無線通信装置、及び電子機器
【課題】放射電力を回収して有効に活用することが可能な無線通信装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】無線通信装置100は、無線でデータを送信する無線通信アンテナ128と、上記無線通信アンテナ128がデータを送信するために放射する放射電力のうち、上記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナ104と、上記電力回収アンテナ104により回収された電力を直流電力に変換する整流回路108と、を有する。
【解決手段】無線通信装置100は、無線でデータを送信する無線通信アンテナ128と、上記無線通信アンテナ128がデータを送信するために放射する放射電力のうち、上記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナ104と、上記電力回収アンテナ104により回収された電力を直流電力に変換する整流回路108と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
私たちの身の回りで用いられる様々な電子機器は、動作するときに機器外に放射される電力が発生している。例えば、多くの電子機器について、機器動作時に電力の漏洩が発生している。この漏洩電力は、各国で許容される値が規定されている場合があるが、依然規定内の電力は漏洩している可能性があった。
【0003】
また、意図的に放射されている電力も存在する。例えば、意図的に放射されている電力の例としては、無線通信装置において送信アンテナがデータの送信を行うときに放射する放射電力が挙げられる。一般的に、無線送信用のアンテナは、通信相手となる装置がどの位置にいたとしても相手装置と通信することができるように、全ての方向に電力を放射している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−21807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来電子機器から放射される電力は、利用されることなく無駄に捨て去られていた。特に、無線送信用のアンテナから放射される電力は、全ての方向に電力を放射しているが、通信相手装置の方向以外に放射された電力は無駄となっているという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、放射電力を回収して有効に活用することが可能な、新規かつ改良された無線通信装置、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、無線でデータを送信する無線通信アンテナと、上記無線通信アンテナがデータを送信するために放射する放射電力のうち、上記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナと、上記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、を有する、無線通信装置が提供される。
【0008】
また、上記無線通信アンテナは、受信用の無線通信アンテナと、送受信用の無線通信アンテナと、を含み、上記送受信用の無線通信アンテナが送信動作時に、上記受信用の無線通信アンテナが上記電力回収アンテナとして用いられるように制御する制御部をさらに有してもよい。
【0009】
また、上記無線通信アンテナにより送信又は受信される信号を処理する通信処理部と、上記受信用の無線通信アンテナが上記通信処理部と上記整流回路とのうちいずれかと接続されるように切替えるスイッチと、をさらに有し、上記制御部は、上記スイッチを上記受信用の無線通信アンテナと上記整流回路とが接続されるように上記スイッチを制御することによって、上記受信用の無線通信アンテナが上記電力回収アンテナとして用いられるように制御してもよい。
【0010】
また、上記電力回収アンテナは、上記無線通信アンテナの用いる複数の送信周波数に対応して、複数の電力回収アンテナがそれぞれ異なる周波数の電力を回収してもよい。
【0011】
また、上記整流回路から出力される電力により発光する発光部をさらに有し、上記無線通信アンテナが送信動作中であることを示してもよい。
【0012】
また、上記整流回路から出力される電力を充電する薄膜リチウム二次電池をさらに有してもよい。
【0013】
また、上記電力回収アンテナは、上記無線通信装置の表面に塗布されたカーボンナノチューブにより形成されるアンテナであってもよい。
【0014】
また、上記電力回収アンテナは、メタマテリアルにより形成される小型アンテナであってもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、無線通信装置の有する無線通信アンテナがデータを送信するために放射する放射電力のうち、上記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナと、上記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、を有する、電子機器が提供される。
【0016】
また、上記電子機器は、上記無線通信装置と共に用いられる機器であってよい。
【0017】
また、上記電子機器は、上記無線通信装置の拡張機器としてのクレードルであり、上記整流回路から出力される電力は、上記無線通信装置の駆動電力の一部として用いられてよい。
【0018】
また、上記電子機器は、上記無線通信装置と無線で接続される入力装置であり、上記整流回路から出力される電力は、上記入力装置の駆動電力の一部として用いられてよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電子機器であり、上記電子機器が動作するときに外部に漏洩する電力を回収する電力回収アンテナと、上記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、を有する、電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、放射電力を回収して有効に活用することが可能な、新規かつ改良された無線通信装置、及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係る無線通信装置の概要を示す説明図である。
【図2】同実施形態にかかる無線通信装置の機能を示すブロック図である。
【図3】カーボンナノチューブによる電力回収アンテナを用いる無線通信装置の構造を説明するための説明図である。
【図4】電力回収アンテナの配置の一例を示す説明図である。
【図5】同実施形態の変形例にかかる無線通信装置の機能を示すブロック図である。
【図6】回収電力のシミュレーションにおけるアンテナ配置を説明するための平面図である。
【図7】図6の平面図の部分拡大図である。
【図8】図6の平面図の側面図である。
【図9】無線通信アンテナと第1の電力回収アンテナの間の空間損失のシミュレーション値を示すグラフである。
【図10】無線通信アンテナと第2の電力回収アンテナの間の空間損失のシミュレーション値を示すグラフである。
【図11】第2の実施形態に係る無線通信装置の機能を示すブロック図である。
【図12】同実施形態に係る無線通信装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図13】第3の実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の概要を示す説明図である。
【図14】同実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の機能構成を示すブロック図である。
【図15】第4の実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の概要を示す説明図である。
【図16】同実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の機能構成を示すブロック図である。
【図17】第5の実施形態に係る電子機器の概要を示す説明図である。
【図18】従来の無線通信装置の概要についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後にハイフンを介して異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成を、必要に応じて電力回収アンテナ104−A、電力回収アンテナ104−Bのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、電力回収アンテナ104−A、電力回収アンテナ104−Bなどを特に区別する必要が無い場合には、単に電力回収アンテナ104と称する。
【0024】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.第3の実施の形態
4.第4の実施の形態
5.第5の実施の形態
【0025】
<1.第1の実施形態>
[概要]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置の概要について、図18の従来の例と比較をしながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置の概要を示す説明図である。
【0026】
まず、図18に示されるように、無線通信装置900は、通信相手装置800に対してデータを送信する際に、無線通信アンテナ928から電力を放射している。このとき、無線通信装置900は、通信相手装置800がどの位置に存在しているとしても通信相手装置800と通信することができるように全方位へ向けて電力を放射している。ここで放射された電力は、通信相手装置800にデータを送信するために用いられる電力以外は、無駄に捨て去られていた。
【0027】
そこで、図1に示される本実施形態に係る無線通信装置100は、利用されることなく無駄に捨て去られていた電力を回収するための電力回収アンテナ104と整流回路108とを有する。電力回収アンテナ104は、無線通信アンテナ128からの放射電力を回収することのできる位置であって、通信相手装置800と無線通信アンテナ128との間の通信性能の劣化を引き起こさないようにある程度無線通信アンテナ128と離れた位置に配置されることが好ましい。
【0028】
[機能構成]
このような無線通信装置100の機能構成について、次に図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0029】
無線通信装置100は、無線通信機能を有する装置であり、本実施形態においては、ノートPC(Personal Computer)である。しかし、無線通信装置100は、無線通信機能を有する装置であればその種類は問わない。例えば、無線通信装置100は、アクセスポイント、無線LAN(Local Area Access)カード、携帯電話、PDA(Personal Data Assistance)、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、携帯用ゲーム機器などの装置であってよい。
【0030】
無線通信装置100は、電力回収アンテナ104と、整流回路108と、電力利用部112と、制御部116と、電力供給部120と、通信処理部124と、無線通信アンテナ128とを主に有する。
【0031】
電力回収アンテナ104は、空中に放射された電力を回収するアンテナであり、無線通信アンテナ128がデータを送信するために放射する放射電力のうち、データの送信のために用いられない電力を回収する機能を有する。電力回収アンテナ104は、かかる機能のために、無線通信アンテナ128が放射する放射電力の一部を受信することのできる位置であって、無線通信アンテナ128のデータ送信のための通信性能に影響を与えない位置に配置されることが望ましい。また、電力回収アンテナ104は、無線通信アンテナ128よりも通信性能は劣っていてもよい。電力回収アンテナ104は、回収する電力の放射源である無線通信アンテナ128と同じ筐体に設置されるため、放射源との距離はある程度の範囲内であることが想定されるためである。
【0032】
また、電力回収アンテナ104は、装置全体のサイズを変更せずに筐体内部に設置されることが好ましい。特に無線通信装置100が携帯型の装置である場合には、無線通信装置100の筐体サイズの小型化が望まれる傾向にある。このため、電力回収アンテナ104は小型のアンテナであって、現在の無線通信装置100においてデッドスペースとなっている空間に配置されることが好ましい。例えば、電力回収アンテナ104は、メタマテリアルにより形成される小型アンテナであってよい。また、電力回収アンテナ104は、カーボンナノチューブにより形成された小型アンテナであってよい。電力回収アンテナ104がカーボンナノチューブにより形成される場合には、電力回収アンテナ104は、無線通信装置100の表面に塗布されてもよい。この場合、無線通信装置100の筐体表面の塗装色と同色で、電力回収アンテナ104の存在が目立たないように形成することができる。
【0033】
ここで、図3を参照しながら、電力回収アンテナ104としてカーボンナノチューブにより形成された小型アンテナを用いる場合の構造の一例について説明する。図3は、カーボンナノチューブにより形成されるアンテナを用いる場合の無線通信装置100内部の構造を示す概略図である。図3に示されるように、無線通信装置100は、表筐体152表面に塗布されたカーボンナノチューブ162により小型アンテナが形成されている。そして、カーボンナノチューブが塗布された無線通信装置100の表筐体152は、部分的に肉厚が薄くなっており、メッキ処理がなされている(部分断面拡大図150参照)。このとき、肉厚が薄くされた部分の厚みは、0.3mm未満であることが好ましい。メッキ処理は、例えば、MID(Mold Injection Device)工法、あるいは、LDS(Laser Direct Structuring)工法にて形成される。そして、メッキ金属164と、整流回路へと接続される同軸ケーブル170の芯線172とは、はんだ又は導電性接着剤、或いは、同軸ケーブル170の先端に接続されたコネクタを介して接続される。なお、このとき部分断面拡大図150は、概要を示すための図であるため、各要素を強調して図示しているが、実際には、カーボンナノチューブ162の厚みは、無線通信装置100の表筐体152及び裏筐体154等に比べて十分に薄い。
【0034】
かかる構造により、無線通信装置100の表面に塗布されたカーボンナノチューブ162が受信した信号は、カーボンナノチューブ162からメッキ金属164へと容量結合により伝達され、メッキ金属164から同軸ケーブル170の芯線172を伝達し、整流回路へと伝わる。
【0035】
電力回収アンテナ104は、図4に示されるように、無線通信装置100の表示装置と筐体との間の薄スペース、及び、キーボードが設置された本体側の筐体の空きスペースに複数設置されてよい。このとき、無線通信アンテナ128の通信性能に影響を与えない位置であることが好ましい。電力回収アンテナ104は、無線通信アンテナ128の用いる送信周波数に対応した周波数の電力を回収することができるように設計される。このとき、電力回収アンテナ104が複数設置される場合には、無線通信アンテナ128が用いる複数の送信周波数に対応して、複数の電力回収アンテナ104がそれぞれ異なる周波数の電力を回収するように設計されてもよい。例えば、無線通信アンテナ128がWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、WWAN(Wireless Wide Area Network)、及び、WLAN(Wireless Local Area Access)(2.4GHz及び5GHz)に対応している場合には、それぞれの周波数に応じて4種類の電力回収アンテナ104が設置されてよい。
【0036】
整流回路108は、電力回収アンテナ104が回収した電力を、直流電力に変換する機能を有する回路である。整流回路108は、変換後の直流電力を電力利用部112に入力する。
【0037】
電力利用部112は、電力回収アンテナ104により回収された電力を利用して消費する機能を有する。例えば、電力利用部112は、整流回路108から出力される電力により発光する発光部であってもよい。例えば発光部は、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子を用いて構成される。かかる発光部を有することにより、無線通信アンテナ128が送信動作中であることを示すことができる。すなわち、電力回収アンテナ104が電力を回収するのは、無線通信アンテナ128の送信放射電力であるところ、発光部が発光するのは無線通信アンテナ128が送信動作を行う時だからである。
【0038】
制御部116は、各種プログラムに従って無線通信装置100全体の動作を制御する制御装置、或いは演算処理装置である。制御部116は、無線通信装置100内の各部の動作を制御する。
【0039】
電力供給部120は、無線通信装置100の各部に電力を供給する。例えば、電力供給部は、商用電源からAC(Alternating Current)アダプタを介して変換された直流電力を無線通信装置100の各部に供給する。あるいは、電力供給部120は、二次電池から電力を取得して無線通信装置100の各部に電力を供給してもよい。
【0040】
通信処理部124は、制御部116の制御に応じて、送信データ又は受信データの信号処理を行う処理部である。通信処理部124は、例えば無線信号を受信するときには、無線通信アンテナ128より受信された無線信号をダウンコンバージョンし、ビット列に変換することにより各種データフレームを復号する無線インタフェース部と、無線インタフェース部から供給される各種データフレームに誤りがないことを確認する伝送処理部と、伝送処理部から供給される各種データフレームおよびデータパケットを解析するデータ処理部との機能を含む。通信処理部124に含まれる無線インタフェース部と伝送処理部とデータ処理部とは、無線信号を送信するときには以下のように動作する。まずデータ処理部により各種データフレーム又はデータパケットが生成され、伝送処理部は、生成されたパケットに対して各種データヘッダ及びFCS(Frame Check Sequence)などの誤り検出符号の付加などの処理を行う。そして、無線インタフェース部は受け取ったデータから搬送波の周波数帯の変調信号を生成して無線通信アンテナ128から無線信号として送信させる。
【0041】
無線通信アンテナ128は、無線でデータを送信及び受信する機能を有するアンテナ装置である。本実施形態においては、この無線通信アンテナ128が送信動作を行うときに放射する放射電力のうち、データの送信に用いられない電力が、電力回収アンテナ104によって回収および再利用される。
【0042】
また、無線通信装置100は、図5に示されるように、図2の構成に加えて二次電池110をさらに有するものであってもよい。二次電池110は、整流回路108から出力される電力を充電し、電力利用部112が電力を必要とするときに電力利用部112に電力を供給する。かかる構成により、電力回収アンテナ104により回収された電力は、回収された時点で消費されずとも、一度二次電池110に蓄えられた後に任意のタイミングで電力を消費することができるようになる。よって、上述の電力利用部112としてLEDを用いる場合に、LEDの発光により無線通信アンテナ128が送信動作中であることを示すためには、二次電池を介さずに直接LEDと接続する方が簡易な構成によりかかる目的を達成することができる。
【0043】
[シミュレーションモデル]
次に、図6〜図10を参照しながら、無線通信装置100の電力回収アンテナ104が回収する電力のシミュレーションモデルについて説明する。本シミュレーションにおいては、図6に示すように無線通信装置100の表示装置側筐体の上端には無線通信装置128が配置され、表示装置と筐体との間の空間に第1の電力回収アンテナ104−Aが配置され、表示装置側筐体の下部の空間には第2の電力回収アンテナ104−Bが配置される。図6は、無線通信装置100のアンテナ配置を説明するための平面図であり、図7は、図6の一部拡大図であり、図8は、図6の側面図である。
【0044】
無線通信アンテナ128のサイズは、長さ94mm、幅1.0mmないし1.5mm、高さ10mm、導体の厚みは0.1mmである。また、第1の電力回収アンテナ104−Aのサイズは、長さ87mm、幅5mm、高さ1mm、導体の厚みは0.1mmである。また、第2の電力回収アンテナ104−Bのサイズは、長さ87mm、幅1.5mm、高さ1mm、導体の厚みは0.1mmである(図7参照)。無線通信アンテナ128ならびに第2の電力回収アンテナ104−Bは、グランド板の周囲に形成される。このグランド板のサイズは、横297mm、縦179mm、厚さ1.5mmである。一方、第1の電力回収アンテナ104−Aは、グランド板面上に高さ1.0mmのスペースを持って配置されている。
【0045】
かかる条件のアンテナを用いて、無線通信アンテナ128からの出力を1W(30dBm)としたときの無線通信アンテナ128と第1の電力回収アンテナ104−Aとの間の結合特性(S21)のシミュレーション結果を示した図が図9である。かかるシミュレーション結果より、850MHzにおける無線通信アンテナ128と第1の電力回収アンテナ104−Aとの間のS21の値は、−25.6dBである。従って、第1の電力回収アンテナ104−Aにおける受信電力は、30−25.6=−4.4dBm=2.8mWである。
【0046】
同様に、無線通信アンテナ128からの出力を1W(30dBm)としたときの無線通信アンテナ128と第2の電力回収アンテナ104−Bとの間の結合特性(S31)のシミュレーション結果を示した図が図10である。かかるシミュレーション結果より、850MHzにおける無線通信アンテナ128と第2の電力回収アンテナ104−Bとの間のS31の値は、−16.4dBである。従って、第2の電力回収アンテナ104−Bにおける受信電力は、30−16.4=13.6dBm=22.9mWである。
【0047】
以上説明してきたシミュレーションの結果より、本実施形態において想定している電力回収アンテナ104によりLEDを発光させる程度の電力を回収できることがわかった。特に、電力回収アンテナ104が複数設置されることにより、シミュレーション結果よりも大きな電力を回収できる可能性がある。
【0048】
<2.第2の実施形態>
[機能構成]
次に、図11を用いて本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置200の機能構成について説明する。図11は、第2の実施形態に係る無線通信装置200の機能構成を示すブロック図である。
【0049】
本実施形態に係る無線通信装置200は、2×3MIMO(Multiple Input Multiple Output)システムを想定している。すなわち、無線通信装置200は、データを送信するときには2本のアンテナを用い、データを受信するときには3本のアンテナを用いる。通常2×3MIMOシステムを採用する無線通信装置は、無線通信に用いるための3本のアンテナを有しているが、データを送信するときには2本のアンテナしか用いられないため、利用されない1本のアンテナがある。
【0050】
そこで、無線通信装置200は、この送信時に利用されない1本のアンテナを電力回収アンテナとして用いることにより有効利用しようとするものである。このような機能を実現するための無線通信装置200の機能構成は以下の通りである。
【0051】
無線通信装置200は、電力回収アンテナと無線通信アンテナのいずれとしても機能する兼用アンテナ204、整流回路208、電力利用部212、制御部216、電力供給部220、通信処理部224、無線通信アンテナ228−A、無線通信アンテナ228−B、及び、スイッチ232を主に有する。
【0052】
ここで、整流回路208、電力利用部212、電力供給部220の基本的な機能については第1の実施形態と同様であるためここでは説明を省略する。
【0053】
兼用アンテナ204は、電力回収アンテナ及び無線通信アンテナとして機能する。具体的には、兼用アンテナ204は、無線通信アンテナ228がデータを送信しているときには電力回収アンテナとして機能し、無線通信アンテナ228がデータを受信しているときには、無線通信アンテナとして機能する。
【0054】
この兼用アンテナ204の機能を切替えるために、無線通信装置200は、スイッチ232を有する。すなわち、スイッチ232は、制御部216からの制御に従って、無線通信アンテナ228が送信動作を行っているときには兼用アンテナ204と整流回路208とを接続する。また、スイッチ232は、無線通信アンテナ228が受信動作を行っているとき、若しくは非動作時には、制御部216からの制御に従って、兼用アンテナ204と通信処理部224とを接続するように切替動作を行う。
【0055】
通信処理部224は、制御部216の制御に従って、データを送信する場合には無線通信アンテナ228−A及び無線通信アンテナ228−Bを用いてデータを送信するための送信処理を行う。また、通信処理部224は、制御部216の制御に従って、データを受信する場合には無線通信アンテナ228−A、無線通信アンテナ228−B、及び兼用アンテナ204を用いて受信された信号に対して受信処理を行う。
【0056】
[動作]
制御部216が制御する切替動作について、図12に示す。図12は、スイッチ切替動作を示すフローチャートである。
【0057】
まず、制御部216は、通信処理部224がデータ送信処理を行っているか否かを判断する(S103)。そして、データを送信している場合には、制御部216は、スイッチ232を整流回路208側に切替える(S106)。即ち、制御部216は、兼用アンテナ204と整流回路208が接続され、兼用アンテナ204が電力回収アンテナとして機能するように制御する。一方、ステップS103においてデータ送信中であると判断されなかった場合、つまりデータの受信動作中である場合、若しくは非動作状態である場合には、制御部216は、スイッチ232を通信処理部224側に切替える(S109)。即ち、制御部216は、兼用アンテナ204と通信処理部224とが接続され、兼用アンテナ104が無線通信アンテナとしてデータを受信するために用いられるように制御する。
【0058】
なお、ここでは制御部216は、無線通信アンテナ228の非動作時にはスイッチを通信処理部224側に切替えるように制御することとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、制御部216は、無線通信アンテナ228の非動作時にはスイッチを整流回路208側に切替えるようにしてもよい。或いは、制御部216は、無線通信アンテナ228の非動作時には、スイッチを切替えず、その時点の状態のままとしてもよい。
【0059】
<3.第3の実施形態>
以上、第1の実施形態及び第2の実施形態においては、無線通信装置が電力回収アンテナを有する実施の形態について説明してきた。しかし、本発明は、無線通信装置に限らず、無線通信装置と共に用いられる電子機器などに電力回収アンテナを設置し、無線通信装置が送信動作時に放射する放射電力の一部を回収してもよい。
【0060】
例えば、図13に示されるように、電力回収アンテナ304は、電子機器300であるマウスに配置されてもよい。或いは、電力回収アンテナ304が配置される電子機器300は、キーボードのような入力装置であってもよい。
【0061】
無線通信装置600がPCである場合に、電子機器300が、無線通信装置600と無線で接続される入力装置であると、電力回収アンテナ304を有する電子機器300は、回収する対象となる電力を放射する無線通信アンテナ128とある程度の距離範囲内において用いられる可能性が非常に高いため好適である。電力回収アンテナ304が無線通信アンテナ128と別体の筐体に配置される場合には、このように、電力を回収することのできる範囲内において用いられる電子機器300内に電力回収アンテナ304を配置することが重要である。
【0062】
また、電力回収アンテナ304は、無線通信装置600が通信相手に向けて放射する電力については影響を与えない位置に配置されることが好ましい。通常、ノートPCにおいて、無線通信アンテナ628は、ノートPCを開いたときに、より高い位置となるよう配置されることが多い(図13参照)。このため、通常、ノートPCの近傍において、机上などで用いられることの多い入力装置は、通信の妨げとなる位置で用いられる可能性が非常に低く、電力回収アンテナ304を配置する電子機器として好ましい。
【0063】
[機能構成]
上記のように、電力回収アンテナ304を有する電子機器300が無線通信装置600と共に用いられる機器である場合の機能構成について、次に図14を参照しながら説明する。図14は、第3の実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の構成を示すブロック図である。
【0064】
電子機器300は、無線通信装置600と共に用いられる機器である。例えば、無線通信装置600がノートPCである場合には、電子機器300は、無線通信装置600と無線で接続される入力装置、具体的には無線マウスや無線キーボードなどであることが好ましい。
【0065】
電子機器300は、電力回収アンテナ304、整流回路308、及び電力利用部312を主に有する。電力回収アンテナ304は、例えば電子機器300の表面近くに内蔵される。電力回収アンテナ304は、無線通信装置600の有する無線通信アンテナ628が放射する放射電力の一部を回収する。
【0066】
電力回収アンテナ304が回収する放射電力は、整流回路308に入力されて直流電力に変換される。そして、整流回路308から出力される電力は、電力利用部312により、例えば電子機器300の駆動電力の一部として用いられる。或いは、電力利用部312が第1の実施形態において説明したLEDなどの発光素子により形成される発光部であり、回収された電力は、LEDを発光させるための電力として用いられてもよい。
【0067】
無線通信装置600は、制御部616、電力供給部620、通信処理部624、および無線通信アンテナ628を主に有する。制御部616、電力供給部620、通信処理部624、および無線通信アンテナ628の各部の基本的な機能は、第1の実施形態において説明した制御部116、電力供給部120、通信処理部124、および無線通信アンテナ128と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
<4.第4の実施形態>
また、第3の実施形態においては、電子機器の電力回収アンテナにより回収された電力は、電子機器内部で利用される例について説明した。しかし、本発明はかかる例に限定されず、電子機器の電力回収アンテナにより回収された電力を、無線通信装置において利用してもよい。例えば、図15に示すように電子機器400が無線通信装置700が載置される拡張機器としてのクレードルである場合にかかる構成を適用することができる。
【0069】
なお、図15においては、クレードルである電子機器400の表面に電力回収アンテナ404が形成されているが、これに限らず電子機器400の表面近くに内蔵されてもよい。
【0070】
[機能構成]
図16は、本発明の第4の実施形態に係る電子機器および無線通信装置の機能構成を示すブロック図である。実施形態に係る電子機器400は、無線通信装置700と共に用いられる機器であり、例えば、無線通信装置700の拡張機器としてのクレードルであってよい。
【0071】
電子機器400は、電力回収アンテナ404、整流回路408、およびインタフェース414を有する。電力回収アンテナ404は、無線通信アンテナ728が送信動作を行うときに放射する放射電力を回収する。電力回収アンテナ404により回収された電力は、整流回路408により直流電力に変換される。そして、整流回路408から出力される電力は、インタフェース414を介して無線通信装置700に入力される。
【0072】
無線通信装置700は、制御部716、電力供給部720、インタフェース722、通信処理部724、及び無線通信アンテナ728を主に有する。無線通信装置700は、インタフェース722を介して電子機器400から入力された電力を無線通信装置700の駆動電力の一部として利用する。具体的には、インタフェース722を介して入力される電力は、二次電池に一時的に蓄えられた後に駆動電力の一部として利用されてもよい。
【0073】
このとき、無線通信装置700のインタフェース722と電子機器400のインタフェース414とは、例えば、無線通信装置700をクレードル(電子機器400)上に載置したときに互いに接触する接触端子であってもよい。或いは、無線通信装置700のインタフェース722と電子機器400のインタフェース414とは、互いに無線で電力を送受信することのできるインタフェースであってもよい。
【0074】
なお、図示しないが、電力回収アンテナを有する電子機器の他の例としては、無線通信装置の近傍に配置する衝立状の物体であってもよい。この衝立状の物体は、その表面付近に電力回収アンテナを多数有し、無線通信装置の近傍であって、通信相手装置がいないと思われる方向に配置されることが好ましい。例えば、衝立状の物体は、無線通信装置と壁との間に配置される。
【0075】
<5.第5の実施形態>
また、上記では、無線通信装置の放射する放射電力を回収する例について説明してきたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、電子レンジなどの漏洩電力を回収してもよい。
【0076】
図17は、電子レンジに本発明を適用した例の概要を示す。電子機器500は、電力により駆動される機器である。このように電力により駆動される機器は、動作時に、機器外部に漏洩電力が放射されることがある。この漏洩電力は、例えば日本においては、電気用品取締法やJIS(Japanese Industrial Standards)による規定でその許容基準が規定されている。
【0077】
例えば電子レンジの場合、電気用品取締法(電子レンジ)及びJIS(C9250 電子レンジ)による規定では、許容基準は、「容量500mlの円筒状のビーカに275±15mlの水を入れて、加熱室のほぼ中央においてマイクロ波を発振させて、機体の表面から5cm離れたあらゆる箇所で1mW/cm2以下」とされている。
【0078】
すなわち、機体表面においては、を超えるマイクロ波電力が検出される可能性があり、この電力を回収することによって数十mW程度の電力を再利用できる可能性がある。
【0079】
このため、本実施形態に係る電子機器500は、本体の表面(天井部および側壁)にマイクロ波電力回収用の電力回収アンテナ504+整流回路508アレイが配置される。電力回収アンテナ504は、電子機器500の動作時に漏洩するマイクロ波電力を回収して整流回路508に入力する。そして、整流回路508から出力される電力は、電子機器500の駆動電力の一部として用いられる。例えば、回収された電力は、操作パネル、時計、および温度計などの表示素子の駆動、および内部の二次電池の充電などに用いられる。
【0080】
家庭用の電子レンジであって、使用頻度が低い場合には、回収される電力はわずかなものであるかもしれないが、例えば業務用の電子レンジは、頻繁に利用されるためその電力回収効果は高いものと期待される。
【0081】
また、特に電子レンジにおいて用いられる2.4GHz帯のマイクロ波は、WLANなどの無線通信装置にも用いられるため、無線通信への妨害が問題となっている。このため、漏洩電力を回収して再利用することは、電子機器外部に漏洩するマイクロ波を低減するため、無線通信装置との干渉を低減することにもつながる。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0083】
例えば、上記第1の実施形態において各種記述された内容は他の実施形態においても適用することができる。例えば、第3の実施形態に係る電子機器に二次電池を内蔵させ、回収した電力を一時的に蓄えてもよい。また、第4の実施形態に係る電子機器の電力回収アンテナをカーボンナノチューブにより形成してもよい。
【0084】
尚、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
104 電力回収アンテナ
108 整流回路
128 無線通信アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
私たちの身の回りで用いられる様々な電子機器は、動作するときに機器外に放射される電力が発生している。例えば、多くの電子機器について、機器動作時に電力の漏洩が発生している。この漏洩電力は、各国で許容される値が規定されている場合があるが、依然規定内の電力は漏洩している可能性があった。
【0003】
また、意図的に放射されている電力も存在する。例えば、意図的に放射されている電力の例としては、無線通信装置において送信アンテナがデータの送信を行うときに放射する放射電力が挙げられる。一般的に、無線送信用のアンテナは、通信相手となる装置がどの位置にいたとしても相手装置と通信することができるように、全ての方向に電力を放射している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−21807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来電子機器から放射される電力は、利用されることなく無駄に捨て去られていた。特に、無線送信用のアンテナから放射される電力は、全ての方向に電力を放射しているが、通信相手装置の方向以外に放射された電力は無駄となっているという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、放射電力を回収して有効に活用することが可能な、新規かつ改良された無線通信装置、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、無線でデータを送信する無線通信アンテナと、上記無線通信アンテナがデータを送信するために放射する放射電力のうち、上記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナと、上記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、を有する、無線通信装置が提供される。
【0008】
また、上記無線通信アンテナは、受信用の無線通信アンテナと、送受信用の無線通信アンテナと、を含み、上記送受信用の無線通信アンテナが送信動作時に、上記受信用の無線通信アンテナが上記電力回収アンテナとして用いられるように制御する制御部をさらに有してもよい。
【0009】
また、上記無線通信アンテナにより送信又は受信される信号を処理する通信処理部と、上記受信用の無線通信アンテナが上記通信処理部と上記整流回路とのうちいずれかと接続されるように切替えるスイッチと、をさらに有し、上記制御部は、上記スイッチを上記受信用の無線通信アンテナと上記整流回路とが接続されるように上記スイッチを制御することによって、上記受信用の無線通信アンテナが上記電力回収アンテナとして用いられるように制御してもよい。
【0010】
また、上記電力回収アンテナは、上記無線通信アンテナの用いる複数の送信周波数に対応して、複数の電力回収アンテナがそれぞれ異なる周波数の電力を回収してもよい。
【0011】
また、上記整流回路から出力される電力により発光する発光部をさらに有し、上記無線通信アンテナが送信動作中であることを示してもよい。
【0012】
また、上記整流回路から出力される電力を充電する薄膜リチウム二次電池をさらに有してもよい。
【0013】
また、上記電力回収アンテナは、上記無線通信装置の表面に塗布されたカーボンナノチューブにより形成されるアンテナであってもよい。
【0014】
また、上記電力回収アンテナは、メタマテリアルにより形成される小型アンテナであってもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、無線通信装置の有する無線通信アンテナがデータを送信するために放射する放射電力のうち、上記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナと、上記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、を有する、電子機器が提供される。
【0016】
また、上記電子機器は、上記無線通信装置と共に用いられる機器であってよい。
【0017】
また、上記電子機器は、上記無線通信装置の拡張機器としてのクレードルであり、上記整流回路から出力される電力は、上記無線通信装置の駆動電力の一部として用いられてよい。
【0018】
また、上記電子機器は、上記無線通信装置と無線で接続される入力装置であり、上記整流回路から出力される電力は、上記入力装置の駆動電力の一部として用いられてよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電子機器であり、上記電子機器が動作するときに外部に漏洩する電力を回収する電力回収アンテナと、上記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、を有する、電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、放射電力を回収して有効に活用することが可能な、新規かつ改良された無線通信装置、及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係る無線通信装置の概要を示す説明図である。
【図2】同実施形態にかかる無線通信装置の機能を示すブロック図である。
【図3】カーボンナノチューブによる電力回収アンテナを用いる無線通信装置の構造を説明するための説明図である。
【図4】電力回収アンテナの配置の一例を示す説明図である。
【図5】同実施形態の変形例にかかる無線通信装置の機能を示すブロック図である。
【図6】回収電力のシミュレーションにおけるアンテナ配置を説明するための平面図である。
【図7】図6の平面図の部分拡大図である。
【図8】図6の平面図の側面図である。
【図9】無線通信アンテナと第1の電力回収アンテナの間の空間損失のシミュレーション値を示すグラフである。
【図10】無線通信アンテナと第2の電力回収アンテナの間の空間損失のシミュレーション値を示すグラフである。
【図11】第2の実施形態に係る無線通信装置の機能を示すブロック図である。
【図12】同実施形態に係る無線通信装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図13】第3の実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の概要を示す説明図である。
【図14】同実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の機能構成を示すブロック図である。
【図15】第4の実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の概要を示す説明図である。
【図16】同実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の機能構成を示すブロック図である。
【図17】第5の実施形態に係る電子機器の概要を示す説明図である。
【図18】従来の無線通信装置の概要についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後にハイフンを介して異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成を、必要に応じて電力回収アンテナ104−A、電力回収アンテナ104−Bのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、電力回収アンテナ104−A、電力回収アンテナ104−Bなどを特に区別する必要が無い場合には、単に電力回収アンテナ104と称する。
【0024】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.第3の実施の形態
4.第4の実施の形態
5.第5の実施の形態
【0025】
<1.第1の実施形態>
[概要]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置の概要について、図18の従来の例と比較をしながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置の概要を示す説明図である。
【0026】
まず、図18に示されるように、無線通信装置900は、通信相手装置800に対してデータを送信する際に、無線通信アンテナ928から電力を放射している。このとき、無線通信装置900は、通信相手装置800がどの位置に存在しているとしても通信相手装置800と通信することができるように全方位へ向けて電力を放射している。ここで放射された電力は、通信相手装置800にデータを送信するために用いられる電力以外は、無駄に捨て去られていた。
【0027】
そこで、図1に示される本実施形態に係る無線通信装置100は、利用されることなく無駄に捨て去られていた電力を回収するための電力回収アンテナ104と整流回路108とを有する。電力回収アンテナ104は、無線通信アンテナ128からの放射電力を回収することのできる位置であって、通信相手装置800と無線通信アンテナ128との間の通信性能の劣化を引き起こさないようにある程度無線通信アンテナ128と離れた位置に配置されることが好ましい。
【0028】
[機能構成]
このような無線通信装置100の機能構成について、次に図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0029】
無線通信装置100は、無線通信機能を有する装置であり、本実施形態においては、ノートPC(Personal Computer)である。しかし、無線通信装置100は、無線通信機能を有する装置であればその種類は問わない。例えば、無線通信装置100は、アクセスポイント、無線LAN(Local Area Access)カード、携帯電話、PDA(Personal Data Assistance)、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、携帯用ゲーム機器などの装置であってよい。
【0030】
無線通信装置100は、電力回収アンテナ104と、整流回路108と、電力利用部112と、制御部116と、電力供給部120と、通信処理部124と、無線通信アンテナ128とを主に有する。
【0031】
電力回収アンテナ104は、空中に放射された電力を回収するアンテナであり、無線通信アンテナ128がデータを送信するために放射する放射電力のうち、データの送信のために用いられない電力を回収する機能を有する。電力回収アンテナ104は、かかる機能のために、無線通信アンテナ128が放射する放射電力の一部を受信することのできる位置であって、無線通信アンテナ128のデータ送信のための通信性能に影響を与えない位置に配置されることが望ましい。また、電力回収アンテナ104は、無線通信アンテナ128よりも通信性能は劣っていてもよい。電力回収アンテナ104は、回収する電力の放射源である無線通信アンテナ128と同じ筐体に設置されるため、放射源との距離はある程度の範囲内であることが想定されるためである。
【0032】
また、電力回収アンテナ104は、装置全体のサイズを変更せずに筐体内部に設置されることが好ましい。特に無線通信装置100が携帯型の装置である場合には、無線通信装置100の筐体サイズの小型化が望まれる傾向にある。このため、電力回収アンテナ104は小型のアンテナであって、現在の無線通信装置100においてデッドスペースとなっている空間に配置されることが好ましい。例えば、電力回収アンテナ104は、メタマテリアルにより形成される小型アンテナであってよい。また、電力回収アンテナ104は、カーボンナノチューブにより形成された小型アンテナであってよい。電力回収アンテナ104がカーボンナノチューブにより形成される場合には、電力回収アンテナ104は、無線通信装置100の表面に塗布されてもよい。この場合、無線通信装置100の筐体表面の塗装色と同色で、電力回収アンテナ104の存在が目立たないように形成することができる。
【0033】
ここで、図3を参照しながら、電力回収アンテナ104としてカーボンナノチューブにより形成された小型アンテナを用いる場合の構造の一例について説明する。図3は、カーボンナノチューブにより形成されるアンテナを用いる場合の無線通信装置100内部の構造を示す概略図である。図3に示されるように、無線通信装置100は、表筐体152表面に塗布されたカーボンナノチューブ162により小型アンテナが形成されている。そして、カーボンナノチューブが塗布された無線通信装置100の表筐体152は、部分的に肉厚が薄くなっており、メッキ処理がなされている(部分断面拡大図150参照)。このとき、肉厚が薄くされた部分の厚みは、0.3mm未満であることが好ましい。メッキ処理は、例えば、MID(Mold Injection Device)工法、あるいは、LDS(Laser Direct Structuring)工法にて形成される。そして、メッキ金属164と、整流回路へと接続される同軸ケーブル170の芯線172とは、はんだ又は導電性接着剤、或いは、同軸ケーブル170の先端に接続されたコネクタを介して接続される。なお、このとき部分断面拡大図150は、概要を示すための図であるため、各要素を強調して図示しているが、実際には、カーボンナノチューブ162の厚みは、無線通信装置100の表筐体152及び裏筐体154等に比べて十分に薄い。
【0034】
かかる構造により、無線通信装置100の表面に塗布されたカーボンナノチューブ162が受信した信号は、カーボンナノチューブ162からメッキ金属164へと容量結合により伝達され、メッキ金属164から同軸ケーブル170の芯線172を伝達し、整流回路へと伝わる。
【0035】
電力回収アンテナ104は、図4に示されるように、無線通信装置100の表示装置と筐体との間の薄スペース、及び、キーボードが設置された本体側の筐体の空きスペースに複数設置されてよい。このとき、無線通信アンテナ128の通信性能に影響を与えない位置であることが好ましい。電力回収アンテナ104は、無線通信アンテナ128の用いる送信周波数に対応した周波数の電力を回収することができるように設計される。このとき、電力回収アンテナ104が複数設置される場合には、無線通信アンテナ128が用いる複数の送信周波数に対応して、複数の電力回収アンテナ104がそれぞれ異なる周波数の電力を回収するように設計されてもよい。例えば、無線通信アンテナ128がWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、WWAN(Wireless Wide Area Network)、及び、WLAN(Wireless Local Area Access)(2.4GHz及び5GHz)に対応している場合には、それぞれの周波数に応じて4種類の電力回収アンテナ104が設置されてよい。
【0036】
整流回路108は、電力回収アンテナ104が回収した電力を、直流電力に変換する機能を有する回路である。整流回路108は、変換後の直流電力を電力利用部112に入力する。
【0037】
電力利用部112は、電力回収アンテナ104により回収された電力を利用して消費する機能を有する。例えば、電力利用部112は、整流回路108から出力される電力により発光する発光部であってもよい。例えば発光部は、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子を用いて構成される。かかる発光部を有することにより、無線通信アンテナ128が送信動作中であることを示すことができる。すなわち、電力回収アンテナ104が電力を回収するのは、無線通信アンテナ128の送信放射電力であるところ、発光部が発光するのは無線通信アンテナ128が送信動作を行う時だからである。
【0038】
制御部116は、各種プログラムに従って無線通信装置100全体の動作を制御する制御装置、或いは演算処理装置である。制御部116は、無線通信装置100内の各部の動作を制御する。
【0039】
電力供給部120は、無線通信装置100の各部に電力を供給する。例えば、電力供給部は、商用電源からAC(Alternating Current)アダプタを介して変換された直流電力を無線通信装置100の各部に供給する。あるいは、電力供給部120は、二次電池から電力を取得して無線通信装置100の各部に電力を供給してもよい。
【0040】
通信処理部124は、制御部116の制御に応じて、送信データ又は受信データの信号処理を行う処理部である。通信処理部124は、例えば無線信号を受信するときには、無線通信アンテナ128より受信された無線信号をダウンコンバージョンし、ビット列に変換することにより各種データフレームを復号する無線インタフェース部と、無線インタフェース部から供給される各種データフレームに誤りがないことを確認する伝送処理部と、伝送処理部から供給される各種データフレームおよびデータパケットを解析するデータ処理部との機能を含む。通信処理部124に含まれる無線インタフェース部と伝送処理部とデータ処理部とは、無線信号を送信するときには以下のように動作する。まずデータ処理部により各種データフレーム又はデータパケットが生成され、伝送処理部は、生成されたパケットに対して各種データヘッダ及びFCS(Frame Check Sequence)などの誤り検出符号の付加などの処理を行う。そして、無線インタフェース部は受け取ったデータから搬送波の周波数帯の変調信号を生成して無線通信アンテナ128から無線信号として送信させる。
【0041】
無線通信アンテナ128は、無線でデータを送信及び受信する機能を有するアンテナ装置である。本実施形態においては、この無線通信アンテナ128が送信動作を行うときに放射する放射電力のうち、データの送信に用いられない電力が、電力回収アンテナ104によって回収および再利用される。
【0042】
また、無線通信装置100は、図5に示されるように、図2の構成に加えて二次電池110をさらに有するものであってもよい。二次電池110は、整流回路108から出力される電力を充電し、電力利用部112が電力を必要とするときに電力利用部112に電力を供給する。かかる構成により、電力回収アンテナ104により回収された電力は、回収された時点で消費されずとも、一度二次電池110に蓄えられた後に任意のタイミングで電力を消費することができるようになる。よって、上述の電力利用部112としてLEDを用いる場合に、LEDの発光により無線通信アンテナ128が送信動作中であることを示すためには、二次電池を介さずに直接LEDと接続する方が簡易な構成によりかかる目的を達成することができる。
【0043】
[シミュレーションモデル]
次に、図6〜図10を参照しながら、無線通信装置100の電力回収アンテナ104が回収する電力のシミュレーションモデルについて説明する。本シミュレーションにおいては、図6に示すように無線通信装置100の表示装置側筐体の上端には無線通信装置128が配置され、表示装置と筐体との間の空間に第1の電力回収アンテナ104−Aが配置され、表示装置側筐体の下部の空間には第2の電力回収アンテナ104−Bが配置される。図6は、無線通信装置100のアンテナ配置を説明するための平面図であり、図7は、図6の一部拡大図であり、図8は、図6の側面図である。
【0044】
無線通信アンテナ128のサイズは、長さ94mm、幅1.0mmないし1.5mm、高さ10mm、導体の厚みは0.1mmである。また、第1の電力回収アンテナ104−Aのサイズは、長さ87mm、幅5mm、高さ1mm、導体の厚みは0.1mmである。また、第2の電力回収アンテナ104−Bのサイズは、長さ87mm、幅1.5mm、高さ1mm、導体の厚みは0.1mmである(図7参照)。無線通信アンテナ128ならびに第2の電力回収アンテナ104−Bは、グランド板の周囲に形成される。このグランド板のサイズは、横297mm、縦179mm、厚さ1.5mmである。一方、第1の電力回収アンテナ104−Aは、グランド板面上に高さ1.0mmのスペースを持って配置されている。
【0045】
かかる条件のアンテナを用いて、無線通信アンテナ128からの出力を1W(30dBm)としたときの無線通信アンテナ128と第1の電力回収アンテナ104−Aとの間の結合特性(S21)のシミュレーション結果を示した図が図9である。かかるシミュレーション結果より、850MHzにおける無線通信アンテナ128と第1の電力回収アンテナ104−Aとの間のS21の値は、−25.6dBである。従って、第1の電力回収アンテナ104−Aにおける受信電力は、30−25.6=−4.4dBm=2.8mWである。
【0046】
同様に、無線通信アンテナ128からの出力を1W(30dBm)としたときの無線通信アンテナ128と第2の電力回収アンテナ104−Bとの間の結合特性(S31)のシミュレーション結果を示した図が図10である。かかるシミュレーション結果より、850MHzにおける無線通信アンテナ128と第2の電力回収アンテナ104−Bとの間のS31の値は、−16.4dBである。従って、第2の電力回収アンテナ104−Bにおける受信電力は、30−16.4=13.6dBm=22.9mWである。
【0047】
以上説明してきたシミュレーションの結果より、本実施形態において想定している電力回収アンテナ104によりLEDを発光させる程度の電力を回収できることがわかった。特に、電力回収アンテナ104が複数設置されることにより、シミュレーション結果よりも大きな電力を回収できる可能性がある。
【0048】
<2.第2の実施形態>
[機能構成]
次に、図11を用いて本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置200の機能構成について説明する。図11は、第2の実施形態に係る無線通信装置200の機能構成を示すブロック図である。
【0049】
本実施形態に係る無線通信装置200は、2×3MIMO(Multiple Input Multiple Output)システムを想定している。すなわち、無線通信装置200は、データを送信するときには2本のアンテナを用い、データを受信するときには3本のアンテナを用いる。通常2×3MIMOシステムを採用する無線通信装置は、無線通信に用いるための3本のアンテナを有しているが、データを送信するときには2本のアンテナしか用いられないため、利用されない1本のアンテナがある。
【0050】
そこで、無線通信装置200は、この送信時に利用されない1本のアンテナを電力回収アンテナとして用いることにより有効利用しようとするものである。このような機能を実現するための無線通信装置200の機能構成は以下の通りである。
【0051】
無線通信装置200は、電力回収アンテナと無線通信アンテナのいずれとしても機能する兼用アンテナ204、整流回路208、電力利用部212、制御部216、電力供給部220、通信処理部224、無線通信アンテナ228−A、無線通信アンテナ228−B、及び、スイッチ232を主に有する。
【0052】
ここで、整流回路208、電力利用部212、電力供給部220の基本的な機能については第1の実施形態と同様であるためここでは説明を省略する。
【0053】
兼用アンテナ204は、電力回収アンテナ及び無線通信アンテナとして機能する。具体的には、兼用アンテナ204は、無線通信アンテナ228がデータを送信しているときには電力回収アンテナとして機能し、無線通信アンテナ228がデータを受信しているときには、無線通信アンテナとして機能する。
【0054】
この兼用アンテナ204の機能を切替えるために、無線通信装置200は、スイッチ232を有する。すなわち、スイッチ232は、制御部216からの制御に従って、無線通信アンテナ228が送信動作を行っているときには兼用アンテナ204と整流回路208とを接続する。また、スイッチ232は、無線通信アンテナ228が受信動作を行っているとき、若しくは非動作時には、制御部216からの制御に従って、兼用アンテナ204と通信処理部224とを接続するように切替動作を行う。
【0055】
通信処理部224は、制御部216の制御に従って、データを送信する場合には無線通信アンテナ228−A及び無線通信アンテナ228−Bを用いてデータを送信するための送信処理を行う。また、通信処理部224は、制御部216の制御に従って、データを受信する場合には無線通信アンテナ228−A、無線通信アンテナ228−B、及び兼用アンテナ204を用いて受信された信号に対して受信処理を行う。
【0056】
[動作]
制御部216が制御する切替動作について、図12に示す。図12は、スイッチ切替動作を示すフローチャートである。
【0057】
まず、制御部216は、通信処理部224がデータ送信処理を行っているか否かを判断する(S103)。そして、データを送信している場合には、制御部216は、スイッチ232を整流回路208側に切替える(S106)。即ち、制御部216は、兼用アンテナ204と整流回路208が接続され、兼用アンテナ204が電力回収アンテナとして機能するように制御する。一方、ステップS103においてデータ送信中であると判断されなかった場合、つまりデータの受信動作中である場合、若しくは非動作状態である場合には、制御部216は、スイッチ232を通信処理部224側に切替える(S109)。即ち、制御部216は、兼用アンテナ204と通信処理部224とが接続され、兼用アンテナ104が無線通信アンテナとしてデータを受信するために用いられるように制御する。
【0058】
なお、ここでは制御部216は、無線通信アンテナ228の非動作時にはスイッチを通信処理部224側に切替えるように制御することとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、制御部216は、無線通信アンテナ228の非動作時にはスイッチを整流回路208側に切替えるようにしてもよい。或いは、制御部216は、無線通信アンテナ228の非動作時には、スイッチを切替えず、その時点の状態のままとしてもよい。
【0059】
<3.第3の実施形態>
以上、第1の実施形態及び第2の実施形態においては、無線通信装置が電力回収アンテナを有する実施の形態について説明してきた。しかし、本発明は、無線通信装置に限らず、無線通信装置と共に用いられる電子機器などに電力回収アンテナを設置し、無線通信装置が送信動作時に放射する放射電力の一部を回収してもよい。
【0060】
例えば、図13に示されるように、電力回収アンテナ304は、電子機器300であるマウスに配置されてもよい。或いは、電力回収アンテナ304が配置される電子機器300は、キーボードのような入力装置であってもよい。
【0061】
無線通信装置600がPCである場合に、電子機器300が、無線通信装置600と無線で接続される入力装置であると、電力回収アンテナ304を有する電子機器300は、回収する対象となる電力を放射する無線通信アンテナ128とある程度の距離範囲内において用いられる可能性が非常に高いため好適である。電力回収アンテナ304が無線通信アンテナ128と別体の筐体に配置される場合には、このように、電力を回収することのできる範囲内において用いられる電子機器300内に電力回収アンテナ304を配置することが重要である。
【0062】
また、電力回収アンテナ304は、無線通信装置600が通信相手に向けて放射する電力については影響を与えない位置に配置されることが好ましい。通常、ノートPCにおいて、無線通信アンテナ628は、ノートPCを開いたときに、より高い位置となるよう配置されることが多い(図13参照)。このため、通常、ノートPCの近傍において、机上などで用いられることの多い入力装置は、通信の妨げとなる位置で用いられる可能性が非常に低く、電力回収アンテナ304を配置する電子機器として好ましい。
【0063】
[機能構成]
上記のように、電力回収アンテナ304を有する電子機器300が無線通信装置600と共に用いられる機器である場合の機能構成について、次に図14を参照しながら説明する。図14は、第3の実施形態に係る無線通信装置及び電子機器の構成を示すブロック図である。
【0064】
電子機器300は、無線通信装置600と共に用いられる機器である。例えば、無線通信装置600がノートPCである場合には、電子機器300は、無線通信装置600と無線で接続される入力装置、具体的には無線マウスや無線キーボードなどであることが好ましい。
【0065】
電子機器300は、電力回収アンテナ304、整流回路308、及び電力利用部312を主に有する。電力回収アンテナ304は、例えば電子機器300の表面近くに内蔵される。電力回収アンテナ304は、無線通信装置600の有する無線通信アンテナ628が放射する放射電力の一部を回収する。
【0066】
電力回収アンテナ304が回収する放射電力は、整流回路308に入力されて直流電力に変換される。そして、整流回路308から出力される電力は、電力利用部312により、例えば電子機器300の駆動電力の一部として用いられる。或いは、電力利用部312が第1の実施形態において説明したLEDなどの発光素子により形成される発光部であり、回収された電力は、LEDを発光させるための電力として用いられてもよい。
【0067】
無線通信装置600は、制御部616、電力供給部620、通信処理部624、および無線通信アンテナ628を主に有する。制御部616、電力供給部620、通信処理部624、および無線通信アンテナ628の各部の基本的な機能は、第1の実施形態において説明した制御部116、電力供給部120、通信処理部124、および無線通信アンテナ128と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
<4.第4の実施形態>
また、第3の実施形態においては、電子機器の電力回収アンテナにより回収された電力は、電子機器内部で利用される例について説明した。しかし、本発明はかかる例に限定されず、電子機器の電力回収アンテナにより回収された電力を、無線通信装置において利用してもよい。例えば、図15に示すように電子機器400が無線通信装置700が載置される拡張機器としてのクレードルである場合にかかる構成を適用することができる。
【0069】
なお、図15においては、クレードルである電子機器400の表面に電力回収アンテナ404が形成されているが、これに限らず電子機器400の表面近くに内蔵されてもよい。
【0070】
[機能構成]
図16は、本発明の第4の実施形態に係る電子機器および無線通信装置の機能構成を示すブロック図である。実施形態に係る電子機器400は、無線通信装置700と共に用いられる機器であり、例えば、無線通信装置700の拡張機器としてのクレードルであってよい。
【0071】
電子機器400は、電力回収アンテナ404、整流回路408、およびインタフェース414を有する。電力回収アンテナ404は、無線通信アンテナ728が送信動作を行うときに放射する放射電力を回収する。電力回収アンテナ404により回収された電力は、整流回路408により直流電力に変換される。そして、整流回路408から出力される電力は、インタフェース414を介して無線通信装置700に入力される。
【0072】
無線通信装置700は、制御部716、電力供給部720、インタフェース722、通信処理部724、及び無線通信アンテナ728を主に有する。無線通信装置700は、インタフェース722を介して電子機器400から入力された電力を無線通信装置700の駆動電力の一部として利用する。具体的には、インタフェース722を介して入力される電力は、二次電池に一時的に蓄えられた後に駆動電力の一部として利用されてもよい。
【0073】
このとき、無線通信装置700のインタフェース722と電子機器400のインタフェース414とは、例えば、無線通信装置700をクレードル(電子機器400)上に載置したときに互いに接触する接触端子であってもよい。或いは、無線通信装置700のインタフェース722と電子機器400のインタフェース414とは、互いに無線で電力を送受信することのできるインタフェースであってもよい。
【0074】
なお、図示しないが、電力回収アンテナを有する電子機器の他の例としては、無線通信装置の近傍に配置する衝立状の物体であってもよい。この衝立状の物体は、その表面付近に電力回収アンテナを多数有し、無線通信装置の近傍であって、通信相手装置がいないと思われる方向に配置されることが好ましい。例えば、衝立状の物体は、無線通信装置と壁との間に配置される。
【0075】
<5.第5の実施形態>
また、上記では、無線通信装置の放射する放射電力を回収する例について説明してきたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、電子レンジなどの漏洩電力を回収してもよい。
【0076】
図17は、電子レンジに本発明を適用した例の概要を示す。電子機器500は、電力により駆動される機器である。このように電力により駆動される機器は、動作時に、機器外部に漏洩電力が放射されることがある。この漏洩電力は、例えば日本においては、電気用品取締法やJIS(Japanese Industrial Standards)による規定でその許容基準が規定されている。
【0077】
例えば電子レンジの場合、電気用品取締法(電子レンジ)及びJIS(C9250 電子レンジ)による規定では、許容基準は、「容量500mlの円筒状のビーカに275±15mlの水を入れて、加熱室のほぼ中央においてマイクロ波を発振させて、機体の表面から5cm離れたあらゆる箇所で1mW/cm2以下」とされている。
【0078】
すなわち、機体表面においては、を超えるマイクロ波電力が検出される可能性があり、この電力を回収することによって数十mW程度の電力を再利用できる可能性がある。
【0079】
このため、本実施形態に係る電子機器500は、本体の表面(天井部および側壁)にマイクロ波電力回収用の電力回収アンテナ504+整流回路508アレイが配置される。電力回収アンテナ504は、電子機器500の動作時に漏洩するマイクロ波電力を回収して整流回路508に入力する。そして、整流回路508から出力される電力は、電子機器500の駆動電力の一部として用いられる。例えば、回収された電力は、操作パネル、時計、および温度計などの表示素子の駆動、および内部の二次電池の充電などに用いられる。
【0080】
家庭用の電子レンジであって、使用頻度が低い場合には、回収される電力はわずかなものであるかもしれないが、例えば業務用の電子レンジは、頻繁に利用されるためその電力回収効果は高いものと期待される。
【0081】
また、特に電子レンジにおいて用いられる2.4GHz帯のマイクロ波は、WLANなどの無線通信装置にも用いられるため、無線通信への妨害が問題となっている。このため、漏洩電力を回収して再利用することは、電子機器外部に漏洩するマイクロ波を低減するため、無線通信装置との干渉を低減することにもつながる。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0083】
例えば、上記第1の実施形態において各種記述された内容は他の実施形態においても適用することができる。例えば、第3の実施形態に係る電子機器に二次電池を内蔵させ、回収した電力を一時的に蓄えてもよい。また、第4の実施形態に係る電子機器の電力回収アンテナをカーボンナノチューブにより形成してもよい。
【0084】
尚、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
104 電力回収アンテナ
108 整流回路
128 無線通信アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線でデータを送信する無線通信アンテナと、
前記無線通信アンテナがデータを送信するために放射する放射電力のうち、前記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナと、
前記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、
を備える、無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信アンテナは、受信用の無線通信アンテナと、送受信用の無線通信アンテナと、を含み、
前記送受信用の無線通信アンテナが送信動作時に、前記受信用の無線通信アンテナが前記電力回収アンテナとして用いられるように制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線通信アンテナにより送信又は受信される信号を処理する通信処理部と、
前記受信用の無線通信アンテナが前記通信処理部と前記整流回路とのうちいずれかと接続されるように切替えるスイッチと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記スイッチを前記受信用の無線通信アンテナと前記整流回路とが接続されるように前記スイッチを制御することによって、前記受信用の無線通信アンテナが前記電力回収アンテナとして用いられるように制御する、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記電力回収アンテナは、前記無線通信アンテナの用いる複数の送信周波数に対応して、複数の電力回収アンテナがそれぞれ異なる周波数の電力を回収する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記整流回路から出力される電力により発光する発光部をさらに備え、前記無線通信アンテナが送信動作中であることを示す、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記整流回路から出力される電力を充電する薄膜リチウム二次電池をさらに備える、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記電力回収アンテナは、前記無線通信装置の表面に塗布されたカーボンナノチューブにより形成されるアンテナである、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記電力回収アンテナは、メタマテリアルにより形成される小型アンテナである、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項9】
無線通信装置の有する無線通信アンテナがデータを送信するために放射する放射電力のうち、前記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナと、
前記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、
を備える、電子機器。
【請求項10】
前記電子機器は、前記無線通信装置と共に用いられる機器である、請求項9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記電子機器は、前記無線通信装置の拡張機器としてのクレードルであり、前記整流回路から出力される電力は、前記無線通信装置の駆動電力の一部として用いられる、請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記電子機器は、前記無線通信装置と無線で接続される入力装置であり、前記整流回路から出力される電力は、前記入力装置の駆動電力の一部として用いられる、請求項10に記載の電子機器。
【請求項13】
自機器が動作するときに外部に漏洩する電力を回収する電力回収アンテナと、
前記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、
を備える、電子機器。
【請求項1】
無線でデータを送信する無線通信アンテナと、
前記無線通信アンテナがデータを送信するために放射する放射電力のうち、前記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナと、
前記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、
を備える、無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信アンテナは、受信用の無線通信アンテナと、送受信用の無線通信アンテナと、を含み、
前記送受信用の無線通信アンテナが送信動作時に、前記受信用の無線通信アンテナが前記電力回収アンテナとして用いられるように制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線通信アンテナにより送信又は受信される信号を処理する通信処理部と、
前記受信用の無線通信アンテナが前記通信処理部と前記整流回路とのうちいずれかと接続されるように切替えるスイッチと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記スイッチを前記受信用の無線通信アンテナと前記整流回路とが接続されるように前記スイッチを制御することによって、前記受信用の無線通信アンテナが前記電力回収アンテナとして用いられるように制御する、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記電力回収アンテナは、前記無線通信アンテナの用いる複数の送信周波数に対応して、複数の電力回収アンテナがそれぞれ異なる周波数の電力を回収する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記整流回路から出力される電力により発光する発光部をさらに備え、前記無線通信アンテナが送信動作中であることを示す、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記整流回路から出力される電力を充電する薄膜リチウム二次電池をさらに備える、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記電力回収アンテナは、前記無線通信装置の表面に塗布されたカーボンナノチューブにより形成されるアンテナである、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記電力回収アンテナは、メタマテリアルにより形成される小型アンテナである、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項9】
無線通信装置の有する無線通信アンテナがデータを送信するために放射する放射電力のうち、前記送信のために用いられない電力を回収する電力回収アンテナと、
前記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、
を備える、電子機器。
【請求項10】
前記電子機器は、前記無線通信装置と共に用いられる機器である、請求項9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記電子機器は、前記無線通信装置の拡張機器としてのクレードルであり、前記整流回路から出力される電力は、前記無線通信装置の駆動電力の一部として用いられる、請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記電子機器は、前記無線通信装置と無線で接続される入力装置であり、前記整流回路から出力される電力は、前記入力装置の駆動電力の一部として用いられる、請求項10に記載の電子機器。
【請求項13】
自機器が動作するときに外部に漏洩する電力を回収する電力回収アンテナと、
前記電力回収アンテナにより回収された電力を直流電力に変換する整流回路と、
を備える、電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−205793(P2011−205793A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70758(P2010−70758)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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