無線通信端末
【課題】データ通信のQoSが保証されるエリアにおいて、ユーザの意思に応じて無線通信ネットワークの負荷を軽減することができるようにする。
【解決手段】データ通信を行う無線通信端末は、QoS保証されるエリア内での高速データ通信を辞退するか否かを設定する手段と、現在の位置がQoS保証されるエリア内である場合に、前記設定された内容を確認し、辞退する設定がなされている場合、ハイデータレートのアップロードおよびダウンロードを抑止する手段とを備える。
【解決手段】データ通信を行う無線通信端末は、QoS保証されるエリア内での高速データ通信を辞退するか否かを設定する手段と、現在の位置がQoS保証されるエリア内である場合に、前記設定された内容を確認し、辞退する設定がなされている場合、ハイデータレートのアップロードおよびダウンロードを抑止する手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ネットワークを介してデータ通信を行う携帯電話端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の無線通信において、限りある無線資源(リソース)をどのように効率的に利用するかは、通信技術の発達に伴って通信効率が向上するとしても、常に問題となる。この問題に対する改善案の一例として、トラフィック変動にあわせて、リソースを売買するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、無線通信網において、ホームゾーン内通話とホームゾーン外通話とで通話料に差をつけられるようにした移動通信システムも提案されている(特許文献2)。この公報には、料金を固定電話並みに安くできるホームゾーンを実現することができ、無線通信ネットワークの負荷が軽くできるとの効果も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−217964号公報
【特許文献2】特開2000−174932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、急な雨が降った時の駅前や、初詣時の神社周辺等、特定の時間および場所において、通話を行いたい端末ユーザが多数集中する場合がある。このような状況では、通信容量を上回る発呼および着信が発生することが予想される。このような場合、音声通話ができなくなる、または不良となることがある。
【0006】
しかしながら、特許文献1のリソースの売買では、特定の場所や時間でのトラフィック変動に対処することができない。
【0007】
特許文献2に記載の発明によるネットワーク負荷の軽減効果は限定的といわざるを得ない。つまり、有線による代替ネットワークの数だけしか軽減できず、事業者の意図したエリアの負荷を動的に軽減することはできない。
【0008】
また、大量のデータのアップロードやダウンロードが同じ地域の同じ時間帯に発生すると、同様の問題が発生しうる。特に、データ通信のQoSが保証されているような特定のエリアでは、トラフィックが逼迫することが想定される。
【0009】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、データ通信のQoSが保証されるエリアにおいて、ユーザの意思に応じて無線通信ネットワークの負荷を軽減することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、データ通信を行う無線通信端末として、QoS保証されるエリア内での高速データ通信を辞退するか否かを設定する手段と、現在の位置がQoS保証されるエリア内である場合に、前記設定された内容を確認し、辞退する設定がなされている場合、ハイデータレートのアップロードおよびダウンロードを抑止する手段とを備えた無線通信端末を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、データ通信のQoSが保証されるエリアにおいて、トラフィックを低減することが可能となる。すなわち、無線通信ネットワークの負荷を軽減して、限りある無線資源を有効に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による実施の形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明による文書作成装置として機能する携帯電話端末の概略のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるセル状態別通話料テーブルの構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における発信側の動作例を示したシーケンス図である。
【図5】本発明の実施の形態における端末の表示画面の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における発信側の他の動作例を示したシーケンス図である。
【図7】本発明の実施の形態における発信側のさらに他の動作例を示したシーケンス図である。
【図8】本発明の実施の形態における受信設定の画面例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における受信設定の画面例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における受信側の動作に関する基地局での動作例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態における着信の辞退を端末側で行う端末での動作例を示すフローチャートである。
【図12】図11の処理の変形例をフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態における、データのアップロードやダウンロードなどのデータ通信に関する実施の形態における端末の処理例を示したフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態における無線通信制御装置の概略機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの概略構成を示している。ここに、広義の無線通信システムとしては図1に示した構成全体を指すが、特許請求の範囲における無線通信システムとしては図1に示した一つの構成要素または複数の構成要素の組み合わせでありうる。本発明の無線通信端末としては、少なくとも通話機能を有する携帯電話端末を例に説明する。
【0015】
複数の携帯電話端末20の各々は、通常、最寄りの基地局(BS)12と無線通信を行う。各基地局(BS)10は携帯電話端末20と無線通信可能な範囲としてのセル12を構成している。基地局10は、加入者交換機31に接続される。加入者交換機31は、端末のユーザが発信した通話相手の端末の電話番号に応じて、その相手がどこにいるかを見つけ出して、通話のための通信経路を確立する。加入者交換機31は、携帯電話端末の電話番号と端末ID(TMSI:Temporary Mobile Subscriber Identity)の対応データを含む、ビジターロケーションレジスタ(VLR)32という自分のエリアにいる携帯電話端末の位置登録データを保持しているデータベースを有する。加入者交換機31とVLR32とは移動通信制御局(MCC)30に含まれている。移動通信制御局30は、図示しない無線ネットワーク制御装置(RNC)も含んでいる。複数の加入者交換機31は中継交換機40を介して接続されている。中継交換機40には、ホームレジストレーションレジスタ(HLR)41と呼ばれるデータベースが接続されている。ホームレジストレーションレジスタ(HLR)41は、すべての携帯電話端末の位置登録データを保持しているデータベースである。
【0016】
通常、複数のセル12をまとめた位置登録エリアを単位として、各端末が現在どの位置に存在するかをホームロケーションレジスタ(HLR)41に登録している。VLR32内の位置登録データは、HLR41内の位置登録データの一部に相当する。
【0017】
中継交換機40は、関門交換機50を介して、他事業者の携帯電話網80や固定電話網90に接続される。さらに、関門交換機50は、ゲートウェイ60を介してインターネット70にも接続されている。
【0018】
ある携帯電話端末Aのユーザが他の携帯電話端末Bの電話番号に対して電話を掛けた(発呼した)とき、端末Aの最寄りの基地局10がその加入者交換機31との間で電波による通信路を設定する。ついで、加入者交換機31が相手の電話番号に基づいて、端末Bが現在どこにいるかをHLR41を参照して確認する。なお、端末Bが同じ加入者交換機31に接続された基地局10の位置登録エリアに属している場合には、当該VLR32によりその旨が判明する。その後、相手端末の加入者交換機31は、基地局を介して、自分の管理する位置登録エリアに属するすべての端末に対して一斉呼び出し(ページング)を行い、相手端末である端末Bがその位置登録エリア内に存在するかどうかを確認する。端末Bから応答があったとき、端末Bに対して回線(チャネル)をつなぐための呼設定を要求し、端末Bと無線ネットワーク制御装置との間を接続する。これにより、同じ携帯電話事業社内の端末同士の間で通話を行うことが可能となる。携帯電話端末20は、中継交換機40および関門交換機50を介して、他事業者の携帯電話網80に属する携帯電話端末との間で通話のための通信を行うこともできる。また、同様に、中継交換機40および関門交換機50を介して、固定電話網90に属する固定電話端末との間で通話のための通信を行うこともできる。
【0019】
図2は、携帯電話端末20の概略のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0020】
携帯電話端末20は、バス215で相互に接続された、制御部201、通信部203、表示部204、操作部205、記憶部206、音声処理部210、この音声処理部210に接続されたスピーカ211、マイク212を備えている。
【0021】
制御部201は、CPU等のプロセッサを含み、携帯電話端末20の各部を制御する。
【0022】
通信部203は、RF部、変復調回路等を含み、アンテナ202を介して基地局との間で、通話およびデータ通信等のための無線通信を行う。
【0023】
表示部204は、LCD等のディスプレイを含み、表示画面上に文字や画像等の情報を表示する。
【0024】
操作部205は、制御キー、テンキー等の各種のキーを有し、ユーザによる指示やデータの入力操作を受け付ける。
【0025】
記憶部206は、ROM、RAM等を含み、CPUが実行するOSや各種アプリケーション等のプログラムやデータ(電話帳データを含む)を記憶する。ROMには、フラッシュメモリのような再書き込み可能な不揮発性メモリを含みうる。
【0026】
音声処理部210は、音声のエンコーダ、デコーダ、DA変換器、AD変換器等を含み、スピーカ211に対する音声出力およびマイクからの音声入力を行う。
【0027】
その他、図示しないが、携帯電話端末20は、電源部、発光部、バイブレータ、等、通常の携帯電話端末が備えている機能部を備えている。
【0028】
図14に、本実施の形態における無線通信制御装置100の概略機能構成を示すブロック図を示す。この無線通信制御装置100は、本発明の主要な機能を司る装置であり、本実施の形態では基地局10に設けることを想定している。但し、これに限らず、MCC30に設けても良く、または両方に分散して設けてもよい。
【0029】
制御部110は、基地局対応のセルの混雑度(または混雑状態)を表すセル状態を検出するセル状態検出部111、当該セルに属する端末の発呼を受け付け、制御する発呼制御部112、および当該セルに属する端末の着呼を制御する着呼制御部113を有する。制御部110は、通信部130を介して外部の装置と必要な通信を行う。記憶部120は、制御部110と接続され、セル状態記憶部121、セル状態別通話料テーブル122、端末別ユーザ発信意思記憶部123、端末別ユーザ着信意思記憶部124を有している。セル状態記憶部121は、当該セルの検出された現在のセル状態を記憶する部位である。セル状態別通話料テーブル122は、セル状態毎の通話料を定めたデータテーブルである。端末別ユーザ発信意思記憶部123は、端末別に、予め表明された混雑時のユーザの発信意思を記憶する部位である。端末別ユーザ着信意思記憶部124は、端末別に、予め表明された混雑時のユーザの着信意思を記憶する部位である。
【0030】
なお、図14に示した機能部のすべてが本発明に必須という訳ではなく、後述する本実施の形態の態様によって利用される機能が異なる。
【0031】
図3に、本実施の形態におけるセル状態別通話料テーブル122の構成例を示す。特定の混雑状態において端末が発呼を抑止しなかったとき、このセル状態別通信料テーブル122に基づいて、通話料金を割増にするよう課金設定が変更される。このような通話料テーブル122の配置場所は特に限定するものではなく、必要時に参照できればどこに配置してもよい。
【0032】
図3(a)は、セル状態と、各セル状態に対応した通話料F1,F2,F3との対応関係を表した通話料テーブル122aを示している。
【0033】
ここにセル状態とは、上述したようにセル毎の端末の混雑度を示す情報であり、ここでは3段階の状態I,II,IIIを示している。状態Iは通常の第1の状態を示し、状態IIは通常より混雑の度合いの高い第2の状態、状態IIIは状態IIよりさらに混雑の度合いの高い第3の状態を示している。いずれの状態も、本実施の形態では、セル内の携帯電話端末の個数を所定の閾値と比較することにより判定する。なお、状態の個数は3に限るものではなく、2でも、4以上でもよい。
【0034】
通話料F1,F2,F3は、単位時間当たりの時間(分や秒)であってもよいし、割増の度合い(%や倍率等)であってもよい。また、料金クラスの識別情報であってもよい。いずれにせよ、状態I,II,IIIの順に、単位時間当たりの通話料が高くなる。すなわち、混雑度が上がるほど通話料が高くなり、そのためにユーザが発信を辞退する可能性が高まることが期待できる。
【0035】
図3(b)は、セル状態と、各セル状態に対応した通話料と、許容連続通話時間との対応関係を表した通話料テーブル122bを示している。この通話料テーブルは、図3(a)の通話料テーブルに対して、さらに、各状態に対して連続的に通話可能な上限の許容連続通話時間T1,T2,T3を定めたものである。通常状態のT1は無制限(無限大)である。許容連続通話時間T2,T3は同じであってもよいし、異なってもよい。異ならせる場合には、例えば、状態I,II,IIIの順に、時間が短くなるように設定する。許容連続通話時間を設ける理由は、混雑時に同一人が連続して長時間無線資源を占有することを防止するためである。
【0036】
以下、本実施の形態における混雑時の通話を制限する動作例を説明する。混雑時の通話の制限には、発信側(発呼側)での制限と、受信側(着呼)側での制限とがありうる。本実施の形態では、基地局単位に定まるセルと、複数のセル単位に定まる位置登録エリアとが一致しない場合を想定している。この場合、あるセルの混雑度は、そのセルが属する位置登録エリアに登録されている端末の個数に基づいて判断するものとする。勿論、混雑度の測定は、セル単位での端末ユーザの混雑度が検出できれば、他の任意の方法を用いてよい。また、セルと位置登録エリアが一致してもよい。
【0037】
図4は、本実施の形態における発信側の動作例を示したシーケンス図である。基地局では、逐次、セル状態の変化を検出する(S11)。具体的には、その基地局のセルが属する位置登録エリアに登録されている端末の個数を当該加入者交換機31のVLR32を参照して確認し、その端末個数を所定の閾値と比較して判断する。セル状態の変化が検出された場合、変化後のセル状態を記憶する(S12)。
【0038】
その後、セル内の端末から通話相手の電話番号を指定して発呼があったとき(S13)、基地局の現在のセル状態を確認する(S14)。セル状態が特定のセル状態、すなわち上記の例では通常でない状態IIまたは状態IIIである場合、当該発呼を行った端末(のユーザ)に対して、通話料金の割増の旨(図3(b)の場合、許容連続通話時間も含む)を通知し、発信を継続する意思があるか否かを確認する(S15)。この通知は、例えば、図5に示すような端末の表示画面に「このエリアは只今混雑中ですので通話料金が割高になりますが、よろしいですか?」のような特定のメッセージを表示させて行うことができる。端末は、このような問いかけのメッセージに対するユーザの意思表示を受け付ける(S16)。発信を継続する意思表示があった場合には(S18,Yes)、現在のセル状態とともに相手端末のダイヤル情報を加入者交換機に転送する(S19)。これにより、相手端末の呼び出しが行われ、相手端末の応答により回線の接続が行われる(S20)。通話が行われた場合、当該端末ユーザの契約内容とともに現在のセル状態、および通話時間に基づいて、当該ユーザへの課金処理が行われる。許容連続通話時間が定められている場合には、基地局又は加入者交換機等により通話時間がその時間に達したときに接続が切断される。
【0039】
なお、ステップS14において、現在のセル状態が通常の状態Iである場合には、直ちにステップS19へ移行する。セル状態が通常の状態Iである場合には、セル状態の加入者交換機への転送は不要である。
【0040】
図6は、本実施の形態における発信側の他の動作例を示したシーケンス図である。
【0041】
基地局はセル状態の変化を検出したとき(S21)、そのセル状態をセル内のすべての端末へ通知する(S22)。通知を受けた端末は、そのセル状態を一時的に記憶しておく(S23)。その後、いずれかの端末においてユーザによる発呼操作があったとき(S24)、その端末は、記憶されているセル状態を確認する(S25)。セル状態が特定のセル状態(状態II,III)であれば(S25,Yes)、ユーザの発信意思を確認する(S26)。このとき図5に示したようなメッセージを表示してユーザの意思を確認することができる。図8で後述するように予めユーザの発信意思が設定されている場合には、その設定内容を確認する。
【0042】
発信意思がないことが確認されれば、端末は発呼を抑止(中止)する(S28)。発信意思があることが確認されれば、基地局に対して発呼を行う(S29)。基地局は、現在のセル状態とともにダイヤル情報を加入者交換機に転送する(S30)。これにより、相手端末の呼び出しが行われ、相手端末の応答により回線の接続が行われる(S31)。
【0043】
なお、基地局は特定のセル状態(状態II,III)を検出したときのみ、端末に通知を行うようにしてもよい。その場合、基地局が特定のセル状態から通常のセル状態に復帰した場合にその旨を端末に通知する。あるいは、端末が特定のセル状態を記憶した時点から所定の時間が経過したときに、記憶済のセル状態を自動的に通常のセル状態に戻す。
【0044】
図7は、本実施の形態における発信側のさらに他の動作例を示したシーケンス図である。
【0045】
基地局が特定のセル状態(上記例では状態IIまたはIII)を検出したとき(S41)、そのセルに属するすべての端末に対して、予め、ユーザの発信意思を問い合わせる(S42)。このとき、図8に示すような表示画面に問い合わせのメッセージを表示し、ユーザに選択肢を提示する。この例では、「発信しない」「中混雑まで発信:5割増」「高混雑まで発信:2倍増」の3つの選択肢を示している。ユーザからの回答を受けて(S43)、端末別ユーザ発信意思記憶部123に当該ユーザの発信意思を端末毎に記憶しておく(S44)。その後、いずれかの端末から発呼があった場合(S45)、基地局は、その発呼を行った端末のユーザの発信意思を記憶内容から確認する(S46)。発信を継続する意思表示があった場合には(S47,Yes)、現在のセル状態とともに相手端末のダイヤル情報を加入者交換機に転送する(S48)。これにより、相手端末の呼び出しが行われ、相手端末の応答により回線の接続が行われる(S49)。また、ユーザに対して通話料が割増される旨を通知するようにしてもよい。通話が行われた場合、当該端末ユーザの契約内容とともに現在のセル状態、および通話時間に基づいて、当該ユーザへの課金処理が行われる。発信意思無しの場合、ユーザが事態を認識できるように、ユーザの意思表示に従って発信が抑止された旨の通知を基地局から当該端末へ送信するようにしてもよい。
【0046】
さらに図示しないが、特定のセル状態にある基地局のエリア内に端末が外部から進入した場合にも、通知(図6のS22)や、発信意思の問い合わせ(図7のS42)を行うようにしてもよい。
【0047】
次に、本実施の形態における受信側の動作例について説明する。混雑したセル内にある端末が電話を掛ける場合(発呼)だけでなく、当該セル内の端末に対して電話が掛かって来た場合(着呼)もトラフィック増の原因となる。
【0048】
図9は、受信側に関してユーザが前もって行う受信設定の画面例を示している。この例では、「混雑したエリアでの着信を辞退します。」というメッセージとともに、OFFとONの選択肢を表示してユーザに提示している。ユーザがONを選択すれば、混雑したエリアでの着信が抑止される。OFFを選択すれば、従来どおりの着信が行われる。抑止の処理を基地局側で行う場合には、ユーザの設定情報は基地局側に送信され、端末別ユーザ着信意思記憶部124に端末毎に記憶される。
【0049】
なお、着信辞退の設定を行っていて、他の端末から実際に着信要求がありながらその着信が抑止された場合、着信を辞退したユーザに対して通信事業者側から何らかの特典を付与するようにしてもよい。特典とは、例えば、所定の額や率のキャッシュバック(通話料金低減)、無料通話時間の延長、等である。これにより、ユーザに着信辞退のインセンティブを与えることができる。特典の付与は、実際の着信の辞退の度に付与する場合と、着信辞退の設定を行ったことに対して付与する場合のいずれもありうる。
【0050】
図10は、受信側の動作に関する基地局での動作例を示すフローチャートである。
【0051】
基地局は、その加入者交換機からの要求に応じて、着呼の対象の端末(端末A)が当該位置登録エリアに登録されていることが判明したとき、当該基地局は自己のセル内に存在するすべての端末に対して制御チャネルを用いて一斉呼び出し(ページング)を行う。これに対して該当する端末からの応答があれば端末がどの基地局のセル内に存在するかが分かる。基地局は、そのセル内に存在する可能性のある端末Aに対して着呼の要求があったとき(S61)、現在の状態が特定のセル状態(上記例では状態IIまたはIII)でなければ(S62,No)、通常どおり、端末の一斉呼び出しのステップS67へ移行する。特定のセル状態であれば(S62,Yes)、図9に示したような画面で予め設定されている情報を確認する。端末Aのユーザの着信意思の設定を確認する(S63)。着信を辞退する設定が行われている場合(S64,Yes)、その発呼者の端末にその旨(相手の電話番号を含む)、例えば、現在着信できない状況にあることを通知する(S65)。この通知は、電話番号を利用したショートメッセージなどのデータ通信で行うことができる。発呼者のメールアドレスが確認できれば電子メールであってもよい。着信を辞退した端末には、この端末が通常状態であるセルに移動したとき、または当該セルのセル状況が通常状態に変化した場合に、基地局または所定のサーバ(図示せず)から、その着呼状況(発呼者の電話番号および発呼時刻)が通知される(S66)。固定電話機などに対しては、混雑状態が解消した後に、音声通知によって通知を行ってもよい。データ通信による通知も、リアルタイムでなく事後的に行ってもよい。
【0052】
着信を辞退する設定が行われていない場合(S64,No)、通常通り、端末の一斉呼び出しを行って(S67)、端末Aからの応答に応じて回線を接続する(S68)。
【0053】
図11は、着信の辞退を端末側で行う端末での動作例を示すフローチャートである。
【0054】
端末は、基地局から、上述の一斉呼び出し(ページング)を受信する(S71)。このとき、呼び出されているのが自端末でなければ(S72,No)、応答せずに(S73)、この処理を終了する。この段階では、端末の着信音は発生しない。
【0055】
自端末が呼び出されていることが確認されたら、現在端末が位置するセルの状態が特定のセル状態(上記例では状態IIまたはIII)であるか否かを確認する(S74)。特定のセル状態でなければ、ステップS77へ移行する。
【0056】
特定のセル状態であれば、図9に示したような画面で既に設定されているユーザ着信意思の設定の内容を確認する(S75)。着信を辞退する設定が行われていなければ(S76,No)、通常どおり、基地局に対して自己の存在を応答し(S77)、回線の接続を受ける(S78)。着信を辞退する設定が行われている場合には、基地局に対する応答を抑止する(S79)。また、上記ステップS65と同様、発呼者の端末にその旨を通知する(S80)。
【0057】
なお、ステップS79において、単に応答を抑止するのではなく、応答を抑止した旨を基地局側に返送するようにしてもよい。基地局側ではこの情報に基づいて、端末ユーザが着信を辞退したことが分かるので、着信毎に上述したような特典を当該端末ユーザに与えることが可能となる。
【0058】
図12は、図11の処理の変形例をフローチャートである。図11の処理ステップと同じ処理ステップには同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。図12の処理においては、図11のステップS76のYes分岐に対してステップS81を追加したものである。ステップS81は、着信を辞退する設定が行われている場合にも、直ちに応答を抑止するのではなく、所定の条件では応答を行うようにするものである。所定の条件とは、この例では、発信者が所定の者、例えば、端末に内蔵の電話帳においてこのような場合にも着信を受け付けると予め指定された相手である場合、または、発信者が通話頻度の上位の所定数名の一人である場合、等である。
【0059】
以上の説明は、携帯電話端末の通話に関する発信および着信についてのものであった。これに対して、メール等のデータ通信はパケット通信であるため、その許容量は音声通話よりは大きいと考えられる。しかし、大量のデータのアップロードやダウンロードが同じ地域の同じ時間帯に発生すると、同様の問題は発生しうる。特に、データ通信のQoSが保証されているような特定のエリアでは、トラフィックが逼迫することが想定される。このような特定のエリアでのデータ通信(特に高速データ通信)を辞退する旨の設定をユーザが予め行うことができる。あるいは、利用可能なデータレートと料金の一覧が表示され、使用者が選択できるようにする。この場合、料金はデータレートが高いほど高く設定する。ハイデータレートのデータ通信を辞退する設定を行った当該端末ユーザに対して通信事業者側から何らかの特典を付与するようにしてもよい。
【0060】
図13は、データのアップロードやダウンロードなどのデータ通信に関する実施の形態における端末の処理例を示したフローチャートである。
【0061】
当該データ通信の指示操作があったとき、その場所がQoS保証されたエリア内でなければ(S91,No)、通常のデータ通信を行う(S94)。その場所がQoS保証されたエリア内であれば(S91,Yes)、端末内のデータ通信の設定を確認する(S92)。高速でのデータ通信を辞退する旨の設定がなければ(S93,No)、通常の保証されたQoSでのデータ通信を行う(S94)。高速でのデータ通信を辞退する旨の設定があれば(S93,Yes)、ハイデータレートのアップロード/ダウンロードを抑止する(S95)。これにより、ローデータレートのアップロード/ダウンロードが実行される。ハイデータレートのアップロード/ダウンロードが抑止された旨は、メッセージ表示等により当該端末ユーザに通知する(S96)。
【0062】
なお、図13の処理において、QoS保証されるエリア内であるだけでなく、上述した特定のセル状態である場合を条件として、ステップS92へ進むようにしてもよい。
【0063】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【0064】
例えば、混雑時に、着信を辞退しなかった端末ユーザに対して、予め指定された時間を超えると課金が発生するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…基地局、12…セル、20…携帯電話端末、30…移動通信制御局(MCC)、31…加入者交換機、40…中継交換機、50…関門交換機、60…ゲートウェイ、70…インターネット、80…携帯電話網、90…固定電話網、100…無線通信制御装置、110…制御部、120…記憶部、130…通信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ネットワークを介してデータ通信を行う携帯電話端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の無線通信において、限りある無線資源(リソース)をどのように効率的に利用するかは、通信技術の発達に伴って通信効率が向上するとしても、常に問題となる。この問題に対する改善案の一例として、トラフィック変動にあわせて、リソースを売買するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、無線通信網において、ホームゾーン内通話とホームゾーン外通話とで通話料に差をつけられるようにした移動通信システムも提案されている(特許文献2)。この公報には、料金を固定電話並みに安くできるホームゾーンを実現することができ、無線通信ネットワークの負荷が軽くできるとの効果も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−217964号公報
【特許文献2】特開2000−174932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、急な雨が降った時の駅前や、初詣時の神社周辺等、特定の時間および場所において、通話を行いたい端末ユーザが多数集中する場合がある。このような状況では、通信容量を上回る発呼および着信が発生することが予想される。このような場合、音声通話ができなくなる、または不良となることがある。
【0006】
しかしながら、特許文献1のリソースの売買では、特定の場所や時間でのトラフィック変動に対処することができない。
【0007】
特許文献2に記載の発明によるネットワーク負荷の軽減効果は限定的といわざるを得ない。つまり、有線による代替ネットワークの数だけしか軽減できず、事業者の意図したエリアの負荷を動的に軽減することはできない。
【0008】
また、大量のデータのアップロードやダウンロードが同じ地域の同じ時間帯に発生すると、同様の問題が発生しうる。特に、データ通信のQoSが保証されているような特定のエリアでは、トラフィックが逼迫することが想定される。
【0009】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、データ通信のQoSが保証されるエリアにおいて、ユーザの意思に応じて無線通信ネットワークの負荷を軽減することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、データ通信を行う無線通信端末として、QoS保証されるエリア内での高速データ通信を辞退するか否かを設定する手段と、現在の位置がQoS保証されるエリア内である場合に、前記設定された内容を確認し、辞退する設定がなされている場合、ハイデータレートのアップロードおよびダウンロードを抑止する手段とを備えた無線通信端末を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、データ通信のQoSが保証されるエリアにおいて、トラフィックを低減することが可能となる。すなわち、無線通信ネットワークの負荷を軽減して、限りある無線資源を有効に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による実施の形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明による文書作成装置として機能する携帯電話端末の概略のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるセル状態別通話料テーブルの構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における発信側の動作例を示したシーケンス図である。
【図5】本発明の実施の形態における端末の表示画面の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における発信側の他の動作例を示したシーケンス図である。
【図7】本発明の実施の形態における発信側のさらに他の動作例を示したシーケンス図である。
【図8】本発明の実施の形態における受信設定の画面例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における受信設定の画面例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における受信側の動作に関する基地局での動作例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態における着信の辞退を端末側で行う端末での動作例を示すフローチャートである。
【図12】図11の処理の変形例をフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態における、データのアップロードやダウンロードなどのデータ通信に関する実施の形態における端末の処理例を示したフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態における無線通信制御装置の概略機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの概略構成を示している。ここに、広義の無線通信システムとしては図1に示した構成全体を指すが、特許請求の範囲における無線通信システムとしては図1に示した一つの構成要素または複数の構成要素の組み合わせでありうる。本発明の無線通信端末としては、少なくとも通話機能を有する携帯電話端末を例に説明する。
【0015】
複数の携帯電話端末20の各々は、通常、最寄りの基地局(BS)12と無線通信を行う。各基地局(BS)10は携帯電話端末20と無線通信可能な範囲としてのセル12を構成している。基地局10は、加入者交換機31に接続される。加入者交換機31は、端末のユーザが発信した通話相手の端末の電話番号に応じて、その相手がどこにいるかを見つけ出して、通話のための通信経路を確立する。加入者交換機31は、携帯電話端末の電話番号と端末ID(TMSI:Temporary Mobile Subscriber Identity)の対応データを含む、ビジターロケーションレジスタ(VLR)32という自分のエリアにいる携帯電話端末の位置登録データを保持しているデータベースを有する。加入者交換機31とVLR32とは移動通信制御局(MCC)30に含まれている。移動通信制御局30は、図示しない無線ネットワーク制御装置(RNC)も含んでいる。複数の加入者交換機31は中継交換機40を介して接続されている。中継交換機40には、ホームレジストレーションレジスタ(HLR)41と呼ばれるデータベースが接続されている。ホームレジストレーションレジスタ(HLR)41は、すべての携帯電話端末の位置登録データを保持しているデータベースである。
【0016】
通常、複数のセル12をまとめた位置登録エリアを単位として、各端末が現在どの位置に存在するかをホームロケーションレジスタ(HLR)41に登録している。VLR32内の位置登録データは、HLR41内の位置登録データの一部に相当する。
【0017】
中継交換機40は、関門交換機50を介して、他事業者の携帯電話網80や固定電話網90に接続される。さらに、関門交換機50は、ゲートウェイ60を介してインターネット70にも接続されている。
【0018】
ある携帯電話端末Aのユーザが他の携帯電話端末Bの電話番号に対して電話を掛けた(発呼した)とき、端末Aの最寄りの基地局10がその加入者交換機31との間で電波による通信路を設定する。ついで、加入者交換機31が相手の電話番号に基づいて、端末Bが現在どこにいるかをHLR41を参照して確認する。なお、端末Bが同じ加入者交換機31に接続された基地局10の位置登録エリアに属している場合には、当該VLR32によりその旨が判明する。その後、相手端末の加入者交換機31は、基地局を介して、自分の管理する位置登録エリアに属するすべての端末に対して一斉呼び出し(ページング)を行い、相手端末である端末Bがその位置登録エリア内に存在するかどうかを確認する。端末Bから応答があったとき、端末Bに対して回線(チャネル)をつなぐための呼設定を要求し、端末Bと無線ネットワーク制御装置との間を接続する。これにより、同じ携帯電話事業社内の端末同士の間で通話を行うことが可能となる。携帯電話端末20は、中継交換機40および関門交換機50を介して、他事業者の携帯電話網80に属する携帯電話端末との間で通話のための通信を行うこともできる。また、同様に、中継交換機40および関門交換機50を介して、固定電話網90に属する固定電話端末との間で通話のための通信を行うこともできる。
【0019】
図2は、携帯電話端末20の概略のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0020】
携帯電話端末20は、バス215で相互に接続された、制御部201、通信部203、表示部204、操作部205、記憶部206、音声処理部210、この音声処理部210に接続されたスピーカ211、マイク212を備えている。
【0021】
制御部201は、CPU等のプロセッサを含み、携帯電話端末20の各部を制御する。
【0022】
通信部203は、RF部、変復調回路等を含み、アンテナ202を介して基地局との間で、通話およびデータ通信等のための無線通信を行う。
【0023】
表示部204は、LCD等のディスプレイを含み、表示画面上に文字や画像等の情報を表示する。
【0024】
操作部205は、制御キー、テンキー等の各種のキーを有し、ユーザによる指示やデータの入力操作を受け付ける。
【0025】
記憶部206は、ROM、RAM等を含み、CPUが実行するOSや各種アプリケーション等のプログラムやデータ(電話帳データを含む)を記憶する。ROMには、フラッシュメモリのような再書き込み可能な不揮発性メモリを含みうる。
【0026】
音声処理部210は、音声のエンコーダ、デコーダ、DA変換器、AD変換器等を含み、スピーカ211に対する音声出力およびマイクからの音声入力を行う。
【0027】
その他、図示しないが、携帯電話端末20は、電源部、発光部、バイブレータ、等、通常の携帯電話端末が備えている機能部を備えている。
【0028】
図14に、本実施の形態における無線通信制御装置100の概略機能構成を示すブロック図を示す。この無線通信制御装置100は、本発明の主要な機能を司る装置であり、本実施の形態では基地局10に設けることを想定している。但し、これに限らず、MCC30に設けても良く、または両方に分散して設けてもよい。
【0029】
制御部110は、基地局対応のセルの混雑度(または混雑状態)を表すセル状態を検出するセル状態検出部111、当該セルに属する端末の発呼を受け付け、制御する発呼制御部112、および当該セルに属する端末の着呼を制御する着呼制御部113を有する。制御部110は、通信部130を介して外部の装置と必要な通信を行う。記憶部120は、制御部110と接続され、セル状態記憶部121、セル状態別通話料テーブル122、端末別ユーザ発信意思記憶部123、端末別ユーザ着信意思記憶部124を有している。セル状態記憶部121は、当該セルの検出された現在のセル状態を記憶する部位である。セル状態別通話料テーブル122は、セル状態毎の通話料を定めたデータテーブルである。端末別ユーザ発信意思記憶部123は、端末別に、予め表明された混雑時のユーザの発信意思を記憶する部位である。端末別ユーザ着信意思記憶部124は、端末別に、予め表明された混雑時のユーザの着信意思を記憶する部位である。
【0030】
なお、図14に示した機能部のすべてが本発明に必須という訳ではなく、後述する本実施の形態の態様によって利用される機能が異なる。
【0031】
図3に、本実施の形態におけるセル状態別通話料テーブル122の構成例を示す。特定の混雑状態において端末が発呼を抑止しなかったとき、このセル状態別通信料テーブル122に基づいて、通話料金を割増にするよう課金設定が変更される。このような通話料テーブル122の配置場所は特に限定するものではなく、必要時に参照できればどこに配置してもよい。
【0032】
図3(a)は、セル状態と、各セル状態に対応した通話料F1,F2,F3との対応関係を表した通話料テーブル122aを示している。
【0033】
ここにセル状態とは、上述したようにセル毎の端末の混雑度を示す情報であり、ここでは3段階の状態I,II,IIIを示している。状態Iは通常の第1の状態を示し、状態IIは通常より混雑の度合いの高い第2の状態、状態IIIは状態IIよりさらに混雑の度合いの高い第3の状態を示している。いずれの状態も、本実施の形態では、セル内の携帯電話端末の個数を所定の閾値と比較することにより判定する。なお、状態の個数は3に限るものではなく、2でも、4以上でもよい。
【0034】
通話料F1,F2,F3は、単位時間当たりの時間(分や秒)であってもよいし、割増の度合い(%や倍率等)であってもよい。また、料金クラスの識別情報であってもよい。いずれにせよ、状態I,II,IIIの順に、単位時間当たりの通話料が高くなる。すなわち、混雑度が上がるほど通話料が高くなり、そのためにユーザが発信を辞退する可能性が高まることが期待できる。
【0035】
図3(b)は、セル状態と、各セル状態に対応した通話料と、許容連続通話時間との対応関係を表した通話料テーブル122bを示している。この通話料テーブルは、図3(a)の通話料テーブルに対して、さらに、各状態に対して連続的に通話可能な上限の許容連続通話時間T1,T2,T3を定めたものである。通常状態のT1は無制限(無限大)である。許容連続通話時間T2,T3は同じであってもよいし、異なってもよい。異ならせる場合には、例えば、状態I,II,IIIの順に、時間が短くなるように設定する。許容連続通話時間を設ける理由は、混雑時に同一人が連続して長時間無線資源を占有することを防止するためである。
【0036】
以下、本実施の形態における混雑時の通話を制限する動作例を説明する。混雑時の通話の制限には、発信側(発呼側)での制限と、受信側(着呼)側での制限とがありうる。本実施の形態では、基地局単位に定まるセルと、複数のセル単位に定まる位置登録エリアとが一致しない場合を想定している。この場合、あるセルの混雑度は、そのセルが属する位置登録エリアに登録されている端末の個数に基づいて判断するものとする。勿論、混雑度の測定は、セル単位での端末ユーザの混雑度が検出できれば、他の任意の方法を用いてよい。また、セルと位置登録エリアが一致してもよい。
【0037】
図4は、本実施の形態における発信側の動作例を示したシーケンス図である。基地局では、逐次、セル状態の変化を検出する(S11)。具体的には、その基地局のセルが属する位置登録エリアに登録されている端末の個数を当該加入者交換機31のVLR32を参照して確認し、その端末個数を所定の閾値と比較して判断する。セル状態の変化が検出された場合、変化後のセル状態を記憶する(S12)。
【0038】
その後、セル内の端末から通話相手の電話番号を指定して発呼があったとき(S13)、基地局の現在のセル状態を確認する(S14)。セル状態が特定のセル状態、すなわち上記の例では通常でない状態IIまたは状態IIIである場合、当該発呼を行った端末(のユーザ)に対して、通話料金の割増の旨(図3(b)の場合、許容連続通話時間も含む)を通知し、発信を継続する意思があるか否かを確認する(S15)。この通知は、例えば、図5に示すような端末の表示画面に「このエリアは只今混雑中ですので通話料金が割高になりますが、よろしいですか?」のような特定のメッセージを表示させて行うことができる。端末は、このような問いかけのメッセージに対するユーザの意思表示を受け付ける(S16)。発信を継続する意思表示があった場合には(S18,Yes)、現在のセル状態とともに相手端末のダイヤル情報を加入者交換機に転送する(S19)。これにより、相手端末の呼び出しが行われ、相手端末の応答により回線の接続が行われる(S20)。通話が行われた場合、当該端末ユーザの契約内容とともに現在のセル状態、および通話時間に基づいて、当該ユーザへの課金処理が行われる。許容連続通話時間が定められている場合には、基地局又は加入者交換機等により通話時間がその時間に達したときに接続が切断される。
【0039】
なお、ステップS14において、現在のセル状態が通常の状態Iである場合には、直ちにステップS19へ移行する。セル状態が通常の状態Iである場合には、セル状態の加入者交換機への転送は不要である。
【0040】
図6は、本実施の形態における発信側の他の動作例を示したシーケンス図である。
【0041】
基地局はセル状態の変化を検出したとき(S21)、そのセル状態をセル内のすべての端末へ通知する(S22)。通知を受けた端末は、そのセル状態を一時的に記憶しておく(S23)。その後、いずれかの端末においてユーザによる発呼操作があったとき(S24)、その端末は、記憶されているセル状態を確認する(S25)。セル状態が特定のセル状態(状態II,III)であれば(S25,Yes)、ユーザの発信意思を確認する(S26)。このとき図5に示したようなメッセージを表示してユーザの意思を確認することができる。図8で後述するように予めユーザの発信意思が設定されている場合には、その設定内容を確認する。
【0042】
発信意思がないことが確認されれば、端末は発呼を抑止(中止)する(S28)。発信意思があることが確認されれば、基地局に対して発呼を行う(S29)。基地局は、現在のセル状態とともにダイヤル情報を加入者交換機に転送する(S30)。これにより、相手端末の呼び出しが行われ、相手端末の応答により回線の接続が行われる(S31)。
【0043】
なお、基地局は特定のセル状態(状態II,III)を検出したときのみ、端末に通知を行うようにしてもよい。その場合、基地局が特定のセル状態から通常のセル状態に復帰した場合にその旨を端末に通知する。あるいは、端末が特定のセル状態を記憶した時点から所定の時間が経過したときに、記憶済のセル状態を自動的に通常のセル状態に戻す。
【0044】
図7は、本実施の形態における発信側のさらに他の動作例を示したシーケンス図である。
【0045】
基地局が特定のセル状態(上記例では状態IIまたはIII)を検出したとき(S41)、そのセルに属するすべての端末に対して、予め、ユーザの発信意思を問い合わせる(S42)。このとき、図8に示すような表示画面に問い合わせのメッセージを表示し、ユーザに選択肢を提示する。この例では、「発信しない」「中混雑まで発信:5割増」「高混雑まで発信:2倍増」の3つの選択肢を示している。ユーザからの回答を受けて(S43)、端末別ユーザ発信意思記憶部123に当該ユーザの発信意思を端末毎に記憶しておく(S44)。その後、いずれかの端末から発呼があった場合(S45)、基地局は、その発呼を行った端末のユーザの発信意思を記憶内容から確認する(S46)。発信を継続する意思表示があった場合には(S47,Yes)、現在のセル状態とともに相手端末のダイヤル情報を加入者交換機に転送する(S48)。これにより、相手端末の呼び出しが行われ、相手端末の応答により回線の接続が行われる(S49)。また、ユーザに対して通話料が割増される旨を通知するようにしてもよい。通話が行われた場合、当該端末ユーザの契約内容とともに現在のセル状態、および通話時間に基づいて、当該ユーザへの課金処理が行われる。発信意思無しの場合、ユーザが事態を認識できるように、ユーザの意思表示に従って発信が抑止された旨の通知を基地局から当該端末へ送信するようにしてもよい。
【0046】
さらに図示しないが、特定のセル状態にある基地局のエリア内に端末が外部から進入した場合にも、通知(図6のS22)や、発信意思の問い合わせ(図7のS42)を行うようにしてもよい。
【0047】
次に、本実施の形態における受信側の動作例について説明する。混雑したセル内にある端末が電話を掛ける場合(発呼)だけでなく、当該セル内の端末に対して電話が掛かって来た場合(着呼)もトラフィック増の原因となる。
【0048】
図9は、受信側に関してユーザが前もって行う受信設定の画面例を示している。この例では、「混雑したエリアでの着信を辞退します。」というメッセージとともに、OFFとONの選択肢を表示してユーザに提示している。ユーザがONを選択すれば、混雑したエリアでの着信が抑止される。OFFを選択すれば、従来どおりの着信が行われる。抑止の処理を基地局側で行う場合には、ユーザの設定情報は基地局側に送信され、端末別ユーザ着信意思記憶部124に端末毎に記憶される。
【0049】
なお、着信辞退の設定を行っていて、他の端末から実際に着信要求がありながらその着信が抑止された場合、着信を辞退したユーザに対して通信事業者側から何らかの特典を付与するようにしてもよい。特典とは、例えば、所定の額や率のキャッシュバック(通話料金低減)、無料通話時間の延長、等である。これにより、ユーザに着信辞退のインセンティブを与えることができる。特典の付与は、実際の着信の辞退の度に付与する場合と、着信辞退の設定を行ったことに対して付与する場合のいずれもありうる。
【0050】
図10は、受信側の動作に関する基地局での動作例を示すフローチャートである。
【0051】
基地局は、その加入者交換機からの要求に応じて、着呼の対象の端末(端末A)が当該位置登録エリアに登録されていることが判明したとき、当該基地局は自己のセル内に存在するすべての端末に対して制御チャネルを用いて一斉呼び出し(ページング)を行う。これに対して該当する端末からの応答があれば端末がどの基地局のセル内に存在するかが分かる。基地局は、そのセル内に存在する可能性のある端末Aに対して着呼の要求があったとき(S61)、現在の状態が特定のセル状態(上記例では状態IIまたはIII)でなければ(S62,No)、通常どおり、端末の一斉呼び出しのステップS67へ移行する。特定のセル状態であれば(S62,Yes)、図9に示したような画面で予め設定されている情報を確認する。端末Aのユーザの着信意思の設定を確認する(S63)。着信を辞退する設定が行われている場合(S64,Yes)、その発呼者の端末にその旨(相手の電話番号を含む)、例えば、現在着信できない状況にあることを通知する(S65)。この通知は、電話番号を利用したショートメッセージなどのデータ通信で行うことができる。発呼者のメールアドレスが確認できれば電子メールであってもよい。着信を辞退した端末には、この端末が通常状態であるセルに移動したとき、または当該セルのセル状況が通常状態に変化した場合に、基地局または所定のサーバ(図示せず)から、その着呼状況(発呼者の電話番号および発呼時刻)が通知される(S66)。固定電話機などに対しては、混雑状態が解消した後に、音声通知によって通知を行ってもよい。データ通信による通知も、リアルタイムでなく事後的に行ってもよい。
【0052】
着信を辞退する設定が行われていない場合(S64,No)、通常通り、端末の一斉呼び出しを行って(S67)、端末Aからの応答に応じて回線を接続する(S68)。
【0053】
図11は、着信の辞退を端末側で行う端末での動作例を示すフローチャートである。
【0054】
端末は、基地局から、上述の一斉呼び出し(ページング)を受信する(S71)。このとき、呼び出されているのが自端末でなければ(S72,No)、応答せずに(S73)、この処理を終了する。この段階では、端末の着信音は発生しない。
【0055】
自端末が呼び出されていることが確認されたら、現在端末が位置するセルの状態が特定のセル状態(上記例では状態IIまたはIII)であるか否かを確認する(S74)。特定のセル状態でなければ、ステップS77へ移行する。
【0056】
特定のセル状態であれば、図9に示したような画面で既に設定されているユーザ着信意思の設定の内容を確認する(S75)。着信を辞退する設定が行われていなければ(S76,No)、通常どおり、基地局に対して自己の存在を応答し(S77)、回線の接続を受ける(S78)。着信を辞退する設定が行われている場合には、基地局に対する応答を抑止する(S79)。また、上記ステップS65と同様、発呼者の端末にその旨を通知する(S80)。
【0057】
なお、ステップS79において、単に応答を抑止するのではなく、応答を抑止した旨を基地局側に返送するようにしてもよい。基地局側ではこの情報に基づいて、端末ユーザが着信を辞退したことが分かるので、着信毎に上述したような特典を当該端末ユーザに与えることが可能となる。
【0058】
図12は、図11の処理の変形例をフローチャートである。図11の処理ステップと同じ処理ステップには同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。図12の処理においては、図11のステップS76のYes分岐に対してステップS81を追加したものである。ステップS81は、着信を辞退する設定が行われている場合にも、直ちに応答を抑止するのではなく、所定の条件では応答を行うようにするものである。所定の条件とは、この例では、発信者が所定の者、例えば、端末に内蔵の電話帳においてこのような場合にも着信を受け付けると予め指定された相手である場合、または、発信者が通話頻度の上位の所定数名の一人である場合、等である。
【0059】
以上の説明は、携帯電話端末の通話に関する発信および着信についてのものであった。これに対して、メール等のデータ通信はパケット通信であるため、その許容量は音声通話よりは大きいと考えられる。しかし、大量のデータのアップロードやダウンロードが同じ地域の同じ時間帯に発生すると、同様の問題は発生しうる。特に、データ通信のQoSが保証されているような特定のエリアでは、トラフィックが逼迫することが想定される。このような特定のエリアでのデータ通信(特に高速データ通信)を辞退する旨の設定をユーザが予め行うことができる。あるいは、利用可能なデータレートと料金の一覧が表示され、使用者が選択できるようにする。この場合、料金はデータレートが高いほど高く設定する。ハイデータレートのデータ通信を辞退する設定を行った当該端末ユーザに対して通信事業者側から何らかの特典を付与するようにしてもよい。
【0060】
図13は、データのアップロードやダウンロードなどのデータ通信に関する実施の形態における端末の処理例を示したフローチャートである。
【0061】
当該データ通信の指示操作があったとき、その場所がQoS保証されたエリア内でなければ(S91,No)、通常のデータ通信を行う(S94)。その場所がQoS保証されたエリア内であれば(S91,Yes)、端末内のデータ通信の設定を確認する(S92)。高速でのデータ通信を辞退する旨の設定がなければ(S93,No)、通常の保証されたQoSでのデータ通信を行う(S94)。高速でのデータ通信を辞退する旨の設定があれば(S93,Yes)、ハイデータレートのアップロード/ダウンロードを抑止する(S95)。これにより、ローデータレートのアップロード/ダウンロードが実行される。ハイデータレートのアップロード/ダウンロードが抑止された旨は、メッセージ表示等により当該端末ユーザに通知する(S96)。
【0062】
なお、図13の処理において、QoS保証されるエリア内であるだけでなく、上述した特定のセル状態である場合を条件として、ステップS92へ進むようにしてもよい。
【0063】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【0064】
例えば、混雑時に、着信を辞退しなかった端末ユーザに対して、予め指定された時間を超えると課金が発生するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…基地局、12…セル、20…携帯電話端末、30…移動通信制御局(MCC)、31…加入者交換機、40…中継交換機、50…関門交換機、60…ゲートウェイ、70…インターネット、80…携帯電話網、90…固定電話網、100…無線通信制御装置、110…制御部、120…記憶部、130…通信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ通信を行う無線通信端末であって、
QoS保証されるエリア内での高速データ通信を辞退するか否かを設定する手段と、
現在の位置がQoS保証されるエリア内である場合に、前記設定された内容を確認し、辞退する設定がなされている場合、ハイデータレートのアップロードおよびダウンロードを抑止する手段と
を備えた無線通信端末。
【請求項2】
データ通信の指示操作があった際、前記設定された内容に基づいて前記ハイデータレートのアップロードおよびダウンロードが抑止された場合に、その旨を当該端末ユーザに通知する手段を備えた請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項1】
データ通信を行う無線通信端末であって、
QoS保証されるエリア内での高速データ通信を辞退するか否かを設定する手段と、
現在の位置がQoS保証されるエリア内である場合に、前記設定された内容を確認し、辞退する設定がなされている場合、ハイデータレートのアップロードおよびダウンロードを抑止する手段と
を備えた無線通信端末。
【請求項2】
データ通信の指示操作があった際、前記設定された内容に基づいて前記ハイデータレートのアップロードおよびダウンロードが抑止された場合に、その旨を当該端末ユーザに通知する手段を備えた請求項1に記載の無線通信端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−66228(P2013−66228A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−265964(P2012−265964)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2008−276511(P2008−276511)の分割
【原出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(502087507)ソニーモバイルコミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2008−276511(P2008−276511)の分割
【原出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(502087507)ソニーモバイルコミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】
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