説明

無線通信装置、無線ネットワークシステム及び通信処理方法

【課題】Helloメッセージ等を送信せずに、ノードの負荷状態を把握して再ブロードキャストを効率良く実行するフラッディング機能を実装した無線通信装置及び無線ネットワークシステムを提供する。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係る無線通信装置は、無線通信部と、送信キューに対する送信待ちパケット数を記憶する記憶部と、送信待ちパケット数を計数する計数部と、送信待ちパケット数に対する閾値を設定する閾値設定部と、送信待ちパケット数と閾値とを比較し、該比較結果に基づいてメッセージを再送信する確率を設定する確率設定部と、送信待ちパケット数と閾値とを比較し、該比較結果に基づいてメッセージの再送信を待機する待機時間を設定する待機時間設定部と、確率設定部により設定された確率と待機時間設定部により設定された待機時間に基づいて無線通信部におけるメッセージの再送信処理を制御する通信制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アドホックネットワークに用いられる無線通信装置、無線ネットワークシステム及び通信処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アドホックネットワークは、通信網や基地局に依存せずに、複数の無線通信装置のみが集まることにより構成されるネットワークである。このアドホックネットワークにおいて、ネットワーク全体にメッセージを配信する方式として、フラッディング(Simple flooding)が提案されている。このSimple flooding方式では、ノードが受信したメッセージに含まれる開始ノードIDとメッセージIDを調べ、以前に受信した同一メッセージである場合、そのメッセージを廃棄し、同一メッセージでない場合、そのメッセージを再ブロードキャストしている。Simple flooding方式は、ノードが高密度な状態で存在する場合、ひとつのノードが同一メッセージを複数回受信することがあり、効率が良くない。
【0003】
上述のSimple flooding方式に対して、冗長な再ブロードキャストの抑制や、メッセージ配信の効率化を図った様々な改良方式が検討されている。例えば、指定した再ブロードキャスト確率prob に基づいて再ブロードキャストを行うProbabilistic schemeが提案されている(例えば、非特許文献1〜3)。このProbabilistic schemeでは、ノードが予め設定された確率に基づいて、再ブロードキャストの可否を判断することにより、再ブロードキャストの抑制を実現している。また、Probabilistic schemeを改良したDynamic Probabilistic broadcast algorithm が提案されている(例えば、非特許文献4)。このDynamic Probabilistic broadcast algorithm では、各ノードが周期的にHello メッセージを送信して周囲のノードを認識し、周囲のノード数をもとに確率probを動的に決定するようにしている。
【0004】
また、Counter-based schemeが提案されている(例えば、非特許文献1〜3)。このCounter-based schemeでは、同一メッセージの受信回数に基づいて、再ブロードキャストの可否の判断を行っている。具体的には、ノードは、あるメッセージを受信した際に、counterを初期化し、ランダム時間の間に同一メッセージを受信する毎にcounterを加算し、そのカウント値が閾値c_thresholdに達した場合、再ブロードキャストを中止し、そのカウント値が閾値c_thresholdに達していない場合、再ブロードキャストを行うようにしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Brad Williams, Tracy Camp, “Comparison of Broadcasting Technics for Mobile Ad Hoc Networks”, Proceedings of the 3rd ACM International Symposium on Mobile Ad Hoc Networking and Computing, pp.194-205, 2002
【非特許文献2】YU-CHEE TSENG, SZE-YAO NI, YUH-SHYAN CHEN, JANG-PINIG-SHEU, “The Broadcast Problem in a Mobile Ad Hoc Network”, Wireless Networks Volume 8, Springer, pp.153-167, Kluwer Academic Publishers, 2002
【非特許文献3】Yu-Chee Tseng, Sze-Yao NI, En-Yu Shih, “Adaptive Approaches to Relieving Broadcast Storm in a Wireless Multihop Mobile Ad Hoc Network”, IEEE Transactions on Computer, Vol. 52, No. 5, pp.545-556, 2003
【非特許文献4】Abdalla M. Hanashi, Aamir Siddique, Irfan Awan, Mike Woodward, “Performance evaluation of dynamic probabilistic broadcasting for flooding in mobile ad hoc networks”, Simulation Modeling Practice and Theory 17(2009), pp.364-375, Elsevier, 2009
【非特許文献5】Yu-Chee Tseng, Sze-Yao Ni, En-Yu Shih, “Adaptive Approachesto Relieving Broadcast Storm in a Wireless Multihop Mobile Ad Hoc Network”, IEEE Transaction on Computers, Vol.52, No. 5, pp.545-556, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記Probabilistic schemeでは、複数のノードの集まりが低密度である場合、各ノードの電波到達範囲の重複が小さくなるため、確率probの値が小さいとメッセージの到達率が低くなる。一方、複数のノードの集まりが高密度である場合、確率probの値が大きいと冗長なブロードキャストが多くなる。すなわち、Probabilistic schemeでは、確率probの設定と、メッセージの到達率はトレードオフとなり、この点で改善が必要である。
【0007】
また、Probabilistic schemeを改良したDynamic Probabilistic broadcast algorithmでは、各ノードが周期的にHello メッセージを送信するため、各ノードの電池消費が進み、無線リソースの有効活用の点で好ましくない。このため、Hello メッセージを送信せずに、動的に確率probの最適値を決定する方式が望ましい。
【0008】
また、Counter-based schemeでは、閾値c_thresholdの設定が性能に大きく影響する。すなわち、複数のノードの集まりが低密度の場合、閾値c_thresholdが小さいと、再ブロードキャストの抑制効果は大きくなるが、メッセージの到達率は低くなる。一方、複数のノードの集まりが高密度の場合、閾値c_thresholdの設定値による到達率への影響は小さい。この方式では、閾値c_thresholdが固定値になっているため、メッセージの到達率と再ブロードキャストの抑制効果がトレードオフになっている。
【0009】
このCounter-based schemeを改良する方式として、例えば、閾値c_thresholdを動的に決定するAdaptive Counter-based scheme(例えば、非特許文献5)が提案されている。この方式では、各ノードが周期的にHelloメッセージを送信し、そのHelloメッセージを受信したノードは周囲のノードを認識し、この情報に基づいて再ブロードキャストの可否を判断している。しかし、このAdaptive Counter-based schemeを含む上記方式では、同一メッセージに対して再ブロードキャストの効率化を図っているだけであり、種々のメッセージが同時に生起した場合、ネットワーク上の輻輳を回避できないことが予想される。
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、Helloメッセージ等を送信せずに、ノードの負荷状態を把握して再ブロードキャストを効率良く実行するフラッディング機能を実装した無線通信装置、無線ネットワークシステム及び通信処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る無線通信装置は、複数の他の無線通信装置に対してメッセージを再送信する無線通信装置において、無線通信部と、送信キューに対する送信待ちパケット数を記憶する記憶部と、前記送信待ちパケット数を計数する計数部と、前記送信待ちパケット数の閾値を設定する閾値設定部と、前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージを再送信する確率を設定する確率設定部と、前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージの再送信を待機する待機時間を設定する待機時間設定部と、前記確率設定部により設定された前記確率と前記待機時間設定部により設定された前記待機時間に基づいて前記無線通信部における前記メッセージの再送信処理を制御する通信制御部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る無線通信装置は、複数の他の無線通信装置に対してメッセージを再送信する無線通信装置において、無線通信部と、送信キューに対する送信待ちパケット数を記憶する記憶部と、前記送信待ちパケット数を計数する計数部と、前記メッセージの受信回数を計数する受信回数計数部と、前記送信待ちパケット数に対する閾値を設定する閾値設定部と、前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージの再送信の可否を判定する再送信可否判定時間を設定する判定時間設定部と、前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記受信回数に対する閾値を設定する受信回数閾値設定部と、前記判定時間設定部により設定された前記再送信可否判定時間と前記受信回数閾値設定部により設定された前記受信回数閾値に基づいて前記無線通信部における前記メッセージの再送信処理を制御する通信制御部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施の形態に係る無線ネットワークシステムは、前記無線通信装置を複数配置し、前記複数の無線通信装置の相互間で無線通信ネットワークを形成してメッセージを配信することを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施の形態に係る無線ネットワークシステムは、前記無線通信装置を複数配置し、前記複数の無線通信装置の相互間で無線通信ネットワークを形成して同一のメッセージを配信することを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る通信処理方法は、複数の他の無線通信装置に対してメッセージを再送信する無線通信装置における通信処理方法であって、送信キューに対する送信待ちパケット数と前記送信待ちパケット数に対する閾値を記憶し、前記送信待ちパケット数を計数し、前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージを再送信する確率を設定し、前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージの再送信を待機する待機時間を設定し、前記設定された確率と前記設定された待機時間に基づいて前記メッセージの再送信処理を制御することを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る通信処理方法は、複数の他の無線通信装置に対してメッセージを再送信する無線通信装置における通信処理方法であって、送信キューに対する送信待ちパケット数と前記送信待ちパケット数に対する閾値を記憶し、前記送信待ちパケット数を計数し、前記メッセージの受信回数を計数し、前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージの再送信の可否を判定する再送信可否判定時間を設定し、前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記受信回数に対する閾値を設定し、前記設定された再送信可否判定時間と前記設定された受信回数閾値に基づいて前記メッセージの再送信処理を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、Helloメッセージ等を送信せずに、ノードの負荷状態を把握して再ブロードキャストを効率良く実行するフラッディング機能を実装する無線通信装置、無線ネットワークシステム及び通信処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置の要部構成を示す図である。
【図2】図1の制御部内の要部構成を示す図である。
【図3】図1のLDPFテーブルの一例を示す図である。
【図4】図1の無線通信装置において実行されるLDPF処理を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態に係るシミュレーショントポロジーの一例を示す図である。
【図6】第1の実施の形態に係るLDPF方式と従来のSF方式の各評価結果を示す図である。
【図7】図6の各評価結果の平均値を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る無線通信装置の要部構成を示す図である。
【図9】図8の制御部内の要部構成を示す図である。
【図10】図8のLDCFテーブルの一例を示す図である。
【図11】図8の無線通信装置において実行されるLDCF処理を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施の形態に係るLDCF方式と従来のSF方式の各評価結果を示す図である。
【図13】図12の各評価結果の平均値を示す図である。
【図14】本発明の実施例に係るLDPF方式と従来のSF方式の各評価結果を示す図である。
【図15】実施例1に係るLDPF方式のメッセージ到達率R(Reachability)[%]の評価結果を示す図である。
【図16】実施例1に係るLDPF方式の配信時間D(Delivery time)[s]の評価結果を示す図である。
【図17】実施例1に係るLDCF方式と従来のSF方式の各評価結果を示す図である。
【図18】実施例1に係るLDCF方式のメッセージ到達率R(Reachability)[%]の評価結果を示す図である。
【図19】実施例1に係るLDCF方式の配信時間D(Delivery time)[s]の評価結果を示す図である。
【図20】実施例2に係るシミュレーション条件の一例を示す図である。
【図21】実施例2に係るLDPF方式におけるノードの再ブロードキャスト確率の設定例を示す図である。
【図22】実施例2に係るSF方式とLDPF方式の到達率Rの比較結果を示す図である。
【図23】実施例2に係るSF方式のPaとLDPF方式のP1及びP2の到達率Rの比較結果を示す図である。
【図24】実施例2に係るSF方式のPbとLDPF方式のP3及びP4の到達率Rの比較結果を示す図である。
【図25】実施例2に係るSF方式のPcとLDPF方式のP5の到達率Rの比較結果を示す図である。
【図26】実施例2に係るSF方式とLDPF方式のブロードキャストノード率Bの比較結果を示す図である。
【図27】実施例2に係るSF方式のPaとLDPF方式のP1及びP2のブロードキャストノード率Bの比較結果を示す図である。
【図28】実施例2に係るSF方式のPbとLDPF方式のP3及びP4のブロードキャストノード率Bの比較結果を示す図である。
【図29】実施例2に係るSF方式のPcとLDPF方式のP5のブロードキャストノード率Bの比較結果を示す図である。
【図30】実施例2に係るSF方式とLDPF方式の効率Eの比較結果を示す図である。
【図31】実施例2に係るSF方式のPaとLDPF方式のP1及びP2の効率Eの比較結果を示す図である。
【図32】実施例2に係るSF方式のPbとLDPF方式のP3及びP4の効率Eの比較結果を示す図である。
【図33】実施例2に係るSF方式のPcとLDPF方式のP5の効率Eの比較結果を示す図である。
【図34】実施例2に係るSF方式とLDPF方式のノードあたりの平均配信時間Dの比較結果を示す図である。
【図35】実施例2に係るSF方式のPaとLDPF方式のP1及びP2のノードあたりの平均配信時間Dの比較結果を示す図である。
【図36】実施例2に係るSF方式のPbとLDPF方式のP3及びP4のノードあたりの平均配信時間Dの比較結果を示す図である。
【図37】実施例2に係るSF方式のPcとLDPF方式のP5のノードあたりの平均配信時間Dの比較結果を示す図である。
【図38】実施例2に係るノードのカウンタ値の設定例を示す図である。
【図39】実施例2に係るSF方式とLDPF方式の到達率Rの比較結果を示す図である。
【図40】実施例2に係るSF方式のCaとLDPF方式のC1及びC2の到達率Rの比較結果を示す図である。
【図41】実施例2に係るSF方式のCbとLDPF方式のC3及びC4の到達率Rの比較結果を示す図である。
【図42】実施例2に係るSF方式のCcとLDPF方式のC5の到達率Rの比較結果を示す図である。
【図43】実施例2に係るSF方式とLDPF方式のブロードキャストノード率Bの比較結果を示す図である。
【図44】実施例2に係るSF方式のCaとLDPF方式のC1及びC2のブロードキャストノード率Bの比較結果を示す図である。
【図45】実施例2に係るSF方式のCbとLDPF方式のC3及びC4のブロードキャストノード率Bの比較結果を示す図である。
【図46】実施例2に係るSF方式のCcとLDPF方式のC5のブロードキャストノード率Bの比較結果を示す図である。
【図47】実施例2に係るSF方式とLDPF方式の効率Eの比較結果を示す図である。
【図48】実施例2に係るSF方式のCaとLDPF方式のC1及びC2の効率Eの比較結果を示す図である。
【図49】実施例2に係るSF方式のCbとLDPF方式のC3及びC4の効率Eの比較結果を示す図である。
【図50】実施例2に係るSF方式のCcとLDPF方式のC5の効率Eの比較結果を示す図である。
【図51】実施例2に係るSF方式とLDPF方式のノードあたりの平均配信時間Dの比較結果を示す図である。
【図52】実施例2に係るSF方式のCaとLDPF方式のC1及びC2のノードあたりの平均配信時間Dの比較結果を示す図である。
【図53】実施例2に係るSF方式のCbとLDPF方式のC3及びC4のノードあたりの平均配信時間Dの比較結果を示す図である。
【図54】実施例2に係るSF方式のCcとLDPF方式のC5のノードあたりの平均配信時間Dの比較結果を示す図である。
【図55】実施例3に係るLDPF方式のパラメータの設定例を示す図である。
【図56】実施例3に係るLDCF方式のパラメータの設定例を示す図である。
【図57】実施例3に係る動画ストリーミングの一例を示す図であり、(a)はencoded videoの一例を示す図、(b)はreceived videoの一例を示す図、(c)はdecoded videoの一例を示す図である。
【図58】実施例3に係るSF方式とLDPF方式とLDCF方式の受信パケット率R及び再生可能パケット率Vの比較結果を示す図である。
【図59】実施例3に係るSF方式とLDPF方式とLDCF方式の受信パケット率R及び再生可能パケット率Vの比較結果を示す図である。
【図60】実施例3に係るSF方式とLDPF方式とLDCF方式の動画停止時間率INTの比較結果を示す図である。
【図61】実施例3に係るSF方式とLDPF方式とLDCF方式の動画停止時間率INTの比較結果を示す図である。
【図62】実施例3に係る動画データの評価手順の一例を示す図である。
【図63】実施例3に係るSF方式とLDPF方式とLDCF方式の平均PSNRの比較結果を示す図である。
【図64】実施例3に係るSF方式とLDPF方式とLDCF方式の平均PSNRの比較結果を示す図である。
【図65】実施例3に係る個々のフレームのPSNR値を評価するためのITU−Tにより推奨されている表を示す図である。
【図66】実施例3に係るSF方式とLDPF方式とLDCF方式の受入可能品質フレームの割合の比較結果を示す図である。
【図67】実施例3に係るSF方式とLDPF方式とLDCF方式の受入可能品質フレームの割合の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明についてより詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置の要部構成を示す図である。
【0020】
図1において、無線通信装置100は、アンテナ101、無線通信部102、表示部103、操作部104、スピーカ105、マイク106、制御部107、及びメモリ108を備える。無線通信装置100において、各構成はバス110により相互に接続されている。なお、無線通信装置100としては、例えば、携帯電話端末や無線通信機能を備えた携帯型情報端末等が適用可能であり、特に、端末の形態を限定するものではない。本第1の実施の形態では、無線通信装置100は、アドホックネットワークによるメッセージ通信と、無線通信による音声通話に対応するものとする。
【0021】
アンテナ101は、無線通信部102の制御下で他の無線通信端末装置(図示せず)との間でアドホックネットワークに関するメッセージや各種コマンド等を無線信号により送受信する。また、アンテナ101は、無線通信部102の制御下で他の無線通信端末装置(図示せず)との間で音声データや音声通話に関する各種コマンド等を無線信号により送受信する。
【0022】
無線通信部102は、制御部107の制御下でアドホックネットワークに関するメッセージ通信処理と、音声通話に関する音声通信処理が制御される。無線通信部102は、アドホックネットワークに関するメッセージ通信に際して、後述するLoad-aware Dynamic Probabilistic Flooding(以下、LDPFという)プログラム108bに基づいて制御され、LDPFに関するメッセージや各種コマンド等をアンテナ101を介して他の無線通信端末装置(図示せず)との間で無線信号により送受信する通信処理を実行する。また、無線通信部102は、音声通話に関する音声データ通信に際して、後述する音声通信プログラム108cに基づいて制御され、音声データや音声通話に関する各種コマンド等をアンテナ101を介して他の無線通信端末装置(図示せず)との間で無線信号により送受信する通信処理を実行する。
【0023】
表示部103は、液晶表示パネル等の表示デバイスにより構成される。表示部103は、制御部107の制御下でアドホックネットワークのメッセージ通信に関する表示処理と、音声通話に関する表示処理等を実行する。
【0024】
操作部104は、テンキーや各種コマンドキー等により構成される。操作部104は、アドホックネットワークに関するメッセージ通信処理と音声通話に関する音声通信処理に際して、ユーザによるキー入力操作に応じた各種操作信号をバス110を介して制御部107に出力する。
【0025】
スピーカ105は、音声通話に際して、無線通信部102が通話相手の無線通信端末装置から受信した音声信号に基づく音声を再生する。また、スピーカ105は、メッセージ通信に際して、制御部107の制御下で操作やコマンド等を各種の音で表現する際に用いられる。マイク106は、音声通話に際して、ユーザの音声を音声信号に変換して無線通信部102に出力する。
【0026】
制御部107は、上述のアドホックネットワークのメッセージ通信処理を制御する構成として、図2に示すように、計数部107a、閾値設定部107b、確率設定部107c、待機時間設定部107d、及び通信制御部107eを備える。
【0027】
計数部107aは、アドホックネットワークのメッセージ通信処理において、メッセージを受信した際に、メモリ108内に記憶されているMAC(Medium Access Control)送信キューに関わる自装置の送信待ちパケット数queueを調査し、その調査した送信待ちパケット数queueを確率設定部107cと待機時間設定部107dに出力する。また、計数部107aは、調査した送信待ちパケット数queueにより後述するLDPFテーブル108a内の該当欄を更新する。
【0028】
閾値設定部107bは、送信待ちパケット数queueに対する閾値q_thresholdを設定し、その閾値q_thresholdを確率設定部107cと待機時間設定部107dに出力する。この閾値q_thresholdは、送信待ちパケット数queueに基づいて、自装置の負荷状態を判断する際の基準値である。また、閾値設定部107bは、設定した閾値q_thresholdを後述するLDPFテーブル108aに格納する。
【0029】
確率設定部107cは、計数部107aから入力された送信待ちパケット数queueと、閾値設定部107bから入力された閾値q_thresholdとを比較し、その比較結果に基づいて再ブロードキャストの確率probの値を動的に決定する。確率設定部107cは、決定した確率probの値を通信制御部107eに出力する。また、確率設定部107cは、決定した確率probにより後述するLDPFテーブル108a内の該当欄を更新する。
【0030】
待機時間設定部107dは、計数部107aから入力された送信待ちパケット数queueと、閾値設定部107bから入力された閾値q_thresholdとを比較し、その比較結果に基づいてメッセージの中継を待機する待機時間wait_timeを決定し、その待機時間wait_timeを通信制御部107eに出力する。また、待機時間設定部107dは、決定した待機時間wait_timeにより後述するLDPFテーブル108a内の該当欄を更新する。
【0031】
通信制御部107eは、確率設定部107cから入力される確率probと、待機時間設定部107dから入力される待機時間wait_timeとに基づいて、無線通信部102における上記アドホックネットワークに対するメッセージの再ブロードキャスト処理を制御する。この再ブロードキャスト処理の制御は、後述するLDPFプログラム108bに基づいて実行される。
【0032】
また、計数部107a、確率設定部107c及び待機時間設定部107dにおける各部の処理も後述するLDPFプログラム108bに基づいて実行される。
【0033】
図1に戻り、メモリ108は、LDPFテーブル108a、LDPFプログラム108b、及び音声通信プログラム108cを記憶する。
【0034】
LDPFテーブル108aは、図3に示すように、「default_prob(実数型)」と、「loaded_prob(実数型)」と、上記「閾値q_threshold(整数型)」と、「factor(整数型)」と、上記「送信待ちパケット数queue(整数型)」と、上記「確率prob(実数型)」と、上記「待機時間wait_time(実数型)」と、を記憶する。「default_prob」(第2の確率)は、送信待ちパケット数queueが閾値q_thresholdより小さい場合(無線通信装置100が負荷状態でない場合)に設定される確率probの値である。このdefault_probは、LDPFテーブル108aに予め設定される設定値である。「loaded_prob」(第1の確率)は、送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上である場合(無線通信装置100が負荷状態である場合)に設定される確率probの値である。このloaded_probは、LDPFテーブル108aに予め設定される設定値である。なお、default_probとloaded_probの関係は、default_prob>loaded_probである。
【0035】
「factor(整数型)」は、送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上である場合に基本待機時間Random()に乗算される重み係数である。このfactorは、LDPFテーブル108aに予め設定される設定値である。すなわち、送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上である場合(無線通信装置100が負荷状態である場合)は、Random()*factor(第1の待機時間)が「待機時間wait_time」として設定される。また、送信待ちパケット数queueが閾値q_thresholdより小さい場合(無線通信装置100が負荷状態でない場合)は、基本待機時間Random()(第2の待機時間)が「待機時間wait_time」として設定される。「factor」は、LDPFテーブル108aに予め設定される設定値である。
【0036】
「queue」は、LDPF処理においてメッセージを受信する毎に、上記計数部107aにより調査された送信待ちパケット数queueにより更新される。「prob」には、LDPF処理においてメッセージを受信する毎に、上記確率設定部107cにより決定されたdefault_prob又はloaded_probが設定される。「wait_time」には、LDPF処理においてメッセージを受信する毎に、上記待機時間設定部107dにより決定されたRandom()又はRandom()×factorが設定される。「queue」、「prob」及び「wait_time」は、LDPF処理において動的に更新される変数である。
【0037】
なお、「default_prob」と、「loaded_prob」と、「q_threshold」と、「factor」と、「queue」は、無線通信装置100固有のパラメータである。また、メモリ108は、LDPF処理において送信待ちのメッセージを記憶する。
【0038】
LDPFプログラム108bは、上記計数部107a、閾値設定部107b、確率設定部107c、待機時間設定部107d、及び通信制御部107eの各処理を制御するためのプログラムである。音声通信プログラム108cは、上記音声通話処理を制御するためのプログラムである。
【0039】
次に、無線通信装置100の制御部107において実行されるLDPF処理について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0040】
制御部107は、ユーザにより操作部104においてアドホックネットワークのメッセージ通信に関する指示が入力されると、メモリ108内のLDPFプログラム108bを読み出して図4に示すLDPF処理を開始する。
【0041】
図4において、制御部107は、他の無線通信装置(図示せず)から送信されるメッセージ受信の有無を無線通信部102を通じて確認する(ステップS101)。制御部107は、メッセージの受信を確認すると(ステップS101:YES)、当該受信メッセージがメモリ108に既に記憶されている受信メッセージと同一か否かを確認する(ステップS102)。制御部107は、当該受信メッセージが既受信メッセージと同一であることを確認した場合は(ステップS102:YES)、当該受信メッセージをメモリ108に記憶して、ステップS101に戻る。
【0042】
また、制御部107は、当該受信メッセージが既受信メッセージと同一でないことを確認した場合は(ステップS102:NO)、当該受信メッセージに含まれるTTLが「0」か否かを確認する(ステップS103)。このTTLは、当該メッセージの最大ホップ数を設定するパラメータであり、当該メッセージの送信元の無線通信装置(Initiator)において設定される。このTTLは、中継先の無線通信装置において、再ブロードキャストが実行される際に「1」減算される。したがって、TTL=0の場合は、再ブロードキャストの停止を意味する。制御部107は、TTL=0であることを確認した場合(ステップS103:YES)、LDPF処理を終了する。
【0043】
また、制御部107がTTL=0でないことを確認した場合(ステップS103:NO)、計数部107aは、自装置100内の送信待ちパケット数queueを調査する(ステップS104)。この時、計数部107aは、調査した送信待ちパケット数queueを確率設定部107cと待機時間設定部107dに出力するとともに、調査した送信待ちパケット数queueでLDPFテーブル108a内の送信待ちパケット数queueを更新する。
【0044】
次いで、確率設定部107cと待機時間設定部107dは、計数部107aから入力された送信待ちパケット数queueと、LDPFテーブル108aに設定された閾値q_thresholdとを比較して、送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上か否かを確認する(ステップS105)。すなわち、送信待ちパケット数queueに基づいて、自装置100が負荷状態にあるか否かを確認する。送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上である場合、すなわち、自装置100が負荷状態にある場合(ステップS105:YES)、待機時間設定部107dは、LDPFテーブル108aに設定された重み係数factorを読み出し、基本待機時間Random()に乗算してRandom()×factor(第1の待機時間)として、LDPFテーブル108aの待機時間wait_timeに設定する(ステップS106)。また、確率設定部107cは、LDPFテーブル108aに設定されたloaded_probを読み出して、LDPFテーブル108aの確率probに設定する(ステップS107)。
【0045】
また、送信待ちパケット数queueが閾値q_thresholdより小さい場合、すなわち、自装置100が負荷状態にない場合(ステップS105:NO)、待機時間設定部107dは、LDPFテーブル108aの待機時間wait_timeに基本待機時間Random()(第2の待機時間)を設定する(ステップS108)。また、確率設定部107cは、LDPFテーブル108aに設定されたdefault_probを読み出して、LDPFテーブル108aの確率probに設定する(ステップS109)。
【0046】
次いで、通信制御部107eは、待機時間設定部107dにより設定された待機時間wait_timeであるRandom()×factor又はRandom()の経過を確認すると(ステップS110:YES)、確率設定部107cにより設定されたloaded_prob又はdefault_probに基づいて、再ブロードキャストの実行を判断する(ステップS111)。通信制御部107eは、再ブロードキャストを実行すると判断した場合(ステップS111:YES)、ステップS112に移行して、無線通信部102における当該受信メッセージの再ブロードキャスト処理を制御して、LDPF処理を終了する。また、通信制御部107eは、再ブロードキャストを実行しないと判断した場合(ステップS111:NO)、LDPF処理を終了する。
【0047】
次に、上記LDPF処理をシミュレーショントポロジーに適用して評価した結果について、図5〜図7を参照して説明する。図5は、シミュレーショントポロジーのマップMap1の一例を示す図である。図6は、到達率R(Reachability)[%]と、再ブロードキャストを行ったノードの割合B(Broadcasting nodes)[%]と、効率E(Efficiency)の各評価をSimple flooding(以下、SFという)とLDPFで比較した結果を示す図である。図7は、R(Reachability)[%]と、B(Broadcasting nodes)[%]と、E(Efficiency)の各平均値をSFとLDPFで比較した結果を示す図である。
【0048】
図5に示すシミュレーショントポロジーのマップMap1は、マップ範囲をx軸:1000[m]×y軸:600[m]に100のノード(図中の●)をランダムに配置した。各ノードは、上記無線通信装置100のLDPF処理機能を有する。この場合、各ノードの移動は考慮していない。マップ上のx=[200,800],y=[200,400]の範囲に存在するノードを高負荷ノード(High-loaded area)とする。これは、マップの中央部においてトラフィックが集中しやすいと考えられるからである。各ノードの通信可能半径は、200[m]であるものとする。但し、ノードが送信したメッセージは通信可能範囲に存在するノードに必ず到達するものとする。また、電波干渉や衝突に伴うフレームロスは考慮していない。
【0049】
マップ上のInitiatorノードは、1回目のブロードキャストを行うノードである。このシミュレーショントポロジーのマップの一例であるMap1を図5に示す。同様のマップを合計10通り作成し、これらのマップを用いて、SF方式とLDPF方式についてメッセージの再ブロードキャストのシミュレーションを行い、評価指標として到達率R(Reachability)[%]と、再ブロードキャストを行ったノードの割合B(Broadcasting nodes)[%]と、効率E(Efficiency)の各結果を得た。これらの評価指標について、以下に説明する。
【0050】
到達率R(Reachability)[%]は、全ノードnのうちメッセージを受信したノード数rの割合を示す。R(Reachability)[%]は、以下の数式(1)により表される。但し、評価対称にはInitiatorノードも含まれる。
R=r/n・・・(1)
【0051】
再ブロードキャストを行ったノードの割合B(Broadcasting nodes)[%]は、全ノードnのうちブロードキャストを行ったノードbの割合を示す。B(Broadcasting nodes)[%]は、以下の数式(2)により表される。但し、評価対称にはInitiatorノードも含まれる。
B=b/n・・・(2)
【0052】
効率Eは、RとBの比率を示し、以下の数式(3)により表される。
E=R/B・・・(3)
【0053】
本第1の実施の形態で提案したLDPF方式の目的は、到達率Rを確保しながら冗長な再ブロードキャスト数を削減することである。このため、Rは大きい方が好ましく、Bは小さい方が好ましい。すなわち、RとBの比であるEは大きい方が好ましい。
【0054】
本シミュレーションでは、LDPF方式の初期条件としての以下のP1,P2を設定して、この条件設定によりLDPF方式のシミュレーションを実行して得られたR[%]、B[%]、Eの各結果と、SF方式のシミュレーションを実行して得られたR[%]、B[%]、Eの各結果と、を図6に示す。また、LDPF方式とSF方式のR[%]、B[%]、Eの各平均値を図7に示す。
初期条件P1:default_prob=0.80,loarded_prob=0.40
初期条件P2:default_prob=0.80,loarded_prob=0.20
【0055】
図6において、横軸は、上記10通りのマップMAP1〜10に対してSF方式とLDPF方式(条件P1,P2)を適用したことを示す。また、左側の縦軸は(a)R(Reachability),(b)B(Broadcasting nodes)[%]を示し、右側の縦軸は(c)E(Efficiency)を示す。図中のプロットのうち、■は(a)R(Reachability)を示し、○は(b)B(Broadcasted nodes)を示す。また、図中の棒グラフを示す□は(c)E(Efficiency)を示す。また、図7に示すプロット■,○及び棒グラフ□は、図6に示した10通りのマップMAP1〜10に対してSF方式とLDPF方式(条件P1,P2)で得られた各結果に対応する平均値を示す。
【0056】
図7において、SF方式の(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(R=99.50[%],B=99.50[%],E=1.00)と、LDPF方式の条件P1,P2における(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(P1:R=91.40[%],B=67.30[%],E=1.35,P2:R=84.1[%],B=60.50[%],E=1.39)と、を比較する。SF方式のR=99.50[%]に比べて、LDPF方式の条件P1におけるR=91.40[%]は8.1[%]減少し、条件P2におけるR=84.1[%]は15.4[%]減少している。一方、SF方式のB=99.50[%]に比べて、LDPF方式の条件P1におけるB=67.30[%]は32.2[%]削減し、条件P2におけるB=60.50[%]は39[%]削減している。これらのLDPF方式におけるR(Reachability)及びB(Broadcasting nodes)の各結果として、SF方式のE=1.00に比べて条件P1におけるE=1.35は0.35上昇し、条件P2におけるE=1.39は0.39上昇している。これらの結果から、本実施の形態に適用したLDPF方式は、SF方式に比べて到達率を確保しながら冗長な再ブロードキャストのノードを削減することを実現している。
【0057】
以上のように、第1の実施の形態に係る無線通信装置100では、アドホックネットワークにおけるメッセージのブロードキャストに対して、LDPF(Load-aware Dynamic Probabilistic Flooding)方式を適用した。このLDPF方式では、従来のフラッディング方式のようにHelloメッセージを送信せずに、MAC(Medium Access Control)送信キューに関わる自装置内の送信待ちパケット数queueに基づいて自装置の負荷状態を判断して、待機時間wait_timeをRandom()(負荷状態でない場合)又はRandom()×factor(負荷状態である場合)を動的に設定するとともに、再ブロードキャストの確率probをdefault_prob(負荷状態でない場合)又はloaded_prob(負荷状態である場合)(但し、default_prob>loaded_prob)を動的に設定して、再ブロードキャスト処理を制御するようにした。
【0058】
したがって、第1の実施の形態に係るLDPF方式を適用した無線通信装置100が複数分散配置されたアドホックネットワークでは、到達率Rを確保しながら冗長な再ブロードキャスト数を削減することが可能になった。また、LDPF方式では、無線通信装置100(ノード)が負荷状態である場合、負荷状態でない場合に設定する再ブロードキャスト確率default_probよりも小さい再ブロードキャスト確率loaded_probを設定することにより、負荷状態にある無線通信装置100の再ブロードキャストを抑制でき、結果として周囲の他の無線通信装置100の輻輳を抑制することができる。また、もし無線通信装置100(ノード)が負荷状態である時に再ブロードキャストが決定された場合、その無線通信装置100(ノード)内のメッセージを記憶するメモリがバッファオーバーフローに陥る可能性が高くなる。このことに対して、LDPF方式では、待機時間wait_timeをRandom()×factorに設定して、負荷状態でない場合に設定する待機時間wait_timeの設定Random()より長くすることにより、バッファオーバーフローに陥る可能性を低減している。
【0059】
さらに、第1の実施の形態に係るLDPF方式を適用した無線通信装置100は、従来のフラッディング方式のようにHelloメッセージを送信せずに、MAC送信キューに関わる自装置内の送信待ちパケット数queueに基づいて自装置の負荷状態を判断するようにしたため、無線通信装置100の電池消費を抑制することができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
本第2の実施の形態では、従来のフラッディング方式であるCounter-based schemeを改善するLoaded-aware Dynamic Counter-based Flooding(以下、LDCFという)を無線通信装置に適用する場合について説明する。
【0061】
図8は、第2の実施の形態に係る無線通信装置200の要部構成を示す図である。図2において、上記図1に示した無線通信装置100と同一の構成部分には同一符号を付しており、その構成説明は省略する。
【0062】
図8において、無線通信装置200は、アンテナ101、無線通信部102、表示部103、操作部104、スピーカ105、マイク106、制御部201、及びメモリ202を備える。無線通信装置200において、各構成はバス110により相互に接続されている。なお、無線通信装置200としては、例えば、携帯電話端末や無線通信機能を備えた携帯型情報端末等が適用可能であり、特に、端末の形態を限定するものではない。本第2の実施の形態では、無線通信装置200は、アドホックネットワークによるメッセージ通信と、無線通信による音声通話に対応するものとする。
【0063】
無線通信部102は、制御部201の制御下でアドホックネットワークに関するメッセージ通信処理と、音声通話に関する音声通信処理が制御される。無線通信部102は、アドホックネットワークに関するメッセージ通信に際して、後述するLoad-aware Dynamic Counter-based Flooding(以下、LDCFという)プログラム202bに基づいて制御され、LDCFに関するメッセージや各種コマンド等をアンテナ101を介して他の無線通信端末装置(図示せず)との間で無線信号により送受信する通信処理を実行する。また、無線通信部102は、音声通話に関する音声データ通信に際して、後述する音声通信プログラム202cに基づいて制御され、音声データや音声通話に関する各種コマンド等をアンテナ101を介して他の無線通信端末装置(図示せず)との間で無線信号により送受信する通信処理を実行する。
【0064】
制御部201は、上述のアドホックネットワークのメッセージ通信処理を制御する構成として、図9に示すように、計数部201a、閾値設定部201b、受信回数計数部201c、判定時間設定部201d、受信回数閾値設定部201e、及び通信制御部201fを備える。
【0065】
計数部201aは、アドホックネットワークのメッセージ通信処理において、メッセージを受信した際に、メモリ202内に記憶されているMAC(Medium Access Control)送信キューに関わる自装置の送信待ちパケット数queueを計数し、その計数値を判定時間設定部201cと閾値変更部201dに出力する。また、計数部201aは、計数した送信待ちパケット数queueにより後述するLDCFテーブル202a内の該当欄を更新する。
【0066】
閾値設定部201bは、送信待ちパケット数queueに対する閾値q_thresholdを設定し、その閾値q_thresholdを判定時間設定部107cと受信回数閾値設定部201dに出力する。この閾値q_thresholdは、送信待ちパケット数queueに基づいて、自装置の負荷状態を判断する際の基準値である。また、閾値設定部107bは、設定した閾値q_thresholdを後述するLDPFテーブル108aに格納する。
【0067】
受信回数計数部201cは、後述するLDCF処理(図11参照)において通信制御部201fが既に受信したメッセージであると判断したメッセージの受信回数counterを計数し、その受信回数counterを通信制御部201fに出力する。また、受信回数計数部201cは、計数した受信回数counterにより後述するLDCFテーブル202a内の該当欄を更新する。
【0068】
判定時間設定部201dは、計数部201aから入力された送信待ちパケット数queueと、閾値設定部201bから入力された閾値q_thresholdとを比較し、その比較結果に基づいて再ブロードキャストの可否を判定する時間decision_timeを動的に決定する。判定時間設定部201dは、決定した再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeの値を通信制御部107eに出力する。また、判定時間設定部201dは、決定した再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeにより後述するLDPFテーブル108a内の該当欄を更新する。
【0069】
受信回数閾値設定部201eは、計数部201aから入力された送信待ちパケット数queueと、閾値設定部201bから入力された閾値q_thresholdとを比較し、その比較結果に基づいて受信回数counterを比較する受信回数閾値c_thresholdを動的に決定する。受信回数閾値設定部201eは、決定した受信回数閾値c_thresholdの値を通信制御部107eに出力する。また、受信回数閾値設定部201eは、決定した受信回数閾値c_thresholdにより後述するLDPFテーブル108a内の該当欄を更新する。この受信回数閾値c_thresholdは、後述するLDCF処理(図11参照)において受信回数counterに基づいて再ブロードキャストの実行可否を判定する基準値として用いられる。
【0070】
通信制御部201fは、判定時間設定部201dから入力される再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeと、受信回数閾値設定部201dから入力される受信回数閾値c_thresholdとに基づいて、無線通信部102における上記アドホックネットワークに対するメッセージの再ブロードキャスト処理を制御する。この再ブロードキャスト処理の制御は、後述するLDCFプログラム202bに基づいて実行される。
【0071】
また、計数部201a、受信回数係数部201c、判定時間設定部201d及び受信回数閾値設定部201eにおける各部の処理も後述するLDCFプログラム202bに基づいて実行される。
【0072】
図8に戻り、メモリ202は、LDCFテーブル202a、LDCFプログラム202b、及び音声通信プログラム202cを記憶する。
【0073】
LDPFテーブル202aは、図10に示すように、「default_c_threshold(整数型)」と、「loaded_c_threshold(整数型)」と、上記「閾値q_threshold(整数型)」と、「factor(整数型)」と、上記「受信回数閾値c_threshold(整数型)」と、上記「受信回数counter(整数型)」と、上記「送信待ちパケット数queue(実数型)」と、上記「再ブロードキャスト可否判定時間decision_time(実数型)」と、を記憶する。「default_c_threshold」(第2の受信回数閾値)は、送信待ちパケット数queueが閾値q_thresholdより小さい場合(無線通信装置100が負荷状態でない場合)に設定される受信回数閾値c_thresholdの値である。このdefault_c_thresholdは、LDCFテーブル202aに予め設定される設定値である。「loaded_c_threshold」(第1の受信回数閾値)は、送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上である場合(無線通信装置100が負荷状態である場合)に設定されるc_thresholdの値である。このloaded_c_thresholdは、LDCFテーブル202aに予め設定される設定値である。なお、default_c_thresholdとloaded_c_thresholdの関係は、default_c_threshold>loaded_c_thresholdである。
【0074】
「factor(整数型)」は、送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上である場合に基本時間Random()に乗算される重み係数である。このfactorは、LDPCテーブル202aに予め設定される設定値である。すなわち、送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上である場合(無線通信装置100が負荷状態である場合)は、Random()×factor(第1の再送信可否判定時間)が「再ブロードキャスト可否判定時間decision_time」として設定される。また、送信待ちパケット数queueが閾値q_thresholdより小さい場合(無線通信装置100が負荷状態でない場合)は、基本待機時間Random()(第2の再送信可否判定時間)が「再ブロードキャスト可否判定時間decision_time」として設定される。「factor」は、LDCFテーブル202aに予め設定される設定値である。
【0075】
「c_threshold」には、LDCF処理においてメッセージを受信する毎に、上記受信回数閾値設定部201eにより決定されたdefault_c_threshold又はloaded_c_thresholdが設定される。「counter」は、LDCF処理において既受信メッセージを受信する毎に、上記受信回数計数部201cにより更新される。「queue」は、LDCF処理においてメッセージを受信する毎に、上記計数部202aにより更新される。「decision_time」には、LDCF処理においてメッセージを受信する毎に、上記判定時間設定部201dにより決定されたRandom()又はRandom()*factorが設定される。「c_threshold」、「counter」、「queue」、及び「decision_time」は、LDCF処理において動的に更新される変数である。
【0076】
なお、「default_c_threshold」と、「loaded_c_threshold」と、「q_threshold」と、「factor」と、「c_threshold」は、無線通信装置200固有のパラメータである。また、メモリ202は、LDCF処理において送信待ちのメッセージを記憶する。
【0077】
LDCFプログラム202bは、上記計数部201a、閾値設定部201b、受信回数係数部201c、判定時間設定部202d、受信回数閾値設定部201e及び通信制御部201fの各処理を制御するためのプログラムである。音声通信プログラム202cは、上記音声通話処理を制御するためのプログラムである。
【0078】
次に、無線通信装置200の制御部201において実行されるLDCF処理について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
【0079】
制御部201は、ユーザにより操作部104においてアドホックネットワークのメッセージ通信に関する指示が入力されると、メモリ202内のLDCFプログラム202bを読み出して図11に示すLDCF処理を開始する。
【0080】
図11において、制御部201内の通信制御部201fは、他の無線通信装置(図示せず)から送信されるメッセージ受信の有無を無線通信部102を通じて確認する(ステップS201)。通信制御部201fは、メッセージの受信を確認すると(ステップS201:YES)、当該受信メッセージがメモリ202に既に記憶されている受信メッセージと同一か否かを確認する(ステップS202)。通信制御部201fは、当該受信メッセージが既受信メッセージと同一であることを確認した場合は(ステップS202:YES)、当該受信メッセージをメモリ202に記憶して、ステップS201に戻る。
【0081】
また、通信制御部201fは、当該受信メッセージが既受信メッセージと同一でないことを確認した場合は(ステップS202:NO)、受信回数計数部201cにおいて当該受信メッセージの受信回数を「1」に初期化する(ステップS203)。次いで、通信制御部201fは、当該受信メッセージに含まれるTTLが「0」か否かを確認する(ステップS204)。このTTLは、当該メッセージの最大ホップ数を設定するパラメータであり、当該メッセージの送信元の無線通信装置(Initiator)において設定される。このTTLは、中継先の無線通信装置において、再ブロードキャストが実行される際に「1」減算される。したがって、TTL=0の場合は、再ブロードキャストの停止を意味する。通信制御部201fは、TTL=0であることを確認した場合(ステップS204:YES)、LDCF処理を終了する。
【0082】
また、通信制御部201fは、TTL=0でないことを確認した場合(ステップS204:NO)、無線通信装置200内の送信待ちパケット数queueを調査する(ステップS205)。この時、計数部201aは、調査した送信待ちパケット数queueを判定時間設定部201dと受信回数閾値設定部201eに出力するとともに、調査した送信待ちパケット数queueでLDCFテーブル202a内の送信待ちパケット数queueを更新する。
【0083】
次いで、判定時間設定部201dと受信回数閾値設定部201eは、計数部201aから入力された送信待ちパケット数queueと、LDCFテーブル202aに設定された閾値q_thresholdとを比較して、送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上か否かを確認する(ステップS206)。すなわち、送信待ちパケット数queueに基づいて、自装置200が負荷状態にあるか否かを確認する。送信待ちパケット数queueが閾値q_threshold以上である場合、すなわち、自装置200が負荷状態にある場合(ステップS206:YES)、判定時間設定部201dは、LDCFテーブル202aに設定された重み係数factorを読み出し、基本時間Random()に乗算してRandom()×factorとして、LDCFテーブル202aの再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeに設定する(ステップS207)。また、受信回数閾値設定部201eは、LDCFテーブル202aに設定されたloaded_c_thresholdを読み出して、LDCFテーブル202aの受信回数閾値c_thresholdに設定する(ステップS208)。
【0084】
また、送信待ちパケット数queueが閾値q_thresholdより小さい場合、すなわち、自装置100が負荷状態にない場合(ステップS206:NO)、判定時間設定部201dは、LDCFテーブル202aの再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeに基本時間Random()を設定する(ステップS209)。また、受信回数閾値設定部201eは、LDCFテーブル202aに設定されたdefault_c_thresholdを読み出して、LDCFテーブル202aの受信回数閾値c_thresholdに設定する(ステップS210)。
【0085】
次いで、通信制御部201fは、判定時間設定部201dにより設定された再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeであるRandom()×factor又はRandom()の計時を開始する(ステップS211)。次いで、通信制御部201fは、同一メッセージを再度受信したか否かを確認する(ステップS212)。同一メッセージを再度受信していない場合(ステップS212:NO)、通信制御部201fは、再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeであるRandom()×factor又はRandom()の経過を確認する(ステップS213)。通信制御部201fは、Random()×factor又はRandom()の経過を確認すると(ステップS213:YES)、無線通信部102における当該受信メッセージの再ブロードキャスト処理を制御して(ステップS214)、LDCF処理を終了する。
【0086】
また、通信制御部201fは、Random()×factor又はRandom()が経過していない場合(ステップS213:NO)、同一メッセージの再度受信の有無を確認する(ステップS212)。また、通信制御部201fは、同一メッセージを再度受信した場合(ステップS212:YES)、受信回数計数部201cにおいて当該メッセージの受信回数counterの値を「+1」カウントアップさせる(ステップS215)。この時、LDCFテーブル202aの受信回数counterは更新される。
【0087】
次いで、通信制御部201fは、LDCFテーブル202aから受信回数counterと、受信回数閾値c_thresholdに設定されたdefault_c_threshold又はloarded_c_thresholdを読み出して比較し、受信回数counterがdefault_c_threshold又はloarded_c_thresholdに達したか否かを確認する(ステップS216)。通信制御部201fは、受信回数counterがdefault_c_threshold又はloaded_c_thresholdに達していない場合(ステップS216:NO)、ステップS213に移行する。また、通信制御部201fは、受信回数counterがdefault_c_threshold又はloaded_c_thresholdに達した場合(ステップS216:YES)、LDCF処理を終了する。
【0088】
次に、上記LDCF処理をシミュレーショントポロジーに適用して評価した結果について、図5、図12、図13を参照して説明する。図5は、上記第1の実施の形態で示したシミュレーショントポロジーのマップMap1の一例を示す図である。図12は、到達率R(Reachability)[%]と、再ブロードキャストを行ったノードの割合B(Broadcasting nodes)[%]と、効率E(Efficiency)の各評価をSimple flooding(以下、SFという)とLDCFで比較した結果を示す図である。図13は、R(Reachability)[%]と、B(Broadcasting nodes)[%]と、E(Efficiency)の各平均値をSFとLDCFで比較した結果を示す図である。
【0089】
到達率R(Reachability)[%]と、再ブロードキャストを行ったノードの割合B(Broadcasting nodes)[%]と、効率E(Efficiency)は、上記第1の実施の形態で説明したものと同一であるため、これらの説明は省略する。
【0090】
本第2の実施の形態で提案したLDCF方式の目的は、到達率Rを確保しながら冗長な再ブロードキャスト数を削減することである。このため、Rは大きい方が好ましく、Bは小さい方が好ましい。すなわち、RとBの比であるEは大きい方が好ましい。
【0091】
本シミュレーションでは、LDCF方式の初期条件としての以下のC1,C2を設定して、この条件設定によりLDCF方式のシミュレーションを実行して得られたR[%]、B[%]、Eの各結果と、SF方式のシミュレーションを実行して得られたR[%]、B[%]、Eの各結果と、を図12に示す。また、LDCF方式とSF方式のR[%]、B[%]、Eの各平均値を図13に示す。
初期条件C1:default_c_threshold=4,loaded_c_threshold=2
初期条件C2:default_c_threshold=3,loaded_c_threshold=1
【0092】
また、本シミュレーションでは、再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeは、簡単のためランダム値とせず、低負荷時1、高負荷時2として固定値とする。
【0093】
図12において、横軸は、上記10通りのマップMAP1〜10に対してSF方式とLDCF方式(条件C1,C2)を適用したことを示す。また、左側の縦軸は(a)R(Reachability),(b)B(Broadcasting nodes)[%]を示し、右側の縦軸は(c)E(Efficiency)を示す。図中のプロットのうち、■は(a)R(Reachability)を示し、○は(b)B(Broadcasting nodes)を示す。また、図中の棒グラフを示す□は(c)E(Efficiency)を示す。また、図13に示すプロット■,○及び棒グラフ□は、図12に示した10通りのマップMAP1〜10に対してSF方式とLDCF方式(条件C1,C2)で得られた各結果に対応する平均値を示す。
【0094】
図13において、SF方式の(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(R=99.50[%],B=99.50[%],E=1.00)と、LDPF方式の条件C1,C2における(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(C1:R=85.50[%],B=44.20[%],E=1.95,C2:R=74.00[%],B=32.70[%],E=2.25)と、を比較する。SF方式のR=99.50[%]に比べて、LDCF方式の条件C1におけるR=85.50[%]は14[%]減少し、条件C2におけるR=74.00[%]は25.5[%]減少している。一方、SF方式のB=99.50[%]に比べて、LDCF方式の条件C1におけるB=44.20[%]は55.3[%]削減し、条件C2におけるB=32.70[%]は66.8[%]削減している。これらのLDCF方式におけるR(Reachability)及びB(Broadcasting nodes)の各結果として、SF方式のE=1.00に比べて条件C1におけるE=1.95は0.95上昇し、条件C2におけるE=2.25は1.25上昇している。これらの結果から、本実施の形態に適用したLDCF方式は、SF方式に比べて到達率を確保しながら冗長な再ブロードキャストのノードを削減することを実現している。
【0095】
以上のように、第2の実施の形態に係る無線通信装置200では、アドホックネットワークにおけるメッセージのブロードキャストに対して、LDCF(Load-aware Dynamic Counter-based Flooding)方式を適用した。このLDCF方式では、従来のフラッディング方式のようにHelloメッセージを送信せずに、MAC(Medium Access Control)送信キューに関わる自装置の送信待ちパケット数queueに基づいて自装置の負荷状態を判断して、再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeをRandom()(負荷状態でない場合)又はRandom()×factor(負荷状態である場合)を動的に設定するとともに、受信回数閾値c_thresholdをdefault_c_threshold(負荷状態でない場合)又はloaded_c_threshold(負荷状態である場合)(但し、default_c_threshold>loaded_c_threshold)を設定して、再ブロードキャスト処理を制御するようにした。
【0096】
したがって、第2の実施の形態に係るLDCF方式を適用した無線通信装置200が複数分散配置されたアドホックネットワークでは、到達率Rを確保しながら冗長な再ブロードキャスト数を削減することが可能になった。また、LDCF方式では、無線通信装置200(ノード)が負荷状態である場合に設定する受信回数閾値loaded_c_thresholdは、負荷状態でない場合に設定する受信回数閾値default_c_thresholdよりも小さい値にしている。これにより、周囲の無線通信装置200(ノード)が同一メッセージをブロードキャストしている場合に、冗長な再ブロードキャストを抑制することができる。また、負荷状態にある無線通信装置200では、再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeをRandom()×factorに設定し、負荷状態でない場合に設定する再ブロードキャスト可否判定時間decision_timeとして設定するRandom()よりも長い時間を設定することにより、再ブロードキャストを抑制することに加えて、バッファオーバーフローによるメッセージのフレームロスと、周囲の無線通信装置200(ノード)の輻輳を抑制することができる。また、従来のCounter-based schemeでは、種々のメッセージが同時に生起した場合に各ノードの輻輳を回避できないが、LDCF方式では、同一メッセージ毎に動的に受信回数閾値c_thresholdを設定するため、各ノードの輻輳を回避できる。
【0097】
さらに、第2の実施の形態に係るLDPF方式を適用した無線通信装置200は、従来のフラッディング方式のようにHelloメッセージを送信せずに、MAC送信キューに関わる自装置内の送信待ちパケット数queueに基づいて自装置の負荷状態を判断するようにしたため、無線通信装置200の電池消費を抑制することができる。
【0098】
なお、上記各実施の形態では、LDPF方式とLDCF方式の各処理を無線通信装置100,200に適用した場合を示したが、この装置に限定するものではない。LDPFプログラムとLDCFプログラムを実行可能なCPU、メモリ、及び無線通信部を備える機器であればLDPF方式とLDCF方式の各処理を適用可能である。
【0099】
(実施例1)
次に、上記LDPF方式とLDCF方式について、以下に示すネットワークトポロジの設定等を用いてネットワークシミュレーション処理を実行した結果について説明する。なお、本実施例に用いるLDPF方式とLDCF方式の各無線通信装置の構成と機能は、上記図1,2及び図8,9に示したものと同様でるため、その図示と構成及び機能説明は省略する。
【0100】
<ネットワークトポロジの設定>
シミュレーションエリア・・・・・・・・・・1000×600[m]
全ノード数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100
Initiator(通信開始)ノード数・・・・・・・・・・・・・・・2
Initiator(通信開始)以外のノード数・・・・・・・・・・・98
<ノードの共通パラメータ>
ノードの通信可能半径・・・・・・・・・・・・・・・約200[m]
Random()の範囲・・・・・・・・・・・0.00〜20.46[ms]
q_threshold・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
n (wait factor) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
<各Initiatorのパラメータ>
生成メッセージ数・・・・・・・・Case1:1000,Case2:1000
メッセージサイズ(L2 payload)・・・・Case1:1024[Bytes]
・・・・Case2:1024[Bytes]
生成時間間隔・・・・・・・・・・・・・・Case1:0.032[ms]
・・・・・・・・・・・・・・Case2:0.016[ms]
【0101】
以上の設定を用いて従来のSF方式とLDPF方式及びLDCF方式との性能比較を行った。評価指標は、(a)メッセージ到達率R(Reachability)[%]、(b)メッセージの送信を行ったノード数B(Broadcasting nodes)、(c)効率E(Efficiency)、(d)配信時間D(Delivery time)[s]である。これら評価指標について以下に説明する。
【0102】
(a)R(Reachability)[%]
R(Reachability)は、全ノードのうちメッセージを受信したノードの割合[%]を、全生成メッセージについて平均を求める評価指標であり、以下に示す数式(4)により表される。
【数1】

但し、I:Initiatorのノード数。ここではI=2である。
J:生成メッセージ数。ここではJ=1000である。
N:全ノード数。ここではN=100である。
i:InitiatorのID。ここではi={1,2}である。
j:メッセージのID。ここでは、j={1,2,・・・,1000}である。
r:メッセージを受信したノード数。ここでは、Initiatorノードを含む。
【0103】
(b)B(Broadcasting nodes)[%]
B(Broadcasting nodes)は、全ノードのうちメッセージを送信したノードの割合[%]を、全生成メッセージについて平均を求める評価指標であり、以下に示す数式(5)により表される。
【数2】

但し、b:ブロードキャストを行ったノード。ここでは、Initiatorノードを含む。
【0104】
(c)E(Efficiency)
E(Efficiency)は、上記R(Reachability)とB(Broadcasting nodes)の比を求める評価指標であり、以下に示す数式(6)により表される。
E=R/B・・・(6)
【0105】
(d)D(Delivery time)[s]
D(Delivery time)[s]は、Initiatorノードから配信されたメッセージをあるノードが受信するまでの平均時間を求める評価指標であり、以下に示す数式(7)により表される。
【数3】

但し、K:メッセージを受信したノード数。
k:メッセージを受信したノードのID。
【0106】
上述のように、提案したLDPF方式の目的は、到達率Rを確保しながら冗長な再ブロードキャスト数を削減することである。このため、Rは大きい方が好ましく、Bは小さい方が好ましい。すなわち、RとBの比であるEは大きい方が好ましい。また、D(Delivery time)は小さいほど良い。
【0107】
本LDPFシミュレーションでは、上述のネットワークトポロジの設定等を用いて、ノードをランダムに配置した10通りのマップMap(図5に示したようなシミュレーショントポロジーのマップMap)を作成する。ここでは、簡単のためノードの移動は考慮していない。まず、10通りのマップMapを用いてSF方式とLDPF方式でシミュレーションを行い、上記(a)R(Reachability)[%]、(b)B(Broadcasting nodes)[%]、(c)E(Efficiency)及び(d)D(Delivery time)[s]の各評価指標の結果を図14〜図16に示す。
【0108】
本シミュレーションでは、LDPF方式の初期条件としての以下のP1,P2,P3,P4を設定して、この条件設定によりLDPF方式のシミュレーションを実行して得られたR[%]、B[%]、E、D[s]の各結果と、SF方式のシミュレーションを実行して得られたR[%]、B[%]、E、D[s]の各結果と、を図14に示す。また、LDPF方式とSF方式の平均到達率R[%]を図15に示す。さらに、LDPF方式とSF方式の平均配信時間D[s]を図16に示す。
初期条件P1:default_prob=0.80,loaded_prob=0.40
初期条件P2:default_prob=0.80,loaded_prob=0.20
初期条件P3:default_prob=0.60,loaded_prob=0.20
初期条件P4:default_prob=0.40,loaded_prob=0.20
【0109】
図14において、横軸は、上記10通りのマップMAP1〜10に対してSF方式とLDPF方式(条件P1,P2,P3,P4)を、上記各Initiatorのパラメータの設定「case1」「case2」に対して適用したことを示す。また、左側の縦軸は(a)R(Reachability)[%],(b)B(Broadcasting nodes)[%]を示し、右側の縦軸は(c)E(Efficiency)を示す。図中のプロットのうち、■は(a)R(Reachability)を示し、○は(b)B(Broadcasting nodes)を示す。また、図中の棒グラフを示す□は(c)E(Efficiency)を示す。
【0110】
図15は、10通りのマップMAP1〜10及び上記各Initiatorのパラメータの設定「case1」「case2」に対してSF方式とLDPF方式(条件P1,P2,P3,P4)を適用して得られた(a)平均到達率R(Reachability)[%]の分布を示す。図中の棒グラフ内の「白色」部分は(80〜100[%]:図中の(80,100])、「右斜め線ハッチング」部分は(60〜80[%]:図中の(60,80])、「左斜め線ハッチング」部分は(40〜60[%]:図中の(40,60])、「クロス線ハッチング」部分は(20〜40[%]:図中の(20,40])、「横線ハッチング」部分は(0〜20[%]:図中の(0,20])であることを示す。
【0111】
図16は、10通りのマップMAP1〜10及び上記各Initiatorのパラメータの設定「case1」「case2」に対してSF方式とLDPF方式(条件P1,P2,P3,P4)を適用して得られた(d)平均配信時間D(Delivery time)[s]を示す。
【0112】
図14において、SF方式の「case1」における(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(R=83.1[%],B=79.9[%],E=0.95)と、LDPF方式の「case1」の条件P1,P2,P3,P4における(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(P1:R=85.4[%],B=64.7[%],E=1.20、P2:R=83.8[%],B=62.7[%],E=1.21、P3:R=85.6[%],B=50.0[%],E=1.55、P4:R=82.2[%],B=38.7[%],E=2.05)と、を比較する。
【0113】
SF方式のR=83.1[%]に比べて、LDPF方式の条件P1におけるR=85.4[%]は2.3[%]向上し、条件P2におけるR=83.8[%]は0.7[%]向上し、条件P3におけるR=85.6[%]は2.5[%]向上している。また、条件P4におけるR=82.2[%]は0.9[%]減少している。
【0114】
SF方式のB=79.9[%]に比べて、LDPF方式の条件P1におけるB=64.7[%]は15.2[%]削減し、条件P2におけるB=62.7[%]は17.2[%]削減し、条件P3におけるB=50.0[%]は29.9[%]削減し、条件P4におけるB=38.7[%]は41.2[%]削減している。
【0115】
これらのLDPF方式におけるR(Reachability)及びB(Broadcasting nodes)の各結果として、SF方式のE=0.95に比べて条件P1におけるE=1.20は0.25上昇し、条件P2におけるE=1.21は0.26上昇し、条件P3におけるE=1.55は0.60上昇し、条件P4におけるE=2.05は1.10上昇している。
【0116】
次に、図14において、SF方式の「case2」における(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(R=57.3[%],B=53.3[%],E=0.98)と、LDPF方式の「case2」の条件P1,P2,P3,P4における(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(P1:R=57.3[%],B=40.4[%],E=1.29、P2:R=56.6[%],B=38.9[%],E=1.32、P3:R=60.4[%],B=33.5[%],E=1.64、P4:R=61.5[%],B=27.5[%],E=2.10)と、を比較する。
【0117】
SF方式のR=57.3[%]に比べて、LDPF方式の条件P2におけるR=56.6[%]は0.7[%]減少し、条件P3におけるR=60.4[%]は3.1[%]向上し、条件P4におけるR=61.5[%]は4.2[%]向上している。
【0118】
SF方式のB=53.3[%]に比べて、LDPF方式の条件P1におけるB=40.4[%]は12.9[%]削減し、条件P2におけるB=38.9[%]は14.4[%]削減し、条件P3におけるB=33.5[%]は19.8[%]削減し、条件P4におけるB=27.5[%]は25.8[%]削減している。
【0119】
これらのLDPF方式におけるR(Reachability)及びB(Broadcasting nodes)の各結果として、SF方式のE=0.98に比べて条件P1におけるE=1.29は0.27上昇し、条件P2におけるE=1.32は0.34上昇し、条件P3におけるE=1.64は0.66上昇し、条件P4におけるE=2.10は1.12上昇している。
【0120】
以上の結果から、本実施例に適用したLDPF方式は、SF方式に比べて高い到達率と冗長な再ブロードキャストを削減することを実現している。
【0121】
また、図16に示すように、(d)平均配信時間D(Delivery time)[s]は、「case1」「case2」のいずれの設定においても、LDPF方式は、SF方式に比べて条件P1,P2,P3,P4によらず改善している。これは、LDPF方式を適用することにより、トラフィックの混雑を削減することが可能であることを示している。
【0122】
次に、上記LDCF処理をシミュレーショントポロジーに適用して評価した結果について説明する。上述のように、提案したLDCF方式の目的は、到達率Rを確保しながら冗長な再ブロードキャスト数を削減することである。このため、Rは大きい方が好ましく、Bは小さい方が好ましい。すなわち、RとBの比であるEは大きい方が好ましい。また、D(Delivery time)は小さいほど良い。
【0123】
本LDCFシミュレーションでは、上述のネットワークトポロジの設定等を用いて、ノードをランダムに配置した10通りのマップMap(図5に示したようなシミュレーショントポロジーのマップMap)を作成する。ここでは、簡単のためノードの移動は考慮していない。まず、10通りのマップMapを用いてSF方式とLDCF方式でシミュレーションを行い、上記(a)R(Reachability)[%]、(b)B(Broadcasting nodes)[%]、(c)E(Efficiency)及び(d)D(Delivery time)[s]の各評価指標の結果を図17〜図19に示す。なお、R(Reachability)[%]と、B(Broadcasting nodes)[%]と、E(Efficiency)は、上記LDPF方式のシミュレーションで説明したものと同一であるため、これらの説明は省略する。
【0124】
本シミュレーションでは、LDCF方式の初期条件としての以下のC1,C2,C3,C4を設定して、この条件設定によりLDCF方式のシミュレーションを実行して得られたR[%]、B[%]、Eの各結果と、SF方式のシミュレーションを実行して得られたR[%]、B[%]、Eの各結果と、を図17に示す。
初期条件C1:default_c_threshold=8,loaded_c_threshold=4
初期条件C2:default_c_threshold=8,loaded_c_threshold=2
初期条件C3:default_c_threshold=6,loaded_c_threshold=2
初期条件C4:default_c_threshold=4,loaded_c_threshold=2
【0125】
図17において、横軸は、上記10通りのマップMAP1〜10に対してSF方式とLDCF方式(条件C1,C2,C3,C4)を、上記各Initiatorのパラメータの設定「case1」「case2」に対して適用したことを示す。また、左側の縦軸は(a)R(Reachability)[%],(b)B(Broadcasting nodes)[%]を示し、右側の縦軸は(c)E(Efficiency)を示す。図中のプロットのうち、■は(a)R(Reachability)を示し、○は(b)B(Broadcasting nodes)を示す。また、図中の棒グラフを示す□は(c)E(Efficiency)を示す。
【0126】
図18は、10通りのマップMAP1〜10及び上記各Initiatorのパラメータの設定「case1」「case2」に対してSF方式とLDCF方式(条件C1,C2,C3,C4)を適用して得られた(a)平均到達率R(Reachability)[%]の分布を示す。図中の棒グラフ内の「白色」部分は(80〜100[%]:図中の(80,100])、「右斜め線ハッチング」部分は(60〜80[%]:図中の(60,80])、「左斜め線ハッチング」部分は(40〜60[%]:図中の(40,60])、「クロス線ハッチング」部分は(20〜40[%]:図中の(20,40])、「横線ハッチング」部分は(0〜20[%]:図中の(0,20])であることを示す。
【0127】
図19は、10通りのマップMAP1〜10及び上記各Initiatorのパラメータの設定「case1」「case2」に対してSF方式とLDCF方式(条件C1,C2,C3,C4)を適用して得られた(d)平均配信時間D(Delivery time)[s]を示す。
【0128】
図17において、SF方式の「case1」における(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(R=83.1[%],B=79.9[%],E=0.95)と、LDCF方式の「case1」の条件C1,C2,C3,C4における(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(C1:R=87.0[%],B=74.1[%],E=1.07、C2:R=85.3[%],B=72.3[%],E=1.07、C3:R=88.1[%],B=68.4[%],E=1.17、C4:R=88.9[%],B=51.7[%],E=1.64)と、を比較する。
【0129】
SF方式のR=83.1[%]に比べて、LDCF方式の条件C1におけるR=87.0[%]は3.9[%]向上し、条件C2におけるR=85.3[%]は2.2[%]向上し、条件C3におけるR=88.1[%]は5.0[%]向上し、条件C4におけるR=88.9[%]は5.8[%]向上している。
【0130】
SF方式のB=79.9[%]に比べて、LDCF方式の条件C1におけるB=74.1[%]は5.8[%]削減し、条件C2におけるB=72.3[%]は7.6[%]削減し、条件C3におけるB=68.4[%]は11.5[%]削減し、条件C4におけるB=51.7[%]は28.2[%]削減している。
【0131】
これらのLDCF方式におけるR(Reachability)及びB(Broadcasting nodes)の各結果として、SF方式のE=0.95に比べて条件C1におけるE=1.07は0.12上昇し、条件C2におけるE=1.07は0.12上昇し、条件C3におけるE=1.17は0.22上昇し、条件C4におけるE=1.64は0.69上昇している。
【0132】
次に、図17において、SF方式の「case2」における(a)R(Reachability)、(
b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(R=57.3[%],B=53.3[%],E=0.98)と、LDCF方式の「case2」の条件C1,
C2,C3,C4における(a)R(Reachability)、(b)B(Broadcasting nodes)及び(c)E(Efficiency)の各平均値(C1:R=62.4[%],B=51.8[%],E=1.10、C2:R=58.6[%],B=44.7[%],E=1.19、C3:R=60.1[%],B=44.7[%],E=1.24、C4:R=62.0[%],B=42.7[%],E=1.32)と、を比較する。
【0133】
SF方式のR=57.3[%]に比べて、LDCF方式の条件C1におけるR=62.4[%]は5.1[%]向上し、C2におけるR=58.6[%]は1.3[%]向上し、条件C3におけるR=60.1[%]は2.8[%]向上し、条件C4におけるR=62.0[%]は4.7[%]向上している。
【0134】
SF方式のB=53.3[%]に比べて、LDCF方式の条件C1におけるB=51.8[%]は1.5[%]削減し、条件C2におけるB=44.7[%]は8.6[%]削減し、条件C3におけるB=44.0[%]は10.7[%]削減し、条件C4におけるB=42.7[%]は9.4[%]削減している。
【0135】
これらのLDPF方式におけるR(Reachability)及びB(Broadcasting nodes)の各結果として、SF方式のE=0.98に比べて条件C1におけるE=1.10は0.12上昇し、条件C2におけるE=1.19は0.21上昇し、条件C3におけるE=1.24は0.26上昇し、条件C4におけるE=1.32は0.34上昇している。
【0136】
以上の結果から、本実施例に適用したLDCF方式は、SF方式に比べて高い到達率と冗長な再ブロードキャストを削減することを実現している。
【0137】
また、図19に示すように、(d)平均配信時間D(Delivery time)[s]は、「case1」の条件下では、LDCF方式の条件C1,C2,C3,C4によらず改善している。「case2」の条件下では、LDCF方式の条件C2,C3,C4において改善している。これは、LDCF方式を適用することにより、トラフィックの混雑を削減することが可能であることを示している。
【0138】
(実施例2)
次に、ネットワークシミュレータ(The network simulator “OPNET”, http//www.opnet.com)を用いて、従来のSimple Flooding方式、従来の固定の再ブロードキャスト確立及び固定のカウンタ閾値を用いる方式、及び、上記LDPF方式とLDCF方式について比較する。なお、本実施例に用いるLDPF方式とLDCF方式の各無線通信装置の構成と機能は、上記図1,2及び図8,9に示したものと同様でるため、その図示と構成及び機能説明は省略する。
【0139】
<シミュレーション条件>
以下、本実施例2のシミュレーション設定について説明する。シミュレーションエリアは1000[m]×600[m]、ノードのMACレイヤはIEEE802.11b、データレートは2[Mbps]、送信電力は500[mW]、パケット受信電力閾値は3.16[mW]、q_thresholdはノードの輻輳に対する感度を高めるため1、nは5とする。そして、Random()で得られる値域は[0,20][ms]とする。この値域の最大値はバックオフ制御におけるデータフレームの再送バックオフ時間(再送信までの待ち時間)の最大値と同程度とする。各Initiatorノードが生成するメッセージ数は2000とした。また、総ノード数、Initiatorノード数、Initiatorのメッセージ生成間隔(パケット生成間隔)を図20に示すCase A〜D、W〜Zの8通りのシナリオを設定した。Case A〜Dでは疎なネットワークを想定し、総ノード数を50とし、Case W〜Zでは密なネットワークを想定し、総ノード数を100とした。ノードの配置はランダムとした。なお、バックオフ制御は、ノード間においてデータフレームの衝突を回避するための時間(バックオフ時間)を制御することである。
【0140】
Initiatorノードは低解像度の動画ストリーミングを行うことを想定し、メッセージサイズ(レイヤ2ペイロード)は1024[Byte]とした。これは、例えば解像度が176×144ドットで表示されるQCIF(Quarter Common Intermediate Format)の動画をH.264等でエンコードを行うと、1フレームあたり1024[Byte]に十分収めることが可能である。また、メッセージ生成間隔は、アナログテレビ放送(例えば、NTSC方式等)で一般的な30[fps]による送信を想定し、この程度の値である32[ms]とした。さらに他のアプリケーションへの適用性を検証するため、メッセージ生成間隔を16[ms]とし、またメッセージ生成間隔を一定と一様分布を設定した(図20参照)。
【0141】
ノードの移動は、上記シミュレータ標準のRandom Waypointモデルに基づいて動作し、移動速度は人間の歩行・走行速度を想定して0.8[m/s]とした。ノードの配置・移動パターンにより10通りのシナリオを作成した。
【0142】
<評価項目>
上記シミュレーション条件における各フラッディング方式及び各設定値に対して以下の(a)〜(d)の項目について評価を行った。これらの項目は、上記Case A〜D、W〜Zのシナリオそれぞれにおいて算出されるが、以下の説明では各項目の平均値のみを示して説明する。
【0143】
(a)到達率R[%]
一つのメッセージについて、全ノードのうちメッセージを受信したノードを割合を求め、全メーセージについて平均値を上記数式(4)により求める。
但し、I:Initiatorのノード数。ここではI=2である。
J:生成されたメッセージの合計数。ここではJ=2000である。
N:全ノード数。ここではN=50、100である。
i:InitiatorノードのID。ここではi=2である。
j:メッセージのID。ここでは、j=1,2,・・・,2000である。
ij:Initiator IDがiであるInitiatorが生成したメッセージIDがjであるメッセージを受信したノードの数(Initiatorを含む)。
【0144】
(b)ブロードキャストノード率B[%]
一つのメッセージについて、全ノードのうちメッセージのブロードキャストを行ったノードの割合を求め、全メッセージについて平均値を以下の数式(5)により求める。
但し、bij:Initiator IDがiであるInitiatorが生成したメッセージIDがjであるメッセージについて、再ブロードキャストを行ったノードの数(Initiatorを含む)。
【0145】
(c)効率E
効率EはRとBの比(R/B)を求める。効率Eは数値が大きいほど、より高いメッセージ到達率を実現しつつ、冗長な再ブロードキャストが抑制できることを示す。
【0146】
(d)ノードあたりの平均配信時間D[s]
Initiatorノードのアプリケーションレイヤにおいてメッセージが生成され、他のノードに受信されたアプリケーションレイヤに到達するまでの時間について、ノードあたりの平均を上記数式(7)により求める。
但し、K:メッセージを受信したノード数。
k:メッセージを受信したノードのID。
(received_time)ijk:Initiator IDがiであるInitiatorが生成したメッセージIDがjであるメッセージを、ノードIDがkであるノードが受信した時刻。
(initiated_time)ij:Initiator IDがiであるInitiatorが生成したメッセージIDがjであるメッセージが生成された時刻。
【0147】
本発明により提案した上記LDPF方式とLDCF方式の目的は、高い到達率を確保しつつ、冗長な再ブロードキャストを抑制することである。そのため、到達率Rは高い方が好ましく、ブロードキャストノード率Bは低い方が好ましい。また、Simple Flooding方式と本発明に係るLDPF方式及びLDCF方式を比較した場合、効率Eは大きい方が好ましい。そして、データの到達時間の観点からノードあたりの平均配信時間Dは小さい方が好ましい。
【0148】
<LDPFの評価>
上記シミュレーション条件において設定した各ノードの再ブロードキャスト確率を図21に示すように設定して上記シミュレーションを行った。図21において、Pa〜Pcは従来の固定の再ブロードキャスト確率probを用いる方式であり、P1〜P5は本発明に係るLDPF方式であり、default_probとloaded_probをそれぞれ設定する。本実施例2のシミュレーションでは、負荷状況に応じて動的に図21の何れかのprobを設定する。
【0149】
上記シミュレーション条件によるシミュレーション結果を図22〜図37に示す。上記(a)〜(d)の各評価項目について、まず、(i)従来のSimple Flooding方式(以下、SF方式という)と本発明に係るLDPF方式によるP1〜P5の各方式とを比較する(図22)。次に、本発明に係るLDPF方式によるP1〜P5の各方式と、Pa〜Pcに設定したprobのうちLDPF方式におけるdefault_probと等しい値の再ブロードキャスト確率Bを固定値として用いるものと、を比較する(図23〜図25)。すなわち、(ii)PaとP1、PaとP2(図23)、(iii)PbとP3、PbとP4(図24)、(iv)PcとP5(図25)、の順で比較する。
【0150】
(a)到達率R
図22〜図25に到達率Rの上記(i)〜(iv)の各比較結果を示す。まず、図22において、SF方式とLDPF方式によるP1〜P5を比較すると、P1〜P5の各方式は全てのCase A〜D、W〜ZにおいてSF方式よりも到達率Rを改善することができた。なお、図22において、改善量が最も顕著に現れたのはP5の9.9[%]〜22.4[%]であった。次に、図23においてPaとP1、PaとP2、図24においてPbとP3、PbとP4、図25(iv)においてPcとP5をそれぞれ比較した。この場合、図24においてPbとP3を比較した場合の一部のCaseを除き、P1〜P5の各LDPF方式において到達率Rが改善することを確認した。一方、到達率Rが低下したCaseに着目すると、到達率Rの低下の幅は最大1.0[%]であり、性能面での影響はほぼ無いことを確認した。
【0151】
上述のシミュレーションにより、LDPF方式を用いた多くのCaseでは、Initiatorノードの周辺に存在するノードのように負荷が集中するノードにおいて、再ブロードキャストを効果的に抑制できることを確認した。その結果、バッファオーバーフローやコリジョンを削減し、ネットワーク全体として到達率Rが向上することを確認できた。
【0152】
(b)ブロードキャストノード率B[%]
図26〜図29にブロードキャストノード率Bの上記(i)〜(iv)の各比較結果を示す。まず、図26において、SF方式とLDPF方式によるP1〜P5を比較する。この場合、P1〜P5の各LDPF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでSF方式よりブロードキャストノード率Bを削減できることを確認した。なお、最も削減量が顕著に現れたのはP5の14.9[%]〜39.1[%]であった。次に、図27においてPaとP1、PaとP2、図28においてPbとP3、PbとP4、図29においてPcとP5をそれぞれ比較した。この場合、P1〜P5の各LDPF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでPa〜Pcよりもブロードキャストノード率Bを削減できることを確認した。これらの結果は、ネットワーク全体の冗長な再ブロードキャスト、及び負荷状況にあるノードの再ブロードキャストを積極的に抑制することができたためである。したがって、結果としてSF方式よりもネットワーク全体としてのブロードキャスト数を削減できることを確認した。
【0153】
(c)効率E
図30〜図33に効率Eの上記(i)〜(iv)の各比較結果を示す。まず、図30において、SF方式とLDPF方式によるP1〜P5を比較する。この場合、P1〜P5の各LDPF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでSF方式より効率Eが改善することを確認した。なお、最も削減量が顕著に現れたのはP5の1.4〜2.2であった。次に、図31においてPaとP1、PaとP2、図31においてPbとP3、PbとP4、図33においてPcとP5をそれぞれ比較した。この場合、P1〜P5の各LDPF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでPa〜Pcよりも効率Eが改善することを確認した。これらの結果は、到達率Rとブロードキャストノード率Bがともに改善したためである。これにより、LDPF方式はSF方式と比較して、高いメッセージ到達率を確保しつつ、冗長な再ブロードキャストの抑制を実現できることを確認した。
【0154】
(d)ノードあたりの平均配信時間D[s]
図34〜図37にノードあたりの平均配信時間Dの上記(i)〜(iv)の各比較結果を示す。まず、図34において、SF方式とLDPF方式によるP1〜P5を比較する。この場合、P1〜P5の各LDPF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでSF方式よりノードあたりの平均配信時間Dが短縮することを確認した。なお、最も短縮量が顕著に現れたのはP5の1.2[s]〜7.1[s]であった。次に、図35においてPaとP1、PaとP2、図36においてPbとP3、PbとP4、図37においてPcとP5をそれぞれ比較した。この場合、P1〜P5の各LDPF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでPa〜Pcよりもノードあたりの平均配信時間Dが短縮することを確認した。これにより、LDPF方式はSF方式と比較して、ノードあたりの平均配信時間Dが短縮することができた。これらの結果は、冗長な再ブロードキャストの抑制により、ネットワーク全体のトラフィックが軽減され、これにより、各ノードにおいてリンクがビジーである時間を短縮することができ、MAC送信キューにおけるメッセージの送信待ち待機時間が短縮したためである。
【0155】
<LDCFの評価>
上記シミュレーション条件において設定した各ノードのカウンタ閾値を図38に示すように設定して上記シミュレーションを行った。図38において、Ca〜Ccは従来の固定のカウンタ閾値c_thresholdを用いる方式であり、C1〜C5は本発明に係るLDCF方式であり、default_c_thresholdとloaded_c_thresholdをそれぞれ設定する。本実施例2のシミュレーションでは、負荷状況に応じて動的に図21の何れかのc_thresholdを設定する。
【0156】
上記シミュレーション条件によるシミュレーション結果を図39〜図54に示す。上記(a)〜(d)の各評価項目について、まず、(i)従来のSF方式と本発明に係るLDCF方式によるC1〜C5の各方式とを比較する(図39)。次に、本発明に係るLDCF方式によるC1〜C5の各方式と、Ca〜Ccに設定したc_thresholdのうちLDCF方式におけるdefault_c_thresholdと等しい値のカウンタ閾値を固定値として用いるものと、を比較する(図40〜図42)。すなわち、(ii)CaとC1、CaとC2(図40)、(iii)CbとC3、CbとC4(図41)、(iv)CcとC5(図42)、の順で比較する。
【0157】
(a)到達率Rの評価結果
図39〜図42に到達率Rの上記(i)〜(iv)の各比較結果を示す。まず、図39において、SF方式とLDCF方式によるC1〜C5を比較する。この場合、全てのCase A〜D、W〜Zにおいて、C1〜C5はSF方式よりも到達率Rを改善することができた。なお、図39において、改善量が最も顕著に現れたのはC5の12.1[%]〜33.1[%]であった。次に、図40においてCaとC1、CaとC2、図41においてCbとC3、CbとC4、図42においてCcとC5をそれぞれ比較した。この場合、C1〜C5の各LDCF方式は全てのCase A〜D、W〜ZにおいてSF方式よりも到達率Rを改善することが確認できた。これにより、LDCF方式はSF方式よりも到達率Rが得られることが確認できた。
【0158】
上述の結果、LDCF方式によりInitiatorノードの周辺に存在するノードのように負荷が集中するノードにおいて、再ブロードキャストを効果的に抑制することができた。このため、バッファオーバーフローやコリジョンを削減し、ネットワーク全体としての到達率Rを向上することが確認できた。
【0159】
(b)ブロードキャストノード率B[%]の評価結果
図43〜図46にブロードキャストノード率Bの上記(i)〜(iv)の各比較結果を示す。まず、図43において、SF方式とLDCF方式によるC1〜C5を比較する。この場合、C1〜C5の各LDCF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでSF方式よりブロードキャストノード率Bを削減できることを確認した。なお、最も削減量が顕著に現れたのはC5の14.7[%]〜61.0[%]であった。次に、図44(ii)においてCaとC1、CaとC2、図45においてCbとC3、CbとC4、図46においてCcとC5をそれぞれ比較した。この場合、C1〜C5の各LDCF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでCa〜Ccよりもブロードキャストノード率Bを削減できることを確認した。これらの結果は、ネットワーク全体の冗長な再ブロードキャスト、及び負荷状況にあるノードの再ブロードキャストを積極的に抑制することができたためである。したがって、結果としてSF方式よりもネットワーク全体としてのブロードキャスト数を削減できることを確認した。
【0160】
(c)効率Eの評価結果
図47〜図50に効率Eの上記(i)〜(iv)の各比較結果を示す。まず、図47において、SF方式とLDCF方式によるC1〜C5を比較する。この場合、C1〜C5の各LDCF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでSF方式より効率Eが改善することを確認した。なお、最も削減量が顕著に現れたのはC5の1.8〜6.4であった。次に、図48においてCaとC1、CaとC2、図49においてCbとC3、CbとC4、図50においてCcとC5をそれぞれ比較した。この場合、C1〜C5の各LDCF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでCa〜Ccよりも効率Eが改善することを確認した。これらの結果は、到達率Rとブロードキャストノード率Bがともに改善したためである。これにより、LDCF方式はSF方式と比較して、高いメッセージ到達率を確保しつつ、冗長な再ブロードキャストの抑制を実現できることを確認した。
【0161】
(d)ノードあたりの平均配信時間D[s]の評価結果
図51〜図54にノードあたりの平均配信時間Dの上記(i)〜(iv)の各比較結果を示す。まず、図51において、SF方式とLDCF方式によるC1〜C5を比較する。この場合、C1〜C5の各LDCF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでSF方式よりノードあたりの平均配信時間Dが短縮することを確認した。なお、最も短縮量が顕著に現れたのはC5の1.2[s]〜7.0[s]であった。次に、図52においてCaとC1、CaとC2、図53においてCbとC3、CbとC4、図54においてCcとC5をそれぞれ比較した。この場合、C1〜C5の各LDCF方式において全てのCase A〜D、W〜ZでCa〜Ccよりもノードあたりの平均配信時間Dが短縮することを確認した。これにより、LDCF方式はSF方式と比較して、ノードあたりの平均配信時間Dが短縮することができた。これらの結果は、冗長な再ブロードキャストの抑制により、ネットワーク全体のトラフィックが軽減され、これにより、各ノードにおいてリンクがビジーである時間を短縮することができ、MAC送信キューにおけるメッセージの送信待ち待機時間が短縮したためである。
【0162】
<LDPFとLDCFの比較>
上記LDPF方式によるP1〜P5と上記LDCF方式によるC1〜C5を比較すると、到達率Rとブロードキャストノード率Bの各数値が示すように、いずれもSF方式に比べて高いメッセージ到達率を確保し、冗長なブロードキャストの抑制を実現することが確認できた。
【0163】
以上の本実施例2のLDPF方式とLDCF方式の各シミュレーション結果では、高いメッセージ到達率を確保しつつ、冗長な再ブロードキャストの抑制が可能であることを確認できた。さらに、冗長な再ブロードキャストの抑制により、ネットワーク全体のトラフィック負荷が軽減され、ノードあたりの配信時間の短縮を実現することを確認できた。
【0164】
(実施例3)
次に、本発明に係るLDPF方式とLDCF方式を動画ストリーミングに適用させた場合の通信品質について、ネットワークシミュレータ(The network simulator “OPNET”, http//www.opnet.com)を用いて、パケットレベルの評価を行った。なお、本実施例に用いるLDPF方式とLDCF方式の各無線通信装置の構成と機能は、上記図1,2及び図8,9に示したものと同様でるため、その図示と構成及び機能説明は省略する。
【0165】
<シミュレーション条件>
以下、本実施例3のシミュレーション設定について説明する。シミュレーションエリアは1000[m]×600[m](Case A)と、2000[m]×1200[m](Case B)の2通りとし、それぞれのシミュレーションエリアにおいて、ノードが密なネットワーク及び疎なネットワークを想定した。総ノード数は100とし、そのうち動画ストリーミングを生成するInitiatorノード数を2とする。全ノードはRandom Waypointモデルに基づいて移動を行うが、人間の歩行及び走行速度を想定して[0,8][m/S]の範囲で移動するものとした。MACレイヤはIEEE802.11b、データレートは2[Mbps]、送信電力は0.005[W]、パケット受信電力閾値は−85[dBm]とする。
【0166】
各Initiatorノードは1500の動画フレームを30[fps]で生成すること、すなわち、生成パケット数を1500とし、パケット生成間隔を32[ms]とする。メッセージサイズ(レイヤ2ペイロード)は1024[Byte]とした。但し、パケットは、ビデオデータとInitiator ID、フレームのシーケンス番号等のための数Byteを含む。動画の配信には、H.264等の動画圧縮方式を適用し、GoP(Group of Pictures)は10、フレーム構成はIフレームとPフレームを含む。そして、ノードの配置を改め、計20トライアルのシミュレーションを行った。
【0167】
Initiatorノードによって生成されたパケットは、SF方式、LDPF方式、LDCF方式のいずれかの配信方式によって配信される。LDPF方式による配信パラメータは図55に示すdefault_probとloaded_probと重み係数nとを各々設定するパラメータPw〜Pzとし、LDCF方式による配信パラメータは図56に示すdefault_c_thresholdとloaded_c_thresholdと重み係数nとを各々設定するパラメータCw〜Czとする。但し、Initiatorノードは他ノードからの受信パケットについては再ブロードキャストは行わないものとする。本実施例3に係るシミュレーションでは、これらのパラメータPw〜Pz、Cw〜Czを用いた場合について以下の品質評価を行った。
【0168】
<評価方法>
ノードにおいて、バッファリング時間は5[s]とする(バッファリング時間を超過して到達したパケットは廃棄される)。1トライアルにおいては、観測点ノードをランダムに1つ選択し、その観測点ノードが受信したパケットにより品質評価を行った。但し、ネットワーク内の2つのInitiatorノードのうち、1つのInitiatorノードが送信したパケットストリーム(計1500パケット)に着目し、観測点ノードが受信したパケットについて品質評価を行った。評価項目は以下の(i)〜(iii)である。これらの評価項目はトライアル毎に算出するが、後述する評価結果では20トライアルの平均値を示す。
【0169】
<評価項目>
(i)受信パケット率R[%]
Initiatorノードにより生成されたパケットストリーム(計1500パケット)のうち、観測点ノードのアプリレイヤまで到達したパケットの割合を示す。Initiatorノードにより生成されたパケットストリームの例を図57(a)に示す。このパケットストリームの構成は、上述したようにGoPは10、フレーム構成はIフレームとPフレームを含む。観測点ノードにおいて受信パケット率Rの評価対象となるパケットの例を図57(b)に示す。
【0170】
(ii)再生可能パケット率V[%]
Initiatorノードにより生成されたパケットストリーム(計1500パケット)のうち、観測点ノードのアプリレイヤまで到達し、動画として再生可能なパケットの割合を示す。観測点ノードにおいて再生可能パケット率Vの評価対象となるパケットの例を図57(b)に示す。
【0171】
(iii)動画停止時間率INT[%]
観測点ノードにおいて動画の再生を行った場合に、全再生時間に対して0.5秒(15フレームに相当)以上の動画が停止した時間の割合を示す。
【0172】
<評価結果>
上記シミュレーション条件により図55に示したLDPF方式のパラメータPw〜Pzと、図56に示したLDCF方式のパラメータCw〜Czと、を用いて動画ストリーミングのシミュレーションをSF方式、LDPF方式、LDCF方式の各々について20トライアル行い、上記評価項目(i)〜(iii)により品質評価を行った結果を以下に示す。なお、各評価項目(i)〜(iii)の評価結果は20トライアルの平均値を示す。
【0173】
(i)受信パケット率R及び(ii)再生可能パケット率Vの評価結果
図58及び図59に受信パケット率R及び再生可能パケット率Vの評価結果を示す。但し、図58及び図59に示す偏差棒は平均値±標準偏差(SD)の範囲を示す。受信パケット率R及び再生可能パケット率Vといずれも高い方が好ましい。受信パケット率Rは、SF方式、LDPF方式及びLDCF方式のいずれも、図58に示すCase Aでは84.0[%]以上、図59に示すCase Bでは88.0[%]以上となることを確認した。再生可能パケット率Vは、SF方式を用いた場合、図58に示すCase Aでは22.8[%]、図59に示すCase Bでは55.8[%]となり、受信パケット率Rが高いにも関わらず、動画として復元できない割合が極端に大きいことを確認した。このSF方式の評価結果は、図57(b)に示すようにランダムなパケットロス(PフレームP、P、P17を未受信)により、動画フレームの連続性が失われたことが原因である。なお、再生可能パケット率Vが最も高い評価結果となった方式は、図58に示すCase A及び図59に示すCase Bにおいて、ともにパラメータCzを設定したLDCF方式であった(Case Aでは77.5[%]、Case Bでは98.1[%])。
【0174】
ここで、LDPF方式(パラメータPw〜Pz)を用いた場合に着目する。パラメータPwとパラメータPzについて比較すると、Case BにおいてCase Aよりも再生可能パケット率Vが17[%]程度向上することを確認した。これは、再ブロードキャストの実行可否の判断基準を確率により定めているため、等しい再生ブロードキャスト確率を設定したとしても、ネットワークの疎密に応じて、再生可能パケット率Vが減少するためである。
【0175】
次に、LDCF方式(パラメータCw〜Cz)を用いた場合に着目する。LDPF方式(パラメータPw〜Pz)を用いた場合には図59に示すCase Bにおいて図58に示すCase Aよりも再生可能パケット率Vが低下する場合が観測されたが、LDCF方式では再生可能パケット率Vを向上させることができた。これにより疎なネットワークにおいても密なネットワークと同様に、高いパケット到達率の確保を実現することが可能である。
【0176】
(iii)動画停止時間率INT[%]の評価結果
図60及び図61に動画停止時間率INTの評価結果を示す。動画停止時間率INTは小さい方が動画を中断なく再生できるため好ましい。図60に示すCase A、図61に示すCase BにおいてSF方式とLDPF方式及びLDCF方式とを比較すると、SF方式を用いた場合の動画停止時間率INTはLDPF方式及びLDCF方式を用いた場合の動画停止時間率INTよりも大きな値になることを確認した。これはSF方式においては、上述したようにランダムなパケットロスが発生して、動画フレームの連続性が失われるためである。なお、図60に示すCase AにおいてはLDCF方式のCz、図61に示すCase BにおいてはLDCF方式のCyが動画停止時間率INTが最小になることを確認した。これはLDCF方式のCz、Cyにおいては、冗長なブロードキャストが抑制でき、パケットロスを削減できたため、動画フレームの連続性を維持したまま配信が可能になることを示している。
【0177】
ここで、図55及び図56においてLDPF方式及びLDCF方式に各々設定した重み係数nの効果について説明する。LDPF方式においては、図55に示したように、異なる再ブロードキャスト待機時間(wait_time)の重み係数nを設定した(PwとPyではn=1、PxとPzではn=5)。重み係数nが大きい方が再ブロードキャストを行うまでの待機時間が長く、コリジョンの発生を抑制できる。図58及び図59に示した受信パケット率R及び再生可能パケット率Vの評価結果では、n=5の場合の方が、n=1の場合よりも受信パケット率R及び再生可能パケット率Vが数%程度向上することを確認した。
【0178】
次に、LDCF方式においては、図56に示したように、異なる再ブロードキャスト判定待機時間(decision_time)の重み係数nを設定した(CwとCyではn=1、CxとCzではn=5)。重み係数nが大きい方が再ブロードキャストを行うまでの判定待機時間が長くなり、冗長な再ブロードキャストの抑制を効果的に行うことができる。図58及び図59に示した受信パケット率R及び再生可能パケット率Vの評価結果では、n=5の場合の方が、n=1の場合よりも受信パケット率R及び再生可能パケット率Vが数%程度向上することを確認した。この結果は、特にCase Aにおいて顕著である。これは、重み係数nが大きい値である方が、counterによる判定待機時間が長くなり、冗長な再ブロードキャストの発生が効果的に抑制され、パケットロスの発生が低減されるためである。
【0179】
以上の動画ストリーミングに本発明に係るLDPF方式及びLDCF方式を適用した場合、SF方式と比較して、パケット到達性、再生可能フレーム率、動画停止時間の観点から品質を向上させることが確認できた。なお、LDPF方式とLDCF方式、パラメータ設定とを比較した結果、LDCF方式においてパラメータCzを設定した場合に、最も再生可能パケット率Vが高く、動画再生の停止を抑制し、かつパケットの送受信量を抑制できることが判明した。これは、負荷状況にあるノードの冗長な再ブロードキャストを効果的に抑制できるため、全体としてパケットロスが減少し、動画フレームの連続性を維持しつつ配信が実現できるためである。
【0180】
<受信ノードにおける再生画質の品質評価>
次に、上記図58〜図61に示したシミュレーションの評価結果に基づき、実際の動画データを用いて受信ノードにおいて再生動画を再現し、その品質について数値評価を行った。以下、評価方法について説明する。
【0181】
<評価方法>
動画データの評価手順を図62に示し、評価の概要を図63及び図64に示す。評価に用いる原動画(図62の(A)Raw video)は、qcif(quarter common intermediate format)の“highway”のうち、1500フレームを用いる。そして、H.264/AVCを用いてエンコード(図62のステップS302)して“(B) Encoded video”を作成し(図62のステップS303)、次いで、“(B) Encoded video”のデコード(図62のステップS304)を行い、パケット損失による品質劣化の無い動画((C) Decoded video)を作成する(図62のステップS305)。そして、上記シミュレーションにおいて得られたパケットロスの分布をもとに、観測点ノードにおける再生動画((D) Received video)を再現する(図62のステップS306〜ステップS308)。そして、観測点ノードにおける再生動画の品質評価を以下に示す(i)、(ii)に示す評価項目を用いて行う(図62のステップS308)。これらの評価項目は、上記シミュレーションで得られたトライアル毎の結果により算出されるが、計20トライアルの平均値として図63及び図64に示す。
【0182】
<評価方法>
(i)平均PSNR(Peak Signal-to-Noise Ratio:ピーク信号対雑音比)[dB]
上記(D) Received videoと(A)Raw videoの個々のフレームについて平均PSNRを算出する。ここでは、全動画フレームの平均値を比較することにより、動画全体の品質を比較する。
【0183】
(ii)受入可能品質(Acceptable)フレームの割合[%]
上記(C) Decoded videoのうち十分な品質であるフレームの割合を求める。これにより個々のフレームの品質を評価する。この算出のために、個々のフレームのPSNR値をITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication sector)により推奨されている図65に示す表を用いて、MOS(Mean Opinion Score)値に変換する。ここで、MOS値が4以上のフレームをAcceptableフレーム、それ以外をUnacceptableフレームとする。そして、Acceptableフレームの割合を比較する。
【0184】
<評価結果>
(i)平均PSNR[dB]の評価結果
図63及び図64に平均PSNRの評価結果を示す。但し、図中の偏差棒は平均値±標準偏差の範囲を示している。なお、図63及び図64において、参考にパケットロスによる品質劣化の無い動画(C) Decoded videoを“Dec.”として示している。平均PSNRが最も高くなったのは、図63に示すCase A及び図64に示すCase BにおいてCzであった。図63に示すCase AにおいてCzの平均PSNRは35.7[dB]、図64に示すCase BにおいてCzの平均PSNRは37.6[dB]となり、Dec.と比較して0.1[dB]〜0.2[dB]程度のごく僅かな劣化であることを確認した。
【0185】
(ii)受入可能品質フレームの割合[%]の評価結果
図66及び図67に受入可能品質フレームの割合の評価結果を示す。これらの評価結果では、AcceptableフレームとUnacceptableフレームの比率を示している。Acceptableフレームの割合が最も高くなったのは、図66に示すCase A及び図67に示すCase BにおいてCzであった。図63に示すCase AのCzにおいてAcceptableフレームの割合は83.2[%]、
図67に示すCase BのCzにおいてAcceptableフレームの割合は98.5[%]であった。これにより、LDCF方式においてパラメータCzを用いた場合に最も良好な品質で動画を再生できることを確認した。
【0186】
以上のように、実際の動画データを用いて受信ノードにおける再生動画を再生し、品質評価を行った結果、本発明に係るLDPF方式とLDCF方式のいずれにおいても、従来のSF方式と比較して再生動画の品質を向上させることができた。また、各フレームの品質とMOS値劣化フレームの割合の評価により、個々のフレームの品質についても向上できることを確認した。これにより、上記シミュレーションにおけるパケットレベルでの評価の有効性を裏付けることができた。特に、LDCF方式においてパラメータCzを設定した場合は、最も良好な品質で動画を再現でき、従来のSF方式と比較して、パケットロスの削減と動画フレームの連続性を維持して動画ストリーミングの配信を実現できる。
【符号の説明】
【0187】
100,200…無線通信装置、102…無線通信部、107,201…制御部、107a,201a…計数部、107b,201b…閾値設定部、107c…確率設定部、107d…待機時間設定部、107e,201f…通信制御部、108,202…メモリ、108a…LDPFテーブル、108b…LDPFプログラム、108c,202c…音声通信プログラム、201c…受信回数計数部、201d…判定時間設定部、201e…受信回数閾値設定部、202a…LDCFテーブル、202b…LDCFプログラム。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の他の無線通信装置に対してメッセージを再送信する無線通信装置において、
無線通信部と、
送信キューに対する送信待ちパケット数を記憶する記憶部と、
前記送信待ちパケット数を計数する計数部と、
前記送信待ちパケット数に対する閾値を設定する閾値設定部と、
前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージを再送信する確率を設定する確率設定部と、
前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージの再送信を待機する待機時間を設定する待機時間設定部と、
前記確率設定部により設定された前記確率と前記待機時間設定部により設定された前記待機時間に基づいて前記無線通信部における前記メッセージの再送信処理を制御する通信制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記閾値、前記確率及び前記待機時間を記憶し、
前記確率設定部は、前記メッセージを受信する毎に前記記憶部に記憶された前記確率を更新し、
前記待機時間設定部は、前記メッセージを受信する毎に前記記憶部に記憶された前記待機時間を更新することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記確率設定部は、前記送信待ちパケット数が前記閾値以上の場合は第1の確率を設定し、前記送信待ちパケット数が前記閾値より小さい場合は第2の確率を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記確率設定部は、前記第1の確率を前記第2の確率より小さい値に設定することを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記待機時間設定部は、前記送信待ちパケット数が前記閾値以上の場合は第1の待機時間を設定し、前記送信待ちパケット数が前記閾値より小さい場合は第2の待機時間を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記待機時間設定部は、前記第1の待機時間を前記第2の待機時間より長い時間に設定することを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記通信制御部は、前記送信待ちパケット数が前記閾値以上の場合は、前記第1の確率及び前記第1の待機時間に基づいて前記無線通信部における前記メッセージの再送信処理を制御し、前記送信待ちパケット数が前記閾値より小さい場合は、前記第2の確率及び前記第2の待機時間に基づいて前記無線通信部における前記メッセージの再送信処理を制御することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
複数の他の無線通信装置に対してメッセージを再送信する無線通信装置において、
無線通信部と、
送信キューに対する送信待ちパケット数を記憶する記憶部と、
前記送信待ちパケット数を計数する計数部と、
前記メッセージの受信回数を計数する受信回数計数部と、
前記送信待ちパケット数に対する閾値を設定する閾値設定部と、
前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージの再送信の可否を判定する再送信可否判定時間を設定する判定時間設定部と、
前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記受信回数に対する閾値を設定する受信回数閾値設定部と、
前記判定時間設定部により設定された前記再送信可否判定時間と前記受信回数閾値設定部により設定された前記受信回数閾値に基づいて前記無線通信部における前記メッセージの再送信処理を制御する通信制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
前記記憶部は、前記受信回数、前記閾値、前記送信可否判定時間、及び前記受信回数閾値を記憶し、
前記受信回数計数部は、同一のメッセージを受信する毎に前記記憶部に記憶された前記受信回数を更新し、
前記判定時間設定部は、前記同一のメッセージを受信する毎に前記記憶部に記憶された前記再送信可否判定時間を更新し、
前記受信回数閾値設定部は、前記同一のメッセージを受信する毎に前記記憶部に記憶された前記受信回数閾値を更新することを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記判定時間設定部は、前記送信待ちパケット数が前記閾値以上の場合は第1の再送信可否判定時間を設定し、前記送信待ちパケット数が前記閾値より小さい場合は第2の再送信可否判定時間を設定することを特徴とする請求項8又は9に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記判定時間設定部は、前記第1の再送信可否判定時間を前記第2の再送信可否判定時間より長い時間に設定することを特徴とする請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記受信回数閾値設定部は、前記送信待ちパケット数が前記閾値以上の場合は第1の受信回数閾値を設定し、前記送信待ちパケット数が前記閾値より小さい場合は第2の受信回数閾値を設定することを特徴とする請求項8又は9に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記受信回数閾値設定部は、前記第1の受信回数閾値を前記第2の受信回数閾値より小さい値に設定することを特徴とする請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記通信制御部は、前記送信待ちパケット数が前記閾値以上の場合は、前記第1の再送信可否判定時間及び前記第1の受信回数閾値に基づいて前記無線通信部における前記同一のメッセージの再送信処理を制御し、前記送信待ちパケット数が前記閾値より小さい場合は、前記第2の確率及び前記第2の待機時間に基づいて前記無線通信部における前記同一のメッセージの再送信処理を制御することを特徴とする請求項8乃至13の何れか一項に記載の無線通信装置。
【請求項15】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の無線通信装置を複数配置し、前記複数の無線通信装置の相互間で無線通信ネットワークを形成してメッセージを配信することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項16】
請求項8乃至14の何れか一項に記載の無線通信装置を複数配置し、前記複数の無線通信装置の相互間で無線通信ネットワークを形成して同一のメッセージを配信することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項17】
前記無線通信ネットワークは、アドホックネットワークであることを特徴とする請求項15又は16に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項18】
複数の他の無線通信装置に対してメッセージを再送信する無線通信装置における通信処理方法であって、
送信キューに対する送信待ちパケット数と前記送信待ちパケット数に対する閾値を記憶し、
前記送信待ちパケット数を計数し、
前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージを再送信する確率を設定し、
前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージの再送信を待機する待機時間を設定し、
前記設定された確率と前記設定された待機時間に基づいて前記メッセージの再送信処理を制御することを特徴とする通信処理方法。
【請求項19】
複数の他の無線通信装置に対してメッセージを再送信する無線通信装置における通信処理方法であって、
送信キューに対する送信待ちパケット数と前記送信待ちパケット数に対する閾値を記憶し、
前記送信待ちパケット数を計数し、
前記メッセージの受信回数を計数し、
前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記メッセージの再送信の可否を判定する再送信可否判定時間を設定し、
前記送信待ちパケット数と前記閾値とを比較し、該比較結果に基づいて前記受信回数に対する閾値を設定し、
前記設定された再送信可否判定時間と前記設定された受信回数閾値に基づいて前記メッセージの再送信処理を制御することを特徴とする通信処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図38】
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【図55】
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【図56】
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【図65】
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【図15】
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【図18】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図66】
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【図67】
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【公開番号】特開2011−30210(P2011−30210A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139291(P2010−139291)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人電気学会、「電気学会研究会資料」、平成22年1月21日発行 東海大学出版会、「東海大学紀要 情報通信学部」Vol.2No.2 2009、平成22年3月31日発行
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】