説明

無線通信装置、方法及びプログラム、並びに無線ネットワーク

【課題】無線ネットワークを構成する無線端末間の通信遅延を小さくすることを考慮しながら、無線機の起動時間を削減して、無線端末の消費電力を削減させるようにする。
【解決手段】本発明の無線通信装置は、無線ネットワークを構成する複数の無線端末のそれぞれが備える無線通信装置において、周辺の無線端末に自端末の受信期間を示す受信スロット情報を送信する受信スロット情報通信手段と、周辺の無線端末からの受信スロット情報に基づいて、周辺の無線端末の中から自端末の送信先端末を決定する送信先端末決定手段と、送信先端末決定手段により決定された送信先端末の受信スロット情報に基づいて、送信先端末の受信スロットの前に自端末の受信スロットを決定する受信スロット決定手段と、自端末の受信スロットにおいてデータ信号の転送処理を行う転送処理手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、方法及びプログラム、並びに無線ネットワークに関し、例えば、センサネットワークに用いられるマルチホップ型無線ネットワークにおいて、中継処理を行う無線端末の消費電力を削減するために電源制御を行う無線通信装置、方法及びプログラム、並びに無線ネットワークに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の端末でネットワークを構成し、隣接した端末間でパケットの送受信を繰り返すことで直接接続していない端末間の通信を実現する様々な方式が開発されている。
【0003】
このような通信を実現する技術として、例えば、パケットを受信する受信端末が受信機の電源を常に入れておき、任意の時間に通信を行うことができるようにする方法や、送受信端末間で同期を取り受信端末が指定した特定の時間にのみ送信が許される方法(いわゆるTDMA方式)などがある。これらの方式は送受信を行う端末のいずれかが固定された基地局となっており、電源が供給されていることを想定している。
【0004】
例えば、センサネットワークやアドホックネットワークにおいては、受信処理を行う端末は他の端末ヘパケットを送信する端末としても機能しており、送受信を行う端末の双方が電源供給のない状態にある場合が一般的である。
【0005】
このような状態では、送受信端末間で同期を取り、一部の時間にのみ受信機の電源を入れ通信を行い、他の時間は送受信機の電源を切ることで端末の消費電力を削減する方式を採用することとなり、これに関しても様々な方式が開発されている。
【0006】
しかしながら、無線端末の消費電力を抑えるには送受信機の電源を切る時間の割合を増加させる必要がある。一定量の通信にかかる時間は通信方式を変えない限りは一定であるので、送受信機の電源を切る時間の割合を増やすためには、休止時間を長く取ることになる。従って、一定時間のうち通信が可能な時間は減少し、通信に要する時間が増加する。すなわち、通信遅延が増加するという問題が発生する。無線通信を複数回繰り返すマルチホップ通信においては、遅延時間が中継回数に比例して増加するためにより一層大きな問題となる。
【0007】
休止時間を考慮しつつ、通信を可能とする既存の方式においては、複数の端末が同一の端末に対して同時にパケットを送信することがないように各端末に対して送信時間を指定している。しかしながら、このような方式では複数の端末からのパケットを受信する必要がある端末は無線機の電源を入れる時間が増加する。
【0008】
この課題を解決するために、例えば特許文献1には、中継に伴う遅延を削減するために、事前にパケットが発生する端末から最終宛先までの全端末の送信タイミングを調整する技術が記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2007−43435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、例えばセンサネットワーク等に用いられる無線ネットワークにおいては、通信量の少ない状況が多く想定されており、無線機の電源を入れる時間のほとんどは受信待機を行うだけである。従って、このような通信状況においては、既存の送信時間を管理する方法は消費電力のムダが多いという課題がある。また、双方向に通信が行われることも少なく、特定の端末(外部ネットワークへの接続機能やセンサネットワーク全体の管理機能を持つ特殊な端末)への一方的な通信が主体となる場合が多い。
【0011】
そのため、無線ネットワークを構成する無線端末間の通信遅延を小さくすることを考慮しながら、無線機の起動時間を削減して、無線端末の消費電力を削減させることができる無線通信装置、方法及びプログラム、並びに無線ネットワークが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の無線通信装置は、無線ネットワークを構成する複数の無線端末のそれぞれが備える無線通信装置において、(1)周辺の無線端末に自端末の受信期間を示す受信スロット情報を送信する受信スロット情報通信手段と、(2)周辺の無線端末からの受信スロット情報に基づいて、周辺の無線端末の中から自端末の送信先端末を決定する送信先端末決定手段と、(3)送信先端末決定手段により決定された送信先端末の受信スロット情報に基づいて、送信先端末の受信スロットの前に自端末の受信スロットを決定する受信スロット決定手段と、(4)自端末の受信スロットにおいてデータ信号の転送処理を行う転送処理手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2の本発明の無線通信方法は、無線ネットワークを構成する複数の無線端末のそれぞれが備える無線通信装置の無線通信方法において、無線通信装置が、受信スロット情報通信手段、送信先端末決定手段、受信スロット決定手段及び転送処理手段を備え、(1)受信スロット情報通信手段が、周辺の無線端末との間で自端末の受信期間を示す受信スロット情報を授受する受信スロット情報通信工程と、(2)送信先端末決定手段が、周辺の無線端末からの受信スロット情報に基づいて、周辺の無線端末の中から自端末の送信先端末を決定する送信先端末決定工程と、(3)受信スロット決定手段が、送信先端末決定手段により決定された送信先端末の受信スロット情報に基づいて、送信先端末の受信スロットの前に自端末の受信スロットを決定する受信スロット決定工程と、(4)転送処理手段が、自端末の受信スロットにおいてデータ信号の転送処理を行う転送処理工程とを有することを特徴とする。
【0014】
第3の本発明の無線通信プログラムは、無線ネットワークを構成する複数の無線端末のそれぞれが備える無線通信装置の無線通信プログラムにおいて、コンピュータを、(1)周辺の無線端末との間で自端末の受信期間を示す受信スロット情報を授受する受信スロット情報通信手段、(2)周辺の無線端末からの受信スロット情報に基づいて、周辺の無線端末の中から自端末の送信先端末を決定する送信先端末決定手段、(3)送信先端末決定手段により決定された送信先端末の受信スロット情報に基づいて、送信先端末の受信スロットの前に自端末の受信スロットを決定する受信スロット決定手段、(4)自端末の受信スロットにおいてデータ信号の転送処理を行う転送処理手段として機能させるものである。
【0015】
第4の本発明の無線ネットワークは、複数の無線端末を有して構成される無線ネットワークにおいて、各無線端末が、無線端末間で情報を交換し合う第1の本発明の無線通信装置を備えるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無線ネットワークにおいて、複数の転送経路を作成することによって無線信号の干渉・衝突の回避、端末間の消費電力の均等化又は総消費電力の削減、端末の故障又は端末間の無線リンクの切断による通信途絶の回避を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(A)第1の実施形態
以下、本発明の無線通信装置、方法及びプログラム、並びに無線ネットワークの第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
第1の実施形態では、無線マルチホップ方式を採用した無線ネットワークを構成する無線端末に本発明を適用した場合の実施形態を例示して説明する。
【0019】
第1の実施形態では、無線機の動作時間が増加する問題に対しては、送信時間を管理するのではなく、各無線端末の受信時間を管理することによって問題を解決するものとする。また、通信遅延の削減に関しては、無線ネットワークにおける通信経路を考慮した上で、各無線端末の送信タイミングではなく、各無線端末の受信タイミングによって通信遅延の増加を抑えるようにする。
【0020】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態の無線マルチホップネットワークの構成例を示す構成図である。
【0021】
図1において、第1の実施形態の無線マルチホップネットワーク10は、複数の無線端末101〜111を有して構成されるものである。無線端末101は、ネットワーク全体を管理する管理機能を有する無線端末(以下、コーディネータともいう)である。
【0022】
図1(a)において、2つの無線端末間を結ぶ直線は、2つの無線端末が直接通信可能であることを示す。また、図1(b)に示すネットワーク構成は、図1(a)のものに対応しており、丸の中の番号はタイムスロット番号であり、後述する図2のタイムスロット番号に対応する。
【0023】
ここで、図2は、各無線端末101〜111のタイムスロットを説明する説明図である。図2において、所定時間のタイムスロットを時系列に100個だけ並べた構成をしており、各タイムスロットにはそれぞれを特定するタイムスロット番号1〜100が付されている。また、説明便宜上、タイムスロット番号が大きくなるものほど、時間が後になるようにして並べられている場合を示す。勿論、タイムスロット時間、タイムスロットの数、タイムスロット番号の付与の仕方などは特に限定されるものではない。
【0024】
図3は、第1の実施形態の無線端末101〜111の内部構成を示す内部構成図である。図3において、第1の実施形態の無線端末101〜111は、アンテナ部301、受信回路部302、送信回路部303、受信データ処理部304、送信データ生成部305、状態管理部306、を有して構成される。
【0025】
アンテナ部301は、無線信号を送信又は受信するためのアンテナ部であり、無線信号を受信すると受信信号を受信回路部302に与え、送信回路部303からの送信信号を無線信号として送信するものである。なお、アンテナ部301は、送受信用アンテナ部を適用する場合を説明するが、アンテナ部301として、送信用アンテナ部と受信用アンテナ部をそれぞれ適用してもよい。
【0026】
受信回路部302は、アンテナ部301からの受信信号に対して復調処理によりデジタル変換し、デジタルデータを受信データとして受信データ処理部304に与えるものである。
【0027】
受信データ処理部304は、受信回路部302から受け取った自端末宛の受信データに対して所定の処理を行い、必要なデータを状態管理部306に与えるものである。受信データ処理部304は、自端末宛以外の他端末宛のデータ信号を受け取った場合、状態管理部306から得られる情報に基づいて転送先を決定し、その転送先宛のデータ信号として送信データ生成部305に与えるものである。
【0028】
送信回路部303は、送信データ生成部305により生成された送信データを送信データ生成部305から受け取り、この送信データに対して変調処理をしてアンテナ部301に与えるものである。
【0029】
送信データ生成部305は、状態管理部306から得られる周辺端末情報を利用して、転送先宛の送信データを生成し、送信回路部303に与えるものである。送信データ生成部305は、状態管理部306の周辺端末情報を利用して、他端末宛のデータ信号の転送処理を行う。
【0030】
状態管理部306は、受信データ処理部304を介して、周辺の無線端末からの情報を収集し、この情報に基づいて、送信先端末を決定すると共に、自端末の受信期間を決定するものである。このように、状態管理部306が自端末の受信期間を決定することにより、その受信期間のみ無線機の電源をONに制御し、それ以外の期間は無線機の電源をOFFに制御することにより、消費電力を削減することができる。このような制御のために、たとえば電源管理部(図示せず)等公知の方法を用いることができる。
【0031】
図4は、状態管理部306が有する主な内部機能を示す機能ブロック図である。図4に示すように、状態管理部306は、周辺端末情報管理部31、受信スロット通知受信期間調整部32、送信先端末決定部33、受信スロット決定部34、を少なくとも有する。
【0032】
周辺端末情報管理部31は、周辺端末から収集した信号に基づいて、周辺の無線端末の情報を管理するものである。この周辺端末からの信号には、少なくとも周辺端末自身の受信スロットを示す情報(例えば、自端末に割り当てたタイムスロット番号)を含むものであり、この受信スロットを示す通知のことを受信スロット通知という。また、通信信号が、周辺端末自身を識別する端末識別情報、送信タイミング等を含むものであってよい。
【0033】
受信スロット通知受信期間調整部32は、周辺端末が送信する受信スロット通知を受信する時間を決定するものである。
【0034】
受信スロット通知の受信期間の決定方法としては、以下に示す方法のいずれかを適用することができる。
【0035】
(1−1)自端末が起動してから所定時間だけ受信スロット通知を受信する方法。この場合、受信スロット通知受信期間調整部32は、自端末の起動してから所定時間が経過すると、受信スロット通知の受信を受け付けないようにすることで実現することができる。これにより、全ての無線端末が時刻同期されている場合に、全ての無線端末間で受信スロット通知の受信期間を合わせることできる。
【0036】
(1−2)初めて受信スロット通知を受信してから所定時間だけ受信スロット通知を受信する方法。この場合、受信スロット通知受信期間調整部32は、自端末の起動後、周辺端末から受信スロット通知を最初に受信してから所定時間経過するまで、周辺端末からの受信スロット通知を受け付けるようにする。これにより、ネットワーク規模が大きくなると周辺端末の情報を受信できず、自端末の受信スロットを決定することができないという事態に対応できる。
【0037】
(1−3)初めて受信スロット通知を受信してから、当該受信スロット通知の示すタイムスロット番号から導出された時間まで受信スロット通知を受信する方法。この場合、受信スロット通知受信期間調整部32は、自端末の起動後、周辺端末から最初に受信した受信スロット通知のタイムスロット番号から当該周辺端末の受信スロットを判断し、その受信スロットになる時刻まで、周辺端末の受信スロット通知を受け付けるようにする。これにより、最初に受信した周辺端末の受信スロットに応じて、受信時間(すなわち、待ち時間)を変化させることができる。例えば、タイムスロット番号が小さいほど、待ち時間を少なくすることでネットワーク全体の遅延を削減することができる。
【0038】
(1−4)所定時間、受信スロット通知を受信しなくなるまで、受信スロット通知の受信を継続する方法。この場合、受信スロット通知受信期間調整部32は、直近の受信スロット通知の受信から所定時間経過しても周辺端末から受信スロット通知を受信できない場合に、受信スロット通知の受け付けをしないようにする。これにより、周辺端末の状況を充分に認識してから自端末の受信スロットの割り当てを行うことができる。
【0039】
(1−5)受信スロット通知を予め定められた回数だけ受信スロット通知を受信する方法。この場合、受信スロット通知受信期間調整部32は、受信スロット通知の受信回数を計数し、この受信回数が所定回数に達するまで、周辺端末の受信スロット通知を受け付けるようにする。
【0040】
なお、上記の受信スロット通知の受信期間の決定方法は、ネットワーク全体で予め統一しておくことが望ましい。しかし、必要に応じて、各無線端末において適用する決定方法を選択できるようにしてもよい。
【0041】
送信先端末決定部33は、周辺端末からの受信スロット通知に基づいて、自端末の送信先端末を決定するものである。
【0042】
送信先端末決定部33による送信先端末の決定方法としては、以下の方法のいずれかを適用することができる。
【0043】
(2−1)自端末が受信した受信スロット通知の中で、最も受信タイミングが早い受信スロットを通知した端末を送信先端末して決定する方法。この場合、送信先端末決定部33は、受信した周辺端末の受信スロット通知に基づいて各周辺端末のタイムスロット番号を判断する。そして、タイムスロット番号が最も小さいタイムスロットを持つ端末を送信先端末として決定するようにする。
【0044】
(2−2)自端末が受信した受信スロット通知を送信した端末からランダムに選択する方法。この場合、送信先端末決定部33は、周辺端末の受信スロット通知を受信すると、それら周辺端末の中からランダムに選択した端末を送信先端末とするようにする。
【0045】
(2−3)受信スロット通知に送信先端末(親)を含め、送信先端末候補のうち子となる端末数が少ない端末を選択する方法。
【0046】
受信スロット決定部34は、周辺端末からの受信スロット通知に基づいて、自端末の受信スロットとするタイムスロットを割り当てるものである。
【0047】
この受信スロット決定部34による受信スロットの割り当て方法としては、以下に示す方法のいずれかを適用することができる。
【0048】
(3−1)送信先端末の受信スロットの直前に自端末の受信スロットを割り当てる方法。この場合、受信スロット決定部33は、送信先端末決定部33により決定された送信先端末の受信スロットを示すタイムスロット番号を確認し、その送信先端末の受信スロットの直前に自端末の受信スロットを割り当てるようにする。
【0049】
(3−2)送信先端末の受信スロットから所定時間(ランダム時間又は固定時間)だけ離したタイムスロットを自端末の受信スロットとして割り当てる方法。この場合、受信スロット決定部33は、送信先端末決定部33により決定された送信先端末の受信スロットに基づいて、所定時間前の時刻に位置するタイムスロットを受信スロットとして割り当てるようにする。
【0050】
(3−3)送信先端末の受信スロットと先頭スロット(図2では番号「1」のタイムスロット)との間に、自端末の受信スロットとして割り当てる方法。この場合、受信スロット決定部34は、送信先端末決定部33により決定された送信先端末の受信スロットのタイムスロット番号を判断し、当該送信先端末の受信スロットと先頭スロットとの間のタイムスロットを自端末の受信スロットとして選択するようにする。このとき、受信スロット決定部34は、ランダムに受信スロットを選択するようにしてもよい。
【0051】
(3−4)送信先端末の受信スロットに近いスロットほど選択する確率を高くする確率密度関数を用いて、自端末の受信スロットを選択させる方法。
【0052】
(3−5)上記(3−1)〜(3−4)のいずれかの方法に加えて、周辺端末からの受信スロット通知に基づいて当該周辺端末のタイムスロット番号を除外して、その結果より自端末の受信スロットを割り当てる方法。
【0053】
(3−6)上記(3−1)〜(3−5)のいずれかの方法に加えて、スロットが不足している場合には、最も遅いスロット(例えば図2では番号「100」)に戻ってスロットを再利用する機能を加えた方法。
【0054】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の無線マルチホップネットワーク10における処理について図面を参照して説明する。図5は、第1の実施形態の各無線端末における処理を示すフローチャートである。
【0055】
以下では、図1に示す無線マルチホップネットワーク10の構成を例示して説明する。なお、図1(b)において、図中の直線が各無線端末と送信先端末の組を示し、矢印の方向は各無線端末から送信先端末へのデータ通信方向を示している。
【0056】
なお、各無線端末101〜111は、何らかの方法で時刻同期を取っているものとし、共通のタイムスロットを共有しているものとする。時刻同期を取る方法としては、種々の方法をとることができ、例えば、無線端末間で事前に時刻同期をとる方法や、周辺の無線端末間で授受し合う受信スロット通知に現在時刻を示す情報を乗せて行うことで、ネットワーク構成時に時刻同期を同時に行うことができる。
【0057】
まず、コーディネータ101は、自端末に最も遅いタイムスロット(図2では番号「100」)を受信スロットとして割り当て、周辺端末に通知する。この動作は、コーディネータ101だけが行う特別な動作である。
【0058】
コーディネータ101が送信した受信スロット通知を受信した各無線端末102及び103は、コーディネータ101の受信スロットであるタイムスロット番号に基づいて、自端末における送信先端末の決定及び自端末の受信スロットの決定を行い、自端末の受信スロットを含む受信スロット通知を周辺端末に送信する。
【0059】
さらに、無線端末102及び103が送信した受信スロットを受信した無線端末104〜107においても、同様に、自端末の送信先端末及び自端末の受信スロットを決定し、受信スロット通知を周辺端末に送信する。このような無線端末間の授受を行うことで、無線ネットワーク全体に処理を及ぼすことができる。
【0060】
次に、各無線端末102〜111における処理を、フローチャートを用いて詳細に説明する。
【0061】
各無線端末102〜111では、受信スロット通知の受信期間が調整されており(ステップS100)、周辺端末から受信スロット通知を所定数又は所定時間の間に受信すると、受信した受信スロット通知に基づいて送信先端末を決定し(ステップS200)、次に、自端末の受信スロットを決定し(ステップS300)、周辺端末に対して受信スロット通知を送信する。
【0062】
ここで、各無線端末102〜111における受信スロット通知の受信時間決定方法としては、上述したような種々の方法を適用することができる。
【0063】
上述した(1−1)の方法は、各無線端末の制御が単純になる点で有効である。また(1−2)の方法は、(1−1)の方法を適用する際に、ネットワーク規模が大きくなると周辺端末の情報を受信できないまま、自端末の受信スロットを決定してしまうおそれがあるが、これを解消できる点で有効である。(1−3)の方法は、送信先端末となり得る端末の受信スロットによって待ち時間を変換させることができる点で有効である。例えば、受信スロット番号が小さいほど待ち時間を少なくすることでネットワーク全体の遅延を削減することができる。(1−4)の方法は、十分に周辺の状況を認識してからスロット割り当てを行うことが可能となる。
【0064】
次に、各無線端末102〜111における送信先端末の決定方法について説明する。各無線端末102〜111における送信先端末の決定方法としては、上述したような種々の方法を適用することができる。
【0065】
この第1の実施形態の動作の説明では、図6を参照しながら、上述した(2−1)を用いた場合を例示する。
【0066】
まず、周辺端末から受信した受信スロット通知のタイムスロット番号に基づいて、各周辺端末の受信スロットを確認する(ステップS201)。
【0067】
各無線端末102〜111では、確認した各周辺端末の受信スロットのうち、最も受信タイミングが早い(すなわち、タイムスロット番号が最も小さい)無線端末を確認し(ステップS202)、この無線端末を送信先端末として決定する(ステップS203)。
【0068】
上述した(2−1)の決定方法によれば、送信先端末への通信が失敗したときでも、当該送信先端末より受信スロットが遅い(すなわちタイムスロット番号が大きい)端末が周辺に存在していれば、その端末に向けて送信できるので、代替経路を確保することができる点で有効である。この点について、図7を参照しながら説明する。
【0069】
図7(a)は、上記(2−1)の方法を利用しない場合のネットワーク構成である。図7(a)において、例えば、無線端末105は、無線端末102、103を周辺端末とするが、無線端末103を送信先端末として決定しているので、タイムスロット番号「97」で送信を行うものとする。そして、何らかの理由でスロット番号「97」での通信が失敗した場合、無線端末105の周辺に「98」、「99」番のタイムスロットで受信を行う無線端末は存在しないために、無線端末105は送信することができず、次回の「97」番のタイムスロットまで待機することとなる。
【0070】
一方、無線端末109は、無線端末104、105を周辺端末とし、その中から無線端末104を送信先端末としているため、タイムスロット番号「90」で送信を行うものとする。そして、仮にタイムスロット番号「90」の通信が失敗したとしても、「92」番のタイムスロットで受信する無線端末105が存在しているので、無線端末105に対して通信を行うことができる。このように、送信先端末以外の受信スロットが遅い端末に対して送信することができるので、遅延の増加を最小限に抑えつつ、代替経路を確保することが可能となる。また、上述した(2−3)の方法は特定の端末に通信負荷が集中することを避ける上では有効である。
【0071】
続いて、各無線端末102〜111では、自端末の受信スロットを決定する方法ついて説明する。各無線端末102〜111による自端末の受信スロット決定方法としては、上述したような種々の方法を適用することができる。
【0072】
この第1の実施形態の動作の説明では、図8を参照しながら、上述した(3−2)及び(3−5)を組み合わせた方法を適用した場合を例示する。
【0073】
まず、各無線端末102〜111において、送信先端末の受信スロットを確認する(ステップS301)と共に、周辺端末の受信スロットを確認する(ステップS302)。そして、送信先端末の受信スロットから所定時間だけ離れたスロットのうち、周辺端末の受信スロットを除外し(ステップS303)、残ったタイムスロットの中から自端末の受信スロットとするタイムスロットを選択する(ステップS304)。
【0074】
図7(a)は、各無線端末102〜111が(3−2)及び(3−5)を組み合わせた方法を用いてネットワークを構成した場合のネットワーク構成を例示するものである。
【0075】
また、図1(b)は、各無線端末102〜111が(3−2)の方法を用いてネットワークを構成した場合のネットワーク構成を例示するものであり、図7(b)と比較しながら説明する。
【0076】
例えば、コーディネータ101が受信スロット通知を送信すると、コーディネータ101の周辺に位置する無線端末102及び102が、コーディネータ101の受信スロット通知を受信する。
【0077】
このとき、図1(b)の場合、無線端末102及び103は、上記(3−2)の方法を適用しているので、同じタイムスロット番号「97」を自端末の受信スロットとして設定する。その結果、無線端末104から無線端末102への通信タイミングと、無線端末105から無線端末103への通信タイミングとは同時に行なわれ、図中の点線の経路上に干渉信号が同時に発生し、通信が成功しづらくなる場合がある。
【0078】
一方、図7(a)においては、自端末の受信スロットを決定する方法として、上述(3−2)に加えて(3−5)を用いた例である。図中の点線は受信スロット通知の送受信を示している。まず、コーディネータ101が受信スロット通知を送信した後、無線端末103がタイムスロット番号「97」を確保し、無線端末103が番号「97」とする受信スロット通知を周辺端末に送信する。従って、無線端末102は、タイムスロット番号「100」以下、かつタイムスロット番号「97」以外のタイムスロット番号から、自端末の受信スロットを選択する。このようにすることで、図1(b)で発生したような受信スロットの競合を避けることができる。
【0079】
また、図7(b)は、送信先端末の選択方法として上記(2−1)の方法を適用する場合のネットワーク構成を示す。無線端末110から無線端末101までの中継回数は、図7(a)では2回だったのと比較して、図7(b)では3回になるなど経路が冗長となっているが、代替経路は多く確保されている。例えば、無線端末110は、無線端末111への送信に失敗しても、無線端末106、105への通信を試みることができる。
【0080】
上述の(3−1)の方法は、自端末の受信スロットを決定するまでの遅延時間を最小限に抑えることが可能となる点で有効である。また、(3−1)の方法は、例えば図1(b)に示したように、パケットの衝突が発生しやすくなる問題があるが、これに対して、(3−2)、(3−3)の方法は、(3−1)の問題を一部解消することができる。また、(3−2)、(3−3)の方法は、コーディネータ101の受信スロットに近いスロットの利用効率が低下することが問題となるが、(3−4)の方法は、この問題を解決することができる。(3−5)の方法は、パケットの衝突を減少させることができる。(3−6)の方法はネットワーク規模が大きくなった場合に有効である。
【0081】
なお、上述したように、受信スロット通知の受信期間の決定方法、送信先端末の決定方法、受信スロットの決定方法はそれぞれ種々の方法を適用することができ、又、受信スロット通知の受信期間の決定方法、送信先端末の決定方法、受信スロットの決定方法に用いた方法の組み合わせパターンも種々の組み合わせパターンを適用することができる。
【0082】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のようにして、第1の実施形態によれば、従来のマルチホップネットワークと比較して、パケットの中継を行う端末において受信機の電源を入れる時間を特定のスロットに限ることが可能となり、消費電力を大幅に削減することができる。従来のTDMA方式は各端末の送信タイミングを決定するものであったために、複数の端末からのパケットを受信する可能性のある無線端末の受信待機時間は増加していたが、第1の実施形態の方法により消費電力の増加を抑えることが可能となる。
【0083】
また、第1の実施形態によれば、一般的にTDMA方式を用いると通信遅延が増加する問題があるが、第1の実施形態では、各無線端末の受信タイミングがデータが流れる方向(各端末からコーディネータ)に合わせて設定されるので、消費電力の増加と遅延の増加を同時に抑えることが可能となっている。また、通信が失敗した場合に生じる遅延の増加も代替経路を確保することで大幅に削減することが可能となる。
【0084】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の無線通信装置、方法及びプログラム、並びに無線ネットワークの第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0085】
第2の実施形態では、無線マルチホップ方式を採用した無線ネットワークを構成する無線端末に本発明を適用した場合の実施形態を例示して説明する。
【0086】
(B−1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態は、基本的には、図3及び図4に示す第1の実施形態の無線端末の機能構成を備えるものであるが、各構成要件の詳細な処理が第1の実施形態と異なる。そこで、第2の実施形態では、図3及び図4を用いながら、第1の実施形態と異なる各構成要件の処理を詳細に説明する。
【0087】
第2の実施形態の各無線端末101〜111は、自端末の受信スロットの割り当て前に、周辺の無線端末と端末情報の授受を行い、これにより得られた端末情報を利用して自端末の受信スロットの割り当てを行うことを特徴とする。
【0088】
第2の実施形態の各無線端末101〜111は、第1の実施形態と同様に、図3に示す構成を備えており、図4に示すように状態管理部306が備える機能部として、周辺端末情報管理部31、受信スロット通知受信期間調整部32、送信先端末決定部33、受信スロット決定部34を備える。
【0089】
周辺端末情報管理部31は、周辺端末との間で端末情報の授受をさせるものであり、自端末に関する情報を周辺端末に知らせると共に、周辺端末に関する情報を管理するものである。
【0090】
ここで、周辺端末との間で端末情報を授受する方法としては、以下に示すような方法を適用することができる。
【0091】
第1の方法は、周辺端末情報管理部31は、周辺端末から端末情報(第1の端末情報)を受信すると、自端末の端末識別情報を含む第1の端末情報を周辺端末に送信する方法である。
【0092】
第2の方法は、周辺端末情報管理部31が第1の端末情報を送信する方法であり、第1の端末情報には、コーディネータ101からの中継回数を含むようにする方法である。この場合、コーディネータ101は、中継回数の値として「0」を端末情報に含んで送信するものとし、その後、端末情報を受信した無線端末において、受信した端末情報の中で中継回数が最も小さいものに「1」を加えて、更に端末情報を送信することで実現することができる。
【0093】
第3の方法は、周辺端末情報管理部31は、第1又は第2の方法により第1の端末情報の送受信後に、自端末の端末識別情報と、第1の端末情報の授受により取得した周辺端末の端末識別情報とを含む第2の端末情報を送信する方法である。
【0094】
第4の方法は、周辺端末情報管理部31は、第2の方法により第1の端末情報の送受信後に、一定時間待機する。そして、待機中に、自端末より中継回数の多い端末から端末情報を受信しなかった場合(すなわち、自端末がネットワークの末端部に位置している場合)、かつ、一度も第2の端末情報を受信しなかった場合に限って、第2の端末情報を送信する。
【0095】
第2の端末情報を受信した端末は、所定時間待機した後、第2の端末情報を送信する。この結果、全ての無線端末が第2の端末情報を1度づつ送信することになる。第2の端末情報には、周辺端末に関する情報、自端末の送信先端末の端末識別情報を含めることができる。第2の端末情報を受信した端末は、この第2の端末情報を集積することで、各無線端末を送信先端末とする端末の数(子の数)を求めることが可能となる。
【0096】
受信スロット通知受信期間調整部32は、第1の実施形態と同様に、受信スロット通知の受信期間を決定するものであり、第1の実施形態で説明した方法を適用するものである。
【0097】
さらに、第2の実施形態では、受信スロット通知受信期間調整部32が、第1の端末情報及び又は第2の端末情報に基づいて、さらに以下の受信スロット通知の受信時間を決定する方法を適用することができる。なお、以下の()の数字は、第1の実施形態で示した番号の連番である。
【0098】
(1−6)自端末の周辺端末数が多いほど待機時間を短く設定する方法(端末情報の送受信方法として、第1の方法〜第4の方法の場合に適用できる)。この場合、受信スロット通知受信時間調整部32は、予め設定値を定めておき、第1の端末情報及び又は第2の端末情報に基づいて周辺端末数を算出し、周辺端末数が設定値を超える場合には待機時間を短くし、設定値以下の場合には待機時間を長くするようにする。なお、複数の設定値を設定して各設定値に応じた待機時間を設定しておき、周辺端末数に応じて待機時間を決定するようにしてもよい。
【0099】
(1−7)自端末の周辺端末数と各周辺端末に隣接する端末数の合計が多いほど待機時間を短く設定する方法(端末情報の送受信方法として、第3、第4の方法の場合に適用できる)。この場合、受信スロット通知受信期間調整部32は、第2の端末情報に基づいて周辺端末数及び各周辺端末の隣接する端末数を算出する。そして、周辺端末数及び各周辺端末の隣接する端末数の合計が、予め定めた設定値を超えている場合には待機時間を短くし、設定値以下の場合には待機時間を長くするようにする。なお、設定値については複数設定するようにしてもよい。
【0100】
(1−8)自端末の子となる端末数が多いほど待機時間を短く設定する方法(端末情報の送受信方法として、第4の方法の場合に適用できる)。この場合、受信スロット通知受信期間調整部32は、第2の端末情報に基づいて自端末を送信先端末とする端末数(すなわち、子となる端末数)を算出し、自端末の子端末数が、予め設定された設定値を超えている場合には待機時間を短くし、設定値以下の場合には待機時間を長くするようにする。なお、設定値について複数設定するようにしてもよい。
【0101】
(1−9)上記(1−1)〜(1−8)の方法を任意に組み合わせる方法。
【0102】
送信先端末決定部33は、第1の実施形態と同様に、送信先端末を決定するものであり、第1の実施形態で説明した方法を適用するものである。
【0103】
さらに、第2の実施形態では、送信先端末決定部33が、第1の端末情報及び又は第2の端末情報に基づいて、さらに以下の方法により送信先端末を決定する方法を適用することができる。なお、以下の()の数字は、第1の実施形態で示した番号の連番である。
【0104】
(2−7)周辺端末数が少ない端末を優先的に選択する方法(端末情報の送受信方法として、第1の方法〜第3の方法の場合に適用できる)。送信先端末決定部33は、第1の端末情報及び又は第2の端末情報に基づいて各周辺端末に隣接する端末数を各周辺端末毎に求める。そして、各周辺端末に隣接する端末数が最も少ない周辺端末を送信先端末として決定するようにする。
【0105】
(2−8)コーディネータ101からの転送回数(ホップ数)が最も少ない端末から選択する方法(端末情報の送受信方法として、第2、第3の方法の場合に適用できる)。この場合、送信先端末決定部33は、第1及び第2の端末情報に基づいてコーディネータ101から各周辺端末までの転送回数を求め、転送回数が最も少ない端末を送信先端末として決定するようにする。
【0106】
(2−9)上記(2−1)〜(2−8)の方法を任意に組み合わせる方法。
【0107】
受信スロット決定部34は、第1の実施形態と同様に、自端末の受信スロットを決定するものであり、第1の実施形態で説明した方法を適用するものである。
【0108】
さらに、第2の実施形態では、受信スロット決定部34が、第1の端末情報及び又は第2の端末情報に基づいて、さらに以下の方法により自端末の受信スロットを決定する方法を適用することができる。なお、以下の()の数字は、第1の実施形態で示した番号の連番である。
【0109】
(3−7)送信先端末の受信スロットに近いスロットほど選択される確率が高くなると共に、周辺端末数が多いほど受信スロットに近いスロットを選択する確率が高くなる確率密度関数によって決定する方法(端末情報の送受信方法として、第1の方法〜第3の方法の場合に適用できる)。
【0110】
(3−8)送信先端末の受信スロットから自端末の子となる端末数(子数が「0」の場合「1」とする)だけ離れたスロットを選択する方法(端末情報の送受信方法として、第4の方法の場合に適用できる)。この場合、受信スロット決定部34は、第1の端末情報及び第2の端末情報に基づいて自端末の子端末数を算出し、送信先端末の受信スロットから子端末数に応じた分だけ離れたスロットを決定するようにする。
【0111】
(3−9)送信先端末の受信スロット又は周辺端末からの受信スロット通知のうち、最も受信の早いスロットから自端末の子となる端末数(子数が「0」の場合「1」とする)だけ離れたスロットを選択する方法(端末情報の送受信方法として、第4の方法の場合に適用できる)。この場合、受信スロット決定部34は、第1の端末情報及び又は第2の端末情報に基づいて自端末の子端末数を算出し、送信先端末又は各周辺端末の受信スロットのうち最も早い受信スロットから、子端末数に応じた分だけ離れたスロットを決定するようにする。
【0112】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態の無線マルチホップネットワークにおける処理について図面を参照して説明する。
【0113】
図10は、第2の実施形態の各無線端末における処理を示すフローチャートである。
【0114】
まず、各無線端末101〜111は、受信スロット通知の送受信をする前に、周辺端末の情報を収集するために端末情報の送受信を行う(ステップS400)。
【0115】
各無線端末101〜111は、上述した第1の方法〜第4の方法のいずれかを適用して周辺端末との間で端末情報の送受信を行うと、各無線端末101〜111において、受信スロット通知の受信時間の決定処理(ステップS100)、送信先端末の決定処理(ステップS200)及び自端末の受信スロットの決定処理(ステップS300)を行う。
【0116】
ただし、上記第4の方法により端末情報の送受信を行う場合おいては、各無線端末101〜111では、送信先端末の選択処理は第2の端末情報の送信時に終了しているものとする。
【0117】
図9は、第2の実施形態の無線マルチホップネットワーク20の構成を示す構成図である。図9は、各無線端末間で第4の方法により端末情報の送受信を行い、(3−8)による受信スロットの決定方法を行う場合の例を示す。
【0118】
なお、図9において、直線が各無線端末と送信先端末の組を示す。図9(a)に示す丸の中の数字はコーディネータ101からの転送回数を示し、図9(b)に示す丸の中の数字はタイムスロット番号を示す。また、図9(b)における点線は受信スロット通知を示している。
【0119】
この例の場合、無線端末103は子端末が3台(無線端末105、106、107)存在するために、親となるコーディネータ101の受信スロットから「4」だけ離れたタイムスロット番号「97」を確保する。そして、無線端末103は、タイムスロット番号「97」に受信が存在した場合には、タイムスロット番号「98」でも受信を行う。
【0120】
一方、無線端末103が送信する受信スロット通知には子端末が3台存在することを含めることができる。これによって、子端末は無線端末103がタイムスロット番号「97」〜「99」の3つのタイムスロットを確保していることを認識し、タイムスロット番号「97」での通信が失敗した場合にも再送を行うことができる。
【0121】
しかし、上記の方法を行う場合、パケットの衝突を回避することのできない状況がある。図9(b)において、点線はパケット衝突の発生する経路を示している。
【0122】
図9(b)では、無線端末110と無線端末111とは、同じタイムスロット番号「96」で無線端末105と無線端末106とにデータ送信を行う。この2つの送信信号は無線端末105、106の双方が受信可能であり、パケット衝突が発生する。
【0123】
図11(a)は、上記第4の方法により端末情報の送受信を行い、上記(3−9)の方法による受信スロット決定方法を行う場合の例を示す。図11(a)において、点線はスロット割り当てに影響を及ぼす受信スロット通知の送受信関係を示す。
【0124】
無線端末103は、無線端末102からの受信スロット通知を受けて、タイムスロット番号「99」を避け、タイムスロット番号「96」,「97」,「98」を用いている。周辺端末のスロット割り当て結果を用いることで、近接した端末が同じスロットを利用することを避け、パケット衝突を回避できていることがわかる。
【0125】
図11(b)は、上記第4の方法により端末情報の送受信を行い、上記(3−9)の方法による受信スロット決定方法を行い、各無線端末の待機時間について(1−8)の方法を用いて設定した場合の例を示している。
【0126】
図11(b)の場合と図11(a)の場合とを比較すると、無線端末102と無線端末103の受信スロット確保の順番が逆になっている。すなわち、図11(b)では子の数が多い無線端末103が先に受信スロットを確保している。
【0127】
その結果として、ネットワーク全体の遅延を小さくすることができている。つまり、図11(a)では、ネットワーク全体に、タイムスロット番号「100」〜「89」までのタイムスロットを割り当てているのに対し、図11(b)では、タイムスロット番号「100」〜「91」までの割り当てでよくなっており、ネットワークの遅延を小さくできている。
【0128】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した効果に加えて、次のような効果を得ることができる。
【0129】
第2の実施形態によれば、周辺端末の情報を事前に収集してから受信スロットを割り当てることによって、第1の実施形態と比較してよりパケットの衝突を削減することが可能となる。特に各端末の親子関係を事前に確定させることで、子となる端末数に応じた受信スロット数を確保することが可能となり、通信頻度が高いネットワークにおいてもパケットの衝突を最小限に抑えることが可能となる。
【0130】
(C)他の実施形態
(C−1)第1の実施形態において、各無線端末が送信する受信スロット通知に、コーディネータ101からの転送回数を付加するようにしてもよい。具体的には、受信スロット通知を送信するまでに受信した受信スロット通知に含まれる転送回数のうち最も小さいものに「1」を加えた数を自端末の転送回数とする。また例えば、送信先端末として選択した端末の受信スロット通知に含まれる転送回数に「1」を加えた数を自らの転送回数とする。このようにすることで実現することができる。
【0131】
(C−2)上記のように、受信スロット通知に転送回数を含めることにより、送信先端末決定方法として、以下の処理を行うようにしてもよい。
【0132】
(2−5)無線端末が受信した受信スロット通知の中で最も転送回数が少ない無線端末の中から選択する方法。
【0133】
(2−6)(2−1)〜(2−4)の方法に(2−5)の方法を加えた方法。
【0134】
上記のような構成を取ることで転送経路が冗長になることを避けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】第1の実施形態のネットワークの構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施形態のタイムスロットを説明する説明図である。
【図3】第1の実施形態の無線端末の内部構成を示す内部構成図である。
【図4】第1の実施形態の状態管理部の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図5】第1の実施形態の各無線端末における処理を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態の送信先端末の決定処理を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態の送信先端末の決定処理を説明するためのネットワーク構成図である。
【図8】第1の実施形態の自端末の受信スロット通知を決定処理を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態のネットワークの構成を示す構成図である。
【図10】第2の実施形態の各無線端末における処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態の受信スロットの決定処理を示すネットワーク構成図である。
【符号の説明】
【0136】
101〜111…無線端末、301…アンテナ部、302…受信回路部、303…送信回路部、304…受信データ処理部、305…送信データ生成部、306…状態管理部、31…周辺端末情報管理部、32…受信スロット通知受信時間調整部、33…送信先端末決定部、34…受信スロット決定部、10及び20…無線マルチホップネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークを構成する複数の無線端末のそれぞれが備える無線通信装置において、
周辺の無線端末に自端末の受信期間を示す受信スロット情報を送信する受信スロット情報通信手段と、
周辺の無線端末からの上記受信スロット情報に基づいて、周辺の無線端末の中から自端末の送信先端末を決定する送信先端末決定手段と、
上記送信先端末決定手段により決定された上記送信先端末の受信スロット情報に基づいて、上記送信先端末の受信スロットの前に自端末の受信スロットを決定する受信スロット決定手段と、
自端末の受信スロットにおいてデータ信号の転送処理を行う転送処理手段と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
上記受信スロット決定手段が、上記送信先端末の受信スロットより前の受信スロットを確率的に選択するものであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
上記受信スロット決定手段が、上記送信先端末の受信スロットとの時間差が小さくなるようなスロットを選択する確率関数を用いるものであることを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
上記受信スロット決定手段が、上記送信先端末の受信スロットから所定時間だけ離れたスロットを選択するものであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
周辺の無線端末との間で端末情報を授受する端末情報通信手段と、
周辺の無線端末からの上記端末情報に基づいて、周辺に存在する無線端末の存在状況を判断する端末情報管理手段と
を備え、
上記受信スロット決定手段が、周辺に存在する無線端末の状況に応じて、自端末の受信スロットを決定するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項6】
上記受信スロット決定手段が、自端末と直接通信可能な無線端末数が増えるにつれ、上記送信先端末の受信スロットとの時間差が小さくなるスロットを選択する関数を用いるものであることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
上記受信スロット決定手段が、自端末と直接通信可能な無線端末数に応じて、上記送信先端末の決定から自端末の受信スロットまでの遅延時間を変化させるものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
上記端末情報管理手段が、受信した端末情報に基づいて自端末を送信先とする子端末数を判断するものであり、
上記受信スロット決定手段が、上記子端末数が増えるにつれ、上記送信先端末の受信スロットとの時間差が小さくなるスロットを選択する関数を用いるものである
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項9】
上記受信スロット決定手段が、上記送信先端末の受信スロットから、上記子端末数に応じたスロット数だけ離れたスロットを選択するものであることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項10】
上記送信先端末決定手段が、受信した上記受信スロット情報のうち、最も受信スロットが早い位置に設定されているものを送信先端末として決定するものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項11】
上記送信先端末決定手段が、受信スロットの決定前に、周辺の無線端末からの上記端末情報に基づいて、送信先端末を決定するものであることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項12】
上記受信スロット決定手段が、周辺の無線端末の受信スロット情報に基づいて当該周辺の無線端末の受信スロットも判断し、その判断結果を用いて自端末の受信スロットを決定するものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項13】
無線ネットワークを構成する複数の無線端末のそれぞれが備える無線通信装置の無線通信方法において、
上記無線通信装置が、受信スロット情報通信手段、送信先端末決定手段、受信スロット決定手段及び転送処理手段を備え、
上記受信スロット情報通信手段が、周辺の無線端末との間で自端末の受信期間を示す受信スロット情報を授受する受信スロット情報通信工程と、
上記送信先端末決定手段が、周辺の無線端末からの上記受信スロット情報に基づいて、周辺の無線端末の中から自端末の送信先端末を決定する送信先端末決定工程と、
上記受信スロット決定手段が、上記送信先端末決定手段により決定された上記送信先端末の受信スロット情報に基づいて、上記送信先端末の受信スロットの前に自端末の受信スロットを決定する受信スロット決定工程と、
上記転送処理手段が、自端末の受信スロットにおいてデータ信号の転送処理を行う転送処理工程と
を有することを特徴とする無線通信方法。
【請求項14】
無線ネットワークを構成する複数の無線端末のそれぞれが備える無線通信装置の無線通信プログラムにおいて、
コンピュータを、
周辺の無線端末との間で自端末の受信期間を示す受信スロット情報を授受する受信スロット情報通信手段、
周辺の無線端末からの上記受信スロット情報に基づいて、周辺の無線端末の中から自端末の送信先端末を決定する送信先端末決定手段、
上記送信先端末決定手段により決定された上記送信先端末の受信スロット情報に基づいて、上記送信先端末の受信スロットの前に自端末の受信スロットを決定する受信スロット決定手段、
自端末の受信スロットにおいてデータ信号の転送処理を行う転送処理手段
として機能させることを特徴とする無線通信プログラム。
【請求項15】
複数の無線端末を有して構成される無線ネットワークにおいて、上記各無線端末が、上記無線端末間で情報を交換し合う請求項1〜12のいずれかに記載の無線通信装置を備えるものであることを特徴とする無線ネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−188924(P2009−188924A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29384(P2008−29384)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】