件の試験しか行えないという問題がある。
【0097】
第3の実施形態は、この問題点を改善したものである。図9に、この第3の実施形態の試験システムの全体構成例を示す。この図9において、図1に示した第1の実施形態の試験システムと同一部分には同一参照符号を付してある。
【0098】
この第3の実施形態では、図9に示すように、試験対象の携帯電話端末1が使用される日本では、上述の実施形態の記録装置2に代えて、電波転送装置51および中継センター52を設ける。また、海外には、記録情報の再生処理を行う試験用装置3に代えて、光インターネットなどのブロードバンド回線を含む通信ネットワーク31に接続される試験用装置61が設けられる。
【0099】
電波転送装置51は、記録装置2と同様に、基地局11,12,13,・・・からの基地局電波を受信するためのアンテナ51Aを備えると共に、GPS衛星21,22,23,24,・・・からのGPS電波を受信するためのアンテナ51Bを備える。
【0100】
そして、電波転送装置51は、アンテナ51Aで受信した基地局電波の情報と、アンテナ51Bで受信したGPS電波の情報とを、送信アンテナ51Cから中継センター52に送信する。また、第1の実施形態と同様に、電波転送装置51は、受信した基地局電波およびGPS電波に基づいて検出した位置情報と、受信した基地局電波から抽出したサービスサーバ33からの環境情報(検出した位置の天候、気温、湿度など)とを、送信アンテナ51Cから中継センター52に送信する。
【0101】
さらに、また、第3の実施形態では、この電波転送装置51に対して撮像装置5が接続されている。そして、第1の実施形態と同様に、電波転送装置51は、撮像装置5からの撮像画像情報も、送信アンテナ51Cから中継センター52に送信する。
【0102】
中継センター52は、光インターネットなどのブロードバンド回線を含む通信ネットワーク31に接続されている。そして、この中継センター52は、電波転送装置51から受信した情報を、通信ネットワーク31を通じて、海外の試験用装置61に転送する。
【0103】
この第3の実施形態では、試験用装置61は、第1の実施形態と同様に、試験対象の携帯電話端末1とUSBケーブル6を通じて接続されていると共に、モニター表示装置7とケーブルを通じて接続されている。そして、試験用装置61は、転送されてきた基地局電波およびGPS電波の情報を、携帯電話端末1にUSBケーブル6を通じて供給すると共に、転送されてきた撮像画像情報をモニター表示装置7に供給する。また、試験用装置61は、第1の実施形態と同様に、転送されてきた位置情報に基づいて、現在位置を地図上に表示した画像と、環境情報を文字表示するための表示情報を、モニター表示装置7に供給する。
【0104】
以上の構成により、この第3の実施形態においては、日本において、作業者が電波転送装置51を動作させると、この電波転送装置51で受信された基地局電波およびGPS電波の情報と、撮像画像情報と、環境情報が、リアルタイムで、海外の試験用装置61に転送される。
【0105】
この第3の実施形態では、このように日本と海外との間で通信を行うことにより、リアルタイムで試験対象の携帯電話端末1の試験ができる。そこで、この第3の実施形態では、海外のオペレータ60と、日本における作業者4との間で、連絡用通信装置により通話ができるようにすることで、海外のオペレータ60が、試験を実行中に作業者4に直接に要請指示をすることができるようにしている。
【0106】
この実施形態では、日本の作業者4と海外のオペレータ60とに、連絡用通信装置の例として、それぞれ携帯電話端末53と携帯電話端末62を所持してもらうようにし、通信ネットワーク34を通じて両者の間で通話が可能なようにしている。なお、図9では、通信ネットワーク34は、通信ネットワーク31とは別個のものとして記載したが、通信ネットワーク34は、通信ネットワーク31のインターネットなどのネットワークを共有するものである。
【0107】
なお、オペレータ60側の連絡通信用装置としては、携帯電話端末62ではなく、固定電話装置であってもよい。また、オペレータ60から作業者へ要請指示が行えれば、どのような通信網を使用しても良く、例えばスカイプなどのインターネット電話を用いることもできる。
【0108】
この第3の実施形態においても、作業者4は、電波転送装置51と、撮像装置5とを携帯して、第1の実施形態と同様にして、予め設定された日本におけるシミュレーション場所における移動経路を移動するようにする。すると、海外のモニター表示装置7の画面には、前述の実施形態で説明したように、日本におけるシミュレーション場所の地図画像上に、電波転送装置51の位置が時々刻々と移動する様子が表示されると共に、試験対象の携帯電話端末1の画面に、転送されてきた基地局電波およびGPS電波を、当該携帯電話端末1が処理した結果の画像が表示される。オペレータ60は、モニター表示装置7の表示画面の撮像画像と、携帯電話端末1の画面の表示画像とを比較参照し、かつ、地図画像を観視しながら、日本の作業者4に対して、携帯電話端末62から携帯電話端末53に電話をかけて、指示を伝達することができる。
【0109】
以上のようにして、この第3の実施形態の試験システムによれば、日本の試験環境における基地局電波やGPS電波をリアルタイムで海外の試験対象の携帯電話端末1に伝達することができ、リアルタイムの試験ができる。そして、海外のオペレータの指示を、日本の作業者に伝達しながらの試験を実行することもできるので、より高レベルの条件における試験を実施することが可能である。
【0110】
[電波転送装置51のハードウエア構成例]
図10は、この電波転送装置51の構成例を示すブロック図である。この実施形態の電波転送装置51は、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成される制御部301に、システムバス300を通じて、基地局通信部302、GPS電波受信部303、携帯電話端末機能部304、撮像信号受信部305、時計部306、送信用情報生成部307、情報送信部308、操作入力部309、表示部310、のそれぞれが接続されて構成されている。
【0111】
基地局通信部302にはアンテナ51Aが接続されており、GPS電波受信部303にはアンテナ51Bが接続されている。また、情報送信装置308には送信アンテナ51Cが接続されている。
【0112】
制御部301、基地局通信部302、GPS受信部303、携帯電話端末機能部304、撮像信号受信部305、時計部306、操作入力部309、表示部31のそれぞれは、図4に示した第1の実施形態における制御部101、基地局通信部102、GPS受信部103、携帯電話端末機能部104、撮像信号受信部105、時計部106、操作入力部109、表示部31のそれぞれに対応するものであって、その処理機能および動作は、第1の実施形態とほぼ同様であるので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0113】
この第3の実施形態においては、送信用情報生成部307は、基地局通信部302で受信した基地局電波、GPS電波受信部303で受信したGPS電波、撮像信号受信部305で受信した撮像画像情報、携帯電話端末機能部304から転送されてくる位置情報および環境情報、のそれぞれを、受信側で互いに分離して復元できるようにした態様の送信用情報を生成する。そして、送信用情報生成部307は、生成した送信用情報を情報送信部308に供給する。
【0114】
情報送信部308は、送信用情報生成部307から受け取った送信用情報を、中継センター52に宛てて、アンテナ5Cを通じて送信する。
【0115】
つまり、この第3の実施の形態の電波転送装置51では、第1の実施形態の記録装置2での情報の記録処理に代えて、情報を転送する処理を実行することが第1の実施形態とは異なるのみで、その他の処理動作は、第1の実施形態と全く同様である。
【0116】
[試験用装置61のハードウエア構成例]
図11は、試験用装置61のハードウエア構成例を示すブロック図である。この第3の実施形態の試験用装置61は、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成される制御部401に、システムバス400を通じて、通信インターフェース402、試験対象機器用供給信号生成部403、モニター表示装置用供給信号生成部404、地図情報メモリ405、USBインターフェース406、モニター表示装置インターフェース407、操作入力部408、のそれぞれが接続されて構成されている。
【0117】
この第3の実施形態の試験用装置61は、第1の実施形態の試験用装置3と比較すると、第1の実施形態の再生処理部202が通信インターフェース402に変わるだけでその他は、同様の構成となっている。すなわち、試験対象機器用供給信号生成部403、モニター表示装置用供給信号生成部404、地図情報メモリ405、USBインターフェース406、モニター表示装置インターフェース407、操作入力部408、のそれぞれは、第1の実施形態における試験対象機器用供給信号生成部203、モニター表示装置用供給信号生成部204、地図情報メモリ205、USBインターフェース206、モニター表示装置インターフェース207、操作入力部208、のそれぞれと同様の構成とされている。
【0118】
通信インターフェース402は、中継センター52から送られてくる情報を、試験対象機器用供給信号生成部403に送るとともに、モニター表示装置用供給信号生成部404に送る。
【0119】
この情報を受け取った試験対象機器用供給信号生成部403およびモニター表示装置用供給信号生成部404は、第1の実施形態と同様にして、それぞれ試験対象機器用供給信号を生成すると共に、モニター表示装置用供給信号を生成する。また、その他の地図情報メモリ205、USBインターフェース206、モニター表示装置インターフェース207、操作入力部208、のそれぞれも、第1の実施形態と同様の処理動作を行う。
【0120】
つまり、この第3の実施の形態の試験用装置61では、第1の実施形態の試験用装置3での情報の再生処理に代えて、転送されてくる情報を受信する処理を行うことが異なるのみで、その他の処理動作は、第1の実施形態と全く同様である。
【0121】
以上のようにして、この第3の実施形態では、リアルタイムで試験が行えると共に、海外におけるモニター表示装置7において現地(日本)の撮像動画像を参照することにより、現地の状況を把握しながら、日本の作業者に適切な指示をリアルタイムで与えることもできる。
【0122】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例であり、第1の実施形態に対する第2の実施形態の関係と全く同様の関係である。
【0123】
図12は、この第4の実施形態の試験システムの全体構成を示す図であり、図9に示した第3の実施形態の試験システムと同一部分には同一参照符号を付してある。また、図8に示した第2の実施形態と同一部分にも同一参照符号を付してある。すなわち、第4の実施形態の試験システムにおいては、日本側に設けられる電波転送装置51および撮像装置5などからなる構成は、第3の実施形態と全く同様である。
【0124】
これに対して、海外においては、この第4の実施形態においては、試験用装置61とモニター表示装置7と試験対象の携帯電話端末1とに加えて、電波発生装置9を設ける。そして、試験用装置61からの再生された基地局電波およびGPS電波の情報は、例えば接続ケーブルを通じて電波発生装置9に供給される。
【0125】
電波発生装置9は、第2の実施形態の説明において図8に示したように、基地局電波発生部91と、GPS電波発生部92とを備える。そして、それら基地局電波発生部91およびGPS電波発生部92の構成および動作は、第2の実施形態と全く同様であるので、ここではその説明は省略する。
【0126】
[実施形態の効果]
以上説明した第1〜第4の実施形態によれば、日本で使用される携帯電話端末1の処理機能の試験を、海外において、あたかも当該携帯電話端末1を日本で使用して試験をしているような状態で実行することができる。したがって、人件費が安価である海外において、携帯電話端末1の開発から最終的な処理機能試験までを実行することができる。
【0127】
そして、上述の第1および第2の実施形態においては、日本において記録した基地局電波やGPS電波の情報を、海外に伝達することができればよいので、日本と海外とを直接に接続するブロードバンド回線などの通信回線を、海外の試験装置側が用意する必要はない。
【0128】
また、上述した第3および第4の実施形態によれば、日本での基地局電波やGPS電波の受信と、海外でのそれらの電波を用いた試験をリアルタイムで実行することができる。このため、海外から携帯電話などで、日本の作業者に指示を伝達しながらの試験が可能となり、より複雑な条件における試験を実行することが可能となる。
【0129】
また、上述の第1〜第4の実施形態においては、日本の作業者が携帯する撮像装置により、現地(日本)での電波受信地の画像が撮像されて海外に送られるので、海外では、日本の作業者(記録装置や電波転送装置)による電波受信地の状況を把握することが容易になる。
【0130】
また、上述の第1〜第4の実施形態においては、日本の作業者(記録装置や電波転送装置)の位置情報も送られてくるので、その位置情報に基づいて、対応する地域の日本の地図上に作業者の現在位置を表示しながら、試験を行うことができる。そして、その地図上の電波受信地の状況を、上述のように撮像画像により把握することができるので、どのような環境で電波を受信しているかも容易に把握することができる。
【0131】
[その他の実施形態および変形例]
以上の実施形態の説明は、日本仕様の携帯電話端末を、海外で生産し、試験を行う場合であったが、先にも述べたように、海外使用の携帯電話端末を、日本で生産し、試験を行う場合にも、日本と海外との関係が逆になるだけで、上述と同様にして、この発明を適用することができる。
【0132】
また、電波の受信地と試験対象無線通信機器とは、日本と海外とに限定されるわけではなく、試験対象無線通信機器の試験を行おうとする地域で、当該無線通信機器用の電波を受信することができない場合の全てについて、この発明は適用可能である。
【0133】
また、試験対象の無線通信機器は、携帯電話端末に限られるものではなく、どのような無線通信機器であってもこの発明の対象となる。例えば、携帯用のナビゲーション装置や、車載用のナビゲーション装置などにも、この発明は適用可能である。車載用ナビゲーション装置の場合には、作業者は、記録装置や、電波転送装置を搭載した自動車を所定の経路に沿って移動させるようにすれば良い。
【0134】
なお、第3および第4の実施形態では、電波転送装置は、中継センターを通じて試験用装置に、情報を転送するようにしたが、例えば携帯電話網など含む通信ネットワークを介して、電波転送装置から試験用装置に直接に情報を転送するようにしても良い。
【符号の説明】
【0135】
1…試験対象の携帯電話端末、2…記録装置、3,61…試験用装置、5…撮像装置、7…モニター表示装置、11〜13…基地局、21〜24…GPS衛星、51…電波転送装置、52…中継センター、31…通信ネットワーク、53,62…連絡用通信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象の無線通信機器で処理されるべき情報の電波を受信し、当該受信した電波の情報を記録する記録装置と、
前記記録装置により記録された前記電波の情報を再生し、その再生した電波の情報を、試験用電波として、前記試験対象の無線通信機器に伝達する試験用装置と、
を備えることを特徴とする無線通信機器の試験システム。
【請求項2】
電波転送装置と、試験用装置とからなり、
前記電波転送装置は、試験対象の無線通信機器で処理されるべき情報の電波を受信し、当該受信した電波の情報を、前記試験用装置に転送し、
前記試験用装置は、前記電波転送装置から転送されてきた前記電波の情報を、試験用電波として、前記試験対象の無線通信機器に伝達する、
ことを特徴とする無線通信機器の試験システム。
【請求項3】
前記試験用装置は、前記電波の情報を、前記試験対象の無線通信機器に、電波として送信する手段を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信機器の試験システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の無線通信機器の試験システムは、
前記試験対象の無線通信機器が電波を受信して実際に使用される第1の地域の前記電波を受信することができない第2の地域において、前記試験対象の無線通信機器の試験を行うための試験システムであって、
前記記録装置または前記電波転送装置は、前記第1の地域において、前記試験対象の無線通信機器で処理されるべき情報の電波を受信し、
前記試験用装置は、前記第2の地域に設けられる
ことを特徴とする無線通信機器の試験システム。
【請求項5】
前記記録装置または前記電波転送装置は、前記第1の地域において、予め定められた経路を移動するものであり、前記記録装置または前記電波転送装置の現在位置と時間の情報を、前記試験用装置に、前記電波の情報に加えて伝達し、
前記試験用装置は、前記第1の地域の地図上において前記記録装置または前記電波転送装置の移動状態を表示する機能を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信機器の試験システム。
【請求項6】
前記記録装置または前記電波転送装置は撮像手段を備え、前記撮像手段で撮影した画像情報を、前記試験用装置に、前記電波の情報に加えて伝達し、
前記試験用装置は、前記画像情報を再生した画像を表示する表示手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の無線通信機器の試験システム。
【請求項7】
前記無線通信機器において前記受信した電波に基づいて実行する処理機能は、現在位置を検出し、検出した現在位置に関連する処理を実行する機能である
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の無線通信機器の試験システム。
【請求項8】
試験対象の無線通信機器が電波を受信して実際に使用される第1の地域の前記電波を受信することができない第2の地域において、前記試験対象の無線通信機器の試験を行う試験方法であって、
記録装置が、前記第1の地域において、試験対象の無線通信機器で処理されるべき情報の電波を受信し、当該受信した電波の情報を記録する記録工程と、
前記第2の地域において、試験用装置が、前記記録工程で記録された前記電波の情報を再生し、その再生した電波の情報を、試験用電波として、前記試験対象の無線通信機器に伝達する試験工程と、
を有することを特徴とする無線通信機器の試験方法。
【請求項9】
試験対象の無線通信機器が電波を受信して実際に使用される第1の地域の前記電波を受信することができない第2の地域において、前記試験対象の無線通信機器の試験を行う試験方法であって、
電波転送装置が、前記第1の地域において、試験対象の無線通信機器で処理されるべき情報の電波を受信し、当該受信した電波の情報を、前記第1の地域に設けられる前記試験用装置に転送する転送工程と、
前記試験用装置が、前記転送工程により転送されてきた前記電波の情報を、試験用電波として、前記試験対象の無線通信機器に伝達する試験工程と、
を有することを特徴とする無線通信装置の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−138868(P2012−138868A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291614(P2010−291614)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】