説明

無線通信監視システム

【課題】監視装置と無線ノードとが通信できなくなる前にその可能性がある無線ノードを早期に発見してその位置を把握すること。
【解決手段】監視装置が、無線通信を介して複数の無線ノードのステータスを把握する無線通信監視システムにおいて、前記各無線ノードは、基準座標を中心とする円周ラインであって安定した無線通信を行えなくなる位置に近づいている旨を知らせる警報データを送信するか否かの境界となる発報ラインを設定記憶し、現在の設置位置が前記発報ラインよりも外側である場合には警報データを前記監視装置に送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク監視を行う無線通信監視システムに関し、特に、監視装置と無線ノードとが通信できなくなる前にその可能性がある無線ノードを早期に発見しその位置を把握することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、設置位置の移動ができる複数の無線ノードから構成される無線通信監視システムでは、ICMP(Internet Control Message Protocol)またはSNMP(Simple Network Management Protocol)などを利用することにより、無線ノードの駆動状態を把握している。
【0003】
このような無線通信監視システムに関連する先行技術文献としては、下記の特許文献1がある。この特許文献1には、利用者が携帯する移動端末と監視センターとの間の通信が行えなくことを利用者に事前に報知できる無線通信監視システムに関する技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−101471号公報
【0005】
図11は従来の無線通信監視システムの一例を示す構成図であり、監視装置1、ネットワーク2、無線基地局3(以下、アクセスポイントという)、無線ノード4〜7、とから構成されている。
【0006】
監視装置1は、イーサネット(登録商標)などの有線ネットワークであるネットワーク2を介してアクセスポイント3と接続されている。アクセスポイント3は、無線ネットワーク回線(以下、無線回線という)を介して無線ノード4〜7と接続されている。
【0007】
なお、監視装置1は、ネットワーク2およびアクセスポイント3、無線回線を介して無線ノード4〜7や他のノードとの間で無線通信を行う無線通信部、各部の動作を制御し、無線ノード4〜7の稼動状態を把握するために稼働状態を含むデータの送信要求をするためのデータ(以下、監視リクエストデータという)を所定の時間間隔で送信する無線ノード状態監視機能や各無線ノード4〜7の稼働状態の変化に応じた異常対応処理を実施する異常対応処理機能などを実行する演算制御部、監視装置1として動作させるためのプログラムおよび各無線ノード4〜7の稼動状態(たとえば稼動中、不明などのステータス情報)を格納する稼動状態テーブルなどが格納されている記憶部から構成される。
【0008】
また、無線ノード4〜7は、アクセスポイント3および他の無線ノードや他のノードとの間で無線通信を行う無線通信部、各部の動作を制御し、稼動状態を含むデータ(以下、ステータスデータという)を監視装置1に送信するステータス送信機能などを実行する演算制御部、無線ノード4〜7として動作させるためのプログラムなどが格納されている記憶部から構成される。
【0009】
図11の無線通信監視システムの動作について説明する。監視装置1はあらかじめ定められた一定の周期で無線ノード(たとえば、無線ノード4)に監視リクエストデータを送信する。具体的には監視装置1はICMPまたはSNMPなどを利用して無線ノードの生存確認パケットを送信する。
【0010】
無線ノード4はネットワーク2、アクセスポイント3および無線回線を介して監視リクエストデータを受信し、ステータスデータを監視装置1に送信する。
【0011】
監視装置1は、無線回線、アクセスポイント3およびネットワーク2を介してステータスデータを受信し、記憶部に格納されている稼動状態テーブルに無線ノード4は稼動中である旨の稼動状態情報を更新する。
【0012】
このように従来の無線通信監視システムは、監視装置は各無線ノードの駆動状態を把握することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の無線通信監視システムは、無線ノード4〜7は移動可能である場合には無線の有効範囲を越えた移動をする可能性があり、監視装置1は無線ノードが接続不能、非稼動状態であることを早期に把握することができないという問題点があった。
【0014】
図12は、図11の無線通信監視システムの各ノードの設置位置関係の一例を示す説明図、図13は無線ノードが無線通信の有効範囲を越えた移動をする場合の動作説明図である。
【0015】
図12において、電波到達有効範囲103はアクセスポイント3のデータが有効に到達する範囲である。無線ノード4〜7は、アクセスポイント3から無線回線を介して送信されるデータが有効に到達する範囲を越える位置に設置されると、アクセスポイント3との無線通信ができなくなる。
【0016】
たとえば無線ノード4は、電波到達有効範囲103内に設置されているのでアクセスポイント3との無線通信が可能であり、無線回線→アクセスポイント3→ネットワーク2を経由して監視装置1との通信が可能である。
【0017】
無線ノード6は電波到達有効範囲103外に設置されているのでアクセスポイント3との無線通信はできないため、監視装置1との通信もできない。無線ノード5は非稼動状態でありアクセスポイント3との無線通信および監視装置1との通信はできない。
【0018】
図13のステップSP101において、監視装置1は無線ノード4に監視リクエストデータを送信する。ステップSP102において、監視リクエストデータは、ネットワーク2、アクセスポイント3および無線回線を介して無線ノード4に送信される。このとき無線ノード4の設置位置が移動している状態を想定すると、無線ノード4は監視リクエストデータを受信できない。
【0019】
ステップSP103において、監視装置1は無線ノード4からのステータスデータを受信するまで待機する。
【0020】
ステップSP104において、監視装置1は監視リクエストデータ送信後から所定の時間が経過した後または次の監視周期に突入するまでに、無線ノード4からのステータスデータを受信したか否かを判定し、ステータスデータを受信していない場合にはステップSP105に移行する。なおステータスデータを受信している場合には監視装置1による無線ノード4の状態監視に係る動作は終了する。
【0021】
ステップSP105において、監視装置1は、記憶部に格納されている稼動状態テーブルに無線ノード4が非接続状態または非稼動状態である旨の稼動状態情報を記憶・更新する。
【0022】
ステップSP106において、監視装置1は、無線ノード4からステータスデータを受信できないことに基づき、ネットワークを介してユーザに通知するなどの異常処理を実行する。
【0023】
このように、従来の無線通信監視システムは、無線ノードは無線の有効範囲を越えた移動をする可能性があり、監視装置1は一定周期で監視を行っていることにより、一定の時間を経過するまでまたは次の監視周期になるまで無線ノードが接続不能、または、非稼動状態となっていることを把握することができないという問題点があった。
【0024】
本発明は上述の問題点を解決するものであり、その目的は、監視装置と無線ノードとが通信できなくなる前にその可能性がある無線ノードを早期に発見してその位置を把握することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
監視装置が、無線通信を介して複数の無線ノードのステータスを把握する無線通信監視システムにおいて、
前記各無線ノードは、基準座標を中心とする円周ラインであって安定した無線通信を行えなくなる位置に近づいている旨を知らせる警報データを送信するか否かの境界となる発報ラインを設定記憶し、現在の設置位置が前記発報ラインよりも外側である場合には警報データを前記監視装置に送信することを特徴とする無線通信監視システムである。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の無線通信監視システムにおいて、
前記各無線ノードは、
GPS衛星から送信されるGPS信号を受信するGPS受信部と、
公衆回線網および/またはネットワークに接続されている無線基地局との間で無線通信を行う無線通信部と、
前記GPS受信部で受信した前記GPS信号に基づき算出された自機の現在の設置位置が前記発報ラインよりも外側である場合には警報データを前記監視装置に送信する演算制御部とを備えることを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の無線通信監視システムにおいて、
前記演算制御部は、
通信特性および/または移動特性に基づいて前記発報ラインを設定記憶し、かつ/または通信特性および/または移動特性の変動に応じて前記発報ラインを調整設定し記憶する発報距離設定手段を有することを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項2または請求項3記載の無線通信監視システムにおいて、
前記GPS受信部で受信した前記GPS信号に基づいて、自機が現在の位置する現在位置情報を演算し取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置情報に基づき基準座標から現在位置までの距離を示す現在距離を算出し、この現在距離が基準座標から前記発報ラインまでの距離を示す発報距離よりも長い場合には、前記無線通信部を制御して前記警報データを前記無線基地局を介し前記監視装置に送信する発報手段と、
前記監視装置からの要求を受信した後に前記現在位置情報を含むデータを前記無線通信部を制御して前記無線基地局を介し前記監視装置に送信する位置情報送信手段と、をする演算制御部とを備えることを特徴とする。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項2〜請求項4いずれかに記載の無線通信監視システムにおいて、
前記演算制御部は、
無線基地局の位置する座標を前記基準座標として前記記憶部に記憶し、前記発報ラインを設定記憶する手段を有することを特徴とする。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5いずれかに記載の無線通信監視システムにおいて、
公衆回線網および/またはネットワークに接続されている無線基地局との間でデータ通信を行う通信部と、
定常状態では所定の間隔で前記各無線ノードのステータス監視を行い、前記各無線ノードの一から警報データを受信した場合は、当該無線ノードが前記発報ラインの内側に戻るまで当該無線ノードの現在位置情報を取得するための位置情報リクエストデータを前記通信部を制御して当該無線ノード宛に送信する演算制御部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る無線通信監視システムによれば、GPS信号から得られる現在位置情報に基づき無線ノードが設置された位置が発報ラインを越えると監視装置に対して警報データを発報することにより、監視装置と無線ノードとが通信できなくなる前にその可能性がある無線ノードを早期に発見してその位置を把握することができる。
【0032】
また、本発明に係る無線通信監視システムは、無線ノードが設置された位置が発報ラインを越えると監視装置に対して警報データを発報することにより、監視装置の所定の監視周期を待たずに、無線ノードの状態把握が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は本発明に係る無線通信監視システムの一実施例を示す構成図であり、図11などと共通する部分には同一の符号を付けて適宜説明を省略する。図1と図11との相違点は、図1では無線ノード4〜7にGPS(Global Positioning System)受信部を設けること、GPS受信部により取得した位置情報を取得する位置情報取得手段と、基準座標から現在の位置までの距離が所定の距離を越えると監視装置に警報を発報する発報手段を有すること、発報距離と基準座標の緯度・経度および発報すべき距離を格納した位置情報テーブルを保持することなどである。
【0034】
図1において、無線通信監視システムは、監視装置1、ネットワーク2、アクセスポイント3、無線ノード4〜7とから構成されている。
【0035】
監視装置1は、イーサネット(登録商標)などの有線ネットワークであるネットワーク2を介してアクセスポイント3と接続されている。アクセスポイント3は、無線ネットワーク回線(以下、無線回線という)を介して無線ノード4〜7と接続されている。
【0036】
なお図1の無線通信監視システムでは、アクセスポイントを一つのみ備えているものとして例示しているが、無線通信監視システムは複数のアクセスポイントを備えるものであってもよい。
【0037】
図2は、図1の無線ノード4を構成する機能ブロック図であり、本発明に直接関係のある部分のみを示しており、その他の部分(たとえば電源など)は省略している。
【0038】
図2において本発明に係る無線ノード4は、各部の動作を制御し、稼動状態を含むステータスデータを監視装置1に送信するステータス送信機能、所定の発報距離に達すると監視装置1に警報を発報する発報機能などを実行する演算制御部(たとえばCPU)41と、図示しないGPS衛星から送信されるGPS信号を受信するGPS受信部42と、アクセスポイント3および他の無線ノードや他のノードとの間で無線通信を行う無線通信部43と、OSや無線ノードとして動作するためのプログラムやアプリケーション、これらプログラムなどの実行時に使用されるデータ、位置情報テーブルなどが格納されているRAMやROMなどの記憶部44と、などから構成されている。また無線ノード5〜7の構成も無線ノード4と同様である。
【0039】
記憶部44は、基準座標緯度、基準座標経度、発報距離が格納されている位置情報テーブル44aを記憶している。たとえば位置情報テーブル44aには、基準座標緯度:北緯35度40分58秒、基準座標経度:東経139度46分24秒、発報距離:200mといった情報が格納されている。
【0040】
ここで発報距離とは、基準座標からの一定の距離であり、各無線ノード4〜7が監視装置1に対して警報などの発報を行う境界となる距離をいう。すなわち、無線ノード4〜7の設置位置が基準座標から発報距離以上離れた場合には、無線ノード4〜7は監視装置1に警報を送信することになる。
【0041】
演算制御部41は、GPS受信部42により受信したGPS信号に基づき現在位置を示す位置情報を演算により取得する位置情報取得手段41aと、所定の発報距離が達すると無線通信部43を制御して監視装置1に警報を発報する発報手段41bと、発報距離を設定する発報距離設定手段41cとを備えている。
【0042】
演算制御部41は、記憶部44に格納されているOSなどを起動して、このOS上で格納されたプログラムを読み出して実行することにより無線ノード4全体(たとえば、演算制御部41はプログラムを読み出し実行することにより位置情報取得機能、発報機能、発報距離設定機能などの各機能)を制御し、現在位置情報の取得、警報の発報判断およびその発報などの固有の動作を行うものでもよい。
【0043】
このとき記憶部44は、演算制御部41によって実行されるプログラムやアプリケーションをプログラム格納エリアに展開し、入力されたデータや、プログラムやアプリケーションの実行時に生じる処理結果などのデータをワークエリアに一時的に記憶する。
【0044】
図3は図1の無線通信監視システムの各ノードの設置位置関係の一例を示す説明図であり、ノード移動許容範囲101は、この範囲内に各無線ノードが設置されれば、無線通信が有効に行われる範囲である。
【0045】
発報距離111は、各無線ノード4〜7が監視装置1に対して発報を行う境界となる距離、発報ライン112は基準座標100を中心として発報距離111を半径とする円の円周線(円周ライン)である。
【0046】
つまり無線ノード4〜7は、発報ライン112よりも外側、発報距離111よりも基準座標100から離れた位置に設置されると、監視装置1に無線通信を行えなくなる位置に近づいている旨を知らせる旨を知らせるための警報を送信することになる。また無線ノード4〜7は、発報ライン112の内側エリアに設置されると警報を発報せずに定常状態が維持される。いいかえれば発報ラインは各無線ノードが警報データを送信するか否かの境界ラインである。
【0047】
発報区間113は、発報ライン112からノード移動許容範囲101までの区間(距離)をいい、無線ノード4〜7は、発報区間113内に設置されている場合には警報を発報する。
【0048】
たとえば図3の無線ノード4は、発報ライン112よりも内側に設置されているので定常状態が維持されることになる。また、この発報ライン111は、各無線ノード4〜7によって異なり、記憶部44などに記憶されている発報距離に基づき定まる。
【0049】
図4は本発明に係る無線通信監視システムの無線ノード4と監視装置1との動作を説明するシーケンス図である。
【0050】
図4のシーケンスSQ201において、監視装置1は、所定のタイミングで無線ノード4に監視リクエストデータを送信する。監視リクエストデータは、ネットワーク2、アクセスポイント3および無線回線を介して無線ノード4に送信される。
【0051】
シーケンスSQ202において、無線ノード4は、無線通信部43を介して受信した監視リクエストデータに基づき、ステータスデータを監視装置1に送信する。ステータスデータは、無線回線、アクセスポイント3およびネットワーク2を介して監視装置1に到達する。
【0052】
シーケンスSQ203において、無線ノード4の演算制御部41の発報手段41bは、所定のタイミングでGPS受信部42が図示しないGPS衛星から取得した位置情報に基づき、現在の位置が発報ラインよりも外側に位置する場合には警報を含むデータ(以下、警報データという)を送信する、言い換えれば、警報を発報する。
【0053】
ここでシーケンスSQ203における無線ノード4の警報を発報する動作について、図5を用いて説明する。図5は、無線ノード4の警報発報処理を説明するフロー図である。図5のステップS301において、無線ノード4の演算制御部41の位置情報取得手段41aは、GPS受信部42が図示しないGPS衛星から送信されるGPS信号に基づいて現在位置を示す位置情報(以下、現在位置情報という)を演算により算出し、記憶部44に記憶する。
【0054】
ステップSP302において、無線ノード4の演算制御部41の位置情報取得手段41aは、算出された現在位置情報と記憶部44の位置情報テーブル44aに格納されている基準座標に基づいて、基準座標から現在位置までの距離(以下、現在距離という)を算出し、記憶部44に記憶する。
【0055】
ステップSP303において、無線ノード4の演算制御部41の発報手段41bは、算出された現在距離と位置情報テーブル44aに格納されている発報距離とを比較する。現在距離が発報距離よりも長い場合はステップSP304に移行する。
【0056】
ステップSP304において、無線ノード4の演算制御部41の発報手段41bは、無線通信部43を制御して、警報データを無線回線を介して送信する。すなわち、無線ノード4は、移動して発報ライン112の外側に位置する場合には、監視装置1に警報データを送信することになる。その後、図4のシーケンスSQ204に移行する。
【0057】
なお警報データは、無線回線、アクセスポイント3およびネットワーク2を介して監視装置1に到達する。またステップSP303で現在距離が発報距離よりも短いと判断される場合には、無線ノード4は警報を発報せずに処理を終了する。
【0058】
図4のシーケンスSQ204において、監視装置1は、無線ノード4から警報データを受信した後、所定のタイミングで無線ノード4の現在位置を把握するために現在位置情報を含むデータの送信要求をするためのデータ(以下、位置情報リクエストデータという)を無線ノード4宛に送信する。
【0059】
シーケンスSQ205において、無線ノード4は、監視装置1から位置情報リクエストデータを受信した後、無線ノード4の現在位置情報を含むデータ(以下、現在位置情報データという)を無線ノード4宛に送信する。なお現在位置情報データは、無線回線、アクセスポイント3およびネットワーク2を介して監視装置1に到達する。
【0060】
監視装置1は、無線回線、アクセスポイント3およびネットワーク2を介して現在位置情報データを受信し、図示しない記憶部に格納されている稼動状態テーブルに無線ノード4は稼動中である旨の稼動状態情報を更新するとともに、無線ノード4の位置情報を記憶する。
【0061】
ここでシーケンスSQ204〜205における無線ノード4の現在位置情報を送信する動作について、図6を用いて説明する。図6は、無線ノード4の現在位置情報を更新する処理を説明するフロー図である。図6のステップS401において、監視装置1は無線ノード4からの警報データを無線回線、アクセスポイント3およびネットワーク2を経由して受信する。
【0062】
ステップSP402において、監視装置1は、無線ノード4から警報データを受信した後、所定のタイミングで位置情報リクエストデータを無線ノード4宛に送信する。なお位置情報リクエストデータは、ネットワーク2、アクセスポイント3および無線回線を介して無線ノード4に到達する。
【0063】
ステップSP403において、無線ノード4の演算制御部41の位置情報取得手段41aは、位置情報リクエストデータを受信した後、GPS受信部42が図示しないGPS衛星から受信したGPS信号に基づいて現在位置情報を演算により算出し、記憶部44に記憶する。
【0064】
ステップSP404において、無線ノード4の演算制御部41の位置情報送信手段41dは無線通信部43を制御して、算出された現在位置情報に基づき、現在位置情報データを監視装置1へ送信する。現在位置情報データは、無線回線、アクセスポイント3およびネットワーク2を介して監視装置1に到達する。
【0065】
ステップSP405において、監視装置1は、無線回線、アクセスポイント3およびネットワーク2を介して現在位置情報データを受信し、図示しない記憶部に格納されている稼動状態テーブルに無線ノード4は稼動中である旨の稼動状態情報を更新するとともに、無線ノード4の位置情報を記憶し、図4のシーケンスSQ206に移行する。
【0066】
図4のシーケンスSQ206において、監視装置1は無線ノード4の位置情報と無線ノード4の発報距離とを比較し、無線ノード4が発報ライン112よりも内側の位置に設置されているか否かを判断する。
【0067】
監視装置1は、無線ノード4が発報ライン112よりも外側の位置に設置されていると判断する場合には、無線ノード4が発報ライン112よりも内側の位置に設置されるまで一定時間おいて所定の周期でシーケンスSQ204〜206の処理を繰り返し行う。
【0068】
たとえば、シーケンスSQ207において、監視装置1は、位置情報リクエストデータ(#2)を無線ノード4宛に送信する。シーケンス208において、無線ノード4は、現在位置情報データ(#2)を無線ノード4宛に送信する。そしてシーケンスSQ209において、監視装置1は無線ノード4の位置情報と無線ノード4の発報距離とを比較し、無線ノード4が発報ライン112よりも内側の位置に設置されているか否かを判断する。
【0069】
なおシーケンスSQ206または209において、監視装置1は、無線ノード4が発報ライン112よりも内側の位置に設置されていると判断すると、処理を終了する。
【0070】
この結果、本発明に係る無線通信監視システムは、GPS信号から得られる現在位置情報に基づき無線ノードが設置された位置が発報ラインを越えると監視装置に対して警報データを発報することにより、監視装置と無線ノードとが通信できなくなる前にその可能性がある無線ノードを早期に発見してその位置を把握することができる。
【0071】
また、本発明に係る無線通信監視システムは、無線ノードが設置された位置が発報ラインを越えると監視装置に対して警報データを発報することにより、監視装置の所定の監視周期を待たずに、無線ノードの状態把握が可能となる。
【0072】
なお、各無線ノード4〜7は、無線ノード毎に異なる発報区間を管理できるものでもよい。たとえば各無線ノードの無線通信を行うためのアンテナのゲイン値の相違などの機器性能差による電波特性や各無線ノードの無線通信部の性能が異なるために無線通信可能範囲が異なる場合などには、無線ノード毎に異なる発報区間を管理することが有効である。図7は、無線ノード毎に発報区間を管理する場合の説明図である。
【0073】
図7において、無線ノード4の演算制御部41の発報距離設定手段41cは、たとえば無線ノード4のアンテナのゲイン特性に基づき発報距離111、発報ライン112および発報区間113を設定し記憶部44に記憶する。
【0074】
また無線ノード5の図示しない演算制御部の発報距離設定手段41cは、たとえば無線ノード5のアンテナのゲイン特性に基づき発報距離121、発報ライン122および発報区間123を設定し図示しない記憶部に記憶する。
【0075】
無線ノード4および5は、各々で設定した発報距離111、121に基づき、現在設置されている位置が発報ライン112、122よりも内側であるか否かを判断し、警報データを監視装置1に送信をすべきか否かを決定する。
【0076】
また、上述の実施例では、各無線ノード4〜7は、あらかじめ記憶している基準座標に基づき現在位置と発報距離を比較して警報データを発報すべきか判断するものと説明しているが、基準座標をアクセスポイントとするものでもよい。
【0077】
図8はアクセスポイントを基準座標とした場合の発報ラインなどの位置関係を示す説明図、図9はアクセスポイントを基準座標とする際の位置情報テーブルの一例である。図9においてアクセスポイント3の設置位置を基準座標100としている。
【0078】
また図8におけるノード移動許容範囲はアクセスポイント3からの各種データを無線回線を介して有効に受信できる範囲である電波到達有効範囲103となる。また発報ライン112は、アクセスポイント3を中心として発報距離111を半径とする円の円周ラインとなり、発報区間113は発報ライン112から電波到達有効範囲103までの区間となる。
【0079】
このようにアクセスポイントの座標を基準座標とすることにより、アクセスポイントの座標およびその座標から許容される距離を定めて、無線ノードの移動が許容される範囲が定められる。
【0080】
この場合には、各無線ノードの記憶部に記憶された位置情報テーブルには、図9のように、アクセスポイントのUID(Unique Identifier(固有識別子))が記憶され、基準座標経度および基準座標緯度としてアクセスポイント3の設置されている経度・緯度が記憶される。
【0081】
図8のような位置関係である場合も、監視装置1および無線ノード4〜7は図9の位置情報テーブルを用いて上述の実施例と同様の動作を行う。たとえば無線ノード4が発報ライン112の外側に移動したことを、GPS情報に基づき認知した場合には、監視装置1に対して警報データを発報する。
【0082】
図9の位置情報テーブルには発報距離も記憶される。この発報距離は、監視装置1からSNMP(Simple Network Management Protocol)のSNMPsetもしくは、独自プロトコルを利用して随時設定値の変更が可能とするものでもよい。
【0083】
このため、本発明に係る無線通信監視システムは、無線ノード毎に発報距離を設定ができ、かつ、監視装置から遠隔設定が可能であることより、無線ノードの特性が変動する場合であってもその特性変動に追従して発報処理の条件設定が可能となる。
【0084】
また上述の実施例では、監視装置1は位置情報リクエストデータを所定の時間間隔で無線ノード4〜7に送信すると説明しているが、特にこれに限定されるものではなく、無線ノードに対する定期的な監視周期を狭めるものでもよい。
【0085】
このような監視装置1による定期的な監視により、無線ノードの現在位置情報を密に取得することができ、各無線ノード4〜7が発報ライン112の外側から内側へ復帰したことを早期に認識することができる。また監視装置1は、無線ノード4〜7からの現在位置情報に基づき無線ノード4〜7が発報ライン112の内側に復帰したことを認識した場合には、監視周期を元の間隔に戻すものでもよい。
【0086】
これにより、本発明に係る無線通信監視システムは、無線ノードが発報ラインを越えると監視装置に対して警報データを発報することにより、監視装置が無線ノードとの通信ができなくなる前に事前に無線ノードへの監視パターンの変更が可能となる。
【0087】
また上述の実施例では、各無線ノード4〜7は、無線ノード毎に発報区間を管理できるものと説明しているが、各無線ノードの移動特性に応じて発報区間を管理するものであってもよい。
【0088】
図10は無線ノードの移動特性に応じて発報区間を管理する場合の位置関係の説明図である。たとえば図10では、無線ノード4は時間当たりの移動距離が大きい、または、移動機会が頻繁であるなどの理由から移動特性が大として設定されているものであり、無線ノード5は、時間当たりの移動距離が小さい、または、移動機会が稀であるなどの理由から移動特性が小として設定されているものである。
【0089】
この場合、無線ノード4の発報距離112は、無線ノード4の移動特性(大)に基づき定められるものでよい。また無線ノード5の発報距離121は、無線ノード5の移動特性(小)に基づき定められるものでよい。
【0090】
また、本発明に係る無線通信監視システムは、監視周期を発報ラインとの位置関係によりダイナミックに変更することにより、位置情報を密に取得することが可能となる。
【0091】
また、本発明に係る無線通信監視システムは、無線ノードが無線の有効範囲外へ移動した場合において、無線ノードが発報ラインを越えてから発報ラインの内側に戻るまで位置情報データを監視データに送信し続けることにより、どの地点を経由して範囲外に移動したことを、監視装置が把握することが可能となる。
【0092】
また、本発明に係る無線通信監視システムは、無線ノード毎に発報距離を設定することにより、各無線ノードの特性に基づいた発報処理の条件設定が可能となる。これにより、たとえば異なる通信特性を有する複数種類の無線ノードから成る無線通信システムであっても、監視装置が無線ノードとの通信ができなくなる前にその可能性がある無線ノードを早期に発見してその位置を把握することができる。
【0093】
また、本発明に係る無線通信監視システムの監視ノードは、各無線ノードの配置位置を表すCRTなどの表示手段を有するものであってもよく、無線ノードは自機の現在位置情報、基礎座標、発報ラインなどの各情報および位置情報テーブルの内容を表示する表示手段を有するものであってもよい。
【0094】
また、本発明に係る無線通信監視システムは、インダストリアルオートメーションにおけるプロセス制御システムに応用できるものであってもよい。近年、プロセス制御システムとしてフィードバック制御ループを構成する流量計や温度計などのセンサ、アクチュエータ、コントローラを含むフィールド機器を無線ネットワークで接続し、フィールド無線通信システムとして構築することが提案されている。これらのフィールド機器は無線通信機能を有するものであり、各フィールド機器は移動可能なものとする。
【0095】
このフィールド無線通信システムを構成するフィールド機器が上述のように説明した無線ノードの機能を保持し、プロセス制御システムを統括する統括サーバなどが監視装置の機能を保持するものでもよい。
【0096】
このように、本発明に係る無線ノードの機能を有するフィールド機器と、監視装置の機能を有する統括サーバとから成るフィールド無線通信システムであれば、フィールド機器の移動や無線通信の特性変動などにより無線ノードとの通信ができなくなる前にその可能性があるフィールド機器を早期に発見してその位置を把握することができ、フィールド制御ループによる被制御対象の最適運転・制御に貢献できる。
【0097】
以上説明したように、本発明に係る無線通信監視システムは、監視装置と無線ノードとの通信ができなくなる前にその可能性がある無線ノードを早期に発見してその位置を把握することができることにより、事前にそのような無線ノードに対する対策を施すことができ、無線通信システム全体の適切な運転に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る無線通信監視システムの一実施例を示す構成図である。
【図2】図1の無線ノード4を構成する機能ブロック図である。
【図3】図1の無線通信監視システムの各ノードの設置位置関係の一例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る無線通信監視システムの無線ノード4と監視装置1との動作を説明するシーケンス図である。
【図5】無線ノード4の発報処理を説明するフロー図である。
【図6】無線ノード4の現在位置情報を更新する処理を説明するフロー図である。
【図7】無線ノード毎に発報区間を管理する場合の説明図である。
【図8】アクセスポイントを基準座標とした場合の発報ラインなどの位置関係を示す説明図である。
【図9】アクセスポイントを基準座標とする際の位置情報テーブルの一例である。
【図10】従来の無線通信システムにおける問題点の説明図である。
【図11】従来の無線通信監視システムの一例を示す構成図である。
【図12】図11の無線通信監視システムの各ノードの設置位置関係の一例を示す説明図である。
【図13】図11の無線通信監視システムの動作のフロー図である。
【符号の説明】
【0099】
1 監視装置
2 ネットワーク
3 アクセスポイント
4、5、6、7 無線ノード
41 演算制御部
41a 位置情報取得手段
41b 発報手段
41c 発報距離設定手段
41d 位置情報送信手段
42 GPS受信部
43 無線通信部
44 記憶部
44a 位置情報テーブル
100 基準座標
101 ノード移動許容範囲
103 電波到達有効範囲
111、121 発報距離
112、122 発報ライン
113、123 発報区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視装置が、無線通信を介して複数の無線ノードのステータスを把握する無線通信監視システムにおいて、
前記各無線ノードは、基準座標を中心とする円周ラインであって安定した無線通信を行えなくなる位置に近づいている旨を知らせる警報データを送信するか否かの境界となる発報ラインを設定記憶し、現在の設置位置が前記発報ラインよりも外側である場合には警報データを前記監視装置に送信することを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項2】
前記各無線ノードは、
GPS衛星から送信されるGPS信号を受信するGPS受信部と、
公衆回線網および/またはネットワークに接続されている無線基地局との間で無線通信を行う無線通信部と、
前記GPS受信部で受信した前記GPS信号に基づき算出された自機の現在の設置位置が前記発報ラインよりも外側である場合には前記警報データを前記監視装置に送信する演算制御部とを備えることを特徴とする
請求項1記載の無線通信監視システム。
【請求項3】
前記演算制御部は、
通信特性および/または移動特性に基づいて前記発報ラインを設定記憶し、かつ/または、通信特性および/または移動特性の変動に応じて前記発報ラインを調整設定し記憶する発報距離設定手段を有することを特徴とする
請求項2記載の無線通信監視システム。
【請求項4】
前記演算制御部は、
前記GPS受信部で受信した前記GPS信号に基づいて、自機が現在の位置する現在位置情報を演算し取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置情報に基づき基準座標から現在位置までの距離を示す現在距離を算出し、この現在距離が基準座標から前記発報ラインまでの距離を示す発報距離よりも長い場合には、前記無線通信部を制御して前記警報データを前記無線基地局を介し前記監視装置に送信する発報手段と、
前記監視装置からの要求を受信した後に前記現在位置情報を含むデータを前記無線通信部を制御して前記無線基地局を介し前記監視装置に送信する位置情報送信手段と、をする演算制御部とを備えることを特徴とする
請求項2または請求項3記載の無線通信監視システム。
【請求項5】
前記演算制御部は、
無線基地局の位置する座標を前記基準座標として前記記憶部に記憶し、前記発報ラインを設定記憶する手段を有することを特徴とする
請求項2〜請求項4いずれかに記載の無線通信監視システム。
【請求項6】
前記監視装置は
公衆回線網および/またはネットワークに接続されている無線基地局との間でデータ通信を行う通信部と、
定常状態では所定の間隔で前記各無線ノードのステータス監視を行い、前記各無線ノードの一から警報データを受信した場合は、当該無線ノードが前記発報ラインの内側に戻るまで当該無線ノードの現在位置情報を取得するための位置情報リクエストデータを前記通信部を制御して当該無線ノード宛に送信する演算制御部を有することを特徴とする
請求項1〜請求項5いずれかに記載の無線通信監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−61223(P2010−61223A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223778(P2008−223778)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】